2015年5月31日日曜日

ほの暗い海の底へと -鈍器あるいは文鎮のようなモノ-

 ルアー図鑑うすしお味第7弾、引き続きメタルジグです。


 私がGT戦線に参戦して南の島に行き始めたころ、どうもそういう南の島の珊瑚礁の外海の急に深くなっているあたりに、デカいジグを沈めてしゃくってやるとイソマグロとかカンパチのデカイのが食ってきて、これまた凄いのが釣れたりするらしい。ということがつぶやかれ始めていて、GTやりにいくならボックスに200グラムオーバーのジグもいくつか入れておくといいよと釣具屋さんに勧められて買ったのが、こいつら我が国ジギング黎明期のスーパーディープ用メタルジグ達です。一番下のブランカ40グラムは大きさ比較用で、上からヨーズリ社メタリックサーディン、ルーハージェンセン社クリップルドヘリング、同社Dスティンガーの3種で、ルーハーの2つは10オンス(280グラム)の表記、メタリックサーディンも200g以上の重量です。今の釣具屋の棚に、ありとあらゆる重さや形、色の日本製メタルジグが並んでいる様からは想像できませんが、20年ほど前は200グラムオーバーの深場用のジグなど国内向けには作られていませんでした。
 ヨーズリのメタリックサーディンの大型も、実は、日本のルアーマン向けにと、時代の先端の釣りであったディープジギングに対応していち早く開発した、とかではなく、輸出用で元々あったものだそうです。輸出してどこに向けていたかというと、私が聞いたところでは前回書いたように、タラのジギングのための欧州向けだったとのことです。

 おそらく、ルーハージェンセン社の10オンスのジグ達も同じくタラジギング用だったのだと想像しています。
 実はもっとデカいメタルジグも作られていて、それらはオヒョウとか釣るのに使われていたようです。開高先生がオヒョウ釣る時のタックル写真に、1キロぐらいありそうなジャイアントジグとしてエゴンとダイヤモンドジグのクソデカイのが確認できます。人殴り殺せそうな代物です。

 ルーハージェンセンはアメリカのメーカーで、クリップルドヘリングはバス用の小型から、ストライパーやブルーフィッシュ用の1~3オンスサイズまで各種ありますが、作りはほんとに金属片に鱗模様切って背中に多少色つけた程度の代物です。「挟んだニシン」とは言い得て妙。前回チョット言及したダイヤモンドジグに至ってはタダの金属片だというのが右の写真で分かっていただけるでしょう。まあ、これでも魚を釣る能力は十分あるのですが。
  
 そう考えると、日本の重量級ジグの草分けであるヨーズリの「金属的なイワシ」は最初から良くできている。反射シートがあると、光の少ない深い海でも目だつだろうことは容易に想像できるけど、そんなモンはちょっとシールで貼ったところですぐに剥げちまうのは目に見えている。なので、シール貼った上から熱収縮チューブをかぶせて容易には剥がれてしまわないようにしている。
 ともかく、それまでもキャスティングじゃなくて船から真下にジグを落とすバーチカルジギングはやられていて、20~60グラムとかのジグなら既にいくつか種類があって、ジグの重さは狙う水深のメートル数とだいたい同じグラム数とかも言われていて、50mだったら50グラムのジグで狙えるとか紹介されていたけど、200グラムとかで狙うような深い海でジギングしようとしても、ラインがナイロンではジグに動きが伝わらず、また200グラムを食ってくるような大魚はナイロン20ポンド、30ポンドではなかなか上がらないということもあって、その頃ルアーの釣りにも普及し始めたPEラインの普及に伴ってやっと、100m以深とかの深場がルアーマンの戦場たり得るようになって来たという状況だった。

 そんな中で、次々と大物が仕留められ始め、それまでの常識では考えられないような魚が上がってくるようになった。
 鈴木文雄氏の小笠原でのヒレナガカンパチ50キロはアングリング誌にレポートが掲載されたので良く憶えているが、重さもさることながら180センチオーバーという大人の背丈以上の体長の巨魚に度肝を抜かれた。その時のルアーがクリップルドヘリング10オンスの形状チューニング版ということで、当時は深場のジギング用の重いジグの選択枝が少なくルーハーものぐらいしかなかったのでチューンニングしてでも使っていたのだということを物語っているとおもう。
 この釣果は、GTのスペシャリストにジギングでデカイのを釣られてしまったということで、ジギングのスペシャリスト達はずいぶん悔しい思いをしたらしい。そういうスペシャリストの一人であろう茂木陽一氏もその時代に50キロオーバーのカンパチ釣っていたと記憶するが、94年出版の「広く、深く・・・海のルアー最前線、今このあたりを走っている・・・」の表紙で氏がカンパチ掲げているその口に掛かっているジグがDスティンガー。やっぱりこのあたりしか使える重さのルアーが90年代終盤ぐらいまでは無かったのである。 

