2018年11月25日日曜日

日本よ!これがドラグだ!!


 日本の釣り人にリールの「ドラグ」というものが何なのかというのが理解されるようになったのは最近のことだと思う。でもまあ分かってない釣り人が多いと思うけど。

 かくいう私も同様でね。

 「アンバサダーはドラグがショボくて」「マイコンのリアドラグがイマイチ」なんて書いててゴメンナサイ。いかに日本の釣り人がドラグについて知らなかったかの好例がここにあり、という感じである。
 そんな私も釣りを始めて苦節40年経ってようやくドラグが分かり始めた。ような気がする。断言してまた頓珍漢なこと書いて後で身をよじるよな恥ずかしい思いをする心配がなきにしもあらずだけど、そんときゃそん時でまた謝りゃいいし、ワシの場合恥かくのも芸風だと最近思うようになってきた。恥部さらけ出すつもりでワシワシ書いていこう。

 最近の釣り人がリールのドラグについて知るようになったのは、ルアーでも管理釣り場のマスだの海だとメバル、アジ狙いだのといったやたら細い道糸を使いたがる方面の人気が要因としては大きいようで、細糸は嫌いというかアホかと思ってる私としては遺憾に思わんでもないけど、道具についての正しい知識が広まるのは悪いことじゃないように思う。正しい知識があれば釣具屋に騙される回数が気持ち程度は少なくなるかもしれない。
 繊細さに”女々しい”と今時の男女平等の思想からすれば言葉からして怒られてしまいそうな印象を持ち(のわりにハゼ釣りとか小物釣り好きだけど)、豪快さを良しとする昭和のオッサンなら、ドラグというものを糸が切れそうなギリギリの時に滑ってくれれば良いという”保険的”にではなく、積極的に”滑らせて”一定の負荷を与えつつ魚を走らせて釣るという方法を学ぶのは、船で沖に出てのシイラ・カツオ釣りで初体験という場合が多いのではないだろうか。

 かくいう私もそのくちで、シイラ初挑戦の時にJOSさんにビミニツイスト練習しておけとナイロンラインのボビン渡されて、細い道糸に太いハリスであるショックリーダーを繋ぐ”ラインシステム”というモノについての薫陶を受けたけど、正直説明聞いただけでは「なんで魚の目につくハリスの方が太いねん?」という疑問が頭に渦巻くだけであった。
 しかし魚掛けてみると、体で理解が進んでいく。たかだか50センチかそこらのぺんぺんシイラが止めろと言われても止めきらないぐらいに引きやがる。まあ後年GT狙いのときにメーターオーバーのシイラ掛けて、ドラグ一瞬ジジッと鳴っただけで止まってしまい、道具の力を上げていけば止められるっちゃ止められるンだとも知ったりはしたけど、だんだん分かってくるけど止める必要がない魚と止めなきゃならん魚があって、止める必要ない魚は走らせて疲れさせてからあげた方が、バレにくいし何より引きが楽しめて面白いということだと思う。
 止めなきゃならん魚は止めなきゃ障害物に巻いたり突っ込んだり穴や砂に潜ったりする魚で、淡水の魚の多くはそうで、バスにしろイワナにしろ障害物周り狙うのにアホみたいな細糸で狙ったらそら切られるって話で、逆に走らせて良いのは大河川や湖のコイ系ぐらい。だから鯉釣り師は昔からドラグの使い方知ってたようで、学生時代ゴムボートでプカプカ浮いてバス釣ってたら鯉釣り師がデカいの掛けてて走ったコイがボートの下通っていったことがある。走らせまくってからキッチリ上げてて、あんな魚を走らせる釣り方もあるんだなと思った記憶がある。
 逆に海だと砂浜でも沖でもなにも逃げ込む場所がなければ本来無理に止める必要もない。
 当然だけど同じ魚種でも状況によって止めなきゃならん魚だったり止める必要がない魚だったりする。例えば同じスズキ釣るにしても止めなくて良い場所なら6ポンドのナイロン道糸ハリス3号か4号あたりでドラグが鳴るのをドキドキしながらしばらく聞いてれば良いけど、カヤック出して杭周り狙うとなったら止めるために倍以上の16ポンドナイロンにショックリーダー40ポンドが必要だと感じている。多少障害物際も狙う近所では間の8ポンド道糸で場所毎にドラグの締め方変えている。
 
 っていう違いがある中で、日本の釣り人は長い間、淡水では止めなきゃならん魚を主に釣ってきたというのと、海では日本ならではの釣り事情で止めて釣ってたので、ドラグなんてのはラインが切れそうになった時にだけ滑る保険であって、なめらかに道糸を放出するよりしっかり止まることの方が重視されてきたという”ドラグ不遇の時代”が長かったんだと思っている。
 まず淡水では滅多に止めて止められない魚はかからないし、ドラグなんて締めッパで良かった。逆にドラグが滑るとアワセが決まらないので、最初ドラグ締めておいてアワせた後に魚がデカければドラグ緩めるというのが、むしろ技術として使われていたのが実態だと思う。
 今の若い人にはこのあたり意味不明かもしれない。今時の伸びないラインと刺さりの良いハリを使ってれば、アワセの時以上の負荷が後からかかる状況って想定しにくいだろうけど、そうじゃなくて軸が太いうえにゴツい返しのついたハリをビヨーンと伸びるナイロンラインで魚の口に確実に掛けるには”アワセ重視”で滑らせずに強くハリ掛かりさせることが必要で、ハリがかかった後はドラグ多少緩めて慎重にやりとりしても良いってのが実態だったんだと思う。そういう使い方には今じゃ低評価に甘んじている”リアドラグ”方式が使いやすかったのかも知れない。
 今でも太いハリを使わざるを得ない水生植物の茂った場所でのライギョ釣りではアワセが効きにくくて苦戦するけど、昔のナイロンラインの時代にはあわせてもライギョこっちに飛んできて全然かからんことも多かった。当時から玄人衆はダクロンという伸びの少ないナイロンの編み糸を使ってたようだけど、田舎じゃそんなの売ってなかったから、中空フロッグのぶっといダブルフックと比較したらまだ細いワームフックを使うホウグフロッグやらスワンプラットを使うようになって格段にライギョが釣れるようになったのを書いてて思い出した。
 昭和の時代、淡水の少なくともルアーの釣りではドラグはしっかり締まって滑らずアワセが効くのが良いドラグだったのである。

 じゃあ海の方はどうなのよ、砂浜での投げ釣りとか昔から人気の釣りじゃん?と思うだろうけど、そっちはそっちでまた事情があったらしくて、思いっきり遠投する場合にドラグが滑るとラインの摩擦で指を怪我する恐れがあって、これまたドラグはきっちり締まらなきゃダメだったのである。かつナイロンラインで遠投してたら道糸がショックを吸収してくれるのでドラグ締めっぱなしでもスズキぐらいなら何とかなったというのがあったんだと思う。なんともならなくてもアカエイのせいにしとけば万事問題なし。
 沖ならドラグ締めなくても良いジャンと思うのなら、アンタは昭和のというか今でもそうだろうけど、日本の遊漁船の釣りのなんたるかが分かっちゃいない。魚走らせてユルユル引きを楽しもうなんて不真面目な態度では船頭さんに「リール滑ってるよツマミもっと締めて」と怒られてしまうのである。ドラグノブなんてスプールを固定するためのツマミ扱いである。たまの休日ぐらいユルユルと楽しみたいと思っても、ジャパンでは船頭さんの監視の下、横並びで空気読んで太仕掛けで効率的にサッサとあげなきゃならんのである。
 釣り具会社のテスター様あたりがもっと細仕掛けで楽しみましょうと主張するのにも一理あるんだろうけど「そりゃテスター様は船貸し切り状態だろうから好きにやれるだろうけど、しがない素人衆は両舷に釣り人びっしり並んだ状態でそんな自分勝手が許されるわけないでしょ」とボヤきたくなるというもの。
 という感じで海でも日本じゃドラグ使ってたのは金持ちの道楽的な印象が強いと私が僻んで思っているトローリングぐらいで、磯の底物釣り師なんて太鼓リールのスタードラグをハンマーで叩いて締めてた始末である。
 唯一ドラグ使いそうな磯の上物師は、これが日本独自のガラパゴス化路線でドラグじゃなくてレバーブレーキという特殊な機構を育て上げてきた。凝り性の日本人らしい職人芸的な技巧を要求されるブレーキで、ブレーキの強弱が指で調整できるというより、本質はレバー一発で逆転スイッチを切り入れして根ズレしそうになったら一瞬で道糸を緩ませてライン切れを回避するという機能にありそうだ。
 磯に立つルアーマンも根ズレしそうになったらスプール返してラインを放出して魚を沖に走らせて「仕切り直し」をするとは読んだことあるけど、それを瞬時にやってのけるための機構らしい。
 西洋式のあらかじめ決めておいた負荷より大きな力がかかったらラインが出ていく「ドラグ」が自動的で車で言えばオートマなのに対して、自分でブレーキのタイミングや強さを手動で調整する「レバーブレーキ」はマニュアル車に相当するのかもしれない。
 オートマにはオートマの利点もあるけど、やりとりの途中でブレーキの効き具合をいじるなら、リアドラグ方式にしたって左手をハンドルから離して調整する分の時間差が生じるので、投げるとき以外は空いている右手の人差し指を最初っからブレーキレバーに掛けておけるレバーブレーキ方式の方が瞬時に対応できて理にかなっているように思う。加えて、そいうあしらいに技術のいる道具を使いこなす楽しさもあるだろう。
(訂正:レバーブレーキは逆転スイッチを切り入れして、グレの引きをためられる竿の角度を確保するのに使うそうで、レバーブレーキにはブレーキの効きの強弱を調整する機能はないそうな。あと青物にはハンドル逆転じゃ間に合わないので普通にドラグとかベール返してとかで対応するそうな。また嘘書いてゴメン。風雲児さん教えてくれて感謝です。)

