2022年2月26日土曜日

君の名は?パソコン椅子探偵見慣れぬアジ科魚に苦戦する

  ワシ基本的にブログの記事とかは、自分が書きたいから書くっていうののほかには、どっかにいるであろう、ほとんどの人にとって全くぜんぜん必要ない情報をまさに欲しがってる超限られた人、に届けば良いなと思っている。なので設定いじったら可能なのかもしれないけど、検索エンジンに引っかかりにくいと感じているフェイスブックにはあんまり興味がなく、仲間の書いた投稿が読みたくてアカウントだけ作って読んでるけど、あいもかわらず読む人も少ないブログ形式で寒さこらえて書いてます。っていうかいまだに個人でウェブサイトも運営している人間ってほぼ絶滅危惧種じゃなかろうか?でも情報を階層状に整理して置いておくにはウェブサイトのほうがブログよりもさらに便利で、少額ながらもお金払ってサーバーのスペース借りて安くないサイト作成ソフト買ってでも続けていくつもりではある。自分の記事を備忘録として使うにはサイト形式が使いやすい。

 でもって、そういうサイトの記事がまさにご縁になって知り合った、香港釣行時にお世話になった村田さんのフェイスブックを覗いていたら、村田さん現在は中国本土廣東省におられて現地発の情報を発信されているんだけど、新規開拓で行った釣り場で息子さんと御友人の釣られた魚の名前が分からないので教えて欲しいとの投稿があった。

 まあ、ワシこれでも水産の世界でメシ食ってきた男やし、同定はそこそこ自信あるのでいっちょ軽くやっつけたろうかと、写真の2種の同定作業に入る。

 左の写真の1種目はわりと簡単。ヒメジの仲間だろうというのはすぐ分かるので、とりあえずウェブ魚図鑑であたりを付けようかなと、みたらば尾鰭の上下共に黒帯有り、体側の褐色帯は目の前方まで届く、ヒゲが白くないということで同定完了。信頼を置いて使ってる検索図鑑「日本産魚類検索」を引っ張り出すまでもなくヨメヒメジと同定。

 もう一種の右の写真のアジの仲間が、まあアジの類いも結構な種類釣ってきたし、記事にもしたしでなんとかなるだろとタカをくくって調べ始めたら、これがどうにも難問。というか独力で同定しきれなかった。クサフグとコモンフグを混同していた件とか、ワシの同定能力もたいしたことがない。常に精進せねばとの念を新たにするところである。

 パッと見た瞬間、ゼイゴ(稜鱗)が胸ビレ後端の前まで来ているので、ヒラアジ系を除くとそういう特徴を持つのはマアジとオニアジぐらいなのは前回マルアジ同定したときの知識が頭にあったので、マアジだとゼイゴは頭の真後ろまで続くので、オニアジだろうと見当を付けたんだけど、どう見ても体型が違うのとゼイゴの幅と胸ビレの長さも違う。オニアジは豪州ケアンズの港で同行の”釣りの上手い人”が釣ってるので現物も見たことあるけど印象的にも違うように思う。小型の時はこんなのかなとも思ったけど違うようだ。色的には黄色い帯が目まで達してて鰓蓋に黒斑があるのでウェブ魚図鑑で見るとホソヒラアジが似ているけど、ゼイゴが胸ビレまでぜんぜん達しないのであり得ない。色は嘘をつくけど骨や鱗はあまり嘘をつかない。これは写真写りが悪いだけでゼイゴが頭の後ろまでつながってて、色は違和感あるけどマアジかな?と思うも写真拡大してもゼイゴは見えない。再度「日本産魚類検索」を紐解くも、ゼイゴが胸ビレに達するヒラアジ系じゃないアジ科魚となるとやっぱりマアジとオニアジしかなくて、残る可能性は日本での報告のない種ということになるけど、同じ大平洋の、底魚ならともかくある程度回遊もするだろうアジの仲間でそれはないよなと、悩みまくった。結果としては村田さんの投稿に対して「テルメアジ種ではないか、と思いますきっと」と書き込んでる人がいて、そんなアジいたっけ?とWEB魚図鑑で調べたら、まさにゼイゴが胸ビレに達しているという特徴にビンゴ!かつ最近報告された種だと知り、謎は全て解けた、多分。

 なぜ自分が同定できなかったのか?その理由は、ワシの使っている「日本産魚類検索」は1995年出版の第1版の改訂稿バージョンなんだけど、テルメアジは2011年に日本では初報告された魚で日本産魚種を対象とした手元の検索図鑑に載ってなかったのである。よく探偵モノで言われる「いくらあり得ないように思えても、可能性を潰していって最後に残ったモノが真相である」っていう、まさにそのパターン。一応海外の種ということで、まさか南から黒潮に乗って房総半島まで各種メッキがやってくるぐらいなのに、中国沿岸のアジ科魚が日本未確認ってことは無いだろうと思いつつも、英語版のウィキペディアでマアジ(Trachurus)属の種ぐらいはザッと見てはいたけど、まさかのメアジ(Selar)属、なまじメアジは釣った事あって、ゼイゴが尻尾の方にしかない印象があったので違うと外してた。不覚に深く反省するとともに、書き込みされていた方のご慧眼に感服したしだいである。

 でもって、パソコン椅子探偵的には恥ずかしい敗北ではあるけど、探偵モノにでてくるクンロク通りの真相で面白かったので「コレはネタにしたろ!」と村田さんにも快諾を得て写真使わせていただいたところである。村田さん改めてありがとうございました。良い勉強させてもらいました。

 WEB魚図鑑は以前も指摘したように間違いもけっこう見受けられ、基本はその道の大家である中坊先生がが責任持って編纂した検索図鑑を信用しているのだけど、新しい報告に基づいて随時アップデートできるというのはネットの図鑑ならではの強みで、今回そのことを痛感してどちらも得手不得手を踏まえつつ使いこなすべきなんだなと反省したところ。「日本産魚類検索」も第3版まで更新されているけどネット図鑑のようにはいかないのはいたしかたない。

 あと、手順通りお作法通りに同定作業をしていけば、分からないモノは分からないという答がちゃんと出るっていうのも、なかなかの学びで、曖昧模糊としてて変化していく生物の世界で100%正解に辿りつけるなんて考えなくても良くて、今回の同定結果も9分9厘ぐらいの回答だと思ってる。けど”子のたまわく、知らざるを知らずとなせ、これ知るなり”っていうのはやっぱり大事な事だなと思ったりしてます。魚の同定でその手の話で一番感心したのが、魚の仲買人がマサバかゴマサバか分からんのがいるので調べてくれって、水産試験場に持ってって、水試の研究者が真面目にDNAとか調べたら、そもそも天然の水域でも交雑個体が低い割合(1%に満たない)ながらいることが明らかになって、同定の基準となる背ビレの棘数やら、体高に対する体幅の比率やらを使っても100%の両種同定には当然なり得ないっていうのが報告されてて、目利きのプロである仲買人が、恥を忍んで専門家に聞きに行ったその姿勢こそ、知らざるを知らずとなしている好例だなと、思ったのを憶えている。

 知らないことは恥ずかしいけど恥ずかしくなくて、知らないのに知ったかぶりをするのが恥ずかしいと、ついつい見栄張ってしまいがちなので、自戒を込めて書き記しておこう。

2022年2月19日土曜日

また古い仲間を呼びくさって! ーPCチェアディテクティブCAPリール編ー

 手に入れるときには手に入れるようになってる。それが運命なのである。そうに決まっている。

 丸ミッチェル関係、ちょっと部品を在庫しておこうとネットオークションで検索していたら、ちょっとばかり魅力的な丸いのがでてきた。
 見ての通りのハーフベール時代の”CAP”リールで、出品者によると”セカンドモデル”とのこと、欲しいなとはおもうも「でもお高いんでしょう?」と思ったら、ベールが固定されずグラグラしているため”ジャンク扱い”でとなっていて、こんなもん単純な設計だろうから、そのぐらいは直せる可能性高いなと、一応ダメ元で3200円で入札しておいたら。ピッタリ3200円で落札。マジか?正確には分からんけど1940年代とかの製造のはず(年代特定は後ほど)で、80代のうちの昭和一桁の父親と同世代の骨董品で、ミッチェル社の前身カーパノ&ポンズ社が最初に作り始めたというCAPリールの、出品者の釣り書きを信じるならその第2世代という、それなりに歴史的な重みのある1台である。ええんか?そんなもんワシが手元に置いて?まあ直して稼動品にして中古市場に戻せば良いか。