 コレが、90年代も終わりに差し迫ったアタリになって、このディープジギングというもの凄い可能性を秘めているニオイがプンプンとしていた釣りに、参戦せざるを得まいと思ったのは我々釣り人だけでなく、メーカーサイドも同様で、次々新商品が投入された。
 ツルジグ、ヒラジグラ、ラフェスタ、バンジーメタルあたりが先陣を切った。
 ラフェスタは動きがありすぎて深場でしゃくるのがしんどくて小さいサイズは名作だと思うけど重いのはイマイチ、他は一長一短だけど私は、バスディが鈴木文雄氏と開発した、ストンと落ちて引き抵抗が軽いバンジーメタルが一番しっくり来た。カラーも夜光や日本製らしいキラキラな反射系とかあって深場でも目だちそう。
 バスディは何作らせても機能性の高い実用度抜群のルアーを作ってくる。

 もう一つ、少し遅れてスミスからジャックナイフという名前だったと思うが、正式名称忘れるぐらいに「サンマジグ」の愛称でジギンガー達に愛されたこの長モノが、これまた沈みは早いし引き抵抗も軽いし、その割に長くてアピール力はあるしで、こいつとバンジーメタルの2種類、200グラムを中心にときに300グラムで、沖縄、ハワイ、サイパン、NZ、トカラ列島、駿河湾、相模湾、丹後半島etc...と戦った。 
 歴戦の勇者達に残る歯形を見ると、興奮がよみがえるようだ。
 ピンクのがバンジーメタル200グラム、長いのがサンマジグ、ブランカはこれまたサイズ比較用で40グラム。


 イソマグロにはいつもコテンパンな目にあわされて、カンパチは沖縄の屈辱をハワイ本島で雪辱した。NZのミナミヒラマサは爆釣で、国内は概ねシビアな結果だった。


 その後、バーチカルジギングは近海の青物、ブリ(ハマチやイナダも含め)やカンパチ、ヒラマサを中心に、マグロやときに根魚やシーバスまでを対象に発展し流行し、今も沢山の釣り人が情熱を献げている。
 ルアーの釣りの一種というよりは、船釣りの一ジャンルとして日本の釣りに浸透した気配がある。舶来モノのルアーで四苦八苦していた20年前と比べると隔世の感がある。

 ジギングに関しては一発大物を狙うとスーパーディープジギングの腰に悪いしんどい世界が待っているので、ちょっと距離をおいているが、あのしゃくっている竿がガキンと止められる衝撃をまた味わいたい気もするところである。
 150mの水深に300グラムのジグを落として、一所懸命しゃくって魚を掛けてファイトしてというのは、しんどくても楽しい作業であり耐えられるが、反応無くて場所移動で300グラムを150mから巻き取って回収するしんどさには、釣りの上手い同居人が「移動のときだけ電動リールが欲しい」と嘆いたぐらいで、ディープジギングの世界はときに「罰ゲーム」と自虐的に語られるぐらいハードでマッチョな漢の世界である。

 ちなみに重量級のメタルジグで人を殴ったこともなければ今後の予定もないですが、職場で書類をおさえる文鎮としては普通に愛用していたりする。

2015年5月23日土曜日

ジギングの発祥の地は北欧なんです


 ルアー図鑑うすしお味第6弾。は北欧モノメタルジグ三点盛りでございます。


 上から、スティングシルダー(社名同じ)、ソルブクローケンのピルケン、ABUのシャイナーでございます。
 言葉が変になってございますが気にせずつつけさせていただきます。
 産地は上からノルウェー、ノルウェー、スウェーデンとなっております。

 北欧スカンジナビア半島の国の位置関係は「乗る上」で、北がノルウェーと憶えておきましょう。地理の試験に使える知識です。地理の試験受けるような学生さん読んでくれてますか~?



