2023年9月30日土曜日

えっ貧乏人がカニを!?-ナマジのビンボ飯ノコギリガザミ編-

 貧乏人にはカニを買うということは贅沢だろう。しかし、その貧乏人が川のそばに住んでいるなら、ハゼやらセイゴやらを釣りに出かけるような釣り人なら、川の下流や河口域で出会うわりと美味しい獲物であるモクズガニやらノコギリガザミ類やらに遭遇する機会はそこそこあるのではないだろうか?ノコギリガザミはややレアキャラだけど、モクズガニに関しては秋に川から産卵のため河口部に降りてくるので、釣り場で遭遇する機会も多いだろう。ワシも年に何回かは夜シーバス釣ってて”今日はモクズガニよく歩いているな”と思う日があるぐらいで、拾って食ってしまえば贅沢でもなんでもなく、タダで手に入ったご馳走である。モクズガニって美食家の中国人が目の色変える”上海ガニ(チュウゴクモクズガニ)”の親戚でっせ。

 ただ、カニというとズワイガニやらタラバガニといった、脚を食うタイプのカニの、脚だけで冷凍で出回っているのしか食べたことがない人から見ると、ノコギリガザミをはじめとしたワタリガニ系やモズクガニのような脚が細いカニについては「爪ぐらいしか食うところがない」と舐められている気配がある。

 カニ好きの人からしたら、脚の冷凍流通が主でミソも楽しめんカニのなにが楽しいんじゃ!って話で、カニの食べるところは脚だけじゃないっていうのは常々思うところであり、そのへんの脚の細いカニを食う際のお作法について、今回はひとくさり書いてみたいと思うのである。

 今回手に入れたブツは、メッキ釣ってて見つけたのでルアーをガシッと抱かせて、外からの攻めにはめっぽう強いその攻殻も、体の内側?から攻めれば関節の裏の殻の薄い部分とかハリが掛かる攻めどころはあり、そこに掛けてしまうという、カニのルアー釣りとでもいうような方法で運良く手に入れたものである。日本で見られるノコギリガザミには3種類いて、コイツは目の間のトゲが正三角形ぐらいの尖り具合で、ハサミの下の節のトゲが1本長く目立つことからトゲノコギリガザミと同定した。

 ノコギリガザミ類は南の島や東南アジアではお馴染みで、マングローブクラブとか呼ばれて、強力なハサミを無力化するために麻縄とかで縛って売られていたりする。国内でも沖縄のような南の島はもとより、大平洋の黒潮がブチ当たってる地域では産するようで、高知や静岡の浜名湖あたりでは珍重されているようだ。

 デカくて食いでがあると同時に、ハサミがでかくて強力で、このハサミ対策がノコギリガザミ類を食う上では重要になってくる。なにしろ二枚貝を割って食うというそのハサミはデカくてゴツゴツしていて、指でも挟まれたら大ごとで骨砕かれかねない。

 釣り場から持ち帰るのに、とにかく袋なりバケツなりに入れてしまうにしても、ハサミ振り上げて「いつでも挟んだるデ!」と威嚇してくるのでやっかい。今回なんか挟ませておいて、そのすきにウリャウリャとカタをつけてしまおうとしたけど、そこら辺に落ちていた木の枝では、カシュッと挟み切られてしまって全く用をなさなかった、挟ませるなら金属やら石やら堅いモノを挟ませないと意味がなさそう。今回はなんとかひっくり返してハサミ脚を踏んづけたりしつつ、どうにか手ぬぐいで包んで結んで運べる体制とした。ゴミバサミみたいなのを用意して、蓋付きのバケツ系の入れ物にぶち込むとかが一番手軽で楽かも。ただ、釣りしているときにそんな装備は持ってないけどな。

 持ち帰ったら、同定作業で写真撮りつつ、縛ってある間に目方を測ったところ725gと、この種にしては大きいというほどの個体でもないようで、デカいと1キロ越えるそうだけど、それにしたって充分デカい。

 とりあえず調理に使うナベに薄い塩水入れて活かしておいて、しばしネットで調理方法などを検索して調べる。まあ、塩茹でするなら他のカニと一緒だし調べるまでもないんだけど、大きいのでゆで時間どのぐらいかなという目安は調べておきたかった。

 調べてみると、塩茹でより”蒸しガニ”を薦めている方がいて、蒸した方が塩茹でのようにゆで汁に美味しい汁が溶け出すのが少なくてすみ、ミソの周りとかに白く固まるタンパク質のエキス分とかの歩留まりが多くてそれがまた美味しく楽しめる、とのことでちょっと旨そうだなと思ったので、今回蒸しガニに挑戦してみた。まあ、蒸すだけなんだけど、蒸し時間はさすがに大きいカニなので30分程度蒸しておくのが無難なようで、30分でいく。

 と同時に、ノコギリガザミに特有なのかガザミやイシガニついでにイセエビではあまり気にしたことがなかったんだけど、生きてるのを直接蒸したり茹でたりすると、脚を自分でトカゲの尻尾切りみたいに落としてしまう”自切”が多いので、氷水やらで締めてから調理した方がイイとのこと。半信半疑で氷と保冷剤で攻めてみたが、これがなかなか弱らないのよね。

 30分がとこ冷やして、ちょっと触ったらカニ自体も冷たくなってて、大丈夫かなと魚バサミで移動させて蒸し器セットして載っけようと思ったんだけど、氷除けたら普通に暴れ出して、なんとかペットボトルの首根っこを挟ませて、ひっくり返して腹側に保冷剤乗せてさらに氷攻めすること数十分。それでも締まらんがな。とはいえ動きは明らかに鈍くなり、ひっくり返して鍋の蒸し器の上に載せるぐらいはできそうになってきたたので、腹も減ってて待たされるのもいいかげんつらいので、このぐらいでもういいやと手を打って蒸し始めた。

 蒸し器はあらかじめ湯気がシュンシュン出てる状態に温めておいて、カニの両のハサミを持ってバンザイさせつつ、ひっくり返して入れる。当然暴れてハサミとか振り回すけど、蓋で押さえる。どっかの国ではエビカニを料理するとき生きたまま鍋に入れるのは残酷な行為であり違法だとか。まあ残酷だけどさ、生き物食っちまうっていうのはそういうことでしょ。氷締めで殺そうが、釜ゆでで殺そうが食われる側からしたらどっちもイヤだろう。どうせ食っちゃうんだからあんま気にすんなって話だと思う。バカくせぇ。

 そして事前情報どおりハサミ脚を除いて脚を自切しまくる。見事に全部落ちた。

 この時にカニをひっくり返しておくと、美味しいエキス分が、落ちた脚の穴から流れ出る量が少なくて済み、甲羅の中に溜まって熱で凝固するということらしい。

 茹で上がると甲殻類の常で、シャア専用な感じに赤くなるんだけど、ところどころ泥かぶってて事前に洗いたかったところだけど、蒸す前に無力化することができなかったので仕方ない。開高先生が、アマゾン釣行のおり泥だらけのカニ「カランゲージョ」を前にたじろぐ一行に「この泥を見て唾が湧かないようではダメだ」ってなことを言ってたようにおもう。おそらくベトナム取材時とかに”マッドクラブ(泥ガニ)”とも呼ばれるノコギリガザミ類での経験に基づく経験則だったんだろう。曰く”旨い牛を育てる牧草に相当するのが、このカニの場合泥である”とかなんとか。開高先生明らかにカニ好きで、アラスカのダンジネス(イチョウガニ)やニューヨークのブルークラブの脱皮したてのソフトシェルクラブ、冬の日本海の旅館でひたすらズワイガニとか色々ネタに書いておられたのを想い出す。ということで、多少泥かぶってるのを見て唾が湧かないようでは”カニ喰らい失格”だ、ぐらいに思っておこう。

 さーてではいただきますねっ♡(←「ナマジのブログ」史上初のハートマーク)

