2023年6月17日土曜日

大森を触るとホッとする?

 前回までのジャンク5台は、初めて触るような機種ばかりで、かつ製造元もあまり馴染みのない所だったりして、面白い反面、勝手が分からず苦労もさせられたし、きつめのジャンクっぷりに手を焼かされたりもした。スプール欠損とかぶっちゃけガラクタでっせ。

 なんか反動で、サクサクと分解整備できて気持ち良いスピニングが触りたいなという気分で、馴染みの大森スピニングで整備待ちのを2台ほどいじってみることにした。やっぱり大森はイイ。安定感があるっていうか、癖が分かってるってのもあるけど安心していじくれる(今思うとこんなこと考えてたのが”苦戦フラグ”)。

 そんな大森スピニングなんだけど、最近またちょっと値段が上がってるように思うけど気のせいだろうか、大森アナリストとしてはそのへん気になるところ。一時全体的に値段下がってて、ちょっとボロ目のコメットとか一万切る値段で晒されてたりしたけど、また何万って値段がつくようになっている。チョット驚いたのが今回分解したうちの1台は「マイコンNo.202」という200番台の数字が振られたシリーズなんだけど、コレの小型機「No.20S」がネットオークションで2万を超える値段で落札されていたのがあったことで、様子見で2200円で入札してたけど桁が違った。あんまり話題になってるのを目にしたことがないシリーズだけど”マイコン沼”の住人には高評価のシリーズなのだろうか?ワシが買った「202」自体は、2080円落札の送料750円と3千円がとこも出しときゃ買えるだろっていう不人気大中型大森の相場価格でしかなかったので、たまたまどうしても欲しいマニアが2人居て競ったのか、200シリーズ小型機は実は人気あるのか、中堅大森アナリストのワシとしてもどう分析して良いのか判断が難しい。まあ”たまたま”かなと思う。

 値段が競り上がった要因の一つとしては、弾数の少なさがあると思う。大森マイコンの系譜をたどると、元祖「マイコン」シリーズが1980年登場、そして樹脂製の「100」系シリーズが1983年登場、「200」系シリーズも同年のようで、84年カタログにはすでに掲載されている。でウィスカーチタンカリ強化樹脂を使用した「ウルトラ」シリーズとワシの愛機であるツイストバックシステム搭載の「TB300」系シリーズが1985年登場で、同年カタログには「100」系シリーズも掲載されているけど、「200」系シリーズはカタログ落ちになっている(海外では同時期シェイクスピア「Σプロ」としてまだ販売されていた様子)。その後は韓国大森になって「スペシャル」シリーズのあとはロングマイコンとか作りつつグダグダになってという感じか。つまり、国内で「200」系シリーズが販売されたのは、83年登場だとして、店舗在庫等はまた別としてカタログモデルとしては85年には消えていて、2年の短命モデルだったのである。今時の大手が3年でモデルチェンジしてて3年で陳腐化するような設計するなよな、と苦言を呈してきたけど、それよりもモデルチェンジが早い。なので中古市場に出にくく、欲しい人間は出たら親の敵を見つけたごとく討ち取っておかねばならないのかもしれん。

 で、もういっちょの要因としては、なぜ「200」系シリーズが廃版になったかというと、「TB300」系シリーズとキャラかぶりなところがあって、それが本体金属製でボールベアリングは一個のシンプル設計っていう、むしろ今の大森好きなマニアが評価しそうな設計になってて、同時期の「100」系シリーズ「ウルトラ」シリーズが樹脂製本体なのに対して人気が出る要素になっているのかもしれない。ワシも当初、泳がせ用にリアドラグ機をということで想い出のTB302(写真右)をぶっ込んではみたけど、使って壊すのがちょっと惜しい個体なので代わりの同じ機種を探していて、たまたま「NO.202(写真左)」が目について、ツイストバックシステムが付いてないぶんむしろこっちの方が単純で好ましいかも?とスルッとマウスを滑らせてみたところである。実際の所はツイストバックはほとんど使わないので、あっても邪魔してるわけでもなしで、その有無はそれほど関係なくて、実際に使ってみないと良し悪し判断できんなということで、実戦投入用に分解整備しつつ、それぞれの機構の違いとかを比較してみることにした。