 でもまあ、磯っていう障害物の上に立って魚を障害物に寄せてくる釣りだからそんな技巧が求められるんであって、単純に障害物から離せば良ければドラグ締めて、障害物無ければドラグユルユルでというので普通は間に合うと思っている。かつやりとりの途中でドラグをいじるのは難しい。私は何度も書くように「赤子泣いてもドラグいじらない派」である。
 普段のシーバス釣ってるときのドラグの使い方としては、8ポンドのナイロン道糸なのでいにしえからの教えに従うなら1/4の2ポンド(1キロ弱)に設定するところだろうけど、シーバスの場合ブレーキ強めで道糸張ってやりとりすると、やたら跳んだり首振ったりでバレる場合が多いのでもっと緩めの500グラム以下ぐらいのユルユルに設定しておいて、やりとりの間は一切ドラグノブには触らない。アワセはドラグが一瞬チッと鳴るぐらいを目標におもいっきりかますけどナイロンラインだと意外に力伝わらなくてなかなかドラグ鳴るようなアワセは決まらないのでその分しつこく複数回あわせる。PEとか伸びない道糸の場合だと逆にドラグきつめだと切れるぐらいにアワセの力は伝わる。初めてPEラインをベイトリールに巻いてバス釣りに行ったら14ポンドの強度のハズの道糸がアワせる度にバッツンバッツン切れて往生こいたものである。結び方云々以前に伸びがないと意外なぐらい衝撃に弱い。そういう伸びの少ない道糸を守る意味でも今日ではちゃんと”滑る”ドラグの重要性が増しているように感じる。
 ”赤子泣いてもドラグいじらない”の例外は明らかに口に掛かってるデカいコイの場合でヤツらはシーバスを想定したユルいドラグ値だと巡航速度で延々と走りかねないので口がかりならまずバレないのでドラグ慎重に締める場合がある。
 でもまず途中でドラグはいじらない。最初の設定は昔は秤で計ってたけど、最近は自転車の前カゴにルアーのフック引っかけて竿の曲がりを見ながらアワセ食らわせたり後ずさりしたりして決めている。
 赤子泣いてもドラグいじらない派としてはドラグノブは触らないけど、それでもやっぱりラインの放出を止めたいときや逆に出したいときは生じるモノで、障害物の方に突っ込み始めたとかで魚を止めたいときはスプールに指をあてて、なんならガッシとスプール鷲づかみして負荷をかけてやる。コレなら負荷かけてたら急に突っ込んだ場合でもドラグノブを元に戻すような手間暇掛かってかつ不安定な方法じゃなくて指を離せばすぐに元のドラグ値にもどるので”竿をのされてラインブレイク”とか、今時「あんたのリールにはまともなドラグついてないの?」と小馬鹿にされそうな恥ずかしい失敗を犯さなくてすむ。

  •  達人の映像とか見ると、ロウニンアジとかを最初の突進だけドラグ滑らせてかわしたら、ドラグ締めまくって鬼のようなポンピングで寄せきって勝負つけてたりするけど、あれ真似しようとしたけど相当難しくて、ポンピングで竿下げるときだけじゃなくてずっとゴリゴリとリール巻き続ける位じゃないと魚反転して反撃食らって腰砕けにされる。オレには無理。かつそういうゴリ巻き系の使い方するとスピンフィッシャーだとハンドルのピンが折れてハンドルもげるらしい。だから第3世代スピンフィッシャーには改造用の強化ハンドルが売られてたんだろうし、現在の高級リール様は最初っからバカみたいに丈夫にできてるけど、安易に道具の強度を上げて対応してしまうってのが正直気に入らないのでワシャそっちには行かずに済む方法を模索してきた。道具は大事だけど道具に依存するのは技術の進歩を阻害しかねないと思うんだけどどうだろう。まああんまり偏屈になるのもどうかと思うので、なんでもそうだし何度も書いてるけど良い塩梅が大事だとは思う。


 一方、止めてしまいたい場合と逆に道糸緩めたいときは、まずは竿を寝かせてそのぶん緩めるってのと、その延長線で腕を前に伸ばしたり水に落ちなければ前進したりというのがある。それで間に合わなければ小指で逆転スイッチ切って道糸繰り出すか、ベール起こして道糸放出だけど、ユルユル設定だと放出したい時って限られてて、魚が足下で食ってラインの伸びによる衝撃吸収とかが期待できないときぐらいで、そん時は即ベール起こすというのを知識として知ってた方がイイ。ちなみにアワセはライン送った後でも間に合うのでとにかくベール起こすのが先、ととあるシーバスボートの船長さんに教えてもらったけど、そこまで冷静な対処はできたことはない。
 参考までに書いておくと、今まで一度も起きたことがないけどドラグを緩めた方が良いとされている状況としては、想定外に走る魚を掛けて道糸がどんどん減ってスプールがやせ細ってしまった場合というのがあって、ライン残量少なきゃドラグ締めて止めなきゃでしょだと感覚的には思うんだけど、実際には長い道糸は水の抵抗も大きいのでそれだけで”止める力”が強くかかるようになっているうえに、スプールの直径が小さくなっているのでテコの原理でドラグが強くかかるようになってきているので緩めないと切れる。というのを昔釣友がネットで紹介してるのを読んだと記憶している。でもドラグ緩めて船で追っかけながら道糸回収するという選択肢がある釣りと、追っかけられない岸からの釣りとかでは条件違うだろうから、護岸からシーバスとか元々余裕のあるユルユルドラグで釣ってる釣りなら赤子泣いてもの基本方針どおりドラグいじらずで徐々に強くなるドラグが効いて止まってくれるのを信じて我慢、船で追っかけられる釣りなら同船者の皆さんゴメンナサイでドラグ緩めて追っかけてもらうとか、竿の曲がりとかでドラグの効き具合とかも感じながら、その時々の状況よくみて考えて判断するんだろうな。

 という感じで、現代の伸びの少ない道糸を想定するとスピニングリールのドラグの使い方の基本はどんな釣りでも上記同様にやりとり中にドラグノブいじらず止めたけりゃスプール手で止めて、道糸出したきゃベール起こすかハンドル逆転、でだいたい一緒だと私は考えている。あとは障害物までの”距離”によってどこまで走らせるかが決まってきて、魚の大きさや引き方とあわせて自ずとドラグ値が決まり、ドラグ値が決まれば道糸の強度が決まり、全体の道具立てが決まっていくという感じで、例外は力を上げようとしても限界のある道具である”自分の体”が使える道具立ての上限を決めるので、なんぼ引く魚を障害物の際で釣ろうとも、自分の体力で扱えない道具は使いようがないので、自ずと道具に制限がかかってくるという場面で、具体的にはまあまたロウニンアジとかなんだけど、そういう場合は裏技的に竿を真っ直ぐ魚に向けてしまってスプール手で押さえて”綱引き”しかないのかなというのが長き模索の結果の今のところの私なりの解答。


 で、使い方はある程度整理できたつもりなんだけど、ドラグってそもそも何なのよというところも、理解しておいて損はないので、具体的な実例をあげつつその構造やら仕組みやらを整理していきたい。

 ドラグはそんな複雑なしろものじゃない。以前サイトの方でブレーキについて書いたときにも、リールのドラグについては
 「原理は単純、スプール軸など(たまにスプール軸からギアなど介して別のところに持ってきている場合があるがだいたいダメ)に金属やらカーボンやらテフロンやら皮やらコルクやらの輪っかを何枚かあるいは1枚噛ませて、ネジで締め付ける。締め付けをきつくするとブレーキが強くかかる。以上。ぐらいのモンで、まあ、熱に強い素材やら適当な滑りの確保やら、表面積と直径は大きい方が良さそうだとかは分かるけど、根本的にめちゃくちゃ高性能なものが出るわけがない、単純な機能である。」
 と書いているぐらいで、その認識は今も変わらないんだけど、古いスピニングリールとかいじり回していて色々と感じたところもあるので、もう少し細かくみていきたい。

 まずはスピニングリールのドラグとして一番単純なのは、スプールの上面をドラグノブで直に締め付ける。スプール底の座面受けとドラグノブがスプールに接している2カ所の抵抗がブレーキとなる。とか書くとそれっぽくなるけど、要するにスプールを上のネジで止めてるだけで、ドラグとしてホントに使ったら安定したブレーキ力が云々より、摩擦面が削れていって不具合が生じる。ネジ止めするだけにしても接触面にはワッシャーぐらいかませてやれよというところで、大昔のオモチャのような安物以外ではまず見ないだろう。

 でも先日バラした我がルアー用の初めてのスピニングリールであるスポーツラインST-600Xは”つまみ”にワッシャーかませたのみ状態に近いモノがあって衝撃を受けた。70年代の安い日本製品はこんなモンでっせ。凝った浮き彫りで飾ってる暇あったらドラグパッド入れといてくれだと思うけど、どうせ締めっぱなしでドラグの”滑らせる”機能なんて使ってもらえないならコレでも問題なかったのだろう。事実私もこのリールのドラグに文句言ったことはない。基本は締めッパな時代のリールだったのである。
 でも同じような、ツマミにワッシャー噛ませたような単純な構造でも、ワッシャーやツマミの素材を吟味してスプールとの摩擦を上手く使って良いドラグに仕上げているのもある。
 写真左のスピンフィッシャーだと4400ssとかに採用されている方式は、カーボンシートのドラグパッドは耳付きでスプールに固定されていて、それと金属ワッシャーの摩擦でドラグを効かせるという、ドラグパッドがスプールと一体化してて、それにワッシャーかましてドラグノブ締めて終了。という単純な方式だけど、写真のようにドラグパッドの面積がスプール直径のいっぱい近く大きく取ってあるので、調整幅の狭さは若干あるかもだけど実用充分で、ドラグの滑り出しやら安定性やらは実に優秀で信頼できる。
 右の714Zの耳無しのテフロンワッシャー1枚をドラグパットとして使う方式も同様に単純だけどやっぱり信頼できるドラグになってて、枚数が多かったり、ましてやスムーズさを確保するためにドラグにベアリングまで入れる必要性は感じない上手な仕上がりになっている。

 ちょっとスピニングじゃないけど1枚ドラグパッドで素晴らしいのがティボー”リプタイド”でフライリール。写真左下の金属にコルクを貼り付けた大きなドラグパッドが左上のスプール底面を押す単純な構造だけど、調整幅も安定性も素晴らしく、ワシ程度のインチキフライマンが使うのはもったいない分不相応なテッドおじさんの力作で、90年代の登場から多少軽量化で穴が増えたぐらいで今でも支持を受けている。コルクって難しい素材のようで、ティボーの真似したのかいくつかのメーカーからコルク製ドラグパッドのフライリール出てたけど、小マシな魚が走るとコルクがオガクズになり果てるお粗末なデキのものも結構あったとか。