 北欧ルアーメーカーって何気に金物作ってるなと気がつく釣り人も多いかと思います。実際にスプーンやメタルジグは結構作ってます、メジャーなABUはメタルジグは他にエゴン作ってますし、スプーンも名作トビー始めいろいろ作ってます、ソルブクローケンでもスプーンのパラバンとか、他にもマイナーメーカーモノ含め金物沢山作られています。
 スプーンはタイセイヨウサケ、ブラウントラウト、パイク、パーチあたりを釣るんだろうと想像に難くないですが、ジグがいろいろ出てくるのはなんでだろうと、不思議に思うかも知れません。
 これは、おそらく「タラ類」を釣るために作られたのではないかと私は考えています。次回とあわせてそのへんを掘り下げようと思いますが、メタルジグに関してはありとあらゆる種類のジャパニーズメタルジグが売られている今の日本の釣具屋の状況を見ると、イマイチ想像しにくいのですが、メタルジグの元々の本場は北欧始めヨーロッパで、今の日本のジギングの源流はそっちにあるんだと思っています。そして欧州からアメリカという流れがあって、アメリカでもバス用のカストマスター、クリップルドヘリングなんてのの小さいヤツもありますが、そっちは海の使用が多いジャパニーズスタイルのメタルジグにはつながっていかなくて、東海岸のストライ-パーやらブルーフィッシュやらとやっぱりタラ系とか釣ってた、ダイヤモンドジグとかルーハージェンセン製のデカ物たちが、日本のジギングへとつながっていったのだと考えています。

 その辺のデカ物のジグ達については次回にといたしまして、ヨーロッパのタラ類について、ひとくさり書いておきましょう。
 タイセイヨウタラは英国とアイスランドのタラ戦争の原因となったぐらいに、ヨーロッパでは重要な漁業資源であります。
 英国は食い物がイマイチな国として定評がありますが、その中では朝食と紅茶とウイスキーとフィッシュアンドチップスは、まあ美味しいと言われていて、フィッシュアンドチップスの主な原料は、「THEコッド」であるタイセイヨウタラのほか、小型のタラ科の別種、ポラックやらハドック、他にアブラツノザメの類やカレイ類、カスベ類等も使われているようです。
 英国に限らず欧米では、タラの仲間に代表される、白身で軟らかくそれほど脂がのっていない淡泊な身質の魚は好まれていて、一昔前ならメルルーサと呼ばれた一連の南半球産のタラ科じゃないタラ目メルルーサ科の魚なんかも世界中から買い集めていたし、最近ではニュージーランドのタラ目マクルロヌス科のホキなんてのが世界中に「白身魚」として供給されていたりする。
 ホキは皆さん白身魚フライとかで知らないうちに食ってると思うし、スタンドアップファイターの皆さんなら、NZのホキ漁のトロール船の後ろにくっついて、網からこぼれたホキを飽食している巨大マグロを狙うなんてのも目にしたことがあるかもしれない。
 
 チョット脱線しましたが、ことほど左様に、欧米ではタラの仲間は特別な魚なんです。
 そういうタラ類に対する熱い想いを持った人が「英語では同じタラの仲間でも日本語のスケトウダラのように「○○ダラ」で済ませずに、ポラックとかハドックとか呼び方が違う。タラの仲間に関しては英国人の方が日本人より親しみを持っているんです。凄いでしょ。」とか書いているのを見たことがあります。
 微笑ましくもありますが、我々日本人にタラぐらいしか食ってない英国人が魚に関して勝ったなどと思うのはチャンチャラおこがましいと、ここで反論してたたきつぶしておきましょう。
 日本人だってタラ科の魚でも「コマイ」なんて「○○ダラ」じゃない名前を付けるぐらいはやってます。当たり前。
 ご指摘のように日本でタラ科でないタラ目の魚に「○○ダラ」の名を付けることが多いといわれればそうですが、逆に英語をみれば、もっと酷くて何にでも白身の魚に「コッド」と名付けやがって、いい加減にしろといいたい。アイナメの仲間にリングコッドはタラ目ですらないにしてもまだ許せるが、ハタ類全般的にコッドって思いっ切りカブってるやないかい。グルーパーとごっちゃにしやがって。
 そのへんよく反省してからもの言ってこい、という話であります。まあそれだけ、欧米ではコッドは特別な魚というかコッド以外はあんまり魚扱いしていないということだと思います。
 なので、北欧でもメタルジグを深くまで沈めてしゃくるという釣法を考えてまで、タラ様を釣りたかったのだと思います。まあ、スプーンの遠投特化版としての需要もあったとはもちろん考えられますが。
 

 ということで、ノルウェー製のスティングシルダー。
 もの凄い昔からあります。
 小学生時代の愛読書、小学館の「釣り入門」といえば三平君の表紙が懐かしく思い出せるオッサン世代ですが、その70年発行らしい入門書にルアーとして紹介されている一つにスティングシルダーがあります。たぶんもっと昔からあって、メタルジグはジャパニーズ高機能メタルジグの登場までは、こういう金属片に鱗模様切ってメッキして目を貼ってというのと、ダイヤモンドジグのようなモロ金属片そのものの2パターンしかなかったのかと思います。


