2020年2月23日日曜日

3日間飢えたくなかったらカマスを12匹釣って干物にしなさい


 先週のブログはいつもに倍するぐらいの閲覧数を稼いだ。
 元がたいしたことないのでアレではあるが、既にブログさえ流行らん時流でもあり今更という感もあるけど、やっぱりせっかく書いてるからにはなるべく多くの人に読んでもらえたらそら嬉しい。
 自分の備忘録的なこととか書きたいことを書いてるだけなので、たとえ閲覧者数ゼロでも書くにしてもだ。
 ”インスタ映え”の逆を張るようなメジロの血まみれの写真ですら読者倍増である。やっぱり”グルメ記事”は手堅いのか?あと、猫の写真が載ってるとSNSとかでも受けがいいとも聞く。
 となると、いわゆる世間一般のアホグルメどもが喜ぶような「ノドグロの脂のノリが」とか「大間のクロマグロの大トロが」とかみたいな記事は1ジンバブエ・ドルほどの価値も認めていないので書かないし書けもしないけど、ネッチョリと魚の血と腸とでベタついて、干からびた鱗がこびり付いた魚を捌いたその手で書く超個人体験的な”お魚グルメ”記事ぐらいは書かねばならんという気がしてきた。あと猫の可愛い写真も撮らねばなるまい。
 猫の写真はウニャ子はカメラ向けるとイマイチご機嫌斜めになるのでオイオイ撮っていくにして、とりあえずアカカマスの干物もずいぶん作ってきて、自分なりに今のところの最適化した手順とかが固まってきたので、例によって自分の備忘録も兼ねて書いてみたい。

 まずは釣ったら、なるはやASAPで仕込む。コレ重要、っていうかコレでほぼ決まる。干物って干してる間にも分解が進んで熟成されていって味が濃くなっていくんだと思ってるけど、塩効かせてからさらに干し上げるって2日ぐらいはかかるわけで、鮮度良い状態から始めないとできあがり時点で分解進みすぎてグニャグニャッとした干物になってしまう。スーパーで安く売ってる干物なんかは冷凍原料で作ってるのでワシが思う理想の”干して引き締まった肉質”にはほど遠いグズグズのものが多く、旅館の朝食とかで出てくるアジの開きとか脂のノリはイイのも多くてそれはそれで旨いのかも知れないけど、ワシの思う干物の理想型には遠い。
 刺身は正直釣って次の日に食べても、魚種によっては死にたてほやほやの食感ゴムの味の薄い刺身より美味しかったりもするぐらいで、疲れてたら料理次の日回しでも良いけど、干物はその日のうちに仕込んでしまうことにしている。

 とりあえずはアカカマスの場合、まずはまとめて鱗を取る。写真右下の保冷剤の上に見切れている”鱗取り”は鱗が飛び散りにくくてイイ。アカカマスは鱗剥がれやすいのでそれ程手間ではないけど、日本の台所って女性が使うことを想定しているのでワシのような平均的な身長の男性でも流し台の底で作業しようとすると腰をかがめなければならず腰痛の元なので、最近は膝立ちで作業すると楽だと気付いて膝立ちでやっている。

 鱗が取れたら開いていく。わりと大事なのは包丁の切れ味が悪くなったらすぐに研ぐことで、切れない包丁で無理にどうにかしようとすると失敗するし怪我にも結びつきかねない。
 まずは、目の前ぐらいから先の上下のアゴを切り取る。歯が付いてるとせっかくパリッと焼き上がった頭が食べにくい。
 そして背ビレの上から尾ビレに向けて背骨の上に刃を沿わせるように包丁を入れる。この時は腹の辺りは背骨チョット越えるぐらいまで、シッポの方は皮残してぐらいに深く切る。返す刀で腹腔に刃先を入れていき腹骨を切りながら頭の手前まで刃を進める。ってところが上から2段目の写真。そこからヨッコイショと頭を縦にして包丁でテコの原理みたいにしてギコギコと力を入れて頭を割る。
 割ったら、内臓と鰓を指で摘まんで引きちぎって”開き”の完成。
 あとは洗って汚れを落として塩水に漬け込む。
 ちなみに開いているときに出る内臓のうち、一部は洗って飼ってる魚たちの餌に、浮き袋とちょっと膨らみ始めた卵巣はラップにくるんで冷凍しておいて味噌汁の出汁に使っている。
 ニベ科の浮き袋が膠成分多くて良い出汁が出ると中国人が追いまわすというのを聞いていたので、カマスも魚体の割に立派な浮き袋が取れるので物は試しと、干物作るときの12匹分を味噌汁にぶち込んでみたら、縮んで具としては存在感無くなってしまうんだけど、その程度の量で次の朝味噌汁がプルンプルンとゼラチン状になってるぐらいで出汁も良い味出てる気がする。まあバカ舌なので味は自信ないけど。