 喰うんだけど、丸かじりするわけにもいかんので蒸してる間に色々と用意いたしました。段取り大事。

 三杯酢をちゃっと用意して、ハサミが必要なのは当然ながら、蟹の方のハサミが道具の方のハサミで切れそうな代物では全くないので、ペンチでへし割る方針で道具箱からスプリットリングプライヤーを選択、あとはガラ入れのボウルと手を拭く濡れタオルぐらい、蟹の身をほじくるのにそれ用のスプーンとかあるけど、我が家にはないのでほじくるのは普通のスプーンがミソ用で他は箸と指と唇と舌でほじくる。

 まあこのハサミのなんと立派なことよ。閉じた状態で隙間ができるのは、間に貝とか挟んだときに割りやすい形状なんだろうか?ペンチ型の”クルミ割り”なんかも隙間があってクルミを挟んで割る方式なので、ある程度挟みつける部分が閉じて力がかかりやすい状態で、貝なりクルミなりを保持して割るための収斂した形状で同じような原理だろう。

 右と左でハサミの形状が微妙に違ってて、たぶん上の写真で左側になってるハサミがゴツくて”貝割り”担当で、右側が摘まんで口まで運ぶ担当とか役割分担というか利き腕?があるんだろう。まあどっちも挟まれたらただでは済みそうにないけどな。締まった状態で隙間があるので指がちぎれることはなさそうだけど、骨ぐらい割られそう。

 まあ貝殻ブチ割るハサミが貝殻よりヤワなわけなくて、ハサミでは切れん。ペンチ用意しておいて正解。バキバキ割っていくと、ぎっしり筋肉という名の”身”が詰まっていて、とりあえず左右の爪が序盤戦の山場なのは間違いない。味はまあカニなので普通にとても旨い。もちろん爪に続く関節も割ってほじって美味しくいただいていく。脚も細いとはいえ全体的に大きいのでそれなりに身は入っててこれも割ってほじって食べる。

 そしてここからが、今回”蒸しガニ”にしたので一番お楽しみのカニミソとなんかエキスが熱で凝固してベロベロした部分に突入する。表向けていたカニの甲羅を下にして、甲羅と脚やら褌の根元やらの継ぎ目を外す感じでベシベシと押してやって、脚の側をベリベリッと甲羅から外すと甲羅にミソの一部とタンパク質なエキス分が熱凝固した白いべろべろが残り、脚の側にもミソの大部分と白いべろべろの一部が付いてくる。

 ミソは巨体のわりには多くなくてちょっぴり残念だったけど、白いベロベロは狙いどおり沢山できていて、これが塩茹でだとしょっぱすぎたり、苦みが出てたりするんだけど、蒸しで塩分添加無しだと良い塩梅の塩加減で、プルプルとカニ臭いゼラチン質のなんだが下品な旨い物質を結構な量堪能できた。スプーンの出番はここだけで、甲羅の端の方に入ってるのとかもこそげ落として食べたい。スプーンでこそげ落としきれなかった部分は、ミソもプルプルも舐められるところは舐めまくってしゃぶりつくして下品に楽しんでしまうと良いと思っちょります。

 で、ここまで食べると、後残っている可食部は冷凍の脚だけ食ってる民草は知らんだろう、胸(カニの胸がここで良いのか、脚の付け根だからむしろ尻なのか)の肉で、これが結構な量ある。10本の脚を支える胸だか尻だかに相当する部分だからあたりまえっちゅえば、当たり前。

 鰓が乗ってるんだけど、鰓はガサガサした繊維状のしろもので食べられないので取っ払うと、その下に筋肉がつまった薄い殻で覆われた部屋的な部分がドカッと鎮座している。

 南の島では、脚付きで脚一本ずつにあわせてこの部分を切り分けて、中華風にチリソースで炒めて饗されることが多い。

 ここは肉量多い反面、筋肉の間に仕切りが入って”部屋”状態になってるので、その部屋から筋肉を引っ張り出すなりなんなりして食べる必要がある。ただこの仕切りは体の中にあって外側の甲羅みたいに堅くなく、ハサミで切れるし、手でむしれる場所もあるので下の写真のように上手にむしってやると、身がボロッと取れてくる。ただ、全部はなかなか上手にむしりきれるモノではないので、適当にハサミで分解してしゃぶりついて舌も使って身をほじくり出すか、歯で齧り付いてやっぱり舌でベロベロほじくり出すかして殻だけペッペと吐き出すことになる。

 というお作法でぺろりと完食。大変美味しゅうございました。あれだな塩茹でじゃないせいもあるのか、味はけっこう淡泊。泥臭さとかは皆無。肉量はタップリで食いではガッツリで食糧としては極上の部類ではないだろうか。ご馳走様でした。

 で、今回の課題の一つが、脚の細いカニも食うところいっぱいあるよというのをお示しすることであり、それなりに写真も使ってご説明したつもりだけど、今日日なんでも”エビデンスを示せ”とうるさい世の中で、エビやなくてカニじゃ!と言いたくなるところではありますが、数値データで示すのが客観的で根拠としては分かりやすかろうと言うことで、食べきった後のガラの重さを測って、725gのうちどれだけワシの胃の腑に落ちたか、まあ蒸してる段階でチョロッと外に漏れたエキス分もあるかもだけど、そこはたいしたことないだろうから無視して(蒸しガニだけに)ガラ入りのボールが414g引くことのボールが122gでガラは292g。725g引くことの292gで、都合433gの肉とミソと白いベロベロを食べたことになります。普通バーベキューとかするときに、日本人だと肉は一人350g計算で大丈夫と聞いちょります。400g超の動物性タンパク質の摂取は腹一杯満足の数値だと客観的に言えるのではないでしょうか。歩留まり的にもおよそ6割で、魚でもだいたい6割と言われてるので悪くはない。これで食いでがないとは言わせんぞ、どやっ!

 ということで、専門的に狙うんでもなければ、たまに機会が巡ってきたらボーナスチャンス、的なご馳走ではありますが、次回も機会があったら挟まれないように気をつけてモノにしたいと思う所存であります。

2023年9月23日土曜日

針金ベールリールの系譜ーパソコン椅子探偵オリムピック「MOVADO」編ー

  ベールがなんか折り曲げた針金でできてて、針金の弾力でベール反転もおこなうような”針金ベール”のリールについては、大森製コンパック「バンタムⅢ」「シエラⅣ」をいじくって、一回実釣でどのぐらい使えるモノか試してみたいと思ってた。

 ただ、バンタムⅢは借り物でシエラⅣは程度が良すぎて使いづらいので、多少ボロい出物がないか探してたんだけど、これがなかなか出てこない。針金ベールのリール自体は珍しくも無いんだけど、昔の日本市場のスピニングは右巻仕様が多く、左巻きがなかなか出てこないのである。やっと出てきて値段も手頃だったので、このオリムピック「MOVADO」を入手したのはこれもだいぶ前の話である。そこそこ錆も出てたのでCRC「666」をぶっかけて、他の整備待ちリールと共に封印してあったのを打順が回ってきたのでいつものように分解清掃し青グリスグッチャリで仕上げてみたんだけど、このリール実は大森製作所製の”オリムピック”リールなんじゃないかと疑っていたので、そのあたりも検証してみた。

 オリムピックについては、国内では一時圧倒的なブランド力と販売網を持っていて、大森や日吉といった埼玉勢はもちろんのこと、長野の松尾工業にも下請け仕事でリール作らせていたようで、そう考えると同時期のリールでも妙に味の違うリールがあったりして、製造元が違うならそらあたりまえか?と納得するところである。ワシ、オリム製インスプールスピニングでは「トゥルーテンパー727」はしっかり作ってあって好みのリールなんだけど、ヘドンにも同型機をOEMで提供していた「エメラルド350」はなんかスカスカした感触で今ひとつピンとこなかった。作ってた工場が違うならそういうこともあるだろう。まあ、この2機種についてはなんの裏付けもないので案外同じ工場で作ってたのかもしれんけどな。

