2017年11月25日土曜日

眠れる獅子はここぞというとき牙を立てる


 いきなりのホホジロ様画像は、ウィキペディアから引っ張ってきております。商業利用とか除いて自由に使って良い画像とかも沢山あってウィキペディアって、いい加減な情報載ってるとか貶したりもしてるけど、ちょっとした調べ物のとっかかりやら暇つぶしには便利この上ないことも認めざるを得ず、ネット上では寄付を募るメールとかがうざいとか書かれてしまってるけど、催促のメールが来るとやっぱりうざいと思いつつも少額ながら寄付させていただいております。
 寄付と無償で情報書き込む名も無き筆者たちで作り上げて、タダで提供している情報源として、限界もあるけど良くやっていると素直に評価したい。

 で、なんでホホジロザメかっていうと、アベマTVのナショジオアワーでホホジロザメを捕獲して通信機能付きのタグ付けて放流調査するという「シャークマン」シリーズの第2弾を観たので、今頭の中にホホジロザメ様が泳いでいるのである。
 今回は繁殖地でのトン超えの大型個体を狙った第1弾と異なり、100キロあるかないかの若魚がやってくる浅い海でホホジロザメの若い個体の成長などの謎を探るということで、米国加州はマリブビーチのサーフィンやらスタンドアップパドルを楽しむ人々の下を泳いでいるホホジロザメを飛行機と連携して空からも探して狙っていた。
 大型個体が海産哺乳類食でアザラシだのと間違えて人を襲うことはあっても、小型個体は魚食性なのでほとんど人を襲う事故はなく、調査が成立するぐらいに個体数は多いのにマリブビーチでの過去の事故例はたったの3件だそうである。加えて初めて知ったのだが、ホホジロザメの小型個体はあのホホジロザメ特有の3角形の歯じゃなくて、アオザメやヨシキリザメのような他の魚食性のサメと同じように尖った形の歯を持っているそうだ。歯の形が餌に合うようになっているっていうのは知ってしまえば当たり前といえば当たり前だけど、実に上手くできているモノだと感心する。
 でもって、前回トンオーバーの怪物には竿とリールをあきらめていた釣り人チームだけど、今回は昇降装置付きの本船の台座に乗せる手前までは竿とリールでやったとったしてた。やっぱり釣り師としては竿とリールでやりたいよね。リールはアキュレートかな?チョロッと投げたりもしてた。
 でもってそのやりとりを観た感想としては、このぐらいの型なら竿とリールで余裕でやれるという感じ。2匹釣ってて2メーターぐらいのと2.5メーターぐらいのだけど、どちらも結局用意していたジンバルとハーネス使わず。まあ向こうの釣り人は力持ちなんだろうけど、それでも同じ人間だしやってやれやンことはないだろうという気になった。
 ご近所で3時間かそこらの釣りでヘロヘロしている状態で何をゆうとるんじゃという気もするけど、健康回復したら釣ったるねン、という思いは胸に抱き続けていくのである。

 毎年、八重山やらの方面からはサメ駆除で400キロのイタチザメとか報道されてて心引かれるけど、餌ずらずらと沢山ぶら下げる延縄では釣れても竿いっちょではなかなか厳しいらしい。
 しかしながら、割と確度の高い情報もいただいていて、風雲児さんが秋に渡船で渡る磯にはドタブカとかそのあたりのメジロザメ系だろうとのことだけど、2メートルオーバーのサメが、目視できる位置に居着いて、ハリがかりした釣り師の獲物をかっさらって行くそうである。風雲児さんの見立てでは食わせるところまでは難しくなさそうとのことで、かけてからどうしようか、磯だし根ズレとかもあるけど、そもそも船で追っかけてもらえないなかでそのサイズのサメを止めて寄せてこれるのか?竿とリールじゃなくてロープで綱引きか?とか悩んでいたが、映像見る限り竿とリールでいけそうに思う。
 我が家にある道具ならスピンフィッシャー9500SSにPE6号ぐらいたらふく巻いたロウニンアジキャスティングタックルか、餌を浮子つけて流す必要があるけどセネターに80LBナイロンこれまたたらふく巻いたスタンダップトローリングタックルで何とかなるんじゃなかろうか。磯の上を根ズレかわすのに移動しながらとか考えるとジンバルだけでハーネス無しが機動的で良いだろう。
 とりあえず腹は決まった気がする。あとは健康と筋トレだな。
 もう一つ観てて思ったのは、昇降機が故障して台座を海中に下ろせなくなり2メートルくらいの個体を4,5人で引っ張っていってドボンと海に帰したんだけど、思ったより水から上げるとおとなしい。前回トン超えのデカブツはシッポ振ったりしたら吹っ飛ばされて大怪我しそうな迫力があったけど、2メートルない個体なら歯のある顔だけ気をつければシッポ持って引っ張り上げることは不可能ではないように思う。まあ、ワイヤーリーダを切断してリリースが安全だけど、種同定するために各部位とか撮影するのに、リリースまで水中で処理するにしてもシッポ固定して拘束というのは気をつけてやればやれるかも知れない。

 でもって、前回のデカブツ仕留めた映像で、ハリ先が内側に向いたネムリ針が口の端の良いところに掛かるという効用を感じて以降、「ネムリ針って実際どうなんだろう?」からはじまって、そもそも針先は内側向いているべきかそうじゃないのかあたりについて、色々考えてだんだん煮詰まってきたので、今回その辺をちょっとまとめて書いておきたい。
 サメだのマグロだのデカブツを狙うときに限らず、ハリはどういう形であるべきかという問題について、釣り人はハリ先の鋭さやハリの曲がらない強さぐらいしか気にしていないようにも思うので、もっと魚との接点となる重要な道具であるハリについてよく考えておいて罰は当たらないと思うので、そのきっかけにでもしていただければ幸い。あなたの使ってるハリが適切かどうか、今一度考えてみて損はないとお薦めするところ。

 ネムリ針ってそもそもなんぞや?というと、一般的には極端にハリ先がキュッと内側に曲げてあって、ハリ先につながる部位も軸に向かって傾斜している形のハリ。
 右の写真は左から、海のフライ用のストレートなハリ先を持った「800S」、真ん中がいろんなハリの原型というかある種標準的な形ともいえそうな「伊勢尼(カン付)」でハリ先はやや内側に曲がる程度。
 そして右がネムリ針の代表格である「ムツバリ」である。ムツバリはかなり内側にハリ先が向いていることが見て取れるだろう。

 シャークマン達がホホジロザメを狙うのに、ネムリ針を使ったのは、ネムリ針だとハリが口の横の端にかかって、放流するときにハリが外しやすく、かつハリのちもとが口の外に出るために金属とはいえハリスが鋭い歯にさらされず切られないという利点があって実に理にかなったハリの形状の選択だと感心した。