 でもって、塩水につけるんだけど、品質を安定させるために塩水の濃さと漬けおく時間はキッチリ測って一定にしている。
 保存性重視で塩きつめでカチカチに乾燥するか、生っぽくあんまり塩辛くない”オカズ性能”重視で行くかでも、もっと単純に好みでも塩加減は違ってくるんだろうけど、今のところ我が家では塩50gを酒チョット入れた500mlの水に溶かした10%食塩水で2時間30分がお気に入り。
 塩水はジップロックで作ると色々と捗る。まずは塩を溶かすのがバットとかの容器だとスプーンとかでカチャカチャ混ぜても溶け残りがちだけど、ジップロックに塩入れて水入れていったん封をして左右に激しく振って攪拌してやると素早く塩が溶ける。
 そして、開いた魚を入れたら空気を抜いてやれば少ない塩水の量で全体が浸かる。
 この時にも頭の先歯を切ってあるのが重要で、ジップロックに歯で穴が開かない。

 あとは2時間30分後にアラーム鳴るようにしておいて、干物網にならべて干す。1段に4匹ずつ乗るので12匹が干物原料仕入れの際の目標漁獲数となる。皮を上にして干し始めて、ある程度乾燥しきる前に一回ひっくり返すと網に干物がこびり付かずに済む。昼すぎ捌いて塩水につけて夕方干して、夜寝る前に裏返す。翌朝の一夜干しではまだ水分の抜けがあまいのでその日一日か、様子見てもう一晩ぐらい干す。干す時間は天気しだいで特に風があると早く仕上がる。
 パリパリに干し上げていない場合は、冷蔵庫に入れるときには皮の面をあわせた2枚一組みで抱き合わせてラップでグルグル巻いていくと2枚が貼り付いたりせず焼くとき取り出しやすい。
 昼と夜と2枚ずつ食べて3日分のオカズとなる。さすがに飽きてきて、食べる前は”またカマスの干物か”と思うンだけど、食べ始めるとやっぱり旨くて丼飯が進むのであった。干物と大根の味噌汁とかがあれば食事として質素ではあるかもだけど、美味しくて栄養的にも良いンじゃないかと思っている。
 当地では柑橘の栽培が盛んで、規格外品のミカンとかキロ100円切るぐらいで売ってたりするので、デザートにそれらを楽しむことで栄養バランスはさらに良くなる。1月ぐらいまでミカンが出てて、その後ポンカンがちょっと出て、今はハッサクが美味しい。

 カマスの干物って、干した繊維がギュッと締まって弾力が増して塩味と共に味が濃くなって、焼き霜造りも塩焼きも旨いけどまた違う旨さを発揮してくれる。
 干物といえばマアジが定番にして最強かなとも思うけど、カマスもなかなかどうして良い味で今現在の自分の中では干物2強という感じになりつつある。
 実家では、朝の干物といえばマアジ、タチウオ味醂、サメタレのローテーションでたまに”ハゲ”と呼ばれるウマズラハギの干物が出ると「今日は朝から豪勢だな」と思ってた。
 タチウオ味醂とサメタレは干物屋さんが作ったのをスーパーで買ってたんだろうけど、マアジは軽トラ行商の魚屋さんから鮮度良いのを買って婆ちゃんが作ってたンだと思う。あの味をまた食べようとおもえば、自分で干物作るしかないので魚料理できる人間で良かったと思うところである。
 働いてた頃は、正直釣りが終わったら帰ったらとっとと寝てしまいたいという思いが強かったので、魚リリースが多かったけど、今は魚料理をじっくり楽しむ贅沢な時間がとれるので、釣り場の資源管理は気にしつつも、自分が食べるべき魚は、作戦練って準備して楽しんで、実際に釣って楽しんで、料理して食べて楽しんで、それを文章にして楽しんで、皆さんにも楽しんでもらえたらなと思っちょります。