 というオリムピックのお家事情のなかで、大森製の”オリムピックリール”はどれなのか?というのには興味があった。以前コメント欄で教えていただいたオリムピック「83」のフルベールモデルはコンパック「キャデラックⅢ」と同型機でかつ大森製作所作成の最初の機種なのではないかとパソコン椅子探偵としては推理しているところではある。

 そのほかの大森製”オリムピックリール”の容疑者として、以前から「MOVADO」には疑いの目を向けていて、今回そのあたりもパソコン椅子探偵としては検証してみたいと思っている。ローター周りの処理が写真で見ただけでも似ているし、ハンドルの軸方向への丸い出っ張りとかも大森っぽい。バラしてシエラⅣと比較していけばさらに証拠は集まるだろう。写真右のアズキ色ボディーのがシエラⅣ。

 どちらも針金ベールのスピニングだけど、その針金の”ベールアーム”に相当する部分の曲げ方が直線的ではなく、「7」のように曲線をえがく形状に曲げられており、非常に”癖”が似ている。このことだけでも、疑うには充分であり探偵としてはマークせざるをえないところだろう。どちらかがどちらかを見本に真似したという可能性も充分あるけど、まあここ以外もしっかり隅々までみて真実をあきらかにしていこう。真実はいつも分かったような分からんようなモノでしかなかったりするにしてもだ。

 まずはスプール周り、スプール外すと両機種の板金ローターの形がそっくりなのが見て取れる。これ同じ型じゃないかと思ったけど、微妙に大きさが違っててスプールの互換性とかはない。でも色こそ違えど、本体に乗っける部分が盛り上がってる形状とか、ベール基部の金具を留める処理方法とか癖が一緒。

 ドラグが、シエラⅣともバンタムⅢともまた違う構成で、シェイクスピア「2103」で見たのと同様に一番下にフェルトパッド、その上に曲げワッシャー、一番上が1方向切り欠きありのワッシャーとなっている。曲げワッシャー一番上に持って来たいところだけど、2130でもそうだったけど、なぜかこの単純な構成でいちおうドラグとしての機能は生じさせており、パッドの直径も小さく良いドラグとは言い難いけど使えと言われれば使える程度ではある。まあ使うつもりなんだけど、シーバスならいけるでしょ?って感じ。

 でもって本体パカッと開けてまずは、ハンドル軸のギアが樹脂製じゃなくて亜鉛製なのに安堵する。芯に鉄系のが鋳込んであって丈夫そう。逆転防止のストッパーはギア裏に入ってる。

 樹脂製ギアはギア自体は何とかなるのかもだけど、ストッパーが過去2台見たどちらも潰れたりしてたのでもたない気がしている。亜鉛ストッパーも削れた例は見てるけど、普段はストッパー外してミッチェル式の運用なら何とかなるだろう。

 ロータ軸のギアも亜鉛っぽくてここはシエラⅣ同様の真鍮にして欲しいところ。亜鉛亜鉛の組み合わせは若干不安。

 ギアの素材自体は違うけど、シエラⅣと設計自体は似ているというか、ほぼ一緒なんだけど、微妙に違うところが今回突破口につながった。

 スプール上下(オシュレーション)のピンが主軸に刺さってるんだけど、シエラⅣではハメ殺しっぽくて抜けず、ローターを外すことができなかったけど、MOVADOでは填まってるカラーを外したらピンの頭がマイナスネジになってて、外すことができた。外せば主軸は抜ける。

 すると、次に外せそうなのは写真一番上の矢印の位置の小さなネジで、これを外すと真ん中写真でちょっと浮き始めてる一番上部に襟が付いてるスリーブが、主軸が刺さってた部品なんだけど、ローターとギアごと抜けてくる。このスリーブの上部の襟とロータ軸のギアの上端ローターにナット留めされている部分に隙間ができるように、小さなネジで留めて、ローター軸のギアとスリーブとが接する形で回転している。というわけで、あたりまえだけどボールベアリング不使用機。

 ローターからスリーブを抜けばローターにギアを留めているナットも外せるので外せば分解終了。ちなみにローターにギアを留めているネジが逆ネジなのは地味だけど大森っぽい癖だと思う。オシュレーションのピンもなぜか逆ネジ。

 ここまで分解して、シエラⅣにもスプール外すと上部に襟付きのスリーブが見えているし、小さなネジでそれを留めているのも見えるので、構造ほぼ一緒と思う。これハメ殺しだと思ってたオシュレーションのピンもペンチで摘まんで回したら外れるんじゃないかと試したら外れた。

 そして同じようにスリーブを留めてる小ねじを外せばスリーブ抜けてギアごとローターも抜ける。

 一番下の写真はスリーブがどんな感じに入ってるか、ローターを外して本体にスリーブ刺してみたところ。見えている小穴が本体の穴のあるところまで差し込まれて、小ねじで留める構造。

 ここまで設計が似てる、というか同じだと、製造元は同じと考えるのが自然というモノだろう。

 そんな複雑な設計じゃないので、ミッチェルのフルコピーを高精度でやっちまえるぐらいに技術力があったオリムピックなら真似するの自体は簡単だったと思うけど、自社の海外販売先でもあるブランドで出てたシエラⅣを真似する意味がないというか、シエラⅣをコンパック側(コマースパシフィック社)に納入してたの自体はオリムのはずで、大森は孫請けという関係だっただろうから、他にネタ元があるとかもあり得るけど、少なくとも この2機種においてどちらかが模倣されたとかいうことは考えにくい。普通に考えて同じところで作ってるんだろう。となるとシエラⅣについては大森公式が「うちが作ってました」って言ってたので、どちらも大森製というのが今回のナマジの推理。

 他にも細かい所だけど、足の裏が三本線入ってるとか、大森沼の皆さんなら「ああこれは確かに大森臭いな」とご納得いただけるだろう。

 ということで、大森沼の関係者を集めてくれたまえ。

”オリムピック「80MOVADO」は大森製作所製です”

 ここのところ、パソコン椅子探偵ナマジ、迷宮入り案件続いてて負けが込んでたけど、久しぶりに探偵らしい仕事したかなと。まあ、実際にどうだったかはわかんないもんだけど、状況証拠的には、なんか真実に近いようなところまでこぎつけたかなと思っちょります。

 ということで、分解整備も済んで青グリスグッチャリで仕上げたし、3:1ぐらいの低速機なので、使うならシーバスなということで、2号ナイロンで運用の予定。

 針金ベールは削れて糸溝できそうではあるけど、そこはそれ複雑な部品じゃないのでステンレス硬線でも曲げてたわめて自作できるんじゃないかと思うので、とりあえずどっかで余裕ができたら、今年のシーバス戦線の不調具合を鑑みると出番作れるか不透明だけど、一度どんなもんか使い心地を試してみたい。

 使ったらまた、釣行顛末記とかでご報告いたします。

2023年9月16日土曜日

日本のスイスで作られた枢機卿

  「アタック5000」とか「マクセル700RD」とか、クソマイナーな機種ネタにしてワシが書きたいから書くけど誰が読むねン、って感じだったけど意外に沼の底の住人の皆様方には楽しんでいただいてるのか閲覧者数少なくもないのよね。まあこのあたりの記事が楽しいって人は病膏肓に入ってるハズなのでお大事にしてください。

 そんな当ブログには珍しく今回はABUでっせ、カーディナルっすよ。まあ人気のインスプールやC3、最後のスウェーデン本国製カーディナルの50シリーズじゃなくて、マイナー味のきいた750系ではあるけどな。でも赤いガルシアフラッグもEFマークも誇らしげな名門の血統を、なんでナマジが買ったのかというと、ひとえにTAKE先生の「リール興亡史」が悪いんです。そそのかしやがってからに。

