2019年1月19日土曜日

銅・亜鉛・鉄



 オーリーハルーコーンッ!(©手塚神)

 っていきなり叫びたくなったのは、銅と亜鉛の合金である真鍮について調べてたら”オリハルコンの正体は真鍮”説がでてきて、家の鍵のキーホルダーにしているトビーも真鍮だし学生時代から愛用のマネークリップも真鍮だし、もちろんリールのギアとかの部品にもよく使われている真鍮が、伝説の金属オリハルコンだったのかと驚いて、知ることの感動が湧き上がったからである。確かに海中での戦闘で使う短剣が鋼じゃ錆びまくって手入れ大変だよねと妙に納得した。
 ワシのリール、オリハルコン製の部品使ってるねん、と思うと妙に格好いい気がしてくる。
 真鍮って多少緑青ふいたりはするけど錆びにくくて、キーホルダーなんかで使ってると表面が徐々に摩耗していって実に良い塩梅に渋い光沢を放ってくれて愛着の湧く金属である。

 なんで真鍮の勉強なんかしてるのかっていえば、当然ながらリール関係で、前回樹脂製のスピニングであるリョービ「サイノス」のハンドル軸のギアを受けるブッシュに真鍮製のが使われていて「真鍮ってそれなりに堅いはずだからコレだと亜鉛鋳造の軸の方が削れるんじゃないの?」という疑問が湧いたので調べていたのである。
 ネットでサクサクッと黄銅とも呼ばれる真鍮と亜鉛と、ついでにリールではよく使われる金属素材である鉄系合金のステンレスやアルミ合金なんかについても堅さや特徴などを調べてみた。高校の技術の時間に習ったようなおぼろげな記憶があるようなないような気がするけど、昔日の記憶はすでに霞の向こうにあり頼りにならんのでウィキペディア先生とかに教えを請うた。

 サクッと調べたところでは、硬さを表す「ブリネル硬さ」という指標だと、
・ステンレス180
・アルミ合金(7000系、超々ジュラルミン)155
・アルミ合金45~100
真鍮(銅と亜鉛の合金)黄銅80~150
・亜鉛 銅と同程度かややもろい 
ぐらいとされているようで、亜鉛が真鍮よりことさら弱いという数値は出てこなくて、自分の中の印象と違っているので違和感を感じた。
 真鍮はそれこそローター軸のギアには最も一般的に使われている金属なぐらい、強度や耐久性に優れ、かつ堅すぎずに切削加工でギアの山とか加工しやすく歯車系の金属部品には向いている印象があったけど、亜鉛はそれよりもろく柔らかく、融点低いので溶かして型に入れて固める鋳造(ダイキャスト)には向いてるけど、真鍮と摩擦するような使い方すれば亜鉛が負けて削れていくのではないかという印象を持っていた。
 亜鉛はヘタすると一般的にグラファイトボディーとか呼ばれている樹脂にガラス繊維やカーボン繊維を混ぜて強化した樹脂製の部品にも負けて削れるんじゃなかろうかという気が、写真の安ダイヤモンドのハンドル軸のギアをみてしていた。右が結構使い込まれていた「アクションM」のもので左が新品同様の「タックルA」のギアなんだけど、写真じゃイマイチ分かりにくいけど、右のギアの軸の樹脂ボディーで直接受けている部分がちょっと細くなって先端が削り残ってやや太くなってる気がする。
 真鍮相手ならもっと削れるんじゃなかろうか?と思ってアクションMのギア側の軸についている真鍮を芯にしている樹脂製ブッシュを外してみたらワシの過ち発見。
 真鍮が芯に入ってると思ってたら、実は薄っぺらい銅製のワッシャーがガタ調整かなんかで入ってただけで、このブッシュ樹脂製だ。
 嘘ばっかり書いててスイマセンと、またも頭を下げるナマジであった。堪忍してつかぁさい。アクションMもタックルAもギアの側の軸受けのブッシュは大きな樹脂製でした。
 やっぱり亜鉛の軸を真鍮のブッシュで受けると亜鉛が負けるから、大森製作所はブッシュを樹脂製にしたんじゃなかろうか?亜鉛も樹脂もある程度削れる素材なので、樹脂製で回転も少しするブッシュを噛ますことで軸と接する面積を増やして分散させ削れる速度を遅くして長持ちさせようという設計思想なんじゃないかと思う。樹脂の方が先に削れてくれるなら、まあこの手の安リールじゃ買い直した方が早いんだろうけど樹脂ブッシュの交換で使い続けることができる。

 しかし亜鉛が真鍮との摩擦で削れるとすると、ネットでお勉強した亜鉛が真鍮と比べてそんなに柔らかくももろくもないという記述とは反するので何でだろうと考えていたら、思わぬ所から答らしいところにたどり着いた。
 スピニングリールはもう買わないというのも、ありゃ嘘で、また性懲りもなく1台買ってしまったんだけど、今回は「スペアスプール確保がてら見つけたら買うかも」とか書いていた安ダイヤモンド同型機なのでこれまた堪忍堪忍。
 2台目のタックルAであるコイツが、新品同様だったにもかかわらず、とんでもないハズレ個体で、まあシールが剥がれるのは大森とPENNじゃお約束でそういう仕様なので仕方ないにしても、クルクルカシャカシャと逆転防止の確認中に何か囓ったなという感触があったと思ったら、逆転し始め「アッこれはヤバい」と慌てて分解したら、ローター軸のギアの直上に鎮座している逆転防止用の亜鉛のパーツがボロボロに削れて爪が掛からなくなっていた。
 ちょっと引っ掻いただけでもボロボロと崩れるぐらいにもろく、あきらかにスが入った不良品である。こんなモンを出荷しているような品質管理体制ではそら大森製作所潰れるって。生産拠点を人件費安かったであろう当時の韓国に移すなんてのはべつにどこのメーカーもやってたような話で批判の対象にならないと思うけど、そこで作られ出荷された製品の質についてはまごうことなく大森製作所の責任だろうと思う。マレーシア工場製のシマノ「NAVI」もインドネシア工場製のダイワ「早船」も同社の名を汚さないデキだったと買って感じたのと対照的である。製造業で不良品売るようなところが長生きするわけがない。別に安物売ったってかまわない。そこにも商機があるなら商売だもん売りゃ良いさ。でも道具として機能しない不良品を売ったらダメだってって話。樹脂製でも亜鉛のギアとの接点は負荷の掛かるギア側はボディー直受けじゃなくて樹脂ブッシュ噛ませてたり、ドラグがちゃんとしたの入ってたりと安リールでも設計に大森の生真面目さを感じるリールだけに頭にきた。たまたまこの1台だけをみて断じるのは間違いかも知れないけど、1台そういうのを出してしまうことが信用に関わる、という話だと。
 これが”答”とどうつながるのか?というと、要するに亜鉛が金属素材として同条件で比べたら真鍮よりそんなに柔らかくもないのに、なぜもろく削れる印象があるのかっていったら、おそらく円筒状の素材から切り出したり切削して作っている真鍮のギアやブッシュよりも溶かして鋳型に流し込んで作っている亜鉛鋳造のギアの方が”製造方法の違い”でもろく柔らかく削れやすいってことなんだと思う。
 よく高級リール様が鋳造(ダイキャスト)じゃなくてマシンカット(切削)や延ばして鍛造で作ってるんで丈夫なんですって宣伝してるけどその逆で、亜鉛を鋳造して作るとなると、どうしても製法上冷やす段階で縮んでムラができたり最悪スが入ったりして、もろくなるんだろう。
 もちろん亜鉛ダイキャストのギアは広く使われていてちゃんと作られていれば強度上問題ないハズなんだけど、製造において温度管理とかによって強度に差が出てくるなんてのは、これは鍛造の話だけど昔の刀鍛冶が焼き入れするときの水の温度を盗もうと水に手を突っ込んだ弟子の手を叩き切ったなんて逸話からも分かるように、微妙なさじ加減が必要なはずで、不良品も出てくる製法なんだと思う。と同時に鋳造じゃない真鍮やらステンレス系の部品より削れやすいし、ひょっとするとアルミ合金や樹脂製の部品にも負けて削れる場合もありそうだ。というのが今のところの私の整理である。
 ということは、亜鉛鋳造一体成形のハンドル軸のギアを使うスピニングリールにおいては、昔の大森のように堅い素材を軸に鋳込んだりはしていないので、亜鉛の軸が削れないようにするには樹脂製の柔らかいブッシュを噛ませて交換して使うというのもありかも知れないけど、今時それ程高価な部品でもなくなっているボールベアリングを右左に噛ませてしまえば軸が摩擦で削れることが防げて現実的な解決策なんだということが理解できる。実際には亜鉛の軸を真鍮で受けたって削れるには相当な時間が掛かるはずで幅とかの設定で摩擦面積増やして削れにくくして実用充分なリールに仕上げることはできるのかもしれない。それを実証するには試験だの何だの面倒臭く、かつ買い手はベアリングをありがたがるんだからベアリング入れときゃ間違いないって話で、亜鉛鋳造一体成形のギアならスピニングリールに必要なボールベアリングの数は3個が現実的なのかもしれない。と、思ったところである。

 思ったんだけど、じゃあ手持ちの安ダイヤモンドにボールベアリング2個突っ込むかというとそういう気にはならない。せっかくの樹脂製で軽いという利点を損ないかねないし”ベアリング数を増やす”なんていう改造は下品で頭が悪い印象があるので好みじゃない。
 以前アンバサダーの真鍮製ボディーでクソ重い「6500CSロケットクローム」という両軸リールをいじってたときに、軸を受けているカップ側の端が銅製のブッシュなので「飛距離アップ、巻き取りをスムーズに」を謳って交換するための適合するボールベアリングがネットで売られているのを見た。一瞬買いそうになったけど「まてよ、アンバサダーってウルトラキャストデザイン以降キャスト時には軸は回らないんじゃなかったっけ?」と思って分解してみたら、やっぱりキャスト時軸は回らず、当然回転するスプール自体には既にボールベアリングが2個入れられている。投げる時回らないところにボールベアリング入れても飛距離には関係ないし、巻き取りぐらいはブッシュで充分滑らかだ。アホかとおもうよね。
 ベアリングの数が増えればありがたがるベアリング信者のバカを狙った詐欺的商売と言って良いだろう。とはいえこういうのは騙されるのが悪いんであって、騙されても本人気づかなくて満足しているなら問題生じないので勝手にやってくれという感じだ。けど、そういうバカにはなりたくないので、ベアリング数増やすのは最後の手段としたい。

 ということで、アクションMのギア側の純正の樹脂製ブッシュは削れたらおいおい考えるとして、削れ始めてるようにも見える反対側の樹脂製本体直受けの部分を交換可能な樹脂のブッシュを入れて、削れたら交換して使う方式にしてみた。
 難しいことはやりたくないので、ハンドルをとめる蓋兼ネジを外して見えているハンドル軸のギアの端にきつめにジュラコン樹脂製の輪っかを填めて、ハンドル軸はこちら側ではどことも摩擦せずジュラコン樹脂と本体が摩擦してどちらかが削れる方式とした。ジュラコン樹脂が本体に負けて削れる場合は削れたら交換ですむし、勝っちゃったらまた考える。
 外側の直径はピッタリのが手に入ったけど、穴の径が狭くてギアの端が入らないのでハンドドリルのヤスリでドリドリと時間を掛けて穴を拡張してちょうどはまって動かない様に加工。
 ジュラコンかなり堅い樹脂でドリルで加工するのも時間が掛かったけどその分頼もしい感じがする。本体と接する外側はテフロンのようにつるつるしていて摩擦少なくて良さそう。
 ちゃんと真ん中に填まってくれたようで、組み立てたリールの回転も問題なく滑らか。
 