 でもまあ、スピニングリールのドラグの一般的な形は、耳付きとか多角形の「スプールと同期して回るワッシャー」と欠けた円状の穴とかの「スプール軸と同期して回らないワッシャー」でドラグパッドを挟んだのを重ねた”3階建て”のものだろう。ドラグが効きながらスプールが回るとき必ずワッシャー2枚はドラグパッドを挟んでズレる動きをする。
 なので全てのドラグパッドが上下の、あるいは上か下どちらかのワッシャーと摩擦しながら回るので安定してドラグ力が発揮される。
 限られた直径のドラグのスペースに複数のドラグパッドを入れることよって、表面積を稼いで安定したドラグ力を得るとともに、締め付けたときに”締まる”高さを稼ぐことで調整幅の広さにもつながっているのだろう。
 また、ドラグパットの素材の特性を踏まえたり組み合わせを考えたりということにより、ドラグの効き具合を調整できたりもするように思う。このへんまだお勉強が必要だと思うけど、例えば写真の左はスピンフィッシャー750ssなんだけどドラグパッドは下から白いテフロン、灰色のカーボン、カーボンという3枚になっている。一回試したことあるけど全部テフロンにすると滑り良すぎて強めのドラグ値に締められなかったように記憶している。1枚だけテフロンだと5~7キロのドラグ設定がちょうどやりやすい感じになる。もっと締めたければ全部カーボンとか、さらには滑りのさらに悪い石綿代替品のドラグパッドに替えてやるとかでいろいろ調整はできそうに思う。PENNには”バーサドラグシステム”というワッシャーとドラグパッドの並べ順を替えてドラグの効きを変えるドラグもあったりする。
 真ん中のキャリアーNo.1のドラグは、小型リールらしく低いドラグ値で作動が滑らかで調整幅も大きく、古いリールとは思えないぐらい優秀なことに改めて感心させられた。ドラグパッドは3枚とも良く滑るテフロン製のようだ。適材適所な素材の選択とか比較的低価格のキャリアーでもちゃんと3階建てのドラグを入れてて手抜きはないところとか、いかにも大森製作所のリールらしいところ。
 40年前のインスプールスピニングであるオリンピック製トゥルーテンパー727でもドラグの方式は写真右のように3階建てで基本一緒で、経年による変化でコルクっぽいドラグパッドがペッタンコになってるからか、一番下のドラグパットだけやや堅い別の素材でできていて、そいつが引っかかり気味なのか、やや滑り出しやら安定しない感じである。ただ、ドラグパッドは適当な素材を買ってきて作ればいいし、3階建ての方式自体は今時のリールと同じなので充分”良いドラグ”に調整可能だと思っていろいろ試してみた。そのあたりはまた別の機会に書いてみたい。
 他にドラグパッドとして使われる素材としては油をしみこませたフェルトとかも調整幅が大きくとれて、ドラグが熱を持つほどの高速でスプールを回す魚を釣るわけじゃない小型のリールとかで一般的なドラグパッドの素材の一つのようだ。

 他に特徴的なドラグを持つスピニングリールとしてはスピンフィッシャーの950ssmがある。写真は第4世代だけどスプール共通なので同じドラグの導入は第3世代の9500ssからである。
 一番上の写真見ると750ss同様にスプール上部にドラグ入ってるように見えるんだけど、ここの外しにくいCリングを外してみると、ワッシャーとカーボンシートが1枚づつ入ってるだけで肩すかしを食らう。
 実はドラグの本体はスプール底面に鎮座しているのである。
 今時のリールには珍しくもなくあるのかもだけど、ドラグの直径を大きくとるためにスプール底面を使うという、本気でデカい魚をドラグ使って獲る仕様のスピニングリールが、90年代の9500ssですでに登場していたというのがいかに先進的だったかは、当時チャーマス北村氏もフィッシャーマンの鈴木文雄氏もジギングでこのリールを愛用していたことからうかがえるというモノ。
 同じ第3世代のスピンフイッシャーでも8500ssから4500ssまでは750ss同様の3階建てのドラグで”ssj”が出るまではラインローラーにベアリング入れてたのも9500ssだけだったし、30ポンドナイロンが300m以上巻けるというデカさもあいまって、真に”漢”らしいリールだったのである。
 ドラグの構造自体は単純で、スプールの底にはめ込んで接着された土星の輪っか状のカーボンのドラグパッドに金属のデカいパッドを押し当てる方式で、確かにドラグの効きを左右するのはドラグパッドの円周外側の回ったときに移動距離が大きく摩擦が大きくなる部分だろうから、中心近くの部分はあまり効いてないのかもしれないし、ドラグパッドがへたって薄くなるときに周辺部から薄くなったりしたら中心部分の摩擦が相対的に増えてしまいせっかく直径大きい設計の利点が死に体になりかねないので意図的に真ん中を抜いているのかもしれない。素人にはその辺の細かい設計の妙が理解し切れているとは思えないんだけど、単にドラグパッドの数増やしました、面積増やしましたというのではなく、狙って設計しているンだということは想像に難くない。
 同じようにドーナツ状のドラグパッドを持つリールとしては、80年代の丸いアンバサダーの5000番台がそうで、それ以前の7000番台とかには既に3階建てのドラグが入ってたのとあわせて考えると、淡水での使用が主と想定される5000番台にそういう釣りで想定されるドラグの強さや使い方に適したドラグ方式を当時のABU社は採用していたんだと、5000のドラグパッド固着事件を経て理解するに至った不肖ナマジであった。


 あと、「(たまにスプール軸からギアなど介して別のところに持ってきている場合があるがだいたいダメ)」とか書いたし、リアドラグは効きがイマイチ的なことも書いてたことを先日反省したところだけど、写真右のオービス「バテンキル」は典型的なスプール軸からギアを介してドラグを作動させる方式のリールで写真の右下の雪だるまみたいに見えてる二つのギアの小さい方にくっついてるのがドラグで、同じ平面上にドラグを持ってきているのでリールが分厚くならないですんでいる。Sスイの店員さんに用途と予算を伝えて相談してお薦めされるまま買ったんだけど、ドラグがコレじゃダメなんじゃないかと買ってからちょっと思った。だけど、使ってみたら何の問題もなく充分優秀なドラグだった。マイコンのリアドラグがそんなに悪くなくて結構使えそうだというのは先日書いたとおり。
 このへん、理屈どおりじゃないんだけど、道具なんて実際使ってみなきゃ分からんってことだと思う。大森製作所とオービス様の技術力にとりあえず敬礼。


 という感じで、やっぱりドラグなんてのはそんなに複雑じゃなくて、でも大きさやらドラグパッドの素材やらそれらを生かす設計やらで良し悪しが確実に存在するモノだというのが私の今現在の理解である。
 ご大層に今時の高級スピニングリールにはドラグの滑らかな回転に寄与するためにベアリングまで入れてあるんだそうだけど、ワシにはその必要性がいくら考えても理解できない。
 ベイトリールのスプール軸にベアリングが入っているのは分かる。だって投げるときになるべく抵抗は少ない方が良くて軽く回ってもらわないと困るから。スピニングリールのローター軸にベアリングが入っている必要性も学習した。多少重いのは味のうちだと思ったりもするけどローター軸のベアリングが錆びて単なるスリーブと化したら使うのが嫌になる程度に巻くのが重くなって、少なくともスピニングリールにはローター軸に1個ベアリングを入れるべきだと思う。他の場所にはベアリングじゃなくても丈夫なスリーブとか軸受けでも何とかなるかもしれないと思っている。
 でもドラグってそもそも摩擦力で抵抗かけて回転を重くして効かせる機構でっせ。なんぼベアリングのところで摩擦が少なくて滑らかでも、ドラグパッドがブレーキ掛けてるのに滑らかに回る理屈がない。ドラグパッドより少ない抵抗で回ってドラグの仕事をじゃましないスリーブなりワッシャーなりが入ってれば、軸が通ってるスプールの穴自体も含め、引っかかって明らかに滑らかじゃない品質なら別だけど、その抵抗も含めてドラグって効いてきてちゃんとブレーキがかかるんじゃないの?ドラグにベアリング必要なぐらいの無視できないぐらい大きく不安定な抵抗がどっかで生じるっていうなら是非教えて欲しいものだ。「ドラグパット以外の抵抗を極力減らしドラグパット本来の性能を引き出し滑らかなドラグ作動を実現する」とか説明するのかも知れないけど、ぶっちゃけアホかと思うね。ほぼベアリングに対する信仰でしかなく、ベアリング様が入っていればありがたがってるんじゃないだろうか。
 ベアリングって軸を受けるのに回転抵抗少なくできるし小さくても摩擦ですり減らないという意味では丈夫だしで、軽い回転と軽量化には役立つけど、錆びたりして壊れる部品だし、昔より安くなって”高級”でもなくなってるとはいえスリーブよりは経費のかかるものだから不利な面もあって、軸さえあればどこにでも突っ込めばいいってモノでもないという認識だけど違うんだろうか?

