2023年11月25日土曜日

斜にかまえたNo.5

 なんでナマジは使うアテもなさそうな、大森大型機を2台も買っているのか、まあ「欲しかったんじゃー」という一言で済ませても良いのですが、れいによって説明の機会をば与えていただきたくぞんじます。

 左「マイクロセブンNo.5」、右「オートベールNo.5」、双方600gを越える、糸巻き量6号240mの大型機である。大森製作所のリール的にはNo.6サイズがあるので最大ではないにしても大型で、PENNなら糸巻き量的には6500SSぐらいの大き、見た目の大きさ的には糸巻き量考えるとコンパクトで5500SSよりちょい大きいかなってぐらい。

 大森の小型機は人気機種ではなくても、それなりに情報がネット上にも転がっている。でも大型機に関してはその人気の無さ、注目の薄さを反映してか情報たいして出てこない。むしろロシアのオッチャンが外蹴りマイクロセブンを激賞してたってぐらいで、シェイクスピア版で馴染みのあった海外の釣り師の方が詳しいかもしれない、日本語サイトの情報は限られている。

 そんな中、興味深い報告をされているのが、以前ギブスのルアーネタのときに書き込みいただいた、米国製海用ルアーを投げている方で、ブログを読ませてもらっていたら、「タックルオートNo.4」を愛用されていて、かのリールには「ストローク減速機構装置」というのが搭載されていて、スプール上下のオシュレーションカムが斜めになってるのがそれではないか?と書かれているんだけど、おそらくストローク減速機構装置自体は、ハンドル軸ギアの回転からギアを介して回転を持ってきて、ギア比によってハンドル1回転で1回スプール上下するのではなく、ハンドル数回転でスプール上下1回とかにスプール上下を減速するという、一般的な減速式のオシュレーション機構そのもののことだろうなと思う。このあたりの大森スピニング、外蹴りアウトスプール「マイクロセブン」「タックル5」はNo.3の大きさまで、「タックルオート」や「オートベール」もNo.2の大きさまでは、単純クランク方式でハンドル回転1回転でスプール上下が1往復で、使ってて特に問題は感じていない。それ以上の大きさになってくると、ハンドル軸のギアからギアを介して回転を減らしたいわゆる”減速オシュレーション”となっている(タックルオートNo.3はクランク方式ではないけど減速してないのかも?確かめたくてまた物欲が・・・)、減速オシュレーションにする理由としては、デカいスピニングになるとまずはスプールからなにから重いので、減速して軽く巻けるようにというのがあるだろう、ギア付きの自転車で坂道で低速ギアに入れるようなモノである。デカいスプールがハンドル1回転ごとにガションガションと上下してる様は迫力ありそうで見てみたくはあるけど、実釣的には巻きが重くてどうもならんだろうな。さらに、減速式にすると、巻きが綾巻気味から密巻き気味に変わるので、投げるときのラインの放出性は良くなるだろう。その分綾巻のトラブルの少なさは削られるのは行ってこいの関係で、そのへんは良い塩梅の減速比率で仕上げるのだろう。けどまあ、大型リールで減速無しはあんまりないぐらいでそれが使いやすい妥当な設計なんだろうと思う。

 なので、オシュレーションカムが斜めになっているの自体は「ストローク減速機構装置」そのものを指しているのではないんだろうけど、ここで興味深いのが、タックルオート(たぶんオートベールでも)でNo.3サイズではオシュレーションカムが水平なんだけど、No.4からNo.6サイズでは斜めになっている。これは何の意味が効果があるのだろうか?私気になります!

 ということで、自分でいじくってみんとあかんなということで、買いました。なんで2台あるねんって話は、れいによって予備スプール体制が組めるからで、実釣に持ち出す予定もないのに予備スプールもクソもあるかよ、という気もするけど気にしない。欲しけりゃ買うんです。

 マイクロセブンの方はクソ安くて1000円落札+760円送料、オートベールは出物が少なく、ちょっと高いけどコレ買わんと次がないかなと、3980落札+980円送料とボロ個体に張り込んだけど、その後綺麗なのが3000円即決で出ててジイさんちょっとガックリ。まあ綺麗な個体はコレクター氏の棚に、ボロい個体はワシのところで整備して良い状態に、ってことでこれで良かったんだと思っておこう。

 ということで、わが家に来たからには分解整備。

 先に見た目ボロいオートベールから、まずスプール周り、ドラグがちょっと面白い。この時代の大森スピニングはフェルトの湿式ドラグパッドが標準装備で、この大きさでも基本は一緒なんだけど、3階建てのドラグで3枚のパッドのうち1枚が赤いファイバーワッシャーになっている(写真上列右)。このあたりの大型リールの国内での用途としては、投げ釣りが主に想定されるのでドラグとしての性能よりもしっかり締まって、投げたときにドラグが滑って指を切らないというのが求められていたのかなと想像するんだけど、ドラグパッドを一枚摩擦の大きい繊維性のドラグパッドにしてそのへんの”締まり”を確保しているんだと思う。3階建てドラグでドラグパッドの材質やらを変えるとき、変える枚数に応じてドラグの性能が調整できるってのは以前実験したとおり。さすが大森製作所、わかってらっしゃるという感じだ。

 あとは、簡易ローターブレーキがついた内蹴り機構、真鍮のローター軸ギアに鋼を鋳込んだ亜鉛のハンドル軸ギアのハイポイドフェースギア、ローター軸直上の鉄系のストッパーあたりのいつもの大森方式なんだけど、さすがに大物用のリールという感じがするのは、主軸が5.6mmもあるステンレス系なのと、小型機だと樹脂製のベールアームがアルミっぽい金属製なところとかで、このあたりガッチリ強化すべきところは強化されている。ローター軸のギアもゴン太で、ギア比は4.2:1とやや低速だけどスプール径もデカいのでこんなもんでしょ。

 でもって、問題のオシュレーションカム、確かに主軸に対して垂直じゃなくてちょっと斜めっている。

 なんで斜めになっているのか?オシュレーションカムの形状をS字にすると、だいたいスプール上下が等速に近くできて、ダイワとか最近の機種は高級機種でも丸ABUの平行巻機構に使われているようなクロスワインド方式じゃなくてS字カム方式だそうで、オシュレーションカムの形状いじると、当然スプール上下に何らかの影響が出るはずで、なんのためにそうなっているのかは、後ほど考察してみたい。

 とりあえず、全バラしするとこんな感じで、ボールベアリングが2個も入ってる高級仕様だけど、無駄なモノがついてるわけじゃなく単純明快な設計になってて整備性は良い。

 ただ、デカいのでお盆にバラした部品が乗り切らないので、お菓子の箱を用意して適宜作業が終わった固まりからそちらに移したりして作業した。

 デカいリールは当然ながらグリスぶち込むにしても必要なグリスの量が多く、こういう海で使うしかないだろって機種こそグリスグッチャリにしておきたいけど、リール用高級グリス様ぶち込んでたらいくら銭があっても足りまへん。芋グリスでも良いぐらいにギアとか丈夫なので、まあいつものマキシマの青グリスぶち込んでおく。

 ただ、ぶち込む前に、ちょっとばかしお化粧直しはしてやりたい。ワシそっち方面苦手だけど、ちょっとずつ練習していこうと思ってるので、今回は塗装ハゲハゲで地金が見えてるところを、黒の車用タッチアップペンでごまかして、奇跡的に全部揃ってる銘板を、一旦剥がして貼り直しておく。

 銘板は、パーツクリーナーかけた後にマイナスドライバーで突っついたら、いとも簡単にペリッと剥がれる。この時代の接着剤に期待してはいけない。

 色は本当は黒じゃなくて濃紺みたいな色なんだけど、黒でもごまかせるだろうエイヤァという、やっつけ仕事。タッチペン付属の筆でペタペタ塗ると確実に塗ったところが段差になって物理的にも雰囲気的にも浮くので、いったん小皿に出して綿棒でポンポン叩いて乗せたり、シャッシャと薄く汚す感じで見えてる地金を隠したり、あんまり塗り直したところがあからさまにならないようには努力したつもりだけど、銘板もコニシのSUではりつけて仕上げたけど、まあ新品同様とはいかんのはいかんともしがたい。

 それでも、いつものことだけど、大森スピニングのギア等内部構造はまったくガタなど来ておらず、ベアリングも今回錆びておらず、機能的にはクルックルの絶好調に仕上がったので良しとしておこう。