 おケツの所をよく見ると「MADE IN」までしか書いてないのだけど、ひっくり返すと腹側上にした文字で「NORWAY」と来る。

 実に渋い味わいである。 











次に、ソルブクローケンのピルケン。こいつは外国勢としてはいち早く、反射板を装備して人気を博した。もともとはスティングシルダーと同じように、鱗模様の付いた金属片タイプだったのに金型作り直さず、そのままその上に反射板シートを貼り付けてコーティングしている。その、やっつけ仕事ぶりが、尻の方の反射板の切れたアタリに注目するとおわかりいただけると思う。
 でも、反射板でアピール力強化したおかげか良く釣れるルアーで、こいつもシイラかカツオ釣った歯形だと思うが歯形だらけである。
 シーバスジギングにも使っていてそれ用にフックをPEで2本ぶら下げてる。



 ABUのシャイナーは、金属片であるメタルジグのアピールを考えると、反射する素材を貼り付けたいんだけど、単に貼ってコーテイングしただけだとすぐ剥げちまうので、どうにかしようとして分厚いプラスチックのコーティングを施したという感じだと思うんだけど、正直コレは使ったことがない。この手の厚いプラスチックコーティングのジグとしてはダイワのファントムが安くて良く釣れる名作だったので、もっぱらそっちを愛用してました。
 でも、子供が描いた魚のようなフォルムといい、可愛いルアーなので持っています。




 てな感じで、メタルジグ編突入しましたが、ジギングさっぱりご無沙汰なので、最近のジギングのトレンドとかあんまり知りません。
 最新のジグの評価とか全く書くつもりも能力もありませんが、日本のジギングがここまで流行った流れの源流のアタリをちょっとほじくってみようかなと考えていますので、しばしお付き合いください。

2015年5月17日日曜日

中身の詰まったヤツら


 ルアー図鑑うすしお味第5弾もGTルアー関連。樹脂充填系の中身のギッチリ詰まったルアー達です。こいつらもワイヤー貫通構造で丈夫にできてます。


 まずはGTルアーの源流の一つと考えられる、ハワイのピリーです。下のが発泡素材を中心に入れているヤツで、上の反射板入りはカガミピリーと呼ばれてたと記憶しています。
 GT「ルアー」の源流自体はギブスの所でも書いたように米国東海岸にもあったと思いますが、GTのルアーフィッシングという「釣り」の源流は、たぶんハワイとオーストラリアに遡れるんだと思います。
 オーストラリアの方の、たぶん今の木製GTルアーの原型の一つであるオーストラリアのローカルルアー、バリー・クロス氏製作のダウンアンダースポーツフィッシングGTポッパーは残念ながら所持していませんが、ハワイの方のピリーはいくつか使ったのが残っています。
 見て、気付く人は気付くと思いますし、ハワイと聞いて分かると思いますが、こいつの発想の原点と製法の基礎はカジキ釣りのトローリングヘッドにあるとみて間違いないと思います。
 トローリングヘッドも角削った天然素材のモノもありますが、ピリーと同じように反射板を埋め込んだ樹脂製のモノも一般的です。トローリングヘッドは後ろにタコベイトとかのスカートを追加して、船で引っ張って泡を引かせてカジキなどをさそうルアーです。カジキのトローリングが盛んなハワイで、キャスティングで現地でウルアと呼ぶロウニンアジを狙うためのルアーをと考えたときに、トローリングヘッドと同様に泡引きして魚を誘うルアーをということで、キャスティングしやすいようにスカートのない一般的なポッパーの形状にして、フックも通常のプラグタイプのルアー同様にトリプルフックを2個付ける方式にして丈夫さを確保するためにワイヤー貫通構造にした、というところでしょうか。ちなみにシンキングですが早引きして水面から水面直下で使います。
 この樹脂はたぶんレジンとかの透明で比重の高いプラスチックで、こういう素材で作られているGTルアーは現在廃れて、メッキ用ルアーとかにその伝統を引き継いだものがみられます。


  でもって、樹脂充填系のもう一つの雄が世界に羽ばたく佐賀の漁具系釣り具メーカー「ヨーズリ(現デュエル)」の発泡樹脂製ポッパーのサーフェスブルです。
 発泡樹脂を型に充填して固めて成型したルアーって、その昔、米国のブーンという変態ルアーメーカーがジグザッガーとかニードルフィッシュとか作ってて、ルアーとしての源流はそのへんにあると思いますが、GTルアーとしては主流となった木製ワイヤー貫通式に押されて、ほぼヨーズリしか作ってません。でも、GTルアーとして無くてななら無い存在感を放っています。
                                                            
 チョット待て「節子、それサーフェスブルやない」と思われる方がいるでしょう。
 普通サーフェスブルといえば左の集合写真のような形状のルアーだと思うのではないでしょうか。確かにこれがサーフェスブルGT200ではあります。ちなみに集合写真撮ろうと思ったら、かなりのストック数があったので出すのめんどくさくなって現役ボックスに入っているのだけ撮影しました。GTルアーとしては一番沢山持ってるのがたぶんこいつというぐらいお気に入りです。

