2023年9月2日土曜日

ATTACK5000-パソコン椅子探偵コリアわからん編-

 ずいぶん前に買ったのを遅ればせながらいじくっている。どれから整備、修繕するか打順を組んでるんだけど、使う予定があれば打順繰り上げとかもするけど、基本買った順番に整備していくことにしていて、このリールを買った5月頃ワシの中に韓国スピニングブームとともにブッコミ泳がせとかの実釣想定でリアドラグブームも来ており、打順はここから3台ほどリアドラグが続く予定。

 その、一発目は「ATTACK5000」。って言ってもほとんどの人は初めて目にする機種だろう。ワシもネットオークションで見つけるまで見たこともなければ興味もなかった。なんでそんな知りもせんかったようなのを買ったのか?見た瞬間「アッこれ韓国日吉釣具製や!」と思って反射的にマウスが滑ってクリッククリックしてしまったのである。

 なんで韓国日吉だとパソコン椅子探偵ナマジは推理したのか。

 一つ目は、ローターの下の方に出っ張った帯があるのが韓国日吉製のゴールドスピンと同様。写真一番上でわかるだろうか?スプールのスカートが下がりきる位置よりちょい下ローターの腕?が立ち上がる高さに出っ張りがある。この位置だとスプール上下の邪魔にはならんのであっても良いけど、特に必要性があるようにも思えないので、こういうデザインの癖なんだと思う。雨除けとか多少意味あるのか?ないよな?って感じなので設計的に意味があれば”収斂”でたまたま同じになったとかもあり得るけど、これは同じところで作ってる気がする。

 もいっちょ地味だけど、逆転防止のスイッチを切ると赤いポチマークが出てくるんだけど、これが剥げ落ちないように凹部に赤ポチなのも細かい癖がいっしょっぽい。

 でもって、足裏に「KOREA」とあり韓国製とくればコリァ韓国日吉製だよなと迷わず確保に走ったわけである。ちょい大きめの大森で言えばNo.3サイズ、PENNなら4500ぐらいでたぶん入札ワシだけだろうなという予想どおりで開始価格の1000円落札の送料657円で確保。ちなみにブランド名製造メーカー名とおぼしき表示はどこにもない。

 コリァ良い買い物だったわいと思って、我が家に届いてみてちょっといじってみたら、コリァ韓国日吉製じゃないかも?と推理に疑問符がつき始めた。

 外観と、左ハンドルにするのにハンドル外しただけで、まずリアドラグの方式が、ゴールドスピンだと本体にドラグが入っててドラグノブのお尻にはネジが来ないんだけど、ATTACK5000のお尻にはネジがあり、どうも大森マイコン方式でドラグノブの中にドラグが入ってる気配。

 そして、なんといってもハンドルのネジ。ハンドルはねじ込み式で左右両用なんだけど、ネジの方式がゴールドスピンは左右で太さを変える方式なんだけど、こいつは大森みたいに同軸状に左右のネジ山が切られている。かつ、大森のとも微妙に違って、大森だと先端のほうはネジ山の削れたような棒状になっているけど、その部分はなく先端が丸くなってる、逆に根元の方に折り畳みの関係だと思うけど両側削られた部分がある。

 コリァちょっと製造元の推理は一筋縄ではいかんぞと、分解したらある程度ヒントが出てくるだろうから、またその時パソコン椅子探偵ナマジの出番だなととりあえず整備待ちの箱に入れてソッ閉じしてはや数ヶ月。今回分解整備とあいなったわけである。ちなみにネット検索でもどうにも素性が出てこない。

