2021年11月27日土曜日

古き良き亜米利加

  ヘイ!ガイズ!!コロナもジャパンじゃ小休止だし、元気よく釣りしてるかい?ワクチン打ったからって油断はできないけど、海に川に飛び出そうぜ、カマーン!ジョイナス!!間違っても海に川に飛び込むんじゃないゼ、もうジャパンは冬間近だからな、ワッハハハッー!イッツ、アッメリケンジョーク!!

 なんだって?ワクチンには5G通信に接続するナノマシンが混入されてるって?ハッハッハー、じゃあ今のうちに接続後はどこのプロバイダに加入するのがお得なのか考えておかないといけないな。イエース、イッツ、アッメリケンジョーク!! U.S.A.! U.S.A.! U.S.A.! オーイエェー!!

 ・・・・・・。

 あれですね、陰気な日本人が陽気な米国人っぽい文体を真似するのは難しいですね。冒頭だけでドッと疲れてしまいました。日本人は陰気にネチネチと粘着質に島国根性丸出しでいくのが性にあってますね。って日本人というかワシ個人の資質なんだろうけどな。

 というわけで、シェイクスピア社「2052EC」はメリケンリールです。とりあえずいつもの儀式でご説明おば。シェイクスピアブランドのリールっつってもこれまで取り上げてきたのは、大森製だったり、どっか分からん国製のだったりして、ワシ、メイドインUSAのクラッシックなシェイクスピアは始めて手にしたわい。どう見てもPENNの「714z」とかダイワの「8100」あたりに見た目似てて、ウォームギアでフロントドラグの単純明快なインスプールスピニングということで、影響をうけたというか後発のが真似したんだろうなという感じで(スピニング自体はPENN700シリーズは1961年からで先行してるッポイけど小型機は2052とかが先か、互いに影響しあってるのか?8100はPENNの技術協力あったとか)、前々から気にはなってたシェイクスピア2052シリーズは、赤紫というか小豆色というかな色合いも独特の雰囲気で、シリーズは部品の材質とかハンドルとかスプールの色とか微妙に変えながら「EE」「EC」「DA」「DC」と60年代中頃から70年代終盤まで作られた結構なご長寿シリーズのよう。シェイクスピアって70年代に大森製作所とかにリール作らせるようになってからは本国生産はしてなかったと思ってたけど、本国製の高級機種?も並行して残ってた時代もあったようである。もいっちょ大きめの2062シリーズやシェイクスピアが吸収した「フルーガー」ブランドで出てる銀色の同型機なんかもあって、古い米国製スピニングをというときにPENNを除くと、多分これが代表的な機種なんだろうなと思って、まあPENN710系と似てるんだろうなとは思いつつ、ジャンクな出物があったら手に入れようとは思ってた。

 正規輸入はなかったのかもだけど、一つ大きい2062シリーズの「2062NL」ってののデッドストックがまとまった数日本の中古市場に流れ込んでいて、新品箱入りで買えたりしてたけど、それなりにお高いので新品だと使うのためらわれるしでパスしてると、日本じゃ人気機種でもないので中古の程度悪いのというとそもそも売れないだろうから、なかなか出てこない。しかし今回、見た目良さげなしかも値段付く小型の方である2052系の個体がネットフリーマーケットに4500円という綺麗なヤツの相場の半額程度で出ていて、オヤッと思って見てみると、写真で分かると思うけどスプールを乗せてる台座の上の樹脂性ブッシュが縦にも横にもに割れていて「ドラグ締めてもスプール回ります」っていうジャンク状態なのでこの値段らしい。スプールを乗せている台座のブッシュ、ドラグが出てスプールが回るときに捻るような形でけっこうな力が掛かるらしく、ワシ初めてのスピンフィッシャーである5500ssは、ギアは交換したことがないけど、やっぱり台座のブッシュが割れてドラグ締めても回っちゃうようになって、主軸交換したことはある。後年、「ミスティックリールパーツ」さんで、予備を買っておこうとしたら、5500ssの主軸は欠品で、5500ssは日本だとドラグ効かせまくって釣るシイラ・カツオなんかが対象魚になるけど、多分本国でも同じようにドラグを使いまくって台座のブッシュが金属疲労起こす大きさの対象魚釣ってるンだろうなと納得した。そう、5500ssの台座は真鍮製で丈夫な金属でできてるんだけど、それでも割れるのである。そういう部位に樹脂性パーツはあんまりよろしくないという気はするけど、小型機なら大丈夫ではあるのかもだし、樹脂っていっても種々あるからその素材特性にもよるんだろうし(まさしく樹脂である”漆”は保管状態良ければ千年余裕)、経年劣化が原因の一つにはありそうなので、通常の使用年数なら問題ないのかもしれない。まあなにせ古いリールである。

 「力のあまりかからない部位の樹脂製の部品なら素人工作でもどうにかなる」とこれまでも書いてきたけど、今回は力のかかりそうな部品である。ちょっと迷った。迷ったけど、まああかんかったら部品がイーベイで出てくるまで蔵に寝かせておくっていうのができるかなと安易に購入。

 購入してから、教えていただいた「ORCA(オールドリールコレクターズアソシエーション:古リール蒐集家の集い)」という英語サイトで情報収集してみると、やっぱり2052系の樹脂性のブッシュは割れるらしく、その再建方法の投稿が面白く参考になった。さっき書いた2052系の歴史もここから引っ張ってます。初代の初期の方は金属製ブッシュだったそうだけど、その後は樹脂性ブッシュになって割れてることが多いんだそうな。イーベイとか見てても思うんだけど、あっちの人はリールの修理ぐらい自分でする派が多いせいか、どっかが致命的に壊れたリールがあると、分解して部品にして売りさばくっていうのが多いようで、投稿者さんはなかなかに良いリールなのに1カ所壊れただけで部品売りにされるのは忍びないとか書いていて”アンタはオレか?”っていうぐらいに共感を覚えるところである。また、直すのに使ったのがマクドのストローって言うところが、ワシがコンビニ弁当の割り箸でルア-フライ作ったり、リールのハンドルノブ作ったりしたのと根っこが似てるように感じて、洋の東西は変われども、ものぐさな人間が身近な素材で工夫して工作するのはこれまた一緒なんだなと面白かった。

 とはいえ、ストローを型にしてエポキシになんか添加物混ぜてブッシュを完全に新しく作り直してるのは、素人工作というには少々難易度が高く、台にするちょうど良いペン(筆記具の方)の軸があったとかサラッと書いてるけど、中心にズレなくブッシュがハマってないとスプールが回転する際に当然偏心して滑らかに回ってくれず、ドラグがまともに働かなくなってしまう、っていうか程度によってはそもそも回らなくなるだろう。浮子作るときもトップと足が中心軸からズレないようには気をつけて作るけど、浮子は回転するわけじゃないので多少のズレは許容できる。けど、スピニングリールの主軸のブッシュはズレてちゃ困る。

 さてどうしたものか?ブッシュとしてちょうど良い外径のパイプを探してきて、軸の上にスレッドを巻いていってキュッとパイプを填めてエポキシで接着というのが、スレッドを丁寧に巻いておけば中心から同じ厚さで巻いていけるのでまずキッチリ真ん中にパイプを持ってこられる方法だろう。パイプはのべ竿とかの廃品利用でいけばちょうど良い外径に近いのが手に入るだろうし、傾斜が気になるとかで必要ならサンドペーパーで調整してやれば良い。と思ったけどちょうど良い太さのジャンクな竿が我が家の蔵に見当たらなかったので他の手はないかとまた考えた。

 今の割れたブッシュを単純に接着剤で補修したところで経年劣化が進んでるんだろうから、すぐにまた割れるのは目に見えている。であれば今のブッシュに補強を入れてやったらどうだろう?と考えた、樹脂なので熱した針金でもあててやれば穴やら溝やらは掘れる。ただ厚さもそれ程ないので骨格とするための細くて堅い棒が必要で、針金じゃ曲がってダメだろうし、浮子用の細いグラスの棒は強度的にたいしたことないし、焼きの入った堅い鉄系の細いワイヤーでも使うかと考えてたら、焼きの入った堅くて良い鉄の製品が身近にあることに気がついた。裁縫に使う針である。まち針なら別の用途で買い置きがあるし細さも強度も申し分がない。横から熱で溝を掘ってから、そこに適度な長さに切ったまち針を埋め込んで、別途グルッと外周に溝を掘って回転するときにスプールの内側が当たらないようにしておいて、丈夫なセキ糸でまち針を固定するついでに割れたブッシュを巻き止める感じに補強してやる。これなら今ある割れたブッシュの再利用なので寸法の調整は必要ないし芯からズレることもない。経年劣化している樹脂なので今後50年持つような修繕にはならないかもだけど、壊れたら次はパイプ探してきて再建するとして当面の延命措置には充分だろう。