 当時の国内では、大型のスピニングは糸巻き量が必要な投げ釣りが主な使いどころで、正直、キスだのカレイだの釣るのにこのリールの性能は必要ないというか、対大物用の性能が活かされていたのかはなはだ疑問ではある。そもそも大物用には両軸使えって話ではあるけど、このリールの想定しているナイロン6号、8号あたりって、ポンド換算でいえば22ポンド、30ポンドぐらいなわけで、PENNでいえば6500SS、7500SSで狙うような、必ずしも両軸にお出まし願わなければならんほどじゃない大物に使うなら、その実力を発揮しえるだろうなと夢想する。

 続いて、マイクロセブンNo.5の方も分解整備していく。古いリールなのでグリスがネットネトになっていて、最初エラい重いのでやや不安な立ち上がりだったけど、鬼門のラインローラーナットも固着しておらず無事外せて、グリスをパーツクリーナーで洗浄したら、ギアも当然健在でベアリングも錆びておらず、スプール裏とかに多少砂が残ってたけど、大事に使われていたのか、はたまたこの青い塗装は強いのか、見た目的にも表面塗装のハゲとかは少なく、小さな置き傷とか擦れはあるけど、比較的綺麗な個体で、外蹴りでオートベールよりもさらに単純な設計なのでサクサクとバラしてグリスグッチャリで仕上げた。

 うーんどうにも格好いいな。小型の機種については、最近も代打で登場願った「マイコン301TB」で感じたんだけど、ベール反転が内蹴り式で軽いのは使っててすんごく気持ち良いってのはある。ワシ、昔はスピニングは全部左手でライン放出調整してそのまま左手でベールを返す方式でやってたけど、インスプールスピニングも使うようになって、最近は小型スピニングは基本どおり右手人差し指でライン放出調整してハンドルでベールを返すようになっててベール反転が軽いことの重要性が腑に落ちてきてはいるんだけど、一方なぜもともと左手でライン放出調整してたのかといえば、デカいルアー投げると右手人差し指ではライン放出調整しきれないので、そっちにあわせてたんである。ということは内蹴り式でベールをハンドルリターンした時の感触はオートベールに軍配が上がるけど、大型機では左手で返すからハンドルリターン時の感触は関係なくて、となると単純な設計の外蹴りマイクロセブンのほうがワシ向きかなという気もしてくるのである。

 ドラグの方式は、オートベールと同じくパッドが1枚赤い繊維性のワッシャーで、スプールの互換性もあり。

 オシュレーションカムが”斜め”ってるのも同じで写真は引っこ抜いて溝が見やすいように裏向けたところ。基本オートベールは外蹴りアウトスプール版の「マイクロセブン」に内蹴り機構をぶち込んで、本体の形状をやや曲線を帯びたデザインにあらためた後継機だという認識で良いんだと思っている。

 マイクロセブンにも大型機ならではの強化が施されていて、ローターのベールが付く”腕”部分に斜めに張り出した補強部分が設けてあり、いかにも大物仕様といった雰囲気が醸し出されている(訂正:小型機でも補強されてました。嘘書いてゴメン)。やっぱり格好いいぞ。

 写真はベールアームと反対側のベールワイヤー支持部で左側にはみ出してる部分がそれ、もちろん向こう側のベールアーム側にも同様の補強部分がある。そして背景に見切れている主軸はこちらのも太ましい。まあスプール共通からして設計同じだろうからあたりまえか。

 でもって、今回の大きな疑問である”なぜ大型機でオシュレーションカムが斜めになっているのか”についてだけど、頭から煙噴くぐらいに考えたけど、コレっていうしっくりくる答にはたどりつけなかった。たぶんこうかな?という推定はしてみたけど、正しくその設計思想が読めた方がおられましたら是非、私めにも教えてください。

 まず、前提条件としてワシ頭の中でイメージ図を動かすことが苦手というかほぼできない。なので、そういうのが得意な人からしたら「なにやってんだコイツ?」かもだけど、そういう人なので四苦八苦してるところはお見苦しくともご容赦願いたい。

 とりあえず、疑ったのは”斜めにすると平行巻に近づくのではないか?”ということで、これはマイクロセブンNO.5に最初巻かれていたナイロンラインが、そこそこ綺麗に巻かれているようにもみえたので、きっとそうだと期待してしまった。

 なんだろ、オシュレーションカムの端まで棒が来て折り返す”死点”の前後で上下動のスピードが落ちるのが平行巻にならず端が盛り上がる原因だけど、斜めにすることで死点が上下動の一番上と下とズレるとかか?と思って、頭の中でイメージが動かせないので、現物でとりあえずと考えてる作業風景が、マイクロセブンの分解整備作業の写真でオシュレーションカムを溝が見えるようにひっくり返しているものである。正直斜めの角度も緩いので良く分からん。ということで、次にこれはTAKE先生がS字カム方式のときに書いてたような略図を書くしかないなと書いてみたのが、写真上の図なんだけど、適当にフリーハンドで角度を決めて点を打ってるので精度が全くアテにならず、死点を越えてから下がってるのか上がってるのか良く分からんかった。つぎにじゃあ実際に回転する時におこるイメージを視覚的に追えるようにしてみようかと円書いて、仮想の主軸位置(紫)と仮想の傾きを紙に書いて、その上に重ねられるようになんかの蓋だったプラのシートに仮想のオシュレーションカムの溝(オレンジ)+仮想の主軸(これも紫)を書き込んで、プラに書いた主軸を上下させて、死点を越えて主軸が上がったり下がったりするのか確認したところ、「しない」「速度が死点前後で落ちて、上下動は両死点の高さの間」だとワシャ判断した。誰か同じようなこと調べてないかなと思ったら、インスプールのカーディナル33とかは、クランク方式だけどクランクを回してるハンドル軸のギアの一番上と下から斜めにずれて死点が来る点で似ているようで、じゃあスプール上下の動きはどうなるのか?っていうのを考察されている方がいた。その方は、ワシみたいな”数学が苦手な理系”というアホとはちがって、三角関数つかってグラフ書いて同じような結論にたどり着いていた。彼我の理系的頭の良さの差を思うと泣けてきた。サインコサインは役に立たない数学的知識の例として歌にまで歌われていたけど、知ってると機械の働きとか理解するのに役に立ったりします。

 じゃあなぜ、オシュレーションカムを斜めにしているのか、死点間の高さでスプールが上下動するので、運動エネルギーがその分節約できる。っていうのはスプール上下幅減るのと行ってこいの関係で、それをやるならオシュレーションカムを上下させてる歯車の径を小さくすれば良いだけで、そのほうが軽量化にもなるだろう。

 って考えてって、スプール上下のためになにか寄与してる、っていうのではなさそうだなと思う。じゃあなんでって考えて、本体内の配置とか見ていると、どうもオシュレーションカムを真っ直ぐにしてしまうと、ハンドル軸と干渉してしまいそうに思う。単にそれを避けるためという配置上の都合であったのではないかというのが、今のところの私の考察。たぶん、No.4サイズから設計していったので、同じように設計しようとしたら、大型化するに際してカムの肉厚とかも増したら「入らんがな」ってなって、回転する歯車の上のカムに刺さる棒をもっと中心に寄せて回転する径を小さくするか、カムを斜めに下げて干渉をさけるか、どちらにしてもスプール上下幅が小さくなるけど”致し方なし”として後者としたのではなかろうか?これら2台より後発になってギア形式の違いから設計やり直しができた「スーパー7No.3」では素直にもう1枚歯車を入れてハンドル軸からオシュレーション上下の歯車を遠ざけている。その際にカムは斜めではなく真っ直ぐになっていて、斜めにすることでラインの平行巻に寄与するようなことがあれば、後発機でもそうしてそうだけど、スーパー7はまだNo.3サイズで直接比較にはならんのかもだけど、他に「マイコンNo.6」でも斜めではなく、やっぱり平行巻への寄与はなさそう。設計上スペースが無かった、っていうショボい理由が案外正解かなと思っちょります。「こういう利点があるんですよ」というのが分かった賢い方がおられましたら、是非とも教えてください。ワシのピンボケた頭ではこのあたりが限界でした。

 なんで、あんまり巻き上がりが凸凹してないのか不思議な感じである。れいによってスプール上下幅より糸巻き部分の幅を大きく取ってごまかしてるのかと思って、スプール上下にともなってどこまでラインが巻かれているか、ラインの色を変えて確認してみたところ、写真の様にわりとキッチリ上下幅一杯にラインが巻かれていて、なかなかヤる感じになっているのである(この写真で見ると真ん中へんが若干くぼんでて平行巻にはなってないなという気はする。ちなみに減速比はギア比4.2:1でハンドル一回転で4.2巻きと考えると、片道6巻きになってるからだいたい1/3弱ぐらいに減速というところか?)