 ネムリ針の典型例であるムツバリもハリがムツに飲み込まれてかかって、ハリスがムツの鋭い歯に擦れて切れることを避けるためというのが第一の目的で、口の端以外にはかかりにくいネムリバリとなっているのだと思う。
 さらに、ネムリバリは形状的にかかったら外れにくいということがあり、もっと言うと外れにくいところにかかる、という利点もあって深い海からムツを釣り上げてくるときにはハリ先がしっかりネムったムツバリを使うようになったのだろう。

 最近は、マグロ釣りの世界でも、はたまたマグロ漁の世界でも、英語圏でサークルフックと呼ぶネムリバリの使用が増えている。
 この頃流行のキハダ釣りにおいて、ハリスが歯で切られるのを、口の端にハリ掛かりしてちもとが口から出ることで防ぐことが出来るという利点に注目して、オーナーの「ムツサークルフック」なんてのが使われることもあるようだ。
 遠洋まぐろはえ縄漁業の世界では、亀、サメ、鳥の混獲っていうのは、色々うるさい環境保護団体に漁業が攻撃され国際的に批判を浴びる原因となる。その中で海亀の混獲について劇的に改善効果をもたらすのが「サークルフック」であるらしい。
 なにしろ亀の口のような堅いつるつる平面の多い口腔内にはハリ先が内向きのサークルフックはかかりにくい。かかったとしても口の端の方で、飲み込まれてかかったときに比べれば海亀の生残率も格段に良いし、外す手間も少なくて済む。
 「でも、マグロもかかりにくいんでしょ?」と当然ながら疑うけど、メバチの漁場でのデータでは釣獲率は統計上有意に減りはしなかったという報告だった気がする。マグロ釣れる数が減らなくて、海亀を海に帰す手間が楽になるのなら漁師の側から見ても不利益はなく推進するべきだということで、遠洋マグロはえ縄漁業では様々な海域、国においてサークルフックの使用は推奨されルール化されつつある。
 サークルフックのようなハリ先が内側向いた、いかにもスッポ抜けそうなハリではマグロがかかる数が減るだろうと思うのだが、マグロ釣る延縄のハリスはサメも狙うならワイヤーかも知れないけど基本目の良いマグロにはフロロカーボンのはずで、かかったマグロにハリを飲まれてハリスが切れて逃げられるということとの差し引きと、サークルフックでは「口の横の良い位置」にかかることが多くかかれば外れにくいということもあって、総体的にはいかにもハリがかりが良さそうな真っ直ぐなハリ先のハリを使った場合と結局釣り上げられる魚の数に差が出ないのではないだろうかと想像している。

 言葉だけでは今一想像しにくいと思うので、実際マグロ釣りのために私が用意した、ハリ先がネムッていない右の「カン付きムロアジ」と左側のよく似た形状でハリ先が内側にキュッと曲げられたネムリバリ(サークルフック)で比較してみたい。
 

 まずは私の左手を魚の頭部と見立てて欲しい。
 親指は下顎、人差し指が上顎ということで一つよろしく。
 ハリ先真っ直ぐの「カン付きムロアジ」の場合、ハリのチモトまで口の中に入っている状態で既にハリ先が上顎に接しており、かつチモトが引かれると赤の矢印で示した方向に力が加わるので、ハリ先は上顎が固いかどうかとかを無視すると、その場で突き刺さる方向に力がかかっていきハリがかりする。この場合、ハリスは口の端にある歯と擦れる位置になる。また、かかった上顎が硬い骨とかでハリがかりしにくかった場合はハリ先だけ刺さっている状態ではハリのフトコロが開いてしまったりしてとても外れやすい。 

 次に、ハリ先が内側向いたネムリバリ(サークルフック)の場合だが、ハリのチモトまで口の中に入っている状態でも、ハリ先は矢印で示したように口の内側を向いていて、口の中に引っかかることはなくハリがかりしない。口の中が平坦であるという仮定ではあるけど概ね実際に即しているはずである。

 口の中にかからなかったら困るじゃないか?とご心配の皆様、ご安心下さい。右の図に示したように、ハリが口の端にきてチモトが口から出て、内側向いたネムッたハリ先が顎とかに向いたときにハリが刺さり始めます。
 要するに、チモトが口から出た時点で角度が変わってハリ先が刺さる方向を向く。
 なので、ハリスが口の外に出た状態でハリがかりして、歯でハリス切られる恐れが減る。

 というのが、一般的に言われているネムリバリの利点だけど、実はネムリバリだと2つの理由から、かかった後に外れにくいというのも利点なんだろうなと思っている。1つは口の中にかからず口の端の良いところにかかりやすいので、骨の厚く固いところに浅くかかってしまうことがなく、口の端の方の薄い骨とか軟骨とかを貫通してガッチリかかること。もっというなら餌食って引っ張っていった状態からアワせて口の端にハリがかかるとすれば、右の写真で×印のあたりの魚の上下の顎の蝶番?の軟骨やらでできた関節にガッチリかかるという理想のハリがかりになりやすい。ここにかけてしまえばバレにくいのは釣り人なら経験的に知っていると思う。
 もう1つには、ハリ先が内向いている方がアワセの力が加わる方向とハリ先の刺さる方向が揃っているので、力がかかりやすくハリが深くかかりやすく外れにくくなるということも言えるのではないだろうか。今一何をいってるか分からない人は、真っ直ぐなハリ先のハリをハリスに結んで指にかけて引っ張ってみると理解できると思う。右の写真上がそのイメージ。真っ直ぐなハリ先はハリスを引っ張る方向より外側に切れ込むように力がかかって刺さっていくはずである。引っ張った方向に真っ直ぐハリ先を突き刺したかったら、ハリ先かハリ先からフトコロにかけての部分を内側に曲げてやる必要がある。
 そういえば、真っ直ぐな軸とハリ先をもったワームフックを見ながらナマジ少年が「コレでは貫通力が今一や」と思って、自分なりにラインが引っ張られる方向にハリ先が向くようにデザイン書いたらマスタッドにそういう形のが既にあって、後に同じような形状の「スゴイフック」が出てきてから、セルフウィードレス用のワームフックといえば写真下のこの形というようにスタンダードになっていったのを思い起こす。

 ということで、ハリが良い位置にかかって抜けにくくなるしハリスは歯で切られない。良いとこばかりじゃないか、さあすべてのハリをハリ先ネムらせてしまおう。とはならないのが難しいところ。この世にいいとこ取りばかりの欠点の無いモノなど存在しないわけで、ネムリバリにも程度によっては致命的ともなりかねない欠点がある。
 まあ想像に難くないと思うけどスッポ抜けるのである。右のイメージ見てもらえば分かるけど、ハリ先が内側向いていれば口の中だろうが外だろうが魚体にハリ先が触れる可能性は小さくなってどこにもハリ先がたたないうちに口から引っこ抜かれてしまうなんてことが生じ得る。

 ちょっと乱暴に一般化すれば、ネムリがきつければかかりにくくかかってからは外れにくい。ハリ先が真っ直ぐ(実際には外向き)でネムリが浅い場合その逆でかかりやすいけど外れやすい。といえるのではないだろうか。