 我が家に来てみて、粗悪なコピー品とかまったくのハズレを掴まされたわけではなさそうなのは、ハンドルとか各部のつくりやら、裏面のCAPとメイドインフランスの刻印から間違いなさそう。問題のハーフベールの開閉の故障も折れたバネがぶら下がってるので、簡単なバネをあつらえるぐらいはわけないだろう。
 ただ、ベール回りの不具合だけではなく、ハンドル巻くとギクシャクしてるしローターもガタついている感じで、全体的にガタピシいってて、これ分解フルメンテでグリスアップして増し締めした程度で復活するのか?ややそこは不安。
 スプールもなんかちゃんと固定できてない感触で、さがりすぎてハンドル回すとカシュカシュとローター内側と擦っている音がする。
 スプールの形式は304と共通の、先の方が星形になってる主軸に刺さるタイプで304と互換性はあり。
 まあ、なるようにしかならんだろうと、固着してるとまずいのでネジ部分にCRC666を吹きかけてビニール袋に入れて数日おく。まあ他のリールを先に手を付けてたので整備待ち状態でしばし放置というのが実態。

 で、放置後手を付けて、まずはさしあたっての問題であるハーフベール開閉のバネをなんとかする。
 といってもハーフベールの開閉の仕組み自体が初めてなので良く分かってない。ベールを外側に開けた状態で、ハンドルを回すとローターが回って、主軸に固定されているプロペラのような2枚ある羽のどちらかが、ベールを開けた状態ではローター内に張り出してくるベールアーム下部の部品を蹴っ飛ばしてベールがクルッと閉じる。で、その張り出してる下部からバネが伸びてローターの底に固定されていた痕跡があるから、アウトスプールのベールアームが開いた状態と閉じた状態のどちらかにバネの力で押しつけられているのと同じように、ハーフベールが閉じた状態か開いた状態になるようにバネをきかせば良いはず。バネを固定する位置から考えて常に曲げておいて伸びようとする状態のバネで良いのかな?って感じなので1回クルッと巻いて開いた安全ピンみたいな感じのを入れようかと思ったけど、念のため海外のオークションサイトとかを覗いたら現物が売りに出てて、もっと単純で、反発力のあるバネ用の針金で軽く曲がった弓状の、バネというのもはばかられるような単純な形のもので用が足りるようだ。という事で早速いつものタチウオ用ステンレス単線ワイヤーででっち上げる。真ん中の写真の一番上が折れて残ってた切れ端、2番目がちょっと形状イマイチで填まらなかった試作品で一番下が上手くできた部品をベールアーム下部の部品に取り付けたところ。これを、もう一方の端をローターに固定して組んで回してみると、ちゃんと開いたときは勝手に閉じたりせず、回して羽が蹴飛ばしたら軽く閉じて閉じたら巻いても勝手には開かない。開くときはローターの外側に飛び出しているベールアーム下部の部品を指で押すと開く。

 ベール開閉は正常に戻ってめでたしめでたしなんだけど、ハーフベールの使い方がイマイチ分からん。指にラインを引っかけてからベールを開いて投げるとすると、その状態からベールを開けるのはベールが向こう側にあるときに左手で開放した方が良いのか、それとも手前側に来たときに竿握ってる右手の中指あたりで開放すれば良いのか?まあどっちにしろ真横にある時に開放せんだろうなと、プロペラは手前と奥に来ないように固定すると一旦整理しておく。
 もいっちょ分からんのが、このリールどうも逆転防止らしいレバーが見当たらない。この時代のは”ダイレクト”でストッパー無しか?と思ったけど、クルクル回していじってたら、ベールを開いた状態で逆転すると、プロペラにベールアームの底の部品が閉じるときと逆方向から当たるんだけど、その時ガチッとぶつかって止まる。おそらく使い方としては、魚掛けて寄せてきてタモで掬うって時にベールを開いてやると逆転防止が掛かる、開いただけではラインローラーにラインは掛かったままなのでラインは放出されたりせず左手をハンドルから離しても大丈夫になるって感じで正解だろう。となるとハンドル持ったままベール開放(=逆転防止ON)できないといけないので、やっぱり手前でもベール開放できる位置にプロペラを固定しておかないといけないようだ。写真の位置だとちょっとゆとりがない。プロペラ左右に来るぐらいで良いように思う。後ほど実例を海外のサイトとかで見て確認したけど組み方自体はそれで正解のようだ。ただ、実際に使ってる人のやり方とかを見てみないと、どうにも実際に使う時の”お作法”が想定できない。それもあとで調べてみるか。

 ということで分解整備の方にサクサクと入っていく。固着は特になく構造も単純なのですぐにバラせる。本体真ん中に主軸を収める鉄系のパイプが入ってるのとかは、後の304はじめ300系の原型が見てとれる。コイツも油染ませた紙っぽい防水パッキンつき。そしてスプールにはこれは後付けかもだけど”エコノマイザー”付き。ラインローラーが固定式じゃなくて回転式なのはちょっと驚いた。とりあえずグリス塗り直しの組み直しでどうや?と1回組んでみたら、ハンドルの回転はスムーズになってギアは見た目も大丈夫そうだったし問題ないようだ。問題なのがローターのガタと、主軸のスプールの台座が固定されてなくてズレてしまう不具合。
 
 ローターのガタの方は、ローターをパイプに差した時点で、本来キッチリ填まって出てはならぬはずの横方向のガタが出てて、ローター留めてるナットを外して観察すると、目で見えるぐらいに上部に隙間があってガタガタしている。鉄系のパイプにローターの芯上部はアルミのはずなんだけど、その組み合わせで削れたんだろうか?80年の歳月というか、削った時の所有者の使いっぷりにちょっと敬意を覚える。ワシのように基本リールは2台体制とかで交代で投入したりするうえに、浮気性で別のリール使ったりってのもあると、ギアとかに使われるアルミや亜鉛は金属としては柔らかいっていっても、なかなか鉄やステンレス、真鍮あたりがそれを削るところまではいかない。道具として産まれてきてここまで使ってもらったら”幸せ”なんじゃないだろうかと勝手に思うけど、現在の持ち主としては、もう一働きしてもらわんと困る。本格的に直すなら、金属加工の技術を用いて、緩んでるローター上部に填まる穴を掘って、キッチリ寸法合わせたブッシュなりスリーブなりを填めてやるってのが根本的な解決策だろうけど、ワシそんな技術持ってない。仕方ないので縦方向のガタならともかく、横にガタついてるのに焼け石に水かもと思いつつ、ローターの上、プロペラが乗ってナットで留める下の隙間の可動域に入ってるスペーサーが金属製の1枚のところを0.1ミリのテフロンワッシャー入れて遊びを少なくしてみた。試行錯誤して3枚入れると既に隙間いっぱいなのか巻きが重くなり、2枚だとちょい巻きに影響あるけど元の金属製のを挟む形にするとそれ程重くはなく、意外とガタつきもおさえられて、あとでライン巻いて試したら、テンション掛けて巻くと、ベールアーム側に傾いたローターのせいでたまにスプールがローターと擦れるカシュっという異音がするけど、これならなんとか使う分に支障はないなという感じに治まってくれた。ダメ元でもなんでも試してみるべきだね、一安心。