 「リール興亡史」でミスター・ハラが、我らが愛する埼玉の小さなスピニングリール工場である大森製作所の「マイコンシリーズ」とかと、かたやホンダにも部品を納めるような長野の大手ダイキャストメーカーである松尾工業製の「カーディナル753」等とを比較して語っておられて、表紙にもこの2台があしらわれている。

 曰く、松尾のカーディナル750シリーズは、大森製「Σシリーズ(=マイコン)」同様の仕様で価格が60%、軽量で脚の細さなど外観の軽快さも持ち、生産性も良く、品質も整っていて、US市場空前とも言える大ヒットとなる。しかし、業界内での評価はイマイチで、カーディナルとしてはあまりにも安作り、また組み立て部分にガタが多すぎ歯車の隙間を多く取ったギアはいただけない。等と評しており、一方で「ホンダの最新技術をこなす彼社は明らかに違った存在であったはずです。」と開発力の無さと、そういった認識を発注元のブランドが持ってなかったことを嘆いてもいるところ。

 大森に関しては、根っから機械屋的で下請けでも見えないところにもコストをかける。でもシェイクスピアありきで依存しすぎ自ら世界を見ていなかった。との評。で「「大森は・・・・・・」などと私がここで書き始めるのも無意味なほど、その名は良く通っていました。」とも書いているように、大森評はそれこそTAKE先生のような識者の熱のこもった記事から、当ブログのようなマニアックで怪しげな記事、ネットのあちこちで書き殴られている便所の落書きみたいなモノまで多種多様に語られてきている。対して、松尾工業については、ABUも件の750シリーズや怪作860シリーズ、ミッチェルも少々、ゼブコはリアドラグが本体みたいなQMDシリーズとあちこちのリールを作ってるけど、語られることが少ないリール製造元である。国内での販売がオリムピックの下請けで始まってて、自社ブランド品が少なくOMシリ-ズというのがあるようだけど超マイナーってことも相まって、注目も浴びなければネットで探って出てくる情報も限られている。

 そんな、影の実力者の松尾工業の、米国でヒットしたスピニングリールとなれば、米国人好みのリールと聞くと欲しくなる悪癖もあって、欲しくてたまらなくなってしまったのである。アタイ病気が憎いッ!

 でも、ABUだしお高いんでしょう?って安い出物がないか相場調べがてらネットフリマとかチェックしてみると、これが安い。渓流サイズの753とかはまだ値段がついているけど、バスとかシーバス用ぐらいの中型機(実測315g)の754とか3,4千円で買える。同じ日本製カーディナルでも瑞穂製C3、C4のほうが倍近くしている。3千5百円送料込みの出物があったので、ついマウスが滑って確保。仕方ないよね。

 ということで我が家に来てしばし整備待ちだった754、おそらくそのままでも使えそうなぐらい快調だったけど、我が家に来たからには分解整備のうえグリスグッチャリで仕上げてやらねばである。

 ちなみにこの整備前の写真だと、樹脂製スプールが風化しかかってるのか、白く粉を吹いたような表面になってしまっている。この時代の樹脂製パーツにはありがちな現象だと思うけど、これそれなりに見えるようにお化粧可能です。上の2枚目写真とかわりと写真写り良いと思うけどお化粧あとです。そのへんも含めて分解整備、グリスシーリングの様子をいつものように行ってみよう。

 まずは外回りから、スプールはリアドラグなのでワンタッチ付きで樹脂製、主軸に填めるのに裏に十字が切ってある特にどってことのない作り。ハンドルは四角の穴の共回り式でこれまた特にどってことのない作り。ただアルミダイキャストの本体と蓋、ローターはさすがに綺麗にできていて、塗装も良くて見た目は確かにシュッとしてて格好いい。

 そしてパカッと蓋を開けていくと、ギアと逆転防止、スプール上下あたりはほぼ大森マイコン同様で、ローター軸のギアは真鍮製、ハンドル軸のギアは亜鉛鋳造、そしてハンドル軸に軸受けの真鍮ブッシュが填めてある。これは、もともと松尾がガルシアに納めていた750シリーズの元になった機種ではアルミ本体直受けだったのをABUの担当者が真鍮ブッシュ入れさせたとか。ギアのある左の蓋側だけかと思ったら、よく見ると右側の本体にもハメ殺しで入れてあって、黒く塗装されているので最初気付かなかったけど穴を覗くと黒い塗装が剥げて真鍮が顔を見せている。

 逆転防止機構は、大森方式のローター軸のギア直上に設けるタイプで歯車も爪もステンの打ち抜きで丈夫そうなのは良いんだけど、マイコンみたいに静音化の仕組みがないので巻くとカリカリ音がする。別にこの時代のスピニングなので鳴っても良いんだけど、これが薄くて均一で質の良いアルミダイキャストボディーのおかげかやたらと響く。管釣りで隣の人に「カリカリうるせぇ」と怒られるタイプのリールである。ワシうるさいのはあまり気にならん人種だけどさすがにこれは気になるぐらいで、あとで音量落とせるかも試してみよう。

 でもってスプール上下のオシュレーションスライダーが忌まわしき”Cクリップ”で留められているのはワシ的には減点対象。

 リアドラグも外から見ると大森マイコン方式に見えるけど、ドラグワッシャー、ドラグパッドはドラグノブ内ではなく本体内に位置していて、ここは大森が特許押さえてたからってのもあるだろうけど日吉スピードスピン系にむしろ似ている。

 ローター周りに移ると、まずはローター軸に1個のボールベアリングを留めているクリップが、先っちょに穴があるオリムピックでよく使われていたタイプで、リール製造をオリムの下請けで始めたころの癖が残ってるのかなとか想像すると面白い。

 ラインローラーはステン無垢の直受けっぽいけど素材ちょっと自信なし。内側に真鍮が見えてたりしないので無垢素材かな?ぐらいしか正直分からん。

 ベール反転機構は4桁PENN中型機とかと似た感じの2つの部品で連携する方式。そして、蹴飛ばしの方が銅製の”簡易ローターブレーキ”付きなのはこの時代の日本の中小リールメーカーの特徴か?まあ松尾工業自体は大っきなダイキャスト部品会社で中小ではなかったようだけど、そのへんは”OEM(相手先ブランド生産)”という名の下請け仕事が多かったから、発注元ブランドの要望ということだったのだろうか。

 でもって最後にリアドラグ。

 やっぱり本体内にドラグパッド等は入ってて、赤い繊維製のパッドが2枚、テフロン製のパッドが2枚の4階建て構造。ドラグノブで締めるネジの付いたアルミか亜鉛の円筒状の部品には中に調整幅を出すための太いバネと、外側に謎の細いバネ、脱落防止にはコの字のクリップが填められている。

 本体内にドラグの本体が入ってるのは日吉的だけど、ドラグノブ締めるネジ付き円筒状の部品のあたりは大森っぽくもあって両社の混血のような感じになっている。日吉方式のバネを弾力のある樹脂で代替する方式は部品が小さくて優秀だなと改めて感じるところ。

 今回も、ドラグ値はしっかり締まるより低い値での安定と調整幅を重視して赤い繊維製のパッドはテフロン製のに換装した。赤い繊維製のパッドは腐ってボロボロになったのを見たので換装したくなるというのもコレあり。

 でもって、グリスグッチャリで組み上げつつ、宿題になってた「かしましいストッパーを静かにさせる」「白く粉を吹いたようになってる樹脂製スプールの表面のお化粧直し」をやっつけるんだけど、どちらもいつもの青グリスでどうにかする。
 
 ストッパーのかしましいカリカリ音は、本体に響くのを少なくするという方向性で上の写真の様に特にグリス多めでグチャッとさせる。ストッパーの爪の動きも遅くなるだろうし、グリス詰まってれば音も響きにくくなるだろうという読みだけど、結果としては、若干音がくぐもったかな?程度にしかならんかった。まあワシ的にはこのぐらいなら許容範囲だけど、隣の人にカリカリうるせぇって怒られたら、逆転防止を切って”ミッチェル式”で使うか?