2020年2月16日日曜日

3日間幸せになりたかったらメジロを釣って食べなさい

 なんかここ数日体調悪いなと思ってたけど、どうも花粉が飛び始めたみたいで昨日帰ってきてから目が痒くなってきた。喉の調子も悪いけど花粉症だと内臓の粘膜も反応してるのかお腹の具合もよろしくない。今日は雨で花粉飛んでないのでチャンスだけど塩梅悪いときはおとなしくしておこう。
 嫌な季節の数え方だけど、花粉症が始まるともうすぐ春だなと思う。

 太平洋側で漁獲されるブリ(ワラサとかイナダも含む)の地位向上については常々なんとかせねばならんと思うところである。ワシャ何の責任もないけどナ。
 川崎在住時にも、その不当なぐらいの評価の低さからくる値段の安さについては、憤りつつも美味しくいただかせてもらっていて、以前にもひとくさり書いている。
 太平洋側で揚がるあんまり脂ののってないブリ一家については、ネット上でも味噌糞に貶す意見をよく目にする。
 確かに、日本海側で揚がる”寒ブリ”のように80センチで8キロになるとかいう豊度を誇る脂のノリのよい今時の消費者の嗜好に合致した代物とは別物であるというのは事実そうなのかもしれない。
 だからといって、そこまでは脂の乗らない太平洋産が不味いかといえば、全くそんなことはなくて、十分美味しい魚だし、ハッキリ言って脂がのってなければ旨いと感じられないのはバカ舌だと思うし(なんでも美味いと感じるワシの方がバカ舌か?)、脂っ気が足りないならそれを補完して、あるいは脂の少なさを生かして料理できなければ、単なる料理下手だと思うので、先日、ブリの手前のいい”メジロ”を水揚げして、半身を友人にお裾分けして、アラとかは猫にも食べるの手伝ってもらったけど、3日ほど掛けて毎食メジロで楽しんでみたので、実例をあげて太平洋側のブリ一家も美味しいんですッ!っていうのを示してみたい。

 まずは、料理なんだけど殺人犯が風呂場で死体を解体するのは、そうすれば血で汚れてもシャワーでサッと洗い流せるからで、皮も食べたいので鱗も取らねばならずってのもあってそれにならう。風呂場に90センチからある魚が転がってると非日常感が強烈で笑えてくる。

 風呂場の床に傷を付けたくないので力を入れて包丁を入れる時には下にまな板を置く。力を入れると言っても、プロの料理人がやるように出刃で頭とか背骨とかをダンッと一刀両断するってのは素人が真似すると包丁の刃が欠けるだけなのでやらない。手慣れた文化包丁は出刃ほど刃が厚くないので尚更である。
 基本は包丁で切れるところまで切っておいて、あとは手を使って力技でバリッとかいわせながらの解体作業で、尾丙の切断ぐらいは関節に包丁入れてサクッと切れるけど、頭の切断は背骨まで切ろうとせず、内臓も食べるので傷つけないようにしつつ周りの筋肉やらをグルッと切ってから口に手を突っ込んで背骨折ってねじ切る。カブト割りも、頭の先の方からある程度は骨が柔らかいので普通に包丁が入るけど、背骨に達すると包丁が進まなくなるので、そこで包丁は抜いて切れた裂け目に手を突っ込んでバリバリと割く。
 でもってなんとか魚焼きグリルに収まったので、頭半分の兜焼き。強火で5分裏返して5分仕上げに5分で皮目を焦がして中まで火をとおす。
 目の周りやら頬肉、後頭部?の肉が旨いのはいうまでもなく、パリパリの皮とクニュクニュの軟骨も手と口の周りをペトペトさせながらいただく。小腹が空いたときにネットとか見ながら”解剖”しつつ食べるのにちょうど良い。