 でもって、もういっちょスプールの台座。こっちは思ったより重症で、ちょっと下がり気味でローターに擦ってるな、ぐらいに思ってたけど、外してみたら台座を”か締めて”留めてたであろうリングが外れてしまってて、無理矢理曲げて引っかかるようにしてるけどすぐにズレてストンと落ちてしまう。コリャダメだな。とは思ったけど幸い主軸は304と共通なので余らしてるハンドル無しベール周り無しでダルマ状態の304から主軸引っ張ってくれば機能的には問題なくなる。ただ、できたら”純正”の部品のまま古い時代の機体なので保存したい。そう思ってよく観察すると、なんと主軸からもともと填まってたリングが別にあった臭いポチッとした出っ張りが出てる事に気がついた。ツルツルのステンレスっぽい棒にズレないように台座を固定するのは素人じゃ無理だと思ってたけど、取っかかりがあるなら話は別である。ちょうど良い4ミリのCクリップとかがあればパチンと填めてカッコイイ感じだと思うけど、とりあえず止まりゃいいやと0.55ミリのステンレス線巻いて捻って固定したら特に問題なく台座下がらないようにできた。ちなみに台座自体は4本爪に支えられているけど4本爪がドラグのバネの役割もしてるようでちょっとズレる余地があるのが正常のようだ。丸ミッチェル5台いじったときに台座がぐらついてる個体があるのは何でだろうと思ってたけどそういうことらしい。

 で、とりあえず組み上がったらちょいローターがガタつくのはあるけど、まずまず使用に耐えるぐらいには修繕できて稼動状態にもってけて一安心。

 ということで一段落したので、コイツはいったい何時の時代に作られたのか、本当に第2世代なのか調べてみようということで、”パソコン椅子探偵”出動でネットの海を情報求めてさまよう。
 欲しかったドンピシャの情報が見つかって、海外のマニア氏による”「CAP」のサイト”によると、「左側ドーム型のボディー」「ハーフベイルのベールアームの付け根の部分の簡略化」等の特徴がバージョン2の2番目モデル”2B”に分類されるもの(サイト内のリール3)と一致する。1938年型か!!と改めてその重ねてきた歴史に驚いたけど、しげしげ見てるとどうも”完全に一致”するわけではない。細かな違いは同じバージョン2内でもあっただろうから、ハンドルノブが樹脂製とかはまあそんなのもあったんだろうなと流す事もできたけど、サイトの”モデル2B”とあからさまに異なっていて流せない違いがあった。カウンターウェイトの位置の違いである。ウチのは上の方の写真でも確認できると思うけどローターの底にカウンターウェイトが見えている。ところが、バージョン2ではローターの外側にカウンターウェイトが出っ張ってる形になっていて、これが変更されてローターの底に設置されるようになった変更は1949年型のバージョン4(サイト内のリール6)からの特徴である。サイトのモデルでは黒がつや消しになってるのは色ぐらいは違うバージョンあったんだろうし、バージョン4とモデル2Bの使える部品を集めて組んだ”ニコイチ”個体だと考えると、バージョン4のハンドルノブはまさに今我が家にある個体に装着されているような樹脂製ノブであり、かつハーフベールはバージョン4までなのでローターがバージョン4以降というのはあり得ず、自分の中では1938年型モデル2Bと1949年型バージョン4のニコイチ個体にほぼ確定した。アンティークリールとしての価値はガタッと落ちるのかもしれないけど、それはそれでどういうヤツがこういうことをやったのか?好意的に解釈すればモデル2Bの愛用者がローターとハンドルノブが壊れたので1949年頃販売店に持っていったら、「今のバージョンのパーツに組み替えて良いなら使用可能な状態に直せますよ」って言われて喜んで直して長く愛用した品が流れ流れて極東の島国のワシのところに来たって話だろうけど、まあ倉庫整理とかで古いボロリールが詰まった箱でも古道具屋が見付けて付き合いのある中古釣具屋に流して、中古釣具屋は苦労して使える部品を組み合わせて売ったけど、こんなマニアックな品を買う層が”ニコイチ”個体に高い金出すわけもなく、二束三文で売られ売られて「セカンドモデルでっせ」という売り文句が伝言ゲームで残ったまま、ワシんちまでおいでなすった、ってののほうがありがちな経路なんだろうなとか思ったりしたりなんかして想像してみるのは、整備して何とか稼動品に持ってく喜びと共に、悪くない楽しみだったと思う。金銭的な価値は相場観が全く分からんけど、ワシの負担はしょせん3200円+送料でありその分の元は余裕でとれただろうと思う。ワシの場合稼動して使えるようになるかどうかってのを重視してるしな。
 ちなみにこのサイトでみると、我が家にまとめて来た丸ミッチェルのうち、プラナマティック付きの「CAP」のみの表示の個体は”CAP54”と整理されていて1954年型、裏面にC.A.Pの表示のある314は1961年型の?”スーパーCAP”にガルシアシールを貼ったもののようだ。
 ミッチェル沼でも304系丸ミッチェルならそんなに深くないですよと、300の重さで深みに沈んでるヌコさんが仰ってたけど、丸ミッチェル方面も結構ぬかるんでますよ。300と比較するから”深くない”ってだけで意外に足つかんくなってきてアップアップしてます。
 304は初期のハーフベール時代のCAPから丸い形とベベルギア、スプールぐらいは引き継いでるけど、ベールが違う、逆転防止が違う、丸いっていってもドーム型とコイン形でだいぶ違うって、途中までCAPの名前を伝統的に使っててその最後の方が304と314ってだけで初代CAPが後の304に設計的に直列につながってるっていう一般的?な印象とはちょっと違うよねってワシも思うし、機構の変更の歴史をみるとサイト管理人さんの見解のように、CAPがモデルチェンジ繰り返して314タイプになって、そこからプラナマティックを取っ払ったのが304っていう見方もありかなと思うけど、まあそこは、たとえばシマノの「バンタム」とかリョービの「メタロイヤル」とか、忘れちゃならないPENNの「スピンフィッシャー」とか、そのブランドの伝統的な名前ってだけで、モノは違ってるってのはありがちで(メタロイヤルで多くの人がポカンとしてると思うけど、スピニングのメタロイヤルの名前は、リョービの釣り具部門が上州屋に移ってからチヌ用落とし込みリールの名前になってた)丸いミッチェルはCAPから始まって紆余曲折あって304、314に進化してったんだよぐらいのユルい解釈が適当かなとワシャ思う。

 で、もういっちょパソコン椅子探偵的に気になってたのが、最初の方でも書いたけど、実際に釣るときにハーフベールはどうやって扱うのが正しいお作法か?ってところだけど、意外にこれがネットでは情報出てこなくて、ユーチューブで解説する動画があるってので喜んで視聴したら、①ベールを開くときはロータから出ているベールアーム下部の部品(写真左青矢印)を押します。②ベールを閉じるときはハンドル回すとローターが回転して、ローター内に引っ込んだベールアーム下部の部品が”プロペラ”状部品に蹴っ飛ばされて閉じます(写真右)。ってな説明で、そんなもん見たら分かるわっ!っていう既に仕組み見ながらワシが書いてる程度の事しか説明してなくて、動画なのに実際に投げてもおらんくてガッカリした。こりゃパソコン椅子探偵にまかせててもラチが開かんなと、実際いじくってみりゃ分かるだろと、ちょっとライン巻いて試してみることに。
 うん、分かった。謎は多分解けた。
 まず巻いてきて投げるぞというときには、写真左のようにベールアームを手前に持って来てラインを右手人差し指で引っかける、フルベールならここで左手でベールを返すんだろうけどハーフベールの場合はここで”ベール開放”してもラインローラーにラインが掛かったままになるので投げられない。ではどうするかっていうと、そのまま逆回転させてクルッと1回転して戻ってくると、写真右のようにラインローラーからラインが外れてかつ手前の右手中指が届く範囲にベールアーム下部の部品がやってくるのでそれをヒョイと押してやればベールアームが開いて投げる準備完了、投げたらラインをラインローラーにピックアップして巻く体勢に入るのは、ハンドル巻けば勝手にベールアームは閉じてラインを拾ってくれる。
 投げるとき空いてる左手使ってと考えると、ベールアームを竿の逆側に持って来ておいて、まずラインを左手でラインローラーから外して右手人差し指に掛けてから、ベールアームの下部の部品を押してベールアーム開放という手順になり面倒くせぇので多分不正解だろう。
 魚とやりとり中に逆転防止をかけるときは、やっぱり手前にベールアームを回してきて下部部品を中指で押してやるとラインローラーにラインが掛かったままで逆転が止められるってので良さそう。ただ、何度かやってたら逆転防止効かなくなって、なんでだろうと思ったらベール開閉のための”プロペラ”状の部品が直でローター留めるナットで固定されてるんだけど、逆方向に回ると上のナットごとプロペラが徐々に緩む方向に回ってしまう。使うとしたら緩み止めのワッシャーを噛ますか、ナットを緩み止め防止剤つけて締めるか対策が必要だと思う。
 ハーフベールがフルベールに取って代わられたのは、逆回転は別途設ければいいけど、投げるときに1回転させなきゃならんってのは面倒臭そうなのと、ハーフベールとスプールエッジのの隙間を通り抜けてラインを拾い損ねることを100%は防ぐ事はできないってあたりが要因だろうか?フルベールなら構造上すり抜けはあり得ないからね。でも、慣れたら意外に使えそうな気もするんだけど、塗装がさすがにこの時代のは対塩性的に心配なのと、ローターもガタついてるし快適に使える状態にまでは復帰させきらんかったので、ちょっと実釣導入はためらわれるところ。売りに出すにもさすがにニコイチでガタついてるってなると値段つきそうになく、文字通りのお蔵入りかなと今のところ思っちょります。