 ついでにと、スプールの方にも手を入れてみた。
 平行巻機構の往復幅に比べてややスプールの糸巻きの部分の幅が広いので、スプールの高さを座面のワッシャーを薄くすることで下げて上にラインを寄せるとともに、スプール下面にワンカップ蓋製の土星の輪っか状のスペーサーを噛ませて底上げしてみた。半透明のワンカップ蓋をウレタン接着剤でくっつけたのでやや見た目がアレだ。でも、スプールの上の端はラインが当たる場所なので抵抗なく滑らかにつるつるの美しさを保ちたいところだけど、下面はどうでも良いちゃいいので適度な”やっつけ感”が出ててよしとしておこう。
 もともとのスプールにはテーパーが付いているので、下巻きを座面のワッシャー抜いた上巻き状態で巻いてならしておいた。
 ついでにラインを留めるパーツが欠損していたので、ワンカップの蓋の余りを利用して成型してくっつけた。ワンカップの蓋ドラグパッドにスペーサーにライン留めにと万能の素材である。割り箸とともに使える身近な素材として評価うなぎ登りである。惜しむらくは酒飲まなくなって久しいので料理酒として使う程度では数が確保しにくいことか。
 まあタッパーの蓋でもペットボトルの蓋でも良いんだろうけどね。
 という感じでせっかく我が家にきてくれた安ダイヤモンド。しっかり使って楽しもうと着々と手を入れて改良だか改悪だかまだ使ってみないと分からないけど遊ばせてもらってます。

 こうやっていじくれる楽しさがあるだけでも、今時の、おまえは恩返しにきた鶴かってかんじの”開けちゃダメ”系の高級スピニング様より持ってて楽しい道具だと思うんだけどね。

2019年1月12日土曜日

余熱

 ひとまずスピニングリールネタは終幕、と言ったな、あれは嘘だ。

 という台詞がシュワちゃん(CV.玄田哲章)で脳内再生されるか、ジョルノ( CV.小野賢章)で脳内再生されるかが、映画ファンとアニオタの差だと思うの。

 「またスピニングリールネタかよ!熱さがっとらんやんケ!!」と思われるかもだけど、ぶっちゃけもう熱は冷めてます。イヤほんとですって。
 特に”欲しくて仕方ないノ!!”って感じは年開けてからはもうなく、物欲的には治まっててネットオークションも一応見てはいるけど入札するほど欲しいものもない。とはいえ年末の時点で買っただけで触ってなかった3台をいじったら、もうわざわざ紹介するような新しいこともないのかなと思ってたんだけど、なかなかどうしてどのリールも個性や工夫が見て取れて、みんな違ってみんな良い的に面白かったので、そのあたりの紹介と「こんなリール買いました」だけじゃツマンネエと思うので、多分次回になると思うけど実践的スピニングリール改造例的なネタもぶち込んでみたい。

 ということで、こんなん買いました紹介一発目が写真のダイワ「7250HRLA」。
 オリムピックの「エメラルド350」でかなりお腹いっぱいになってたのでしばらく放置してたけど、なかなかどうしてこいつも悪くない。というか全然人気ないみたいだけど良いジャンという感じ。釣り場で使ってないのでなんともな部分はあるけど、見てのとおりインスプールでそんなに複雑な道具じゃなし特に不都合生じそうにも思えない。
 70年代の日本製品が安さと品質の良さで世界市場でのし上がっていった時代のリールで、米国の他に英国とかでも売られたようで、色違いやらワンタッチスプール版のとかもあるようだ。ってことからそれなりの高評価を得て数売りさばいたリールだと見てとれる。国内版は別の名前で売ってたようだけど基本同型、この個体はいかにも米国仕様なPENNのドングリ形っぽいノブのハンドルが付いている。他にミッチェルっぽいハンドルのタイプもネット上で散見された。ダイワはPENNとも技術提携していた歴史があるようなのでその辺の影響かとも思うんだけど、ネットの識者によるとむしろこのリールはダイワが70年代に吸収した「稲村製作所」の技術を色濃く引き継いでいるらしい。
 「稲村製作所」もスピニングの歴史を勉強しているとよく出てくる名前で、米国じゃヘドンの名前で出ていますな実力派だったけど、最後は自社ブランドで米国市場を闘ったダイワの軍門にくだったという歴史絵巻らしい。ダイワ強し。
 巻き心地とか正直私は気にしない釣り人なので良くても悪くても評価できないんだけど普通にクルクル回ってくれてて、分解清掃する前からコリャ問題なく使えるなという感じ。
 ドラグも普通に3階建て方式で、ダイワが国内のドラグ使わない釣り人向けにはあまりと言えばあんまりなドラグのリールを売りさばいていたのと好対照で、米国向けにはしっかりと機能するドラグを入れているという、市場の好みをとらえる上手さがここにも見える。
 パカッと本体の蓋を開けると、なんか変なギアが鎮座してて一瞬ギョッとなるけど、これは古い設計だとハンドル軸のギアの根元に付いていることが多い逆転防止のためのギアが上?面に付いているからであり、逆転防止の爪は蓋の裏に付いている。なぜハンドル軸の根元に付けないのかというと、ハンドル軸の根元には平行巻機構のギアが付いているからである。
 そう、このリールはこの時代としては珍しいクランク式じゃない減速カム方式の平行巻機構を搭載しているのである。なかなかやるやんケ。
 ギア方式自体は普通にハイポイドフェースギアなんだけどスピニングリールで一番大きな歯車であるハンドル軸のギアの直径いっぱいつかって逆転防止の歯を切ってあるので遊びが小さくなっててナルホドという設計。あとベールが大森みたいに折りたたみできるのも地味に良いところ。
 ローターとローター軸のギアが、前の持ち主が逆に捻りまくって噛んでしまっているのかどちらにも回らない固着状態だったけど、その他は外せてグリスもぶち込めたので固着したまま分解清掃敢行終了。
 国内の中古市場じゃインスプールのリールはABUカーディナル、ミッチェル、ダイヤモンドの3強で他は未使用箱入り娘でもなければそんなに値段付いてなくて「7250HRLA」も3千円ぐらいが相場で5千円もだせば結構買える。性能の差はあるといえばあるんだろうけど、どっちが良いと一概には言えないようなむしろ”個性”がある感じで、なぜクソ高い人気機種ばかりををありがたがるのか私には理解できない。なにしろコイツの値段といったら今回次に紹介する「ダイヤモンドスーパー99」と2台で2000円という堂々の”ごみスピ”価格での落札である。費用対効果考えればメチャクチャ良いリールだと思う。

 かつ”熊の手”対策のローターから出っ張った棚も備えた初心者向けのインスプールスピニングであり、インスプール使ってみたいけどベールを手で起こしちゃダメってのが不安なんだよなとお嘆きの貴兄にもピッタリ。どうです?1台。
 ただ、このリール我が家では出番がなかなかなさそうな感じ。大きさ的に「スピンフィッシャー714Z」「エメラルド350」あたりとモロかぶりで、渓流行くときにジェットスピンに付けて使ったら”気分”かなというぐらいか。しばらく蔵で待機だな。

 お次は、みんな大好き大森製作所のインスプールでっせ。といってもサイズが大きくてちょっとルアー用という感じじゃないので全然人気がない機種「ダイヤモンドスーパー99」。
 なんで99なんだろなと思ってたけど左巻が99で右巻が100のようだ、ABUアンバサダーが左巻だと数字に1足すのと逆に左は1引いてる。
 正直、狙ってたのは「7250HRLA」で、2つまとめて抱き合わせてオークションに掛かってたのでオマケ程度に思ってたけど、実際手にしてみるとコレがなかなかに味わい深い1台で、何か出撃機会を考えてやらなあかんなという感じ。
 スプール径が大きいんだけど、分解清掃しながら設計を理解していくとナルホドな感じで、薄いお握りのような三角のボディーに大きなインスプールのスプールとローターが乗っかってる塩梅といい、左巻専用で裏っかわがミッチェル300みたいに背骨の部分が盛り上がってるスッキリとした形といい、なかなかに格好いいリールで、丈夫に作ってある感じの重さといい、我が家にあるリールではコレまで9500ssと706Zが漢らしくて格好いいリールの双璧だったけど、それらに匹敵するぐらい漢らしい。

 内部の機構は、大森ダイヤモンドがハイポイドフェースギアにたどり着く以前のリールのようで、おそらく60年代とかのリールなのかも。ワシより年寄りの御先輩。
 ドラグは普通にこの時代から3階建てなのねというかんじで、ドラグパッドへたってるので例によってテフロン仕上げガラス繊維製のパッド追加してそれなりに使えるドラグに調整。
 パカッと本体開けると、ギアは斜めに溝を切った傘状のギアとギアが接触するスパイラルベベルギアである。
 おおーッ、ミッチェルの名機408やそれに影響受けているだろうPENNスピンフィッシャー722Zに搭載されているギアやんけ。たしか刃切りしてギアを作らなきゃならんのでそのための工作機械やら技術がいるけど、力の伝達効率は良く、つまり軽く力強く巻けるギアで、滑らかさも併せ持つとか何とかだったように思う。
 凝ったギア入れてんなーと感心しつつ分解清掃していくと、驚きの事実が判明。
 このリールにはボールベアリングが1ッコも使われていません。

 ベアリングレス機。なんと漢らしい。
 右の写真のように油溝を切った真鍮の芯にこれまた真鍮のスリーブを被せていて、この芯とスリーブの接触面の滑らかさでローターの回転の滑らかさを確保している形。
 もちろん、ボールベアリングが入っている場合ほどの軽い回転ではない。でも、古いグリスとかぬぐって新たにリール油注してグリスシーリングしたら、まずまず使えるぐらいの巻きの重さでしかなくベアリングなしでもスピニングリールが成立するというのは、ちょっと衝撃を覚えるぐらいの事実。
 でも考えたら、ベイトキャスティングリールにおいて、アンバサダーの「C」なしのモデルはスプール軸を受けるのにボールベアリングじゃなくて銅のブッシュが入ってるけど、重いルアーなら問題なく「投げられる」ぐらいの回転が得られるんだから、不可能じゃないんだろう。
 ただこういうリールが成立するには、製作精度が高いのは当然として、力の伝達効率が良いスパイラルベベルギア方式も貢献しているんだろうし、ギア比が多分3倍チョイぐらいと小さく力強い設定なのとかもあわさっての全体の設計の上手さによるんだろう。ギア比が小さいからスプールの直径大きくして巻き取り速度を稼いでいるようにも見える。さすが大森製作所、栴檀は青葉から香しか。

 という感じで、サクサクと分解清掃してたんだけど、落札時は「動作確認済み」で問題なく作動していた逆転防止機構が、実は爪を歯車に押しつけるバネが錆びていてギリギリ持っている状態で、このまま触らずにここはソッ閉じだと思ったんだけど、なんと、錆を止めるためにちょっとだけグリスを盛るかと触った瞬間ポロッと折れた。大ショック。
 あれこれ悩みつつも、ベールスプリングじゃなければそれ程耐久性はイランということは学習済みで、タチウオ用のステンレスリーダーを加工して爪を押しつけるようにバネっぽく細工して復活させた。一安心一安心。
 スパイラルベベルギアってルアー用だとミッチェルとPENNに見られるぐらいで珍しいけど、この時代の日本製投げ釣りリールには意外に多く使われていたのかも知れない。使い道なくて放置中のオリムピックの「モデル93」もスパイラルベベルギア機だ。
 力がある巻き上げで、遠投した仕掛けをゴリゴリ巻くのに向いていたのだろうか。私は投げ釣りあんまりしないので、「スーパー99」を使うとしたら、ギア比が低くてゆっくり巻ける、かつ力もあるのを利用してデカいルアーでスズキ狙いとかかな。こいつに武勲をあげさせるために釣りモノ探したくなるぐらいに味のある1台である。