 まずスプール周りからみていくと、左TB302で右がNo.202で横から見た感じは良く似ている。どちらもスプールは樹脂製で初代マイコン等に比べると糸巻き上面の傾斜がきつくなくて、ラインがグズグズッとなりにくい形状にだいぶ改善されている。
 でもって、ワンタッチでスポッと外すと、単純な横棒がスプールの十時に填まる右のNo.202に対して、TB302はツイストバック機構が入る都合上いくつか違っている点がある。
 ツイストバックは以前も書いたけど縒れたラインを引き出してどっかに引っかけて張りつつ、ツイストバックのスイッチを入れてやると、ハンドル逆回転するとライン放出されずにそのままの位置でスプールごとローターが逆回転して、ハンドル・ローター正回転のときに生じたラインのヨレの逆に縒りを入れてというか縒りを戻してやるという機構。なので逆回転時にローターと同期してスプールが回るように、スプール内側のオレンジ色の矢印でしめした所に凸部があって、ローターのオレンジ矢印で示したところからスイッチ入れるとレバーが出てきてこれを引っかける。でその時逆回転させるのにドラグユルユルにしておかなきゃならんと思ってたけどワシの勘違いで、TB302のほうのスプールを主軸に固定する方式は、一方通行に回転させる金具がスプール裏に付いていて、主軸にはそれに対応する形状の歯車っぽい台座が設けられている。なのでTB301はドラグが効かない方向には主軸と同期せずスプールは回る。ただしツイストバックのスイッチが入っているとさっき書いたようにスプール凸部をローターから出たレバーが引っかけるので主軸とは同期しないけどローターと同期する。あんまり使わなかった機能だけど考えた人はすごいと思う。

 ってぐらいが大きな違いだろうと思ってサクサクと本体も蓋開けてみていくと、意外に違ってる。右がTB302で左がNo.202(ゴメン左右統一しておけば良かった)なんだけど、スプール上下の機構がTB302がハンドル軸上にクランクを持ってきたハンドル一回転一往復のクランク方式、No.202はハンドル軸のギアの下から歯車介する形のハンドル二回転ぐらいでスプール一往復ぐらいの減速オシュレーションになっている。後に作られたTB302の方が原始的な機構になってるのはなんでだろうか?リアドラグ機にクランク方式突っ込むのって面倒臭くて、主軸に穴開けて棒突っ込むと主軸回らなくなってドラグが使えないので、クランクと主軸をつなぐ棒の代わりに主軸が中を通って回転できるオシュレーションカム的な部品が必要になるのでクランク方式の利点の一つである単純な形状の部品でできるというのは関係なくなってる。ワシ自身は小型機には単純クランク方式の綾巻気味のラインの巻かれ方はトラブル少ないような気がして良いと思うけど、飛距離とかでは減速オシュレーションの方が良いはずで、トラブル多かったのでクランク方式に変えたのか?でも1/2ぐらいの減速ではたいして変わらん気がするけど謎な部分。ちなみ両機種ともにハンドル軸に樹脂製パーツを組み込んでサイレント化している。真ん中写真がNo.202だけどチョット見にくいか。No.202は音出し機能はなしだけど、後発のTB302は音出しとサイレントの切り換え可能。「音がせんと巻いてる気がせん」という古い人たちの要望が根強かったのか?そんなモン、サイレント化用の樹脂製パーツ外せばいいだけだろって思う。
 TB302の明らかな改善点は、主軸にオシュレーションカムを固定する方法が”Cクリップ”じゃなくなってることで、写真一番下はNo.202のオシュレーションカムでCクリップ使ってる。Cクリップ嫌い。
 
 ローター抜いてローター軸のギアの方を見ていくと、写真はNo.202のだけど、どちらの機種もベアリングはローター軸に1個しか使ってなくてハンドル軸の受けはどちらも真鍮ブッシュ。ストッパーはローター軸ギアの直上のいつもの位置に鉄系のしっかりしたのが付いている。ベアリング1個でも鉄系の芯を鋳込んだ大森ハイポイドフェースギアは滑らかで軽いし、各部摩耗とかもみられない。最近ちょくちょく一つ小さいサイズの「マイコンTB301」を使う機会があったけど、回転は滑らかで軽いし、ベールの返りもハンドルリターンでカショッと軽やかにいくしで、今時のリールと比べても投げて巻いての機能に遜色ないのとちがうか?と思うところ。”遊びがない”っていうことのタメだけにどれだけ無駄なことをやってるかっていうのが良く分かった気がする。