 というところも含め、2台いじくって感じたのは、大森のこの時代の大型機はなかなかやってくれそうだということで、90年代ぐらいにルアーキャスティングの世界でPEラインが使われるようになり始めて、ロウニンアジとかが対象魚として注目されるようになったんだけど、当初国産の大型機はお話にならなかった。ほぼPENN一択。なぜならそれまで国内向けの大型スピニングは前の方でも書いたように投げ釣り用が主で、ドラグもろくなもんじゃなかっただろうし、強度も不足していたはず。なので、ルアー用の大型スピニングを、ってなっても作り慣れてないので、最初の頃はダイワのトーナメントもシマノのステラも、PENNユーザーが鼻で笑う程度のデキだった。ファイト中に瞬間的逆転防止機構が壊れる、ドラグはウィンウィンと音を立ててしゃくる、ハンドルノブのベアリングが錆びて潮かぶると一発でキコキコ鳴き始める。そこで反省してPENNみたいなスピニングを作っておけば良いのに、そうならずに逆転防止機構の改良やら防水、あつものに懲りてドラグにボールベアリングまでぶち込んで、ベアリングも防水してってやって、アホみたいな価格の高級リール様が誕生するに至っている。もし、あの頃に大森大型機を投入するという発想があったら、案外すんなりロウニンアジぐらい釣れたんじゃないか?っていう気がするのである。オートベールNo.5で”釣力”17kgとなってて、これは最大ドラグ値(あるいは耐破壊強度のほうか?)と同じような意味だったはずで、手持ちのスピニングタックルでドラグ値10キロ以上に上げて使えるマッチョな釣り人など希有なぐらいではあるけど、そのぐらいの負荷に耐えうる強度は確保してあるっていうことで、実際ワシを例に出すならPENNの7500ssでドラグ値6~7キロで運用してたんだけど、そのぐらいのドラグ値なら大森大型機はまるで平気な気がする。主な購買層が投げ釣りで、性能の良いドラグも、大物と渡りあえる”釣力”も必要とされていなくても、大型のスピニングリールならば大森製作所はそれが必要だと考えてたんだと思えてくる。

 ただ、大型スピニング用のドラグパッドとしてフェルトはどうなんだろう?とかドラグノブ樹脂製なのはドラグキツめで突っ走られたときに摩擦熱で溶けたりしないだろうか?っていうのは、ちょっと不安なところではある。ただ、ドラグ周りは難しい機構じゃないので好きにいじる余地はある。パッドはたぶんアクリルとかの化繊であるフェルトよりは、フライパンの表面加工にも使われるぐらいの耐熱性があるテフロンや、大型リールでは定番のPENN方式といって良いかも?なカーボンシートやらのほうが良さそうだし、ドラグノブの摩擦熱対策は、ドラグノブと一番上のワッシャーの間に、熱伝導率の良くないパッドを断熱材として挟んでやるとか工夫はできそうである。逆に言うと不安なのはドラグ周りぐらいしかなく、何しろギアやら本体枠やらはガッチリ作られていて頑丈で、設計も複雑なところがなく壊れる要素も少ない。90年代始めには大森製作所はなくなってしまったので、100g超の大型ルアーのキャスティング向けとしては誰も目をつける人はいなかったけど、もし使ってたら多少の改造でアッサリ必要な性能を確保できてたのではないかという気がしてくるのである。なので、遅きに失した感はあれども、この冬ちょっと手を入れた対青物仕様の大型大森スピニングっていうのを考えて、遊んでみようかなと考えている。実際の青物釣りは、この地で岸からだと試行錯誤して遊んでる余裕はないので、実釣はPENNで行くんだけど、魚掛けなくてもドラグテストとかは可能なのでちょっと頭の中に試したいことがいくつかあるので、暇をみて試してみたい。

 タイトルに使うにあたって”斜にかまえる”という言葉を検索して意味を確認したところ、実はこの言葉はもともとは剣術の用語に由来するようで、剣を斜めに、つまり中段にかまえて、相手の動きに即応できるようにかまえることから、本来「真正面から気合い入れ直してかかる」的な意味だったようだ、現代では逆に「正面からとらえず、皮肉な態度をとる」と反転している。

 大森製作所が、オシュレーションカムを斜にかまえたのは、まさに”斜にかまえて”設計上の問題に即応したんじゃないかと考察したところであり、適当に語感の良い言葉を並べただけのタイトルなんだけど、なんか意味深長な感じになってるやんけ、とほくそ笑んだところである。

2023年11月18日土曜日

アメ人も凝ったリール作るじゃん!オーシャンシティー310!!

 なかなかの珍品ではないだろうか、オーシャンシティーっていうとその名からも分かるとおり、海用の両軸とかが得意なメーカーだけど、日本じゃむしろバス用のダイレクトリールのほうが馴染みがあるだろうか?スピニングはあんまり印象無くて「350」という奇っ怪なリールぐらいしか知らんかった。しかしながら、PENNの創始者はオーシャンシティーで働いてリール作りを学んで独立したと聞いて、まあPENNの源流ならそのうちいじってみんとあかんな、と思ってたんだけど、幸いなことに物々交換でブローニング&ルー(韓国日吉釣具製)「ゴールドスピン」の換わりにわが家にこのオーシャンシティー「310」がやってきた。ちなみに「トゥルーテンパー」のシールが貼ってあって、オーシャンシティーは両軸でもちょくちょく同ブランド名で売ってるのがあって、トゥルーテンパーブランドはお得意様で、その販売網とかで売ってたのかも。

 カラーリングからして、古き良き米国な感じが醸し出されていてなかなかに味わい深い。350ほど奇っ怪な見た目ではなく、ちゃんとしたスピニングリールに見える。ただ、いざ分解していくとどうにも独特な独自路線でなかなかに楽しめたので、スピ熱患者の皆様にもお楽しみいただけるかと思っちょります。

 まずはどう分解していけば良いのか?ちょっと迷う。ドラグノブがネジ留めされていてスプールがどう外すのが正解なのかまず分からん。そして、本体は横にネジが無く、縦にネジが入ってて、どうも側面の蓋をご開帳する方式ではなく、本体を脚側と写真の様にネジの見えてる側の上下にパカッと割るしかなさそうである。

 まあ、そのへんおいおい進めるとしてまずは簡単にはずれるというか、送付時外してあったハンドルから外していくか、と外してハンドルの軸をいじると、いきなりそこからして初めて見る方式で笑えてくる。

 ハンドルが外されて送られてきて、つけるには本体から飛び出てる軸の先にハンドル側の穴をあててからハンドル側の横に出てる円盤状のツマミを回して填めてやるんだけど”ねじ込み式じゃ何でアカンのだろう?”って思ってたけど、なるほどそうなってるのかと合点がいった。ネジ込み方式でハンドル左右を付け替えるとなると、ハンドルのネジの山の切り方を左右で逆にしないと、片方側が巻いてるときにネジが緩んでしまうことになるので、4桁PENNならハンドル側を雄ネジにして根元と先でネジ山逆にして対応してるし、大森は最初ネジを右用左用の2種類用意してて、その後はごぞんじの同一軸上に左右のネジを切る方式にしている。ところがこのリールは冒頭写真でハンドルの無い側突き出した軸にキャップがハマってるのが見えてるのからも分かるとおり、左右両用でかつハンドル側が雌ネジである。雌ネジでも深さによって穴の径とネジ山を逆転させればねじ込み式にできるかもだけど、このリールは本体側の雄ネジの方が左右同じ向きのネジ山で当然同じ径になってる。なのでねじ込んでハンドルを固定するのではなく、ハンドル回すための固定自体は本体から出てる軸に填めた俵型の部品に、ハンドルの俵型の窪みをガタつかないように填めてガタ無く巻けるような構造になっていて、ネジはそのハマった俵型の凸凹部分を抜けないように固定する役割をになっている。なるほど左右両用のハンドルの固定方式としてこんな手もあるのか、という感じ。軸はこれまた本体内でギアに凸凹でハマるようでこの時点で抜けてきたので抜いておく。