 なので、いろんな釣りバリが対象魚や釣り方に合わせて、良い塩梅のネムリ方というのを模索してきたんだと思う。最初のハリの例示で出した伊勢尼型なんてのは、ネムリすぎず真っ直ぐ過ぎず実に良い塩梅をとらえた機能美あふれたネムリ方になっているように感じる。ムツバリの思い切ったネムリッぷりも目的が明確で潔い感じだ。

 ひるがえって、ルアーのフックを見てみるとどうだろうか。昔はトリプルフックでもマスタッドのとか伊勢尼的なゆるいネムリが入っているのが多かったと思うけど、最近はほとんど真っ直ぐなものばかりである。ハリ先はネムっていないけどフトコロからハリ先にかけてが若干中心向けてあるのは見かける。

 ルアーの場合、餌釣りのようにネムリバリ使ってしっかり食い込ませてから口の横にかけるなんて悠長なことしてる暇はない「とにかくカケ重視!」なのかも知れない。
 でもホントにそうだろうか?個々の魚種やら釣り方やら細かく見ていくと、必ずしもかけることに重きをおくより、外れにくさを重視した方が良いように思うことがある。
 まあ具体的にいうと今やってるシーバス釣りでそう思うわけなんだが、春のチョロッと吸い込むぐらいしか口を使ってくれない時期とかなら、とにかくカケ重視のハリでどこでも良いからかけちまえ!なんだろうけど、それ以外においてシーバス食うの下手とかもいわれててしっかり食ってくれないことも多いけど、結局そういうときにどこにでもかかるハリで刺さりにくい場所とかに引っかけてしまうとジャンプ一発バレました、とかであがってこないことが多い。多少かかる確率低くても、しっかり反転させて口の中をハリ滑らせて口の横の蝶番にかけてしまうのが、バタバタ暴れてバレがちなシーバスにおいて、最終的な水揚げ量的に正解なんじゃなかろうか。っていうか途中でバレるとアタイ悲しくなっちゃうノ。

 いまプラグ用のシングルフックは右のガマカツ「シングルフック53」と左のデコイ「プラッキングシングル27」を使ってるんだけど、ハリ先真っ直ぐのデコイよりほんのちょっとだけネムッているガマカツの方が良いところにかかってバレにくいような気がしてきていて、本格的にシーバス釣るのにネムリはあった方が良いのかない方が良いのか、セイゴでも沢山釣って比較しようと、フッコスペシャル改をネムリ有り無し双方作ってみたけど、狙うとセイゴも釣れやンもんで、今のところそんな気がする程度でハッキリしたことを言えるほどではない。

 とはいえ、一般的に釣り人が思っている「ハリは先が鋭く貫通性能が良くて、魚の口だろうが顔だろうが当たった瞬間刺さってしまうのが良い」というのは、たぶん極端すぎてそれを求めすぎると、かえって使えねぇハリになってしまうような気がしている。具体的には余計なところに刺さってバレやすく、貫通性能のために犠牲にした太さの不足でデカイの来たときに伸ばされてしまうとか、ありがちすぎるぐらいにありがちで、だから私は買ってきたルアーのフックを基本シングルに換えてしまうのである。シングルフックは丈夫で、ハリ数が1/3になるということから使う前に想像するほどかかりも悪くない。バラしが減ることとデカいのに伸ばされる危険性を減らせることで相殺できるんじゃなかろうかという程度だ。

 自分のやろうとしている釣りにおいて、ハリに求められる要素は本当のところ何か?きちんと考えておかないと、ハリは直接魚と接して、かけるかスッポ抜けるかバラすか獲るか釣れるか釣れないかという大事なところを左右する道具なので、しつこいぐらい真面目に考えておいて損はないと思う。

 いずれにせよ、かかりやすければ外れやすく、かかりにくければ外れにくい、という傾向のあるなかで良いとこ取りの都合の良い魔法のハリはやっぱりないので、どのくらいのバランスで行くべきか、ネムリ以外の軸の長さとかの設計やハリの大きさの問題とかいろんな要素も含めてなるべく刺さりやすくて抜けにくいというのは、自分の釣りの場合どういうハリがそうなのか、試行錯誤しながら自分なりの答えを見つけていくしかないだろう。

 その中で、かかりやすくしたければ、ハリを研ぐ、フトコロをペンチでつまんで広げる、ハリをシングルからトリプルに、逆にハリを余計なところにかけず良いところにかけるためには、ハリを化学研磨のギンギンの新品じゃなくやすりで研いだ位の良い塩梅のに換える、フトコロをペンチでつまんで狭める、ハリをトリプルじゃなくてシングルに交換、とか手を打って口の中は滑らせて狙った蝶番にハリ先を深くしつこく刺してしまうというのとか、釣り場でも応用できると思うので、そういうことも意識してこれからもハリについて考えつづけていきたい。

 まあでもまずは、ハリを考えるならハリを研ぐことからだと昭和のオッサンは思うのである。指の間でハリをいじり回しながら、ハリ先指先にチクッと刺してみたりしながら、身体感覚的に道具を理解していくというのは大事だと思うのである。
 ハリ先鈍ったら化学研磨のトキントキンの新品に交換でハイおしまい、では寂しいじゃない。私たちってお金だけの関係なの?そうじゃないでしょ。
 どうせならハリもネチネチいじりまくって楽しまなきゃダメよ。今回の写真説明みたいにいちいち手に目とか描いたりまではしないけど、自分の手を魚の口と見立てて実際にルアーがどう咥えられたらハリがどう位置して、アワせるとどう引っ張られてどこでハリがかかるかとかは割と普通にやってます。夜中ニタニタ笑いながら。
 みんなヤってるよネ?

2017年11月18日土曜日

若き日の自分に勝てるか?まあ別に勝てんでもエエやンけ

 敵は自分自身!昨日の己に勝つ!とかいうのは他人と勝負して勝てない人間の逃げ口上のように感じるときもあったりするひねくれた私。
 その道の超一流が口にすれば、自分の最高が出せれば自ずと結果がついてくるという自信にあふれた台詞になるけど、二流どころが使うと他人には勝てないかもだけど自分なりの精一杯ができればいいじゃないのヨという言い訳を、やる前から吐いて予防線張ってるようにみえてやや白ける。
 とか書きつつも、私も昨日できなかったことが今日できるようになることは他人には分からなくても自分にとって重要な勝利だ、というような意味のことをこれまでも書いてきた。それが本心であることも確かだが、言い訳であることもこれまた否めない。なかなか凡人には他人を打ち負かすような有無をいわさぬ華々しい勝利なんて得られないからね。仕方ないよネ。

 というわけで、昨日の自分に打ち勝って昨日ツレなくて釣れなかった魚を釣り上げるために、あれこれ楽しく悩むのが常なのだが、最近蔵をゴソゴソしていて懐かしいルアーを発掘して、なかなか昨日の自分に勝つのも楽じゃない、と思い知らされたところである。

