2023年8月26日土曜日

苦労をともに

  現実に絵描いたり、小説書いたりする人工知能(AI)が出てくる時代になって、人工知能は人の相棒たり得るか、もっと端的な例ならAI搭載形のアンドロイドを人は愛せるか?とかいう題材をあつかったマンガとか増えたように思うけど、そんなもんは古今東西あまたあるSF作品とかで”可能”と答は出ているように思う。「ナイトライダ-」のナイト2000(キット)とか「コブラ」のアーマロイドレディとか、「時間停止勇者」の岩吉・・・はちょっと違うか。

 根本的に人が他者を認め、愛するという行為において、他者の本質が機械仕掛けだろうと何だろうと結局のところあんま関係なくて、自分がどうその他者を認識しとらえるかの方にこそ根源的な理由というか原因があると思う、と書くとちょっと飛躍と皮肉が過ぎるだろうか?

 ワシャ釣り具は”相棒”だとモロに感じている。物言わぬ道具に過ぎないけど、それでも頼りにして特別な絆を感じたりもする。要するに自分と共に何かを為す、そのために自分が何らかの働きかけをして使うと、相応の機能を発揮して仕事をこなしてくれる。そういう入力と出力的なものが伴う点では人間相手と一緒と言えば一緒、自分と他者との関係という大枠では変わらんがなと雑に考えている。

 人間は、太古に生まれた生命から脈々と引き継がれた遺伝的な情報と、生まれて育てられ学んだ文化や知識的な情報を元に、何らかの働きかけに対して、その情報に拠って答を出しあるいは反射的にその時々の反応を返す。物言わぬ道具であっても過去から改良を加えられつつ作られ調整されてきた、様々な”情報”で構成されていると言える存在であり、その情報に拠ってこちらの働きかけに対して然るべき機能を果たすところは、蓄積された情報が対応を決めるという点で同様である。といえばもう少し丁寧な説明になっているだろうか?ちょっと哲学的というか屁理屈じみているかもしれないがご容赦願いたい。

 投げて巻くだけの簡単な機能しか持たないリールでさえ”相棒”だと感じるのに、思いっきり人間くさくなってきたAIが人間の相棒たり得ないわけがない。”愛”についても、人はピグマリオンコンプレックスなんて言葉があるぐらいで人形に恋することさえできる、いわんや人型で受け答えができるアンドロイドおや、というところだろう(”いわんや~おや”の構文なんて使う機会滅多にないけど使い方これであってるか?)。

 でもって、今年の春のシーバスシーズンを相棒として共に闘った丸ミッチェル「304」マニュアルピックアップ版と大森製コンパック「カプリⅡ」を、遅くなったけど、304は来期も使うつもりで分解フルメンテ。カプリⅡは蔵で眠ってもらうべく内部浸水させてはいないので分解は無しで表面塗装が腐蝕しないようにグリス塗ってドラグノブを借りていたオートベールNo.2に返しておく。

 この春のシーバスは苦労した。なにせ最大が40あるかないかでセイゴしか釣れんかった。304はコレからも使うのでまた機会はあるだろうけど、カプリⅡはボロさ加減からいってこれ以上使うのは難しいので最後に良い魚釣って”釣り具”として生まれた本懐をとげさせてあげたかったけど、不甲斐ない使い手でセイゴしか釣らせられずに申し訳ない限りである。でも2台とも苦しい釣りを共にしただけに、愛着も湧いたし、何というか戦友感がそこはかとなく漂ってきている。304は今後もしっかり働いてもらう予定だけど、カプリⅡは売れるような個体じゃないし蔵に眠ってもらってたまにクルクル回して、ワシが死んだら中古釣具屋にでも流れていくんだろうけど、釣り場に出ることはおそらくもうないだろう。静かに余生を送らせてやろう。

 でもって、304なんだけどワシ雨が降ると喜んで釣りに行くタイプのシーバスマンなんだけど、304は雨の日の釣りにはあんまり向いてない。あきらかにローターの下部の本体との隙間から水が入る。しかたないのでその辺りにもミッチリ青グリスぶち込んだけど、水と混じって白く濁ったグリスが雨の中釣ってるとドロドロッと流れ出てきたりして塩梅悪かった。来シーズンから雨上がりとか専用にしてザンザカ降ってる最中は避けて使おう。

