コリアンリールについては、韓国大森系は以前から、ワシしか興味なくてもワシは書く、ということでちょくちょく書いてきたし、韓国日吉釣具についてもちょい前にゴールドスピンをネタにしたところである。その他にも謎のなんちゃって大森やらフルーガーブランドのやらもいじったことはある。総じて「なんだかな~」って感じのそこはかとない安物感が漂って、それはそれで味わい深けれど道具としてはイマイチという評価だったけど、ゴールドスピンは良くできたリールで、コリァもうちょっと韓国方面ほじくってみんとあかんかな?と思ってたら、TAKE先生が韓国日吉とかでリール作ってた”ミスターハラの記憶”シリーズを刊行して、欧米ブランドと日韓の下請けメーカーの歴史とか当時の情勢とか読むにつれ、やっぱり韓国も気になるし、norishioさんからは「今、Silsterが熱いですよ‼」とか感染させる気満々の書き込みもいただいたしで、韓国の代表的なリールメーカーであるシルスターも買わにゃならんなと思ってしまうあたりで既になんらかの症状を発症していたのだろう。アタイ病気が憎い!
norishioさんはシルスター「タイニー20」に大森イズムの継承を見て取ったとのことだけど、そういえばワシ、上州屋つながりでだと思うけどシルスター製「DIAMOND EX35」っていうのがネットオークションにかかってるのを見た記憶がある。韓国大森とシルスターに何らかの技術的なつながりがあったのはどうも間違いなさそうである。シルスター製ダイヤモンド、競り負けて入手できなかったのが今となっては悔やまれるところ。
というなかで、実釣面では良型根魚狙いの岸壁足下泳がせがなかなか結果が出ないので、対象を広げてエイやらヒラメの扁平系、ハモやらウツボの長物系も狙うべくチョイ投げ泳がせに挑戦。コレがまた悶絶しまくりの大苦戦なんだけど、一発大物アカエイをやっつけるのを想定した場合、ゴツいグラス竿にABU7000Cという道具立てはドンピシャだと思うんだけど、意外に食い込みの悪いハモ相手にはもっと柔くて長い竿とハリスが良いとか、青物狙うポイントでやや遠投でワニエソ狙いたいとかになってくると、オモリと活餌で重量が分散されていて投げにくいのをそれなりに投げる必要が出てくる。となるとスピニングの方が向いている。ただPENNの”ライブライナー”みたいにレバードラグ?が付いてれば何の問題もないけど、ドラグユルユルでアタリを待って食い込ませて、食い込んだらソレッとドラグ締めてアワセるのには普通の頭にドラグがあるリールではやりにくい。リアドラグでかつ数値がふってある目盛付きだと、ユルユルにしておいた状態から、アタリがあったら竿を持ってググーッと持ち込んだらやおらあらかじめ想定してあった目盛までギュッとドラグを締めてアワセ食らわすというのができて塩梅が良い。
ということで、買っちゃいましたのが冒頭のシルスター社「CX60」でなんと某フリマサイトで送料込み980円の持ってけ泥棒価格。まあ日本じゃこの程度の評価ということなんだろうけど、世間様の評価なんぞアテにならんので結局自分でいじって釣り場に持ち出してその実力見極めてやらねばならん。というわけで早速分解整備調整に入るんだけど、元々巻かれていたラインがケッタイなしろものでナイロン系の編み糸なのでダクロンぽくはあるんだけど、昔懐かしのグデブロッド製のみたいな滑らかな編み込みじゃなくて、むしろフライラインの接続に使うブレイデッドナイロンみたいなグジュグジュした編み込みのブツで、日本じゃ売ってるの見たことないようなライン。相当太いのでリーダーとして接続してあるのかと思ったけど、最後のスプールに巻く部分以外コレでしかも3色分しか巻けていないぐらい太い。1色20メートルでも60メートルしか巻けてないのでどういう用途で使ったのか?何にせよぶっといラインでドラグガッチリ締めて使ったんだろうなと、試しに5キロのオモリが上がるかドラグ締めて試したら上がりやがった。ドラグも最大値的にはかなり上げられるし、樹脂製の本体の丈夫さも安っぽい樹脂のわりに大丈夫そうである。 糸巻き量的には4桁PENNだと5500ssとだいたい同じ。15Lb-230mとなってて、16ポンドナイロンで運用予定。ただ、リアドラグ機なのでどうしても前後に長い。あとなぜか同じ樹脂製本体で5500ssの460g程度に対し、約490gと重いのは不思議な気がする。樹脂製とはいえ5500ssはスプール金属だしアレコレ補強も入ってるので本体樹脂製としては重い方である。