 ハンドルノブの軸は鉄系の軸にノブが当たる両端の方に真鍮製のスリーブがハメゴロされてる感じでこまかいところも丁寧な作り。基本的に回転部には真鍮や樹脂製のスリーブやブッシュが入ってて仕事はとても丁寧で、古き良き米国の職人魂がそういう細部に感じられ、そういうところがPENNにも継承されていったんだろうなと歴史が感じられるところ。

 分解の方は、じゃあ次はスプールいってみるかと、ドラグノブは緩めていってもネジ留めされていて外せないので、そのネジから外していく。

 ネジ外すとドラグノブが外れて、ドラグノブの中に収納されるようにバネが入ってて、その下に軸と同期して回らない俵型穴の金属ワッシャーが入ってて、その下に革製のドラグパッド、その下に樹脂製の台座が来て、この台座にカパッとリング状のスプールを填めるカートリッジ式のスプールのようだ、で台座の裏にはドラグの音出しの金属パーツが飛び出ている金属スリーブのお尻がみえていて、この金属スリーブは台座を貫通してて、これにドラグノブをネジ留めしている。台座と金属スプールの間には繊維性のパッドと金属ワッシャーが入ってて、メインのドラグパッドは上の皮パッドだろうけど、こちらの繊維性パッドも多少ドラグの仕事はしている構造。

 一番下の写真がバラした部品で、上の方に写ってる輪っか状の部品は、糸落ち防止にスプール下部に巻かれているモール。で、今回モールもだけど皮パッドもそこそこ保存状態良くて、当時の状態を残すためにも交換せずに使った。

 お次はいよいよ本体割るかなということで、意外に長いネジをスポンと抜いて、パカッと割ると、なんか見たことのない違和感バリバリの構造が見えてくる。

 スプール上下どうなってんの?オシュレーションカムが縦に付いてるのは正しい位置なのか?それより何より、このとげとげしいビール瓶の蓋みたいなギアはなんなの?この時代にハイポイドフェースギアのような、軸をオフセットさせたギアは無かっただろうから、左右両用なので蓋開けるまでてっきりウォームギアが入ってるんだと思ってた。そのわりに巻きがジャーコジャーコと滑らかでないのも精度が出てないからとかだろうと思ってたけど、ウォームギアではなく、歯車の歯であるトゲトゲが突き出して、双方のギアのトゲトゲ歯同志が噛み合う方式。接触する面だけ考えるとトゲトゲの斜めの面どうしが接しているので、かさ歯車に切った歯どうしのベベルギアの一種なんだろうか?当然主軸とハンドル軸は直交するので、左右両用には交差する軸が重ならない工夫が必要なわけで、なかなかにそこは鋭い工夫がしてあるので見ていこう。

 まず上の写真は、本体から外してギア同士が噛んでる状態を見やすくしたもので、こういうギアです。王冠のトゲどうしで絡んでるようなギアと言うこともできるか?ちょっとネット検索したぐらいではなんというギアなのか出てこなかったので、ご存じの方おられたら是非ご教授ください。ちなみにローター軸のギアはステンかな?ハンドル軸のギアはアルミっぽいの、芯がステンっぽい堅いのを鋳込むというよりは後で出てくる写真のように継いであるように見える。

 そして、軸が直交するギアで左右にハンドルをつける方式、というとZEBCO「15XRL」が、主軸を短く、伸ばしていけばぶつかるはずのハンドル軸まで届かないようにする。という力技で解決している例は見たことあって、その時にその応用編で、主軸の真ん中をくりぬいてその中を通るハンドル軸にしてもイケるかもな、と思いついたけど、主軸であるステンレスや真鍮をそんな難儀な形状に加工するのは手間掛かって現実的ではないよな、と思ったんだけど、ステンや真鍮を加工しなくて良い。それらの素材でできた主軸に加工が容易な素材でできたオシュレーションカムを縦に接続して、そカムの中をハンドル軸が貫通してカムが上下動できるようにしてやれば良い、ってのがこの「310」の方式。写真下は見やすいように、ハンドル軸のギアに軸をブッ刺した状態で、主軸の縦になったオシュレーションカムがどう重なってるかを示したものです。カムのお尻からでてる棒がギアに掘られた円形溝にハマってギアの回転でカムが上下し、スプールを上下させるという仕組み。これだとカムは亜鉛鋳造で好きな形に作ればよいから楽だろう。ウーン独創的。

 ギアのところを見やすくするとこんな感じで、ハンドル軸のギア上に切った、スプール上下のための円形溝はこうなってます、偏心してるので真ん中の軸穴との距離が変化することでオシュレーションカムを上下させているというのがお分かりいただけるだろう。

 細かい所だけど、オシュレーションカムのギアの円形溝に突っ込む棒には真鍮のカラーが巻いてあり、ハンドル軸のギアには素材不明のブッシュがハマってるけど、これがハンドル軸とギアの継ぎ目の部分でギア側がやや太いのを軸の径まで絞ってる形に合わせて、カラーも曲線的に凹ませてある、等々は丁寧な仕事ぶりだなと感心する。ちなみにハンドル軸にもローター軸にもボールベアリングは入っておらず、ボールベアリングレス機です。エラい! 

 でもって、本体割った脚側にはナニも入ってってなかったのかというと、逆転防止機構(ストッパー)関係が入ってました。これが一見して何をやってるのか分からん謎機構。
 そもそも、ギアの裏とかにストッパー用の歯が見あたらない。填めてギアの位置とか確認してみるとローター軸のギアの歯に直接かける方式とまでは判明。
 ただ、写真上段の左がスイッチ切った状態で、ギアの歯に部品の右上端が掛からずストッパー掛からないのは良いとして、スイッチONで真ん中の状態になるとギアの歯に掛かってストッパーが働くのもまあ良いとして、ギアの歯が特に片方にしか回らないように歯が鋸の歯状になってるとかではないので、掛かりっぱなしで正転もできなくならんか?と疑問に思う。これ、下の写真の様にストッパーは2重構造になってて、スイッチON状態でも下の土台部分が動かないまま、上のギア歯に引っかける金属板の”爪”の部分はバネで緩くギアの歯側に押さえられているだけである。でギアの歯に円周に対して垂直に板を突っ込んでるんじゃなくて、斜めに当たってるので正転の時はカタカタ当たりつつも回転して、逆転の時にギアの歯にガシッと爪が噛んでストッパーとして働くという構造。ギアの歯自体にストッパーの爪掛けるのはミッチェル「300」でもやってたけど、あれはギアを痛めないように爪が樹脂性になってるところを、コイツの場合は緩いバネで柔らかくあててやるという方式。これまた独特。

 次にベール周りを見ていくと、ラインローラーが片側に覆いがかかったような形状の、金属を絞ってベールワイヤーに繋げたラインローラー周りの構造で、おそらく1950年代か60年代初期のリールだけど、ラインローラー回転式です。同じような形状のラインローラーはフルーガー「ペリカン」にもみられて、影響あったのかなという感じ。で、ラインローラーを留めるナットなんだけど、ラインローラーを填めてる部品にはネジが切ってあって、ラインローラーの填まる穴にグリグリとねじ込めるんだけど、完全に止まるまでねじ込むとラインローラー固定されてしまう。なので、ちょうど良い塩梅にローラーが回る位置で止まるようにナットを締めてやってそれ以上ネジが回らないように止めてやる方式。これだと回転するあんまり丈夫そうではない、良くてステン無垢かなっていうラインローラーが端から削れていってスカスカになったとしても、もうちょい締めて調整とかが可能で具合は良さそうに思う。