  でも右の写真のコレ、間違いなくサーフェスブルです。腹に書いてあるのを見てもらっても分かると思います。
  実はサーフェスブルの初期型です。たぶん。
 JOSさんにもらった古いGTルアー軍団の中にあったと記憶していますが、我々が良く知っているサーフェスブルGTの20センチと比べるとサイズが少し小さく17センチほど。カップの切り方とかヘッド周りのデザインがイマイチたどたどしくて、初期型な感じがしています。
 この辺、ヨーズリ大好きなナマジとしては歴史的ルアーとして殿堂入りさせたいぐらい愛しているのですが、誰もこの気持ち分かってくれないだろうなとは理解しています。


 初期型の次は最新型で社名もヨーズリからデュエルに変わって、ビックブルーというシリーズの「ブルポッパー(F)200」で出ています。素材が「破壊不能」な高強度のものになっているようですが、デザインとサイズは踏襲。使用感もほぼ変わらず相変わらずイイ塩梅のGTルアーです。曲線が美しい。特にお尻のあたりの微妙に縦扁しているあたりと、カップ周りの角のとれた感じが良いんですよこれが。  



  そして、一番なじみ深く思い出深いサーフェスブルGT、右の写真の上が200で下が150のサイズ。150はシイラとかに良いサイズ。
 特に上のクロームに青の背中の「青銀」と呼んでいたカラーが、オーストラリアのガイドに薦められてから大のお気に入りで、ロウニンアジはもちろんキハダやバラクーダ、デカいヨコシマサワラなんかも釣ってて、もう何個もロストして最後に残った1個体となっている。
 こいつは記念に取っておいて、使うのは新型のブルポッパーのクロームサンマカラーあたりだろうな、とか次ロウニンアジ釣りに行くのいつか分からないのに思っていたりする。


 海の世界では漁具系と表現したように手堅い実釣向けのルアーを作ってきたヨーズリだけど、淡水の世界では、金魚ルアーとか回転するオケラとか、B級変態系ルアーを作りまくっていて、その実力を、海向け海外向けにぶち込んでキタのが、左のサシミブル150である。
 海外でのヨーズリブランドの強さは日本では想像できないと思うけど、釣り具通販の世界のメジャーリーグだと思うバスプロショップスでもヨーズリは長く定番商品としてそのルアーがラインナップされている。他にもラッキークラフト、メガバスあたりも海外で強い印象だが、ヨーズリが海外では一番の老舗日本ブランドだといって過言ではないと思う(追加注:ダイワ、シマノの大手は除いての話)。
 なので、海外で売るときはブランド名もヨーズリのままだし、ルアーのシリーズ名も「SASHIMI」ともろ日本風オリエンタリズムあふれるモノとなっている。ポッパーの他にペンシルやミノーがあるらしい。
 ベースになっているのはあきらかにサーフェスブルGT150でサイズも形状も似通っているが、2つほどナンジャそれなギミックをぶち込んできている。

 一つは「ヨーズリサウンドシステム」というヤツで、お腹の所に透けて見えるラトルルームが設けられている。まあ、ルアー作る時に、ラトルルームって教科書どおりにバルサで左右位置を合わせて作るのめんどくさいので、あらかじめストローとかでラトルルームを作ってそれをはめ込むっていうのを良くやっていたけど、それと一緒である。
 発泡樹脂を型に充填して作るときに、ラトルルームのおさまるスペースを作っておいて後で装着するという、発泡樹脂製のルアーの製法上そうなるのが自然なんだろうなという感じで、ついでに外から見えるようにして釣り人の目を引こうという意図かなと思う。 

  もういっちょが、やや変態度が高いその名も「カメレオンフィニッシュ」で、パテント取った技術のようだ。
 表面に線が入っているのが分かると思うけど、コレが山型になっていて、山の両斜面で色を変えてあって、前から見たときと後ろから見たときに色が違って見えるということである。
 それが、どう釣果につながっていくのか全く不明な点がもう、変態ルアーメーカーとしてのヨーズリの実力を遺憾なく発揮している感じがして最高である。
 むかしこういう見る角度で絵が変わる表紙の本とかあったよね。



 確かに、後ろから見るとやや黄緑がかった色なのが、前から見るとブルーである。
 それがどないしたっちゅうネン。という気もするが、手にとって一瞬でも釣り人が「オオッ!」っとなって、レジまで持っていかせることができればメーカーさんの勝利である。
 実際、私がそうやってメーカーさんの策略にはまっている。