 写真のルアーは以前サイトの方のラパラのコーナーでも紹介した「ラパラF改」と呼んでいるラパラフローティングに錘埋め込んでゆっくり沈むぐらいに調整してリップ取っ払ったシンキングペンシルである。まだ本格的なバチ抜け対応シンキングペンシル「ニョロニョロ」が発売される前に私がバチ対応ルアーとして使っていたものだが、現物を蔵から久しぶりに発掘してしげしげと眺め、実に当時の若い自分が細かいところまで詰めていて思い切りもよく完成度が高いことに感心した。
 ニョロニョロ10周年記念が数年前だったから、それ以前、このルアーを使っていたのはかれこれ15年以上前になるだろう。
 今でこそ春のバチ祭りは東京湾のルアーマンにとってはお楽しみの年中行事だが、いち早くバチの釣りに注目して流行らせたのはフライマンで、その中核適役割を任っていたのが、雑誌でもバチフライの解説とか書いていたドクター小林氏だった。まだ彼が試行錯誤しているような段階から、私の先輩連中のフライマンは彼といろんなパターンの開発とかに精力的に取り組んでいた。
 ルアーでも釣れるという情報は散見されたけど、密かに狙ってる特殊な釣り方の印象で、リップ折ったルアーで釣るとかペラをへし曲げたスイッシャーで釣るとかの断片的な情報しかなくフライより遅れている印象で、もう20年近くも昔だろうか当初若い日のナマジ青年はFさんに安く譲ってもらったお下がりの8番フライタックルでバチ抜けに挑んでいった。

 何年か楽しんで、フライパターンも諸先輩のも参考にドクター小林氏の中期のバルサヘッドのパターンを自分なりに改良して、強度を上げて浮力を殺した割り箸製の「お手元フライ」を作って70UPのスズキ様も釣って、そこそこの上達を感じていた。
 しかしながらこれが、上手い緒先輩方と並んで釣っていると、とことん釣り負けるんである。ドクター小林のフライパターンもイロイロ進化して最終的にはビーチサンダルの素材にチヌバリ束ねたトリプルフックをぶら下げたグライダー(後にティムコから商品化)とかシンプルに一定の行き着くところに行き着きながらも、諸先輩はなお水中パターンとかの独自路線とかも追求していて、追いついたと思ったら置いていかれる状況で、なによりキャスティングとかの技術が違いすぎた。桟橋の支柱の際にきっちり投げ続ける正確性とか、もっと単純に飛距離とか、我流でフライフィッシング教書を読んで覚えた程度の技術ではどうにも対抗できなかった。
 ここで悔しくて釣り具屋さんの主催するキャスティングスクールとかに通って技術を磨くのが正道だったのかもしれない。
 だけど、邪道、わき道、回り道の大好きな天の邪鬼な性格が邪魔をしてそうはしなかったのである。
 「ワシ、毛針投げる技術はあんまりないけど、ルアーならバス釣り出身だし、飛距離も自分のインチキなフライキャスティングよりは出せるし正確性はそこそこイケてるはず。」ということで、バチ抜け戦線にルアーで参戦とあいなったのである。

 活性の高い初期とかにはザラパピーとかのペンシルでわりに釣れるのは知っていた。でもバチ抜け盛期になってあまり魚が強く吸い込まなくなると、出るけどかからなくなったり、そもそも出にくくなかったりするようになる。
 フライでも傾向は同じで、軽く吸い込むのの対策で一つの方向性としてはフライの下にちょっと間を置いてハリをぶら下げてハリが口の中に入りやすくするというのと、もう一つにはハリを一番後ろに持ってきて吸い込まれたときにフライがライン側に引かれても最後までハリが口に残りやすくしたりというのがあった。浮力が強いと吸い込まれにくくちょっと沈めるぐらいの方がいいときも多いというのも感覚的に学んだ。

 フライの動きや色はそれほど重要ではないというか、むしろ「ルアー的な動き」がないのが重要だと感じていた。細長い棒が真っ直ぐ進むときの水面の引き波や水中でも水を動かす「水押し」が重要で、いかにもな多毛類っぽい見た目やら色やら素材のウネウネした柔らかさはあんまり関係ないようだった。
 そういう見た目釣れそうなバチっぽい見た目に作った凝った労作は、ビーチサンダル流線形に切り取ってハリぶら下げただけのグライーダーパターンに完封されるのが常だった。バチ対応ルアーでも初期のものにはウネウネした見た目や動きのものが種々発売されたと記憶しているが早々に淘汰されていったのもむべなるかな。

 最初にだれでも思いつく、バチっぽいワームをジグヘッドリグで引く、というのは当然試してみたけどアタリがあってもほとんどフッキングせずバチルアーとしては不合格だった。
 ワームでも写真のようにハリをぶら下げる形か尻に持ってくるリグを工夫すると、かなり改善したけど正直めんどくせえリグの割にはワームなので耐久性がなく、もう一方のミノーの改造が上手くいったのであまり使わなくなる。今でも、手を焼くクルクルバチ対応にメバルワームを使う攻略方があるけど、メバルワームは小さいので吸い込まれやすくてある程度成立するんだと思う。でも重量もたせてシーバスロッドで扱えるようにと考えると吸い込まれにくくなりハリ周りを工夫しなければいけなくなる。そのあたりハリを一番後ろに持っていって解決図ったのが今年のバチシーズン使ったクルクルスペシャルである。

 ミノーの改造は、単純にはフローティングミノーのリップ折ってしまえばそれなりに使えるものができるのだけど、どうしても出てもかからないというフッキングの悪さは生じる。まずはフライでやってたようにハリを本体から離してぶら下げてみる。これでかなりフッキングよくなるのだが、ケブラー等強度のある編糸系ラインでハリをぶら下げるとハリが背中側にまわって引っかかる不具合が生じる。これを防止するために写真のF改では熱収縮チューブでラインがグニャグニャしないようにしている。
 ニョロニョロが出てきたときに中小型のには軸が長めのシングルフックが装着されていて、バチの釣りでは比較的小さいルアーに良型が食ってくることの対策も含め長軸のシングルフックとはよく理解して作ってるなと感心した。しながらもそのニョロニョロでもまだハリが華奢だと思うのでやっぱりぶら下げスタイルにして今はウレタン系接着剤で背中に回らないようにパリッと張りを持たせている。細かいところだけどハリとラインが釣りで一番気を使うところなので念を入れて丁寧にやってる。写真は中ニョロで上が買った状態、下が使用時。
 という今の私の主力バチ対策ルアーであるニョロニョロと違って当時のF9改には後ろのハリが付いていない。当時通っていた湾奥河口護岸のポイントではライズを狙って沖目に投げることが多くて理由は解らないけど前のハリにかかることが多く後ろのハリはハリ同士で絡むだけなので思い切って省略した。ニョロニョロにしてから後ろのハリにかかることが多いので後ろのハリもつけている。
 さらにルアー本体に浮力があるとフッキングが悪いので浮力を殺すためとついでに飛距離アップのために、オモリを埋めてゆっくり沈むぐらいに調整していた。ラパラフローティングはバルサ製なので穴掘って錘埋めたりするのは容易で、釣り具屋さんに教わって冬の本栖湖ブラウン狙いで投げたスローフローティングに改造したラパラF13ではついぞ獲物を得ることはなかったけど、シーバス狙いにその改造の知識が生きてくるのである。
 サイズ違いのF7改も干潟用にF13改も作ったけど、湾奥のバチ抜けにはF9改の飛距離やら存在感があっていたのかF9改の出番が多かった。フライマンと並んでも釣り負けないようになって溜飲が下がったものである。ハリが前一本でもよくかかったのは今考えるとゆっくり沈む程度の浮力がもたらす「水中での軽さ」で吸い込まれやすかったためかもしれない。まあホントのことはわからんけどね。