 スピニングリールのことを改めて考えるきっかけになったトゥルーテンパー727のドラグをみると40年前から3階建て方式である。今でもそこからたいして進化してないしシーバスやら釣るためならほぼ必要充分だろう。トゥルーテンパーはドラグパッドがさすがにヘタってたのでちょっと調整したけど顛末記読んでもらえば分かるように魚釣るのに問題ないドラグになっている。

 500m突っ走るような何百キロの魚相手や、そこまでの大きさでもなくても最初の突進を通常使用する道具立てで止められない魚を相手する場面やら、細糸で慎重にやりとりする場面なんかではそれなりに”良いドラグ”が必要だけど、それ以外なら普通のドラグで充分だと思う。今時のリールなら昔の日本製みたいにドラグノブが単にスプールを固定するネジの機能しか持ってないようなリールはないはずなので充分である。

 PENNスピンフィッシャー以前は、ドラグ使ってやりとりすることを想定したような”良いドラグ”のついた大型スピニングリールは少なくとも日本製ではなかった。アングリング誌上で鈴木文雄氏が各社の大型スピニングの滑り出しカーブ等を比較していたと記憶しているが、たしかダイワもシマノも滑り出し引っかかってた。ってぐらいルアーでロウニンアジやらカンパチやら釣るようになるまで日本じゃドラグは”放置”されていた。それが釣り人がドラグの良いスピニングが欲しいと求め始めて、何のことはない欧米の真似して作ってた頃に戻って、まともなドラグを追求し始めたらすぐに”良いドラグ”は実現したんだと思う。それ以上は蛇足だと感じている。
 第3世代のPENNスピンフィッシャーと同等な性能で大型スピニングリールのドラグは必要充分だと思っている。カーボンのドラグパッドは大型リール用としては現在最良の選択だろう。
 ドラグの良し悪しは、実際にドラグ使わなきゃならない魚をかけないとなかなか評価が難しい。私がスピンフィッシャーのドラグに絶大な信頼をおいているのは、グレートバリアリーフででっかいヨコシマサワラかけた時に、尋常じゃない速さで走られてドラグがウィーンって音を立ててスプール回転して、ライン切られるんじゃないかと不安になったけど、7500ssのドラグは見事に安定した作動でしのぎきってくれたという経験があってのことである。20キロのキハダも30キロのロウニンアジもあれに比べれば走る速さ自体は一段落ちぐらいだったのでラインを引き切られる心配はしなくて済んだ。
 そういう”引き”を疑似体験するとともにドラグを試験するなら、実際に竿にリール付けてドラグ設定して原付とか車に結んで走ってもらうというのが冗談抜きで有効である。マグロとか本当にそのぐらいの勢いで走ってくし、走らせて獲る場合が多いからお薦めしておく。
 釣友が一緒にターポン遠征行くときに原付で走ってもらったそうで、アジア某国製のシイラとかでは問題なかったそこそこ良いリールがしゃくりまくってドラグ安定せず、スピンフィッシャー6500SSは滑らかにドラグ作動してPENN圧勝だったそうな。
 それでもPENNの評価が日本で低いのは、まあ重いからってのもあるんだろうけど、いまだにドラグをハンマーで打ちつけてた思考を引きずってるからでは?と思っている。ロウニンアジでも根に持っていくのを力ずくで止めようと考えすぎだと感じている。例えば根ズレ対策でメインラインを太くするとかはショックリーダーを長くとるのが定石でメインラインに根ズレで切れない太さを求めるのならむしろナイロンラインに戻るべきだろうとか、止めるためにドラグ値どんどん上げるというのは特殊な”パワーこそ力”的筋力崇拝だろうとか。そういう釣りがあってもいい。でもそんな使い方をしないできない普通の釣り人が、使いも使えもしないドラグ値を備えた過剰なリールを特殊な玄人の言うことを鵜呑みにしてありがたがってどうすると思う。
 そもそもそんなに力をかけて壊れないリールが必要ならベイトリール使えば良いじゃんと思ってしまう。
 日本人はドラグがまだ分かってないんだと勝手に思うし、スピニングリール自体分かってない気もする。「オマエの方が分かってないわエラそうに」と思われるだろうけどそう思うので書いてしまう。
 スピニングリールは無理したら壊れるんだって、そこをどうするかが腕の見せ所で作戦の立てどころなんだって。
 無理矢理止めなきゃならないような所では魚をかけないっていうのも取り得る作戦だし、スピニングリールの構造上どうしても強く負荷がかかっているときに巻くと、ローターの片方に寄っているベールアームの方にローターが歪むので”巻けない限界”が生じると織り込むべき。その限界があるのでそれにあわせて他のギアだのハンドルだのの部品の強度も造られているハズである。そこを高負荷がかかってる状態で巻くからハンドルやらなにやらが壊れるのだと思う。じゃあってハンドルだけ強化しても次はドラグやらギアやら負荷のかかるところからこわれて、結局全体を”ゴリ巻き仕様”に設計し直すようなはめになる。
 スピニングリールでは”ゴリ巻き”はしないし巻きアワセもしない。っていう制限つけて使えば、おいそれとは買えなくなってる値段の高級スピンニングじゃなくても充分釣りが成立する。
 どうしても魚を止めなきゃならないときは、リールを巻くんじゃなくて巻く手はハンドルから離してリールのスプールを直接鷲づかみで止める(やけどしないように手袋したり水かけたりの工夫は自分で考えてやってね)。必要ならそのとき竿は真っ直ぐ魚向けて綱引きする。それで魚が止まって竿が立つようになったら竿を立てた分だけ巻き取るポンピングで寄せる。高負荷でゴリ巻きしなければスピニングリールもそうそう壊れない。
 というのが、ドラグについてあれこれ考えながらそのまま勢いでスピニングリールについても考えた私の今のところの整理である。

 異論はあるだろうし正解もあるようでないんだろうけど、メーカーやらカリスマやら他人の言ってることを鵜呑みにせず、ちゃんと考えて釣り人それぞれがたどり着いたのなら、それがその人にとっての正解だと思うので、みんな誰かの意見に安易に流されずに、いろんな人の言うことは参考にしつつ自分で納得いくまで探求してみたほうがいいよと、おせっかいながら書いておきたい。

 釣り人みんなバカばっかりで簡単に道具造る側に騙されていると、ろくでもない道具しか売ってない状況になると感じでいるので、アホみたいに他人の下した評価を鵜呑みにする輩の多さを腹に据えかねてエラそうに書いてみたところである。ああ~スッキリした。

2018年11月17日土曜日

覚悟完了!PENNスピンフィッシャー”ウルトラスポーツ”714Z

 覚悟とは性能を凌駕する魂のことなり!

 ということで、714から三十有余年にわたり釣り人の魂と共にあった漢のリールである714Zの実戦導入の準備は整った。

 今回はその準備の模様など、古リールに興味のある人の参考になればと公開してみる。
 さあ皆さん思い切って踏み出して、共に深い沼に沈もうじゃありませんか。




 とりあえず、お手入れの基本は分解清掃からだと思うので分解して、クレ666吹きかけて歯ブラシでゴシゴシ、ティッシュでキュッキュから始める。
 ちゅうても単純な設計なのですぐバラせる。ローターの下は706Zと似たようなもので極めて部品点数が少ない。
 ローター周りもそれ程ごちゃついてはいないのでたいしたことはない。
 でも造りは無骨でも丁寧かつ丈夫な感じで、そこはPENN伝統の持ち味に加えて古い造りのリールならではの風合いかと。
 ラインローラーを止めてるナットがかしめてあり力掛ければ外せそうだけど戻せなくなるとまずいのでとりあえずラインローラー回ってるし外さず進める。


 古いグリス、オイルを拭き取って新たに主軸とボールベアリングにオイルを注し、グリスをギア周り中心にグッチャリとグリスで濡れていない場所がリール内部にないように盛って、ベアリングの上下もグリスシーリング。
 とりあえずこれで、組み立てればギア等内部機構関係はひとまずよしかなと思って蓋締めてハンドル回したら妙に重い。
 何か間違えたか?
 同じような内部機構の430ssは同様の注油等で軽快なのでどうしたもんだろうと考えて、ハンドル軸とそれを突っ込む長いスリーブはグリスじゃなくてオイルだったかな、この時代のは省略だけど元々はここにオイル穴空いてたぐらいだしと、また蓋開けてグリスぬぐってオイル注して戻して、しばらく回してなじませたら軽くなった。
 軽くなったといってもウォームギアなのでそれなりだけど、そこは味わいってことで。


 この状態でも、とりあえずは使えるといえば使えるんだろうけど、トゥルーテンパー先生の教えによると、ラインローラーの傾きがきついと糸ヨレがきつい。結構傾いてる。
 なので、ベールアームが返ったときに受け止める部分の樹脂製のクッションを嵩上げして水平近く調整。
 クッションは塩化ビニール製のパイプ輪切りにしたのが丈夫でいいのでそれを使った。トゥルーテンパーで経験済みなのでサッと対応できる。

 ついでに、ベール返りがガシャンと強い場合は開く角度をバネの穴の位置やらバネやらいじって優しくカションと返るようにすると部品長持ちするようだけど、強いのか弱いのかあまり他の例を知ってるわけじゃないので、とりあえず保留で様子見。



 あと、実戦においては物資の補給は必須。スペアパーツだのは壊れてからでも間に合うけど、スペアスプールの弾数は釣果に直結するので素早く確保しておいた。
 高級リール様をスペアスプール無しの一台きりで使うぐらいなら、使える安リール2台買ってスペアスプールも2個ぐらい追加したほうが実釣能力が格段に向上するはずだと思う。
 714Zは高級リール様以上に「故障しない」リールだと判断して、いざとなったら緑の714を2台目として運用するけど、基本1台での運用を試してみようと考えている。
 しかし今時の物流はすごいね。米国のMYSTIC REEL PARTS」にネットでポチッとナと注文して1週間とかからずモノが届く。


 これで使えるなと、ラインなど巻いてみる。
 ここで問題発生。ライン巻いたらえらい後ろ巻きというかテーパー状に巻けてしまった。
 これって実は90年代あたりのスピニングリールの標準らしいって話で、キャスティング競技や砂浜からの投げ釣り遠投のためのスピニングリールやらからきたテーパーの付いてるロングスプールがルアー用とかの小型スピニングにも流行ったことの影響で、既存の機種でもやや後ろ巻きに調整されて売られてたんじゃないとか聞く。
 確かに遠投性だけでみたなら、前に巻かれたラインが邪魔にならないので、ラインが放出されるときスムーズに出て行くので利点となる。
 手返しとか無視していい遠投競技なんかでは、とにかく1発投げられればそれで良い的な考え方でミッチェルとかにも”ウエディングケーキ”みたいな変態リールがあったし、日本製でも今でも続いてると思うけどアウトスプールのスカートぶった切った超長いスプールのとかがある。

 でも、ルアーの釣りでは繰り返し投げ続けるので、ラインが放出されやすいことによる負の側面である、ドバッとラインがダマで出て行ってしまったりする不具合が生じやすい。なのでルアー用のスピニングリールのスプールの歴史を俯瞰すると長くなったり短くなったりしつつなんとなく普通なところに戻ってきている。ダイワは近頃逆にテーパーを付けてトラブル防止を謳ってるけど、正直、羮に懲りて膾を吹いてるように見えて馬鹿臭い。普通でいいんだろこんなモンよ。普通の道具で普通に投げられねえんなら腕が普通より悪いってことだろヨ。ってなもんである。