 今年は思いっきり雨の中使ってたので浸水しまくりで、途中で一回グリス入れ換えたけど、丸ミッチェルの良いところは極めて単純で整備性がすごぶる良いところで、全バラしでグリス入れ換えてもたいした手間じゃない。

 ということでパカッと開けると、元々青かったグリスが真鍮の部品から出た緑青で緑に変色したうえに水が混じって白濁している。まるいベベルギアの外側に白濁していないグリスが残っているのがお分かりいただけるだろうか?

 ギア抜いたところに入ってる逆転防止関連も真ん中写真のようにグリスに埋まってて発掘してやる必要がある。これぐらいガッチリとグリスシーリングしてあると、グリスに水が混じったので長期的にはどうか分からんけど、わりと鉄系の部品も多い丸ミッチェルだけど、ほぼ錆びは出ていない。ほぼと書いたのは実はハンドルノブのネジが鉄にメッキなんだけど、そこはさすがにグリスが落ちて注油はそれなりにしていたけど頭のあたりが若干錆び始めていた。ということで、内部に錆は認められなかった。というわけで防水性は良くないけど、整備性の良さを生かしてグリスまめに交換してやれば腐蝕対策は充分できるように感じた。実用機として問題無い程度には塩水での使用に耐えると評価できるんじゃなかろうか。

 分解するとこんな感じだけど、部品数30個もない。

 ベールワイヤーやら反転機構を取っ払ったマニュアルピックアップ方式にしてあるし、あと取っ払って省略できそうな部分って、逆転防止ぐらいか?って感じで、逆転防止は指でスプール止めても何とかなるけど、それ以上はもう省くところがないぐらいに単純な設計である。待てよ、ドラグも省略してブレーキはハンドルで調整するという”ダイレクトリール”にしてしまうという手がまだあるか?さすがにそこまでやると手先の技術に頼る部分が大きくなりすぎてちょっと扱いきれる自信がなくなってくる。

 っていうぐらいに原始的で単純で、でも魚釣るのに不快な問題としては、雨の日にグリスが水と混じって漏れ出てくるぐらいで、あんまり生じず、使ってて非常に気持ちの良い、使い心地の良好なリールである。なんだろベベルギアの巻き心地ってザラついてるけど力強くて独特の良さがあるように思う。ひとシーズン使ってみてかなり気に入った。

 ということで、来春も頑張ってもらうためにグリスグッチャリで仕上げておく。

 中身も青グリスグッチャリだけど、外側もグリスチョイチョイとつけてティッシュで塗り伸ばして腐食防止策としてるんだけど、塗ってると指もグリスでヌラヌラになってくるので、最後の方は手でヌリヌリとリールにグリスを塗ったくってやった。カプリⅡにも感謝を込めて塗ったくってやる。ドラグノブ落っことしてすまんかったな。

 2台とも、春シーズンお努めご苦労さんでした。苦戦続きだったけど良い相棒と一緒だったから頑張れたよ。ありがとう。

2 件のコメント:

  1. ベイルレスの個体はプラナマティック抜いてますね。
    スプールが314系に入れ替わってるなら塩害は楽に防げますよ。
    ベイルレス使いこなせない体質だから手は出してませんが、
    整備保守ってなると最強かもしれませんね

    304系で塩害がヤバいのはアルミをカシメて作ってあるドラグハメ殺しスプールで毎回糸も抜いて塩抜きしなきゃなりませんので
    たまにしか海で出せないです。
    ドラグの効き目も自分好みに持っていけませんし

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    1.  おはようございます
       プラナマチック面白い機構ですが、実釣用としては無しの方が単純で好みです。
       スプール、ドラグハメ殺しは使い勝手悪そうに思って314から持って来ましたが正解ですね。
       なんにせよ自分の使ってるスピニングでは一番単純な個体で整備が楽なのは良いです。

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