 最後の1台はグッと趣が異なるリョービ「サイノスSS700ZM-T」。
 リョービの釣り具部門がJ屋に移ってからの時代の製品のようで、本体・ローター・スプール全部樹脂製で、おかげでカタログでは235gという軽量を誇っている。
 ”樹脂製リール爛熟期”に隠れた名機が実ってたんじゃないか?っていうのを探してたときに買ってしばし放置してあった。ちなみに某中古釣具屋の年末割引で税抜き800円。定価は3,400円と”安物”とまではいかない普及品。
 コレがなかなか悪くないリールなんである。
 分解していくと、まずはドラグが滑りの悪い赤い繊維のドラグパッドにワッシャー1枚で”ドラグノブ=スプールを固定するためのツマミ”系ドラグなんだけど、そのあたりはもう慣れたモノでフェルトを底に敷いて調整幅稼いで滑りはテフロン仕上げガラス繊維製のパッドで確保という感じで使えるドラグにしてしまうと、ラインローラーは直径大きいラインに優しそうなのがついてて、しかも錆びない樹脂製ブッシュ入り。逆転防止機構がメタロイヤルと同様のローターの裏に爪の掛かる歯を設けた「マルチポイントストッパー」方式。と、悪しき高級リール化への階段であるラインローラーへのベアリングやら瞬間的逆転防止機構の搭載に至っていない良い塩梅の進化具合。まあ安いからおいそれとはベアリングとか入れられないってだけかも知れないけど。
 ベアリングはローター軸に1個入ってるだけだけど、ちゃんと軽くクルクル回ってて回転バランスも悪くないように思う。ちなみにハンドル軸は真鍮のブッシュで受けている。
 J屋が吸収したスピニングリール屋である大森製作所に関しては、「ロングマイコン」とか見る限りどこが作っても同じような安リールでしかないと思うしブランド自体消えてしまったけど、リョービについては少なくともこのサイノスはリョービらしい技術が残っているうえにまだ日本製で、ちゃんとリョービの日本工場の人にJ屋が飯食わせてたようで立派である。大森の件では正直恨みに近い感情を抱いていたけどちょっと見直した。さすがにもう工場は日本にはないようだけど今でもリョービブランドのリールはJ屋で売っているようである。
 ただコイツをコレから使っていくかというと、樹脂製の安いリールとしては大森晩年の「アクションM」を使っていくことにしているので出番が想定されず、あと往年の大森ダイヤモンドのようにハンドル軸のギアに堅い鉄系の軸が鋳込んであれば、ブッシュは真鍮製で問題ないんだろうけど、亜鉛鋳造一体成形のギアの軸受けとして真鍮はどうなのか?どっちか削れちゃうんじゃないかという不安もあって不採用とした。その辺もう少し詳しく次回書いてみたい。
 とはいえ安く仕上げつつもなかなかに工夫の跡がしのばれる1台ではあり、ネットオークションとかで売っても低評価で手間賃にもならん気がするし、捨てたり死蔵するのも惜しく思ったので、もう使う機会がなさそうなシマノとダイワのスプリンターマックスと詰め合わせにして使ってくれそうな男の子のいるご家庭に適当に竿も見繕って進呈してきた。ぶっ壊れるまで使ってもらえれば嬉しいナと思う。

 いろんなスピニングをいじくってきたけど、どのリールも完璧じゃないけど利点や愛すべき面とかがありそれぞれに個性があって、実釣に支障を生じさせるようなダメな点がなければ、どんなリールでも使い込んで愛着を持つことはできるような気がする。
 「スピニングリールの性能は基本的に値段に比例するので、可能な範囲で良いのを買ってください」的なことをいけしゃあしゃあとのたまう、釣具屋のまわし者の言ってることなんて全部無視して良いので、自分が欲しいリールの性能や機能はなんなのか、自分の好きなリールはどんなのか、それを考えて悩むこと自体が楽しくて仕方ないことなので、くれぐれもその楽しみを他人に任せたり奪われたりしないように自分でよく考えて、道具選びの面白さを存分に楽しんで欲しい、と老婆心ながら思うのである。

2019年1月6日日曜日

便所のネズミのクソにも匹敵するそのくだらないモノ

 見る者をして吐き気をもよおさしめるモノというものがある。一般的には排泄物、ゲロ、タン、腐ってウジの湧いた魚、死体からはみ出た内臓、まんじゅうに熱いお茶とかがそれにあたるだろうか。

 新年2日に帰省先から戻るのに、新幹線の駅まで同居人の両親に車で送ってもらった。
 道中東北時代に住んでた近くの川の河口に高さ5mはあろうかという堤防が築かれつつある光景を見て、年末にも釣りに行ったときにさんざん防潮堤の工事を見ていたし、そういう計画があることも知っていたけど、気分が悪くなって目眩がして吐き気がした。
 シロウオを獲るための伝統的な漁法が続いていたような川の河口にナニしてくれてるんだと。5mの高さの堤防ってそれを支える土台にどれだけ土盛ってピラミッドみたいにしなきゃならんかというのは、知識で知ってても実物見るとその盛大さが想像を軽く超えていることに驚く。川の両岸にズーッと延々と2階建ての家ぐらいの高さのピラミッドが建設されていると想像してもらうと良いかもしれない。ホントいろんな要素を伴って相乗効果で気持ち悪い醜悪さ。
 不幸中の幸いだったのか?一番親しんだお気に入りの川は手前で自動車道に乗ったので河口部を見なくて済んだことだけど、同じような工事がされていると聞いてるので、もうヒラメとか釣ったあの河口はもう自分の思い出の中にしか流れてないんだなと思うと心底悲しい。サケだって上がるしマハゼも釣れるしクサフグもウグイも釣れた懐かしいオレの川。しっかり見て傷ついておくべきだったのかもしれないが正直勘弁して欲しい。ガガンボの脚のように脆弱な私の精神力では耐えられそうにない。上流はまだ工事が入ってないようなのでヤマメは健在かもしれない。でも、内緒だけど河口近くまでヤマメが釣れたんだけど、それはもうダメかも知れない。
 東北の渓流釣り場では放流量多い大河川が注目されがちだけど、実は釣り人少ないリアス式の湾に注ぐ沿岸の小河川が釣り人少なくて狙い目だったのである。イワナはさすがにある程度標高高いところから流れている川にしかいなかったけど、ヤマメなんぞは関東でいえばオイカワに近い生態的地位にいるぐらいの魚で家から5分ですぐ釣れたものである。関東のオイカワの方が難しいくらいで、雑なワシのフライフィッシングでもわけなく釣れた。
 そういう都会の釣り人が聞いたら信じたくないような贅沢な川を”金をばらまくことが主目的”の公共事業で失うことの損失がどれほど大きいか、なぜ分からないのかオレには分からない。
 そう思っているのは私だけじゃない、そういう自然環境に高い価値があるというのは、昨年それらの川が流れ込む志津川湾が”ラムサール条約登録湿地”になったことからも客観的に明らかだと思う。
 本当はどこの水辺も等しく重要なんだろうから、条約様がどうこういうまでもなく他の三陸の湾もそこに注ぐ河川も重要なんだと思う。でも公的機関がお墨付きを与えて「水鳥とかの棲息に重要なので保全していきましょうね」って言ってきている湾で平成も終わる時代にナニをやってるんだって話。

 日本って少なくとも”先進国”じゃないよねってこういうの見ると思う。かといって”途上国”っていうほど発展する余地もない黄昏の国。土建屋国家。

 「住民のために」「人の命を軽視するな」と推進する側はいうのだろう。ヨソモンが口を挟むなというかもしれない。ただ、クソ高い防潮堤については地元の反対もかなり強かったと聞いている。いろんな意見はあったんだろうけど「決まったこと」として押し切られたような話を良く聞いたし、そうだったんだろうなと容易に想像できる。
 要するに「復興」の錦の御旗のもとに予算が付くなかでいかに多くぶんどってきて地元にバラまくかってのが重要で、この儲け時に儲けなくていつもうけるんだということで、なりふり構わず無駄だろうがなんだろうが予算もってる”上”にピラッと綺麗な絵図面みせて説明しやすい話でゴリゴリ押したんだろう。

 「住民のために」だったら、なんで反対している者が多い地域にまで要らない防潮堤を作るのか。そういう工事が進んでいる中でなぜ、半島の先っちょの集落にいくための道路がいまだに地盤沈下で高潮時に浸水するまま捨て置かれているのか。票にも対外的な評価にも結びつかないような地味な工事は放置で「住民」捨て置かれている。何年経ったと思ってるんだ?

 「人の命を軽視するな」って、いうんなら東北の津波で得た教訓は”堤防じゃ津波は防ぎきれないから、とにかく地震が来たら高いところに逃げる”だったはずである。そうじゃないというなら指摘して欲しい。
 津波で壊れた防潮堤を教訓に更に丈夫な防潮堤を作るとか言うんだろうけど、防潮堤って作ったら永久に機能し続けるわけじゃなくて、コンクリの耐用年数って今はもうちょっと良いのかもだけど30年とか40年とか言われてたはずで、あんな巨大な構造物を定期的に修繕し続けなければならない経済的な負担など、今でもできないだろうし今後はもっとできなくなる経済状況になるだろう。
 人命優先で予算をつけるべきだなんて理想論で飯が食えたら苦労しないって話で、ため池が崩壊しただの崖が崩れたの堤防が決壊しただのって、なんで改修しておかなかったのかって”評論家様”は言うけどさ、いっつも書くけどそんな後出しジャンケンだれでもできるけど、予算限られる中でどれが次に危ないかなんて的確にあてられるわけなくて、特に津波なんてのは断層がエネルギーを貯め込んでから放出する大地震で来るんだから、忘れて防潮堤がボロくなった頃に来て崩壊するのは目に見えている。アホかと。
 なんで長期的には必ずおこりうる災害を、自然災害である”津波”では完全に押さえ込もうとして人災である”原発事故”は容認しようとしているのか、本来全く逆のハズでこの国の政治家もそれを支持する国民も頭も悪いし程度も低いと正直思ってる。原発事故なんて原発運用しなければ少なくとも国内では完全に防げる。自然災害は防ぎようがないことを前提に避難の方法やらなにやらで被害を最小限にとどめることを目標にすべきである。なんてことはとっくの昔にみんな分かってるはずで、一部狂信的なバカ以外は知ってることである。知ってて不合理なことに荷担している。

 じゃあ何でこんなことになってるのか?日本が経済優先の土建屋国家だから中央じゃ金バラまいて、地方じゃそれを引っ張ってこれる政治家が選挙で選ばれるからである。
 なにせ我が国で長く政権与党の座にある政党の本部が”砂防会館”なる砂防ダム作ってる業者側の持ちビルに入ってるってぐらいにあからさまな我が国である。恥ずかしくないのかねと常々思うけど恥ずかしくないような人達がこの国の政治を牛耳ってるんだもん。そりゃ国土全面コンクリで覆うまでは工事はなくならないってことだろうね。全部覆ったら次はその上に積むんだろうけどね。
 だから、必要ない施設を作るなとか不要な工事を止めろとかいっても聞きゃしないってのはわかる。だってこれだけ公共事業がやられてる限りそれで飯食ってけている人って多くて、多数決とって選挙したらその人達の利益になることしかやんないって。それにしても公共の不利益になることをするぐらいなら、いっそ札びら直接撒いておけと思うけどね。
 選挙とか多数決とかクソだよねってずっと思ってる。と同時に飯食えなくなる人がいるのに理想論でいいのかって矛盾も常々感じている。