 ちなみにF改シリーズはウォブリングとかローリングとかのいわゆるルアーらしい動きは全くないただの真っ直ぐ進む棒のようなルアーである。私の中ではこの「全く動かないルアー」というのは、核心的な考え方の一つであるといっていい。
 これまでも書いてきたように「全く動かないルアー」はアピール度今一で魚を探す能力は小さいけど、魚に嫌われずに食わせる能力は大きいと思っている。でも動かないルアーは、ワームではそういう発想で売り出したスライダーワームとかにみれらるように珍しくないけど、プラグ系ではほとんど見かけない。動かない系のシンキングペンシルの代表であるニョロニョロでも多少は左右に揺れる動きがある。「ほっとけメソッド」とか「ドリフト」とか「動かさない動かし方」も各種知られているにもかかわらずである。
 これはそうしないと「売れない」からというのが理由ではないかと思っている。たぶんルアーを設計する人間なら動かないルアーの方が釣れる場面があるというのを知らないわけじゃないと思う。でもプラグは動かないと売れないから、と多少動かしているんじゃないだろうか。
 実際に水中での小魚の動きとか見ると、ほとんど動いたともわからないような微妙な鰭の動きで進んでいたり、全く鰭など動かさずに慣性でススッと動いていることも多いのは、スライダーワームの考案者であるチャーリー・ブリューワー氏のご指摘の通りだと思う。でも多くのルアーマンは大げさにバタバタ動かないと餌っぽくないと思ってしまうのである。バタバタ動くのはラウリ・ラパラ御大の観察通り死にかけた異常な魚なんである。死にかけた小魚の異常な動きは魚食魚にとって強烈な刺激なんだろうけど、刺激の強さ故にスレやすいので諸刃の剣だと感じている。だからすぐにネットで釣り場情報が飛び交い釣り場に人山ができがちな昨今では、スレに強い「おとなしめの動き」のミノーやシンキングペンシルが我が国ルアーマンの間に流行しているんである。なのに全く動かないプラグは買おうとしないんである。
 世の釣り人ってその程度にしか見る目がないということで、おかげで昔から動かないルアーで動くルアーでは釣れない魚を釣っていい目を見てきたし、これからも良い思いをさせてもらうつもりである。
 「動かないルアー」について、実は過去にはプラグでも例が結構あるんである。かつ自分で作って使ってみても良く釣れる。さっき書いたようにワームでは珍しくないし、ルアーじゃないけどフライならルアー的な動きがないのが当たり前である。にもかかわらず、なぜかルアーマンには動きのないプラグは受け入れられなかった。だからこうやって公開してもこれからも誰もまねしないだろうからと安心して書いている。
 過去の例として具体例をあげると、元々動きの悪いダイワのロビンのリップを切ってスローシンキングに調整したら冬のバス釣りに有効で、最初からそういう動かないプラグとして作られたミスタープロンソン、海の向こうでも輸入された日本ではウンともスンとも動かしようがないうえにそもそも沈むのでトップウォータープラッガー達を途方に暮れさせたブーンの怪作ニードルフィッシュ、なんかがある。あるんだけど大ヒットはせずに分かってる人間だけが使いこなす秘密のルアーとして歴史に埋もれていった。ニードルフッシュはその名の通り「サヨリパターン」の攻略用だと近年解釈されていて、そういう使い方もあったんだろうけど、私などはアメリカにもバチパターンのストライパーとか、こいつの「動かなさ」でしか食わせられない状況があったんだろうなと想像している。ニードルフィッシュとニョロニョロ大の収斂現象はそう考えないと納得できない。

 というわけで「良く動くルアー」「おとなしい動きのルアー」については、良いのがごまんと釣り具屋の棚にあるので買ってくることにして、動かないルアーは今でも自作しているのである。
 そんな私が自信を持って作って実戦導入している最新作が、写真のまだ名前のない自作シンキングペンシルである。
 近所ポイントのシーバスのボイル、ラパラCDLが相性良いのか食ってくる場面が結構あったのだけど、杭とかの障害物の上を通す必要があって割と早引きする必要がある。そうするとラインの張りが強いせいかハリがかりが悪くすっぽ抜ける気がする。ので、浮力小さめに割り箸とスズハンダで調整してこれまでの「お手元ルアー」のように作って、ちょっと割り箸一本のままだとCDLと比べて「太ましさ」が足りないなと、フライ巻くときの要領でフェルトを巻き付けてからコーティングして仕上げた。良い出来だと満足していたら、蔵から出てきた「F改」とほとんど機能変わらないことに気づかされて、ぜんぜん進歩がないなと落胆した次第である。
 昨日の自分は確かに狂的な強敵なのであった。

 まあでも、技術の進歩なんてのはそんなもんだという気もする。日産のフェアレディZが最新型と何十年前の古いモデルをチューンナップしたものとでゼロヨン勝負したら僅差で最新型が逃げきったという映像をみたことがある。エンジンぶん回して真っ直ぐ走るという基本性能においては、車という最新技術の固まりのような道具でさえ何十年と経ってもわずかな差しか生み出せていない。それでも基本性能以外の乗り心地やら安全性も含めたら格段に進歩してきたはずである。それに意味がなかったとは思わなくても良いのではないだろうか。
 私の新作シンペンもヤッスい材料費でちょちょいと作れて、釣る能力自体は進歩していないかもしれないけど、重さも大きさも思いのままに作れる自由度とか、これまで積み重ねてきた経験も生きてちょっとだけ進化している気がする。
 
 ちなみに私の中では既に定番で一軍起用のフッコスペシャルも「動かないルアー」である。公開してない秘密のルアー扱いは、ちょっとセコすぎる格好悪さがあるのと、釣る能力自体は動かないワームのジグヘッドリグと同等だと思ってるけど、釣る能力以外の部分であまり語られていないシーバスマンには意外なほどの利点になる要素があって、そこは秘密にして独占させてもらおうと思ってるところ、あしからずご容赦を。こちらも、鉛不使用化のついでにといろんなサイズを作ってみて、ネムリバリの効用とかちょっと試したりと日々進化させるべく努めております。