 そしてベール反転機構はというと、これがまた独特。
 インスプールのスピニングなんだけど、ベール反転の機構はスプールの下ローター内に収まってて、真ん中の写真で棒状になってるのが分かると思うけど、その棒の頭が丸まってて、一番上の写真の矢印部分のように、ローターを留めるナットの下から張り出した板の丸い穴にポコッと填まってベールが起きた状態で保持する方式。
 普通の外側にベールリリースのレバーが出てるインスプールスピニングだと、レバーがガッチリと填まってハンドル回転せずに”熊の手”で無理矢理ベール返そうとしても返らないし、下手すると壊れるんだけど、この方式だと、ポチッと穴に棒の先が引っかかってる程度なので、今時のアウトスプールスピニングみたいに手で返すことも可能。
 もちろん、ハンドル回転でベールを返すのも可能で、棒の穴に引っかかってる方と反対側の端がローターの下に突き出ていて、これが”蹴飛ばし”に蹴っ飛ばされてベールが返る。
 この蹴飛ばしがまた独特の発想のもので、一番下の矢印の部分は、本体パカッと割った脚側の突起で、本体ギア側にくっついてるローターを受けるための真鍮の円盤状の部分に填めて位置を固定する部分なんだけど、この突起がローター下に突き出していてベール反転の”蹴飛ばし”を兼務しているのである。細かい所だけど、米国の職人の独創性と合理的発想が表れた、いかにもらしくて面白い設計だなと感心した。ベール反転機構としての仕上がり自体も軽い力で止めて返して滑らか、というイイ塩梅でなかなかにヤりおる。

 で、ついでに分解方法なんだけど、ここはワシ的には減点せざるを得ないんだけど、ベールアームを支持している軸が抜けないように、一番上の写真の矢印の位置でCクリップで留められている。何度も書くようだけどCクリップ嫌い
 今回も、細心の注意を払ってローターの中にCクリップが落ちるようにお盆の上で慎重に外したにもかかわらず、外れた瞬間ピョーンと跳ねて胡座かいてる足下に落ちてしまった。足下には油汚れ防止とかのために新聞紙とか敷いて作業してて、その上に落ちたはずと血眼で探すも見あたらず、ひょっとしてと、スウェットのズボンの裾をめくったら、ありました!ってのが上から2枚目の写真。もうアタイCクリップなんて大っ嫌いなんだからっ!
 まあ見つかって良かった。
 でCクリップ外して軸を抜くと、軸の先の方は2段階の切り込みが入ってローターの真ん中に先端が填まってる設計になってて、抜いたらベール反転の棒とベールスプリングが外せる。でもって、軸とローターの間にはキッチリ樹脂製のスリーブが填まってて、ここでも抜かりなく丁寧な仕事っぷりに米国のリール職人さんの心意気を感じるところである。ちなみに、本体のロータ軸のギアが入る穴もハンドル軸が入る穴もアルミ直受けではなく真鍮のブッシュがハメゴロされていて抜かりなし。

 で全バラしすると部品数はこんな感じで、凝った設計もあってやや多め。
 今回、グリスアップして注油するに際して、グリスをどうしようかと迷った。いつもの耐腐食性重視の青グリスでは、あんまり見たことない、既にちょっと削れててジャーコジャーコという巻き心地のギアには不安がある。こりゃちゃんとしたリール用の耐摩耗性能の良いグリスの方が良かろう、となったんだけど、それじゃあ”繊細なギア”用にいつも使ってる透明なABU純正グリスでいくかとも思ったんだけど、ドラググリスは最近PENN純正グリスをドラグ用に流用してて、まずはドラグをと皮パッドとかにグリグリ塗った時点で、このPENN純正のこれまた青いグリスをドラグだけでなく機関にもブチ込んだ方が、”オーシャンシティー”という名の米国製スピニングには似合うように思って、今回贅沢にPENN純正グリスグッチャリで行きました。いつものマキシマの青グリスは一樽(約450g)2500円ぐらいと費用対効果抜群のお値打ち品だけど、PENN純正グリスは同じ大きさのを一樽日本で買うと7千円ぐらいする高級品である。ワシ貧乏なので小樽(約60g)しかよう買わんかったぐらい。今回オーシャンシティーの職人さんに敬意を表して容赦せずぶち込んだりました。
 組むときちょっとコツが居るのは、ギアの入れ方で側面の蓋をパカッと開ける方式じゃないので単純に最後にハンドル軸のギアを入れるという順番では入ってくれない。一旦ローター軸のギアを上に寄せておいて(下写真左)、ハンドル軸のギアを納めて、その後にローター軸のギアを所定の位置に下げてギアの歯同士を噛ませてから、ローター軸のギアが上がって空振りしないように、スペーサー的な真鍮の部品で隙間を埋めてやる(下写真右)という順番です。オーシャンシティー310の分解整備の仕方を知りたくてこのブログにたどり着いた奇特なお方は憶えて帰ってください。

 スプールは、前述したように金属の爪にカチッと填めるカートリッジ方式で、径の大きな樹脂製の台座の周りを取り囲むドーナツのような形状になっている。この設計はドラグの径が大きく取れると共に、オシュレーションの上下幅が小さいのをスプールの直径で補う形であり、フライリールでいうところの”ラージアーバー”的な設計で直径の大きめのスピニングは使い勝手が良いってのは、奇しくも2台あったうちの物々交換に出した残りの1台であるジャンクを復活させたルー「ゴールドスピン」を今期メッキ釣りとかで使って実感しているところでもあり、このオーシャンシティー310もギアがちょっとやかましい感じになってきてるのと、回転バランスがちょいプルプルなのはあるし、流石にドラグパッドの皮はペッタンコで使うならフェルト製にでも換装したほうがよさげだけど、使ったら案外細かい所は気にならなくて、釣り場で輝く類いのリールじゃないかという気がする。
 
 気がするんだけど、壊れた時に部品が部品取りの個体でもなんでもいいから入手できる状況じゃないと実釣に持ち出すのがためらわれる。コンパック「カプリⅡ」のドラグノブを紛失したときに、大森製ワンタッチスプールのNo.2サイズのドラグノブがなんとか流用可能で実釣に復帰させられたけど、大いに懲りた。
 このオーシャンシティー「310」はいくつか大きさ違いのあるシリーズのようで、基本型は「300」というもう少し大型の機種のようである(”300”っていうのはもろミッチェルの影響だろうか?)。この「310」はそれより小さくて、測ったら約300gだったけど、サイズ感はもうすこし小型の機種並でカーディナルのC4よりはC3に近いような印象。さらに小型の「320」もあるようだ。っていうのをイーベ○を覗いてて学んだけど、「300」はそこそこ弾数もあって、値段も買おうと思えば買えそうな即決価格のもあるけど、「310」「320」は弾数少ない、「310」に関しては見たときにはマニュアルピックアップのベールレス機しか出てなくて、コイツが1957年製とか説明されていて、そのちょい前ぐらいにハーディー社が持ってた”フルベールアーム”の特許が切れてその後各社フルベールアームのモデルを販売って流れだったと思うので、310も後からベールワイヤー付きのフルベール搭載機に変更したんだろうと思う。なので回転バランスはややプルッてるのかも。
 って具合で、壊れたら直せる目処が立ちにくいので実戦投入怖くてできません!
 道具としての評価は使ってナンボで、部屋でクルクル回しててもどうにもならんのは分かってるけど、この古き良き時代の米国の職人さんが独創的なアイデア盛りに盛りまくって仕上げた見た目も魅力的な1台を危ない目にあわすのは腰が引けて芋引いてしまった臆病者のナマジであった。

 とはいえ、分解整備してその独創的な仕組みを堪能するだけでも、蒐集家的な喜びは大いに満足させられたところであり、時期的には前後するんだろうけど、こういう独創性と職人気質に富むメーカーで修行した成果が”PENNリール”に繫がっていったんだろうな、とか想像すると歴史も感じられてPENN愛好家としても趣深かったです。なんというかミッチェルがスピニングリールを量産し始めて、ハーディー「アルテックス」のフルベールアームの特許が切れて、っていう大きな流れの中、1950年代から60年代ぐらいに、いろんなメーカーが参入して、ミッチェルのモロパクリから始めたところも多かっただろうけど、自社独自の工夫をと、まだスピニングリールの基本形式が固まらないなか試行錯誤が繰り返されていたという、スピニングリール黎明期の歴史の生き証人的な1台だったかなと感じております。

 改めて物々交換に応じていただいたレクエル堂サンには感謝を。ありがとうございました。ゴールドスピンも良いリールでこちらは実釣能力が売りなので釣り場で活躍してくれると思ってます。

2023年11月11日土曜日

祝!忠さんバイト誕生50周年!!