 ということで、まずは現状把握して分解清掃もしておこうとリールをいじりはじめたらいきなり問題発生。問題ありっちゅうドラグは、いったいどうなってるんだろうとドラグノブ外してみると、なんという偶然か、ドラグが外れてこないようにする留め具が直近にいじったD.A.M社「クイック220」と同じ”工場マークの金具”のハメ殺し。こんな形式この2機種でしか見たことないけど、どっちゃかが真似したのか技術協力があったとかなのか?いずれにせよドラグいじりたいならこれ壊さなきゃだな、とクイック220のときは主なドラグパッドは座面に乗ってる直径の大きいヤツだろうからハメゴロしたまま放置したけど、今回の2052ECのは座面に乗ってるのは単なるワッシャーのようなので、場合によっては金具破壊も辞さずと思いつつ、ドラグの効き具合を見てみると、確かにギッチリ締めてもスプールが回る。上の方の写真の様に縦横に割れてて、ドラグのコバン型穴ワッシャーがハマるブッシュ上部が分離して回ってるのは間違いなさそう。ただ、小型リールではこのぐらい締まれば実用上問題ないだろうってぐらいスプール回転に抵抗は生じてて、最大ドラグ力はフルロックできなきゃダメって思わなきゃそれで済みそうな話ではある。そうはいっても本来のドラグ自体がフルロックした状態でブッシュが上下に分離した面だけで滑ってるとなると、直径の小さい1面だけで滑るわけで安定性とかクソもないような状況ではあり、直せるモンなら直してちゃんと3階建てのドラグが機能するようにした方が良いのはいわずもがな。

 ということで予定通りまち針の骨を入れてセキ糸で縛って補強してやろうとしたらば、ここでなぜか一旦填めたスプールが外れなくなってにっちもさっちもいかなくなる。ブッシュが割れた関係でその分太ってキツく填まってしまったのかと力技で抜こうとしても、これ以上やると壊れるっ!という感じでビクともせず、「アッこれ、中でブッシュの上部だけ回ってコバン型穴ワッシャーに引っかかってるな」と気がついたので、ワッシャーとドラグパッドを外してやれば抜けるはずなので、ある程度覚悟してたことだしと、工場マークの金具をこじってブチ壊してでも外そうと、眼鏡用マイナスドライバーを突っ込んだらあっさりと外れた。このへん、填め込んだらキッチリ填まって外れなかった西ドイツ品質と、意外にてきとうに填まっててあっさり外れてくれる大雑把なメリケン品質の違いだろうかと笑える。まあおかげで無事ドラグのワッシャーとパッド外していって、90度ズレてコバン型穴ワッシャーに引っかかってたブッシュ上部を先細ペンチの先で摘まんで90度戻してやって、無事スプールが抜けてくれた。怪我の功名的にドラグ上面の工場マーク型金具のハメ外しは可能なことが判明して、ブチ壊して新たにワイヤーとかでCクリップ的な金具を作る手間が省けて良かった良かった。ちなみにドラグパッドは皮かな?っていう感じの素材。

 とりあえずドラグが乗っかるブッシュを修繕するにしても、汚れや油分を除いてやらねば接着剤等の付きが悪いので、樹脂部品に使えるパーツクリーナで洗ってやる必要がある。ついでにリール全体の分解清掃、グリスアップをと分解していく。
 パカッと本体蓋を開けると、赤いグリスが塗りたくられていて「なんじゃこりゃー(©松田優作)」状態だけど、これバイクとかに使うグリスらしい。2スト乗りは青いグリスで、4スト乗りは赤いグリスなのか?バイクは自分では整備ほぼしなかったので良く分からんが、以前の持ち主にバイク乗りがいたんだろう。でもってちゃんとグリスアップして大事に使っていたと。
 設計自体は、見慣れたウォームギアにスプール上下(オシュレーション)はクランク式、逆転防止はハンドル軸のギア裏に掛ける方式、といたって普通なんだけど、これがなかなかに細かい所を丁寧に仕上げてる良いリールだというのが分かってくる。
 ラインローラーには大森みたいに樹脂性のスリーブが入ってるし、ストッパーの切り替えの根元には防水のためだと思うけど、樹脂性のフチ付きのブッシュが填められているなど、単純ながらも手が抜かれていない感じがする仕上がり。特筆するような特徴的な機構とか一つもないけど、手抜きされた安っぽいところは見当たらず、なかなかにやりおる。

 スピニングなんて、この程度の単純な設計で充分じゃん。っていう感じではあるけど、ギアもステンレスか鉄系?で丈夫に作ってあるし、もちろんハンドル軸も鉄系なのでハンドルはねじ込み式、ベアリングがどうも交換されているようでゴムのシールのタイプだったので、後ほどシール一旦剥がして青グリスぶち込んでやった。ベアリング交換すればいつまでも使い続けられる系のリールだったはずだけど、樹脂性ブッシュの耐用年数が半世紀ぐらいで限界を迎えているようで、そこだけが惜しいところ。だからこそそこだけ直してやれば、まだまだ現役復帰できそうに思う。まあスプールも樹脂性なので、そちらが割れたらさすがに手に負えないけど、まだスプールはしばらく持ちそうな気配。スプール樹脂性だけど芯にはアルミっぽい金属が填め込まれている。整備性は良好で難しいところは何もなくサクサクとバラしてパーツクリーナーとブラシで磨いて、修繕予定の主軸を除いて、青グリス大盛りでグリスアップしておいた。

 そして、一晩乾燥させた主軸、まずは瞬着で仮止めしてから作業を進めていく。
 フライを巻くときに使ってるニードル(ボドキン)は学生時代にまち針の針とこれまた割り箸で作った手作りのものだけど、針を交換しつつ30年来使い続けている。まち針の買い置きがあるのはこの変え刃?用。このニードルがまち針を埋める溝を掘るの熱しても持ち手が熱くならずにちょうど良いので、ガス火で赤く熱してやって樹脂性ブッシュに必要な溝を掘っていく。
 上下の割れ目を継ぐ形で、上から溝を掘ってまち針の先がさらに下にスパイクのように突き刺さるようにちょっとずつ溝と穴を掘っていく。
 これがなかなか正確性と早さが要求される作業で、もたついていると熱した針が冷めてしまって溝が掘れず、慌てていい加減にあてると、溝の位置をとらえられず溝が広くなってしまいカチッと固定できなくなってしまう。”素早く精確に”というのはジジイのプルプル震えがちな手先では難易度が高く”スタープラチナ”のスタンド能力が欲しくなるけど、どうせスタンド能力を矢に刺されて得るのなら、なんでも直せる(ただし失った命は戻せない)”クレイジーダイヤモンド”なら話が早いか?とはいえエンヤ婆にもコネはないので、失敗しないようにちょっとずつ慎重にコトを進めて行く。
 なんとか上手く溝も掘れて、まち針も裏表2本埋めることができるし、上下2カ所をセキ糸で縛るのもできるようになったので、熱で溶かしてできたバリをナイフで削って、まち針必要な長さに切って埋めて、ケブラーのセキ糸で縛って隙間を瞬間接着剤で埋めて固化促進剤で固めて、コバン型穴ワッシャーが填まる切り欠きはダイヤモンドヤスリで平面を出して、ブッシュの外周はサンドペーパーでならして綺麗に仕上げて作業終了。

 スプール填めてみてハマらなかったり回転が重かったりしたらさらに調整必要だと思ってたけど、もともとの部品を生かした修繕なので、1発で填まって、ちゃんとドラグも正常に効いているようでホッとした。
 とはいえ劣化し始めてる樹脂のブッシュなので、ドラグ思いっきり使うような魚には使うの怖いというのは正直なところで、まあシーバスは何とかなるか?と思うけど”ドラグ試験”にボラ釣ってみようっていうのは、せっかく直したのにちょっと心理的に無理。
 ドラグパッド自体も見立てどおり革製だとするとだいぶ劣化してるだろうから、適当な素材で良い塩梅になるようなパッドもそのうち用意してやらねばならん。テフロンで微調整で済みそうな大きさの規格品があったら、小型機だしテフロン湿式が締めてもフルロックしにくいっていうのも安全弁になるし適切か。

 なかなかに良いリールである。っていうか想像以上だった。樹脂製部品の経年劣化はまあ50年後にどうなってるか?新素材で分からんかったんだろうっていうのはあって、樹脂製部品なら最悪再建するのも可能で、今後3Dプリンターが(っていうか使う樹脂のほうか?)性能上がってきてスプールも自作できたりするようになればいいな~って思ってるぐらいで、まあ大目に見ておいて、その他の作りはしっかりしてて、100年使える系のリールである。シェイクスピアのスピニングは大森製の印象が強かったけど、本国生産の自社製品もなかなかどうしてやりおるわい。
 とはいえ、まあややこしくないウォームギア機という点では、PENNスピンフィッシャー714zとかとまるかぶりで、かつPENNの方が耐塩水特化で丈夫な点では点数高くて、正直我が家では出番はわざわざつくってやらねばなさそうで、売るにしても”割れた樹脂製ブッシュ補修有り”だと買いたたかれるのは目に見えてる。まあ出番作って愛でてやるか。
 大きさ的には写真の様にまさに714zと同等で、スプールの直径は714zよりちょっと小さく、716zよりは大きい感じ。使うなら2号ナイロン巻いてアグリースティックエリートと組ませてシーバスだろうな。そうするとなんと竿とリールがシェイクスピアブランドで揃う。我が家のタックルでは珍しいことで、他にはPENNのごっついグラスロッドに9500ssの組み合わせぐらいしかない。