 という感じで、ルアー図鑑うす塩味第36弾はありし日を思い出しつつ「動かないルアー」についてひとくさり書いてみました。
 「動かないのもまた良い動きである」ってのはなんか禅問答っぽくってかつ小生意気で良い響きだと思う。

2017年11月11日土曜日

イワシ買わんの馬鹿

 スルメイカがサンマがサケがカツオが不漁でどうも本格的にこいつらはダメな時代に突入した臭い。数年前は大漁で安くて大いに食ってたのに困ったことである。
 獲れなくなった理由には海水温上昇だの乱獲だのいろいろいわれてるし実際にそういった要素も関係してるんだろうけど、そもそも海のモノというか自然のモノには豊作、大漁があれば逆にハズレ年とかもあって、いつも同じようには獲れなくて当たり前っちゃ当たり前なのである。
 じゃあどうするかって?獲れない魚がいる反面、豊漁の魚もいるんである。それ食っておくのが定石というものであろう。

 ここ数年ブリは若魚のイナダなんかも含めて特に太平洋側では豊漁で、昨年は本場富山湾で寒ブリ不漁の声も聞いたけど例外的で、なんでかってぐらいに獲れてるようで、サケ定置なんかでもサケ入らないなか、ブリでなんとか食いつないでるとか聞く。
 これが、脂の乗りだとかトロだとかうるさいマスコミに踊らされるグルメ様達のおかげで、氷見ブランドとかが有名な日本海側の脂の乗った大型魚は例外的で、それほど脂の乗り的には大したことがないイナダとかくそ安い値段で売っている。イナダ刺身用一柵380円とかもう買うしかない値段が恒常的で養殖ハマチより断然安い。
 養殖ハマチが駄目とは全く思ってなくて、最近の養殖ハマチはそれこそ脂が乗ってて美味しいと思う。脂の乗った刺身が食いたいときにクソ高いクロマグロ様のトロとどっちを選ぶかといったら断然養殖ハマチである。値段の違いは養殖の難しさとかに起因していて味の差じゃない。だったら安い方を選ぶ。
 でも、脂の乗りが悪いからって、養殖ハマチの半分ぐらいの値段にしかならないってどうかと思う。イナダの刺身はぜんぜんトロじゃないけど正しく青物の刺身の味がして、こんな旨い魚の味が分からないグルメ様達は可哀想な人たちだなと思う。たしかにトロのような魚を食べなれてない人間でも分かる、健康食品の宣伝にもあった「糖とアブラと」みたいな飢餓との闘いが長かった人類の本能を直撃する単純明快な旨さではないかもしれない。
 でも脂のコクなんてぇのは、足そうと思えば油を加える調理でもいくらでも可能で、揚げ物やらムニエルやら、刺身でもマヨネーズ追加とかで簡単に補える。マヨ醤油で刺身は下品だけど割と美味しいので結構好き。
 油加える料理、刺身系でよくやるのはハワイイ風の刺身のポキで、ちょっと塩を強めに振った賽の目切りの刺身にゴマ油をたっぷり目に後はお好みでネギだの唐辛子だの和えてちょっと冷蔵庫で置いてから食べると、酒飲めないのが恨めしくなる小味の利いた一品でございます。是非お試しあれ。
 正直せっかく獲れてるブリ一家がもうちょっと値段つかないと漁師さん困っちゃうだろうと心配で、天然モノのイナダワラサなんかをもっと食べましょうという魚食普及の文章など書いてるのである。あんまり値上がりしてしまっても困るけど、まあアホなマスコミが脂の乗ってないイナダの良さを分かって普及し始めるには優曇華の花が咲くまで待たなければならんだろうから、このブログを読んでる皆さんにこっそり特別に教えてしまいます。ってこんなマニアックなブログ読んでくれてる人たちには「そのぐらい知ってまっセ」な情報かもしれない。それはそれでウンウンと頷いてくれれば喜ばしい限り。


 でもってもういっちょ、今年これでもかっていうぐらいに食いまくってるのがマイワシ。私が魚を買ってる魚屋兼八百屋みたいなちっちゃいスーパーはいろんな産地の魚を仕入れてきていて、入梅イワシのころは近場の神奈川産、千葉産に混じって石川県産とかが健闘していて日本海側も獲れてるなと思ってたら、秋に入って北海道、青森産の大羽のぶっといのが入荷しだして、今ちょうど宮城産が並んでいる。どうもサンマ、スルメイカが大不漁でサバまで今一ななかマイワシが特に東北北海道の太平洋側は良いようで、資源状況の評価とか研究機関の発表見ても2010年以降親魚量増加し続けている状態。
 同居人の実家の気仙沼でもサンマ、カツオの不漁のあおりを受けまくっているようだけどマイワシだけは豊漁のようでよく食べているようだ。この辺、サンマは目黒に限るとか言っちゃうような陸の人間じゃない港町の人間はたくさんとれて旨い魚がいたら当たり前に利用できているようで安心する。
(小ネタ:南三陸では記録的なタコの豊漁らしい。アワビ食ってるという噂の志津川湾産のマダコとか食べたいところだ。サケ定置だのがダメだった中で海の街に明るい話題。)

 今年の太平洋マイワシの豊漁は直接的には産卵場所の四国沖とかの水温が低くて(海水温上昇ばかりが取りだたされるけど場所によっては逆もある、西の産卵水域の低海水温がマイワシを増やしスルメイカを激減させているとの説有り)稚魚の生き残りがよかったからじゃないかとか分析されているけど、いわゆる魚種交代が起こりつつあるのかどうかまではよく分からないということだ。
 マイワシやサンマ、アジサバなどの浮魚資源は気候の変動周期とかに伴って増減を繰り返して、その時々に多く獲れる魚種がころっと変わる現象が知られている。
 中でもマイワシは増加するとなったら爆発的で、前回爆発時最高は昭和63年で国内漁獲量が450万トンとマイワシだけで平成27年現在の日本の海面での総漁獲量355万トンを軽く凌駕する量が獲れていた。
 大昔からそういう爆発的な増え方を何度もしてきたらしいことが海底だった地層に眠る鱗の化石とかから知られている。
 増えるとなったらとても消費しきれないぐらいに増えるマイワシの大爆発に期待してしまうのは私だけじゃないだろうと思う。昔から大量に漁獲されたことのある魚なので消費方法も食料として生鮮加工各種当たり前として、昔は肥料として大量に使われたようだし、今なら魚粉として飼料としても有用な資源になり得るだろう。どのみちまた減少する資源なので爆発的に増えたとしても、それを見越して加工施設など設備投資をするのは博打的要素もはらみ、理想としてはなるべく長く中くらいの資源量を継続させたいと考えられているようだが、まあ増えるときは獲りきれないぐらい、使い切れないぐらいには増えるんだろう。そこをどう獲ってくるか、どう売りさばくか加工するか、そのあたりで儲けるのが水産関係者の腕の見せどころ博打のはりどころということだと思う。
 いずれにせよ今後のまだ分からんことを捕らぬタヌキの皮算用してみても仕方ないし、飼料にするほど獲れるようになるかなんてまだ分からないにしても、現時点の今年の豊漁でも生鮮で出回る分が庶民的な値段になるぐらいには十分で、3匹280円とかこれまた買わずにいられない値段だった。比べて今年割高だったサンマとスルメイカは加工した総菜で何度か食べたぐらいで買わずにずっとイナダとマイワシばっかり買っていた。

