2022年10月29日土曜日

パソコン椅子探偵ー「OMORI DIAMOND JS2 801」身上調査編ー

 このリールは何者か?そんなことに興味がある層はごく限られているだろう。

 タイトルにあるとおり、どうも大森DIAMONDの系譜らしいんだけど、話題になるような機種でもなく、大森ファンにも無視されるような機種である。「どうせ”韓国大森”製の大手メーカーと同じようなしょうもないヤツだろ?」っていう予想はある意味正解である意味誤りである。

 その辺りの事情を、パソコン椅子探偵ナマジがネットの海をさまよって集めた情報から推理し、みなさまに明らかにする所存である。

 すまないが、関係者(大森沼の)を集めてくれたまえ!

 まず外観から見ていこう、といっても逆テーパーロングスプールのどこにでもありそうな1990年代後半ぐらいのデザイン。3号が150m巻ける中型機。尻が妙に出っ張ってるのが特徴と言えば特徴か。

 スプールに「OMORI 801」のロゴと糸巻き量の表示、本体横には「JS2 DIAMOND」の文字が見て取れる。この時点で、大年の大森ファンは違和感を感じても不思議ではない。往年の大森製作所は自社のローマ字略称としては「OMORI S.S.」をよく使っていて、”オモリ”ではない。こいつはパチモンなのか?とこの時点では思う。思うんだけど調べてみると、単なるパチモノではなさそうな気配が出てくる。

 ネットで検索かけて調べてみると、どうもあまり売れずに中古屋ワゴンセールでたたき売られていたようだけど、箱入りでネットオークションなりに出品されているケースが散見され、もう一機種小型の「JS2 701」があったらしいという情報と共に、箱書きから製造元が判明した。

 「大森(中国)有限公司」という香港の製造元で、企画自体は日本の「大森ジャパンサービス」という神奈川県茅ヶ崎市にあった業者の主導のよう。その住所は現在どうなってるかグーグルマップ&ストリートビューで調べてみると、すでに大森ジャパンサービスではなくなっているようで歯医者さんになっていた。

 かつ、ネットフリマに当時のステッカーが出品されていて「SINCE1953 OMORI 801JS」という文字が竿とリールに添えられたデザインになっており、ローマ字表記が”オモリ”になってるとはいえ、ここまで書いてしまえるのは、商標権なり買ってないとさすがにマズそうで、大森製作所は1952年の創業で(微妙なズレは発売開始が53からとかのような気がする)その後70年代ぐらいに良いリール作ってた黄金時代があって、80年代の「マイコン」シリーズ大ヒットがあって、90年代ショボショボと傾きかかって、生産を韓国に移したり、上州屋に身売りしたりしていつの間にやら消滅。って感じだと思ってたけど、90年代後半に上州屋はくだんの「大森ジャパンサービス」に商標権等を売ったか引き継いだかして、「大森ジャパンサービス」としては当時の”今風のリール”をDIAMONDブランドで作って売りさばこうとしたんじゃなかろうか?というのが今回のパソコン椅子探偵ナマジの推理。このへん、商標権とか上州屋の知財管理担当者に電話して「どうなんですかそのへん!!売ってしまったんでしょ!歴史ある”大森DIAMOND”の商標権を2束3文で!!」と問い詰めたい気がするけど、対人関係苦手な引き篭もり気味のワシには無理じゃて。パソコンで検索して分かるのはこの辺が限界。どなたかその辺情報あればれいによってタレコミよろしくです。

 でもって我が家に来たからには分解清掃注油なんだけど、正直あんまり気がすすまんくて、夏に買ったリールの一番最後に残ってしまっていた。宅配で送られてきて現物手に取ってハンドル回した瞬間「あっ、これ瞬間的逆転防止機構入ってやがる!」って判明した時点でやる気はガタンと落ちた。逆転レバーが付いてるタイプってことは、方式は違えどもいずれにせよ面倒くせえ機構なのよアレ(逆転機能省略すればクソ単純な設計にはできる)。