 ということで、普通にまっすぐ平行に巻けてテーパーも逆テーパーもつかないように調整する。
 後ろ巻きになるのを調整するには、前に出すぎてるスプールを下げてやる必要がある。前に出すだけならスプールの根元に高さ調整で追加でワッシャーでも噛ませてやれば事足りるけど、下げるには逆に引き算でスプールの根元のワッシャーを薄くするか、それでも足らなければ主軸の後端のネジ止め位置を加工する必要が出てくる。後者なら金属加工の手段をもたない素人の手に余る。
 とりあえず様子見で、まずスプール根元のワッシャーを抜いて、直接スプールの底面と、スプールが刺さってる軸のスプールを受ける面が接触するようにしてラインを巻いてみたらほぼ平行に巻ける。金属加工までは必要なさそうで一安心。
 後はいかに薄くて丈夫で滑りの良い素材を見つけてきて、純正のワッシャーを代替する薄いワッシャーに加工するかというところだ。
 さすがにそのままワッシャー挟まず金属どうしが接する形だと、ドラグが滑るときに摩耗するだろうからまずい。ドラグパッドの大きなテフロンが押さえつけられる力でドラグの効きが調整されるので、ドラグパッドのテフロンシートよりワッシャーが滑りが悪いとワッシャーがドラグパッドの役割を奪ってしまう形になり、せっかくPENN純正の効きの良い安定したドラグがもったいない。
 同じテフロンのワッシャーなら直径が小さいので総体的に摩擦が小さく、径の大きいドラグパッドの仕事を邪魔しない。純正はテフロンのワッシャーである。
 通販でテフロンの薄いシートを探すと、条件に合うようなのがなかなか見つからなかったけど、代わりに使えそうなのを見つけた。
 パン生地こねたりうどん打ったりするのにベタ付かないクッキングシートというのが、ガラス繊維の薄布をテフロンコートしたもののようで0.13ミリと紙のように薄いけど耐熱性とかもあってよさげで、60×40を3枚もいらんけど値段も千円位なので必要な大きさの穴開けポンチと共に購入。
 届いてみるとこれがなかなか良い塩梅の丈夫な物で薄さも申し分ない感じなので早速ポンチで抜いて純正のワッシャー外したスプールの根元にグリスちょいと盛って装着。
 ドラグの作動は問題ないようで滑りも充分良いようだ。これでしばらく破れたりしないか確認しつつ使ってみよう。多分大丈夫そうな感触。
 これ素材としてなかなか優秀で、台所用品としてももちろん使えるけど、薄くて丈夫で滑りが良いという性質はリール改造の素材としてもあれこれ使えそうな予感。良い買い物だった。

 で、改めてラインを巻いてみたらちゃんと平行巻できてて、スプールナイロン8ポンド用2個とセイゴ釣り用の4ポンド1個を用意して準備完了とあいなった。
 すでに430ssgの代わりにシーバス釣りに行くときの控えとして持っていってるんだけど、トゥルーテンパー727が普通に6時間労働とかこなせるようになったので今のところ出番はない。
 バチ抜け時期は竿との相性から4400ssを使うので、多分初陣は来年5月ぐらいか。その前にセイゴ釣りで試投してみるか。
 いずれにせよ楽しみである。
 

 インスプールのリール使ってみたら、そんな特殊でもなくて普通に使えるし、単純で自分で整備したり調整したりという余地があるのも、道具いじる人間には楽しい玩具である。
 興味があるけど、アウトスプールに慣れてるからな、と二の足を踏んでいる人がいたら、一つだけ重要な点に気をつけて思い切って試してみて欲しい。
 たった一つのインスプール初心者の冴えたやり方、は「熊の手」対策が施されている設計のリールを買うことである。
 今使ってる、オリンピックのトゥルーテンパー727も準備完了714Zも、ベールを返す時に手で無理矢理返そうとしても返せない。ベールを開いた状態で引っかけて止めるための部品が分厚く、かつ、ローターから保護の出っ張りが突き出ている。
 オリンピック、PENNの70と71が付く系以外にもダイワの古いインスプールにもこういった熊の手阻止策は講じられているのが見て取れて、なんてことはない昔の釣り人も手で起こして壊しがちだったんだろうと推測できる。
 むしろ人気あって値段の付いてるミッチェル、カーディナルの両巨頭が玄人向けで、値段も安くて入手しやすいそれ以外にこそインスプール初心者向けの機種が多い気がする。
 右手の人差し指でライン放出調整してハンドル巻いてベール起こすのはすぐに慣れます。

 ミッチェルのベールを手で起こして壊して以来30年に及んだトラウマを克服し、今ここに声を大にして叫びたい。

 インスプールしましょ!!

2018年11月10日土曜日

好き好き大好き寵愛してる。

諸君 私はPENNが好きだ
諸君 私はスピンフィッシャーが好きだ
諸君 私はPENNスピンフィッシャーが大好きだ

4400ssが好きだ
430ssmが好きだ
7500ssが好きだ
9500ssが好きだ
950ssmが好きだ
4500ssが好きだ
5500ssが好きだ
706zが好きだ
4300ssが好きだ

近所で 珊瑚礁で 河川で 渓流で 黒潮で
護岸で 地磯で 湖沼で 干潟で 水路で

水辺で使われる ありとあらゆるPENNスピンフィッシャーが大好きだ

水面で一心にバチを食っているシーバスにモグラ叩きでルアーを投げ込んでいくのが好きだ
アワせた直後空中高く跳び上がったシーバスが水中に戻って4400ssに重みを伝えてきた時など心がおどる

私の操る7500ssがロウニンアジの泳力を受け止める様が好きだ
悲鳴を上げて逆転するドラグがそれでもラインを切らさず持ちこたえた時など胸がすくような気持ちだった

4300ssのスプールに左手を添えて道糸の放出を調整し思う場所に投げ込んでやるのが好きだ
恐慌状態のイワナがルアーに追いすがってくる様などはもうたまらない

カヤックの上で4500ssのドラグを滑らかに滑らせながらワカシが疾走していく様をみる時など絶頂すら覚える

諸君 私はスピンフイッシャーを望んでいる

「PENN!! PENN!! PENN!!

よろしい ならばスピンフィッシャーだ
一心不乱のスピンフィッシャーを!!

我らはすでに時代遅れなのかもしれない
だがスピンフィッシャーは一騎当千の古強者だと私は信仰している

メイドインジャパンの高級機種を崇拝している連中に恐怖の味を思い出させてやる
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる

状況を開始せよ
征くぞ諸君



 ほんとすいません。714と714Z買っちゃいました。
 とりあえず今使ってる人生初のインスプールのスピニングリールである「トゥルーテンパー727」は調整もすんで快調だし、”釣れてる時は道具を換えない”は鉄則だと思うので、少なくとも今期はトゥルーテンパー先生にインスプールのなんたるかを教わりつつ修行するんだろうなと思ってて、どうせ自分のことだから次はPENNのインスプールに手を出すのは分かってるにしても、とりあえずは鬼が笑うような先の話だし、考えないでおこうと一旦放置することに決めた。そのうち本国人気に応えて大型インスプールを復刻生産しているピュアフィッシング社が小さいインスプールも復刻するかもだしその時買えばいいやとも思ったのは以前書いたとおり。
 しかし、一旦放置と決めた次の瞬間からもうPENNのインスプールのことしか考えられなくなってしまったのだよ諸君。
 気付けばネットオークションで落札相場調べてたり、使ってる人の評価を読んでみたり、昔のPENNリールジャパンやコータックのカタログで糸巻き量とか調べてみたり。
 「もうコレは買うしかしかたないナ」
 と観念して、ネットオークションで”第1世代”緑の714と”第2世代”黒金の714Zを落札した。
 幸いPENNスピンフィッシャーはカーディナルやミッチェルのような人気機種じゃないので、70年代の緑の時代のモノでも写真の箱入り娘で多少スレ傷がある程度のものが1万円台前半、90年代の半ばまで第4世代と並行して現役で売られていた714Zなど単なる中古価格でしかなく7千円ぐらいが程度良いやつの相場である。ポチッとナってなもんである。入札私だけで、だいたい相場の値段だった開始価格で落とせてあんまり人気がなくて助かった。

 「おいおい、買うのなら同じ機種を2台じゃないのか?」と玄人衆なら思われるかもしれない。もう生産してない機種なら予備機としてや部品取りを考えると、同じのを2台買うのが、収集ではなく実戦投入を目的とするなら理にかなっている。特に同じスプールが2個手に入るのは大きい。
 でも心配ご無用。スピンフィッシャー714と714Zは実は”色違い”といって良いぐらいの機種で、設計もほとんど変わっておらず、部品もほぼ共通なのである。
 なので、左の写真のような着せ替え人形的お遊びもできる。意外と黒銀は渋くていいジャン。

 スピンフィッシャーの歴史は1961年にまで遡る(「ベールアームは世界を回る」「MYSTIC REEL PARTSホームページ」参照)。
 その歴史をチョイと紐解いてみると、一番最初の機種はおそらく「700」でローターのカップが多分その後の機種のように鋳造(ダイキャスト)してから内側を削ったものではなく、筒状の上部と叩き上げたカップ状の下部を溶接しているらしいことがローター上部と下部の色の違いから見て取れる。
 ただ、この初代から内部のギアだのの機構はお馴染みのウォームギア方式が鎮座してたりして、90年代の半ばまで「Z」シリーズに引き継がれて続いたスピンフィッシャーのインスプールのリールは、基本的に同じ設計を使って30年以上マイナーチェンジを繰り返して生産されてきた超御長寿シリーズなのである。小型の714についても箱に入ってた取説に「1975」年の文字が見えるので70年代には登場していたようである。ちなみにスピンフィッシャー714のミドルネームは「ウルトラスポーツ」のようで714Zにもミドルネームは受け継がれているのが本体側面に見て取れる。ちなみに一番小さい716、716Zのミドルネームは「ウルトラライト」。他もミドルネーム?あるんやろか?
 ”PENN公式”と言って良いピュアフィッシング社の整理では緑の(たまに青も見かけるけど、百貨店別注の茶色もあったそうな)700番台が”第1世代”で、黒金の「Z」付きの700番台が”第2世代”とされているけど「MYSTIC REEL PARTS」さんところの整理では、むしろ「Z」付こうがインスプールの700番台(とアウトスプールの747と757)は全て”第1世代”で、逆に公式では”第3世代”にまとめられている”3桁ss”と”4桁ss”が実は世代が違っていると整理している。外見で見れば同じアウトスプールで似ている3桁ssと4桁ssが意外に設計に変更が加わってること、外見が緑から黒金に大きく印象を変えた無印とZ付きの700番台が実は色違いに近いことを知ると、ピュアフィッシング社の公式見解より「MYSTIC REEL PARTS」社の整理の方が的を射ていると思える。両者の整理の観点が、視覚的に分かりやすく歴史を示したいのと、部品を注文する都合上設計等の実態を反映させているのと、というそもそもの目的の違いがあってどちらが間違いということではないのかもしれないとは思うけどね。さらにいうなら細かな仕様変更が繰り返されてきているので同じ世代でも年式や”ssj”のように販売地域によっての違いがあったりするので簡単に整理なんてできないよね。