 でもなんと言っても美味しかったのは、釣ったすぐの昼食で食べた内臓系。肝臓が特にトロッと甘くて美味しかったけど、チョット癖のある脾臓もコリコリクニュクニュの胃袋も心臓も美味。胃袋は給湯器の熱いお湯を掛けてから水でゴシゴシと洗って他の内臓もお湯掛けてからサッと湯がいて下ろしポン酢。
 今回、鰓と幽門垂、腸管は捨てたけど美味しい食べ方あるのだろうか?ご存じの方おられたら教えてくれると嬉しいです。メジロカマも当然旨い。ヒレもパリパリに焼けてたので煎餅みたいでちょっと良い味。

 新鮮な刺身は当然旨くって、定番のブリ大根ならぬメジロ大根も良い味で作り置きしておけるので昼飯にはちょうど良かった。皮もここにぶち込んでます。
 今回は初水揚げなのでベタな料理で行こうという方針で、メジロシャブもやったけど、当然美味しくいただけた。卓上コンロがないのでグツグツ言ってるコンロの上の鍋に切り身ぶち込んでから食卓に運び、余熱で火が通ってくのを食べた。

 多分そうだろうなと思ってたけど、簡単で美味しい料理方法は”ズケ”のような気がする。
 ズケなら脂っ気が欲しければゴマ油でもオリーブオイルでも足してやればよく、味付けも今回は単純に麺ツユで行ったけど、塩ネギでポキ風に仕上げても良し、各種ドレッシングで漬けても良し、風雲児さんお薦めの卵黄ダレで漬けても、ユッケ風にあとから卵黄乗せても良しでお好みの味が楽しめる。次回は卵黄ダレとかやってみよう。ブリ大根の汁かけて”ズケ茶漬け”風にしても旨かった。

 次回試してみたいのが保存食系で、脂がのってないっていうのは逆に保存中に脂が変質して嫌な臭いになったりしにくいので、干物とかには好適な素材のハズである。
 ブリの保存食って言えば富山あたりの”塩ぶり”が有名だけどあんな脂ののったヤツで作る高級品じゃなくて、適当に切り身を干した干物でも、乾燥と熟成で味がギュッと濃くなっていけるんじゃないかと思っている。
 カマスも今釣れるのは脂抜けてるけど干物原料としてはナイスで実に良い塩梅に干しあがる。
 というのをやるにはまた釣らねばならず、なんだかんだで釣りに行くんだけど、正直回遊待ちの釣りって魚回ってくるまで”魚いないところに投げてる”感が強くあって苦手だなと思う。
 一匹釣れば3日は食えるっていうのは魅力だけど、良い型といっても10キロ余裕で超えるはずの魚の5,6キロって考えると、まあ滅多に釣れない大きさではあるし釣れたら3日ぐらいは幸せになれるぐらい嬉しいんだけど、一発大物を!って自分が熱中する魚じゃないのかもしれない。
 何匹か釣ったら魅力が分かってきて熱中できると良いンだけど、現時点ではシーバスやらチヌが釣れるならそっちを優先しようかなっていう贅沢が言えるのが紀伊半島の底力かもしれん。恐ろしいゼ。

 ちなみにブリって一般的に長さなら80センチ以上。重さはブランド物の”寒ブリ”で6キロ以上とか7キロ以上とかなってて、91センチ5.7キロは長さ的にはブリの資格有りだけど、ワシ的には重さで不合格だとおもってメジロとした。ブリっていうのは文字通りブリッと太って8キロ前後ぐらいから上じゃないと呼ぶ気になれん。
 メジロが小さい魚ってわきゃないし価値のない獲物ってわけでは全くないけどね。ひねくれてるから3日も経つと喜びも薄れてモットモットと欲をかいてしまうんである。まぐれで一匹釣ったぐらいでエラそうに書くなと自分でも思うので、まずはもう一匹だな。

2020年2月8日土曜日

騙されるのが悪いのか?