 あとは簡易ロータブレーキが付いてたり、内蹴り方式も見慣れたのがついてたり、ハンドルはもちろんベールも折り畳みできたり、ラインローラーはルーロンスリーブ入りだったり、オシュレーションカムが乗っかる歯車の出っ張りには真鍮製のカラーが填まってたりと、いつもの大森仕様である。ドラグもTBシリーズと一緒で繊維の表面を樹脂で固めたようなドラグパッドを使った4階建て方式。ハンドルがいかにも大森小型機っぽい三角パドル型なのは嬉しいけど、ライン巻いてるときに思ったけどこの大きさになってくると、摘まむというより握るようになってくるのでT型とかマイクロセブンCシリーズの軸の細いウッドノブ型のほうが握りやすいかも。でもまあ悪いって程でもない。

 リアドラグなのでやや部品数多いけどそこまで分解整備も面倒ではない。

 例によって、容赦なく青グリスぐっちゃりでしあげてやった。元から巻いてあったラインを下巻きに、3号ナイロンを70m巻いて磯投げ竿で活アジ餌の泳がせでハモとか狙うのを想定。
 
 結局、No.202はどうなのよ?っていう話だけど、まだ実釣に使ってないのでなんとも言えん部分ではあるけど、分解整備していじった感触としては、かなり良さげ。発売当時は初代マイコンの単純廉価版ぐらいにしか思えなかっただろうからウケなかったんだろうと思うけど、今俯瞰的に見るとむしろベアリングを初代の2個から1個に減らして、スプールエッジの形状改善して、多分スプール樹脂製にしたぶん軽くなってて、と地味だけどかなり良い感じの叩き上げ方だったのかなと思う。思うけど時代は、なんかゴチャゴチャ説明がくっついてくる新機能がないと売れないような80年代真ん中頃で、悲しいことに評価はされなかったんだろう。けど、分かる人には分かるからの2万円超えなのかなと思いましたとさ。ワシャさすがにそんな大金突っ込む気はないけどな。「TB300」系シリーズ、ツイストバックは邪魔にはならん程度の機構なので気にする程じゃなし、減速オシュレーションじゃないのもライントラブル面では利点なので遠投しないワシにはあってる。そして何よりCクリップでオシュレーションカムを止めていないのがエラい。ということでワシ的には「TB300」系シリーズのほうが若干好みかなと思うけど、「200」系シリーズも悪くはなさそうな気配というか、多分コイツはヤる気がするので実戦導入が楽しみである。

 でもって、お次は外蹴り版「マイクロセブンNo.1」。
 昔、ジャンクを整備して、この時代の外蹴りアウトスプールの大森ダイヤモンドでは「タックル5」が好みなので、そっちを使うことにして”外蹴り版マイクロセブン”は手を出さないでおこうと思ってたんだけど、なぜかNo.3サイズを買ってしまい、気がつくともう一台、そしてNo.2サイズも入手しており、いまさら何を拒む理由があるというところに即決3000円で見た目綺麗っぽいこの個体が出てきたので思わずリアクションバイトでマウスをスルッと滑らせてクリッククリック。我が家に到着して、ハンドルの後ろ?の左右交換用ネジ収納部を確認するとちゃんと左巻き用のネジも残ってて、これで勝ったも同然と気を緩めたのがまず”苦戦フラグ”。ついでにネジの緩み止め剤がキツいとねじ切れてしまうラインローラーを固定する円錐状のナットも、過去1回ねじ切っただけだし大丈夫だろうと油断してまたフラグを立ててしまい。巻きが重くてゴーロゴロしてるのも、ベアリング交換で元通りさ!とフラグの追い打ち。ことごとく裏目に出て大苦戦で、もう何度も分解整備した構造も単純、部品数も少ない外蹴りマイクロセブンなど、鼻歌交じりで気持ちよく快調な状態に仕上げることができるだろうという目論見は、竹に流し込んだ水ようかんを節に穴をあけてツルッと吸い出す「竹流し」より甘かったのであった。ああ、今年も夏が来る。