 海外向けの商品でマイナーなルアーではあるけど、売って無いルアーではないので、このルアーは今でもたぶん手に入ると思います。
 私も普通にSスイの棚で見つけました。
 チョットネットでググったら、海外通販でなくても国内の通販でも手に入るようです。
 ネタ的になかなか美味しいうえに、釣る能力は実力派のサーフェスブルGT150と同等だと思うので、シイラ釣りなんかに1個いかがでしょうか?割とお勧めのルアーです。
 サシミブル200もあるようですが、ロウニンアジに投げるルアーとしては堅実な漁具系を引き継ぐブルポッパーがイイかなと思ったりしてます。


 ヨーズリネタもうチョットだけ続くんじゃ。
 ということで、サーフェスクルーザー。
 左の方が200で20センチ、右の方に200よりちいさいのが2サイズ。
 このルアーも海外で人気を博した逸品。まあ、ギブス社ペンシルポッパーと似たようなサイズと形状なので、当然アメリカの釣り師はストライパーやブルーフィッシュに向かって投げていたようで、バスプロショップスのレビュー欄には「素晴らしく丈夫。コレで自己記録のストライパーをゲットしたよ」とか「デカいブルース(ブルーフィッシュのことらしい)にはこいつが最高だぜ!」とか絶賛の嵐だったのが印象深い。
 ビデオで当時ヨーズリにいた津留崎氏がサーフェスクルーザーで30キロぐらいのGTを釣った時にポッキリ折れて、それでもワイヤ-貫通構造なので無事ゲットしてたのも印象深い。丈夫な作りなんだけどそれでも折れるというのが、海の釣りの恐ろしさ。ナイロンラインの時代でそうなので、より負荷が掛けられるPEラインの時代になって、デュエルになったヨーズリが発泡素材の強度をさらに上げてきたのは理由あってのことなのだと納得する。基本海のルアーでは実力主義なメーカーさんなのであった。
 とはいえ私がGT戦線に参戦したころにはGT用ペンシルはフィッシャーマンのロングペンが一世を風靡しており、あんまり出番の無かったルアーだったというのが正直なところです。でも、今後こいつらで勝負を決めるシーンがどこかに出てきそうな気がしているルアーです。シンプルで基本性能が高いルアーは時代を超えて活躍するという予感がしています。

 はっきり言ってヨーズリブランドはメチャクチャ好きです。ミノーとかジグとかも実力派揃いで最高です。ヨーズリらしいルアーじゃなくて今の社名になった「デュエルブランドっぽい」というと、分かる人には分かると思いますが、妙にジャパニーズハイテクルアーっぽいリアル路線のルアーは正直好きではないのですが、ヨーズリっぽいルアーが健在な限り、私は買い続けて使い続けるでしょう。


で最後におまけ、この一見サーフェスクルーザーっぽい10センチほどのルアーは、ヨーズリでもギブスでもコーデルでもなくダイワです。
 塗装の感じとかから、こいつも発泡樹脂製かなと思ってたら、どうも木製のようです。
 名前はトップジャンパーらしいです。シーバスに良さそうなサイズだと中古屋で買った代物ですが、まだ使ってません。

2015年5月9日土曜日

「クレイジー」とくれば、バスマンなら「クローラー」、GT野郎なら「スイマー」、ジョジョファンなら「ダイヤモンド」


 ルアー図鑑うすしお味第4弾は、クレイジースイマーです。
 
 まあジャパニーズGTルアーはこのあたりから始まったということだと思います。前回のスカッダーや次回書きそうなハワイのピリーとか、オーストラリアのローカルGTルアーあたりを参考にしたのかなと思いますが、石垣島に移り住んでフィシャーマンブランドでロッドやルアーを作り始めた鈴木文雄氏がデザインし、実釣で鍛え上げつつ、今も巨大な170とかのサイズで作られ続けている超有名名作GTルアー。基本スイマーというカテゴリーのルアーは早引きで泡を引きながら尻振りながら泳いでくるという、トローリングヘッドみたいな動きをします。「泡引きポッパー」ともいったりもします。私がロウニンアジの釣りを始めたころには、しんどい早引きじゃなくて、バッコンバッコンと竿を煽ってポッピングする方法が流行りつつあったので、早引きよりポッピング多めで使ってました。ポッピングに適したバランスのモノには背中に「P」と書いてあったりしましたが、そうでない個体でも概ねポッピングもできました。

 B級でもマイナーでもまったく全然ありません。でもまあ今時の170とかのデカいクレイジーズイマーとか今時のカラーしか知らない人にはあんまり見たこと無いルアーだろうと思うし、古い人には懐かしいかもしれない話も書いてみようかなと思います。