 スプールはワンタッチ付きの樹脂製でまあ普通。で、パカッと本体蓋を開けると、意外それは本体蓋樹脂製、って感じでせっかく金属製本体なのに力のかかるギア側を樹脂製にしてるのはいかんとも、このへんはただの蓋ならと軽量化のため蓋を樹脂製に変更したPENN「スピンフィッシャー714Z」あたりとは違ってうかつな感じではある。しかしながら軸受けはこちらに重点を置く必要性があるのは認識しているようで真鍮製のブッシュがハメ殺されていて摩耗対策されている。逆側は本体のアルミで直受け。まあ樹脂製だから問題生じるほど強度面劣るかっていうと、たぶんこのクラスではそんなことないだろうから良いのか?ちなみにハンドル軸のギアは亜鉛で軸は鉄かステンっぽく、ローター軸のギアは真鍮製。ローター軸のギアの形状的には角が立ってて大森よりは日吉的。

 でもって、ハンドル軸のギアをヌポッと抜くと、逆転防止の仕組みがちょっと独特。

 逆転防止はローター軸のギア直上に填められた、ステンレス打ち抜きっぽい丈夫なラチェットに爪を掛ける方式なんだけど、大森式でバネで爪を押しつけてるんじゃなくて、ハンドル軸のギアの下にカパッと填めた樹脂製の部品に任せている方式。

 マイコンとかでもカリカリ鳴らない静音化のパーツとかでこの位置に樹脂部品入ってるけど、それよりもっと単純明快な仕組みで、下の写真見てもらうと分かるだろうか、指で摘まんでる本来ハンドル軸のギアと一緒に回る部品から2本の板が伸びていて、その間に逆転防止の爪の後ろ側の突起を納める形で運用する。逆転防止スイッチON状態で、正回転時には樹脂部品は左に回ろうとして爪をラチェットから遠ざける方向に押すので、ラチェットと爪が当たらず音が鳴らない。逆転時には樹脂部品は右に回ろうとするので爪がラチェットに押しつけられてストップがかかる。小っちゃくて壊れそうな樹脂部品にまかせっぱなしだと、樹脂の板が折れたときとか逆転防止がどうにもならなくなるのでやや不安ではあるけど機構として単純な点は悪くない。ちなみに逆転防止スイッチOFFだと爪がラチェットから遠ざかる方に押し下げられてラチェットに爪が掛からなくなり逆転する。

 そしてワシがこのリールを大いに評価する点は、オシュレーションカムを主軸に固定する方式がワシの大嫌いな”Cクリップ”ではなく、大森「マイコンTBシリーズ」方式の両側まとめる金属板を使う方式で、かつカムの上にネジ固定しており、そこはシルスター「CX60」と共通している。写真右のオレンジの丸で囲ったのがその部品。マイコンSSでもゴールドスピンでも主軸に填まるCクリップには煮え湯を飲まされトラウマ(「トラウマ」とは心理的外傷のことで、古代中国明の時代の武人であった馬漢が撤退戦において山中で虎に襲われ錯乱した愛馬にも蹴られたことから、命からがら逃げ延びたあとも度々思い出して恐れた故事に由来する。参照:民明書房「いやん馬漢!」)になってるので、この方式を採用しているのは大変立派。ちなみにオシュレーションカムに刺さる下の亜鉛製の歯車の出っ張りにはちゃんと真鍮製のカラーが填めてあって、古き良き日本の中小リールメーカーの丁寧な仕事ぶりが韓国にも伝承されている様がうかがえる。

 主軸も抜けたのでローター外すと、わりと手抜き系のベール反転機構がぶち込まれている。ローター軸のギアは上には抜けず下に押して本体内に落とすと外せる。さっきも書いたけど真鍮製でストッパーはステンレスでしっかりした作りで良い。ベール反転機構は大森にやや似ていて、ベールアームと反対側にバネで引っ張った金属パーツがきて、コイツを本体側の”蹴飛ばし”が蹴るんだけど、大森とかのように簡易ローターブレーキは付いていない。本体の金属を凸らせて直に蹴る。そしてベアリングはローター軸に1個と潔く賢い設計なんだけど、ちょっと変わってて樹脂製。ネジ留め2箇所で填められている。玉はステンのようだけど強度のマイナス面と錆に強いプラス面のどちらが効いてくるのか、このへんは使ってみないとなんともいえないけど、回転の軽さ自体は何の問題もなく滑らかに回っている。回転バランスも良い。