  それはさておき、阪神タイガース28年ぶりのアレおめでとうございます。ツーテンの虎ファンさんにおかれましては、リーグアレに引き続きベランダでセルフビールかけして寒がりつつ喜んでる姿が目に浮かぶようです。車に乗せてもらうとBGMは「六甲おろし」かボブマーリーだったのが懐かしいです(訂正:28年ぶりじゃなくて38年ぶりでしたスイマセン)。

 28年といえば四半世紀を越えていてたいがいな年月ですが、開高先生が名付け親である「バイト」が有名な常見忠さんが産んだ通称”忠さんスプーン”は、途中シマノ販売もあったりしつつも、忠さんのセントラルフィッシングから、忠さん亡き後は広島のアートフィッシングさんが引き継いでそちらから製造販売されており、なんと今年で誕生50周年だそうである。バイトと同時に誕生したのはレイカー、ダムサイト、ギンザンのあわせて4つだけど、レイカーは途中でマスターアングラー(マスター)に改名、ダムサイトとギンザンは現在販売していないということで”バイト誕生50周年”となってるけど、まあ大雑把に言えば”忠さんスプーン誕生50周年”なわけで、第1次ルアーブームの頃1973年から半世紀にわたり作られつづけている”歴史ある名作ルアー”が日本にもでてきたっていうのは、それだけで意義深いものがあると思う。国内で同一ブランドでこれ以上の歴史を刻んでいるルアーって、ヤマシタのタコベイト(初代ゴールデンベイトは1948年の発明)は漁具なのでちょっと毛色がちがうから、他に見当たらないのではなかろうか?次に古いのはなんだろ?タラ用にデッカいのを輸出してたヨーズリの「メタリックサーディン」とかか?まあこれも漁具系か?

 今後50年を越えてきそうな定番ってなにがあるだろ?K-TENN、アスリート、シュガーミノーあたりは堅そう、ジャンルを切り開いた先駆者的なコモモ、ワンダー、ニョロニョロ、クルクルあたりもいくか?意外とストライクキング社ダンスキングの金型買ってピーナッツで始まったピーナッツⅡシリーズは息も長いし次の候補だったりして、ダンスキングから数えたらそろそろいくのか?なんて想像するのも楽しい。

 なんにせよ、忠さんスプーン、我が国のルアーフィッシングの歴史において創世記から脈々と製造され続け愛され続けて50年、おめでとうございます。と言祝がせてもらおう。

 忠さんスプーンを取りあげるのは”ルアー図鑑うすしお味”関係で思いつくだけでもスプーン備蓄状況回と先日のメッキスプーン回と今回で3回目でかつその他にも、あちこちで取りあげてるので、いまさらだけど第58弾は忠さんスプーンでいってみます。めでてぇしな。

 まあ、忠さんスプーンといえば開高先生のアマゾン釣行記「オーパ!」の直撃を受けたナマジ少年としては「バイト」の印象がその時に刷り込まれたわけで、後に就職して首都圏に出てきて、バイク買って渓流ルアーなんかも始めるようになった時に、写真上のバイトの4.8gなんかも繰り出したわけだけど、バイトの4.8gはやや暴れん坊な性格でどちらかというと止水向きで、後に南の島の遠征での小物釣りとかに抜群の働きをするんだけど(あと昼の見えナマズにも効いた)、渓流ではしばらく写真下のリトルマスター2.5gとかリトルバイト3gとかを使ってた。この2つは前回メッキスプーン回でもちょっと触れたけど、一般のスプーンみたいな幅方向の局面がなく、縦方向にS字に曲げてあって、ハスルアーに近いヒラヒラっという感じの動きでなかなかに良い仕事をしてくれてた。なんで普通のスプーンぽい形状にしなかったんだろうって考えると、発売当時、管理マス釣り場用として小型スプーンが流行りつつあったんだけど、後出しでなかなか差別化するような形状のものをデザインしにくいなかでも、同じようなモノを出すのは嫌だったんじゃないかと想像している。

 っていう感じでしばらくは渓流ではコンデックス5g、ハスルアー3.5g、リトルマスター2.5gという布陣だったんだけど、東北時代渓流に狂ってたときにマスターの5gを使い始めたら、これが自分の小渓流というかボサッ川を手返し良く釣り上がっていく釣り方に抜群にハマってくれて、渓流では一時8割9割これを投げていたぐらい信頼して使っていた。小渓流で上流に投げた場合、素早く巻き始めて基本流れに負けない早引きになるけど、その時に重くて”浮かない”スプーンだと下手すると根がかってしまい、かつ重くて分厚いスプーンではワシ好みの動きの軽さや立ち上がりの早さが出せない。そこでマスター5gの出番なわけで、細長く肉薄のボディーはヒラヒラと実にワシ好みの軽い動きで表層近くを確実に泳いでくれて、マスター主戦力でイワナこれでもかというぐらいに釣った。年間尺岩魚23匹とか、小さいのは追ってきても掛からないようにかわしつつ釣ってたので、それだけ尺岩魚釣るのに200匹ぐらいしかかかってないとかいう実績から、その釣れっぷりをご想像いただきたい。イワナなんぞ数釣ろうと思ったら1日20でも30でも釣れたけど、それをやっちゃあなんぼリリースオンリーでも釣り場が荒れておしまいよって話で、数は5匹から10匹以下に抑えて尺を混ぜるってのを目標に当時は釣っておりました。現在マスターはリトルマスター除くと大物用の大きいのしか売ってないようだけど、5gの実力を知らんとは今時の渓流ルアーマンの実力もたいしたことないなと正直思ってる。イワナ釣りなら今でも効くと思う。みんな管釣り用みたいな小っこいスプーンやらアホの一つ覚えのミノーツイッチばかりでは釣れる魚限られてるしそういうルアーにはスレてくる。ある程度大きさがあってスプーン独特のきらめきでアピール力大のマスター5gの使いどころは今でも、というか他人が使ってない今だからこそあると思う。

 ってバイト使ってないんかい?と思う人もいるかもだけど、スプーンの出番が渓流だけだとマス釣りだけだと誰が決めた?って話で、バイトにもめっちゃお世話になりました、っていうか現在進行形でお世話になってます。

 でもまあ、遠征先で小物釣るのに大活躍してくれたのが印象深い。典型が南の島の珊瑚礁の魚たち、定番のカンモンハタとかの小型ハタ系、ヤマブキベラ、ハコベラなんていう美麗なベラの仲間、愛嬌のあるホシゴンベやオグロトラギス、もちろん各種メッキやコトヒキなんかも釣れてきて、陸っぱりでは4.8g、カヤック出すと10gが大活躍してくれた、カヤックではちょっと良い型のイソフエフキなんかも釣れたのも思い出深い。他にも、カザフスタンのヨーロッパオオナマズ釣りで餌のジェリフを釣るのにも4.8gが活躍してくれた。

 そして、バイトが大仕事してくれたのが、香港遠征でドカンと1発目の本命アフリカンクララをバイト13gが連れてきてくれて、その後も10gで追加のアフリカンクララとハロワン(ライギョの仲間)をゲットと、思い出深い釣りになった。

 上の写真の右が13gで左が10gで上の段が歴戦の強者達、この2種が一番動きが良くてバランスの取れたサイズだとワシャ思う。最初に作られたバイトは13gだったそうでナルホドと頷ける。けど、人それぞれに思い入れがあって、それぞれの釣り人にとっての良いサイズってのもあるんだろうとは思う。そのへんのルアーと釣り人の関係、釣り人が魂を込めて投げるに値するルアーとはなんていうのを香港遠征釣行記では熱くるしく語ってたりするので、興味がある人は読んでみてください。

 鱒は釣ってないんかい?と思うかもですが、ちゃんと釣ってます。オホーツクの海のカラフトマス。ってぐらいでバイトはワシ渓流より海とか湖のほうが強い気がしてます(当社比)。

 で、今現在忠さんスプーンにお世話になってるのは、ウグイちゃんメッキ界隈で、ウグイちゃん狙いでスプーン投げてると、結構メッキも食ってきてくれることが分かってきて、コータックが無くなってコンデックス3gとかのごく普通の小型スプーンの役割はとりあえず、手に入りやすいスミス「ピュア」に任せてたんだけど、ちょっと違うタイプのもということで、前述のリトルマスター、リトルバイトも用意していて、弾数揃えるのに中古を買ってたら、なんか普通のバイトの形で小さくしたようなのも売ってて試しに買ってみて使ったら、これがまた良く釣れたのよ。こりゃ「ピュア」の代わりにバイトの小っちゃいので良いなと、追加発注掛けました。普通の小っちゃいバイトもあるみたいだけど、アートフィッシングさんの通販では今売ってなかったので、メッキ良く釣れたのがメッシュバイト3.3gだったこともあり、同型でやや厚い4.2gとともにいくつか発注して愛用しております。