 樹脂の表面が白くなってるのは、それ用の”磨き剤”が市販されているけど、塗布して拭いた瞬間綺麗になってオッとなるけど、乾くと元の木阿弥で、ならばしっとり湿った状態を保ってやれば良いんじゃないか?という発想でグリス塗ったくってティッシュでベタ付かない程度に拭き取ってやったところ、これは上手くいった。樹脂製スプールに防錆グリス塗る意味はないと思ってたけど、表面の粉拭いたようになってるのはごまかせるし、酸化か加水分解かしらんけど腐蝕しつつあるのが原因だろうからそれを防止するにも意味あるかもしれん。まあ見た目綺麗になるだけでも塗っておくべきだろう。

 という感じで仕上がって、ドラグもまずまずだし機関も快調、出番作れるかリアドラグ機も増えたので2軍待機だけど使えないリールではなさそうに思う。ガタが大きいかどうか?は正直クルクル回しただけではワシには分からん。普通に滑らかに回ってるように思うけど、使い続けると耐久性とかに差が出るのか?まあ実用上不具合があるぐらいに耐久性に難があると米国では評価されないから、それなりに大丈夫な性能なんじゃないかと思う。

 リアドラグ機を何台かいじくって、ブッコミ泳がせとかで実釣にも持ち出して、それなりに使えるし、面白くもあると感じている。リアドラグの後に樹脂製ロングスプールの流行が来て、その後本体金属製に戻って諸悪の根源”瞬間的逆転機構”の搭載がスピニングリールの歴史的流れとしてはあったんだろうけど、リアドラグ機の流行った時代には、すでに近代的なスピニングリールの基礎技術はとっくにできていて、快適に釣りができる性能は備えていたんだと感じるところ。

 リアドラグ機に限らず、古めのリールでも魚釣るのに問題はなく、バス釣りはベイトリールが主体なのでアレだけど、シーバスとか道具ぐらいもっと遊べば良いのにと思う。シーバスに使うようなスピニングで実釣に関わるような性能なんて、差があるとしても、どっちが良いって話じゃなくて得手不得手の範疇であり、たとえばリアドラグ機のドラグ性能が多少劣るにしても、釣ってるときにドラグいじって楽しもうと思えばそこは利点と”行って来い”の関係であり、その違いを楽しんでしまえば良いのにとつくづく思う。シーバスマンはもっと遊ぶべきだと思う。特に今時のキンキンの高感度の竿に伸びないPE、整備性が悪い雨の中で使うのをためらうようなリールというシーバス釣るのにまったく向いてないような道具を使わされている多くのシーバスマンにそう教えてあげたい。ぶっちゃけ騙されてまっせ。

 あと、マニア筋にも苦言を呈するなら、誰でも知ってるような評価の高い機種をありがたがりすぎ。相変わらずキャリアーSSとか何万円もしてるし、インスプールのカーディナルとかもお高くとまってる。特定の機種しか知らんのかマイクロセブンCSとかシェイクスピア2052とか得手不得手的なところはあるにしても劣ってると思えんけど、安っすく買えまっせ。まあ、ワシらみたいな”スピ熱患者”みたいに片っ端から自分で試してたらえらいこっちゃになるけど、他人の好みをアテにしすぎ。自分の好みぐらい自分で決めろとお説教しちゃう。やだやだ昭和のジジイは説教臭くてって自分でも思うけどな。

2023年9月13日水曜日

神か、武一先生を連れて行ったつまらん男さ

  「コブラ」で知られる寺沢武一先生が8日心筋梗塞で68歳で亡くなられたとの訃報が・・・謹んでお悔やみ申し上げます。

 刺青に宝の地図を隠すといえば、今時のマンガアニメ好きは「ゴールデンカムイ」を思い出すんだろうけど、ワシら昭和のオッサンオタクどもはコブラに出てくる、古代火星文明の秘宝のありかを示す地図が背中の刺青に隠された美人3姉妹を思い出すわけである。

 先生68歳とまだお若いことにネットのオタクどももちょっと驚いていた。何しろ齢50代のワシが小学生の頃に読んでた少年ジャンプにコブラは掲載されていたぐらいで、えらい若いときに描いてたんだと驚きを隠せない。それほど代表作の「コブラ」は完成度が高く、なんというかちょっと少年マンガにしては大人びていて、セクシーでカッコ良くて、渋いおっさんが執筆してたという印象を勝手に持っていた。

 なにしろ3姉妹のドミニクが普段着として履いているパンツは、今時のズボンを表すほうの”パンツ”ではなく、そのまんま下着というか水着っぽいデザインでかつ、当時言葉も一般的でなかった細い”Tバック”だったのである。田舎のクソがきであったワシら大興奮して、こんなエッチなもんマンガで描いてて怒られないのか?と驚愕すると共に件の品は「ドミニク線パンツ」という呼称で呼び交わしていたものだ。

 武一先生は好きなマンガ家を聞かれたらあげる一人なぐらいで、どうにも好きで当ブログでも「カゲロウ山」とかつい最近も人工知脳が人の相棒となる事例として「アーマロイド・レディ」を例に出したりと、小ネタにさせてもらっているし、影響も受けてきた(レディはアンドロイドに人の精神記憶をインストールしたもので人工知能とは違うか?)。

 なんというか、登場人物がともかく格好いいんだこれが。一番印象深い話をというと、金なんかより相棒や一族の誇りの方が価値があるっていう痺れる結末の「カゲロウ山」も候補だけど、アーマロイド・レディがコブラと宿敵クリスタルボーイの闘いの際に宇宙が先祖返りしたときに機械がレディ含め全て生物になってしまって闘いが終わって、生物のままならコブラとずっと恋人同士でいられるのに、その選択を捨て「この時を永遠に憶えておくわ」的な台詞をのたまうシーンかな。少年のころは全く理解できなかったけど、五十路越えると、その一瞬さえあれば何もいらないというぐらいの永遠にも勝る瞬間があったりするのも、それなりに分かるようになって、ワシも大人になりましたよ武一先生、と感慨深い。(追加註:読み直してみたら「この一瞬を胸にきざんでおくわ」だった、さすが本家の方がセンスが良い)

 コンピューターグラフィックスを作画に取り入れたりとかの先進的な取り組みにも積極的で、SF的な世界観とあわせてワクワクさせてくれたり、写真と作画を融合?させたガンドラゴンシリーズでは失礼ながらズッコケさせてもらったりもした。

 先生の作品のなかでは「コブラ」がダントツに人気で、いまでも多くの台詞がネットミーム的に使われていたりするけど、他の作品も総じて面白くて「ゴクウ」のあらゆる情報回線に接続可能な”神の目”とか、サイバーテロでインドの都市が電気止められたとかが現実に起こる時代になって、武一先生の作品世界の技術やらが現実になってきたなと、不安も覚えるけどわくわくもしてしまう。ちなみに”ドミニク線パンツ”は1990年代ぐらいには既に現実世界で流行を見ている。

 コブラの宿敵クリスタルボーイが敗北したときの「そんな手が残っていたとはな!」の台詞は結構使ってるけど、状況がよっぽど整わないとクリスタルボーイの台詞とは気付いてもらえないのが悩みの種。作中ではまさにコブラは手(拳)をサイコガンで飛ばしてエネルギー弾を無効化する特殊なクリスタルボーイの体に大穴開けたわけで、宿敵も洒落た台詞を吐きやがるんである。