 まあ放置しておいても仕方あるまいということで、エイヤッとやっつけにかかる。スプールはアルミ製でドラグノブが分解可能なのは好印象。ここはほとんどのメーカーでハメゴロされてる。ドラグパッドも大きな硬質フェルト製の3階建て方式で悪くはなさそう。意外と良かったりしてと思ったのもそこまでで、このあとワシ的に評価できたのはラインローラーにボールベアリングが入ってなくて樹脂製のスリーブが入ってるところぐらいで、あとは”なんだかな~”っていう感じ。ラインローラーのベアリングは入れる必要ないし、入れたら重くなるし錆びるし頭の悪い設計としか思えない。ワシわざわざジュラコン製ブッシュを削って大きさ合わせて換装して430ssgのラインローラーのボールベアリングは外しているぐらい。ちなみにボールベアリング無しで運用しても全く問題は無い。当たり前である。

 とりあえずスプールのあとは本体蓋開けるか、って分解し始めてオヤッ?となる。重量感からいって本体アルミかと思ってたら樹脂製でやがる。ちなみに重量測ったら340gと同クラスの金属本体のカーディナルC4とかが300gなのに比べても重い。重けりゃダメって話じゃないし、その分丈夫になってるとかなら良いけど、樹脂製本体、樹脂製ローターなのにネジは全てタップネジで、ベールアームとかの取り付けもタップネジで安っぽい作りになっててどうにもいただけない。じゃあ何が重いのか?っていうと一つは悪評高い共回り式の中心貫通型のワンタッチハンドルが重いんだろう。測る気も失せたけど多分重い。それと、この機種の特徴的なお尻デッカチな形状の部分に何が入ってるかって、位置的にスプール上下のための歯車ぐらいだろうなと思ってたけど、実際にデッカいのが入ってるのを見ると何がしたかったんだ?って疑問に思う。ついでにS字の溝が切られたカムも亜鉛鋳造でデカい。重いって。歯車デカくするのはギア比稼いでスプール上下を減速していわゆる”スローオシュレ-ション”にしたかったのと、ロングスプールでスプール幅が広いので上下動の距離が必要だったんだろう。けど、スプール幅が広くて上下幅が必要なら普通は丸ABUのレベルワインダー(平行巻機構)に使われてるようなクロスギア使うんじゃないの?って思うし、実際にはハンドル2.5回転ぐらいでスプール1往復でそれほど極端な”スロー”でもないし、方式は今時のダイワみたいなS字カム方式なんだけど、ダイワのリールがこんな尻デカになってるのは見た記憶がない。普段ハンドル1回転1往復の単純クランク方式のリールばっか使ってるから、いまいち1:2.5が減速値として遅いのかどうなのかも感覚としてよく分からん。S字じゃないけどカム方式で減速してる4桁スピンフィッシャーはどんなんだったっけ?って4400ssクルクルしてみたらだいたい1:1.5ぐらいの感じだったので、減速できてるっていえばできてるのか?その分軽く巻けてライン放出性が良くなってるのか?実釣で確かめてみないと実際のところは分からんのだろうからそのうち使ってみるか?だれか実際に使った人がいたら、もろもろ含めて感想是非聞きたいところ。

 でもって、気が進まないけどローターのところに”瞬間的逆転防止機構”が鎮座ましましておられるんだろうから、しかたなくローター外すと頭の中に疑問符が並ぶ。

 ?????なんじゃこりゃ、マルチポイント方式でローターの内側に歯が切ってあるんか?いやいやいや回して止めて逆転とかクルクルやった時点で、間違いなく瞬間的に止まっててマルチポイント方式は遊びが比較的少ないとはいえ、遊びほぼ0の瞬間的逆転防止機構とは明確に区別できる。瞬間的逆転防止機構は浸水やら気温低下による油の粘度変化で作動しなくなることがあって、誤作動しても最悪急に逆回転掛かって手を怪我するようなことがないように、大型スピニングでは保険的にラチェット方式も付けてあることがあるって聞くけど、レバーやらバネやら何をどういじっても、ローター裏の歯に掛かるようなストッパー的なものは出てこず存在しないので、そういう保険でマルチポイント方式がついてるわけでもない。これ、元々マルチポイント方式のリールのローターの金型をそのまま流用して経費削ってるんだろ?っていうのが真相のようだと推理した。そういえばローター上面にバランス調整でオモリのようなのが固定されているけど、上から2枚目の写真で黒く見えてるこれ、重くもなんともない樹脂製なんである。元の機種では金属製のオモリでバランスとってたのを必要なくなったので樹脂の部品噛ませてあるだけに思う。そういう目で見ていくとベールアームの反対側支持部の部品はここだけ樹脂製じゃなくて金属製なんだけど、それだと今度は行きすぎてベールアーム側の重量が足りんくなったらしく、一番下の写真の様にベールスプリングの下に真鍮の板を何枚かぶち込んで調整している、っていう感じのやっつけ仕事。