 という感じでしたおしまい。ってなればいいんだけど、そうはならないのが病気の怖いところ。アタイ、病気が憎いッ!
 「2062DA」新品箱入り娘、買っちゃいました。
 ネットオークションに開始価格8000円で出てて、「NL」の新品箱入りたくさん出回ってたころには1万5千円ぐらいしてたので、だいぶ値段下がったじゃんと、8千円で試しに出来心でつい入札しておいたら、入札ワシだけで落札。送料含めて8770円は高くはなかったと思うけど、ワレ、ジャンクでそのまま放置しておいたら燃えないゴミ行きのリールを直して使えるようにして、また中古市場に放して、まだ使える良いリールを次の持ち主の手に届けたいってのが”タテマエ”じゃなかったのかヨ?新品箱入りってどうよ、自分で使うにしても傷つけるの怖くて使えねえジャンよ?と思うけど欲しいと思ったらマウスが滑るのを止められないのである。それが”スピニング熱”の症状の怖いところ。
 なんかしらんけどメッチャ欲しかったんじゃ!仕方なかったんじゃ!!
 2062DAは問題のスプール座面のブッシュは金属製。スプールも金属製。箱入り新品は現状維持で触らないほうが価値があるらしいので、グリス乾いて固化してちゃんと回らんぐらいなので綺麗にして青グリスぶち込みたくなるのをグッと我慢して分解整備は当面しないけど、まあ見た限り100年使える系のリールである。某社が自社のリールを100年快適に使えると吹聴してるけどあんな特殊な素材使ってて100年それが供給されるわけねぇだろと常々思ってる。自社で面倒見るつもりなら志は立派だけど、失礼ながらこの流転の時代に御社が100年後も存在するか?ワシャ極めてあやしいもんだと思っちょります。
 まあ、箱入りで買うと説明書とか色んな情報が手に入るのでそれは良いところで、箱書きには商品名ワンダーリール「2062NL」となってて、オークションにもその名ででてたけど、本体にはしっかり”DA”の刻印あって箱流用かよ?ってあたりから既に面白い。多分この個体だけじゃなくて他の「NL」で売られてたのも「DA」だったんだと思う。
 説明書(裏に展開図)はこの時代らしい丁寧な作りで、往時のABUの小冊子ほどではないにせよ、投げ方とか巻き方、ドラグ、ストッパーの使い方から写真で丁寧に教えてくれていて、この1枚でこのリールで魚釣るのになにも困らんようになってる。ワシ的に評価高いのはメンテナンスの方法が4ステップにわけて詳しく説明されている点で、さらには加えて塩水で使ったらお湯と優しい洗剤?で洗ってしかり乾燥させてCRCかけておくと良いよ、ってあたりも実に親切。自分の道具ぐらい自分で手入れするっていう彼の国の人達の道具に対する姿勢も表れているようで趣深い。リール分解させないように”意地悪なネジ”使ってる我が国大手メーカーとそれを良しとして甘んじて受け入れてありがたがっている我が国釣り人とは好対照。でも世界でも日本製リール売れてるようだし今どきの釣り人はっていうか釣り人に限らず「オマエらは与えられたモノを中身も知らずにありがたがっとけば良いんじゃ」っていう感じで”飼い慣らされ”ててなにも疑問を感じなくなってきてるのかもしれんね。デキの悪いディスとピアもののSFじみてきたなと思う今日この頃。だからこそ、部品数60もないような古き良き米国のリールにたまらなく惹かれるモノがあるのかもしれない。大きさ的にはABUカーディナルC4級なんだけど、単純な分ちょっと本体が小さめにまとまっててシーバスに使ったらPENNの714z的なスプール大きめ本体小っちゃめ丈夫な感じで、かなり使えそうな気がする。やっぱりこいつも714zと似てる。じゃあ714z使っとけよだけど、他のリールも使ってみたいのよね~病気だから仕方ないのよね~。とはいえ新品箱入り娘に手を出す時にゃ親の承諾得にゃならぬってぐらいで、こいつは使い難いのでまたジャンクが出てくるのを気長に待ってみたい。まだ買うンかワシ。あと、説明書の他に1枚修理とか対応してくれる営業所の一覧と宣伝の紙が入ってて、全米各所に営業所があった販売網の規模に改めて米国市場の大きさを思い知らされると共に、シェイクスピアブランドでゴルフクラブやアーチェリーの道具も作ってたと知って、手広くやってたんだなと今はピュアフィッシング傘下でブランドを残すのみとなった現状も知ってるから盛者必衰の理を感じてしまう。今あるメーカーも10年後どうなってるのか、そもそも”釣り”がどうなってるのかワシには読めん。良いもの作ってた会社が残ったわけでもなんでもないという歴史を鑑みて、ましてや売らんがためにクソしょうもないものを売りつけて市場縮小にいそしみ自らの首を絞めてるようにしか見えないとこがどうなるかなんて知ったこっちゃないけど、案外そういうところがしぶとく生き残るのも、これまたあってもおかしくはないのかも。

 これまで、日本、スウェーデン、フランス、西ドイツ、イタリア、イングランド、アメリカ、中国、韓国、マレーシアと各国製のリールをいじったり使ったりしたけど、今回のメイドインUSAのシェイクスピアもいじってみて、結局自分は米国のリールが好きなんだなというのがおぼろげながら認識できたところである。アメリカンリールの丈夫さと、なんというか奇をてらわない”これで充分感”がとどのつまりは好きなんだろうなあと思う。あるいは「釣り場でPENNで困ったことがない」っていう単純な経験則から来てる話なのかもしれん。いろんなブランドのリールいじるのは楽しいけど、最終的にはワシャ”PENNで充分”だというのは実は心の底から分かってはいるのであった。分かっちゃいるけどそれでも色んなリールに手が出てしまうのであった。オーマイガッ!

2021年11月20日土曜日

ナマジ式マアジ螺旋仕掛け用コマセVer.4

 ナマジ秘伝のコマセには歴史がございます。今日は特別に皆様に、そのマル秘の製法を公開しちゃいます。っていうネタに一体どれほどの需要があるのか、疑わしいところではありますが、ま、世の中には変わった人もいるから、そういう人が「これぞ私が求めていた情報だ!」と喜んでくれるかもしれないので書いてみたい。少なくとも物忘れが激しくなってきた自分の備忘録にはなるさね。

 ワシのアジの釣り方は独特で、以前にも紹介しているけど、コマセ効かせながらののべ竿での餌釣りという、いわゆる”延べアジ”っていわれる釣り方の範疇なんだけど、コマセの量をけちりつつ必要な棚で効かせるために、”コマセ螺旋”というアユの餌釣りの「浜松式」と呼ばれる釣法でつかう簡易な”コマセカゴ”的なものをつかうのと、水中での魚の挙動とかが読みやすい自作ヘラ浮子と状況に対応するための頻繁なハリスとハリの交換で釣る、ヘラ釣りの応用のような釣りに加えて、魚を表層に湧かせて見釣りで数を稼ぐタナゴ釣りの応用的釣りで釣っている。いずれの釣り方も、コマセが適度にまとまって指で千切ったり螺旋に付けたりというのがやりやすく、水中では適度にバラけるけど、棚まではある程度持つ必要があるので、試行錯誤を繰り返しつつ徐々に改良を加え、今のところ自作のコマセは申し分ない使いやすいものになったと自負している。以下その試行錯誤の経緯など。

○Ver.0:アミコマセ単品 最初はアミコマセを単品で使っていた。魚を寄せて活性を上げる能力的には申し分なく強力なんだけど、いかんせんまとまりが悪いのでコマセ螺旋に付けにくい。かつ単価が安くはなくて、レンガ大のブロック1つで最近ちょっと値上がりして500円もしている。コマセカゴでバンバン撒くと2、3時間で1ブロック使うそうだけど、ケチ臭くコマセ螺旋に絡ませて使っても、5回の釣行ぐらいで使い切るのでどうにかならんのかとは思っていたけど、とりあえずコマセとしての能力は高いのでしばらくは我慢して使っていた。 

○Ver.1.0:アミコマセ+グルテン しかしながら、どうにも塩梅が悪い状況が生じてしまう。内側船だまりで5.4m竿で提灯にして深棚を狙ったとき、浮子が折れまくったり仕掛けが切れたりという長竿ならではの不具合も生じていたけど、コマセの方も浅い棚でバラけてしまい深い棚まで届いていない、という不具合が生じてしまっていた。なので、ヘラ釣りやってた人間の発想で、グルテンを混ぜて粘らせて棚まで持たせた。効果としてはあったんだけど、アミコマセに加えて市販のグルテンを使うとなると、またその分経費が掛かってきて、”オカズ釣り”という「遊びでやってるんじゃネェ」って言いつつ遊びでやってる釣りだとしても、あんまり金かかるなら、スーパーのお魚コーナーに行くたびに敗北感を感じてしまうことになりかねないので、経費削減策が求められることになった。この地ではアジなど1パック2百円かそこらで買える。