 一番上のずらっと5台並べた写真は、下から714、714Z、430ss、4300ss、430ssgでスピンフィッシャーでは2番目に小さいサイズのリールで渓流やらシーバスなんかで使う機種達なんだけど、714、714Zを分解して内部構造把握しつつ使えるように調整しようと思ったら、他の後継スピンフィッシャー達との違いもなかなか面白かったのでコレからちょっとその辺について紹介してみたい。

 まずは、714と714Zの公式第1世代と第2世代の違いについて「最大の違いは色の違い!」と書いてしまうとズルッとずっこけてしまうかもしれないけど、結構真面目に色とか外見とかって性能やら内部機構やら以上にリールにおいて重要な要素だと思うんですよ。だって、スピンフィッシャーっていったら黒金仏壇カラーで、その印象は「海で強いぜスピンフィッシャー」な性能面の印象と分けがたく関連づけられて確固たるイメージが形作られるに至ってて、ピュアフィッシング社の下での第5世代「SSV」や新しく出たばかりの第6世代「SSⅥ」もその配色を踏襲しているぐらい重要な要素になっている。その違いが小さかったとは思えない。
 色以外の変更としては、大きいモノでもサイドプレートが重い金属製から樹脂製に変更されて軽量化が図られていること、あとは本体のハンドル軸の根元に注油穴が設けてあったのが入手したZでは省略されていたこと、ドラグノブの形状がちょっと違うぐらいのもので正直設計的にはマイナーチェンジだと思う。むしろサイドプレートをあけて違いに驚くのは714のグリスの盛りっぷりで「日本よ!コレが本場米国70年代方式のグリスシーリングだ!!」とでも言わんばかりで、面白すぎたのでそのままの状態を保存すべく714のグリスについては”ソッ閉じ”しておいた。プレートの方にギアの形が分かるぐらいに水色のグリスが盛り上がっているのが写真でおわかりだろうか。

 ハンドル軸根元の注油穴については、430ssとの関係もあって面白い。この部分に注油穴を設けてあるのは、実は手元にあるのでは714と430ss。
 多分コレ、714Zに注油穴がないのは途中から省略されたんだと思う。714Zと430ssはインスプール版とアウトスプール版の兄弟機だと思っている。1枚目の写真で比較してもらってもハンドルの上のあたりの本体の丸いちょっと官能的な感じの曲線なんかも同じで、それは2枚目の写真見れば明らかなようにでっかい真鍮製のウォームギアが鎮座しているからそういう曲線になるんである。機能美っていっていいでしょ。
 で、この3機はローター除いた内部の機構はほとんど一緒で430ssで逆転防止がカリカリ鳴らないサイレントドック方式になってるくらいで、だいたい一緒なのは写真でも分かるだろうか?714は内部も緑。
 こいつらにはベアリングがローター軸に1個だけで、しかもハンドル軸は片軸で支えている形なので支えているハンドル側のスリーブは長くて、途中に”油溜まり”の部分を設けた真鍮製のものである。そういう長くて摩擦面が大きいスリーブには注油が大事ということで油溜まりの所に注油穴がわざわざ開けられてたんだと思う。
 ちなみに、より新しい4300ssと430ssgのウォームギアはおそらく軽量化のためだと思うけど小さくなっている。この2機についてはオシレーションカムが一枚板を加工したモノから鋳造一体成型ものに変わっている程度で2機間で大きくギア方式を変えたモノではなく共通している。
 3桁430ssから4桁4300ssになった時には、スプールは共通のモノにしつつも、内部の設計を大きく変えており、この大きさにおいては、単にボディー素材が金属から樹脂素材に変わったことに伴うマイナーチェンジにとどまらず大きなモデルチェンジがあったと整理して良いように思う。ボディー素材とギアの他に、もう一つこの時の大きな変更を指摘するなら、ハンドル軸の両サイドにボールベアリングがぶち込まれて、ハンドルが左右どちらにも付けられるようになっているところか。

 話を714Zの「注油穴の省略」に戻すと、アウトスプールの430ssには注油穴があるのになぜそれより古い設計の714Zで省略されているのかと疑問に思うかも知れない。これは設計自体が714Z(実質714)よりアウトスプール化した430ssのほうが新しいのは事実なんだけど、714Zのほうが長く製造されていたから、経費削減かなんかで後年製造された714Zでは省略されていたとかじゃないかと、推定でしかないんだけど思っている。1995年のコータックのカタログでは714Zが健在でまだ注油穴が残っており、アウトスプールの430ssは既に4300ssに代替わりしていることが確認できる。私の手元に来た注油穴無し714Zはそれより後年の製造なのかなと想像して楽しんでいる。

 こういう、部品を同じ世代の”大きさ違い機種”はもちろん、世代超えていろんなモデルで共通にしてしまうというのは「せっかくニューモデル買ったのに古いのと同じところばっかりで新鮮味がないジャン」と、アホな客に思われてしまいがちだけど、進化した部分や設計思想に基づいて変えた部分以外を「変えない」というのは、新しく設計し直したり金型作ったりという経費が削減できて製品単価を抑えることができて売る側も買う側も利点が大きいはずである。また、共有部品で長く修理が可能になるのなんかは、ちょっと売る側は困るカモだけど使う側からしたら良いところばかりなのに、今のリールは同じ時代の旗艦機種の本体設計を流用して、素材やら部品やらの経費抑えた普及機作るなんてのはあるけど、世代間はあんまり共通の部品なんて使ってなくて「モデルチェンジ後は買い換えてネ」という売る側の都合ばかりが強く感じられてあんまり気分良いもんじゃない。
 ダイヤモンドキャリアーがベールスプリング折れて、ナマジ的次世代小型主力機を選定する際にダイワトーナメントssと4300ssで比較検討した末に4300ssで行くことに決めて、やっぱりぶっ壊れたときの予備機は欲しいなと思ってたときに釣具屋の棚に眠っていた430ssを発見して、スペアスプール共通ということで即購入。実釣でも感触を確かめていたところ、まだ雪深い季節の岩手の渓流で雪道でコケてハンドルを折ってしまった。まあ一人で携帯も持ってない時代に山に入っており、足でも折ってたら遭難沙汰で430ssのハンドルが代わりに折れてくれて助かったと思うことにしようと、すでに4300ssに代替わりして久しいし、取り寄せようにもハンドルだけはもないだろうなとSスイにダメ元で聞いてみたら、あっさり「大丈夫ですよ。430ssのハンドルはインスプールの714Zと共通で714Zはまだ売ってますから部品在庫あるはずです。」との回答。無事430ssも復活して、やっぱりPENNだなコリャとPENN愛というかPENN信仰が深まったのであった。


 今回も714Zを使う前提で部品を買い足ししようと、ついでにあれこれ足りなくなりそうなのがないかチェックしていたら、部品使い回しの多さのおかげで、実際に在庫しておかなければならない部品種類数が少なくて済むことに改めて感心した。714と714Zのドラグパッドは純正は白いテフロン製なんだけど、もう「MYSTIC REEL PARTS」さんにも在庫がないということで一瞬焦ったけど、説明読むと「パーツナンバー56-440を耳切って使えばいいんですよ」てなことが書いてある(訂正:大きさ確認したら耳付きのままで少し隙間が空くけど使えた)。パーツナンバー56-440は黒っぽい灰色のカーボン製の3方耳付きのドラグパッドであり440ss、4400ss、440ssg、430ss、4300ssに共通で714系にも使用可能な使い回しの効く部品なんである。という例で部品共通が便利というのがおわかりいただけるだろうか。

 ということで、どこを第2世代と第3世代の切れ目とするかは別にして、大きな変更に伴って変えるところだけ変えてきたスピンフィッシャーの歴史について、同じ大きさの機種が”公式”の第1世代から第4世代まで5台揃ったので、ついでにと重量とかも測ってみたら、これまた面白い結果が出てきたので、ナマジ推論と合わせてご紹介したい。

 早速計測結果を書いていくと、714:275g、714Z:254g、430ss:260g、4300ss:248g、430ssg:283gとあいなりました。
 ちなみにライン巻いてない空スプール状態で、グリスやオイルは入れたままの湿重量。
 714から714Zの間で20gぐらいの減量に成功しているのは、片軸でハンドル軸を受ける設計だと強度とかは必要ないサイドプレートを樹脂化したのが効いてるのと、地味に714のグリスシーリングの”グリス重”が効いてるのかも。
 でもって714Zをアウトスプール化した兄弟機430ssは5グラムほど重い。インスプールの方がシンプルに軽く作りやすいというTAKE先生説を裏付ける結果。まあ5グラムなんてワシャ気にならんけどね。
 でもって4300ssはでっかいウォームギアがこのクラスでは過剰だろうという意図からかギアを小型化し、本体も軽量化のため樹脂製にしたかいあって、最も軽い248gを記録した。他のメーカーの同程度の糸巻き量のリールと比較したらそんなに軽くないのかも知れないけど、軽量な小型リールにしたいという意図が明白に分かるモデルチェンジだったのだと思う。ちなみに糸巻き量は8lbで160ヤード。2号150mってところで日本製だと2000番程度か。
 でもって、人生後半を任せることにしている430ssgがまさかの最重量283g。どないなっとるねン。逆転スイッチすら省略のこれ以上無いぐらいにシンプルな造りなのにどこで目方食ってるんだ?としげしげ眺めてみると、なんとなくカッチョ良い今時風のハンドルが怪しいので、4300ssのハンドルと比較してみた。結果、4300ssハンドル:25gに対して430ssgハンドル:33gとこれだけで8グラムも違っている。TAKE先生のお言葉「ハンドル軽いは七難隠す」を信じるならとんでもねえ改悪である。
 たぶんおケツの金属部品も重いんだろうし、550ssgから下の大きさの機種で共通という逆転防止機構の一方通行のベアリングもこのリールに対しては過剰な丈夫さで重くなる要因かも知れない。
 ただ、この430ssgが人生後半を任せるに値するリールだという確信は私の中で全く揺らがない。だって使ってて重くもないし、丈夫なことは証明してあるし、なんと言ったって快適に魚釣れてるモン。いいリールだもン。重い分丈夫で安心だモン。