 じゃあ、どこのメーカーのリールの金型流用かなって考えると、当時マルチポイント方式の逆転防止を採用していたのはシマノもあったけど、基本的にはリョービの印象が強い。メタロイヤルしかりサイノスしかり、機種特定できるかなとネットで当時のリョービの機種を見てはみたけど、特定までは至らなかった。ただローターナットの緩み止めにネジを一本入れるのはザウバーとかでも見られたし、上州屋繋がりでもあるしリョービがくさいとパソコン椅子探偵ナマジとしてはにらんでいる。ちなみに「ザウバーVS 2000 Zi」っていうリールが尻デカでひょっとするとその血筋が入っているのかもしれん。

 でもって逆転防止は上の写真のニードルローラータイプの一方通行ベアリング(ワンウェイクラッチ)を上の樹脂の歯車でキュッと締めるか緩めるかの方式。下の写真の様にローターの下に鎮座してるけど、当然ながらこの位置は浸水しておかしくないけど防水でも何でもない。こういうアホな設計のリールが幅をきかせてたから、「リールは水道の蛇口からジャバジャバ水をかけてはいけない」とかワケの分からん話になって、スピニングリールに”防水性能”とか水辺で使う道具に、わざわざ新機能として宣伝しなきゃならんのがそもそもおかしいモノを高らかに宣伝文句に謳うようになったんだろうっていうチャンチャラおかしいお話。4桁スピンフィッシャーの逆転防止機構もローター下に入ってて、当然浸水は想定されるけど、ラチェット式は完全水没したところで普通に機能するので錆びない素材選定さえちゃんとしていれば機能的に全く問題ないうえに単純で安上がり。ローター軸のギアの直上、本体内に逆転防止が入ってる機種なら防水性もかなりある。大森オートベール方式しかりカーディナルCシリーズしかり。

 ローター下に剥き出しで瞬間的逆転防止機構もってくる仕様とか、そういう防水性に乏しいリールを使う人達って、雨の日には釣りに行かないのか?と雨が降ったら喜んでシーバス狙いに行く釣り人としては思ってたけど、たぶん雨の日には釣りに行かないんだろうし、磯で波飛沫をかぶったりもしないんだろう。せいぜい天気の良い休日に防波堤でサビキかチョイ投げぐらいで、サビキもチョイ投げも真面目にやると難しいし馬鹿にしてはいけないと知ってはいるけど、そういう人達は釣れなきゃそれでいいやで難しさに到達するほど釣り込まないだろうし、年に何回か使って道具も使いっぱなしで、であれば耐久性に優れた良品を求める必要などないし、ワゴン売りのイチキュッパー、ニーキュッパーぐらいのリールで、それなりに”今時”っぽい見た目をしてて店頭でクルクル回したときに軽く滑らかに回って遊びもなければそれで満足なんだろう。需要があるから供給があるっていつもの話。防水性という話で言うと、まだローターの下の逆転防止機構はマシな方で、いつも不思議に思ってたのはなんであんなに水が入るラインローラーにボールベアリングが入ってるかな?ということで、あそこは浸水防ぐのはエラい大変。特殊な防水シーリング済みやらセラミック製やらのボールベアリングはクソお高い。錆びないルーロン樹脂系ブッシュなら10個単位で数百円のお値段である。