○Ver.2.0:アミコマセ+アジのアラ+糠 アミコマセが単価が高いので、とにかくなにか増量剤を混ぜ込んでしまえとなって、この地ではチヌのダンゴ釣法”紀州釣り”が盛んなので、米糠は釣具屋で手に入れやすい上にクソ安い。コレを主体に、アミコマセを配合しつつ、さらにアジの刺身とかを作ったときに余る頭とワタと皮などのアラを猫様用から流用して増量剤として使ったところ、格段に安上がりでコマセとしての効果もそこそこ高いものができあがり、このVer.2.0は割と長い間活躍してくれた。バラけやすいのが良いときもあり悪い時もありで、バラけて煙幕状に散って広範囲の魚を反応させる点は良かったけど、深棚を狙うときは、またれいによってグルテンを混ぜてまとまるようにしてVer.3.1にバージョンアップしてやらねばならず、ちょっと面倒くさかった。 

○Ver.3.0:アミコマセ+アジのアラ+パン粉 紀州釣りほどは米糠の量を使わないので、糠漬けも売ってる八百屋さんで少量売りの米糠を買うようになってたんだけど、たまたま米糠が売り切れてたときに、「放課後ていぼう日記」ってアニメでアミコマセの増量剤としてパン粉を使ってたのを思い出して、早速スーパーでパン粉買ってきて糠の代わりに使ってみたら、これがとても良い。なんといってもハンバーグのつなぎに使われるぐらいで、アジの頭のミンチとかアミコマセとかがまとまって、まさにハンバーグ種のようになって扱うのが楽になった。摘まんで千切って螺旋に付けるのも、そのまま足下に落とすのも非常に簡単。そして水中では適度に持つけど、ある程度魚が突いたりするとバラける。コマセ螺旋仕掛けだと、棚まで螺旋が届いて浮子が立ったら、縦誘い気味に仕掛けをヒョイヒョイとしゃくってやると、棚でバラける感じになる。バラけ方は水分量でも変わってくるので、堅めに作っておいてバラケさせたければ海水足してやるとかの調整も可能。これは実に塩梅が良い。ただ、これはコマセを使った釣りの宿命かもだけど、コマセに狂った魚が、コマセの粒子ばかり吸って固形物の刺し餌を口にしてくれなくなるときがあって、とりあえずVer.3.1でアジのアラを大きくしてみたら、ちょうど良い大きさに揃えて粗挽きとはいかず、大きな骨がそのまま残ってるとか塩梅が悪かった。のでVer3.2で冷凍塩鯖の細切れを入れるのは悪くなかったけど、冷凍塩鯖なんていう高級品はコマセに混ぜるより焼いて食えって話で納得いかず、Ver3.3ではボラを刺身にした後の皮とかどうだろうと細切れにして混ぜてみるも、皮が固くて包丁で切りにくいのを苦労して混ぜたのにたいして効果が認められず不採用。

○Ver4.0:アミコマセ+アジのアラ+パン粉+鶏皮 上記のような経緯があって、最終的には鶏皮添加。クソ安くて、ハリ持ちの良さを買って高活性時の刺し餌にも使ってる鶏皮を、刺し餌用と同じぐらいの細切れにして混ぜてやるという、思いつけばまあ妥当というか自然なところに落ち着いた。鶏皮細切れをコマセに入れるようになってから、刺し餌鶏皮への食いの良さがあがったように思う。コマセの粒子ばかり食って刺し餌に食ってこないっていう状況は、このVer.4.0で採用したコマセの工夫もある程度効いたかもだけど、ハリス細くハリ小さく(=軽く)で自然な感じに漂わせて食い込み良くすると劇的に改善することがあるということが判明したりもした。とはいえ現状では、ある程度まとまってくれて扱いやすく、コマセとして魚を寄せて活性を上げる能力が高く、固形物も混ざってるので粒子だけを吸うのを回避する効果が期待できる、という良い感じのコマセに仕上がったと思っている。

 でもって、作り方。

 まずは、なんとなく鶏皮はピンクに染めた方が良いような気がするので、食紅をカップ半分のお湯で付属の匙で5杯ほど溶いて濃いめの食紅液を作り、最終的に材料全てをぶち込んで混ぜ混ぜするバケツに入れておく。刺し餌としては視認性重視で黄色に染めても使いやすいかも。

 そして、冷凍して保存していた鶏皮100g程度を5×10ミリの細切れぐらいを目指して包丁で切る。切るときに完全に解凍してしまうと鶏皮は脂で滑って切りにくく、かといってガチガチに凍っているとこれまた包丁が入って行かず切りにくいので、電子レンジで自動解凍を選んで、表示が出た時間の3分の1ぐらいで取り出して切りやすい程度に凍結をゆるめてから切ると切りやすい。細切れの大きさは多少ばらつくのは気にしない。大きい切れ端は刺し餌用に回して使う時にハサミで切りながら使えば良い。

 そして、バケツの食紅液の中に、完全に解凍しておいたアミコマセ3分の1ブロックとともにぶち込んで混ぜ混ぜする。

 この時点で、大きな切れ端を中心にいくらか鶏皮を刺し餌用に、別に小分けして薄く伸ばした状態で冷凍しておく。使う際には適宜割って使う分を餌箱に入れて釣り場に持っていく。鶏皮は、小さくチョン掛けが食いが良いときもあれば、大きく付けて目立たせた方が効く場合もあり、大きめの切れ端はハリに掛けて引っ張りながら、適当な大きさになるようにハサミでチョンと切ってやるというのができるので、よく使う大きさのほかに大きめのもあった方が良い。

 そして、ここからがちょっと手間なんだけど、アジの頭と内臓をミンチにしていく。

 これはカチカチに冷凍してひとかたまりになっていた方が最初切りやすいので、冷凍状態で切っていく。ただし、欲張ってあまり沢山まな板に乗せると捌ききれないので気持ち少なめぐらいで何回かに分けて作業する。今回は写真一番上のように中ジップロックに5、6割ぐらい入れたものを3袋用意した。

 やることは、凍った魚のアラを包丁で薄く切り出して、縦横に切ってある程度細かくして、あとは二刀流でひたすらチタタプを繰り返して、たまにひっくり返したり端の方を真ん中に折り返したりしてしつこく叩いていく。「ドロヘドロ」のニカイドウちゃんになったつもりで、アニメ主題歌口ずさみながら♪

 多少皮とか、軟骨とか固形物が残っているのはそれはそれで固形物のまま沈降して食いを誘うので完全にミンチにすることを目指さなくて良いと思う。

 猫餌から一部拝借している形だけど、もともとアジを酢漬けにしたときとかに出る生ゴミだったわけで、コレを主体とするぐらいの勢いで沢山入れたいので、そうなるとかなり時間と労力が必要な作業になる。包丁2本でやるのは正直しんどいので、”エソ釣ってすり身作戦”が、エソ系も狙うと釣れないということで頓挫したので、購入にいたらなかった挽肉作れるような”フードプロセッサー”か”肉挽き器”を入手しても良いかも知れぬ。あれば捗るとはおもうけど、そんなに頻繁にコマセも作るものじゃないのでなかなか踏ん切りがつかない。

 アジアラミンチもできたら、バケツにぶち込む。

 今回、パン粉は市販の270g一袋のほかに、秋の長雨の時期に1時モノが腐りまくった時があって、夕飯に食べた味噌汁を次の日の昼前に温め直そうとしたら既に表面に白い膜が張って酸っぱい臭いを発してて「腐ってやがる」って驚いたのもあったけど、食パンがカビたのもあんまり無かった経験で、食い物無駄にするのは貧乏云々以前にお天道様からお百姓さんから、もちろん食べ物になってくれた原料の生物ほか関係各位に申し訳ない気持ちでいたたまれなかった。味噌汁は捨てるしかなかったけど、食パン2枚は冷凍庫で乾燥させておろし金ですり下ろせばパン粉にはできるなということで、今回使わせてもらった。

 パン粉が最後のピースなので、ぶち込んだら混ぜる。水はアジのアラから存外出るもので、最初に食紅を溶いた半カップでちょうど良いぐらいで追加する必要はなかった。混ぜてみて水気が足りなかったら足せば良いので水は最初少ないぐらいで混ぜてみた方が良い。水っぽかった場合はパン粉を追加すれば良いけど、パン粉使い切りで一袋ぶちまけた後だと難しいので最初は少なめが吉。

 不思議なモノで、パン粉入れて捏ねれば、なんだかハンバーグ種のような見た目にまとまる感じに仕上がる。仕上がったら、片手でギュッと握って団子を作って、団子2つを一つのビニール袋に入れてクルクルッと捻っておく。だいたいこの団子2つ入った一袋が3時間ぐらいの釣りで使う量で、コマセ多めに効かさないと食いが悪いとかだと2袋使う時もあるし、食いが良くてコマセあまり効かさなくても食って来て短時間で仕事が終わったりすると1袋使わないときもある。

 だいたい、15袋ちょいぐらい作れるので、蓋ができるパン粉の袋になるべく平べったくなるように詰めてから2段に重ねて冷凍庫で保存している。

 かかった費用は、食紅は数える必要が無いぐらいで数円、鶏皮は100gなら50円ほど、アミコマセは1ブロック500円の3分の1だから約167円、アジアラは無料と考えて、パン粉が250円ぐらい、で合計約470円。これを15回で使い切るとして、1回当たり約31.3円、刺し餌が鶏皮の他に400円のオキアミを4~6回で使い切るので4回として100円。アジ釣り一回当たりの餌代は約130円ってところ。さすがに魚が安いこの地でも、130円では半額札貼られるまではアジ1パック買えないぐらい。小アジで水揚げ目標60匹とか釣ってくると、1パック10匹200円ぐらいのが6パック分で1200円分の水揚げで、竿やバケツの減価償却費、ハリとイトの消耗品分を考えても、ちゃんと採算に合ってる気がする。素晴らしい。なかなか遊びの釣りで元はとれんものであり「魚が欲しいだけならスーパー行って買ってこい!」って常々思ってるけど、魚釣って楽しんだうえに、家計も助かっているとか最高である。一所懸命アジのアラを叩く甲斐があるというものだろう。