 まあ、良い勉強させてもらいました。歴史あるミッチェル沼の奥深い世界の浅めのところの泥濘でドロ遊びさせてもらったという感触です。

 丸ミッチェル関連ネタ、実はもういっちょ現在進行形で、またそのうち投下予定です。お好きな人はお楽しみに。

2022年2月12日土曜日

人力3Dプリンター稼動!

 ワシあんまり釣り場で超絶技巧とかくり出すタイプの釣り人じゃない。

 準備段階で、よく作戦練って、道具おさおさ怠りなく整えて、釣り場じゃ予想外のことにおたおたしたりしながらも、単純な釣技を愚直に実行する。そふいうモノに私はなりたい。

 ということで”丸ミッチェル”実戦導入にあたっても、しっかり準備しておきたいと、2つスプールあるのでまずは予備スプールの方にいつものシーバス用2号ナイロン70m巻いてから4号ぐらいの下巻きに接続してちょい少なめぐらいまで巻いて、そのあと主に使う予定のスプールに下巻きの方から巻き直す。その時に下巻きまで巻いたらスプールの端から何ミリまで巻いたかメモっておいて、予備スプールにはその位置まで下巻き巻いてから2号ナイロンをちょうど良くなるまで巻くと、下巻き入りのナイロン2号70mのスプールが予備入れて2個できあがり。のはずだったんだけど、冒頭写真で分かるかどうかだけど予備スプールに巻いたひっくり返す前の段階で、ちょっとプリンッとした感じの後ろ巻きになってしまっている。今回使う丸ミッチェルは314でスプール上下機構として”プラナマティック”が入ってて、本来なら巻き上がりは真ん中がやや膨らんだ樽っぽい形状になるはずで、後ろ巻きはライントラブル誘発しかねず塩梅が悪い。ちょうど真ん中かやや前巻きぐらいに調整せねばなるまい。

 前巻きに調整するには、スプールを下げるか、ラインローラーの位置を上げるかのどちらかで、スプールを下げるならスプールの乗ってる台座のワッシャーを薄いモノにかえるか、オシュレーションスライダーと主軸の接続をいじって主軸ごと下げる、ラインローラーを上げるなら、ベールアームあたりの形状調整かローターそのものの嵩上げ、あたりが考えられる。

 ラインローラーの位置を上げるのは今回は回避したい。ベールアームやらベールを止めて開放する部品”ベールトリップ”やらをいきなり初期状態から変えて使うのは不安要素が大きい。ローターを上げるのは、どうも構造的に嵩上げできるような余裕が小さいように思うので難しそう。となるとスプールを下げる方向だけど、台座のワッシャーはそもそも314のワンタッチスプールには新品でも台座にワッシャーが入ってなくて、できたら0.5ミリのテフロンワッシャーぶち込みたいぐらいに思ってて、そうなると現状予備スプールにはワッシャーぶち込む前なので、0.5ミリは逆にスプール上がってしまうことも想定しつつ他の方法に頼らざるを得ない。となると消去法的に、主軸に固定するネジ穴の位置を変えたオシュレーションスライダーを用意してスプールを下げるという方法になる。

 早速、ネジ穴の位置を変えたオシュレーションカムを用意しましょう。っていっても用意するのワシの役目である。人気の308・408用のそういった目的のオシュレーションスライダーはTAKE先生が売りに出しているけど、マイナーな丸ミッチェル用にはそんなもん売ってない。売ってないモノは作るしかないってのが今回のお題であり、がんばって挑戦してみました。ベールトリップを上に曲げたらひょっとして一発で修正できるかなとも思ったけど、前述の理由に加えて”樹脂製部品作成”には一回挑戦してみたかったのよねって理由もあったりしました。さてことの顛末はどうなるのやら、ご用とお急ぎでない人はご笑覧あれ。

 ゆうても、最初っから難しい事をしようとしてるわけじゃない。丸ミッチェルのオシュレーションスライダー、右の写真のようにコイン形の樹脂性で、真ん中にギアの上の突起が刺さる溝が通ってて、溝を挟んで主軸にネジ止めするためのネジ穴が開いているだけという比較的簡単な形状でこれから”人力3Dプリンター”となって”初めてのお使い”をするにはちょうど良い課題かなと思う。ちょっと心配なのはあんまりネジ穴を上下にズラすだけの余裕がなく、1ミリもスプールを下げられれば上出来ぐらいの感じだろうか?ってことで、やってみてどうにもならんかったら、それはそれで”勉強させてもらいました”って話だろう。

 用意した材料・道具は「百均UV固化レジン樹脂」「網戸の網」「アルミ缶」、「百均お湯で柔らかくして何度でも使える粘土」「ルア-のケース(粘土の枠として)」「根魚権蔵UVライト」「千枚通し」「サンドペーパー」「ダイヤモンドヤスリ」「ハンドドリル」「ペンチ、ニッパー、カッター、ドライバー等」ぐらい。

 基本的な作戦は、お湯で柔らかくして型取りができる粘土をつかって、本物のオシュレーションスライダーから型を取って、適宜補強を入れながら2層に分割してUVレジンで整形、ヤスリなどで細かい調整しつつ、ドリルで穴をあけて作る。というところか。

 まずは、土台の方を作る。お湯整形粘土を沸騰させた湯に浸けてしばらく待ち、ウニョーンと柔らかくなったら割り箸でつまみ出して枠として用意したルア-ケースに押し込みつつ、型をとるべきオシュレーションスライダーを押しつける。押しつけて下層の型が取れたら枠から粘土を外して流水で熱を取って固めてからオシュレーションスライダーをポコッと外す。粘土は固まっても堅めのゴムぐらいの弾力性があり、曲げてやれば外すのは簡単。ついでにネジ穴部分がポコッと飛びだしているのは今回穴の位置は変えるので必要ないのでニッパーで摘まみ切って大ざっぱに平らにしておく。次に下層部分には補強としてUVレジンの骨組み的に網戸の網を入れる。今回おっかなびっくりで1枚入れただけでたいした補強になってないだろうけど、枚数増やしたり材質をナイロン網じゃなくてケブラー網とか金属網とかに変えるとそれなりに補強になるとは思う。網目の間にちゃんとUVレジンが浸透するか不安だったけど、割り箸の先で突きながら型にUVレジンを馴染ませていったら問題なくできた。枚数増やしても行けそうな感触ではある。そして、その上からUVライトを照射、厚さがあるので長めで5分ほど、表面堅くなったので型から外したら、裏面はまだちょっとベトついてたので、裏返してあと5分でしっかり固まった。