 そういう視点でこのリールを見ると、それなりに”できてる”のが理解できる。回転は滑らかで、ちゃんとガタつきを薄い銅の輪っか状のシムリング二枚で調整してあって、分解してパーツクリーナーで洗浄したらどこからともなくシムリングが現れてあせった。填まりそうな箇所はハンドル軸のギアの両サイドか、スプール上下の歯車の裏かなので、3箇所順に試してみたら、ハンドル軸のギア蓋側のボールベアリングとの間が正解で、それ以外だと明確にハンドル回すと”ギアゴロ感”が生じる。その場所は分解するとき見逃さないだろうと思っていたけど、シューマイ弁当の蓋裏にくっついてしまったシューマイみたいにボールベアリングの裏にくっついてて分解時気付かなかったんだろう。ベールスプリングもコイルグルグル方式で壊れないだろうし、ローター下に浸水させないような晴れの日の釣りなら瞬間的逆転防止機構も不具合起こさないだろうし、”遊び”がないと起こしたベールの位置調整がやりにくいとか玄人衆のような不便を感じるほどの腕もないだろうし、ラインローラーにはボールベアリング入ってないのでそこは錆びる心配もない。分解清掃などしないのならネジは樹脂本体に直接タップネジでなんら問題ないだろう。ドラグはむしろもっとケチって赤いファイバーワッシャー1枚方式とかの方が”ツマミがきちんと締まる”し安く上がったかもだけど、ロングスプール機には普通3階建てのドラグ入れたくなるというものだろう。

 ただ、それを”大森DIAMOND”の名前でやる意味があったのかって話で、この時代になると当然韓国製やら台湾製、その他アジア各地新興工業国からの安っすい似たような機種はワゴンにぶち込まれてただろうし、国内大手も安い価格帯は生産拠点海外に移したりしつつ、全力で広告も打って売りにきてたはずで、元々このリールがワゴン売りを想定してたのか、もっと高めの価格帯で勝負しようとしてコケてバッタモンとしてワゴン売りになったのか、おそらく後者なんだろうけど、そうであるならなぜこんな当時どこにでもあったような仕様のしょうもないリールにしたんだろうかと疑問でならない。もうとっくの昔に”ダイヤモンドリール”のブランド価値は地に落ちてたはずである。だから上州屋も2束3文で手放したんじゃなかろうか?

 ワシが今、”大森DIAMOND”の商標権を手に入れたなら、って頭のおかしい妄想をするなら、以前にも書いたけどマイクロセブンCシリーズの手直しをして、ベールスプリングの強化、スプールエッジ形状の最適化、糸巻き幅とスプール上下幅の一致、ラインローラー形状等調整、ハンドルノブの形状オプションパーツ化、をやりたいところだけど、いかんせんマイクロセブンCシリーズは人気がない。銭の花が咲く目がまるでない。となると狙うは、史上最強級の単純軽量機「キャリアー」を上記と全く同じ手直しをして復刻完全版「キャリアUP」として、もいっちょは大森インスプールの最終形「コメット」のこれまた同様の手直しをベールスプリングはインスプールの場合そのままで良さげなので放置して施した復刻完全版「パーフェクトコメットさん」として、釣り具業界に殴り込みをかけたい。あと大事な事を忘れるところだった。銘板をくっつける接着剤は耐久性に優れたのを使う。これ重要。

 などと耄碌したジイサンゆうておりますが、「大森ジャパンサービス」関係者の方でまだ商標権持ってるよ、という方がおられましたら、是非ご連絡を、2束3文で買いたたかせていただきますのでよろしくお願いします。

2022年10月22日土曜日

「私の愛したルア-」に限って廃盤になるのはなぜ?

 「愛ゆえに人は苦しまねばならぬ!! 愛ゆえに人は悲しまねばならぬ!!」
「こんなに苦しいのなら悲しいのなら・・・

愛などいらぬ!」

 などと聖帝風に始まっておりますルア-図鑑うすしお味第55弾でございます(「せいてい」で変換候補にちゃんと「聖帝」がでてくるATOKのオタクっぽさよ、と思ったら元々儒教由来の言葉のようだ。3”へぇ”ぐらいかな)。

 今期メッキ釣りで、とりあえず真っ先に投げて様子を見るし、一番信頼して投げてるのはストームブランド(ラパラ)の「フラッタースティック4」、投げてるミノーはほとんどバスディの「ドリフトトゥイッチャー50」である。