 ってなことを、書いてみたのは、コマセ一つ例に取ったって、色々工夫の仕方があるんですのヨってのをお伝えしたかったのと、さらにつけ加えるなら、それだけ工夫してもそれが決定打ってわけじゃなくて、釣り全体の工夫の一つの要素でしかなく、アジ釣りで一番”効く”工夫は”釣りで大事なのはハリとイト”ってぐらいでハリとハリスの状況に合わせたこまめな交換だと思うけど、それ以外にも場所やら時間やらは超重要だし、重箱の隅的な細かいところなら夏場は蚊取り線香焚くのが大事とか、バケツの上にハリ外し用のラインを1本張っておくと手返しが良いとか、家で準備してる段階から、帰って来て美味しく料理して食べてアラをコマセに回すところまで、全ての場面において、ちょっとずつ工夫を重ねるべきところがあったりして、そういう総合力、何でもありで全部つっこんで魚を釣りに行くっていうのが”魚釣り”の全体像なんだよってのを、ジジイの説教臭いけど書いてみたかったのよ。

 水辺で魚と引っ張り合いしてることだけが魚釣りじゃなくて、家に居て準備しているときから釣りは始まっていて、釣り終わって魚捌くのやら含めた後片付けもまた釣りであり、しからば、釣り人は常に”魚釣り”の渦中にいるといって過言ではなく、常に油断なく備えなえなければらなんのではないかと、思ったり思わなかったりするのである。

2021年11月14日日曜日

仏の顔はまだ一度、二度ある独逸は三度ある

  グーテンモルゲン!皆様お元気ですか?私は釣りもそれなりに調子良いのに、スピニング熱やらルア-系の発作やら悪化しまくりで、毎日のように郵便やら宅急便で釣り具が届いております。どうすんのよこれ?定形外の封筒が沢山手に入って愛猫のトイレの処理に便利です。

 ちょっと試しに見てみたいとちょっかいかけたD.A.M社のインスプールスピニングもこれで三台目。最初に買った「クイック110N」が最近ヤ○オクに出てたけど5千円台にしかなっておらず「ワシ8千円で買ったのに!」と落ち込んだりしたけど私は元気です。こりゃ今は売っても仕方ないな、当分蔵に寝かせておこうって感じで、安易に買うけど、なかなか売る踏ん切りがつかないという、ゴミ屋敷を作りがちな人間の典型的な思考傾向に基づき、現在”我が家のリールは90台まで”という数値目標を大きく超過してしまい107台のリールを抱えてしまっている。ちなみに台帳付け始めた2019年からのリール売買の収支を見ると、6万9千524円の赤字となっている。90台に収めるのに17台売ったとして、1台4千円になってくれれば、6万8千円がとこでなんとか収支トントン近くなるけど、ボロリールやら不人気機種が多くて、たかだか4千円がおぼつかないようなリールばっかりなのよね。もうちょっと景気が良くなって、コロナ禍で来ているらしい”釣り人気”がもうちょっと成熟したものになって、初心者用の道具で始めたウブな釣り人が、次にちょっと個性的な道具を買って、他の釣り人と差を付けたい(技術では差が付けられない)、とかなったときに、うまく言葉巧みに”釣り書き”書いてオノレの沈んでいる沼に引っ張り込んで、何も知らないウブな素人衆から金銭巻き上げることはできんもんだろうか?などとやくたいもないことを考えて現実逃避しております。まあいいさ、死ぬまで抱えてたとして、ワシが死んだら釣り仲間で山分けしてくれ。

 ということで、もうあんまり説明もいらんかと思いますが、しきたりでございますので欲しくて買っちゃったリールについて、僭越ではございますがワタクシのほうから簡単にご説明させていただきます。今回買ったのは「ダムクイック220」で、海外でも小型機は人気なのか値段がするけど、中型機は意外に安いもので、見た目が塗装ハゲとか目立つ個体ということもあって、本体は手数料入れても4980円、送料が他の細々した部品とあわせて2500円とまあ送料込みで7千円ぐらいかかったのかなという感覚。これまでの2台はそれなりに見た目綺麗な個体で塩水で使ってサビさせるのは忍びないっていうのにくわえ、クイック110Nはやや複雑な機構が組み込まれていて整備性がイマイチで使うの面倒臭いっていうのと「クイック110」はスプールの径がちょっと小さいような気がして、シーバスで試そうと思ってるんだけど、2号ナイロンまくと巻き癖付きそうな小型スプールなので、ならば一つ上の220を、と要りもせぬのに欲しくなって買ってしまったのである。

 船に揺られて(か空飛んでか知らんけど)大平洋渡って届いてワクワクしつつ箱から出してみると、ムムムッ思ってたより大きい、っていうか重い。いつも使ってるアグリースティックエリート7fに付けると、ちょっとぐらい重い分には軽すぎるよりは振りやすいけど、やや気になる程度には重い。

 ちなみに右の写真は大きさ比較で、一番上の写真左から今回のクイック220、ABU社「カーディナルC4」、いつも使ってるPENN「スピンフィッシャー714Z」、「クイック110」となってて、クイック220はカーディナルC4と大きさ的には似たようなモノで、中型機という整理になるんだと思う。ただ、真ん中の写真のように一つ小さい機種のクイック110と比べるとちょっと差がある。クイック110は大きさ的にはPENNの714Zと同程度の小型機なんだけど、一番下の写真のようにスプール径は小さくて、むしろPENNだと716Zと似た感じの大きさといえると思う。PENNの714Zは”ウルトラライト”な716Zをスプールだけ大きくして小さいけどある程度太目の糸もまけて、軽量な道具立てでそれなりに大きな魚を釣ってしまおうという”ウルトラスポーツ”なモデルで、非常に時代を先取りしているというか、今時のスピニングのスプール大きく本体小さくという”ドデカコンパクト”な設計思想をすでに体現してるように思う。PENNは小さい機種でも丈夫に作ってあるのもあって、渓流でも使えそうな小型機でスズキ狙ってもなんら問題なく楽しめている。多分ダム社ももうちょっとスプール大きく、あるいは本体小さくしたらもっと良いかも、ってのは気がついたのか、後発のはずの110Nはスプール径ちょっと大きくなってるし、110Nとスプール互換性あるらしい超小型機「クイックマイクロライト」というのも作ってる。

 でも、カーディナルC4と同程度の大きさならシーバス狙うには好適だろ?って思うかもしれない。確かにカーディナルc4だと同じ竿に付けてもそんなに違和感ない。なので重さどのぐらい違うんだろうかと測りくらべてみた。

 カーディナルC4は下巻きありで308.5gと約300gで標準的な中型機の重さといえるかも。比較してクイック220は350gと、なかなかに重量感がある。その分丈夫な感じはするのでワシ的には重いからといってダメだとは全然思わないんだけど、いつも714Zで運用してる竿にはしっくりこない。ちなみに714Zはライン入った状態で266gでクイック110は255gなので竿とのバランスだけで言えば110の方がしっくりくるはず。ただ、2号ナイロン巻くには、何度も書くようにスプール径が小さい。

 しかし、なんら心配ないはずである。なにせ我が家には竿が沢山ござる(現時点で121本)。どれかクイック220にちょうど良い塩梅の竿ぐらい蔵に転がってるはずである。

 すぐに思いついたのが、我が家に最初にやってきたアグリースティックで「アグリースティック7f」はそもそも竿自体が重くてかつソリッドグラスの穂先で先重りのする竿で、竿尻に板オモリ巻いて調整して、PENNのスピンフィッシャー「4400ss」とか「4500ss」で運用してた竿で、ある程度リールが重いと竿の先重りが緩和されてちょうど良いぐらいの竿である。竿の性格自体は今使ってるアグリースティックエリートと似たような感じで、エリートの方が今時っぽく軽くなって先重りもだいぶ解消されているけど、基本ダルダルな丈夫さ重視の竿である。久しぶりに引っ張り出して、整備後ラインも巻いたクイック220を付けてみたら、これは良い感じに振れそうな感触。コレで行こう。で、ついでに4400ssを重さ量ってみたら驚愕の400g超え。このリールも大きさ的にはC4ぐらいの中型機なのでC4の300gと比べて100gも重かったとは驚きの事実である。使っててそんなに重いとは感じてなかった。4400ssは樹脂ボディーなのに金属ボディーのC4など眼中にないぐらい重い。
 ただ、スピンフィッシャーの名誉のために書いておくと、4400ssは重い分丈夫に作られていて決して劣ったリールじゃなくて、丈夫さが欲しい、簡単な手入れで済むのが良い、使いまくりで酷使したい、っていう釣り人には最高の一台になりえると思っている。写真の個体はハワイ遠征(2000年の夏)でジギングの合間の桟橋小物釣りで使ってた大森製作所「マイコン302TB」のベールスプリングが折れて、急遽”代打”をということで大きなスポーツ用品店で買った個体で、あちこちスレ傷でハゲちょろげてるけど、これまで修理としては消耗品的なベールスプリングとドラグパッドの交換の他には錆びたベアリングの交換と、ストッパーのラチェットを挟む爪が折れた”サイレントドック”の交換のみで、ギアとか本体とかに致命的な不具合は一切生じていない。最近出番減ってるとはいえ20年以上酷使したと言って良いと思うけど、とんでもないタフさで、それはステンレスとか真鍮とか腐蝕に強い重い材料を多く使って、樹脂性だけど蓋のネジにもタップネジじゃなくて金属の雌ネジをはめ込んであるとか、海で使っても長持ちする丈夫さを追求した結果”必要だった”重さなんだと、C4より100gも重いということに逆に安心感を覚える困ったPENN偏愛者なのであった。