 あえて普通の小っちゃいスプーンは作らなかった忠さんには申し訳ないけど、リトルバイト、リトルマスターはそれはそれで欲しいんだけど、普通のバイトの小さいのも欲しかったので、そのあたりアートフィッシングさんが作ってくれたのはありがたいことです。

 バイトも、表面加工が違うメッシュバイト、DC(ダイヤモンドカット)バイト、シェルバイトとバリエーション増えており、メッシュの表面の何が良いって、塗装がペリッと剥がれにくいのが良いよね、って使ってて感じてます。古くからあるアメルアとかで、原理主義的に古い時代のしか頑なに認めようとしない人もいて、それはそれでそういう楽しみ方もあるんだろうと思うけど、ワシャ釣り道具だもん、魚釣れて良くなってるならそれに越したことはないと思ってる。アメリカ資本になってもラパラは今でもラパラだもん。他にもトローリング用に薄い板でできてるのが用意されていたり(渓流で上流に投げるのも想定されていて鋭い)、忠さんスプーンの範囲を逸脱しないなかでも、工夫をして進化させているのを見ると、正しく良いメーカーさんに引き継いでもらったものだと、安心するところである。

 そのアートフィッシングさんが、忠さんスプーンからちょっと離れて独自色をだした「リバードルフィン」っていうスプーンがあるようだけど、これがなかなかの苦心作で、スプーンって軽く100年以上の歴史があるんだけど、結局、ダーデヴルとオークラとハスルアーのバリエーションから逃れられていないとワシゃ思うんだけど、リバードルフィンは横振りの起点を先端のアイ付近じゃなくてボディーにもってきたという意欲作らしく、スプーン専門に作ってるスプーン屋として気合いを入れて世に問うてるのが感じられて好ましい。羊羹の老舗「虎屋」の社長さんだったかが「伝統というのは革新の連続である」とかどっかに書いてたけど、忠さんの残してくれたものをただ守るだけでなく、そこから進化させ革新的な次のスプーンを作り出そうとしているその意気や良しと、エラそうに思うのである。スプーン自作してみてエラい難しいことを実感してるのでなおさらそう思う。なんか使いどころ考えて試したくなる。100周年記念の頃にはどんな評価を受けどんな進化をしているだろうか?その未来に実り多からんことを祈る。 

 で、冒頭写真に写ってるバイトはなんなのよ?っていうと、アートフィッシングさん、自社の「パッケージ回収キャンペーン」ってのをずっとやっていて、パッケージ10個送ると、好きな商品がもらえます、ってやつなんだけど、今回50周年記念でバイトの特別版が作られてて、上のサンクス50周年版はキャンペーンのみの非売品だったので、パッケージも大事にとっておきがちなワシだけど、ちょっと欲しいなというのと、あとお祝いとお礼かたがた思うことを伝えたいなと手紙を添えて、ゲットしたりました。下の忠さんサイン入りバイトは販売中です。あと「Ken Kaiko」版も売っちょります。と、頼まれてもおらんけど宣伝してみました。

 おそらくだけど、釣り場に行って自社製品のパッケージが捨てられているのを見て、いたたまれん気持ちになったとかの経験からこういうキャンペーンをされているんだと思うけど、そもそもなんで釣り場に来てパッケージを開けてるかね?って話で、前の晩にでもルアーケースなりに入れてすぐに使えるように用意しとけよ、そんな段取り悪いことしてるから魚釣れンのやぞ、って思うと同時に、釣り場にゴミ捨てるようなアホもいるけど、こうやってどうすれば釣り場のゴミを減らすことができるか、考えて実行する人も居るってのはとても救われる話である。単にアートフィッシング社のパッケージがゴミとして捨てられなくなるということだけではなく、そういう活動をしているメーカーがあるぐらいに釣り場にゴミが捨てられているのが問題で、それはとってもみっともないことだと、多くの人には伝わるだろう。まあそれでも伝わらんアホはおるだろうけどな。目ぇ噛んでタヒね。釣り場に来んな。

 まあ、アホは放っておいて、自分の愛するルアーブランドが、そういう素晴らしいメーカーさんに引き継いでもらって、50周年を迎え、実にめでたいなとワシャ嬉しい気持ちなのである。弥栄、弥栄!

2023年11月4日土曜日

また出た日本製PENN!-パソコン椅子探偵PENNパワーグラフ2000編-

  「PENNマニアの方のお遊び用にどうですか?」という”つり書き”に綺麗に釣られて、れいによって入札者ワシだけで1800円落札+送料660円。

 PENNブランド(ピュアフィッシング社)公式PENNリールアフターサービスの「ミスティックリールパーツ」さんの「パワーグラフシリーズ」の紹介によると、1999年から2002年までの販売で、淡水から海まで対応の7モデルがあり、本体とローターは炭素繊維強化樹脂製、スプールはアルミ、そして大事なのは”瞬間的逆転機構”が採用されていません、ってところ。れいのローターの裏にストッパーの歯を設けた”マルチポイントストッパー方式”で、ワシが提唱する”スピニングリールの最高傑作は樹脂製本体で瞬間的逆転防止機構が採用される前に出現する”という法則にピッタリあてはまっている。

 で、足裏には"MADE IN JAPAN"とあり、日本製なんだけど一体どこのメーカーが作ったリールかというのが今回のお題。前回の日本製PENNである「PENN101」はダイワ製と推理したけど、今回のブツはマルチポイントストッパーだし、そもそも発売が1999年ということを考えると、既に世界的にも2大ブランドの1角にのし上がっていたダイワ様が他社ブランドの下請け仕事をやってたとは考えにくい。

 当時マルチポイント方式を採用していたのは、「メタロイヤルVS3500ZM」や「サイノスSS700ZM-T」で確認取れているリョービと「92”ツインパワー2000」で確認取れているシマノがすぐに思いつく。

 とりあえずシマノ様はダイワと同様既に他社ブランド生産(OEM)しなきゃならんような状況にはなかったし、かつ”バランスドローター”となってるローターの腕?のあたりとかの形状がリョービの「サイノス」とかの”Zローター”っぽいなとネットで画像を探して比べてみると、「サイノスXS2000ZM-T」と特徴一致。部品の形状とかハンドルノブも同じの使ってて、コイツのOEM版がPENN「パワーグラフ」という感じ。「パワーグラフⅡ」になるとドラグがPENNの「HT-100」ドラグパッド入りになってちょっとヤる感じになってくるけど、無印初代パワーグラフでも手で回した感じからいってドラグも悪くなさそう。ちなみにパワーグラフは第4世代まで続いたようだ。

 期待して集まってくれてたPENN沼の関係者の皆さん、謎解きいきなり終了してしまったので解散してください。お疲れ様でした。

 リョービは、いつまで経っても下請け体質が抜けなかったのか、シマノの後を継いでルーの「スピードスプール」も作ってたようだし、ゼブコ「XRL」兄弟は以前紹介したとおりだし、フィンノールブランドで出てた「エイバブ8」とかも確かリョービが作ってたはず。「メタロイヤルVS」も海外ではフィンノールブランドで売ってたっけ?あと海外ブランド向けに限らず、国内でもズィールとか古くはミノルタとか、自社のブランド力がイマイチなせいもあって仕事選ばずという印象。

 とまあ、珍しく早々に謎は全て解けたわけですが、せっかく我が家に来てくれたのでパックリ割ってじっくり整備してみたいと思いますので、ご用とお急ぎでなければごゆっくりとお楽しみください。

 