 フラッタースティック4については、安くて釣れて文句なしのシンキングペンシルなんだけど、7センチ、10センチに関しては既に廃盤で、4センチはまだカタログには載ってるけど、今新品があんまり売ってないという不穏な雲行きなのは、生産の端境期なだけだと信じたいところ。写真の様に色塗り替えたりもしつつメッキの歯形やらぶつけた傷やらでボロボロになるぐらいに酷使しまくってて信頼は揺るぎない。以前にも書いたように浮き上がる動きの強いバスディ「海爆リップレス」とは使い分けしていて、ゆっくりタダ引きで使う海爆リップレスに対して、多分普通の釣り人が想像できてないぐらいの思いっきり竿であおって速度を稼ぐ”ジャーク&ジャーク”で早さで見切る間を与えないぐらいのつもりで反応させて釣っている。まあ、いうても子供とはいえ回遊魚であるメッキにしてみれば、胸ビレ広げて余裕の巡航速度で追いついて食ってくるわけだけど、トロ臭い動かし方で食ってくる時にはおおむね早引き系でも食ってくるけど、逆に早引き系じゃないと食わんときは多いと思うのと、早引き系の方が探っていくときに時短で済むので多くの水域を探れるので、せっかちな人間には向いてる。廃盤になった7センチの方はバチ抜けシーバス用としてダイキリさんに教えてもらって、浮き上がりにくい水平姿勢のバランスで多くのバチ抜け用ルア-よりちょい下層を引けて実に良く釣れて頼もしいルア-だったけど廃盤になって久しい。なぜ廃盤になってしまったのか?と考えるに能力的にはあまたあるシンキングペンシルに全く劣ってはないはずだけど、値段が安いという美点が、高いモノをありがたがるアホウな釣り人に受けなかったのもあるのかなと思う。それと多分この手のシンキングペンシルって日本市場向けが主で、海外ではあまり使われなくて海外市場で数がはけなかったのも原因か?とかも考える。いまやストームブランドも世界企業のラパラ傘下で、なにしろ製造コストかかりそうなバルサミノーを1500円ぐらいでぶっ込んでくるメーカーなので、樹脂製のフラッタースティックは実売で千円前後とお値打ち価格だったんだけど、安い分釣れないんじゃないか?なんていう不安を抱くような、釣り具業界のカラクリを理解しておらず、ルア-の実力が分かるほど釣り込めない層には逆に受けなかったんだろう。フラッタースティック4まで廃盤になってしまわないように、ここで勝手に宣伝させてもらって微力ながらも応援しておきたい。費用対効果抜きにしても純粋に良く釣れるルア-なので皆さん買って投げてみてください。動きはタダ巻きだと普通にフラフラとシンペンの動きだけど、水面飛び出すギリギリ手前ぐらいの激しいジャークにはペケペケペぺぺッッという感じのせわしない横揺れを起こすので、是非お試しあれ。ワシ竿が全く向かないのを使ってるのでツィッチでは使ってないけど多分それも得意のハズ。