 横道にそれてPENNへの愛をほとばしらせてしまったが、閑話休題で本題のクイック220に戻って、整備の状況の報告など。

 今回、自分で使う個体をということで、見た目ハゲチョロゲ目のを落札したんだけど、手元に来てみると機関は好調で回転も軽いし、ベールも”ポピンッ”っとかいう感じの独特の軽やかな音を立てて滑らかに返るし、特段手を入れなくても良いのかなと思わなくもなかったけど、まあ我が家に来たからには青いグリスを大盛りで鱈腹ご馳走してやらねばならんだろうと、最近は売るのを想定して”高級?”なABU純正グリスを使う機会が増えていたけど、自分で使うなら錆びないように青いマキシマグリス一択である。

 まず、塗装が剥げチョロゲてるところをチョイとお化粧直し。自分で使うなら気にしなくても良いところだけど、黒なので車用のタッチペンが我が家にもあるしせっかくなので。あんまりべったり塗ると格好悪いので、塗料を綿棒でポンポンと叩くようにしてぼやかしてなんとなく継ぎ目なく黒くしていく。まあ地金がピカピカしてるようなところが消せればそれで良し程度。写真の右がお化粧直し後。

 お化粧直ししたらスプール関係からバラしていく。これまでの2機種とも全然違ってて面食らう。普通に三階建て方式ッポイドラグがスプールに入ってるんだけど、これが樹脂性のスプールに爪を立てて押さえ込むようになってる工場マークのような金具でハメ殺されていて外せない。眼鏡用のマイナスドライバーでこじってどうにかならんか?と試してみたけどどうにもならず、まあ回ってるようなので問題ないだろうというのと、むしろドラグパッドとしては座面に乗っかってる2枚のほうが直径も大きいのでドラグの効きを左右する要素たりえるだろうということで、あとでそっちの方をいじることにして、ハメ殺されてる方は放置の方針とした。

 クイック110の時にはハンドルの付いている左側が蓋になってて、ローターを回して取るのにハンドルを一旦戻す必要が生じたけど、今回はハンドルと反対側が蓋になってて、ローター回すときの手間が減るなと思ったら、クイック220はローターは回して取る方式ではなく、普通にナットを外したら真っ直ぐ抜けてきて拍子抜け。ただ、蓋には大盛りにされたグリスがベットリ付いていて「独逸人もなかなかグリスの盛り方を知ってるな」と頼もしく感じた。ってぐらいで特に書き記しておくべき新しい事項もなく全体バラせていつものようにパーツクリーナーとブラシで古い油脂類や汚れを落として乾燥させる。しかし、分解清掃の道具にハンドルピン抜くのに使うトンカチがあるのはなんとなく不穏な空気を醸し出してるな。

 でもって、久しぶりにこれでもかというグリス大盛りでグリスシーリングして本体関係は問題なく整備終了で快調なんだけど、ドラグと関連してラインが後ろ巻き気味なのの調整がやや手間取った。

 ドラグは前述のようにスプール内に入ってる他に、座面の上にカーボンシートを樹脂で固めたのと、金属のワッシャーが重ねられていて、てっきり金属のワッシャーはスプールの高さ調整で入れられているンだと思ってたので、ライン巻いてみたらやや後ろ巻きになったので、金属のワッシャーを抜いてスプール下げてやれば良いだろうと試してみると、これがドラグの挙動にかなり影響を与えてるようで、理屈は分からないけど金属ワッシャーを抜くと、入った状態では調整幅もそこそこあるし滑り出しも悪くないし使えるドラグだなと思ってたのが、調整幅がほとんどなくなってしまってキュッと締まるか、ズルズル滑るかの二択になってしまう。全く理屈が分からない謎現象。仕方ないので、1枚残す堅い樹脂で固めたカーボンのパッドが弾力性がないので調整幅が出ないのかもと、ちょうど5500ssとかのドラグパッドが使えそうな大きさなので、PENN純正のカーボンのドラグパッドや、中古で買ったスプールに入ってたフェルトのドラグパッドなら調整幅出るんじゃないかと思ったけど、パッとせず。座面の上に2枚入ってるのが関係あるのかな?とテフロン仕上げのグラスファイバーシートを切り抜いてパッドにして重ねたりしたけど、元々入ってた2枚ほど塩梅良くない。これはドラグパッドはそのままで、他で調整するしかないな、ということで若干下がり気味になってるベールワイヤーをベールアームの形状をいじってラインローラーを水平にしつつ上げてやると若干ラインが前巻きになるはずなので、ペンチとモンキーレンチでベールアームを慎重にちょっと曲げてみたらだいぶマシになった。あとは、下巻きを巻くときに座面上のドラグパッドらしい2枚をどちらも抜いて巻いて、前巻き形状の下巻きにしておいてから、ドラグパッド入れて使う道糸を巻いてやったら平行巻から若干の前巻きぐらいになってくれたので、おそらく巻き形状はこれでトラブル少なく良い感じになっただろう。

 という感じで、すぐにでも使える状態に整備も済んだし、合わせる竿もちょうど良いのがあったし、いっちょどんなもんか次回のシーバス狙いから実戦導入してみたい。なんか同じウォームギア機なのに、110、110Nより巻きが軽いのでなんでだろう?って思ったけど、ハンドル回しておおよそのギア比を調べてみると、110系は1:5弱ぐらいなのに対して220は1:4程度で低ギア比なので軽く巻けるようだ。低速機はシーバス狙いでは悪くない。ポピンッっとベールが返って、巻くと逆転防振の切り替えレバーがカタカタと振動しながらラインを巻いてくる。なかなかに独特で、釣れないとルア-を汽水で洗う単調な作業になりがちなので、使うのが楽しめそうってだけでもありがたい。

 魚が釣れるかどうかは魚のご機嫌しだいでなんとも言えないけど、割と使えそうな感触なんだけど実際はどうだろうか?次の雨が待ち遠しい。

2021年11月6日土曜日

ダメッ!そっちの沼は深いっ!!

  今年症状がイマイチ良くなってくれない”スピニング熱”、いきなりミッチェル方面の発作が出ておりますナマジです。皆様くれぐれも健康にはお気をつけてシルブプレ。

 ぶっちゃけ自分、PENNとか大森とかで症状が出てたけど、ミッチェルやABUに比べたら可愛いもので、PENNも大森も一部例外を除けばそんな値段もしないし、熱が出てもたいしたことないと思ってたのに今回の”ミッチェル発作”。単発で一時的な症状で収まってくれるのを祈るのみである。

 なにしろミッチェルのスピニングは歴史が長い。戦前から製造されていた機種とかもあって、バリエーションも豊富、ABUもゆうてもインスプールのカーディナルさえ押さえたら、あとはアウトスプールの「C3」「C4」と50系ぐらいで、700系800系はあんまり蒐集欲をそそるもんじゃないので、”ABUスピニング沼”も決して浅くはないけどリールの種類数自体は多くなく、ミッチェルに比べたら病状は軽く済みそうに思う。

 ミッチェルは、その点例えば人気の「408」「308」でも年式・生産国ごとに細かい違いがあったりしてややこしい上に、超ロングセラーの「300」系もあれば、古い設計の「304」、「314(今回のはこれ)」とかもあり、海用の大型機種もあれば、遠投用の特殊な機体とかもあって、ハマるとどこからでも深い沼底に沈みうる危険を孕んでいる。

 あとミッチェルには独特のややこしさがある。分かるでしょうか?”ややこしい”のである。ミッチェルのスピニングは偉大な先達であるがゆえに、単純明快な”答”にたどりついていないってワシ感じてて、8枚もギア使って増速してたり(300系)、スプール上下も独特の”プラナマチック”方式で行きつ戻りつしたりしながら巻き取ったり(308他)、独自性が強く個性的で、機械としては正直古い設計だとも思う、でも歴史的背景もふまえそういう独自性の強い個性的な道具だと理解して使うなら、それらは強い魅力として輝き得る。んだろうな、って漠然と感じてはいたけど、今回「314」をいじってみて、その感覚はあながち的外れじゃないなと再認識したところ。