 重さとか、ベアリング数とか値段とかのカタログ数値、人様の評判なんてそれほどあてになんないって話だと思う。使ってみて自分に合ってるかどうか、使いやすいかどうか、好きになれるかどうか、それだけのことだと思う。
 小型リールにおいて自重の重い軽いはハッキリ言って気にしたことすらない。4300ssから430ssgに変えたときも、重いとは思わなかったし今回測るまで知るよしもなかった。
 でも回転の重い軽いや特性の違いは気になる程度に違うと思っている。ローターが金属で回転に慣性力が強く働いて回り続ける傾向のある430ssと樹脂製ローターの4300ssでは4300ssの方が巻き取りや回転が軽く感じる。
 ただ、渓流ではそれほど慣性力の強いローターの利点を感じることはなかったけど(悪いとも感じなかった)、海のおもいっきりルアーを早曳きしなければならないような状況では”回り車”のように勢いついて回り続けてくれる重いローターは使いやすくて有利だと感じてた。今時息止めての高速巻きなんて流行らんからローター重いリールが評価されることなんて無いだろうけどさ。
 てなぐらいで使い方やら個人の好みによって、どんなリールがイイかなんて違って当たり前。
 私は430ssgのというか第4世代スピンフィッシャーの、とにかく経費削減して単純化して部品削れるだけ削りつつ、スピンフィッシャーらしさは出して安っぽくならないようにという、身も蓋もない方針に基づいて作られただろう必死さと、ある程度スピンフィッシャーらしさが残せている風合いに好ましさを感じる。ハンドルなんか軽きゃいいんじゃと安っぽい見てくれのが付いてたら、ただでさえ樹脂製で安っぽいのにデザインで見るところネエじゃん。”PENN使い”にとって8gぐらいはどうてっことねえよと思うのである。全体で35gも違うって?そんなモンは誤差のうちじゃ。ゴチャゴチャいうてると9500ss(1kg近くありまっせ)でぼてくりまわすゾ、体鍛えとけヤ!!

 ということで430ssgを最後の小型スピニングと心に決めつつも、714Zにも浮気してみるついでに、新型の第6世代やまだ触ってない第5世代も使ってみようかと検討してはみた。結果、それは止めておこうということになった。
 多分VもⅥも良いリールなんだろう。Ⅵはまだ謎の部分は多いけど、ⅤはPENNらしく丈夫でメンテナンスしやすくて黒金なのは写真と展開図見ただけで分かってしまう。ドラグも相変わらず良いんだろう。
 でも、既に日本のリールと一緒で同年代の他のシリーズとの基本設計とかの共用という方式になってきているようで、Ⅴの展開図見て部品番号でみる限り昔のシリーズとの部品共有はなく、世代間断絶みたいなことになっている。
 第4世代が出たときには、4桁第3世代で充分間に合ってたけど、スペアスプール共通という世代間をまたぐ使い回しが効くのは愛用者には実にありがたいと感動して、一票入れるつもりで買ったけど、VとⅥにはそこまでして買い支える義理を感じない。
 VにもⅥにも10500という50ポンドナイロンモノフィラが255ヤード入るとんでもない糸巻き量の超大型機が用意されているので、磯からサメとか釣るのにスピニングで太いナイロンラインの糸巻き量が欲しいときにはお世話になるかも知れないし、6500サイズに設けられているマニュアルピックアップ方式のベールレス仕様機も気になるけど、とりあえずは必要ないかなと。

 それから、根っこの部分で、世代が新しくなる毎にやっぱり部品数が増えて、スピンフィシャーですら複雑化しているということが、自分にはあんまり好ましく思えないというのがある。
 もちろん部品が増えて複雑化した分性能や機能が上がっているのだろう。それは悪いことじゃないのかもしれない。でも、自分が釣りを続けて上手くなっていく過程において、そういう複雑で高性能な道具を使いこなせるような方向を目指しているのかと言えば、明確に違うはずである。
 できるだけ単純化して、面倒臭くねぇ道具と技術で釣れるようになりたいと思っているのである。
 私は魚を飼うのも好きなんだけど、観賞魚飼育においてとても参考にさせてもらい、いろいろと蒙を啓いてもらったサイトに「■GOOD AQUA■」というのがあって、その中で管理人さんが「上級者になるほど、高額で複雑な機器を使うというのはおかしいだろう、水槽管理が上手くなればなるほど道具に頼らなくて良いはずである」という趣旨のことを書いておられて、当時常識となりつつあった水草育成に二酸化炭素を添加する方式を前提とした、水の攪拌が少ない外部濾過装置等を使わず、ホームセンターで売ってるような60センチ規格水槽にセットの上部濾過槽とショボい照明を使って二酸化炭素の添加も行わず、その条件でも育成可能な水草を適切に選んだりしながら充分美しい水草水槽を育て上げていた。
 我が家の水槽における水草育成は、限られた水量の中に二酸化炭素を多く溶かし込むのは難しいし限界もあるけど、空気中には近年の増加が問題視されるぐらいの二酸化炭素が含まれているので、水中は根っこの繁茂を楽しむモノと割り切って、水上葉を展開する水草でお茶を濁している私である。
 でも、釣りにおいては道具に頼りすぎない、真に自分に必要な道具を適切に選び、その道具に見合った技術で釣りができるところを目指して行きたいと思っている。志は高いのである!エッヘン。
 そう考えると、インスプールで単純な第1世代が必要な場面はあるかも知れないけど、第5世代以降の高性能さはワシにはあんまりいらんのじゃなかろうか?
 古くからの愛用者に対するサービスも含んでいるだろう古い機種の復刻とかあったら一票入れるか考えるだろうし、感心するような単純かつ新しいスピニングリールが出てきたら喜んで買いたいと思うけど、単に高性能化するだけじゃ今更買う気にならんのよねというのが正直なところ。
 そう思って、もうスピニングリールなんて新たに買うことはないだろうと思ってたら、インスプールなんて思わぬ方向に求める答えの手がかりがありそうだったりして、世の中わからんもンである。
 思いもよらない意外なところから新しいスピニングリールが出現するかもしれないよ。なんてネ。

 次回は714Zの調整ネタの予定。まだ続くのですじゃ。お楽しみに。

2018年11月3日土曜日

大森ダイヤモンドは永遠に

 最近アタイ以外のリールにばっかりかまけてて悔しいッ!

 と、430ssgちゃんやら4400SSちゃんやらがプンスカしてそうだけど、今回もPENN以外のスピニングリールネタ。まあ「昔の女」的な想い出話なので許してネ。

 全てのスピニングリールをスピンフィッシャーでまかなうような偏狭で妄執に凝り固まった私だけど、最初っからそんな釣り人じゃなかったということはここに書き記しておきたい。ダイワもシマノもリョービも使ったことがある。オリムピックはそういやトゥルーテンパーが初めてだな。
 でも「PENN使い」になるまえに好きだったのは大森製作所であるというのは以前にも書いたとおりで、今でも学生時代から社会人になってしばらくの間愛用していたダイヤモンドリール3台が蔵に眠っている。”ダイヤモンド”キャリアーNO.1、同マイコン302TB、同マイコン301TBである。
 2台はベールスプリングが折れているので使用不能で3台とも後継はスピンフッシャーに任せて引退させてあった。

 しかしながらも恥ずかしながら最近スピニングリールのことばかりを考えていて、引退させてたダイヤモンドリールもクリクリ回してみて、部品1個ありゃ直るのになと思ってしまった。
 古リール好きが、パーツを特注して愛機を使い続けているというのは知識としては知っていたけど、バネ一つだけ作ってもらうっていうわけにはいかず、何十個とかの単位で買わねばならないものだと思っていた。それってお高いんでしょう?
 そういうマニアが大量に作った部品をネットオークションでばら売りしているのとかは散見されたし、ABU社カーディナルとかミッチェル社のインスプールモデルとかの人気機種の部品ならあるだろうけど、大森製作所じゃ無理だろなと思いつつも、ネットオークションでひょっとして程度の悪い中古でも”ゴミスピ”価格で安く手に入れば、そこから部品持ってきても良いかと眺めてみたら、部品ばら売りがなかったのは予想してたけど、ダイヤモンドリールの人気の高さは正直予想外で驚いた。
 インスプールのコメットが人気なのは知ってたけど、アウトスプールのマイクロセブン、タックルオートやマイコンシリーズも軒並みイイ値段で、特に小さいのはちょっとパーツ取りに1台って感じじゃない。キャリアーとか弾数少なくて相場が分からなかったので検索かけて調べてみたら、一番小さい”SS”は何万円って値が付くらしい。


 ネットオークションはあきらめて、nori shioさんに教えてもらった「須山スプリング製作所」さんでベールスプリング作ってもらったらなんぼするンやろ?でもお高いんでしょう?と試しに見てみたら、なんと最小単位はアウトスプールの”トーション式”なら5個から、インスプールのグルグルバネ式なら2個から、どちらも1000円+消費税送料で請け負ってくれるとのこと。頼んだ。脊髄反射で速攻で。


 「見本」として折れたベールスプリングを郵送して待つことしばし。ってほどでもなく1週間もしないうちにサクサクッという感じで、見本とともに5本ずつできたベールスプリングが郵送されてきてポストに入ってたので、ワクワクしながら早速組んでみた。
 ベールを折りたためる機構も同じ場所に入っているのでちょっと組み立ての順番がパズルっぽかったけど、まあ初めてじゃないし昔取った杵柄で何とか組み込んで無事復活。
 こういうサービスは本当にありがたい。モノなんか壊れたらどんどん新しいの買って経済回しましょうなんて、それも大事なことかも知れないし現実そうなってる部分もあるんだろうけど、そんなんばっかじゃもういろいろ立ちゆかないだろうって状況になってきてるし、良いもの大事に直しながら使ってくのって、やっぱり理屈じゃなくて直感的にそれも正しいんだと思う。新品売らなきゃならん釣具屋やらはその分苦労するのかも知れないけど、そういうご時世だと思って気合い入れて良いもの作ってくれとしか言いようがない。再利用とか部品だけとかに関連した小商いとかも、それはそれで立派な経済活動だろという気もする。