 バスディのドリフトトゥイッチャーは85、100の大型は生き残ったけど、70、50の小型2種はカタログ落ちしてしまった。

 ドリフトトゥイッチャーは、取り立てて特殊な機能は持ってない、シンキング固定重心のオフセットリップのミノーである。以前同様の特徴をもつマリア「フライングダイバー」の後釜を選定したときにも、最終候補にのこっていたぐらいで、誰も彼も重心移動だ飛距離だと小うるせぇなかで、固定重心で立ち上がりが早く動かしやすく、オフセットリップで動きが安定していて破綻しにくく、飛距離だってシンキングでそこそこ出るという、基本性能のしっかりした地味に良くできたミノーである。スズキ用としてはパンチが足りずに最終選考では「Fマグ改」に負けたけど、メッキ釣るのに5センチはちょうど良く、釣果も安定していて満足している。どうも、後継機的に「ボトムトゥイッチャー」というのが出ていて、写真の右端が試しに買ったそれなんだけど、コイツはスミス「Dコンタクト」に始まった、渓流やらで底を「転がす」系のヘビーシンキングミノーの類いのようで、飛距離やら底への届けやすさはドリフトトゥイッチャーより勝っているのだろうけど、重い分動きが確実に悪くてモサッとしてて互換性は無いように思う。軽いルアー、固定重心のルアーが動きの良さや立ち上がりの早さ、操作性の良さで、魚の前まで届けてしまえば釣る能力的には勝るっていうのはありがちで、底専用機のボトムトゥイッチャーはそれ以外の場面では使えなくもないんだろうけどイマイチだと評価せざるを得ない。ゴロタの浅場とかメッキ狙うときには重要な場所になるけど、底で転がってしまっては根がかって釣りにならんってのもある。ドリフトトゥイッチャー5もメッキ狙うときの使い方は、竿であおって速度を稼ぐジャーク&ジャークである。おもっクソ引っ張っても動き破綻せずひっくり返って水面から飛び出したりしないのは、もともと川の流れの中で使うことを想定してオフセットリップでしっかり水を噛んでしっかり動くという性能を付与してあるからだろう。その名のとおりツイッチで使うのが本来の使い方だろうけど、高速ジャーク&ジャークでも実力を発揮してくれる。コイツが廃盤になったのは、基本性能は高いんだけど、売りになるような派手な特徴がない”地味さ”があだになってるのかもと感じるところ。バスディのルアーは総じてその傾向があるけど、特にこのルア-は使って魚釣ってみればその非凡な優秀さが分かるんだけど、見た目やカタログスペックはなんともパッとしない使いどころの分かりにくいミノーではある。ただ本来想定されている流れの上流に投げてドリフトさせつつしっかりツイッチとかで動かす、っていう使い方に縛られず、やればなんでもできるってのが基本性能が高いゆえの応用力かなと思ってます。7センチ、5センチの小さいヤツこそ海では使い道が出てくると思うので廃盤は実に痛い。

 バスディのルアーとしては出世作の”シュガーミノー”の4センチ、5センチのサスペンドやシンキングも、軽くて良く動くので、飛距離でないけどメッキに食わせる力的には強くて、4センチサスペンドとかかなり”必殺”系のミノーである。このサイズの国産ミノーとしては草分け的存在だけど、他のメーカーの後発品でコイツと同等レベルに釣る能力のあるミノーってそうはないだろう。渓流でもメッキでもセイゴでも小さい獲物は総じて釣れる。ド定番だけど最終兵器的なミノーで流石にこいつは廃盤にならんだろうから安心して愛用している。

 ドリフトツィッチャーの7センチ5センチについては、すでに廃盤になってるので、いかんともしがたいだろう?って思うかもだけど、ワシまだ希望を捨ててない。バスディには「シュガーミノーリップレス」が「海爆リップレス」になって帰ってきて、その後廃盤になったけど、それでも最近また「海爆リップレス」は不死鳥のように復活した。という前例があるので、欲しいというような声が大きければ復活は有りえると思っていて、それはマス用のドリフトトゥイッチャーが海用にお色直しされて「海爆オフセットシンキング」的なモノで帰ってきても大歓迎なので、是非バスディさんにはよろしくお願いしたい。ちなみに使い始めてすぐに一旦廃盤になったので海爆リップレスは前身のシュガーリップレスもあわせて写真の様に大量在庫してしまっている。まったくたちの悪い病気で困ったモノである。アタイ病気が憎いッ!

 しかし、タイトルにもしたけどワシの気に入ったルア-に限って廃盤になるっていうのはなんでだろうか?使いどころや使い方が特殊で使いこなすのが難しいとかならわかるんだけど、今回の2種類を見ても意外に何でもできるような優等生で使い方も難しくないうえに、ワシのやるような極端な使い方にも対応してくれる。なぜ売れないのだろうか?結局、なんか”流行らなかった””飽きられた”ってだけで、良いモノでも消えていくのが定めなのかもしれない。

 とはいえ、カタログ落ちして焦って店が開けるぐらいに買いあさったラパラ「フローティングマグナム(Fマグ)」も「フラットラップ」も後者は8センチだけだけど復活を果たしており、良くできたルア-はどこかに評価する人が居て、そういう人達の要望が大きければ復活するというのは、ままあることなんだろうと思っている。新規で開発費やら金型代をかけずにものが売れるのなら作る側としても美味しい話だろうと思う。