 さて、まあいつものことですけど、説明させてもらいましょうか。従前より我が家では”ミッチェル立ち入り禁止令”をしいて、”ミッチェル沼”の深みにはまらないように気をつけていたところではあった。まあ人気の408の状態の良いヤツとかお高いし、ワシには似合わんし、使うとなったらシーバス用で300系かなと思うけど、PENNみたいな放置しておいても腐蝕しないリールほどは耐塩性はないようで、8枚もギア入ってるのをまめに整備してやるのは面倒くせぇので性に合わんだろうし、人気あって欲しい人がいるならその人達の手元に行くべきで、ワシが買う意味もないだろうって思ってた。でも、1機種だけ気になってるのがあって、300より古い時代に作られていたミッチェルのスピニングの原型的なモデルの流れをくんで、後に304という名前が付けられたのがあって、これが300の廉価版的な扱いだったらしいけど、丸いベベルギアをそのまま収めたのが丸わかりの可愛い丸いボディーに300に近い大きさの中型のスプールが付いてて、ギア比が3対1ちょいぐらいと遅巻きなんだけど、この遅さは逆にシーバスで使ったら効くかもなと思って、あんまり人気もなくてだいたい1万円行かないような値段なので、何かの間違いで落札できたら手にしても良いかなとボロ目の個体が出ると2千円とかで入札してはいたけど、さすがにミッチェル様は人気機種ではなくても2千円では落札できず、ミッチェル沼にはこれまでハマらずにすんできた。

 ところが、今回のブツはなぜお仏蘭西から来たリールがどういう経緯でそうなったのか、全く不明だけど釣り具専門ではないリサイクルショップがメーカー不明のガラクタ扱いで出品していたのを「不明」で検索掛け続けていたのが初めて獲物を捕らえた感じで拾い出せたのである。304同様の丸いボディーに、ワンタッチスプールと、ノブを内側に反転させて収納できるハンドルがついてるので、304系の上級モデルの314に見えはするんだけど、これがまた、銘の入ってるところが塗装が剥げてて、かつハンドルとドラグノブがあんまり見かけない緑色で、ミッチェル300だといにしえのオリムピックが完全フルコピーしてたぐらいで、先駆者たるミッチェルの古い機種なら”偽物”があっても不思議じゃないと考えると絶妙に偽物臭いのである。緑のハンドルとかあるのかな?と調べたら、これはあっさりとあると判明した。ホントかどうか怪しいけど仏本国版は緑ハンドルだとかなんとか。偽物が出回ったかどうかのほうは軽くネット検索した程度では分からんかった。ただ、釣り具にまったく知識がなさそうな業者なのでわざわざ偽物を偽装するために銘のところの塗装を剥がしたとか、メイドインフランスの刻印があるボディー裏写真をワザと写していないとかは可能性低くて、たまたま偶然でそういう怪しげな”偽物臭”が立ち上ってるだけのように思えた。銘についてはPENNや大森のようなシールじゃなくて、塗装ごと削って刻印してるハズなので本物なら写真には写らなくても跡が残ってて質問欄で確認すればハッキリするだろうし、本体裏の写真も希望すれば追加してくれるだろうけど、ここは博打の張りどころと踏んで、下手に正体をばらしてしまって落札価格が上がるのを回避、偽物が来たらそれはそれで面白いのでネタは拾えたと思えば良しで、そのまま2020円で入札しておいたら、それなりに入札者はいたけど1109円というなんか半端な額で落札できた。送料入れても2千円がとこの賭け金で果たしておフランス製のミッチェル314が我が家にやってくるのか?

 届いて、ベリベリと梱包を剥がして銘を確認してみたら、ちゃんと314の刻印が!塗装が剥げ落ちた地金に残っているのも読めるし、よく見りゃ剥げた塗装の端っことか筆記体の「L」の字の頭の形が元の写真からでも見えるっちゃみえる。もちろんボディー裏にはメイドインフランスのこちらは出っ張った刻印ありで、まあそこまで完全コピーした偽物の可能性とかゼロじゃないにしてもまずないだろうて。とりあえず”314か偽物か?”の賭けには勝って格安で入手できた。ただ、これで実働可能に修復できなければ、また「パーツ取りの個体が欲しい」ってなるというか「コイツをパーツ取りにしてもう一台」とか沼にズブズブと沈んでいくのは手に取るように未来視できてしまう。なので、気合いを入れて分解清掃に入る。何しろ来た当初の状態ではハンドルもろくに回らん有様であったからネジがちゃんと外れるかぐらいから不安ではあった。

 これがまた予想以上の大苦戦。これまでいじったリールのうちで3本の指に入るぐらいの苦闘。ちなみに他の2機種は、スプール上下のための「オシュレーションスライダー」を主軸に止めているCクリップを外すのが至難の業だった大森製作所「マイコンSS」、ローターを外すのに回さなければならないのになかなか気がつかなかった先日のダム社「クイック110」で、これら3台に比べれば途中で瞬間的逆転防止機構のローラー落っことしてアタフタしたシマノ「NAVI3000」ぐらいは可愛いものであった。

 まずはさっき書いたようにあちこち固着してるのが怖いので、ビニール袋に突っ込んで潤滑油「クレ666」をネジ周り中心にぶっかけて、しばし放置の間に飯を食ってしまう。味噌汁の具にした茄子が鼻の高いおフランス顔に見えるのは気のせいか、はたまた吉兆か?ちなみにクレ666は「CRC556」みたいな潤滑油スプレーで錨マークも頼もしい耐塩性強化版。秋茄子嫁に食わすなっちゅうぐらいのもんで、茄子の味噌汁美味しゅうございました。変な”鼻”のせいで規格外で普通に出荷できなかったのか、直売所で2個120円と安かったけど味が違うわけないのよね。

 トレビア~ンな昼飯後におもむろに分解に取りかかる。まずは小手調べにスプールからかなと、ワンタッチボタンを押してスプールを外す。最悪ワンタッチ関連腐ってて外れんかったらどうしようとビビってた小心者だけど、そこまで酷くはなかった。けど、ドラグノブクルクル回して外したら、ミッチェルの真似したんだと思うけど、PENNでも小型機種では同じ様な形の、ドラグ上面を押さえるバネと、回るけどバネに填め付けてあるドラグパッドを押さえる金属ワッシャーが錆びていて、初っぱなから先が思いやられる。ブラシで擦って錆落とせるだけ落としてグリスグリグリしておくぐらいしか処置はないけど、機能的には不具合生じるほどじゃないのでまあ良いだろう。ドラグパッドは上が赤い繊維質のファイバーワッシャー1枚で、スプール座面の下にカバーが付くのがミッチェル方式で、カバーの上の座面には以前読んだ記事ではテフロンのパッドが入ってて、上のパッドが主体となりつつスプールの上下に2枚のパッドという構成だったと思うんだけど、下の方のテフロンパッドが見当たらない。始めから無かった可能性もあるけどどっかの時点で紛失した臭いな。スプールは浅溝は樹脂性らしいけど、これは深溝のアルミ製で他と一緒にパーツクリーナーで洗浄後、グリスヌリヌリしながら、上下のパッドをとりあえずちょうど良さそうな大きさのテフロンワッシャーがあったので、それを填めてみたらやや調整幅狭めかなという感じだけどドラグの滑り自体はスムーズで問題無さそうに復活した。元のファイバーワッシャーでもまだ大丈夫そうではあったけど、経年劣化するらしいので換えておいた方が無難だろうという判断。なにしろ半世紀ほど前の製造と予想される個体である(フットナンバーは「2719?81」で、ある程度年代分かるはず、お勉強してみたい)。欲を出すなら、おそらく上のドラグパッドをTAKE先生が408、308用に売り出している”特硬フェルト”製のに換えてやれば大きさ的にはそのままか微調整で填まりそうで、もっと調整幅も広くなって良い感じのドラグになると思うけど、とりあえずはテフロンで仮置き。

 こっからが本番という感じで、ハンドル外して、本体蓋のネジ外して蓋開けて、って進めて行くんだけど、ハンドル時点で既に問題発生でハンドルノブのネジが固着していて外れない。まあネジは回らんかったけど緑のノブ自体は回ってるので注油だけしていれば問題ないので深く気にしないでおく。本体蓋自体、腐蝕して黄色く粉吹いているぐらいだったので、本体蓋を止めているネジ三本が666スプレーのおかげか抜けてくれたのには心底ホッとしたけど、蓋開けてみて「なんじゃこりゃーっ!(©松田優作)」って驚いた。なんか砂みたいな粒子がグリスで固められて、本体内にもギア表面にもみっちりと付着していて、これはハンドルも回らんわけである。なんで、まるで詰め込んだように砂が入ってるんだろう?って思ってしまったけど、これどうも腐蝕した金属粒子が剥げ落ちたのがグリスに絡め取られてこびり付いているようである。
 このレベルにまで腐蝕しまくりだと、分解洗浄してグリスアップしたところでまともには回らんかもな?とやや意気消沈しつつも分解を進めて行く。
 ハンドル軸のギアは、スルッと抜けてくれた。ちなみに上に乗ってる花びらみたいなギアとそれを囲うように円弧状にギア上に填まってる部品が、ちょっとずつ行きつ戻りつしながらスプールを上下させる、”プラナマティック”というスプール上下(オシュレーション)システムの部品。
 しかしハンドル軸のギアを外した本体蓋裏の腐蝕はちょっと酷い。逆転防止関係の爪やらバネやらの部品が錆に埋まっている状態。パーツクリーナーとブラシでどうにかなるものなのか?極めて不安ながらも、この時点では外れそうに全く思えない逆転防止関係はとりあえず洗浄後に再挑戦することにして放置したまま分解を進める。
 主軸を抜いて、ローターを抜いてやると、ローターにローター軸のギアはハメ殺してあって、ローター軸のギア自体の内側と、主軸が入る本体を貫いている鉄系っぽいパイプの外側とが接して回転する方式で、ベアリングなどというものは見当たらない、PENN720Zではボールベアリングこそ使ってないけど、真鍮のスリーブが”ブロンズベアリング”といえば言えそうな働きをしていた。けど、このリールの場合、わざわざ滑らかな回転を担当するような部品は組み込んでません。ローター軸のギアが自分で回ってます!って感じの男らしい設計。たしか300にもこの方式は引き継がれていて、本体裏面に主軸のパイプとローター軸のギアの部分が背骨のように張り出してるお馴染みのデザインとなっている(参考:一番下右写真)。