 下層部分、底というか土台の部分はこれでできた、あとは溝の掘られている上層を作っていく。溝の部分もどうせなら強化しておこうと、アルミ缶を切って現物横に並べながら幅と深さ長さを決めて折り曲げて、瞬着で土台部分の上に仮止め。そのうえで土台の円形をクルッと巻くようにマスキングテープで筒を作ってアルミの溝の両側にUV固化レジンを斜めに削った割り箸の先からタラーリとたらし込んで溝の高さぐらいまで入れて、UVライト5分を表裏。かたまったら、表面の高さが端が高くなってたりするので、見本の本物と同じ高さに調整しつつサンドペーパーでならす。ここまで順調でなんかそれっぽい部品ができつつある。

 ところがここからが大苦戦。まずは、ドリルによる穴開けが思ったような位置に正確にはできない。1発勝負で最初からドリルでいったときは言うに及ばず、ドリルの頭をあてるところにあらかじめ熱した千枚通しでへこみを作って、そこを円錐形のヤスリをハンドドリルで回転させて穴をほじって、その上でドリルをあてがって穴を空けても、そもそも空けたい位置がミリ単位なので、微妙にズレただけで”不合格”って感じになる。2回失敗して空けた穴にUVレジンたらし込んで固めて再挑戦で、やっと1つ溝に寄せた穴がちょっと寄りすぎたかもだけど”これで良し”と割り切って、もう片方の溝から離す穴は近すぎたけど、片方がネジでキッチリ固定されていればもう片方はネジ穴が多少ゆるくても横にずれなければ大丈夫だろうと、ダイヤモンドヤスリで縦長の穴にシコシコ手作業で拡張して、なんとか主軸に固定できる位置に穴を空ける事ができた。

 めでたしめでたしおしまい、ってなれば良いんだけど、主軸に新しいオシュレーションスライダーもついたことだし、ちゃんと稼動するか確認しようとしたら、蓋が閉まってくれない。なんでだろと思ったら、アルミで作った溝がギリギリそばにネジ穴あけてネジ締めた事で膨らんでしまってるのもあるけど、それより以前にそもそもいい加減に現物合わせで作ったのが失敗で、溝の幅が足りなくてプラナマティックの花びらから出てる突起が溝に填まらない。ここまで苦労したけど”万策尽きた”。といったん諦めかけたけど、心の中で安西先生が”諦めたらそこで試合終了ですよ”とワシを鼓舞してくれる。それじゃあダメ元で悪あがきしておくかと、なんか手は無いかと考えて、アルミ製の溝取っ払って幅をちょうど良いところまでレジンを削って調整、ぐらいしか思いつかなかった。レジン樹脂の強度的なものに不安があったのでアルミで強化するという面倒臭い事を考えたわけで、レジンそのままで溝作るのなら、最初の粘土での型取りの時に溝側から型取っておけば簡単だったわけで、忸怩たる思いが無いわけじゃないけど、1日の作業が全くの無駄になるより良いだろうし「逆に考えるんだ、レジン樹脂単体の強度を試すための試作品だと考えるんだ」ってことにして、アルミの溝ペリッと外してまたシコシコと手作業でダイヤモンドヤスリでレジン樹脂を削る。

 結果、うまく填まってくれて本体蓋締まりました。でもちゃんと回らなかったりすぐに割れたりするんじゃないの?って疑心暗鬼でハンドル回してみたら、プラナマティック特有のモゾモゾした動きでスプール上下しながらローターも問題なく回ってくれて、内部で引っかかってるような感触もなく良い感じ。負荷かけて巻いたら割れたりしてという不安は、2個のスプールにラインにやや強めに張りをもたせつつ巻いても大丈夫だったので、どうもすぐに壊れるようなモノでもなさそげな感触。

 気になる巻き形状は、どちらのスプールにも台座に0.5ミリテフロンワッシャーを入れた状態で、元からついてたスプールがちょうど真ん中ぐらい、新しい予備スプールがちょい前巻きぐらいの理想的な巻き具合になって、巻き形状の修正という目的はきちんと達成できたようで一安心。

 ドラグも調整しておこうと、台座テフロンは変えずに、教えてもらったPENNの4500ssとか中型機に入ってるカーボンのドラグパッドで使用済みのを見繕ったのと、中古で買ったPENNに入ってたフェルトワッシャーを試してみたところ、最初に試したフェルトワッシャーの時点で結構良い感じでちょっと作動時ウィンウィンする感じはあるけど充分許容範囲でシーバス釣るには問題無さそうだなとおもったけど、PENNの「HT100」カーボンドラグパッドは優秀ってのを改めて実感。さほどウィンウィンもせず滑らかにドラグが稼動。上等やん!シーバスは余裕だしボラとか来てもそれほどドラグを心配せずにやれるレベル。つくづくドラグなんて適当な素材のパッドあてがってやれば良いだけの簡単な機構だなと今回も再認識。

 道具は良い感じに準備できたので、あとはワシの技術的な問題として投げるのコネ気味なのを丸ミッチェルに修行つけてもらえば、問題なく魚釣れそうな気がしてきた。やったるゼ!

 とまあ、実釣の方はいつものように淡々とやっていけば良いとおもうけど、樹脂性部品を作るという行為については、結構いけそうな感触がいま自分の中に育ちつつある。その際にUV固化レジン樹脂が強力な武器となってくれそうな感触があって、UVレジンの利点として最初は”固化時間が早い”というのが重要だと思ってたけど、それ以上に今回穴の開け直しとか網目に浸透させてとか細かい作業をする上で、ものすごく使い勝手が良いと感じたのが、”固化するタイミングをこちらが決められる”という点である。同じような固化速度であれば”5分固化”ぐらいの2液性エポキシでも近いモノが得られる。ただエポキシだと混ぜてしまえばそこから”ちょっと待って”ってのはできなくて作業もたついてる間にも固まっていく。UVレジンだと、ゆっくり確実に作業して準備が整ってからUVライト照射で固化が始まる。細かい作業や複雑な工程が生じても対応できるし、容器から出した樹脂が一つの工程がおわって次の工程に入っても、UVライト照射していなければ普通に使用できるというのも地味にありがたい。という感じで思った以上に使いやすい特性。

 さらに発展させていくなら、今回は単純な形で、人力で整形するのにそれほど無理のない部品だったけど、これ例えばちゃんとした”3Dプリンター”手に入れたら、それなりに複雑な形のモノも整形可能になるわけで、その際にUVレジン樹脂の”強度”が心配になってくるけど、そこは例えばいくつかのパーツに分けて作って単純な形状のパーツを手作りで丈夫な補強を入れて作るとか、金属やポリカーボネイトの土台と組み合わせて整形していくとか、後から穴空けて金属の補強を入れるとかいくらでも応用編はありそうで、最終的には芯とスプールエッジを金属とかにして組み合わせることで、樹脂性スプールを自作できるところまでいけるんじゃないか?と思い始めている。そうするとスプール形状がイマイチと言われている大森ダイヤモンドの、スプールエッジが真っ直ぐでオシュレーションの幅にピタッと合わせた糸巻き幅のスプールとかが手に入ってしまったらどうしましょ?ってちょっと心ときめくモノがある。まあそこまでの技術を習得するには時間も掛かるだろうし、3Dプリンター使うなら投資もそれなりに必要になってくるけど、方向性としてはそういうのを目指して良いのかなと思う。金属の部品作って売ってる小規模工房はあるけど、あれは個人でやろうと思うと機械への投資も技術も素人には手が出ない気がするけど、3Dプリンターで射出した部品を強度確保する方法考えて実用性のあるモノに仕上げるのは、3Dプリンターが中古ならそろそろ無理したら買えそうな値段のとかも出てきてるので夢物語ではないような気がしている。