 ということで、ラパラさんフラッタースティック4の生産継続とできたら7センチの復活を、バスディさんにはライトソルト用に振るとか売れそうな手を考えてドリフトツィッチャー5と7の復活をお願いします。

 あと、スミスさんハトリーズ「リトルダイナマイト」はポッパーじゃなくて水面直下系のミノー?ダーター?として”塩水仕様”で売り出したら、もう一稼ぎできまっせ。これも是非復活よろしくです。

2022年10月15日土曜日

パソコン椅子探偵ー「スーパースターNo.2」製造元迷宮入り編ー

  ええ、箱入り娘を買うてしまいました。基本ジャンクを買って使えるようにするというのが方針のハズなのに、「初期の大森製作所製」との説明に思わず見入ってしまい。写真で見ただけでも、大森っぽくはないなと思うけど、じゃあどこかというとオリムピックっぽいとは思うけど確証はない。箱と説明書が付いているので、買えばそのへん分かるだろうと興味が出てしまい、送料込み3300円と高くもないので、マウスが滑らかにすべることに対する抵抗は少なくダブルクリック。

 しかしながら、届いてみると箱にも取説にも、どこで作ったかの製造者名がない!これは難事件の予感。孤島で密室で因習の残る孤立した村の謎めいた女の気配がする。

 取説も日本語だし、”小売正価¥1450円”とあるので国内販売用で、国産だろうなというのは分かるけど、この時点では製造元の特定につながるような情報は少ない。「No.2」とあるので、No.1か無印の「スーパースター」があってもおかしくないかと、ネットで探ってみたけど、このNo.2自体はちょくちょくネットオークションとかには出てたようだけど、他にスーパースターと名の付くようなリールは見当たらなかった。商標権の関係とかもあって名前は同じ名前を使い続けたりするものだけど、それがないということは、これ作った後は自社ブランドでリールを売ってないとかも想定される。取説によると、ボールベアリング、ワンタッチスプールを採用、”歯車比”1:3、自重330gとなっていて、「中型スピニングリールでは理想的な最高級品です。」と高らかに謳っている。

 ということで、箱書きも取説も製造元特定には用をなさなかったんだけど、リールそのもの見てオリムっぽいと思ったのは、全体的な雰囲気とお尻に油差しのキャップが填まってる感じからそう思ったというのもあるけど、細部でもベールアームにベールワイヤーを固定する方式が、マイナスネジに覆い(カラー)を付けている点で、真ん中の写真の左が比較対象のオリンピック「アトラス」で、最初この固定方式どっかで見たことあるけど、なんだったっけ?と思い出せなくて、あちこちのサイトを見て回ったり参考文献である「ベルセカ(ベールアームは世界を回る)」をみたりして悶絶していたけど、何のことはない自分ちにあるリールだった。出品者さんは「大森製」を信じていたようだけど、大森っぽい要素はハンドルノブの摘まむところがえくぼのようにくぼんで絞ってあるところだけだと思う。一番下の写真で同じような大きさのマイクロセブンDX(右)のハンドルノブと比較したけど、同じようでいて明らかに形状が違う。マイクロセブンDXのほうがハンドルノブ根元が絞られている。スーパースターNo.2のハンドルノブ根元は寸胴。金型の違いは明らかでこれをもって大森製とは言い難く、このハンドルノブの形状はむしろオリム製「コンパック ホーネット」のそれに似ているのもオリム製説を強化するところ。

 とはいえ、分解していくとむしろオリムではない、いわんや大森ではないような、特徴的な”癖”が見えてくるので、どうもワシが知ってる既存のメーカーのモノではないとみるのが適当かなと思えてくる。