そして、CX60の丈夫さに寄与しているのは、シマノが3本脚にして樹脂ボディーの強度確保してたけど、シルスターはその3本脚の後方2本の間を埋めたような幅広の脚で強度を稼いでおります。そしてその際に生じる脚の広い平面にはドラグ特性を示すグラフが書かれていて、ホントかどうか知らんけど綺麗な放物線を描いている。って放物線じゃまずいでしょドラグは?締めた力に正比例してくれなきゃダメでしょ。と早くも突っ込みが入るのであった。まあ感覚的には締めていってギュッと締まったあたりでドラグがギュッとフルドラグっぽくなるっていうのを示しているのだろうか?気にしないでいこう。実際のドラグは最大値も大きいけど調整幅やら滑らかさもそれなりにあって、わりと良さげ。980円でこれなら今のところ上出来。
で分解していくと、まずはハンドルがねじ込み式で、方式は左右の山を同軸に切る大森方式ではなく、先と根元で太さを変えてそれぞれ右用左用とするPENNとか日吉の方式。ハンドル軸のギアは真鍮ぽいのが見えてて、タップビス抜いて本体蓋を開けて確認するとハンドル軸のギアは真鍮を芯に鋳込んだ亜鉛製のハイポイドフェースギア。そして軸は両側にルーロン樹脂っぽいブッシュが填まってて無駄にボールベアリングを使わず、かつ削れる運命を受け入れて樹脂本体で軸を直受けとかじゃなくて、樹脂ブッシュ入れているのは真面目な賢い設計で好感持てる。ちなみにボールベアリングはローター軸のギアに一個入ってるだけだけど、回転は素直で軽くまったく問題無いように感じた。ローター微妙にプルッてるかもだけど許容範囲。単に安いリールを作ろうというのなら、ネジ込みハンドルも、樹脂製ブッシュもいらんハズで、シルスター社なりに優先順位つけつつも丈夫で使いやすいリールを作ろうとしていたのは見て取れる。 でも、ヌポっとハンドル軸のギアを抜いてみると、やや「コレはどうなの?」という部分が見えてくる。逆転防止とサイレント化の仕組みは特に問題はない。真ん中の写真にあるように、ハンドル軸のギアの芯に脚二本で巻き付いて針金が四角く飛び出していて、コレを上写真の逆転防止の爪の矢印で示した切れ込みに突っ込んでやって、正転しているときは爪がストッパーの歯から離れてカチカチとも鳴らない。逆転すると爪がストッパーの方に押し出されて歯と噛み合って止まる。
っていう逆転防止のストッパーの歯とローター軸のギアがどう見ても亜鉛鋳造一体成形である。ハイポイドフェースギアのローター軸のギアが真鍮切削なのはそうする理由があるんじゃないの?削れたりしないのか?というのがやや不安な部分。とくにストッパーに亜鉛はコンパック「カプリⅡ」では削れたので、今回はサイレントなので正回転で回ってるときには歯と爪はカチカチと接触はせず摩擦して爪で歯が削れていくことはないにしても、力が掛かるストッパーに亜鉛鋳造の歯は耐えうるのか?亜鉛同士のギアの組み合わせで削れることはないのか?ちょっと不安なところである。
でもって、亜鉛鋳造一体成形のストッパーとローター軸のギアってなんか憶えがあるんだよなと記憶をまさぐってたら、なんちゃって大森のシェイクスピア「アルファ2260-030」もそうだった。1980年代、シェイクスピアの下請けは大森、五十鈴の日本勢の他、シルスターと香港シェイクスピアが請けていたらしいので、アルファ2260-030はシルスター製っていう可能性が充分ありそう。
引き続きバラしていくと、スプール上下のオシュレーションカムを主軸に止めてるのがCクリップじゃない!エラい!!これだけで、まあ高級リールじゃなかっただろうし、多少のアラはよきにはからえ、と言いたくなる。なにしろ、マイコンSSのCクリップには、知恵の輪状態で泣かされてトラウマもんの経験だったし、ゴールドスピンでもCクリップ跳ねて這いつくばって探すことを余儀なくされた。このカパッと両サイドに主軸の溝に填めるC状の部分を持ってきた薄板曲げた部品の方式はマイコンTBシリーズが採用している方式で、加えてネジ止めして、板で挟んだだけだと外れるかもな部分をしっかり固定している。ひょっとするとこのあたり大森イズムの継承の発露なのかも。