 フライでカマスとか釣れば毛鉤巻く材料は在庫してるし金かからん。と思っていた時代もありました。
 全くそんなことないネ。
 アジも釣ってみようってなると6番もシュッと沈むタイプⅣ以上のラインが欲しくなるし(買いました)、カマス釣る8番も船だまりは水深あるので底近くを引くとなると60秒数えてから引っ張り始めるとか時間が掛かってイライラするので、タイプⅥの早く沈むのも欲しくなる(買いました)。
 ということで、今日はいつ来るかわからん青物を狙ってデカ目のルアー投げてる間中、横でカマス釣りまくられるという”精神的拷問”以外の何ものでもないような仕打ちを受けて、多いに鍛練が積めた気がするんだけど、帰ってきてから明日はタイプⅥも駆使してカマス釣ったるねンと、買ってあったシューティングヘッドの8番タイプⅥのライン、安物のシンキングのランニングライン、それと一緒に買ったリーダーを接続して準備してた。けど、このリーダーがどうも失敗した臭い。
 コレまで沈めて引っ張る釣りのリーダーは編み糸で重さのある「シンキングブレイデットリーダー」というらしいの(上の写真の左下の茶色いクシャッとなったの)を使っていて、その先にフロロのハリスを接続している。
 ちなみにフロロハリスは4号50センチ位、2号1mぐらいをブラッドノットで接続してその先に歯ズレ対策で4号30センチぐらいをブラッドノットより結束強度が落ちる外科医結び(サージョンズノット)で結んで、根がかったら最後の30センチ位だけ切れるようにしている。
 今回シンキングブレイデッドリーダーを買うつもりで、安物のランニングラインと一緒にシンキングの「ポリリーダー」っていうのを買った。ポリっていうぐらいだからPE系の編み糸だろうと思って買ったら送られてきたモノをみたら全然違う。


 端的に説明するとフライラインの短いヤツである。
 右の写真の上の方がフライラインで、下の方の太いのがポリリーダーであからさまにリーダーの方が太くて「これで大丈夫なのか?」という不安な状態である。あかんかったらすぐ交換だな。
 そもそもこんなリーダー付けるぐらいならフライラインの先端に直接ハリス(ティペット)を結びつければ良い気がする。
 フライラインの先に直接ハリス結ぶのは「関東一本どり」と呼ばれる接続方法で、フライも重いし散水して寄ってきた魚釣るから飛距離も出さないしでラインをハリスまで綺麗に飛ばす「ターン性能」なんてのが関係ねーゼな船で行くシイラ・カツオ釣りでは割とみんなやってた。
 正直カマス釣るのに、リーダー無しでハリス直結でいい気もするけどブレイデッドのリーダーって独特のしなやかさと癖の付きにくさがあるので、ひょっとしたら食い込みの良さやアタリの取りやすさに貢献しているかもしれず「釣れてる時は道具を変えない」のは基本だと思うので同じように組みたかったのにこの始末。
 どういう使い方のために存在するのか、お勉強しようとネットでググったんだけど、イマイチ分からん。スペイキャストの時に重いリーダーは錨になって早いタイミングで”抜け”てしまうのが防げるとか、そんなもんもうチョイとライン出しておいたら良いだけやんけ?な感じでそもそもワシゃスペイキャストなんてやったことない。唯一それはあるかもなな使い方は、ラインが竿に対してチョイと軽いかな?って時に「ラインを足す」ような効果が期待できるとか。まあそういうの必要なときには使えるかもだけど今はいらん。
 あと、裏技的に低番手の竿のシューティングヘッドとして使うってのも紹介されてた。これはアジ釣りで使えるかも。それでいいなら安上がりで良い。
 しばらくフライもやってなかったので、道具もいろんなのがでててラインに関してだけでも「スカンジナビア」とか聞いたことない投げ方用のとかあって何が何やらさっぱり分からん。
 検索すると、なまじっか半可通な一家言ある釣り人がそれぞれに違うこと書いてたりしてるから、欲しい情報になかなか辿りつけない。
 さすがにフライの道具売ってる企業のサイトはまとまってて読みやすかったけど、あいも変わらず「我が社の道具を使えばこんなに釣れます」的なクソ宣伝が多くて気分が悪くなる。まあ無償奉仕でやってるわきゃないので当たり前っちゃ当たり前か。