 マイワシは清少納言も好物にあげてるぐらい昔っから愛されてきた魚なので、ありとあらゆる食べ方があり、脂の乗ってない奴でも干物にしたり、酢締めにしたり天ぷらにしたりと旨い料理法には困らない。もちろん脂の乗った太ったのなら焼いても煮てもサンマがなくてもまあいいかと許せる旨さ。焼くのは遠火の強火とかやったことない人にはちょっと難しいのでお勧めは煮魚。普通に醤油味で煮てしまってももちろん美味しいけど、最近ハマっているのが「梅煮」で、醤油味をごく薄くしてちょっとびっくりするぐらいに梅干しと梅と一緒に漬けた紫蘇をぶち込んで梅味でスッパ過ぎるぐらい酸っぱくして食べるとめちゃくちゃに旨くてご飯がいくらでも進んで太る。煮汁をご飯にかけるというお行儀の悪い食い方もまた旨くて旨くてという感じ。2パック6匹ぐらい買ってきて作って、タッパに入れて冷蔵庫保存しておくと常備菜として最高の一品。ネットでレシピ調べると酢水で下煮して骨まで柔らかくとか難しいこと書いてるけど、そんなもん鰯の骨ぐらい食いながらはずせばいいし多少堅くてもバリバリ食うならなおよし。手軽に麺ツユ薄めて好みで砂糖も入れて、味付けのメインはドカッと梅干し。これでバッチリです。これまた是非お試しあれ。


 漁業なんてのは獲れるときに獲れるものを獲って売って食うのが当たり前で、しょうもない周回遅れみたいになってるマスコミ情報なんかに踊らされてると、高くてたいしたことないのを食わされる羽目になって「魚なんて割高で美味しくない」と思ってしまうかもしれない。けど、断じて違うんである。沢山とれれば旨くても安いときはあるのが魚っ食いの醍醐味なんである。そういう目利きも含めて楽しむ贅沢が食文化ってもんだろ?と旨い魚を海から離れた街で堪能しながら書いてみたところである。

2017年11月3日金曜日

中小企業が作ったミノー

 私が勝手に「日本2大漁具系釣り具メーカー 」と呼んでいるのが、本拠地を佐賀から福岡に移した我々昭和な釣り人には変態バスルアーメーカーとしてもなじみ深いヨーヅリ改めデュエル社と我が地元神奈川県は横須賀のヤマシタ改めヤマリア社の2社である。
 今回、ルアー図鑑うす塩味第35弾はこの2社の主にミノーについていつものようにグダグダと書いてみたいと思う。

 ヤマリア社の前身、山下釣具は「ヤマシタ式」と呼ばれる漁法の代名詞である塩化ビニール製のいわゆるタコベイトを発明し普及したという、由緒正しい日本の釣り具メーカーである。開高先生もどっかで日本が誇る釣りの技術としてヤマシタ式を例にあげてたと記憶する。元々は漁業の世界での発明だけど今日トローリングヘッドのスカートからタコ釣りテンヤの飾りまで遊びの釣りの世界でももはやタコベイトは世界基準となっている。日本人の「遊びの釣り」における発明においてコレと比較できるぐらい世界に広まったのは、他にK-TENの二宮氏の「重心移動システム」ぐらいしかないと思う。
 今ヤマリアのサイトではその辺の会社沿革も紹介されているし、創業者の山下楠太郎氏の著作「新しい釣漁業の技術」も公開されていてなかなかに面白く興味深く拝読した。

 時代は巡って平成元年、日本でもずいぶんルアーの釣りが浸透してきて、当時ヤマシタだったヤマリア社もルアーブランド「マリア」を立ち上げた。その時、最初に作ったシリーズが写真のミノー「ザ・ファースト」。今書いててそういう意味の名前かと改めて気付いた。大きめの動きで特にファーストリトリーブ向けってわけじゃなさそうなのになんでファーストなんだろうと思ってたけど第1弾的な命名だったわけね。
 有名な話だけど、最初に出た14センチと11センチはK-TENのタックルハウスとの共同開発で、ウッド製のミノーを作ってたタックルハウスがプラスチック版を作るにあたって樹脂製品の製造技術持ってたヤマシタに協力を求めてお互いのブランドでそれぞれ売ることで合意して作ったらしい。だから、14センチ11センチは当時のK-TENと型は一緒。でも内部の重心移動機構は先発のK-TENの鉄球と磁石を使った機構は使わずに円柱状のオモリがスライドする方式をとっている。このおもりがスライドするっていうのが実は裏技的に使えるというのを怪魚ハンターの小塚氏が紹介しているというのは以前にも書いたけど、メガバスが狙って、重心移動機構のオモリがぶつかる慣性でルアーをダートさせるという意図で作ったグレートハンティングミノー90+5に先駆けて、飛距離増加以外にルアーの動きに干渉する働きをも持った重心移動機構を搭載したミノーが意図せず生まれていたのである。
 まあ当時はそんな使い方されてなかったけどK-TEN同様シーバスマンには人気が出て、私のようなCD7やCD9を使ってた湾奥系の釣り人の要望にもこたえるべく9センチと7センチも追加となった。このサイズからはタックルハウスとは分かれて開発していて、ザ・ファーストの方が丸っこくて可愛い見た目となっている。特にフローティング7センチはクランクベイトのような見た目と動きで、コイツの高浮力を生かした水面引き、今でいうウェイキングが濁った運河で良く釣れて良い思いをさせてくれた。右下の目玉の剥げた固体がその頃の生き残りでなんとも懐かしい。

 ヤマリア製のミノーといえば、もう一つナマジ的に忘れられないミノーがフライングダイバー。それも赤。
 カヤックシーバスで大活躍してくれて、その役目をFマグに引き継いで今は蔵に眠っているけど、今でも充分釣れるルアーだと思うのでたまに投げている。
 もともとはボートシーバスの船長に岸壁下が支柱で支えられているタイプの護岸攻め、いわゆる「穴打ち」に良いよと勧められたルアーである。
 穴打ちではそこそこ飛距離が必要だけどそれよりも穴の奥にぶち込んで、支柱に付いているシーバスをいかに短い距離で食わせるかというのが重要になってくる。立ち上がりがモタモタしていては食ってくる範囲を過ぎてしまう。だから固定重心で平行姿勢でユックリ沈んでいって、目的の深さで引き始めるとオフセットのリップがしっかり水を掴んですぐ動き出すという設計。障害物の際の短い距離で食わせるためにはとても適しているのだけど残念ながら廃盤となった。