 複雑怪奇になった今時のリールの部品とか作るのは難しいだろうけど、ワシの好きな単純で丈夫な、使いやすいリールについては樹脂製部品は経年劣化とかで壊れやすいけど、逆に素人でも樹脂製部品は作るってことができるようになるんじゃないだろうか?そうなれば昔の良くできたリール達は、100年使う事、100年魚を釣り続ける事はたやすいんじゃないかと妄想して、ちょっと気分良くなっている。

 今回の、人力3Dプリンター作戦、失敗も多かったけど、やらなきゃ分からないことが色々分かってきて、試してみて本当に良かったと感じているところ。この記事ヒントにしてなんか良い方法思いついたり実践してくれる人がでてきたら、ちょっと面白い方向に発展していかないだろうか?そのへんも期待してみたい。


 って綺麗にまとめたんだけど、これで終わらんのよ。

 準備できたし、2月に入ったしそろそろシーバス沿岸に戻ってきてるヤツもいるやろと314持って行ってきました。詳しくは2月3日・4日の顛末記を読んでもらうとして、まあ想定と違う方向のジャジャ馬ぶりでとてもワシの技量では扱えそうになく、再調整を余儀なくされた。予想されてた投げたときの意図しないベール返りは起きなくて、ワシ意外と真っ直ぐ振れてるじゃん、と胸をなで下ろしたし、ラインのヨレもたいしたことはない、ギアゴロ感は釣りするのに支障はない程度だし、良いところまで詰まってると思うんだけど、ラインがドバッと絡んで出ていく不具合が頻発して、ラインある程度抜いたらかなり軽減されたけど、サミングもしてるし巻き始め竿立ててライン張ってから巻いてるしで、相当気を使ってるにもかかわらず、不具合が治まらない。軽い5センチのシンキングペンシル使ってるってのも要因だろうけど、春の主戦力なのでこれで不具合生じるようでは使えない。

 どうも、プラナマティックで密巻き気味に巻かれたラインが樽の太ったところのあたりで雪崩的に崩れてドバッと放出されている気配。対策としてはプラナマティック取っ払って304の単純往復で綾巻のギアに換装するってのはあるかもだけど、できたら314の本来の機能はいじらず”ジャジャ馬乗りこなし”てみたい。

 そうなるとまずは単純に糸巻き量を減らすってのがあって、糸巻き量が減ればライン出て行くときにスプールエッジに当たる抵抗が増えてラインがフケずに”張る”傾向になり、しっかりと巻かれるので崩れにくくなり、当然スプールエッジに当たる抵抗が増せばドバッと出るのを直接抑制する効果も期待できるだろう。なので、まずは糸巻き量を減らすのは基本かなと。今回プラナマティック搭載機であり、せっかくなので”飛距離が出る”ってのを堪能してみたいと思って少なめを意識しつつも、ちょっと巻き多めにしてしまっていた気がする。やる事は単純なので下巻きの元の位置にマスキングテープで目印しておいて、5ミリほど抜いてやった。

 お次に、樽形に巻かれた膨らんだ部分が崩れてドバッと出てると想定するなら、膨らんだ部分から前の方に巻きが低くなってる部分が少ない方が良いはずで、キツ目の前巻きに修正。せっかく頑張って台座の上に0.5ミリのテフロンッワシャーを入れる高さを確保したけど、ちょうど真ん中かやや前巻きにラインが巻かれているという巻き形状では足らんというなら抜くしかない。幸いドラグへの影響はそれ程気にしなくても良さそう。そもそも台座とスプール裏面で滑らせるのが純正状態なのでテフロン抜いて破綻するわけはないけど、直受けだと削れてきそうでやだったのよね。まあ削れたらその時に下がった分のワッシャーを噛ませば良いだろう。そして、古リール好きの伝統の技らしい”手巻き逆テーパースプール”をくり出してみる。要するに下巻きを手で逆テーパーつけて巻いて、今時のダイワのABS系のスプールのようなライントラブル防止効果を狙うのである。写真真ん中が下巻きで、その上に2号70m巻いた準備完了状態が右。だいぶ前巻きに修正できた。

 という感じで、スペアスプールも同様にしてスプール2個調整完了。見た目にも樽形に太ってたのがシュッと根元が細くなって崩れにくそうには見える。せっかくのプラナマティックの利点である飛距離は幾分死んでしまうだろうけど、もともと近距離戦特化型の釣り人なので実害はないだろう。

 ということで、ライントラブル軽減に主眼を置いて大きく舵を切った調整を行ったところ、さっそく試し投げにいったら、バッチリ改善で2時間弱トラブルらしいトラブルなし。飛距離も別に落ちてないんじゃないの?って感じに充分出てるし良い感じにジャジャ馬を調教できたように思う。

 ラインがドバッと出ていくトラブルの対策には、結局単純だけど糸巻き量を減らすのが効果大のような気がする。巻き形状の修正も効いてはいるだろうけど補助的なものかと。

 あと意外に糸ヨレがでない。ラインローラー固定式という点では一緒のダム「クイック220」より縒れない感じで、ラインローラー回転式のよりは縒れるだろうけど魚釣るのに困るような感じではない。

 ギアが”ジャーコ、ジャーコ”という感じでギアゴロ感あるけど、巻き自体は軽くて釣ってて不快ではなく、むしろあのボロかったリールがよく頑張ってるなとその巻き心地に愛着が湧いてくるぐらい。良い季節になって良い魚が回ってくるのが待ち遠しい感じになって来た。今朝は起きたら花粉の影響出始めたのかクシャミが出た。春はもうそこまで来てるようだ。

2022年2月5日土曜日

秋のスタメン4番打者候補

 

 欲しかったんじゃ-!仕方なかったんじゃー!!

 あれ、今週は新しい記事まだなのかな?と思った皆様、冒頭写真が集合写真で出だしの台詞が一緒ではありますが、新ネタです続きをどうかお楽しみください。

 説明いりますかね?まあ一応しておきますか。

 昨年の秋に「ワシャやっぱりメリケンリールが好きじゃけん」とスプールが刺さってる位置の樹脂製ブッシュが割れてるジャンクなシェイクスピア「2052EC」を購入して修繕して使ったところ、これがなかなかに”シンプルなウォームギア機が好きっ!”っていうワシの好みにもろにハマって、使い心地が良くお魚もちゃんと釣れたので、調子に乗って一つ大きい「2062DA」を買ったはいいけど、新品箱入り娘に手を出す度胸がなくて、でも使ってみたくて身もだえて、セ○イモンで安めのを探してたら、なんというか、買う運命にあったんだろうか?ちょうどヤ○オクで4台放出してる出品者さんがいた。まあ一番小っちゃい2052系はそれなりに値段付くけど、カーディナルC4クラスのちょい大きめな2062系は日本じゃ人気ないしあんまり値段つりあがらんだろう。とはいえ、一つは確保したいところなので一番ボロくてフットの端が欠けてるジャンクな個体に気合い入れて4200円で入札して、後2つにはあわよくばと3200円で入れて、どれか落札できればもうけものぐらいの心持ちで、我が家はカマスの時期はウインタータイム採用で21時頃には寝るので、放置して寝て起きたら、3つとも落札してた。しかもみんな同じように考えて一番ボロい個体に金額張ったのか、そいつだけ競って3800円、他は2800円、3100円と開始価格からほとんど動かず落とせている。2台はあるとスペアスプールが確保できるのでいいけど、3台目は余分だったかなと思わなくもないが、まあ安かったし良いさ。

 っていうぐらいに値段がつきにくい機種なので、あんまり売る事は想定せず、使うの前提で整備を進めていこう。久しぶりに青いグリスをグッチャグチャにぶち込んでやるぜ。

 ということで、まずは最初に使う予定の足の欠けた個体からバラす。銘には「2062NL-2」とあるんだけど、本体蓋にはモデルEFの文字が刻印されてて、機種名いまいち特定しきれんがな。