 だとしても、全くのペテンとしかいいようのないフライ用のティペット(ハリス)の宣伝文には気分が悪くなった。
 曰く「フライのティペット用として売られているものと比較して我が社の製品は細くて強い!なんとあのシーガーFX1号に0.8号が引っ張り合いで勝ちます。」だそうな。コレを読んで迷える羊なフライマン達は「しゅごい!コレは買わなくちゃ」と買ってしまうんだろう。騙されて可哀想に。
 確かに引っ張り強度では勝つんだろう。いやらしいことに素材がどこにも明記されていないんだけど、たぶん間違いなくナイロンであると推理。
 以前自分で実験してビックリしたけど、今時のハリス用ナイロンは引っ張り強度的には同じ太さのフロロカーボンより強い。なんでもフロロの1.5倍ぐらいあるとか。フロロであるFXに高性能ナイロンが引っ張り合いで勝ってもなんにもおかしくない。ごく普通の結果。そのへんのヘラ用ハリスでも買っとけッテ話。
 じゃあ、なんでナマジを始め多くの釣り人がハリスにフロロを選択するのか?それはフロロの方が堅くて耐摩耗性に優れているから魚の歯に接するハリスとしてはフロロの方が総合的には”切れない”からである。
 例外はヘラ釣りで、コイ科魚であるヘラは喉の奥に咽頭歯はあるけど口には歯がない。だから耐摩耗性は気にせず引っ張り強度の高い高性能ナイロンがハリスに選ばれるのである。
 アホな宣伝文句を真に受けて、ハリスを一段階細くできるなんて勘違いして使ったら、口の外にフライのアイが出てれば期待通りの”強さ”を発揮するだろうけど、口の中に入ったら”切れやすい”っていうのはちょっと考えればわかること。
 こういうペテンが昔っから繰り返されてきていて、それでも騙される釣り人が後を絶たないっていう釣り具の世界の胡散臭さが鼻についてくるので、なるべく釣り具は知ってるモノしか買いたくないんだけど、たまに便利なモノや革命的なモノも出てくるので騙されてみるのも一興かなとは思う。
 でも、あんまりしょうもないペテンをやってると信頼失いまっせ。

2020年2月1日土曜日

枢機卿も時代とともに


 知人から「カーディナルⅡっていう今時のABU(ピュアフィッシング社)のスピニング買ったんだけど、4千円ぐらいで安くて調子良いので2台買って一年ぐらい経ったら、ルアー引いてるときにたまにカツカツッて感じのアタリと間違えるようないやらしい振動が出るようになったけどどうにかならん?」と相談を受けた。
 2台とも同じだそうで、不規則にしか症状が出なくて再現が難しいらしいので原因特定できる自信がないけど、同じような症状が2台で出てるなら設計的な問題があるのかもしれず興味が湧いたので1台預かって修理に挑戦してみることにした。
 ついでに彼はアウトスプールになった時代の「カーディナルC4」を当時愛用していて今でもたまに使ってるのを知ってたので、不具合生じてないそうだけど是非分解させてくれとお願いしてこれも預かって分解清掃注油を行った。
 預かってしばらく放置していたけど、しばらく前の大時化の日に釣りに行かず時間ができたのでやっつけた。