 想い出しているといくらでも書けてしまうのでこの辺で切り上げよう。

 武一先生、面白いマンガをありがとう。あの世でコブラと「タルカロス」でも酌み交わしながら、安らかにお眠りください。

2023年9月9日土曜日

スズミとD・A・Mと私-パソコン椅子探偵スズミ編-

  スズミ「マクセル700RD」を買ったのは、ブッコミ泳がせ用のリアドラグ機を探してて目についてしまい、ワシの愛用するパックロッド、スズミ「NEW WAVE MINIPACK 10号210」に合わせたらブランドおそろいで素敵かもとマウスが滑ってしまったのである。しかたないよね。200グラム切るぐらいの小型機でブッコミ泳がせとは縁もゆかりもないけどまあいいさね。

 我が家に来てすぐに、状態も良かったので実戦投入。無事お魚も釣れて入魂済みではあるけど、どうせ使うならガッチリ整備して青グリスで耐塩対策しておいてやるか、中身も見てみたいしな。ということで今回リアドラグ3連発の2発目にコイツを分解整備してみましたとさ。ちなみに使ってみた感触としては”普通”である。まあこんなもんかなという感じで悪くはないけど特筆するほどでもないと思う。

 スズミっていうブランドは、上州屋の竿ブランドっていうイメージがあって、たぶん竿の工場自体はどっかに持ってるのかもしれんけど、リールは新興工業国のリール屋さんにスズミブランドで作らせてたOEM主体のような気がしてて、なんか製品に統一性がないような気がする。というのは、今回入手したマクセルシリーズ、700サイズは見たことがないけど、2000とかもうちょっと大きい機種では、まったくの同型機で、貼ってあるシールが違うだけの、スズミ版とD・A・M版が存在しているのである。川崎に住んでたとき近所の黄色いお店でD・A・M版マクセルをワゴンに見つける度に「オッ、ダムのリールやんけ!」と手にとって銘板とかの「KOREA」の文字を見て「なんやドイツで作ってないンか」とワゴンに戻してきた経験がある。耄碌ジイサンたぶん同じ個体で何回かやってた。

 上州屋と関連の深い韓国メーカーといえば、韓国大森とシルスターである。ということは、それらにスズミブランドで作らせていた可能性もあるし、それ以外のメーカーの可能性ももちろんある。D・A・M社に収めなかったものやら、同じ金型流用でスズミブランドで売ってしまえ!というようなのがあったのかもという、ある種バッタモン臭さもちょっと臭ってくる。

 そのあたり、パカッと開いて中身を見てみてみれば、なんか見えてくるモノがあるかもしれない。パソコン椅子探偵は必要な証拠を押さえてその正体にせまれるのであろうか?まあやってみましょう。

 外回りみていくとまず、本体金属でスプールは樹脂製ワンタッチ。ちょっと錆出てて分解整備にかけて良かった。ハンドルは軸が四角の共回り式で、この時代のスピニングでは標準的な仕様といった感じ。

 ドラグはお尻をネジで止めており、おそらくドラグノブの部分にドラグが入っている大森方式っぽい。

 パカッと本体蓋を開けてギアとかスプール上下(オシュレーション)をみていくと、まずハンドル軸のギアが亜鉛鋳造なのはまあ良いとして、特に軸受けにベアリングやブッシュは填まってなくて本体のアルミで直受け。これは長期的には削れそうな気がするところ。

 オシュレーションは単純クランク方式なんだけど、オシュレーションカムを主軸に止めるのが忌まわしいCクリップではなく、大森式に板を曲げて作ったカパッと填める方式なのは良い。ネジ留めしてないマイコンTBシリーズと同様の方式。

 ローター軸のギアは真鍮、ストッパーは鉄系の丈夫そうなのが付いてて安心。このへんは大森の影響があるようにも見える。大森製作所は上州屋に吸収されているから、同じ上州屋つながりでスズミブランドにも技術が流れてるとかか?スズミのリールがOEMで”自社製品”でないならあんまり関係ないか?

 逆転防止が、なんと前回の「アタック5000」で使われていたのと同様のハンドル軸ギアに填める2枚板が突き出る樹脂製部品が出てきて、なにがしかの関係あったことが疑われる感じで、考慮すべき要素が複雑になってきて真相が分かりにくくなってきた。

 樹脂製部品の2枚板は足の付け根のネジ留めされた爪部品から出た出っ張りを挟んで上下?させる構造になっており、えらく遠くからストッパーの爪を動かしているので、アタック5000の逆転防止と印象は異なるけど、ストッパーの爪から伸びた突起部をハンドル軸に填まった樹脂製部品から突き出る2枚の板が挟んで、正回転時に爪をラチェットから離して巻くとき静音化、逆回転時には爪をラチェットに押しつけてストッパーを掛けるという仕組み自体は基本一緒。こういう細かい部品がほぼ一緒というのは、同じメーカーで作ってる可能性が高いように思う。アタック5000のときに候補にあげた、韓国日吉、韓国大森、シルスターで上州屋と関係が薄い韓国日吉は無しと考えて良いかも。ただ、韓国大森、シルスターの2社に絞られたかというと、他のメーカーやら下請け工場やらの存在まで知ってるわけじゃないので、よく分からん状況にあまり進歩はない。「リール興亡史」によると1988年当時で「韓国リールメーカー中ナンバーワンとみられる」と書かれた「ソウル・フィッシング」社の供給先として「1ゼブコ、2シマノ、3DAM」となっていて、このメーカーも候補になるだろうけどいかんせん「ソウル・フィッシング」製のスピニングがどういうものか、現物案外目にしてるのかもだけどコレっていうのを見たことがないので判断材料がなさ過ぎる。

 ローター周りにいくと、ベアリングはここに1個だけ。輪っかで留めている。蹴飛ばしは本体上部の出っ張りが直に蹴る。ベール反転機構はやや大森似のL字の金具1本とバネで構成される方式。

 ベールスプリングは普通の2回巻きトーション式。ラインローラーは真鍮にクロムメッキで直付け方式。と特段変わったことのない構成。

 最後にリアドラグ。ここに来てマクセルに裏切られる。主軸にオシュレーションカムを留めるのにCクリップが使われてないことを賞賛したのに、リアドラグにCクリップ使ってやがった。一番上の写真の矢印の所に填まってるんだけど、またこれが外しにくくて、なんとか外せたらお約束で跳んで、おでこに当たってお盆に落ちたからよかったものの、やはりCクリップとはワシ相性が悪い。なぜここにCクリップが使われているかというと、ドラグ緩めてノブをグリグリと回していったときにバネがが入ってるネジ状の部品が脱落してしまわないように止めているのである。二枚目写真の丸で囲った部分がネジ状の部品とその中に入ってるバネ及びCクリップで、左側の固まってるのがドラグのパッドとワッシャーのユニット。バラすと3枚目写真のような構成になってる。大森マイコン系ではドラグノブは1回転すると止まるように本体とノブに出っ張りが設けられていて落っこちないようにしてあるんだけど、これだと調整もノブ1回転分しか効かないので、その1回転分でフルドラグなギッチリ締まるのを重視するか、緩めのドラグ値の調整しやすさを重視するか、事前に好みでセットする方式。でもこの最後脱落防止にCクリップが填まってる方式だと、Cクリップまでドラグノブを後退させて緩めた時にユルユルにしておけば、締めていく際には止めが入らないので1回転を越えても締めることができる。とはいえ1回転の範囲でどうにかする大森マイコン方式で実用充分なので、Cクリップが外しにくいのはワシャ好かん。好かんけど落っことすのも困るのでCクリップまた填めておいた。填める前に小型機なのでドラグ緩めの調整がし易いように若干いじくった。元のドラグパッドの構成は左から赤繊維性1枚、同2枚、表面固めた繊維性1枚、同1枚、の4階建てで、たぶんキッチリ締まるように赤繊維パッド2枚で摩擦と厚さを出してるんだろうけど、ユルユルにするには赤繊維性パッドより滑りが良いパッドの方が良く、かつ厚さも減らした方が良いはずなので左赤繊維1枚をテフロンに、次の赤繊維2枚を1枚薄いテフロンに交換。PENN純正グリス湿式で仕上げた。まあまあ問題無いドラグ性能だと思う。リアドラグはドラグ性能良くないと言われるけど、ちゃんと整備したらよほど細糸使うとかでなければ問題無いぐらいにはなる。