 まずはスプールから行く。スプールもスプールの座面ブッシュも金属製で割れたりはしなさそうなので安心。スプール上面には「6”D”DRAG」の文字が躍り、当然6次元ドラグではなく、2052ECもそうだったけど、3階建てでディスクが6枚使われてるって意味だと思う。ドラグパッドは革製。2052では革製のドラグパッドはさすがに経年劣化もあってペッタンコになってる感じで調整幅が狭く、テフロンワッシャーでちょうど良いのを見付けて換装したけど、おそらくコイツもそのままでは使えん気がする。ただ、ドラグの設計自体は台座のブッシュが太くて安定性良さそうなのに加えて、ドラグパッドの直径が大きくて、ドラグパッドさえ適切な素材のを入れてやれば、良いドラグになりそうな気配がする。そのへんは後で対策考えるとしてまずは全体を整備する方針で引き続きバラしていく。

 パカッと本体蓋開くと、見慣れた感じのウォームギア。ただ、2052では気がつかなかったけど、ローター軸のギアはステンレスで普通だけど、ハンドル軸のギアは、芯は鉄系だけど、ギア自体は亜鉛っぽいな。先日、大森製「アトラスⅡ」がウォームギア機で亜鉛鋳造のハンドル軸のギアなのを見て珍しいなと感じたけど、割りとありがちな設計なのか?それとも大森とシェイクスピアだから繋がりが強い両社の間で技術的な交流があったとかなのか?いずれにせよウォームギアはドライブギア亜鉛鋳造でも作れるようです。

 主軸抜いてローター外そうとして、最近ローターは鬼門なのかちょっと苦戦。もともとローターナットを締めてから緩まないように爪を曲げて固定するワッシャーがハマってて、この手のが外せないほど堅い素材なわけないので、何とかなるだろうと隙間にマイナスドライバーを入れてこじ開けて、ローターナットは無事取れたんだけど、あれっ抜けんがな?と思ったらローターにネジ切られててコイツもローター回さないと外れてくれなかった。まあ何とかなった。

 ローター外れなかったときに、ローターの根元のネジが気になって外したけど、特にローターの固定とかには関係してなくて何だろうと思ってたら、ローター軸のギアとベアリングを抜いたら正体が判明した。

 ベアリングに注油するための”油差し”の穴だった。ベアリングが上の方だけシール付きで、写真じゃ見にくいかもだけど、ベアリングの収まるスペースの底の穴からオープンなベアリング下面に油が差せる。いかにも道具は自分で整備したがる米国人らしい仕様で好感が持てる。まあワシゃグッチャリグリスシーリングにしてしまうから後からこの位置には注油はせんけどな。

 その他気付いた点としては、ラインローラーが2052ECでは樹脂性スリーブ入りだったのが、本機では油溜まりのある軸に直でラインローラーが乗ってる。多分ラインローラーは真鍮にクロームメッキで、金属同士でそんなに削れるような素材じゃないしこれはこれで大丈夫なんだろうと今のところ信じている。回転は滑らか。ベールがややタレ気味になってたのでベールアーム慎重に曲げてラインローラー水平になるぐらいに修正。

 パーツクリーナーと歯ブラシで古いグリスやら汚れを落としてから、青グリスとダイワのオイルでグリスアップ。久しぶりにこれでもかと大盛りで仕上げる。

 このぐらいグリス山盛りでいくと、特にウォームギア機はそうだけど、最初巻きが重い。でも、回してるとだんだん馴染んで必要な量だけ回転部分に残るのでそれなりに軽くなる。初めっから必要な少量のグリスでいけば良いようなものだけど、耐腐食性的にはグリス多めは経験的に絶対正義で、固まってようがグリス多めで整備されていたリールのギアは腐蝕からは逃れられていた。グリスが悪いと摩耗するような繊細なギアのリールはワシャ使わんので、自分で使うリールにゃ安いグリスで良いのでタップリ使いたい。4桁スピンフィッシャーとか出荷時入ってるグリスって一番安っぽい茶色の”芋グリス”ってやつだったけど、4桁スピンフィッシャー、ギアが逝ったり腐蝕したりするようなヤワなリールじゃなかったもんね。丈夫なリールならグリスは耐塩性重視で選んで良し。

 本体側は整備終了で、後回しにしていたドラグの調整に入る。スプールにライン巻いてドラグの効きを試してみたら、やっぱり調整幅が狭くて、かつややシーバス用には強く効き過ぎる。2052ECのときは外径16ミリ、内径8.5ミリの規格品のテフロンワッシャーがドンピシャで入ってくれて、厚さ1ミリのを2枚、0.5ミリのを1枚で高さ的にもちょうど良くなって、3階建てテフロン湿式、調整幅も滑りも上出来の実用的な良いドラグに調整できた。今回もテフロン湿式で行くかなと思ったけど、近い大きさとしては外径22ミリ、内径10.5ミリの規格品があったけど、外径はやや大きく内径はやや狭い。つまりのところ合わんがな。座面は外径は大きくても良いので内径だけヤスリで削って広げて填めたけど、3枚内外削るのは面倒くせぇので最後の手段として温存して、なんか加工が楽な素材で1から作るかと道具箱をゴソゴソと探してみる。昔ドラグいじって試したときに、耐熱性のあるタッパーの蓋とフェルトはそれなりに使える感触だったので、今回タッパーの蓋は見つからなかったので、フェルトで行くことにした。

 フェルトっちゅうても、リールのドラグパッドに使われているのは硬質フェルトってやつらしく、一応それらしきモノもモノタロウで購入済みではあるんだけど、2ミリと分厚くて3枚も入れたら溢れる。まあとりあえず昔試したときはそれなりだったので、百均で買ってきた手芸で使うようなアクリルフェルトを試してみることにした。

 純正の皮パッドをフェルトの上に置いて、マッキーの極細でなぞって型取り。そしてハサミでチョキチョキ、紫のドラググリスをベチョッと塗って、ドラグパッドとする。

 こんなもんでどうにかなるなら苦労せんよな。と思いつつ、ダメなら面倒臭いけどテフロン削るかとか思いつつ、最初にワッシャーと6枚填めてスプールを主軸に挿そうとすると、フェルトの繊維がはみ出して主軸に絡む感じでよろしくないので、まずドラグが空っぽのスプールを主軸に填めてからグリス染ませたフェルトとワッシャーを交互に填めていって、なんとか所定の位置に収めた。高さ的にもちょうど良いようではある。やりかけてしまったので最後までやってみたけど無駄な作業に終わりそうだなという予想はあっさりと覆った。調整幅も充分あるし、滑り出しも良ければ作動中も安定して滑らかにドラグが効く。何じゃこれこんな簡単なモノなのか?ドラグなんて難しい機構じゃないとは常々書いてきたけど、ほんと適切な素材さえ使ってやればいいだけの単純な仕組みで、ハサミでチョキチョキ工作レベルで百均素材で間に合う程度じゃん。各社ご大層なこと言うなよなって心底思う。まあ、直径大きめ軸太目のシェイクスピアの設計の基本的な良さはあったんだろうけど、ドラグなんて小型機ならドラグパッドをフェルトかテフロン、中大型機で走る魚相手にするならカーボンシートにしてやれば、それだけでとりあえず合格点ぐらいはとれるって話で、あとは好みでドラググリスの粘性変えてみたり、止めるの重視か、走らせるの重視かでドラグ値の最高値をどう持ってくるかあたりを調整すりゃ良いって話で、今回も滑り良すぎてもうちょい締めたときには止まる感じが欲しいなと思って、ドラグパッドを1枚皮製純正品に戻したらちょうど良い塩梅に決まった。3階建てのドラグならドラグパッドの素材の構成を変える事で、得意なドラグ値を変えることができるってのは昔PENNで学習済みで、今回その知識が生きた。使って魚釣ってみんとわからん部分はあるにしても、シーバスを想定してるので、手でライン引き出した以上の事が釣り場で起こるともあまり考えられず、ドラグも良い感じに仕上がったと思う。スプール大きめでライントラブル少ない事が期待できるし、整備性は良いし、単純で壊れるところもなさそうだし、グリスグッチャリで耐塩性も十分確保できたと思うし、これはかなり使えるリールやろ、という期待感がいやがうえにも増してくる。