 ヤマリアはお世辞にも大企業ではない。工場の製造ラインにも限界はあるだろうし、売れなくなったモデルは割とすぐに廃盤になる。昔から生き残っているのはマールアミーゴ、ポップクイーン、ブルースコードぐらいだろうか。逆に中小企業ならではの小回りの良さと伝統の開発力で、市場のニーズやらも踏まえて積極的に新製品をぶち込んでくる。
 写真の上はツーテンの虎ファンさんが気に入ってたエンゼルキッスで振り幅広い系、大きいサイズ残して廃盤、下の細身のプリンセスMも廃盤。っていうぐらいに廃盤製品が多いのは寂しいと言えば寂しいんだけど、新製品ぶっ込んでくる挑戦精神に免じてオレは許す。特に最近では、小難しいこと言いがちな輩がさも難しい技術のように喧伝してたダイビングペンシルの世界に簡単な動かし方の映像公開してぶっ込んできたローデッドが抜群で、プレミア付いて1万円以上するようなルアー買わんでもローデッド買ってヤマリアの人の説明通り動かせばワシでも10キロやそこらのマグロなら釣れたわい、ザマミロという感じ。
 ザマミロは100g超級のダイビングペンシルの釣りという今や大流行の釣りを切り開いたルアーであるカーペンター社ガンマに対して敬意がなさ過ぎかと反省するが、我ら技術もお金も限られる週末釣り師に、安価で性能の良いルアーを提供し釣り方含め普及してくれたヤマリア社には創業者からの伝統である釣り技術の普及に対する企業精神と伝統をひしひしと感じるのである。


 でもってもう一方、九州の雄デュエル社は、もともとのヨーヅリ(ヨー「ズ」リだと思ってましたスイマセン)っていえば伝説となった「アタックル」ブランドの変態バスルアーの会社というイメージの他には、餌木とか弓角とか潜行板とかスキップバニーちゃんとかとかのまさに「漁具系」のイメージかも知れないけれど、実はコレが世界的には一番知られている日本のルアーメーカーなんである。何を馬鹿なことを、ダイワやシマノの方が有名に決まってるだろ?と思うかもしれないけど、ダイワやシマノは外国ではリールメーカーという認識のハズでルアーはそれ程有名じゃない。
 何しろスポーツフィッシング市場におけるメジャーリーグとでもいえるバスプロショップスのカタログにルアーが出てくるのは現在、ヨーヅリ、メガバス、ラッキークラフトで、後ろの2社は新参者でサーフェスクルーザーやクリスタルミノーの時代からバスプロショプスのレギュラーメンバーの座を守ってきたヨーヅリこそ海外では日本を代表するルアーメーカであると断言する。なにしろヨーヅリブランドの知名度が海外では高いので海外向けブランドとしてはいまだ「YOーZURI」という昔の名前で出ていますなぐらいだ。
 ということで、デュエル社も中小企業ではあるんだけど、相手にしている市場が海外もあってでかいので、ヤマリア同様廃盤開発のサイクルは短いんだけど、廃盤製品復活やら名前を変えて出ていますやらな商品も多い。
 上から2個がトビマル、3個目がクリスタルミノーという懐かしのルアーだけど今復活してます。今時のぎらぎらしたカラーとかも出てるし、クリスタルミノーにおいては重心移動搭載形のマグクリスタルミノーなんてのも出ている。往年のファンの皆様におかれましては箱買いのチャンスでっせ。
 トビマルの一番上の個体はガン玉詰め込みまくった「超重量版トビマル改」でほとんどアクションしないのに釣れました。今思えばリップ付きのシンキングペンシルを作ってしまってたわけで「あまり動かなくても釣れる」んじゃなくて「あまり動かない方が釣れることがある」というのに気づけていれば一儲けできてたのかもしれない。
 4番目のアイルマグネット105(とかなんとかいうやつのはず)は拾いもの。これの大きいのは九州男児がヒラスズキ狙うときの定番だそうだけど、たぶん今も違う名前で出てる。
 で、下3つが今時モデルの「ハードコア」シリーズのミノーで下から3つめがハードコアミノーパワーSというワイヤー貫通の丈夫な対モンスター用とうたわれているミノー、別にモンスター狙いに行く予定もないのに思わず買っちゃった。下2つはハードコアTTリップレスS90でこれも思わず買っちゃったけどコイツは近所でも投げてます。 

 左の写真、一見すると同じルアーに見えるけど、実は上がフローティングで下がシンキング。一緒やないケ!と突っ込んだところ背中の表示の他に「目」でも見分けができて赤い目がシンキング黄色い目がフローティングだそうである。芸が細かい。
 芸は細かいんだけど、正直この手のスリムなリップレスミノーの元祖であるコモモや同じメーカーが作るサスケ、リップレスミノーとしてはそれより古いタックルハウスのTKMLとかに比べると、なんというかどこにでもありがちな今時のジャパニーズルアーっぽいというかオリジナリティーに欠けるという気がしてた。でも動き的には余り潜らずキビキビ動く系で、欲しかった動きなのでまあ良いかなと思っていたけど、こうやって書いていてまさにこのルアーは「今時のジャパニーズルアー」っぽく作られているんだと思い至った。ホログラフを使った精緻なカラーリングに凝った造形、高機能をうたった磁石とタングステンを使った重心移動機構などトッピング全部乗せ状態のジャパニーズミノーになっているのは、外国のお客さんを念頭においているからなのだろう。それがすべてではないにしても、外国版の製品名に「SASHIMI」とか付けちゃうぐらいにはあざとい戦略性を持って攻めてるデュエル社である、そういうことを考えに入れてないとは考えにくい。
 そう思ってみると、なかなかに味わい深さが増してくる。世界中で売りさばくのでその分コストも軽減できるのか値段が1000円ぐらいと安いのも大きな魅力である。
 大手のデキの良いルアーやらベンチャー的な小規模工房からの挑戦的な製品もいいけど、こういうしたたかな中小企業の作ってるルアーもやっぱり魅力的だと思うのである。デュエルのルアーが九州で、ヤマリアのルアーが相模湾とかで人気な地元密着型な一面も好ましく思える。とにかくいろんなルアーがあって選べる楽しさって良いもんだ。


 最近、近所ポイントの攻略に苦戦しつつ楽しんでいるところなんだけど、「もうちょっと動きの派手なルアーないかなー」とか「細長いのを試してみたい」とか思いついたときに、じゃあそういうルアーを買いに行こうかと思うと、ふと、待てよそんなルアー我が家の蔵にあったんとちゃうか?と思ってごそごそやってると、目当てのルアーもだいたい出てくるうえに、忘れてたような懐かしいルアーも出てきたりして、心は思わずしばし追憶の彼方に旅立ったり、なかなかに楽しかったりもしたので、そんな中で出てきたルアーを中心に今回は紹介してみました。
 オッサンどもに懐かしがっていただければ幸い。若い人にはオッサンの想い出話に付き合ってもらって恐縮。でも若い人が今使ってる最新のルアー達も10年経てば想い出のルアーになって若い人もオッサンになるというものである。今日は明日には昨日になる、何事の不思議なけれど。