 ベールアーム周りにうつると、ラインローラーは真鍮にクロームメッキでスリーブ無しの回転式。ここも日本の中小リールメーカーに習って樹脂製スリーブ入れて欲しいところだけど、真鍮にクロームメッキの回転式ラインローラーは案外削れないのか、いまのところ真鍮系のスリーブ無しラインローラーで削れた経験はない。まあ丸ABUの”C”の付かない機種とかスプールの軸受けがボールベアリングじゃなくて銅製ブッシュ使ってあるけど、あれが削れるってあんまり聞かんから堅いステンとかの素材と真鍮の組み合わせの回転部は大丈夫な気がしている(当社比)。

 でもってベールアーム。パッと見て「細くない?」って疑問に思うかもだけど、なんか細いです。しかも樹脂製で大丈夫か?って思ってたら大丈夫じゃなくて、細いベールアームの限られたスペースにベール返すバネを突っ込む穴を開けているので、強度が足りずに分解清掃終わって組むときに変に引っかけてしまったら表面的に欠けてしまった。穴は深くてベール返す機能的には正常でまだ大丈夫だけど、滑らかに回らなくなるかもしれないので、欠けた表面に瞬着塗ってティッシュ押しつけて固めてアートナイフで削って形だけ整えておいた。長期的にはやや強度面が心配な箇所。なんでこんな細くしたんだろ?ラインローラーも直径小さめでベールアーム全体的に軽く小さくなっていて、その辺、回転性能を意識してならたいしたもんだけど、たぶんなんか格好いいからシュッと細くしただけとかのような気がする。

 ベールアームが折り畳みできるのはワシ的には加点要素。でもってその方式がコレまで見たことない方式で、使用時はベールアームは矢印のところで折り畳みの金具に止められる。これをポチッと押すと金具は下に板バネが付いていて下にさがって、矢印のところが下がってベールアームの凸部がその上を越えてベールを畳むことができる。という方式。ベール畳めるのは自転車釣行でリュックに入れて運ぶときベールワイヤーとかが曲がったりしないし携行に便利っていう利点ももちろんあるけど、ワシぐらいのスピニング熱患者になると、蔵に収納するときに畳んで省スペースになるのも重宝する。なにしろ現時点で188台もござるので場所取るのよ。なんか台数目標あったんじゃなかったかって?ハッそんな昔の話は忘れたゼ。

 で最後はドラグ。これは明らかに大森方式でマイコンとかと似かよってる。素材がちょっと違ってて、写真右上の方バネが入ってドラグノブのすぐ下に入ってるネジ切ってある部品はアルミでこれは大森だと樹脂製。そして左上から4枚がドラグパッドなんだけど、最初の本体と左下の音出しも兼ねたドラグの円盤部分を束ねる部品の間のだけ白いテフロン製で、他の3枚は赤茶のファイバーワッシャーみたいに見えるけど、これ大森リアドラグ機のドラグパッドに独特の繊維性の素材の表面を樹脂で固めたような素材で色は白じゃなくて違うけど触った感じでは似たような素材。でもって、グリスも塗って湿式で組み上げてドラグの具合を試してみると、非常に滑らかで調整幅もそこそこあって、今までいじったリアドラグ機の中では一番良いドラグだと思う。ほぼ大森方式踏襲で何が違うのか不明だけど、ドラグパッドの謎素材が同じようでいて進化しているのか、最近PENN純正グリスをドラググリスに流用してるんだけど、ひょっとしてドラググリスとして”使える”とは目にしてたけど、それどころではなくPENNグリス優秀なのか?原因分からんけど、良いドラグということが分かってれば使うのには困らないしまあいいか。