 でも書く。無駄でもしつこくても何度でも書く。なぜなら昔っからそういう土建国家と闘ってくれた先輩達がいたから、ずいぶんマシな世の中にまだとどまっているんだと思いたいからである。椎名先生、野田先生、ニコル先生、獏先生、最近じゃTAKE先生とかがペンを剣にして闘ってきてくれてるから、まだオレは魚釣りができるんだと恩義を感じているので微力ながらも助太刀いたしたく候。
 私のブログのこの手の記事も誰かの目にとまって何かを感じてもらえたらと書いているし書いていく。

 たぶん経済優先の社会である限り、今のような無駄な公共事業は多少マシな方向に食い止めることぐらいが精一杯で全く止まるということはないだろう。
 でも2つぐらい、今後に希望がもてる状況が生じているように思う。
 1つは、日本の経済的発展が限界にきていることである。経済界は移民を受け入れてでも今の産業構造を維持しようと躍起になってるけど、諸外国の工業力が増していく中で、移民が来てくれるほどの経済的な状況を今後も維持できるとは思えない。いつもの持論だけど英国で起きたようなことが日本でも今後起こる。移民政策失敗した上に経済もコケる。そうなったらバラまこうにも金がないので経済優先もクソもなくなる。そうなれば混乱はあるだろうし悲劇もあるだろうけど、日本はまだ主食の米を生産できる能力が残ってるし、蛋白源も今や缶詰工場のあるインドネシアとかにサバやマイワシを輸出している漁業生産でけっこう行ける。足らない部分は生き残った工業力で稼いで買うぐらいの第一次産業主体の地産地消的な小さな経済にいやでもズルズルとなっていくと思う。経済的に今の構造が崩壊するというと心配かもだけど、飯さえ食えりゃあ贅沢はできんかもしれんけど幸せにはなれるので心配いらない。
 もう1つは、そのあたりに若い人がどうも気づきはじめているように思うことである。
 宣伝うっても車も家も売れないし、ろくでもない労働条件しかなかったら働こうともしない。欲望が薄くて羨ましいとともに心配だけど、搾取する体制側、資本家側の吹く笛に踊らされない賢さを持ち、さすがにクソジジイどもが負担を全部次世代に押しつけるようなメタメタなデタラメしかやらないので、そんなのに付き合う必要はないと気付いたんだろう。良いこっちゃ。経済メタクソになって移民からもそっぽ向かれたときに、好条件で泣いて頼まれたら働いてやってくれ。
 
 とまあ、罵詈雑言をまた新年から書いてしまったけど、なるべくならそういう書いてて胸くそ悪くなるようなことは書かずにいたいんだけど、現実にクソ高い壁のような防潮堤を目のあたりにしてしまうと、ひとくさり書かずにいられないのである。
 湾の奥の陸地を高い壁が覆うその様は、刑務所の中にいるかのごとき閉塞感で、見たら理屈じゃなくてその気持ち悪さを感じずにいられない。
 

 写真はどちらも気仙沼湾のとある防潮堤だけどその気持ち悪さが伝わるだろうか?こんなモンがなかったときには美しい三陸の海が見えたのである。
 控えめに言ってFUCK!である。
 なるべく早く腐食して崩壊するようにションベンかけておいた。さすがにチュドーンとはいかないのでせめてものゲリラ活動である。

2019年1月1日火曜日

新年あけましておめでとうございます



 今年もよろしくお願いいたします。

 昨年の目標である「釣りと猫のことだけを考えて生きる」は最後スピニングリールのことばっかり考えてたりしたけどおおむね達成できたと思う。

 しかしながら、春から夏にかけて復職の段取りを考えていたものの、思うようにいかずちょっと調子崩して断念。もう2年に渡って働いておらず、給料天引きの共済保険入ってたので、そこから生活費出てて、働かずとも働かずとも我が暮らし楽なり、なんだけど、今年劇的に回復して働けるようになる気があんまりしてこない。
 昨年冬に一念発起して始めたジョギングは猫のおかげで週2回ペースで続けることができているんだけど、最初に設定したコースから距離増やすこともできず、猫のいる橋まで行って帰ってくるのでそれなりにいっぱいいっぱいで、体力的にも健康的にも何かをすれば努力に見合った成果が出る歳でもなく、現状維持が良いところなのかなと感じている。亥年生まれだから今年48になるのかと思うとそんなもんかと納得もいく。
 自分の中ではとっくに「こりゃダメだ」って心が折れた状態っていうのが正直なところなんだけど、病院の先生やら職場で休職の手続きやら復職の後押しやらしてくれてる方々に申し訳ないような気がしてならないので、もう一回春に復職の方向でリハビリの手順組んでみて、それでダメなら夏頃仕事辞めようというのが、今年の1年の計だろうか。

 辞めても10年や20年は遊んで暮らせる蓄えはある。若い頃質的にはともかく量的にはよく働いたからね。蓄えが尽きたその後は年金生活できればいいし、年金ショボくなってそれだけじゃ暮らせない状況になるのは目に見えてるけど、そうなったらそうなったで、食い扶持ぐらいはアルバイトでもして稼ぐのだろう。貧乏苦にならないほうなので多分月10万もあれば面白おかしく笑って暮らせる。

 ちゃんと仕事勤めあげて、社会の一員としての義務を果たしてから隠居したかったけど、気力体力の限界で引退せざるを得ない状況ならしかたないと許してほしいものである。

 ちょっと早いけど、俺、ご隠居さんになります。
 飼い犬の生活から野良犬の生活になると、餌食えるかどうか不安だとしても、首輪で繋がれていなくて、なにしようが自由っていうのはちょっと心躍るぐらいに楽しみでもある。

 オレは仕事を辞めるぞ !

2018年12月31日月曜日

2018のベスト3(釣り編)


 釣りのこととネコのことだけ考えて生きると、一年の計はガンタンクな感じだったのがつい先日のことのように思い出されるけど、月日は百代の過客にして行き交う年もまた旅人なり、人もまた過去から来て未来に去るけど、過去は過ぎ去りもうなく、未来きたらずまだない。
 脳の言語野の変なスイッチ入ってしまって何を言いたかったのか分からなくなってしまったけど、要するに今年も仕事もせずに釣りのことばかり考えて、たまにネコと遊んで暮らしてて、アタイお天道さんに恥ずかしいっ!恥ずかしいけど釣りには結構行ったので楽しい一年だった。とブログには書いておこう。
 でもって年末恒例となりましたベスト3「釣り編」、はりきっていってみよう。

○釣り:一位「ヒラテテナガ」、二位「自作毛鉤一匹目のアユ」、三位「友釣りのオイカワ」
 一位いきなり無脊椎動物でスイマセン。魚じゃないってどうよ?な気もするけど、久しぶりに手が震えてハリ外せんかったぐらい嬉しかったからしょうがない。太くてたくましいハサミ脚に心ときめいちゃったのアタイ。
 二位は、自作の流し毛鉤仕掛けではたして釣れるのか?頭ではまず間違いなく釣れるはずと分かってたつもりだけど、実際釣れたときは感動した。まだ自分の中では仮想現実より現実そのものの方が価値がずいぶん高いと思わされる。釣ってしまえばそんなもん釣れるに決まってるし当たり前だと思うけどそれでも実際に一匹を手にするまでは、自分の中で確定しえなかった。流し毛鉤の釣りは慣れ親しんだ西洋式のフライの釣りともまた違った文法で、打線考えたり伝統的鮎毛鉤の模写に苦戦してみたりコレはコレでメチャクチャ楽しめて、オイカワ釣るのにも有効でなかなか良い技術を身につけた気がする。
 三位、友釣りでアユが釣れるよりある意味良い結果だった。体ぶつけて喧嘩するような魚なら”友釣り”成立するだろうという、これも考えたら当たり前のことだけど赤い婚姻色の雄が2匹に増えてあがってきたときに素直に驚いて嬉しかった。オイカワの追い星は伊達じゃないゼ。
 という感じで、大きくいえばアユ釣り関連で占めてて、鮎初挑戦で苦戦もしたけどその分初めての体験が多くてわななくような感動を何度も味わえたと思う。誘ってくれて鮎毛鉤釣りの聖地への遠征では至れり尽くせりの案内をいただいき正治さんには改めて感謝を。釣れないときには胃が痛かったと思いますが、あの程度の苦戦は屁でもネエです慣れっこですよ。

○残念だった釣り:一位「ちびソイ根に潜られる」、二位「落ちハゼ」、三位「コイのタモ入れ失敗」
 残念っていうほどの釣りはあんまりなかった気がする。と思ってたら最後の最後で東北で下手くそなことをしてしまった。またそのあたりは年明け顛末記に書きます。落ちハゼは今年は狙おうと密かに竿まで買ってあったのに出番なかったのが残念っていえ残念だったけど、なんで落ちハゼやれなかったかっていえばシーバス忙しかったからで、ワシ一人しかおらんから仕方ない。三位は「そういうこともあるさネ」って程度の話。

○ルアー:一位自作シンペン、二位ラパラJ9、三位フッコスペシャル
 一位は、昨年秋にボイル用に作ったのが、今年の秋にハマってくれていい仕事を何度もしてくれてたよりになった。水面直下引くので出方が派手で最高に気持ち良い。バシュッ!
 二位は、今更ながら大昔から釣具屋の棚に並び続けている実力の程を思い知った。れいによって飛距離はイマイチだけど、動き出しの良さとかキビキビっとした所作とかイカしてるぜ。あまり潜らないので水面直下に杭とか障害物が多い過ちポイント周辺で、地味目なルアーで反応得られなかったときにコイツで勝負決まるときがあって痺れた。
 三位は抜群の安定感。秘密の主力兵器。灯りの下では任せて安心。

○釣り具:一位「トゥルーテンパー727」、二位「水の女王」、三位「ゆるふわ玉浮子」
 一位、今はなきオリムピック社製のコイツのおかげで沼にハマってえらい目にあいました。いちおう「ました」と書けるぐらいに”スピニングリール熱”は治癒してるけど、ぶり返さないように気をつけていきたい。インスプールのリールなんて自分が使うとは思ってなかったけど縁とは不思議なモノである。リールなんて投げて巻けりゃ何とかなるって良く分かった。投げて巻くぐらいは40年前のリールでも、っていうか40年前のリールの方が余計なモノがついてなくてまともなんじゃないかと思うぐらいにしっかり作ってあるリールで、表面のハゲ具合とか割と使った形跡あったけどギアはすり減ったりしてなくて快調に回ったし、ベールスプリングもまだ持ちそうな感じだった。さすがにドラグパッドは劣化しててちょっと改造したけど40年前は充分な性能を発揮していただろうと見て取れる設計。70年代の、日本が工業力で経済発展した時代の道具なんだなぁという感じで感慨深かった。
 二位、魚の釣り方に洋の東西細かい違いはあれど良いものは良いってことで、東西融合させて遊べたのが実に面白かった。自分の予想とある意味全く違う釣れ方で、派手な伝統的フライパターンをということでオレンジの胴に白黒鹿の子の鴨の毛をあしらった「クイーンノブザウォータース」の毛鉤風ナマジ解釈版をなにげに選んで”バカ当たりか三振か”と打線に入れたけど、堅い仕事っぷりで実に頼りになる。ナマジ軍不動の4番。
 三位は、特許取って売り出そうかというぐらいに良くできた。たまたま穴の大きい木の球しか入手できなかったので、隙間埋めるのにシリコンゴムのパイプ使ったら、竹串でしっかり位置に止められるし、ラインにも傷がつきにくい仕上がり具合。少々の流れには負けない安定感のある浮子で大きくて見やすくて重さもある程度あって振り込みもしやすい。渓流釣りとかはミャク釣りがほとんどだと思うけど、これで餌流したら古くて新しい「玉浮子の渓流釣り」になりそうだとか応用も効きそう。