 でもって、復活したリールをクリクリ回したり、ベールをハンドル回してカションと戻り具合を確かめてみたりして、改めてダイヤモンドリールのデキの良さを実感させられた。
 大森ファンは声を大にして褒めちぎるけど、正直使ってたけどそれ程でもないやネ、普通の良いリールだヨと思ってた。しかしながら、認識改めてワシも褒めちぎらざるをえんなこれは。
 使ってたときも以前サイトの方でキャリアーについて「どうということはないリール」と書いてたように、取り立ててスゴイ高性能だったり驚きの機能があったりというリールじゃなくて”普通”のリールだと思ってた。
 でも、よく考えたら年間100日以上平気で釣りに行ってたような若い頃に、何年も使い倒して、ベールスプリングが折れるまで他のを買う気も起こらなかったという不具合のなさが既に非凡である。
 リールとしての基本性能である回転性能とかがなにげにイイ。今現在愛用してるのがスピンフィッシャーという丈夫方面とドラグ方面が得意だけど、そういう方面は全然期待してないリールだからというのもあるだろうけど、巻き取りが軽やかで単に軽いというよりバランス良く回ってくれる。ベール手で返してたので今回初めて分かったけど、ハンドル回してベールが返るときの抵抗も軽くて音もガッチャンじゃなくてカションと鳴る。
 そんなこと言ったって、いまのイグジストやらステラやらと比べたらショボいでしょ?と思うだろう。それは半分正解で半分不正解だと思う。
 ダイヤモンドリールの少なくともマイコンやキャリアーは大手の旗艦機と比較するようなリールじゃない。どっちかというと安い価格帯のリールでダイワ、シマノ、オリンピック、リョービの四天王の隙間を縫って職人技と上手な設計で良心的な価格で玄人好みの良いリールを売ってた「スピニングリール屋」謹製のリールだったのである(断言)。
 私が買った90年代には既に大森製作所は傾きかかってて、釣具屋さんも古い在庫を貧乏学生に買える値段で安く売ってくれたように記憶していて、キャリアーは3千円かそこらだったような気がする。だから万札飛んでくよな値段付いてるとビックリするんである。なんせ高価なベアリング様は1個しか使ってないような庶民派でっセ。
 もし、今時のリールで比較するなら5~7千円とかの機種で比較しろと。そのぐらいの機種となら20年以上経った今でも使い心地で互角以上に闘いそうなぐらい回転性能良いし、逆転防止の遊びも少なくて4桁スピンフィッシャーほどには今の機種に慣れてる人が触っても違和感ないように思う。ゴチャついてない適材適所な基本設計からくる壊れにくさとか「上位機種の劣化版」という印象がなく特別感があるというのなんかを上乗せすれば多分圧勝する。だから中古でも5~7千円なら人気機種でなくても普通にしてるんだと思う。今の5~7千円のリールがダメなんじゃなくて凄く良くなってると思うんだけど、20年前においてはダイヤモンドリールが多分特別だったんだと思う。
 今の5~7千円のリール買っても、古いダイヤモンドリールの程度の良いのを探してきても、多分ほとんどの釣り人が「クソたっかいリール買わんでもコレでいけるやン」と普通に使えると思う。
 回転軸を90度捻ってグリグリ回すというケッタイな糸巻きで”普通に使える”といのがどれほど難しいかってところで、今の普及品も昔の大森もエライってことだろう。

 でもって「マイコン」についてだけど、過去私は「ドラグの効きはいまいち」と書いた。「いつもスムーズに動かない小さい方(註:301TB)のドラグが奇跡的に働いてくれて釣れた」という昔話も紹介した。
 「ダイヤモンドマイコンさんスイマセンでした。私が間違ってました。」
 と、まずは平謝りに謝っておこう。
 いや~ネットの情報ってあてになんないよね~嘘ばっかり。

 今回2台を復活させたついでに、分解してじっくり鑑賞するとともにグリス塗り直すかなとバラしてみて、仕舞うときに分解清掃したのか綺麗な状態で、マイコンは海で使いまくってたけどドラグを押さえるバネがちょっと錆びてたぐらいで問題なく、錆だけ落として本体はグリスもそのままでドラグだけ何とかイマイチ状態を脱出するにはどうすれば良いかなといじくってて、そもそも使ってた当時の状態でライン引き出してみて違和感が走った。
 「えらい堅く締めてるな?」
 マイコンシリーズはドラグがスプールの上の方じゃなくて、リールのお尻のほうに付いている”リアドラグ”方式が大人気を呼んで、ダイヤモンドリール史上最大のヒット作となったシリーズ。同時にスピニングリールに一大リアドラグブームを巻き起こした歴史的なリールでもありながら、それまで手堅い設計で玄人好みのリールを作ってた大森製作所がへんな方向に行き始めた元凶となった傾国のリールであるとも好事家の間でまことしやかに囁かれていて、そのせいか弾数の多さゆえか中古でもそれ程値段が付いていない。
 リアドラグって一般的に糸巻いてあるところから距離が離れるから効き悪いよねってのが今時の常識で、大森製作所をもってしてもそこから逃れられないと思っていた。

 でも違った。
 マイコンのリアドラグは、 右の写真のようにドラグを締めるネジを切った部品の上に数字を振ったキャップをネジ止めする構造になっていて、キャップは1周しか回せないけど、どのぐらい締めるかはあらかじめ持ち主が調整しておけるようになっている。ドラグパッドを押さえつけるバネがへたってきたりグリスアップでドラグの効きが違ってきたりしたら再調整ができるというよく考えられた仕組みである。これだと調子に乗ってゆるめすぎてキャップを落としたりしないし、あらかじめ調整して数値化して把握しておいたドラグ値にファイト中にサッと変更可能である。
 でも、リアドラグ方式はそもそも安定しないから数値どおりのドラグ値になんてならないよねと思ってたのだけど、ハッキリ言って当時のナマジ青年がドラグのなんたるかをよく知らなかったから調整に失敗して締めすぎてたというのが判明した。
 手で引っ張ったときにズルズル出てこないぐらいに「締めたときには止まる」のが大事だと思ってきつめに締めてた。結果最大限ゆるめてもそれ程ライン出て行かず実質的な調整幅も極狭くて「ドラグ効かない」と感じる状態になっていた。
 普通にシーバス狙うときのような8ポンド2号のナイロンラインを切れないように、締めたとしても2ポンド約1キロ前後で滑り出す程度を上限にまあ1ポンド以下を中心にというような、実釣に即した緩めの設定にしてやると「ドラグが良い」とまでは行かないまでも、充分にドラグを使った釣りになる程度の性能がありそうに思う。部屋の中で手で引っ張るのと竿も介して魚に実際に引っ張られるのとでは違うことも多いけど、昔の想い出の中にあるマイコンのリアドラグの印象とは全く別物のまともなドラグだというのは間違いなさそうである。海より深く反省した。

 とはいえ、リアドラグが好きになるかというとそうでもなくて、写真見てもらえば分かるように大森製作所の職人技を持ってしても、リアドラグをまともに機能するように設計すると、部品も多くなるし実際ドラグを押さえる大っきなバネが錆びたりと、壊れる部分が増えてしまうのである。
 この写真を撮ってからグリス拭き取りながら作業してたら、さらにキャップの中にはもう一枚スリーブが入ってたし、一番左の部品は筒状の部品にドラグ音鳴らす歯車とワッシャー2枚が組み合わさっていて写真以上に部品数多いのである。さすがに手が油で汚れてから写真撮り直すのははばかられたので想像以上のややこしさを写しきれてないのはご容赦願いたい。

 部品数が増えれば当然リール自体が大きく重くなる。
 実はマイコン301TBはキャリアーNo.1より大きくてPENNで言えば4400に相当すると思ってて、そう過去に書いていた。
 マイコン301TBはJOSさんが元の持ち主に「うちの後輩に大森のリール好きなヤツがいるよ」と話したら、もう使ってないのがあるからあげるよということでJOSさん経由でいただいたモノで、その時点でシールも剥がれていて、今回ネットで調べて大森製作所でいうところの「No.1」の糸巻き量に相当すると初めて知ったところである。ちなみに「ミニ」「SS」とつくのが一番小さくてPENNなら4200相当で「No.1」が4300相当で以降数字が大きくなるとリールも大きくなる。
 写真で並べても同じ糸巻き量なのに大きさ違って見えると思うけど、実物だともっと差があるように感じる。

 そのぐらい大きく重く複雑にしてまでリアドラグにする必要あるのか?と聞かれれば、ファイト中にドラグいじる人には価値があったのかな?という気もするけど、ファイト中には赤子泣いてもドラグいじらない派の自分としては、別にいらんがナと正直思う。
 じゃあなんで、そんな質面倒くさい機構をマイコンは付けたのか、そして人気を呼んでリアドラグブームまで来てしまったのか?
 私が思うには9割方その理由は昔のABU社カーディナルのリアドラグが格好良かったからだと思う。
  釣り具なんて好きか嫌いかが重要で、性能とか重いとか、ましてや値段の高い安いなんてのは格好良さの前では割とどうでも良かったりする。
 遊びで面白おかしく魚釣りするのに、多少のデキの悪さだのは我慢できても格好悪いのだけは我慢できないってのはお好きな人なら分かるでしょって話。

 マイコンシリーズ、中古市場を見る限りじゃそれほど人気ないし、評価しない人もいるかも知れないけど、そんなことはどうでも良いんである。
 学生時代から愛用してベールスプリング折れるまで使い切ったマイコン302TBもキャリアーNo.1も、縁あって手元にやってきた2人の主人に仕えて楽しい釣りを友にしてくれたマイコン301TBも自分にとっては最高に価値のある格好いいリールで、3台とも使える状態になったし、想い出に浸りながらいつの日か釣り場に再度持ち出す日まで、また蔵で眠ってもらうことにしよう。

 想い出の詰まった思い入れタップリのこのリール達。なんぼ金積まれても売る気はないけど、私にマイコン301TBを託してくれた釣り人の気持ちは歳食ってなんとなく分かってきたような気がしている。
 想い出だけ心に残れば、使ってくれる人にあげるってのは悪くないのかもしれない。