 お次の個体は銘には「2062」としかないけど、これも本体蓋にはモデルEFの刻印有り。海外の古リールマニアサイトのORCAにはシェイクスピアのモデルを表す刻印のアルファベットがどの数字に対応するかを解読した”ロゼッタストーン”的な対応表が上がってて1文字目Eだと60年代、Dが70年代とのことで、2052系でもそうだけど、古いのは”E”がついて新しいのは”D”がつくモデルってのは間違いなさそうだけど、本体蓋も使い回しとかありそうで、かつモデル名と銘板の商品名が合ってない、っていうかそもそもNLとか対応表ではあり得ないアルファベットの組み合わせでもあって、モデル名が即商品名ってわけでもなさそう。って感じにわけ分からんことになってそうな気配。ただ1台目とコイツはベール反転機構をベールアームと反対側に持ってきて重量分散させてるところとか、ミッチェルっぽいクルッとノブを反転させるハンドルの形状とかは同じで、近い年代に作られてて、2台目がマイナーチェンジ版のような気がする。本体蓋のEFというのを基準にすればどちらも65年製造のハズだけど、同じ年に作られた機種とは思えない程度に微妙に違いがあるのが蓋使い回し等有りとみた根拠。

 パッと見での2台の違いは、ハンドルの色が1台目は黒で2台目はシルバー、スプールの色が黒と本体同様の赤茶系っていう単なる色の違いの他には、ローター根元の油差し穴が無くなってて、ハンドル軸の根元のはどちらにもあるのでどうしたんだろう?と思ったら、バラしたら理由が判明。ベアリングが片方開放から両側シーリング(写真右はシールを外したところ)に変更されてて、そりゃシーリングされたベアリングに油差しの穴から差したぐらいじゃあかんわな。ということで納得の変更。米国人は合理的ってやつか。1台目で苦戦したローターが、この機では曲げて固定のワッシャーは共通だけどローター自体にネジは切ってなくてスポンと抜けて拍子抜け。違いといえばその程度だけど同じ年の製造と考えるには不自然な程度には変わってる。あとは内部構造含めほぼ同じで、部品も共通でマイナーチェンジの域を出てないように思う。昔のPENNとか典型だけど、同じモデルで細かいマイナーチェンジ繰り返して長く売ったリールのようだ。それだけ基本設計がしっかりしてたって事だろう。2台目もグリスグッチャリ、スプール座面のワッシャーをテフロンに、ドラグはパッド2枚を百均フェルト製に交換、で仕上げておいた。2台とも組むときにちょっとコツがいったのがベールスプリングの填め方で、ベールアームにスプリングを填める穴が開いてるんじゃなくて、ネジ穴の脇に溝が切ってあってそこにスプリングの端を引っかける方式なんだけど、これが引っかけてネジをドライバーで締めてる途中にスプリングの端がネジ穴に落ちる。途中で何回も落ちるので落ちる手前ぐらいまで来たら、ベールアームをネジの頭方向に密着させるように左手で押しつけつつネジを巻くという技を編み出してなんとかした。あと、ハンドル軸のギアの上にオシュレーションのクランクを止めてるネジは逆ネジなのが地味に引っかけ問題なので分解する人は注意してね。

 3台目は、見たら分かるけど2062系の同型機で、今はもうないけど米国を代表するような老舗百貨店だったシアーズが”テッドウィリアムズ”ブランドで出してたもので「テッドウィリアムズⅣ」という名前になっている。古いリールをネットオークションとかで探してるとテッドウィリアムズの名はちょくちょく目にしてて、ダイワの昔のミリオネアとかもこのブランド名で出てるのを見かけたりする。米国の釣りブランドで”テッド”といえば海のフライをする人間ならワシのようなインチキフライマンでもティボー様やらビリーペイトで有名なテッド・ジュラクシックおじさんを思い出すわけで、同じ”テッド”だしなんか関係あるのかな?と思ったけど、米国だから当然テッドは名字じゃなくて名前(ファーストネーム)なわけで全く関係ない別人だった。調べてみるとテッド・ウィリアムズ氏はメジャーリーグで活躍した野球選手で、イチローがメジャーで記録塗り替えまくってたときに、ひょっとしたら塗り替えるかもといわれてた記録”最後の4割打者”のまさにその人である、という伝説級の大打者だったようだ。それがなんで釣り具ブランドの名前に?って話だけど、テッド・ウィリアムズ氏、現役時代から大の釣り好きで知られていて、シーズン終わるとフロリダの保養地に直行で釣り三昧だったとかで、そのあたりに目を付けたシアーズが自社の釣り具ブランドにその名を冠したということらしい。日本だと釣具屋でよく見る救命胴衣の普及ポスターとかでお馴染みの城島健司氏とかが近いか?

 塗装がやや渋めの茶色で本体蓋の銘も魚が踊っててちょっとカッコイイけど、機体的には2062の我が家にも新品箱入りが転がってる”DA”とかの”D系”のようで、他の2台とはベール返しの構造が大きく変わっていて、本体内部はほぼ一緒だけどローター回りは金型も変えた新機軸となってる。何が違うかというと2台目分解時にちょっと説明したけど古い方だと思う”E”系は写真の左のようにベールアームと反対側にベール返しを持って来て重量バランスを分散させているのに対して、新型のはずのD系ではベールアーム側にベール返しもあって、重量バランスを取るためにローターに分厚くしたオモリの部分が設けられている。わざわざこういう設計に変更したのは理由があったんだろうけど、D系はベールが折り畳めるようになってる、ってのは米国人は車やボートに釣り具積みッパでリール仕舞ったりはあまりせん人種だと聞いてるのでたいした理由にはならんだろうから、ベール反転の金具へのラインの絡みが多いのでベールアームと反対側はスッキリさせたかったとかなのだろうか?ラインが絡むのはちょっとやだなとは思うけど、使ってみないとどうともいえないのでとりあえずは気にしないでおこう。
 その他変更点としては、なぜかハンドル軸のギアの芯が、E系だと雄ねじになってたのが逆に雌ネジになってた。芯は鋳込む前に別に作るんだろうから金型変えずに変更可能なのかな?ハンドルの形状も変更されててそのあたりはあんまり機能的には変わらんかもだけど、ラインローラーに樹脂性スリーブが入ったのは耐久性上がりそうで喜ばしい。
 あと、良く分からん謎素材がドラグパッドに使われてて、青い樹脂性のが乾式でグリス無しで入ってるんだけど、妙にドラグが締まる。触った感じ石綿系でもないし、何なのか初めて見る感じで興味深かった。この個体はとりあえず出番は想定してないのでドラグはそのままで放置。本体内部は青グリスでグッチャリにしておいた。メリケンリールには青グリスが似合う。

 という感じで、2052ECのデキの良さからいって、コイツらもやってくれると思うので、春は”丸ミッチェル”中心に使う予定なので、秋になったら”2062EF”中心に予備リールは「ダムクイック220」で、PENN714zはちょっと温存させる布陣でシーバスやってみたい。
 2052系もそうだけど、特に2062系は日本じゃ人気全くといってないぐらいで、中古で出てきても3千円台とかで買えてしまうけど、マイナーチェンジ繰り返しつつ、他ブランド展開もしながら売られたメイドインUSA機、おそらく性能的には日本で人気のABUやらミッチェル、大森のインスプールと比較しても引けをとらない実力があると思うので、その実力を証明してやれたらなとおもっちょります。米国のネットオークション見てると本国ってのもあってそこそこのお値段で沢山出品されてて、良い状態のは”ゼブコ”カーディナルとかミッチェルとかと同程度の高値がつけられてます。ボロいのは投げ売りされてるけどね。ちなみにPENNの小型インスプールは本国では別格の人気でカーディナルやミッチェルより相場は上かも。
 ドラグの皮パッドだけ適当なものに換装したら他に手を入れなきゃならんようなところもないので、国内のネットオークションとかで安く出てたら”買い”でいいお値打ち品だと思います、とお薦めしておこう。