 ちゅう感じで全バラしして、なぜかグリスがそれほど劣化してなくて、さすがにギア周りはパーツクリーナーで脱脂してグリス塗り直したけど、本体とかはティッシュで拭けば落ちる程度だったので拭き拭きして、青グリス盛り盛りでいつものように仕上げておきましたとさ。外側もグリス塗ったくって拭いてたら蓋の樹脂に貼ってあった銘板が剥げて、そんなところは古き良き日本の中小リールメーカーの仕事ぶりを踏襲せんで良いのにとぼやきつつ古い接着剤のカスを剥がして”コニシのSU”で貼り直しておきましたとさ。

 で、大きさとしては最初書いたように大森No.3級で重さ測ったら約350g。今ブッコミ泳がせ要員として準備してたり使ってたりするのは、ハモ想定の港内用が4.5mの磯投げ竿と組んで使ってる大森「マイコンNo.202」で3号ナイロン運用。で、もうちょい大きいのも青物も想定されるポイント用には、さっきも出てきたけどシルスター「CX60」で4号ナイロン運用でたぶん竿は青物狙いで使ってる軽い方のブローショット10fと組ませる。今回のアタック5000はその中間の大きさだけど、どちらかというと糸巻き量的に4号でイケる感じなのでナイロン4号運用でシルスターとどっちが良いか比べてみたい。魚釣ってみんと釣り具としての評価はできないけど、スピニングリールの機械としての全体的な完成度はアタック5000の方が良い、っていうか不安要素はベールアームの細さと逆転防止の樹脂パーツの強度ぐらいで他は良くできているように感じるところ。かなり完成度は高いように感じる。

 にもかかわらず、コイツがどこが作ったリールなのかは推理にアタックしてみたけどお手上げでございました。日吉のようで日吉でない、大森というには決め手に欠ける、シルスターかと聞かれればこれも根拠に欠ける。結局このあたりの、日本のメーカーが韓国工場作って、その技術やら技術者やらが伝わったり真似されたり、交流があったりなんだりで、韓国でリールの製造が盛んになった結果、出て来た製品で箱書きもなければ、数も出なかったのかネット情報も引っかかってこないようなブランド名も聞いたことないようなリールについては、なんか資料か生き証人でも出てこない限り、リールの構造やらからだけでは推理しきれん!とパソコン椅子探偵ナマジ、またしても敗北宣言でございます。

 どなたか、情報お持ちでしたらいつものごとくタレコミお待ちしております。

5 件のコメント:

  1. 何気に4200ssの設計に似てませんか?
    ドライブギアの注油穴にストッパーの掛け方が4200ssと似てますし

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    1.  4200SSと似ているのは、以前どっかで書きましたが逆に4200SSがPENNがダイヤモンドリールみたいな小型軽量機を作ろうと真似したから、4200ssはPENNには珍しくストッパーがピニオン直下の本体内にあって、静音化もドライブギアの回転を利用した方式にしたのかなと。で、この韓国製リールも大森の影響があってこういう設計で、結果似ているということかなと。

       ちなみに注油穴は私は”のぞき窓”の意味が大きいのかなと思ってました。静音化部品を填めるときにちゃんとした位置に入ってるか覗きながらだとやりやすいように思います。注油穴兼のぞき窓兼軽量化なのかな。

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  2. ご無沙汰です。
    80年代後半のスタンダードな作りながらギアやハンドル回りはかなり丁寧そうです。
    一手間かけて減速オシレート入ってるのも良いですね。
    これだけちゃんとしたリール作るなら少しくらいメーカーなりブランドの主張をすれば良いのに勿体ない…

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    1.  まったくです。
       どっかのブランド名で出てたのの納品しなかったブツに適当にラベル貼って流したのかな?とかも思って、同型のリールがないかもちょっと探したのですがその気配もなく、謎のリールです。
       良いモノが売れるかっていうとそうともかぎらんといういつもの話でしょうか?実力の程を出番作って見てみます。

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  3. シルスターのEXシリーズというのが逆転スイッチのアカポチありと判明。シルスターの可能性が高まったかな?

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