 左の写真の3つは中古屋でゲットしたのですが、私がロウニンアジ釣りを始めた90年代半ばより以前の製品のようで、背中に「FISHERMAN」の表記がありません。でもカラーリングの感じとか、後部のステンレス線の処理の仕方とかからみてクレイジースイマーのわりと初期型で間違いないと思っています。最初のモデルはもっと細長かったとどっかで読んだ記憶が。この時代のは割とレアものかな。だとしても塩水系のルアーってべつにコレクターがいるわけでもなかったりするので、こうやってデータ化して公開でもしておかないと、歴史も過去も振り返ることすらできないと思うので、振り返ることに意味があるのかどうかも分からんところではあるが、書き留めておくことにする。




 でもって、右のが私がロウニンアジ釣り始めた時代のクレイジースイマー。背中の「FISHERMAN」表記が見えるように背中側から撮影してますが、真ん中のオレンジの背中のには「90/96」と書かれているのが確認できます。これは90グラムクラス(必ずしも実測重量と一致しなかったりする。バスルアーの5/8OZとかと一緒)で1996年の生産という意味です。まさに私のGT元年に買ったルアー。結構消耗して「P」のつく個体とか1個も残っていませんが、たぶん残っているのはポッピングが「苦手」な個体なのかな。




 この頃のカラーリングは今時のGTルアーの手の込んだモノと比べるとシンプル。せいぜい背中と腹と色が違って背中に縞が入ってるぐらい。でも、このぐらいのシンプルなカラーがルアーらしくて良いし、あんまりカラーリングに凝ってその分値段が上がるのは歓迎できない。左の水色はカップが蛍光黄色だけどボディーは水色一色で、これが結構な人気カラーで「ムーミン色」と呼ばれていた。ムーミン、トーベ・ヤンソンの原作挿絵とかでは白いけど、日本のアニメ版ではたしかにこんな色してた。
 クレイジースイマーから派生したGTPの105ムーミン色で永らく自己記録だった18キロを釣っている。

 
 右のこいつはクレイジースイマーじゃなくてGTPだけど、歯形とフックサークルでボロボロになるぐらいまでパラオで釣った個体で、緑と白のツートンで実に良い塩梅のカラーデザインだと思う。最近のGTルアーのカラーではキリバスで使ったクラフトベイト社GT-2のピンククマノミなんてのが、シンプルでポップで楽しいカラーリングでとても良いと思った。南の島の明るい空の下ではカラッとポップで安っぽいぐらいのシンプルなカラーが気分である。
 ちなみにクレイジースイマーの派生ルアーとしては、引き抵抗軽くするためにカップの下を削った結果ポッピングもしやすくなってるこのGTPと、リアフックだけのキャスティングマーリンと言うのがあったと記憶している。


 ただ、90年代当時の塗装は、剥がれやすくて難儀した。左の黒もワンバイトで塗装が剥げまくった。最近のGTルアーは車の外装用の塗料を使ったり丈夫な塗装になっている。まあ、それでもボロボロにされるし、ボロボロになったルアーを見て、想い出の海に、心は再び旅立ったりしちゃうんだけどね。




 GT用ルアーの小型版って、可愛い上に性能も良かったりして、シイラ釣りとか用に結構所有している。そのうちのいくつか。50グラムサイズと一番下は30グラムサイズ。ついでに右の2個は背中に記載無しでチョット古め。
 カタログ見ると10グラムサイズというメッキ釣りサイズもあるようだ。




 クレイジースイマーも、今時は凝ったカラーリングで、サイズも170グラムサイズとかあって、今の釣り人はそういうのがGTルアーだと思っているだろうし、それが当然だとも思うけど、私は私がロウニンアジ釣りを始めて修行した時代の90年代のクレイジースイマーにこそ、GTルアーらしさとでもいうべきものを感じるのです。
 GTルアーらしさというか、海のルアーらしさとでもいうべきでしょうか。トローリングヘッドとスカートのカラーパターンとか漁師のバケの鶏の毛の染め色のパターンとかにも通じる、紫、ピンク、青、黄色、緑、白、黒とかを割と単純な組み合わせであしらった感じ、あとワンポイントの赤とかの色使い、何が来るか分からない海の獲物を想定したシンプルな機能と丈夫な作り、なんかが「海の基本」だと思うのです。
 。

 今回の最初の集合写真も、そんな海のルアーらしい色が目に眩しいように感じたところです。

2015年5月6日水曜日

箱の底に残っていたのは希望だと思う


 昨晩九州遠征から無事帰宅しました。
 ツーテンの虎ファンさんには、車の運転、宿、ポイントの案内から、現場で借りるリールオイルまで、すっかりお世話になりました。
 まあ、今さら遠慮するような仲でもないので、思いっ切り頼らせてもらいました。
 あらためてありがとうございました。