ただお次は安っぽい。ローター外したらベール返しの”蹴飛ばし”は手前に見えている樹脂本体から一体成形で張り出てる単なる坂道。ベアリングの固定はタップネジ3本締め。蹴飛ばしみたいな摩擦が多い部分の樹脂丸出しは、韓国大森製のダイヤモンドキングやらダイヤモンド2001やらもそうで、このへんは真似せんでくれと言いたいところ。レバーの方がアルミか亜鉛の金属パーツなので長期的には削れるよねって話。タップネジ3本締めはコレでも固定できてるからまあ良いか?単純設計に振ってあるPENNの430ssgではタップネジ2本締めが採用されているけど、それが原因で不具合生じたことは今のところない。ただ蹴飛ばしは真鍮の部品を組み付けているのが”経済的設計”でもそこはPENNってところ。 ローター周りも、正直パッとしない感じではある。ラインローラーは回転式で真鍮に硬質クロームメッキのローラーが金属の芯に直づけされている。大森熱患者としてはここにはルーロン系樹脂スリーブを入れたいところだけど、回転部分が金属どうしなのは、720zのブロンズベアリングとかでは問題ないし、一概に削れるというモノではなく素材や設計、使用の条件によるのではないかと思う。ちなみにラインローラー金属製で直づけは去年活躍してくれたシェイクスピアの2062の”E系”がそうで、特に削れたりの問題は生じていない。このへんは使ってみんと評価できんということか。2062も”D系”になると樹脂製スリーブが入ったので、樹脂製スリーブが入ったほうがモアベターなのかもしれない。 でもって分解していくと、ベールアーム、ベールアーム反対側の支持部ともにタップネジでとめていて、本体樹脂でそれらの回転部分を受けている。ダイヤモンド2001でもそうだったけど樹脂×樹脂は削れそうに思う。せめて真鍮のカラーとか填めたくなるのはワシだけか?これどうも最近まで大手の安い機種でも同じような処理があったようだ。そしてベールアームと反対側の支持部からなんか謎の亜鉛パーツが覗いてるなと外していくと、予想外の大きなカウンターバランサーがでてきて驚く。ベールアーム側そこまで重くなる要素ないと思うんだけどなぜそんなに反対側のバランサーがデカくなるのか?蓋外すとミッチミチに詰まっててちょっと笑えるぐらい。これは重量増加の一因だろうな。でもおかげで回転バランスはそこまで酷くない。 ベール反転機構は、亜鉛製っぽいL字型のレバーが蹴飛ばしの坂道で押し上げられてベールが戻るという上下動でベールをリターンさせる単純で良好な機構。ハンドルリターンで軽く返って、ここは悪くない。写真の左の列がベールを起こした状態で、写真下はローターの裏から見たところだけど、ベールを起こすとレバーが下に下がる。下がってるレバーの端が巻き取りでローターが回って蹴飛ばしの坂道を上がることで左写真のように押し上げられ、ベールが返る。蹴飛ばしの坂道が樹脂製剥き出しなのが気になるならアルミの薄板貼り付けるとかして、削れ対策とかした方が良いのか?今のところ削れてないようなのでそこまで気にしなくて良いのか。使ってみて不具合でるようならまた考えるで良いか。とりあえず現状維持で。 でもって最後にドラグ。マイコン方式で後ろからドラグパッドやらバネやら突っ込んである。本体と一緒に回らない耳付きワッシャーの耳の先が曲げてあって、おそらくこれ耳が本体樹脂に食い込んでしまうミスターハラ用語でいうところの”ドラグバイト”の防止なのかなと思う。本体側樹脂と接する部分の長さが増える分力が分散されて食い込みにくくなるだろう。ちょっと不安なのがドラグバイトってそういう理解でいいんだろうか?ってところで「リール興亡史」で原氏が大森製の「Σ(マイコン)」のステンの耳付きワッシャーはドラグバイトでリアドラグ機のドラグ能力の評判を落とした的な苦言をていされているけど、マイコン初代のことを言ってるなら本体金属なので耳付きワッシャーが食い込むとは思えないんだけどどうなんだろう。ドラグバイト自体が耳付きで起こるならリアドラグに限らずフロントドラグでも起こるよなと思ったんだけど金属スプールなら耳付きワッシャーは一般的なように思う。そういえばキャリアーやマイクロセブンCとかの樹脂製スプールには耳付きワッシャーじゃなくて六角ワッシャーが使われている。2箇所で支える耳付きワッシャーより6辺で支える六角ワッシャーの方がそら食いこまんわな。でもって、上から2枚目の写真が抜き出したドラグ関連部品。左から赤い繊維性ワッシャー、主軸と回る亜鉛部品、謎の細バネ、表面を樹脂で固めたような繊維質のドラグパッド、耳の先曲げた耳付きワッシャー、バネときて、あとは写真に写ってないけどバネを押さえるネジを切った樹脂部品が来て、樹脂製のドラグノブを被せてネジ止めという感じ。