○PENN:一位:「4400ss」、二位「430ssg」、三位「706Z」
 一位、二位は主力機なのでいつもと一緒。706Zは残念ながら初陣飾れなかったけど、思ったより使いやすい。ギア比それ程大きくないのでスプールの直径を大きくとっているせいか飛距離も素直に伸びるように思う。コイツに似合う良い獲物をいつか釣りたいモノだ。

 ということで、今年も総じて良い釣りしたなと思うんだけど、逆に今年はダメだったなというような年ってしばらく経験してなくて、病めるときも健やかなるときも、釣りとともにあれば、とりあえずだいたい幸福である気がする。健やかじゃなくたって釣りは楽しめる。来年も良い釣りできるだろうと楽観的に思っている。

2018のベスト3(エンタメ編)


 今年は当初「活字の本が読めんっ!」という危機的状況だったけど、再読モノから始めてリハビリしていき何とかいい塩梅に復活して、今は活字もボチボチ楽しめている。
 マンガやらアニメも相変わらず面白いのが多かったし、今年はNetflix契約したのがきっかけでドキュメンタリー映像をたくさん観たのもなかなか楽しく時間がつぶせて良かったので今年はドキュメンタリー部門も新設。
 楽しく面白いのだけじゃなく、心の固くなったカサブタをがりがり引っかかれて破がされ血が流れるような作品もあってそれもまた良し。

○活字本:1位ジャック・ロンドン「火を熾す」、2位角幡唯介「漂流」、3位竹中由浩「アキ」
 1位は、「荒野の呼び声」が有名なジャック・ロンドンの、っていうかそれしか読んだことなかたった米国の作家の短編集。すごく良いから読むべしとお薦めされて、読んだらすごく良かったパターン。なんというかいろんな味わいの作品が収められてたんだけど、表題作を筆頭に乾いた筆致で感情表現少なめの硬質なキリッとしたかっこいい文章のやつがどうにもこうにも実に良い。訳者もいいんだと思う。
 2位、角幡先生本はピンチの時のためにとっておいた「雪男は向こうからやってきた」も良かったけど、本作もくそ面白かった。瞬間的に消費されるような、作ってる側も瞬間的にしか時間をかけてないような安デキの情報が氾濫していて、なおかつそんなのがもてはやされるご時世に、何でこの人はここまでしつこく丁寧に、文献や人にアタって真実に迫ろうとするかな?とあきれるやら感心するやら。結局真相にはたどり着けないんだけど、本自体の面白さはきっちり高いところにたどり着けている。沖縄のカツオ・マグロ漁業の歴史なんていうのも水産業界人としては興味深く楽しめた要素。
 3位のTAKE先生の小説は、先生新しい小説「フィッシングライター陽子」をご自身のサイトでしつこく宣伝しておられたので、小説としては前作にあたる「ユキ」は、正直まあまあかな、先生が全然売れないと卑下するほど内容は悪くないよぐらいの感想だったので、今作「アキ」は後回しにしていたんだけど、先生のリール本を教科書にしている生徒としては新作も含めて読まな義理が立たんな、と北へ向かう新幹線で読んでみたら、これがめっぽう面白いっていうか、「あんたはオレか?」っていうぐらいに、例えば外来魚を’’駆除’する番組の気持ち悪さとか、表現の自由に対する無粋な締め付けとか、過ちを犯した者をよってたかって吊し上げることの不気味さとかを小気味よく切って落としてくれてる感じで、胸がすきましたよ先生。あと「キンタの大冒険」懐かしすぎる。
 TAKE先生のリール本は出たら即読むことにしているけど、これからは小説も出たら即反射食いさせていただきます。
 ついでに再読モノで面白かったのベスト3は中島らも「今夜、すべてのバーで」、石橋宗吉「一本釣り渡世」、夢枕獏「鮎師」でいずれも人生最高の1冊の候補にあげるぐらいで面白いのが分かり切ってて読んだので、あたりまえだけど半端でなく面白かった。「今夜、すべてのバーで」と「鮎師」は当ブログでもすでに紹介済みなので省略して、「一本釣り渡世」なんだけど、戦前から戦後にかけての一本釣り漁船の漁法の開発・発展に大きく寄与した房総の伝説の漁師の半生とその漁法についての聞き語り。聞き取って解説も書いた記者の人が出版社からの「釣り人に興味を持ってもらえるような内容にしてほしい」という要望にお応えできていなくてすいません、と後書きで謝っているけど、なにを謝る必要がある。これを読んで興味がわかない、面白いと感じないような釣り人なら、それは釣り人が間違っている。
 確かに業としての一本釣りは産業として効率的に経済性高く釣るという側面があり、「釣り味」「釣趣」を楽しむ趣味の釣りとは異なる側面もあるけど、そんなもん、釣れれば配りきれないぐらい何でもかんでもクーラーに突っ込む下品な釣り人から、オールリリース水面の釣りのみのお上品なフライマンから、釣り人みんな違うその差の範囲内であり同じ釣り人である。カジキの曳縄で散らしバリで顔にハリをかけるのを良しとしなかった美学とか、自分の中にしっかりとした線引きがあって、周りが良いと言ってれば真似して下品な釣りでも何でもやるような節操のない輩とは次元の違うきちんとした釣り人だと見て取れる。
 大型船にガンガン灯り焚かれてせっかく集めたサバを持ってかれて煮え湯を飲まされてたのを、下品に船を大型化して光量合戦に持ち込むんじゃなくて、操船と灯の使い方で大型船が集めたサバを奪い取るなんていう逆襲の仕方とかも、創意工夫と矜持が見て取れて、誉められるような行儀の良い操業方法じゃないからこそ胸がすく。
 ある程度以上の経験や知識を持つ釣り人なら、この本の中から様々な技術的な着想を得ることができるだろう。例えばイシナギをかけてからのヤッタトッタの時に、根と魚の間に船を入れると魚は引っ張る逆に走るから根を切ることができるなんていうのは、この本を初めて読んだときに、渓流のルアーでJOSさんが目の前で43のイワナを釣った際、掛けるまで岸際の葦に隠れるような立ち位置だったのを、魚がデカいと見るや下流の瀬に下られないよう流心に入ってトウセンボするようににして上流に向かわせ続けて仕止めたのと一緒だなと、渓流のルアーと沖の根のイシナギ釣りとにあしらい方の技術的な共通点があるなんて「変われば変わるほどいよいよ同じ」なんだなと思わされたものである。新しい釣り道具売るための流行の技法なんてのを学ぶぐらいなら、この本から同じ潮など二度と流れない自然環境を相手に、腕で魚を釣っていくというのはどういうことかというのを学んだ方が良いとお薦めしておく。ちなみに名人本人が選ぶ一番の技術的な工夫は、あまたある釣りの仕掛けの工夫などではなく小型の漁船用のスパンカーを開発したことだとのこと。スパンカー今でも釣り人がお世話になっているのはご存じの通りで実に偉大な我らの先輩なんである。

○マンガ:一位「銀河の死なない子供たちへ」二位「堕天作戦」三位「月曜の友達」
 年の始め頃に岡本倫先生の「パラレルパラダイス」の新刊を読んで「やばいこんなに面白いと年末この作品を紹介する羽目になるぞ」と戦慄を覚えた。同作は奇才岡倫先生の才能がビュルビュルッとほとばしるファンタジー系冒険活劇のまごうことなき傑作なんだけど、分類するならどう考えても「エロマンガ」であり格調高い当ブログの品位を汚しかねずゆゆしき問題であった。
 でも心配は杞憂だった。今時のマンガは面白いのいっぱいある。ベストスリーに選んだほかにも「少女終末旅行」「南国トムソーヤ」「レイリ」「ハコヅメ」あたりは、正直順位つけたけど、甲乙つけがたくそれぞれに違った良さがあって面白かった。
 一位「銀河の死なない子供たちへ」は永遠の命を持つ者の悲哀というマンガに限らず表現物におけるある種の王道ネタを施川ユウキ先生が力一杯書ききった。結末の描き方とか、なんかきな臭い方向に右へならえな感じになってきてるからこそ重要になってきている「多様性」について、正しい答えなんてありゃしないと同時に幾つもあるんだよっていうことについて、今の時代だから描ける、描かなければならなかった大事なところをバチンとド真ん中外さず射抜いてくれていた。同じ主題では「ポーの一族」が長く心の中で絶対的王者として君臨していたけど、その王座を脅かす作品だ。これから幾度も読み返し心の中でもっと消化して行くことになるだろう。
 二位の「堕天作戦」は、あんまり話題になってないようで、ひょっとして自分の好みに合っているだけなのかも?とも疑っているけど、とにかくどうにも好きだ。高度な文明が滅びた後の遺伝子操作されたような魔人やら怪物やらが跋扈する世界での戦乱の物語って書くと、いままでSFで佃煮にするほど多く描かれてきたような物語だけど、これが独特の感性でシュシュッと上手に格好良く、かつギャグもいい案配で描かれていてなかなかにヤル感じなのである。本作にも不死者も出てきたりするんだけど、他にもSFで扱われるいろんな要素がてんこ盛りになった群像劇で、それぞれのキャラクターが魅力的で物語が複合的に絡み合って紡ぎ出す抜群の面白さでグイグイ引き込まれる。
 三位「月曜の友達」の阿部共実先生が天才なのはマンガ読みには周知の事実であり、いまさらワシごときが褒めんでもいいんだろうけど、さすがに今作を読むとまた褒めずにいられない。少年少女の心の機微をこんなにも詩情豊かにマンガで描きあげることができる才能を私は他に知らない。何度も書くけどこの人と石黒数正先生がマンガの未来を切り開く特別な才能だと断言する。

○アニメ:一位「B:The Beginning」、二位「3月のライオン第2シリーズ」、三位「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」
 「ゲゲゲの鬼太郎6期」もくそ面白いけどまだ最終回まで見ていないので外す。そのほかベスト3以外にも「シュタインズゲート0」「ハイスコアガール」「邪神ちゃんドロップキック」「うちのメイドがウザすぎる」「ダーリンインザフランキス」「デビルマン クライベイビー」「宇宙よりも遠い場所」あたりがお好みな作品だった。
 一位の「B」は、Netflixオリジナルで「デビルマン」の次に本作がきて、これはネット配信アニメがすごいことになるぞ、”アニオタ”向けのアニメの売り方が変わっていくぞという衝撃を受けたら、その後はやや小粒な作品ばかりになっているけど、それでもDVDやらの「円盤」が売れなくなってきても制作される深夜アニメとかの本数は減らず、有料ネット配信というのが変化をもたらしている状況になってきてはいるようだ。そういう「革新」の先陣を切った作品としての評価も加味して一位とした。内容は超能力ありの刑事モノで主人公の一人が渋いオッサンでなかなかいい。続編作られるような最終回の引きで次も待ち遠しい。
 二位「3月のライオン」は、もうNHKはアニメとドキュメンタリーだけ観とけばいいってぐらいに素晴らしいアニメ。
 努力すれば結果がでるなんていうご都合主義の通用しない「将棋」の世界の勝負を描く厳しい筆致で、いじめ問題を真っ向から描きまくっていて、正直観るのが苦痛なぐらいに胸にきた。程度の差はあるかもだけど生きていればいじめる側にもいじめられる側にもなったことがあるってのが普通で、そう思わないのなら、よっぽど幸運か鈍感かどっちかだと思うけど、そういう心の傷的な部分に容赦なく爪を立てられた気分。
 結局いじめてた側は反省の色なしで、先生も人の心の中までどうこうできるわけでなく無力感に苛まれるような描写で、実に現実にもありそうで嫌な気持ちになる。
 だからこそ、友達のためになにもしてやれなかったと流す涙や、あんな奴らに負けて学校に行けなくなるなんて嫌だと立ち向かう姿に心打たれて私も観ていて滂沱の涙を禁じ得なかった。
 よく釣りに行くあたりの川辺の風景が美しく描かれているのも高得点。
 三位の「青ブタ」は、いかにも深夜のライトノベル原作アニメという感じで「涼宮ハルヒの憂鬱」のようにSF要素のある学園モノで「化物語」のように次々と出てくるヒロインの抱える問題を解決していく。主人公は当然キョン君やアララギ君の正統な系譜に連なる”やれやれ系”の主人公で騒動に巻き込まれていく。という思いっきりベタな設定と展開だけど、これがなかなかどうして面白く仕上がってるんだから不思議なものである。視聴する前は全然期待してなかったけどとても楽しめた。恋愛要素とかはオジサン観てて恥ずかしくなっちゃう感じだったけど、それも含めて学園モノ独特の”青春感”がバッチリ出てて実に良くできた作品だった。素直に脱帽。