 事前情報では、結構コンクリート護岸が増えて、ライギョも叩かれてスレてきたとか聞いていたりしましたが、まあ、そういう部分もなきにしもあらずでしたが、それでもまだ、ライギョは沢山いて、ルアーにバフッと食いついてきて、あいかわらず早合わせですっぽ抜けたりしまくってましたが、それもまたライギョ釣りという感じで楽しめました。タナゴ、フナあたりの小物釣りも堪能。

 九州は田んぼで麦と米の二毛作が多く、GWごろは麦がちょうど穂を付ける「麦秋」と呼ばれる季節で、ヒバリが高い建物も無くぐるっと広い空で高くさえずっている、その圧倒的な開放感だけでも至福と言って良いぐらいです。

 ライギョ釣りでは田んぼの脇の水路(クリーク)を狙ったりするのですが、水路は放置しておくと水生植物の腐食物や流入した土などで長期的には浅くなっていきます。浅くなると田んぼに水を張り雨水などを流すための水路としては機能しなくなってくるので、農家などがたまに、水を抜いて底をさらってという作業を何年かあるいは何十年かに一度という感じで行っていて、昔は村人総出でやっつけて、ついでに水を抜いた水路から出てきたフナだのコイだのはみんなで食って楽しんだらしいです。
 最近では、ユンボで泥をさらうのですが、さらった後の護岸をついでに長持ちするコンクリで固めてしまうというのが、私が憎悪するコンクリ好きの人達の効率的で悪しき流儀です。
 でも、今回の旅で何カ所かで、昔ながらに木の杭と木の矢板で新に護岸を作った場所が確認できました。

 長期的な管理とか考えると、コンクリの護岸のほうが経費も手間もがかからないはずです。それでも「木で」と考えたのは、景観の部分もあると思いますが、自然環境や生物多様性といったことにきっと気をつかったのだと思うのです。木なら隙間も多いし、そもそも有機物なので食べたり住んだりする生きものも沢山います。コケも生えればそのうち草さえ生え始めます。
 私のような都会に住んでいる人間が、やれコンクリの護岸はやめろだの、自然を守れだのというのは、自分でやらなくて良いから言えるという面もあり、正直無責任な意見という側面もあると思います。それでも言わなきゃらならんと思ってはいますが、実際に住んで管理する人達が、めんどくさい手間を考えてもそうすべきだと考えて、あえて選んだことを英断と敬服せずにいられません。

 九州では、炭鉱やらの製鉄関係の歴史的な建造物などが世界遺産になりそうだとかいうニュースで盛り上がってましたが、私は九州の、今まさに使われて受け継がれていっている、現在進行形で生物多様性や景観や安らぎを、そして釣り人に釣果をもたらしている、ドロドロの草ボーボーの水路の方が後世に残すべき宝だと強く感じます。

 九州の自然は、いまだ健在でした。もちろん問題も不安もいっぱいあるのは間違いありませんが、それでもまだ未来に希望がもてるぐらい魚はいましたし、田んぼという人の営みとともにある自然が受け継がれていっている。どうも地元の人もそれに愛着をもっているらしい、ということが見て取れて、嬉しく思いました。

 嬉しい話がもう一つあって、帰りの空港で香港のSUZUKIさんから、香港でタナゴゲットとの報告のメールをいただきました。
 香港オイカワから始まった一連の香港の小物釣りのラスボス的獲物として、香港に残っているかどうかも疑わしいタイリクバラタナゴを求めてというクエストがあったのですが、見事攻略成功したとのこと。苦労して情報集めて、足使って、そして結果が伴った喜びというのがメールの文章からもうかがえて、楽しそうな釣りのシーンが目に浮かぶようでした。
 香港のような高度に開発が進んだ場所でも、まだ、二枚貝とハゼの仲間がいないと繁殖できない生物多様性の象徴のような魚であるタナゴも残っているというのは、これまた、まだ全てが失われたわけではない、危うい状況にはあるけどまだ、希望は残っていると感じられるものでした。
 SUZUKIさん近く日本に帰国されるとのことですが、同じ神奈川県民になられるようで、また一緒に釣りに行ける日を楽しみにしております。一緒に苦戦したり好釣したりしましょう。


 パンドラの箱の解釈やらには諸説あるようですが、私は災厄やら禍やらが世の中にはあふれてしまっているけど、希望は最後まで残っていて、希望があれば人はそれを胸に生きていけるということかなと都合良く解釈することにしています。

 世の中には絶望するような悲劇や、怒りが収まらないような悪行や、心底嫌になるくだらないことが満ちあふれていますが、それでも希望もあるのかなと感じたところです。