 まあ、この時代の標準的な日本製リールの域を出てないだろうし、そんな酷い作りでもないだろうから、適当にサクサクとバラしていく。

 まずはドラグなんだけど、ドラグパッドはちょっと表面ざらついたテフロンみたいな白いブツで、なんなんだろうな?とミスティックリールパーツさんのサイトのパーツ図で調べるとやっぱりテフロンで、ツルツルだと滑り良すぎて日本のドラグをしらない釣り人には「ツマミがしっかり締まらんがな」と怒られてしまいがちなので、あえて表面ざらつかせてたんだろうな。ご苦労様です。なんか金属ワッシャーの数が3階建てにしては1枚多い気がすると思いますが、高さ調整で1枚余分に入ってるだけなので気にしないでください。スプールにはドラグ用のボールベアリングもブッシュも入ってなくてアルミの直受け。スプール裏のドラグ用の音出しが、ライン引っかける樹脂製パーツの反対側に突き出てたようだけど折れてるのでコレはタチウオ用のステンレスワイヤーを折り曲げてでっち上げておいた。アルミスプールはチリチリリンと良い音が響く。

 ハンドルは心棒六角形のワンタッチハンドルでネジ留め式。なんでワンタッチハンドルが一般的になったのか、亜鉛一体成形のハンドル軸ギアに心棒突っ込む方式では、共回り式なら別にワンタッチでなくてもねじ込み式同様緩めて折りたたむのでも良いけど、共回り式は防水性良くないのでということでネジ留め式にして蓋つけて防水すると、ワンタッチじゃないと工具使わずにハンドルたたむ方法がない。ということで国産スピニングは、金の掛かる芯に堅い素材を鋳込んだギアにねじ込み式ハンドルじゃなくて、亜鉛鋳造ギアに心棒ネジ留め式が一般的になったら自ずとワンタッチが一般的になったということだったんだろうな。で、昔の大森スピニングやら4桁PENNやらABUカージナルCシリーズとかの爪の垢でも煎じて飲んだのか、我が国スピニングも近年やっと高級品はねじ込み式ハンドルが主流になったんだけど、こんどはあつものに懲りて膾吹き始めてハンドル折りたためなくなってやがんの。バカじゃねえのか?でパワーグラフに戻ってパカッと開けるのにネジがタップネジ直なのは、まあ樹脂製本体なら雌ネジも金属製のを入れろとか耐久性にこだわるうるさ型には、PENN社としては「それならスピンフィッシャー(当時4桁で5500以下が炭素繊維強化樹脂製本体)をどうぞ」って話だろうし、日本では、それをやった大森「マイクロセブンC」シリーズがたいして評価されていないことからも需要がないからこれでいいんだろう。って話だけど、パワー”グラフ”って名前でカタログスペック的にも堂々と「カーボン繊維強化樹脂製の本体とローター」となってるのに、なんだこの白い安っぽい樹脂は?せいぜいガラス繊維強化樹脂だろ?これはいかんのとちがうか?ちなみに最初蓋だけかなと思ったら、本体もローターも塗装が薄いところは同じような樹脂が見えている。炭素繊維って黒いよね?まあその程度の安いリールってことか。でギアはさっきも書いたけどハンドル軸のが亜鉛鋳造でローター軸のが真鍮切ったのでできたハイポイドフェースギアというまあ普通のギア。ちょっと良いのがボールベアリングがローター軸に1個だけで、でもハンドル軸の両側には真鍮のブッシュが填まってて樹脂本体で直受けにしていないところ。亜鉛の軸が削れないのか若干心配だけど、リョービもドリルとか回転モノの機械作ってる会社だし大丈夫なんだろうと信用しておこう。スプール上下は何の変哲もないハンドル軸のギアの回転から歯車回してオシュレーションカムを上下させる減速式で、この時代独特の順テーパーのロングスプールにわりと綺麗にラインが巻かれていたのでメタロイヤルに入ってたヤツみたいな凝ったのが入ってるのかと期待したけど肩すかし食らった。

 でもって、このリールの最大の売りである”マルチポイントストッパー”なんだけど、まあメタロイヤルとかと基本一緒で、ローターの裏に山が設けてあって、本体上部ローター内のオレンジの丸で囲った角がこれに引っかかって止まる。角が外に出るように部品の下にバネが入っている。で、正回転時に矢印のように回ると、ローター軸のギア上部に填められた部品に填まってるワイヤーによってストッパーのパーツが内側に引っ張られて、ローター裏の山にはアタらなくなって正回転時には静音化されている。でもって、下のほうがストッパーの部品を取り出してパーツクリーナーかけた後の写真なんだけど、この部品がさすがダイキャストメーカーであるリョービという感じでちょっと格好いい。亜鉛じゃないちょっと堅そうな材質で、なんだろ銅系かな、磁石はくっつかなかったので鉄系じゃないけど、これが綺麗に鋳造されていて、型に刻まれてた数字がワシの指の指紋の幅2,3本分しかないけどしっかり「2」と読める。型の隅々までちゃんと流し込んでるなという感じか。

 で、ベール周りに行くと、まずラインローラーがPEも問題無さそうな大口径だけど、ここはちゃんと錆びやすいボールベアリングじゃなくて樹脂製ブッシュが入ってるのはエラい。ついでにベールスプリングは既に耐久性の良いグルグルスプリング方式で良し。なんだけど、ベールアーム支持部、反対側のベールワイヤーのお尻の支持部共に回転部をローターの樹脂で直受けしてるので、写真見ると分かるけど既に塗装は剥げはじめていて、長期的には削れていきそう。ちなみにベールアームは樹脂製でベールワイヤーのお尻の部品は亜鉛っぽい金属製。いずれにせよローターの樹脂で直受けでタップネジで止めるより、カラーを入れるかネジの軸を上のほうで太らせてそこで受けるとかの方が耐久性は良いはず。

 もいっちょ樹脂で直受けはどうなのよ?なのがベール返しの蹴飛ばし部分。
 ベール起こすと右の写真の矢印の部分が飛び出て、左の写真の楕円で囲った本体から出っ張った部分にぶつけて蹴飛ばす方式なんだけど、写真の様に塗装はハゲてて白い線状に下の樹脂が見え始めていて、これまた長期的には溝掘れてきそうな感じになっている。
 まあこのあたりの長期的な耐久性を求めるようなリールじゃないってことか?

 という感じで、全体的に安っぽさは否めないモノの、ワシのような道具長年酷使するような釣り人なら、わざわざリョービ製のPENNリールなど買わすに素直に4桁スピンフィッシャー買っておけなんだろうけど、休日にはたまに釣りに行ったりもする、程度の釣り人にとっては悪くないリールなんだろうなという気がする。パーツ数少なめで整備性が良いのはそういう購買層には直接は関係ないだろうけど、単純で壊れる部品が少ないのは実用性高いだろう。樹脂製で錆には強いし、ラインローラーにもボールベアリングが入ってないので、丁寧に道具を扱うための知識があまりなくて放置してもあんまり不具合生じなさそうに思う。クソである瞬間的逆転防止機構が入ってないので間違って水没させたりしても、その場で問題は生じないし、後でベアリングが錆びてシャーシャー言い出すかもだけど、さすがにその程度は釣具屋さんにでも持って行けば直してもらえるだろう。遊びもほとんどなくて上出来。タップネジも分解整備とかせんのなら何の問題もないだろう。ぶっちゃけ樹脂直受け部分が削れるまで酷使することもないんじゃないの?って考えると、米国でもそういう購買層は一定数いるんだろうし、我が国でも同様でリョービの「サイノスXS」はリョービ最高傑作かについては怪しいところだけど、悪くない選択肢だったんだろう。とりたてて良くはないんだけど、ちょっと使う分に不具合が出るとも思えず、わりと快適に使えそうに思う。サイノスシリーズは中古市場でも弾数多くてそれなりに売れてた様子。リョービはわりとリール作るの上手な気はする。だからこそあちこちのお座敷からお呼びがかかったのだろう。

 ただワシが使うとなると、何に使うか出しどころは悩む。重さ約330gで樹脂製なので重量のわりに結構大きめで、糸巻き量的にも10LB220ヤードとか4桁PENNなら4400ssあたりに相当するはずで、そのあたりのリールに任せてる釣りとなると、シーバス用や青物だろうけどシーバス用の今使ってる竿にはちょい大きいし、青物やらせるには信頼感がイマイチ。磯投げ竿でルアーブン投げてタチウオとか狙うのをコイツにやらせるというのは、まあまあイケる気がする。純テーパーのロングスプールなので飛距離は出せそうで良さげ。ただ4400ssを外して出撃させたくなるほどの魅力があるかというと、正直微妙。まあ、こういうリールもあったんだなあというのを愛でて楽しんで、それでとりあえずは良しということにしておこう。なかなかに楽しめました。