 まずはハイ、やってしまいました。ラインローラー固定ナットねじ切り。
 充分注意はしていたつもり。ラインローラーは回っていたので、固着してたら外さなくてもいいぐらいの心づもりでいた。けどちょっと力入れたらちょい回って、大丈夫かと確認したら若干隙間ができていたので、回った回ったと喜んだら、その時点ですでにネジ切れかけて伸びてただけだったようで、そこからチョイと回したらポロッと逝きました。大ショック。ただ、過去にねじ切った「タックル5No.2」のラインローラー周りを再建する計画は準備していて、プランA及びBを既に立案済みで上層部(ワシ一人で現場と上層部兼任だけどな)のゴーサインを待っている状態だった。なので、コイツでそれをやっちゃっても良いけど、とりあえず整備待ちのリールが渋滞してるのもあって、後回しにできるなら後回しにしてしまえと、未来の自分に仕事丸投げで、別口の改造計画のために購入済みであった「タックルNo.1」から急遽ベール周りの部品を一式移植することでお茶を濁しておくことにした。ベール周りは外蹴りマイクロセブン、タックル5、タックルの3機種共通で互換性あり。「タックルNo.1」やっつけるときは改造と修繕の二仕事でエラいことである。まあ今は気にしないでおく。

 巻きが重いのは、ベアリングが死んでるのだけが原因じゃなくて、スプール上下のクランクの棒の部分がどうやったのか曲がってて、下に下がったときに本体の端に接触してつっかえ棒的に引っかかってしまっていて、たまに巻けなくなる始末。ペンチ2本で慎重に真っ直ぐに伸ばして填めて確認作業っていうのを何度か繰り返して、やっとまともに回るようになった。正直コレはダメかもと心折れかけたけど何とかなって良かった良かっただけど、この個体、海水に水没させて浸水した気配がある。写真の様に蓋開けたらあちこち茶色で外側が比較的綺麗なのにナンジャコリャな内部。これが思わぬ失敗を招く。幸いギアとかの腐蝕はなくて、ストッパーの錆が完全には取りきれなくてヤスリで削って不具合出ても困るので、ある程度錆落としてグリスシーリングで済ませて、そのへんはまあ大丈夫だったんだけど、逆転防止のスイッチを留めてるEクリップが錆錆でこれもある程度錆落としたら使えそうだったんだけど、パーツクリーナーで洗浄作業中にどっかで紛失した。パーツクリーナー液もティッシュも錆でまっ茶色でEクリップがどうも気づかないうちにそれらに混じって”廃棄処分”されてしまった、っていうと他人行儀だけどワシ捨てちまったらしい。配水管覗いてみたり指突っ込んだり、ゴミ袋からティッシュ引っ張り出して確認したりもしたけど、茶色い保護色のEクリップを見つけ出すことができず、いつも飛ばしがちなCクリップに引き続き「Eクリップおまえもか~!」と裏切られた気分である。仕方ないので在庫してるM3規格のEクリップを試したら、ちょっとユルかったのでペンチでキュッと締めて良い塩梅にしてしのぐことができた。
 グリスグッチャリで仕上げて動作確認で問題なしとなって心底ホッとした。

 ほんと、冷や汗タラタラの大苦戦で、仕上がりは快調で見た目も綺麗な状態なので結果は良かったけど、ラインローラー周りの再建は未来への負債状態で残ったし、楽勝どころかやや負け越した感すらある。”慣れてる道でも安全運転”、”人は見かけによらぬもの”、”勝負は下駄を履くまで分からない”気の緩みを戒める先人達のお言葉を噛みしめ反省するしだいであります。

 ジイサン歳食ってきて、明らかに手先も不器用になってきたし、注意力も落ちてきて、しょうもないミスをやりがちな今日この頃。今回この記事用の写真でも一番上と下はセイゴに飛沫かけられたのをレンズ拭いてなくて塩気でチョットボケてるこの有様。
 丁寧に注意深く、基本に忠実にというのを改めて自分に言い聞かせるのであった。

2 件のコメント:

  1. Micon No.201が厨房の時の愛機でした。
    今でも稼働状態にしてますがスピンフィッシャーよりだいぶ静かで滑らかなのが印象的です
    沢山釣るより楽しく釣ろうのフレーズ覚えてませんか?

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    1. おはようございます
       このあたりの大森はやっぱり滑らかですよね。最近改めて感じてます。
       そのフレーズ、どっかで目にしてるのですがネタ元わからずTB302の箱とか出して見ましたが判明せず。ググると日釣振の標語とか出て来ますが、何か別のところで見たような・・・もやっとしてます。

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