○ドキュメンタリ-:一位NHKスペシャル「アウラ 未知のイゾラド最後のひとり」二位BBC「デイビッド・アッテンボローの自然の神秘」三位BBC「氷点下で生きるということ」
 一位は、年末にこれ一本で受信料払う価値があると思わされた。NetflixでBBCのクソ面白いドキュメンタリーをいくつも観て、NHKもがんばってるのは認めるにしてもBBCはまだ先を行ってるなと思っていたけど、なかなかどうしてヤル時はヤルもんである。NHKスペシャルではロウニンアジが海鳥を食うシーンが衝撃の「ブループラネット」も良かったけど、あれはBBCとの共同製作でやっぱりBBCなのかと思ったけど、世界がグローバルスタンダード色に染められていき多様性を失いつつある中で、経済的・文化的侵略という悪いんだか良いんだかにわかには分かりかねる問題を象徴するような「北センチネル諸島の先住民による宣教師殺害事件」なんてのが起こったドンピシャの時期の放映は偶然以上の必然を感じる。彼らが彼らでいるためには異文化に飲み込まれないために外との接触を断たざるを得なかっただろうし、異文化からのひどい接触で煮え湯を飲まされてきた過去もあったんだろうことぐらいは、宣教師の側にも自身の信じる信仰に基づいて、彼らを幸せに導かねばならないという強い使命感があったのだろうことと共にニュースの見出し読んだだけでも分かる。いろんな意見があるんだろうけど双方にそうしなければならない背景があったことぐらいは理解したうえで論じてほしいものだ。
 NHKスペシャルではアマゾンのとある先住民族の最後の生き残りに注目して、現在先住民の保護施設で暮らす彼への聞き取りを中心に丁寧に関係者への取材を重ねている。何しろ永年彼を研究対象にしている言語学者がわかった単語が800ぐらいしかない、受験英語の基礎編かよってぐらいに特殊な言語らしく、一緒に発見されて既に亡くなっているもう一人以外には彼の言葉を正しく理解できる者はもういないので、彼の語る内容も単語の並びから類推するしかなく、番組でも断言するような表現は避けていた。だとしても、最後彼が通訳もいない中、誰に聞かせるともなく語り出した言葉に<子供><みんな><死> <矢><血><大きな音>なんてのが出てくれば、彼の部族になにが起こったのかなんてのは想像がつくというものである。
 アマゾンの密林の悲劇としては、日本人なら日系一世がとんでもない土地に入植させられてっていうのも知ってても良い。まあワシも垣根作品で知った程度だけど。でももっと数が多く普遍的だったのだろう悲劇は、その入植者よりさらに弱者だったかもしれない先住民に降りかかったもので、欧州からの入植者である農場主や鉱山主が、元々住んでた先住民
(しまった馬から落ちて落馬してる)を「平和に暮らしていると突如襲撃してくる野蛮人」として、私兵を雇って”駆除”していったなんていうのが、俯瞰してみれば「お前らが先に先住民の住んでた密林を焼き払ったんだろうが!」って盗人猛々しく思うんだけど、当事者にはそんな視点はなくて、実際に番組でも最後の二人が保護されたときにその地に入植していた鉱山主が当時を振り返って「コレで土地がオレのものになったと思った」とさも当然のように語っていて気分が悪かったけど、多分多かれ少なかれ直接的でないにしても、そういうひどいことをした上で便利な暮らしをしているだろう自分も五十歩百歩なんだろなと苦い気持ちになる。
 自分の悲しさを共有することさえできない最後の一人になったその悲しさを思うとき、やっぱり涙が止められなかった。死ぬのなんてあんまり怖くない。だって誰でも死ぬんだもん。でも本当にたった一人になってしまうことを想像するとオシッコちびりそうなぐらいに恐ろしいし想像するだにさみしくて悲しい。
 「語り」が町田康先生っていう弱者や虐げられた者、少数派の側の悲しみを語らせるならこの人だろうという納得の配役で、細かいところでも良くできた番組だった。自分の幸せや楽しさは、誰かの不幸や悲しさの礎の上にあることを知っておかなければと肝に銘じる。
 二位は以前にも取り上げたので、詳しくは書かないけど、デイビットアッテンボロー先生の老いても衰えない知的好奇心旺盛さに敬服すると共に、ダーウィンを産んだ英国の文化的・歴史的底力を感じさせるに充分な力作でかつ文句なしに面白かった。素晴らしい。
 三位は、Netflixオリジナルだと思って観ていたけど勘違いでBBC制作だった。アラスカでいろんな方法で自分たちの生活を自分で切り拓くような古き良き米国流開拓者魂を思わせる人々を追った作品で、それぞれの力一杯の”フルライフ”な奮闘ぶりにアタイあこがれちゃう。誰にも文句は言わせず好きなようにやるけど、失敗も危険も全部自分で責任を負うっていう生き方に、ワシも死ぬまでにはたどり着きたいものである。他人に文句ばっかり言って、そのくせ義務も責任も負おうとしないような好都合な頭の悪さの輩が目についてうざいご時世なので、そういう生き方が眩しく見える。
 Netflixオリジナルのものも米国の薬物汚染を追った「ドープ」とか危険生物72種シリーズとか面白く、危険生物は南米編、豪州編、アジア編と来たのでアフリカ編も楽しみに待っている。

 今年は、有料動画配信サービスのNetflixとDAZNを契約したんだけど、金払うだけの価値がある面白い作品や中継放送があってとても満足している。NHKを除くと企業様のご意向で番組作ってるテレビ局が、私にとってはアニメ以外は観るだけ時間の無駄程度の番組しか作れなくなってるので、金払って観る方式は多分良いんじゃないかと感じている。
 表現媒体やら配新方式やらは変わっていくんだろうけど、物語やらの表現物を創り出す情熱やらそれを楽しむ人の心やらは少なくとも千年前から変わってないわけで、これからもいろんな作品が間違いなく創られ続けるから、そこから良いのをめざとく見つけて楽しんでいけばいいんだと思っている。来年はどんなのと出会えるのか楽しみである。

2018年12月27日木曜日

安物のダイヤモンド


 706Zに端を発し、トゥルーテンパー727から感染発症したスピニングリール熱のおかげで、この秋から冬にかけての間ずいぶん楽しませてもらった気がする。
 とにかくスピニングリールが欲しい、触りたい、分解したい、使いたい、というやっかいな症状は落ち着いてきている。このまま年内いっぱいで峠を越して生還したいモノだ。
 インスプールのスピニングも面白そうだなぐらいの軽い気持ちで、歩を進めたら、思わぬ深い沼にはまった形だけど、おかげでスピニングリールについて再度学んで考える機会を得ることができた。
 興味深かったのは、自分が使ってきたスピニングリール達を改めて眺めてみたら、その場その場で流されてたまたま手にしたリール達だと思っていたけど、結構、そのリールを手にしたのは必然の出会いだったのかもしれないということ。
 ろくなドラグも搭載されていないけど安くて少年の味方だったダイワに始まり、流行のリアドラグも使いつつ、日本で作られていた晩年の頃の大森ダイヤモンドを選んでいるのも、当時費用対効果を考えれば貧乏学生には当然の選択だったように思う。
 海のルアーの流行に乗っかって、往時は名前書いておかないとシイラ船の竿立てのところで迷子になりそうなぐらいの標準機だったPENN5500ssでPENN初体験。
 その後、小型機種について大森キャリアーが使用不能になった後の後継機選びではウィスカーSSトーナメント600とスピンフィッシャー4300ss(+430ss)で迷ったけど僅差でスピンフィッシャー勝利。その後のおそらく今後も死ぬまで続くだろうスピンフィッシャー偏愛体制に繋がっていく。でも革命機SSトーナメントを選んでいても米国では兄弟機が00年代半ばまで売っていて、この2機種に絞られたのも当時種々悩んだんだろうけどこれまた必然だったんだろうなと思う。
 大型機種で丈夫なリョービメタロイヤルに一票入れているのも、ワシまんざらPENNを盲目的に信仰してるだけってわけでもなかったんだなという気がした。よい子のNAVIも買ってるし。
 でも、それ以降で次にPENN以外のスピニング買ったのが40年前のインスプールスピニングであるトゥルーテンパーだっていうのが、なんといっていいのか。ぶっちゃけ買いたくなるリールがまったく出てこなかったということだと思う。
 耐久性やら手入れのしやすさ部品の入手しやすさなんかを除いて、小型スピニングであれば、15年以上前に買ったワゴン売りのNAVI程度でも一般的な釣り人には4桁スピンフィッシャーよりは使いやすいし、丈夫さも実用上問題ないことぐらいは承知している。定価で3千円ぐらいから1万円台ぐらいの日本製の実用機を買って、モデルチェンジのサイクルにでもあわせて古いのは売っぱらって買い換えていけば、故障もまず出ないだろうし費用対効果も高くて賢い方法なのだろうと思う。道具的にはそれで問題なく快適に釣れるはずだ。
 それでもその快適さよりも、自分のような同じ道具を愛着持って使い続けることに執着する人間が、それを放棄して手を出したくなるようなリールなど出てこなかったということである。
 自分がかたくなにPENNにこだわっていて、凄く良い製品が既に出ているのに不便を強いられているのに気付いていないんじゃないかという恐れは心の端にあった。でも、40年前のインスプールのリールでも投げて巻くのに問題ない性能は既に備えていて、シーバス釣るのに必要なぐらいの機能なら問題なく果たしてくれることを知って、さらには今に繋がる90年代後半のシマノのそれなりの高級機も別に完璧でも何でもなくて、だったら今現時点の良くできたリールも所詮今流行ってるだけのモノでしかなく、その程度の微差を産むためにどれだけの試行錯誤や時間や熱量やその他諸々が費やされたのか、そこに敬意を払う必要は認めるにしても、別に流行を追っかけて慣れ親しんだ機種やその管理体制を捨てる程の利点なんてなくて、アタイ一生PENNについていくノ、と改めて思うのであった。