 名機「C4」はさすがという感じで勉強になった。
 C3とともにABUの黄金期の歴史的傑作機のカーディナル33や44の機構やデザインをある程度継承しつつ当時主流となっていたアウトスプール版で左右両用化しているんだけど、33とかが中古屋の陳列棚に並んでいると、本体がスッキリと薄型で昔のボルボを思わせるようなカクカクとした北欧系デザインで格好いいのに惚れ惚れするんだけど、C4も同様に本体は薄型でスッキリしている。
 なぜ薄型なのかはパカッと本体蓋開けてみれば一目瞭然で、巻きは重いが耐久性と感度の良さでは定評のウォームギア方式なので、ローター軸のギアとハンドル軸のギアが重ならず、平面的に横に配列されるので薄くなるのである。
 同じウォームギア機でもPENNの714Zとかではハンドル軸のギアの部分モコッと丸く出っ張らせてあって、アルチェードではさらに極端におもいっ切りギアの形が分かる形状でそこにカワセミの意匠の丸いレリーフがあしらわれてて各国のお国柄がしのばれるようで面白い。
 ABUの場合、ハンドル軸のギアの隣にオシュレーション(スプール上下)のためのギアも並べて、ついでに空いたスペースにドラグも入れて、濡れたらいかんような部品が全部本体内に入ってて、おかげで何十年と使われてきても腐蝕もなければ摩耗もしておらず改めて分解清掃する必要もないぐらいの感じだった。ローター軸のギアはステンレスでストッパーが一体成型されててクソ丈夫にできてるし、他のギアも真鍮製で耐久性高いのが見て取れる。ベールスプリング交換だけで死ぬまで使えるはず。ベアリングも浸水したら交換かもしれないけれど、グリスシーリングしておいたから通常の使用ではまず錆びないだろう。ハンドルねじ込み式で軸が鋳込んだステンレス製で摩耗に強いからか、ハンドル軸は銅製のブッシュで受けていて、ボールベアリングはローター軸に一個だけである。銅製のブッシュは錆を心配する必要はないだろう。
 ラインローラーは樹脂製スリーブの入ったセラミックっぽい素材のものでなんならPEライン使っても大丈夫かも。
 分解清掃も蓋のネジ3本はずせばギアにグリス注入できて整備性が良く、全バラしもドラグを外すのにドラグ押さえの曲げた金属板の内側のスペーサーを抜いてからドラグを斜めにして外すところだけコツが要りそうだけど、基本的には単純明快でかつよく考えられてるなという設計配置で他に似たような設計のリールを見ないだけにABUがいかに凄かったかというのが改めて理解できる。
 ドラグがユルいと話してたので、チョット強めにできるように調整した。ドラグの後ろについている曲げた金属バネがへたってくるとドラグ締まらなくなってくるはずなので強く締まる塩梅に曲げておいた。ドラグパッド自体がツルツルになってるだろうからパッド交換すればもっと良くなるだろうけど、そのままでも充分釣りにはなりそうだった。

  敬意を表してグリスはいつもの海用の青いのではなく昔アンバサダーに付いてきたABU純正グリスをグリグリと塗りたくっておいた。ドラグだけドラググリスでラインローラーとベアリング、主軸にはダイワのリールオイル。
 ネジ1本なくしてしまっていたので、この時代は名古屋の”瑞穂機械製作所”が作ってて日本製なのでひょっとしてJIS規格の普通のネジでいけるんちゃうか?とリールに使いそうなステンレスネジは在庫してるので試してみたら3mmのでビンゴ。良い感じに快調に仕上がったと思う。
 C3ではベールスプリングが耐久性なく割とすぐに折れるのが玉に瑕という意見を散見するけど、このC4はベールスプリング交換なしでこれまで使ってきたそうで、大きい分スプリングの強度にも余裕を持たせることができたのかもしれない。
 日本が世界の工場だった頃の技術力の高さをまざまざと感じられて誇らしい気がする。C3、C4は人気もあったので中古で弾数も多く、消耗品的な部品であるベールスプリングも須山スプリングさんに注文すれば良くて、それ以外に壊れるような部分も見当たらないので、リール買い変えるの面倒臭くて釣り具メーカーのしょうもないモデルチェンジに付き合うのもウンザリだ、という向きにはまずは4桁スピンフィッシャーをお薦めするけど、C3、C4も弾数の多さに加えて修理だの調整だのを請け負ってくれる業者の豊富さからもお薦めできるなと思ったところ。
 持ってる人達は大事に使ったってください。
 昔のABUが”FOR LIFE”と謳ってたのは嘘じゃないって話。



 一方、カーディナルⅡの修繕ほうは難しくって、結果的には特定の状況でカツカツいうのは無視できる程度に治まったけど全体的にスムーズさは失われてしまった感じ。新品同様には直らんかった。スマン。面目ねえッス。
 樹脂製の軽いリールで巻きも軽くて滑らかで今時の安いリールはけっこう立派なもんだなと感心する。
 分解していくと、まあこの価格帯のリールはハンドル軸のギアは亜鉛鋳造製なので、ハンドル共回り式。小型リールではとくに問題ないと思っている。チープ大森も共回りだけど魚釣れるし。
 お尻の蓋を外すとギアに注油する穴が開いてるのはナマジ的には高評価なんだけど、いくつかのネジがえらくネジ山の”薄い”タップネジで外すときにネジ山舐めそうで怖かった。組み付け段階でも苦労した感じでネジ山若干削れてた。ネジがイマイチな品質ってところに安い工賃の工場で作ってるんだろうなというのが見て取れる。
 ナマジ的に減点対象が、諸悪の根源”瞬間的逆転防止機構”がついてて、かつローター内部の浸水しそうな部分に既製品の一方通行のベアリングを逆転させる仕組みを積んでるんだと思うけど、バネが剥き出しのチョット見たことない機構が乗っていて、今回ここは不具合生じてないので見えてるバネにグリス塗っただけで”ソッ閉じ”しておいた。