ファイバーワッシャーも含めて実質2階建てのドラグになっている。ドラグパッドが繊維質のパッドの表面を樹脂で固めたようになってるのはマイコンTBシリーズと似てる。ついでに書くなら同じようなドラグパッドは”なんちゃって大森”と紹介したシェイクスピア「アルファ2260-030」にも入っていて大森からシルスターへの技術継承的な流れが示唆される気がする。ついでにアルファの過去記事みて、謎の細バネの役目がドラグパッドの固着防止かなと思いあたった。一番下の写真のように細バネは耳付きワッシャーを持ち上げるように働いている。アルファでは無理に剥がすとドラグパッド破損しそうなぐらいに固着してたので、おそらくそれを防ぐためのものかと。 バラしは終わったので、ギア等はパーツクリーナーで洗浄するんだけど、今回本体もスプールも樹脂製なので本体等はパーツクリーナーは使わずティッシュで水拭きしたんだけど、樹脂が劣化して表面剥げるのかティッシュがえらい黒く汚れる。脚の隙間では小さなクモが脱皮してたりもして、テキトーにほったらかしにされてたんだろうということが想像に難くない。可能な範囲で綺麗にしてあげる。樹脂製なのは海で使うには錆びなくて良い。ネジとかにはグリス塗って、使ったら水洗いして錆びないように気をつけなきゃだけどステンのネジならそうは錆びないしワシのようなテキトー放置系メンテの人間にはありがたい。
こんばんは。
返信削除シルスターリールはねじ込みハンドル採用機を他にも見た記憶があります。モデル名は忘れてしまったのですが…
おっしゃられているように実釣でがっつり使い込みたい完成度ではないけれど、どうにも大森が関わっていそうな気配はする微妙な塩梅が良いですね。
他の有名どころオールドと違って、二束三文で手に入るので、見かけたらとりあえず購入、分解して大森さんちの残り香を楽しむリールでしょうか。
オールドリールの泳がせ釣りですが、先日、キャリアで大きい魚を掛け、指ドラグでも止められず1分以上ひたすらラインを出され根擦れのラインブレイクがありました。
帰宅後にリールをチェックしたらドラグノブが溶けてしまっていました。
バラシの原因とは直接関係ないですが、大森リールで大物を狙う上での弱点になりうるのでドラグ周りは何かしらの強化が必要かもしれません。
こんばんは
削除シルスターはバラして遊ぶにはちょうど良い二束三文感なのでもういっちょぐらい買ってもイイかなと思ってますが、ひょっとして危ない深みに足つっこみかかってるのかも?
ドラグノブ溶ける引きはかなり羨ましいですね。4桁スピンフィッシャーでも初期のドラグノブはワッシャーを押さえるところが樹脂製で熱で溶けたらしく、社外品つけたりしてたようですが、のちに純正ドラグノブもアップデートされて押さえるところは真鍮製に変わりました。ドラグノブは第4世代の防水パッキン付きのに換装してる個体が多いのでいま余ってるドラグノブ確認したら7500ss用ので2個が樹脂製、1個が真鍮版でした。PENNのマイナーチェンジの痒いところに手が届く感じはなかなかのモノがあります。
シルスターでドラグ溶けるぐらいの大物掛けてみたいモノです。
ご存じかもしれませんが、ドラグの熱対策で一般的なのは水冷式で要するにペットボトルの水とかを掛けるというもので、カヤックの上なら後で塩抜きせねばですが水中に突っ込むというのもアリかもです。
削除返信ありがとうございます。
返信削除流石はPENNですね。
何処が最初に限界を迎えるか分かっている。
ユーザー&メーカー含めて対大物との対戦ノウハウが豊富すぎます。
水冷式ドラグ冷却、次回があれば試してみます。
キャリアのドラグノブあたり面ですが、面で均等に溶けたのでカエリを除去すれば普通に使えそうでした。
意味があるか分かりませんがアルミか真鍮板を張ってみようかと悩んでいます。
樹脂ボディの後期大森ですがNo.1&2まではテフロンワッシャなのですが、No.3以上は再びフェルトに戻るのが面白いです。メーカーもテフロンとフェルトの使い分けに意図を持っていたようです。
おはようございます
削除参考になったならなによりです。
金属の板を張るのはその厚さの分溶けなくなるので意味ありそうに思います。ドラグノブの溶けた厚身分ぐらいのを張ればとか考えましたが、熱伝導率の違いもあるから溶けた厚みより増やす必要あるでしょうか?
キャリアの大きさの違いでパッドの素材が変わるのは面白いですね。デカ大森の症状がまたぶり返しそうです。