 思うんだけど、逆にインスプールの単純なややこしくないスピニングに触発されて、本当にスピニングリールに必要とされる機能って突き詰めれば何なのか?あるいは技術的に習熟して補うことによって、どこまで単純な機能のスピニングで釣りを楽しむことができるのかということには興味が出てきた。
 その疑問に一般的な解答を得ることはおそらく不可能だろう。個々人の技量や好み考え方によってスピニングリールに求めるモノは千差万別だろうから「完璧なスピニングリール」とかはあり得ない。
 ただ私個人の中ではそういう1台が”オレがそう思うんならそうなんだろう、オレん中ではな”的にあり得るのかもしれない。特に、とにかくぶっ壊れないことが優先になる大型スピニングじゃなくて、余裕を持って遊ぶ余地のある小型スピニングにおいては、別に第3世代と第4世代のスピンフィッシャーで困ってるわけじゃないけど、もっと自分の釣りに最適化したリールとか逆にもっと削れる機能を取っ払って単純化して技量で使いこなすようなリールとか、そういうのを探っていくのもまた楽しいんじゃないかと思う今日この頃。
 後者の単純化の方向では、多分インスプールでベールアームなしというのが当面の目指すところで、来年からスピンフィッシャー714Zを使いながらその辺意識してインスプールのリールについて習熟していこうと思っている。
 前者の自分の釣りに最適化したリールについては、今一方針が良く分からんかった。今使ってるリールで多少不具合あることもあるけど、そんなもんどってことなくて特段機能的にはこれといった具体的要望があるわけじゃないのに最適化っていってもな?というところだけど、根本的なところで自分がリールにナニを求めているかとつらつら考えていくと、酷い不具合が生じないのは前提として、楽しく面白く気分良く釣りができたら重畳じゃ、っていうのはやっぱりあると思う。
 じゃあナニが楽しく面白く気分良くなることかって考えたら、まずは魚が釣れることだけど、それは今のリールで自分の欲する程度なら充分できてるはず。そう考えると自分の天邪鬼で底意地の悪い性格からいって、人様の思いつかないことができたり、裏をかけたり、素人に理解不能で馬鹿にされるけど玄人衆が「そんな手があったか!」と舌を巻くようなことができれば、心の中でグフフと下卑た笑いを禁じ得ないだろう。
 ということで普通スピニングリールに求められるだろう性能や要素のなるべく逆を行くような天邪鬼なリールを目指せば良いんじゃなかろうか。
 極端にいえば、性能が悪くてすぐぶっ壊れて見た目が格好悪い安っぽいリールである。
 さすがに天邪鬼を自認する私でもそれをそのまま体現したリールで釣りを楽しめる自信はない。
 でも、今時の高級リール様の宣伝文句に踊る「高強度軽量な金属素材」「スムーズで遊びのない逆転防止」「滑らかな回転を生む沢山のベアリング」「精度が高く効率の良いギア」「何かわけわからん横文字の機構」「ご大層なデザイン」「溢れる高級感」あたりなら、あえて「逆に考えるんだ」っていう遊びはできるように思う。ンなもんなくても魚ぐらい釣れらぁ。
 というか、最初の3つに関してなら逆の方が良いんじゃないかと割と真面目に思って書いてきているのは、このブログの読者の皆様ご存じのとおり。

 例えば自分の好きな小型ルアー用スピニングで能力的に優れている3台を選ぶとすれば、4300ss、キャリアーNo.1、ウィスカーSSトーナメント600がベスト3になるだろう。こいつらみんな本体樹脂製でラチェット式逆転防止、ベアリングはラインローラーにも入ってなくて3個か2個と少なめである。
 今の主力機である430ssgは、油が切れたりするとたまに不調になる一方通行ベアリング方式の遊びのない逆転防止機構と錆びそうなラインローラーのベアリングが数少ない気に入らない点であるってぐらい(でも小型リールなら突然逆転しても大事には至らないし、ベアリング錆びたら交換すりゃ済むしなんなら樹脂製ブッシュの大きさあうの探してきて入れてもいいので気にするほどでもないし、理屈じゃないところで好きなので良いんである。)。
 樹脂製の本体とか塩水で使っても絶対錆びないっていうのは、金属では金でも使わない限り塩の腐食から完全に逃れるのは難しいので、そんな大げさな強度が必要されるってわけじゃない小型スピニングでは良い選択だと思っている。
 逆転防止機構については前回書いたとおりでラチェット式とかの方がどう考えても良い。ベアリングについても、なくて良いところに値が張って錆びる部品入れる必要性なんてない。断言するけどない。ローターの所に1個が必須で、後はハンドル軸に1個入れるか2個入れるか、それともブッシュとかで必要な耐久性を確保するかどうかお好きなようにという感じだと思う。

 その3つの要素以外も、ギアは耐久性と精度は良い方が良いんだろうけど、別に普通でいいって話で小型リールならそんなに重くならないし、巻き上げ効率も気にする程じゃないしで、普通でいいよ普通で。1シーズン持たずにギアの歯が飛ぶような粗悪品じゃなきゃいいって程度だと思う。
 何かわけの分からん作った側ですら日本語で必要性や客観的な優位性を説明できない機構なんて故障の原因が増えるだけだからいらんのです。
 デザインはウームという感じ。見た目は重要だけど、コレばっかりは好みもあるからどうともいえん。使ってるうちに最初嫌いでもだんだん惚れてく、なんてツンデレ的事例は良くあることだからどんなのが良いとは言い切れないけど、明らかに減点したくなるのは、なんか見たことあるあるような流行の型に似せたような見た目。
 高級感とか上質感とか、正直ケッて思ってる。あんまりピカピカしてると恥ずかしくって使えねぇって。
 ていう風に考えていくと、今時の高級リール様の逆を行くような天邪鬼リールは充分実現しそうというか、実在しただろう。
 たぶん、一般的な釣り人の感覚で今一番古くさく目に映るあたりの時代のリールがそれなんじゃなかろうか。
 多分今のスピニングリールの軽量金属製高級路線ってダイワのトーナメントEXやシマノのステラあたりからのハズだから、それから金属製が主流になる以前の樹脂製本体の行くところまで行ったあたりの”樹脂製スピニング爛熟期”の80年代終盤から90年代前半あたりに、腐りかけの果実のようなお汁タップリの美味しいスピニングがひっそり実っていたに違いない。

 ということで例によってネットオークションで色々物色して、結構いい加減にホイホイと、3台まとめて買えば送料も安くていいやと聞いたこともないような安パッチいスピニングを落札。一応大森とダイワなら安物でもそれほどアホなリールじゃないだろうと選ぶあたりは、アバンギャルドな無頼派を気取っても結構根元では小心者で保守的なナマジであった。なかなか完全にブランドイメージとかまで払拭してまっさらな気持ちで選ぶってのは難しい。
                   
 でもって1台目は、大森製作所のダイヤモンド「アクションM」という樹脂製の多分ワゴン売りされてたような安パッチい1台。結構ボロくてネジとかも錆びてる、中古で1000円の品。80年代終わり頃とかの製造だとおもうけど当時流行のロングスプールで四角いお尻の造形が、今見ると中途半端に古くさくてかつどこか大森らしい垢抜けない感じもあって今回の趣旨にぴったりで実に良い。
 大森製作所のリールは、日本で作られてた最後の頃のと会社潰れて釣り具量販店J屋グループに吸収された後の時代の「ロングマイコン」というワゴン売りの安リール以外の何物でもないどうにも評価もしようがない代物を購入していたけど、その間の時代、大森製作所最晩年には生産拠点を韓国に移した韓国大森製のリールが存在していたことは知っていたけど手にしたことはなかった。その頃のリールのようである。
 この頃の韓国大森のリールの評判は最悪といって良い。TAKE先生はじめ往年の大森ファンからは総スカンで酷評の嵐である。曰く「大手の真似に成り下がった」「大森の真面目さを捨てた単なる安物」「これは大森ファンの愛したダイヤモンドリールじゃない」等々。
 普通ならそんな酷評を目にしたら買わないんだろうけど、人がダメって言えば言うほど逆らいたくなるのが天邪鬼の困ったところで、地雷踏むの覚悟でいきなり2台も買ってみたところである。
 回転性能だの飛距離だのにこだわるような”うるさ方”が仰ってることなんて自分にとってはあてにならんことが多いし、腐っても大森製作所だし良いところ見つけて楽しめるだろう、ぐらいに考えた。
 さて、手元に来たのをまずは分解清掃だなとバラしていくと、まず本体蓋を留めているネジとかが錆びている時点で全体のデキを察して然るべきだったかも知れないけど、なかなかの安物ッぷりを発揮。
 ドラグは安物なりに苦労の跡が見て取れて味わい深いものが入っている。一番底に皿のような湾曲した金属ワッシャー2枚を向かい合わせて入れてあり、コレが普通ドラグノブに入っているバネの代わりに弾力を備えてて調整幅を稼いでいるんだろう。おそらくABUアンバサダーのハンドル軸に同じようなワッシャーが入っている所からの着想だと思う。おかげでドラグノブが単純な造りで済んでいる。ドラグパッドも1階建て方式だけどテフロンのドラグパッドが入っていてそれなりにドラグとして機能している。ただ、耳付きワッシャーがこれでもかというぐらいに錆びててテフロンと固着していたのはいただけない。写真のどれがテフロンのドラグパッドか分からないと思うけど、一番黒いのが錆がこびり付いたドラグパッドである。
 パカッと本体蓋を開けるとハンドル軸のギアの上には海水侵入したっぽい水玉模様が見て取れる。ハンドル軸で重要なギア側の軸受けはベアリングじゃなくて樹脂製のブッシュかなと思ったら、芯の部分に真鍮っぽい金属のリングが入ってたけどやや頼りないか?ギアは軸だけ堅い金属を鋳込んでた往年の大森の設計とは異なり、安いダイワ製とかと同じくハンドルから伸びる6角形の軸を挿入する方式。
 平行巻機構はさすがにロングスプールなのでクランク方式じゃ往復激しすぎちゃうので減速ギアのカム方式採用。逆転防止はローター軸のベアリング直上の歯に爪を掛ける往年の大森方式でこのリールの数少ない大森っぽいところ。
 ローター軸のギアはベアリングで受けているけど、ベアリングを穴に填めて上からネジ3個で押さえつけているというやっつけ具合。
 オイオイ大丈夫か?と心配になったというか、コリャダメだと思ったのが、本体側のハンドル軸を受けるのにベアリングは入ってるわけないにしても、ブッシュすら見当たらず樹脂製の本体でノーガード直受け。普通ベアリングがないと亜鉛鋳造(ダイキャスト)とかのギアの場合軸が削れていくらしく、だから往年の大森製作所は堅い金属を軸に鋳込んだ真面目な設計を採用してたって話だけど、さすがに本体樹脂の場合は本体削れるでしょ。耐久性とか大丈夫か?
 もちろん、ラインローラーにも樹脂製スリーブとか噛ませてなくて直受け。
 3台もスピニングリールが届いて楽しめるとウキウキだった心が、この時点でどんよりドヨドヨと曇ったのはご想像いただけるだろう。

 もう一台の大森製は、買う時点で多分表面のプリント変えただけの同型機だろうな、という感じだったダイヤモンド「タックルA SS」なので、同じのもう一台もあるのか・・・ハァ。と既に後悔先に立たずな感じになっているが、仕方ないのでバラしていく。ちなみに1500円と予算オーバーだけどまとめ買い送料分を言い訳に買った。新品で売られてたときの価格もそんなモンだろうけど割と美品なので目をつぶる。
 なぜか全くの同型ということではないようで、スプールが微妙に違っていて、替えスプールが手に入る算段すらご破算になりそうな感じ。よく見ると糸巻き量表示が違っててタックルAが2号150mに対しアクションMは2号80mとなっている。
 ローターと本体の大きさは一緒なので浅溝なのかなとスプール交換してみると、スプールの底の出っ張りの高さが違っているようでうまく高さがあわない。糸巻きの部分の幅自体はタックルAの方が若干狭いぐらいの微差で、ワッシャーとかで高さ調整してやれば替えスプールにするのはなんとかなるかもと若干の希望。

 どちらが先に作られたのか分からないけど、タックルAが後に作られたのだとしたら改良の跡が見て取れる。逆なら手抜きの跡であり少し悲しい。
 ドラグがテフロンのドラグパッド3枚の3階建て方式になっていて、ドラグは何の問題もないだろう。スプールの糸巻き部分の幅が若干狭くなって平行巻機構の上下動幅分キッチリ道糸が巻けるようになっているのもライントラブルの防止には効いてくれそう。ローターと本体はバラした結果多分一緒だったけど、スプールは明らかにこっちの方が良い。
 どうも他にも同じような型の「プロフィット」「POSCA」というのがあるようで、スペアスプール確保がてら大森でいう「SS」の大きさの見つけたら毒くわば皿までで入手してみるか。このあたりの大森スピニングについてはさすがにネットにも情報少なくて、何か知ってる人いたらタレコミ情報よろしくです。