 カツカツ言うのは2台ともそうだということで、設計的な部分から来てるんだろうなと想定して、音がするときとしないときがあるってことはおそらく、スプールの乗ってる主軸が遊びの分ガタがあるはずだけどその遊びでスプールがあがってるときと下がってる時で違うんだろうと、スプール押さえて回転させてみたらスプールが上に来たときにカツカツ音がすると判明。
 どこか当たってるのかなと、各部品外しながら回して確認していくと、ローター外しても鳴ってるのでギアかオシュレーションかでオシュレーションの形を見たらカムがS字型の最近のダイワ方式?で、この方式は上に来たときだったか下に来たときだったか1箇所軽く引っかかるような動きをするとか読んだことあるのでどうも緩んで精度が落ちたのでその引っかかりが大きくなってるッポイ。

 なので、グリスグッチャリで粘らせてがたつき押さえてネジ締め直して緩みを減らす方針で整備したんだけど、音は静かになったんだけどアタリが取れてそれなりにスムーズになってたのがギクシャクしてしまった感じで若干もとより回転が”ノイジー”になってしまった。
 元に戻らないのは、イマイチなネジが締め込みにくいのとそもそも樹脂製なのであんまりきつく締められないってのもあるのかも。
 なんちゅうか、安価で売るために安く作ってるはずなのに、インフィニットには殺して逆転する機構もつけてあるし、オシュレーションなんて普通に往復する方式で巻き上がりフタコブラクダで何が悪いって感じだけど平行巻にするためダイワ方式にしてたり、安い樹脂製のリールには合ってない設計なのかなという感じ。

 C4の名機ぶりも感動モノだったけど、カーディナルⅡの、このデフレでモノが溢れてて新品が売れない時代に何とか売ろうとして、ダイワシマノに負けんようにインフィニットも平行巻も全部乗せでオマケに替えスプールも付けちゃうってあたりに、無理難題を突きつけられてる労働者の哀愁的なものを感じて味わい深かった。ある意味今の時代を象徴している気がする。他人の仕事を正当に評価せず、無理難題を押しつけるようなことをやってると、アンタの仕事も正当に評価されずに無理難題を押しつけられるゾって話。
 縁あってやって来たからには、多少ノイジーでも気にならない釣りにでも使ってやって欲しいと思う。

 安いリールは、瞬間的逆転防止機構は今時ついてないと店頭で回したときに買ってもらえないからつけるにしても、逆転させるスイッチなんて省略でも安価なリールを買う層は気にしないはずで、そこはPENN430ssgみたいに割り切っても良いンじゃないかと思う。
 ボールベアリングはドライブ軸のギアが亜鉛鋳造なら摩耗対策でドライブ軸に2個、主軸には逆転防止兼用で一方通行のを1個の3個でラインローラーにはなし。
 オシュレーションなんて単純なカム方式で何が悪い。スプール短く径を大きくすればクランク方式でも行けると思うぐらい。
 軽くて安い樹脂製で、ネジはすぐに穴がスカスカにならないように、雌ネジを金属製に、とかは経費かかるからせめて余裕を見て大きめ長めのタップネジで強度を確保、ぐらいの単純な設計で今時の安くて精度の出せるどっかの新興工業国で作ったら、何の問題もないものができると思う。っていうか既にそういうのは作られてると思うけど、わかりやすい”売り”がないと話題にもなんないし売れないんだろうな、物を売るのが難しい時代だなと思う。
 なんにせよ、どんな時代でも名作の影には数多くの駄作、奇作、失敗作に普通作があったはずで、今の時代には今の時代の名作が作られることを願うしかないンだけど、それがアホみたいな高額の機種ではなく普通の釣り人の手の届く価格帯に現れてほしいものだと願うのみである。