 あとは、海で使うのでお約束の青グリスグッチャリのグリスシーリングで組み上げていっちょ上がり。

 結局、コイツはどこが作ったリールなのか?っていう推理はまたも迷宮入りっぽくなっている。

 ドラグをドラグノブの部分に収めるのは大森の特許だったはずで、それが堂々と使われているのは、大森が無くなった後の気がする。韓国大森が作ってたっていうにはちょっとらしくない部分が多い。ついでに前回のアタック5000も同じ会社が作っていると仮定して、日吉の癖が見て取れるのとかもあわせて考えると、大森やら日吉の人材やら金型やら技術やらを引き継いだ会社が作ってると考えるのが自然なように思えるんだけど、じゃあその会社ってどこよ?ってなると、シルスターはCX50で見たように大森っぽい技術を引き継いでるので候補だと思うし、DAMの下請けやってたというソウル・フィッシングも候補にはなるだろう、ただ前述したようにそれ以外のメーカーやら工場やらもあっただろうし、絞りきれるほどの確信的な情報には今回もたどりつけなかった。パソコン椅子探偵ナマジ、連敗中でアタイ悔しい。

 ということで、これまたなにか情報お持ちの方、タレコミお待ちしております。

 まあ、可愛らしい大きさでちゃんとしたリアドラグも付いてて、ハンドル軸周りとかが摩耗して逝ってしまうまではまだまだ使えると思うので、使って楽しむ分には良い感じかなと思っちょります。

2023年9月2日土曜日

ATTACK5000-パソコン椅子探偵コリアわからん編-

 ずいぶん前に買ったのを遅ればせながらいじくっている。どれから整備、修繕するか打順を組んでるんだけど、使う予定があれば打順繰り上げとかもするけど、基本買った順番に整備していくことにしていて、このリールを買った5月頃ワシの中に韓国スピニングブームとともにブッコミ泳がせとかの実釣想定でリアドラグブームも来ており、打順はここから3台ほどリアドラグが続く予定。

 その、一発目は「ATTACK5000」。って言ってもほとんどの人は初めて目にする機種だろう。ワシもネットオークションで見つけるまで見たこともなければ興味もなかった。なんでそんな知りもせんかったようなのを買ったのか?見た瞬間「アッこれ韓国日吉釣具製や!」と思って反射的にマウスが滑ってクリッククリックしてしまったのである。

 なんで韓国日吉だとパソコン椅子探偵ナマジは推理したのか。

 一つ目は、ローターの下の方に出っ張った帯があるのが韓国日吉製のゴールドスピンと同様。写真一番上でわかるだろうか?スプールのスカートが下がりきる位置よりちょい下ローターの腕?が立ち上がる高さに出っ張りがある。この位置だとスプール上下の邪魔にはならんのであっても良いけど、特に必要性があるようにも思えないので、こういうデザインの癖なんだと思う。雨除けとか多少意味あるのか?ないよな?って感じなので設計的に意味があれば”収斂”でたまたま同じになったとかもあり得るけど、これは同じところで作ってる気がする。

 もいっちょ地味だけど、逆転防止のスイッチを切ると赤いポチマークが出てくるんだけど、これが剥げ落ちないように凹部に赤ポチなのも細かい癖がいっしょっぽい。

 でもって、足裏に「KOREA」とあり韓国製とくればコリァ韓国日吉製だよなと迷わず確保に走ったわけである。ちょい大きめの大森で言えばNo.3サイズ、PENNなら4500ぐらいでたぶん入札ワシだけだろうなという予想どおりで開始価格の1000円落札の送料657円で確保。ちなみにブランド名製造メーカー名とおぼしき表示はどこにもない。

 コリァ良い買い物だったわいと思って、我が家に届いてみてちょっといじってみたら、コリァ韓国日吉製じゃないかも?と推理に疑問符がつき始めた。

 外観と、左ハンドルにするのにハンドル外しただけで、まずリアドラグの方式が、ゴールドスピンだと本体にドラグが入っててドラグノブのお尻にはネジが来ないんだけど、ATTACK5000のお尻にはネジがあり、どうも大森マイコン方式でドラグノブの中にドラグが入ってる気配。

 そして、なんといってもハンドルのネジ。ハンドルはねじ込み式で左右両用なんだけど、ネジの方式がゴールドスピンは左右で太さを変える方式なんだけど、こいつは大森みたいに同軸状に左右のネジ山が切られている。かつ、大森のとも微妙に違って、大森だと先端のほうはネジ山の削れたような棒状になっているけど、その部分はなく先端が丸くなってる、逆に根元の方に折り畳みの関係だと思うけど両側削られた部分がある。

 コリァちょっと製造元の推理は一筋縄ではいかんぞと、分解したらある程度ヒントが出てくるだろうから、またその時パソコン椅子探偵ナマジの出番だなととりあえず整備待ちの箱に入れてソッ閉じしてはや数ヶ月。今回分解整備とあいなったわけである。ちなみにネット検索でもどうにも素性が出てこない。

 スプールはワンタッチ付きの樹脂製でまあ普通。で、パカッと本体蓋を開けると、意外それは本体蓋樹脂製、って感じでせっかく金属製本体なのに力のかかるギア側を樹脂製にしてるのはいかんとも、このへんはただの蓋ならと軽量化のため蓋を樹脂製に変更したPENN「スピンフィッシャー714Z」あたりとは違ってうかつな感じではある。しかしながら軸受けはこちらに重点を置く必要性があるのは認識しているようで真鍮製のブッシュがハメ殺されていて摩耗対策されている。逆側は本体のアルミで直受け。まあ樹脂製だから問題生じるほど強度面劣るかっていうと、たぶんこのクラスではそんなことないだろうから良いのか?ちなみにハンドル軸のギアは亜鉛で軸は鉄かステンっぽく、ローター軸のギアは真鍮製。ローター軸のギアの形状的には角が立ってて大森よりは日吉的。

 でもって、ハンドル軸のギアをヌポッと抜くと、逆転防止の仕組みがちょっと独特。

 逆転防止はローター軸のギア直上に填められた、ステンレス打ち抜きっぽい丈夫なラチェットに爪を掛ける方式なんだけど、大森式でバネで爪を押しつけてるんじゃなくて、ハンドル軸のギアの下にカパッと填めた樹脂製の部品に任せている方式。

 マイコンとかでもカリカリ鳴らない静音化のパーツとかでこの位置に樹脂部品入ってるけど、それよりもっと単純明快な仕組みで、下の写真見てもらうと分かるだろうか、指で摘まんでる本来ハンドル軸のギアと一緒に回る部品から2本の板が伸びていて、その間に逆転防止の爪の後ろ側の突起を納める形で運用する。逆転防止スイッチON状態で、正回転時には樹脂部品は左に回ろうとして爪をラチェットから遠ざける方向に押すので、ラチェットと爪が当たらず音が鳴らない。逆転時には樹脂部品は右に回ろうとするので爪がラチェットに押しつけられてストップがかかる。小っちゃくて壊れそうな樹脂部品にまかせっぱなしだと、樹脂の板が折れたときとか逆転防止がどうにもならなくなるのでやや不安ではあるけど機構として単純な点は悪くない。ちなみに逆転防止スイッチOFFだと爪がラチェットから遠ざかる方に押し下げられてラチェットに爪が掛からなくなり逆転する。