 次に、ダイワの「スプリンターマックスST600」というのに取りかかる。
 コイツはどうにもならなかったら「スポーツラインST-600X」用にハンドルだけでも取れればいいやと1000円も出してゲット。
 フットの裏には「JAPAN」とだけあるけど、メイドインなのか企画設計なのかなんなんのか。昔愛用していた緑の救命胴衣に「国産」と表記されていて、そりゃどっかの国で作られたんは確かだろうけどさ、というトホホ感でウケを取る鉄板ネタだったのを懐かしく思い出したりした。
 このリールが、ダイワが生き残って釣り具界を牽引するまで成長した鋭さを彷彿とさせるモノで、なかなかに良い勉強させてもらいましたという感じ。
 同じようにワゴン売りで初心者やら普段釣りをしない客層に売っていただろう安物でも、生真面目な大森製作所が「スピニングリールにはきちんと作動するドラグが必要である」って考えてたんだろうってのが見て取れるのに対し、この頃のダイワは「安リール買う層はドラグなんて使わないでしょ」とばかりに、調整幅も滑らかさもクソもないワッシャー2枚を樹脂製スプールにハメ殺して、ある意味ダイワの安リールの伝統である”ドラグノブ=スプールを固定するためのツマミ”方式を樹脂製本体の時代になっても貫いているのである。平行巻機構もクランク式、ベアリングも1個でハンドル軸両側直接本体受けでブッシュすら噛ませてない。薄っすいワッシャーは多分ガタ調整かなにかで耐久性向上には役立ってないだろう。
 この消費者の求めるモノはなにかということに寄り添い、削れるモノは徹底的に削る姿勢が、弱肉強食の資本主義経済自由競争社会で生き残る強さかもしれないなと思わされた。資本主義って厳しいネ。
 と同時に、この手のリールを普段我々釣り人が使っているリールと単純比較するのは間違いだなとも気付かされた。多分新品でも千円台とかの箱にも入ってないようなリールで、夏休み海に行くから釣りでもするかと買ってみて2度と使わないとか、そういう客層が買う道具に、年間100日釣行とか当たり前の玄人衆が求めるような耐久性なんて求めても意味ないじゃん。だったらその分安くって、それなりにリールっぽい見た目なら上出来ってもんでしょ。
 今回の大森スピニング2台はそういう意味で、道具としてのデキとしては安ダイワより良かったけど、安リールとしての洗練度的には負けてるっていうのが、評価するとしたら一つの評価の仕方かもしれない。安ダイワはその辺エグいぐらいの領域にギリギリまで切り込んでる。多分今の安ダイワも今時の消費者はネットとかで要らん知識ばっか増やしてて耳年増だから、オモチャみたいなデキでは売れんと把握してるだろうから、エグいぐらいに良くできたモノを突っ込んできてるんだろうと想像に難くない。
 もし、韓国大森製スピニングの実力を知りたいなら、その時代の実用機であるタックルシルバーあたりを見てみないとなんとも言えないのかも知れない。
 ダイワやシマノが技術的にも力をつけて、リールとしてはどうなんだ?っていうような安リールも売りさばきながら大きくなっていった時代に、中小企業でしかなかった大森製作所が生き残りを賭けて真面目に経費削減のため生産拠点をまだ人件費も安かっただろう韓国に移して、らしくない安リールも作ったりして努力したけど、広告が今以上に効いた90年代初めとかにTVで番組持って宣伝して大量に売りさばけたダイワやシマノには勝てなかったっていうのは「大森が大森らしい真面目さを捨てたのが悪かった」って決めつけできるほど簡単な話じゃなかったんだと思う。正直真面目に良いものつくり続けてたって、宣伝文句にホイホイ踊らされる日本の釣り人を相手にしていたら遅かれ早かれ潰れてたと思う。かといって世界市場で勝ち抜くには、韓国やら台湾でもリールが造れるような時代にもなってきてたし、もう中小企業の市場戦略程度じゃどうにもならなくなっていくなかで、どっかに吸収されずに生き残れたとも思えない。ABUやらPENNでさえ世界的な企業統合の流れに飲まれて今やピュアフィッシング傘下の1ブランドである。死んだ子の年を数えても仕方あるまいて。タラは北の海だしレバは焼き肉屋である。
 ダイワ「スプリンターマックスST600」にはハラホロヒレハラという感じに正直毒気を抜かれた。タックルシルバー買おうとかいうやる気ももう正直なくなった。まあスピニングリールもそろそろお腹いっぱいだ。

 とはいえ、せっかく我が家に縁あってやってきたリール達。いじくって遊んで楽しんで可能なら使えるリールに改造してみたい。
 まずは、スプリンターマックスから行く。っていってもたいした技術があるわけじゃなし、ドラグをいじるぐらいが関の山である。
 とりあえずハメ殺しのドラグパッドを取り出さなければどうにもならないので、樹脂製スプールをカッターで削って、後刻填め直すときに抜け落ちにくいように対角線上に2カ所だけ削り残す。
 入っていたのは金属と滑りにくい赤い繊維のワッシャー2枚の構成で、ドラグとして機能していたのはむしろスプールの裏側の音出しの赤い樹脂製の爪で、クリックブレーキのフライリールのようなけたたましい逆転音を響かせつつバックラッシュが起こるような回転数上昇をドラグノブ緩めた場合には防いでいる。要するに滑らすか止めるかの2択しかないドラグである。
 この手のドラグの改良はスポーツラインSTで経験済みなので、余ってた中華製カーボンパッドを適当に切って、テフロン仕上げガラス繊維の自作バッドを乗っけて元からあった金属ワッシャーで押さえていっちょ上がり。ついでに抵抗が大きすぎる音出しも先を切って調整しておいた。
 6ポンドナイロン巻いてコイ釣って試したところ、調整幅が狭いのはいかんともしがたいけど、ちゃんとドラグとして機能するようにはなっていた。ただ切って調整した音だしの爪が最初は鳴ってたんだけどそのうち曲がって鳴らなくなってしまって、巻けてるんだかドラグ出てるんだかわからんようになって茂みに突っ込まれたりしたので、帰ってきてからペンチで摘まんで引き延ばして応急処置しておいた。曲がるのも計算して切るか、曲がりにくい素材を接着して補強すべきだったけどまあいいや。

 大森2台の方はとりあえずアクションMの方を使うことにして、アクションMの1階建てのドラグの調整幅はもうちょっとあれば良いのにな、とあれこれ試してみて、一番下にフェルトを敷いて調整幅を稼いで、耳付きの錆びた面にテフロン仕上げガラス繊維のパッドを敷いてやると大分改善した様に感じる。
 コイツはそこそこ”良いドラグ”になった気がするのでナイロン0.8号5LBというこれまで使ったこなかで最も細い道糸を巻いて、コイさんに引っ張り回してもらって試験したところ、まずまず良いドラグといって良い感じなんだけど、ちょっと滑り出しが引っかかり気味かなという感じだった。
 帰ってきて色々考えて、スプールが乗っている座面の赤い繊維製のワッシャーの滑りが悪いのが、直径は小さいけどテフロンとかの良く滑るドラグパッド使う際の低いドラグ値では余分な摩擦力を生じさせてドラグの挙動に効いてるのかもと、とりあえず例によってテフロン仕上げガラス繊維のワッシャーを敷いてみたら良くなったような感じがしたけど、いじってるうちにイマイチな感じになって安定しないなと思ったら、ガラス繊維の縦横に編んだ繊維がほつれたようになって切れてしまっている。
 714Zもスプールの高さを下げるため同じ位置に入れていて部屋での試験段階では問題なかったけど、ドラグパッドみたいな面積大きいのはほつれにくくて大丈夫そうでも、幅の狭いワッシャーとかは強度的に不安になってきたので「モノタロウ」で近いサイズのテフロンワッシャーの薄いのを買って穴の大きさ調整して交換しておいた。
 アクションMにも同様に座面には元のワッシャーの上に薄テフロンワッシャーを重ねておいた。良くなった気がする。
 ドラグも良くなったし、ギアや逆転防止などの機構自体は単純で故障しにくそうだし、ロングスプールで直径も大きいのでライントラブルも少なそう。回転バランスとかも問題ないし、樹脂製の小さいリールなので軽さも充分。防水なんて樹脂製なので金属部品だけグリスシーリングでいける。なかなか使いやすそうなリールなんだけど、いかんせん樹脂ボディーで直接ハンドル軸のギアを受けてるのは削れそうだし、ラインローラーも直受けなんだよな、耐久性はどうにも期待できないなと惜しがっていたら。またも頭に浮かぶお決まりの台詞。

「逆に考えるんだ」

 削れちゃってもいいんだと考えるんだ。
 ワシ別に機械屋でも何でもないので金属加工するような技術を持ってないので、リールのギアやらなにやらを直すような手段を持っていない。
 でも、樹脂ならハンドドリルで削れるし、接着剤も各種あるので、ある程度の単純な加工はできる。やったことないけど多分できる。削れるような強度なら削ってサイズの合うブッシュを探してくるなりブッシュ自体を近い大きさのから削り出すなりして加工してはめ込んで固定するとかできるんじゃないだろうか?ラインローラーは金属で受けてるけどライン噛むぐらい隙間できたらこれも薄いシートか何か突っ込むとか工夫はできるだろうって気がする。
 と思うと、この安っぽい紛れもない”ごみスピ”を使うのが楽しみになってきた。
 まああんまり無茶はさせる気はないけど、いざとなったらスズキでもコイでもあがる範囲の”細糸”でセイゴ釣って遊ぶのに使って、不具合出たらその都度工夫して直していき、直す度に強度が上がって良いリールに仕上がっていくなんていうのは面白いかも知れない。
 なにも遊びの釣りで、ガッチガチの高性能な最新鋭機やら人がうらやむような歴史的名機を使わなきゃならないって決まりなどない。ルアーでもB級ルアーの楽しみがあるように、リールでもちょうど時計の世界でやっすいデジタルの”チープカシオ”なんてのにもけっこう人気あったりするように、ちょっとダメ系の二流の安物を楽しむという遊び方があっても良いし、まあ実際にそういう楽しみ方をしている御仁がいることもネットで知って影響を受けまくってるわけだけど、釣りの場合遊びが自分だけで完結するわけじゃなくて魚も巻き込むので、あんまり程度の低い道具だと道糸切れたりして魚大迷惑だったりするのでどうかとも思ってたけど、この程度のデキの道具なら充分釣りになりそうでかつ不具合にも対処する方針が立ったので、実際に使い始めれば想定外の難問とか出てくるだろうけど、それも含めて面白がってしまっても良いんじゃないかという気がしている。ダメでゴミ箱にぶち込むしかなくなったとしても別にたいしたこっちゃない。


 ということで、スピニングリールについて座学はこの辺でいいやという気がしてきた、後は実際に釣り場に持ち出して、使って釣って行く中で失敗して試行錯誤して考えて学んでいく実践に移っていきたい。釣り道具だもん魚釣ってナンボよ。
 来年は430ssgを使う場面では714Zを使ってインスプール修行を引き続き進めてクンフー積んで、タックルMでセイゴ釣って遊んで学ぶというのをやってみたい。

 いくつかまだ買っただけで放置しているリールもあるけど、また気が向いたときにでもいじることにして、ひとまずスピニングリールネタは終幕。お付き合いのほど感謝。