 ベール周りは特にややこしいこともなく外せてベールスプリングも健在で問題はなさそう。ちなみにラインローラーは真鍮に硬質クロームメッキの固定式。
 外せる部品はとにかく外したので、いつもなら乾燥に時間がかかる本体やらローターといった大物からパーツクリーナーをスプレーしつつ漬け置き洗いも併用しつつ、ブラシでこすってきれいにしていくのだけれど、今回は腐蝕した金属の粉が大物パーツには多く付着しているので、先に比較的綺麗な小型の部品を綺麗にしてから大型に手を付けるという順番で、金属粉の再付着をなるだけ防ぎつつ、漬け置きの時間を稼いで汚れをなるべく落とすという方針で行った。
 パーツクリーナーとブラシのコンビはなかなかに優秀で、付着しているグリス混じりの錆とかはかなり綺麗に取れた。パーツクリーナー液を受けている皿の底にジャリジャリと錆やらの剥がれ落ちた腐蝕片が澱となって沈殿していく。っていう状況はリールいじってて見たくはない悪夢のような惨状である。
 そこそこ綺麗にできたけど、本体蓋裏の腐蝕は酷くて、逆転防止関係の部品は爪以外取れそうにないうえに、切り替えレバーは固着している。

 これはこの部分は、再度666スプレーを掛けて一晩寝かして再挑戦するぐらいしか手が思いつかないのでスプレーして一旦寝かせる。その間についでに表側の塗装が剥げた部分をこれ以上に剥げないようにと腐食防止のために、クリアーウレタンを薄く塗っておいた。
 本体の足の塗装剥げた部分にも同様にウレタン塗布。多少は腐食防止に役に立つだろうか?

 一夜明けて、再度逆転防止機構関係をとにかく使えるようにするべく、頭抱えつつ知恵を絞る。2こ上の本体蓋の写真で、上の方のU字型のバネを止めているネジはどうにもこうにも固着が酷くて取れそうにない。下の方の爪は外れたので洗浄してグリスアップできた。真ん中の菱形っぽい部品が表の切り替えレバーに繋がってるんだけど、レバーはハメ殺しでありそもそもこの部品は外せるような構造にはなってない。現状では逆転防止が効いてる状態で固まっているので、そのまま使えるといえば使えるんだけど、切り替えができないと完動品とはいえず、売りに出すときジャンクとして出さざるを得なくなる。何とかならんのかとレバーを力入れて動かそうとするのだけれど、揺すったり叩いたりも試してもウンともスンとも言わない。何かヒントが無いかと藁にもすがるつもりで、竹中由浩先生の「Let's Inner Spool!」の304の逆転防止の部品のところの写真を眺めて、目の前の314のものと比べてみる。ここの部品の配置は同じハズである。ところが、なんか違和感がある。真ん中の菱形のパーツの方向と、切り替えハンドルの方向がズレている。ハンドルを下方向に下ろして切り替えたくなるんだけど、菱形パーツの爪がその方向に回るのを止めるので、ハンドルは下げられない。なんじゃこりゃ?と意味不明だったけど、しばらく矯めつ眇めつして考えたところ、前の持ち主が逆転防止がオン状態で固着していたのを、オフに切り替えたくて力尽くでレバーを回して、菱形パーツとの方向が正常な状態から90度ズレてしまったんだろうと解釈した。であればまず無理矢理力尽くで90度元に戻す。そのままではまたレバーを切り替えようとするとレバーだけ回るので、固着を外して回転を滑らかにして、レバーだけ力尽くで回りだすのより軽い力でレバーと一緒に菱形パーツまで回るようにしてやる。という方針でイケるだろうとちょっと希望が見えてきた。力技だのみのところが部品を取り返しのできない状態に壊してしまいそうな危険を孕んでて怖いけど、ここは博打打つしかあるまい。
 結果、上手くいきました。レバーを最初力技で正常位置に戻しておいてから、根元に666を掛けつつ今度は菱形部品の方をモンキーレンチで挟んでユックリ左右に回してやるとだんだん軽く動くようになってきて、90度パチンパチンという感じで切り替えができるような動きになってきて、これならレバーで操作してもレバーだけ回るってことはないだろうと、レバーで切り替えを試してみると正常に作動する。
 いやはや何とかなるもんである。思いっきりホッした。ハンドルノブのネジと逆転防止のバネを止めているネジの固着は外せなかったけど、本来の機能はこれで全部回復できた。
 もうこれ以上腐蝕させてなるものかという勢いでABU純正グリス大盤振る舞いでグリスシーリング。
 本体内もグリス大盛りはもちろん、金属パーツはすべからくグリスで濡れている状態としてから組み上げた。
 とはいえ、あれだけの腐蝕具合だったし、ギアとかも見た目では分からんかったけどザリザリになってて回してもゴロゴロで使用に耐えないかもなと。やや諦めつつハンドルしばらく回してみると、意外なぐらいに滑らかに回ってくれる。ベベルギアって力の伝達効率は良いけど滑らかさとかはそれ程ではないって聞くけど、ハッキリ言って上等である。ベアリングレス機だけど、1対3強程度の低速ギアなのもあってか重くもないしゴロゴロしてるっちゃしてるけど気にするほどでもないと思う。この程度のベベルギア機らしいギアゴロ感が楽しめないような輩は「ステラでも使ってろ(©TAKE先生)」って話だろう。
 古い時代のリールなので、耐塩性とかもう少し後の設計のPENNとかに負けるとは思うけど、本体内部とかが腐蝕したとしてもギアとかハンドル軸とかの大事な部分は丈夫に作ってあって動かなくなるような腐蝕を免れていて、半世紀がとこ経ってからでもメンテナンスしてやれば復活するなんていうのは、なかなかに立派なリールじゃないかと感心した。ちなみにローター軸のギアは真鍮、ハンドル軸のギアはアルミで軸は鉄系だと思う、主軸と主軸の入っているパイプも鉄系っぽい。鋳造アルミの本体関係が腐蝕したのが”なんじゃこりゃ状態”の原因だろうけど、アルミの表面処理技術とかこの時代では限界があったんだろう。でも、大事な部品が鉄系でも錆もたいしたことなく生きているっていうのは”良い仕事”してるって評価して良いんじゃないだろうか?

 ただ、今回はたまたま上手くいって実働品にまで持って行けたけど、次回また同じような古くてボロいミッチェルが出てきたら手を出すかというと、今のところ御免被りたいと思っている。先に挙げた分解整備に苦戦した3機種のうち、ダムクイックだけは分かってしまえば次からはなんら苦労しない話なので、既に「クイック220」確保してあって船に揺られて我が家に到着済み、ってなくらいだけど、マイコンSSのCクリップと、腐蝕した金属片がグリスと共に固まって積もってるようなボロミッチェルは2度とゴメンだと思う。次回もうまく整備できるとは到底思えない。今回は幸運だったんだろう。

 しかしながら今回の314、手を掛けてみて情が湧き始めているし、なかなかにやりそうなリールで、特にベアリングレス機ってのがポイント高いしで、売りに出せば見た目ボロいとはいえ3千円くらいにはなってくれるだろうと思うから、売っても良いんだけどちょっと自分で使ってみたい。あんまり綺麗な個体だとシーバスとかに使うのは錆が怖くて二の足を踏むけど、このぐらいボロいと躊躇無く投入できそう。ベベルギア機は単純明快で整備性も良さそうだし低速機なのもシーバスにはむいてそうなので、ダムクイック220の次ぐらいに試してみる感じで順番待ちさせて蔵に出番までしまっておこう。

 ちょっとだけ不安なのは、1台蔵に置いておくことにより仲間を呼びはしないかという点で、マンガアニメオタク界隈では、いわゆる”美少女フィギア”は1つ買うと仲間を呼んで気がつくと専用のショウケースも買ってズラッと並べることになってしまう。とかまことしやかに語られていて、ミッチェルのリールにその手の魔性の力が備わっていないことを祈るのみである。まあ、デザイン的な見た目からして既に魅力的なのは感じるところで、これで使ったらまた良さがあるとかだと、沼の底に徐々に足がハマっていきそうな一抹の不安を感じるところでございます。
 ミッチェル沼の底の住人の方々が、おいでおいでをしているような気もしていて、よほど気をつけねば危ないなとビビっております。

 ああっ病気が怖いっ!!