 そしてワシがこのリールを大いに評価する点は、オシュレーションカムを主軸に固定する方式がワシの大嫌いな”Cクリップ”ではなく、大森「マイコンTBシリーズ」方式の両側まとめる金属板を使う方式で、かつカムの上にネジ固定しており、そこはシルスター「CX60」と共通している。写真右のオレンジの丸で囲ったのがその部品。マイコンSSでもゴールドスピンでも主軸に填まるCクリップには煮え湯を飲まされトラウマ(「トラウマ」とは心理的外傷のことで、古代中国明の時代の武人であった馬漢が撤退戦において山中で虎に襲われ錯乱した愛馬にも蹴られたことから、命からがら逃げ延びたあとも度々思い出して恐れた故事に由来する。参照:民明書房「いやん馬漢!」)になってるので、この方式を採用しているのは大変立派。ちなみにオシュレーションカムに刺さる下の亜鉛製の歯車の出っ張りにはちゃんと真鍮製のカラーが填めてあって、古き良き日本の中小リールメーカーの丁寧な仕事ぶりが韓国にも伝承されている様がうかがえる。

 主軸も抜けたのでローター外すと、わりと手抜き系のベール反転機構がぶち込まれている。ローター軸のギアは上には抜けず下に押して本体内に落とすと外せる。さっきも書いたけど真鍮製でストッパーはステンレスでしっかりした作りで良い。ベール反転機構は大森にやや似ていて、ベールアームと反対側にバネで引っ張った金属パーツがきて、コイツを本体側の”蹴飛ばし”が蹴るんだけど、大森とかのように簡易ローターブレーキは付いていない。本体の金属を凸らせて直に蹴る。そしてベアリングはローター軸に1個と潔く賢い設計なんだけど、ちょっと変わってて樹脂製。ネジ留め2箇所で填められている。玉はステンのようだけど強度のマイナス面と錆に強いプラス面のどちらが効いてくるのか、このへんは使ってみないとなんともいえないけど、回転の軽さ自体は何の問題もなく滑らかに回っている。回転バランスも良い。

 ベールアーム周りにうつると、ラインローラーは真鍮にクロームメッキでスリーブ無しの回転式。ここも日本の中小リールメーカーに習って樹脂製スリーブ入れて欲しいところだけど、真鍮にクロームメッキの回転式ラインローラーは案外削れないのか、いまのところ真鍮系のスリーブ無しラインローラーで削れた経験はない。まあ丸ABUの”C”の付かない機種とかスプールの軸受けがボールベアリングじゃなくて銅製ブッシュ使ってあるけど、あれが削れるってあんまり聞かんから堅いステンとかの素材と真鍮の組み合わせの回転部は大丈夫な気がしている(当社比)。

 でもってベールアーム。パッと見て「細くない?」って疑問に思うかもだけど、なんか細いです。しかも樹脂製で大丈夫か?って思ってたら大丈夫じゃなくて、細いベールアームの限られたスペースにベール返すバネを突っ込む穴を開けているので、強度が足りずに分解清掃終わって組むときに変に引っかけてしまったら表面的に欠けてしまった。穴は深くてベール返す機能的には正常でまだ大丈夫だけど、滑らかに回らなくなるかもしれないので、欠けた表面に瞬着塗ってティッシュ押しつけて固めてアートナイフで削って形だけ整えておいた。長期的にはやや強度面が心配な箇所。なんでこんな細くしたんだろ?ラインローラーも直径小さめでベールアーム全体的に軽く小さくなっていて、その辺、回転性能を意識してならたいしたもんだけど、たぶんなんか格好いいからシュッと細くしただけとかのような気がする。

 ベールアームが折り畳みできるのはワシ的には加点要素。でもってその方式がコレまで見たことない方式で、使用時はベールアームは矢印のところで折り畳みの金具に止められる。これをポチッと押すと金具は下に板バネが付いていて下にさがって、矢印のところが下がってベールアームの凸部がその上を越えてベールを畳むことができる。という方式。ベール畳めるのは自転車釣行でリュックに入れて運ぶときベールワイヤーとかが曲がったりしないし携行に便利っていう利点ももちろんあるけど、ワシぐらいのスピニング熱患者になると、蔵に収納するときに畳んで省スペースになるのも重宝する。なにしろ現時点で188台もござるので場所取るのよ。なんか台数目標あったんじゃなかったかって?ハッそんな昔の話は忘れたゼ。

 で最後はドラグ。これは明らかに大森方式でマイコンとかと似かよってる。素材がちょっと違ってて、写真右上の方バネが入ってドラグノブのすぐ下に入ってるネジ切ってある部品はアルミでこれは大森だと樹脂製。そして左上から4枚がドラグパッドなんだけど、最初の本体と左下の音出しも兼ねたドラグの円盤部分を束ねる部品の間のだけ白いテフロン製で、他の3枚は赤茶のファイバーワッシャーみたいに見えるけど、これ大森リアドラグ機のドラグパッドに独特の繊維性の素材の表面を樹脂で固めたような素材で色は白じゃなくて違うけど触った感じでは似たような素材。でもって、グリスも塗って湿式で組み上げてドラグの具合を試してみると、非常に滑らかで調整幅もそこそこあって、今までいじったリアドラグ機の中では一番良いドラグだと思う。ほぼ大森方式踏襲で何が違うのか不明だけど、ドラグパッドの謎素材が同じようでいて進化しているのか、最近PENN純正グリスをドラググリスに流用してるんだけど、ひょっとしてドラググリスとして”使える”とは目にしてたけど、それどころではなくPENNグリス優秀なのか?原因分からんけど、良いドラグということが分かってれば使うのには困らないしまあいいか。

 ちゅう感じで全バラしして、なぜかグリスがそれほど劣化してなくて、さすがにギア周りはパーツクリーナーで脱脂してグリス塗り直したけど、本体とかはティッシュで拭けば落ちる程度だったので拭き拭きして、青グリス盛り盛りでいつものように仕上げておきましたとさ。外側もグリス塗ったくって拭いてたら蓋の樹脂に貼ってあった銘板が剥げて、そんなところは古き良き日本の中小リールメーカーの仕事ぶりを踏襲せんで良いのにとぼやきつつ古い接着剤のカスを剥がして”コニシのSU”で貼り直しておきましたとさ。

 で、大きさとしては最初書いたように大森No.3級で重さ測ったら約350g。今ブッコミ泳がせ要員として準備してたり使ってたりするのは、ハモ想定の港内用が4.5mの磯投げ竿と組んで使ってる大森「マイコンNo.202」で3号ナイロン運用。で、もうちょい大きいのも青物も想定されるポイント用には、さっきも出てきたけどシルスター「CX60」で4号ナイロン運用でたぶん竿は青物狙いで使ってる軽い方のブローショット10fと組ませる。今回のアタック5000はその中間の大きさだけど、どちらかというと糸巻き量的に4号でイケる感じなのでナイロン4号運用でシルスターとどっちが良いか比べてみたい。魚釣ってみんと釣り具としての評価はできないけど、スピニングリールの機械としての全体的な完成度はアタック5000の方が良い、っていうか不安要素はベールアームの細さと逆転防止の樹脂パーツの強度ぐらいで他は良くできているように感じるところ。かなり完成度は高いように感じる。

 にもかかわらず、コイツがどこが作ったリールなのかは推理にアタックしてみたけどお手上げでございました。日吉のようで日吉でない、大森というには決め手に欠ける、シルスターかと聞かれればこれも根拠に欠ける。結局このあたりの、日本のメーカーが韓国工場作って、その技術やら技術者やらが伝わったり真似されたり、交流があったりなんだりで、韓国でリールの製造が盛んになった結果、出て来た製品で箱書きもなければ、数も出なかったのかネット情報も引っかかってこないようなブランド名も聞いたことないようなリールについては、なんか資料か生き証人でも出てこない限り、リールの構造やらからだけでは推理しきれん!とパソコン椅子探偵ナマジ、またしても敗北宣言でございます。

 どなたか、情報お持ちでしたらいつものごとくタレコミお待ちしております。