 ハンドルは左専用ネジ込み式で、たためないので外して送付されてきた。話脱線するけど、どうも最近の国産高級リールもねじ込み式でたためなくなっているらしくて「ガタつきが生じない」とか「壊れにくい」とか言ってるようなんだけど、普通にPENNや大森のたためるねじ込み式のハンドルでガタついた記憶がないし、ねじ込み式のハンドルが壊れるのは、スピニングリールの構造上本来やっちゃいけないゴリ巻きするからで、そういう特殊な”力こそパワー”な脳筋釣り師に合わせて商品作ると、遠征時とか持ち運びするのにいちいちハンドル外さなければならなくなる。汚れるし面倒くせえ。特殊な使い方する人間はマニアックな小工房の社外品でも付けて対応しておいて欲しいものである。最新のスピニングリールのこの迷走ッぷりはどうなのよ?とワシャ買わんので関係ないけど、スピニングリールがどういうモノか分かってない釣り人達がクソみたいなリール買わされてるのはさすがに不憫に感じる。

 スプールの方から分解してみていくと、まずワンタッチの先が針金バネで独特。初めて見る方式。ちょっと華奢で壊れそうには思うけど、これなら自作バネで修復できそうで、悪くない方式かなと思う。良くあるタイプの金属板のバネはさすがに自作は難しい。

 スプ-ルを主軸の台座に固定する方式も、台座の穴にスプールのスリーブ座面の棒を刺す方式で独特。普通主軸の横棒にスプールのお尻の溝を填めるのが多いかと。

 ドラグが、久しぶりに見るドラグのことが良く分かってないドラグ。

 右の写真をみるとパッと見、ドラグパッドが写ってないのかなという気がするかもだけど、ドラグパッドは、ワンタッチのスリーブに填まっている赤い繊維製ワッシャーです。一応こいつがドラグパッドとして機能するのが正しい形のハズ。ただ、実際には真ん中へんに写っているバネがドラグパッドとしても機能してしまっていて、当然バネの上下なんて平面でも何でもなくて滑らかには回らないので、ドラグは作動時引っかかり引っかかりギクシャクとろくでもない挙動になる。バネはドラグの調整幅を出すのに必要なんだろうけど、今時の普通のリールのようにドラグノブの中に配置されておらず、スプールのドラグが入ってそうなところに入れられていて、かつ上面がスプールと共に回ってはドラグノブが回って締まったりするので、バネ上面は主軸(に填まってるスリーブ)と同期する片方切り欠いたワッシャーでスプール回ってもドラグノブ回らないようにしてるのに、バネの下面はスプールの中仕切り?に接していて、スプールが回ると当然回ろうとして摩擦が生じる状態。せめて、バネの下にも切り欠きワッシャーを入れてバネの上面と下面でスプール回転時ねじれた方向に力が掛からないようにしておけば、下の切り欠きワッシャーの下に適当な滑る素材のパッド入れれば、スプール中仕切り上面とスリーブの座面の間でドラグパッドとして仕事してる赤ワッシャーと合わせて2階建て方式のドラグになるのに、良く分かってない人間が作るから変なことになっている。切り欠きワッシャー作るのは金属加工は得意じゃないので面倒臭いなと、次善の策としてバネ下面が平面になって滑りが確保できるように、硬質フェルトワッシャーで輪っかを作ってバネの下に敷いたら、だいぶマシな挙動にはなった。ただドラグ値が高いところで安定する感じだったので、ギチギチドラグで使うような大型リールでなし、赤ワッシャーを二枚のうち一枚、ちょうど良い大きさのがあったのでテフロンワッシャーに換装しておいた。それでも及第点とまではいかないけど、何とか最低限のドラグらしきものにはなったと思う。

 ローターカップは見えているナットを外すだけでは抜けてこなくて、回して外す方式で、外すとなんか重ねられた金属ワッシャーと赤い繊維製ワッシャーが出てくる。赤ワッシャーに穴ぼこが空いてそこに玉を填めてあり、ちょっと安っぽい作りに思うけど玉の填まった輪っかを上下の板で挟み込む”スラストボールベアリング”のようだ。

 ギアは単純なフェースギア。作るの簡単そうだけど、グリス盛り後も滑らかとは言い難い巻き心地。ただ低速だし、まがりなりにもボールベアリングも入ってるしで巻きは軽い。上等だろ?

 ローター軸のギアやお尻の油差しのキャップには真鍮のスリーブが噛ませてあるのが特徴で、なんかアルミ鋳造の本体の強度とかに不安があるんだろうか?アルミ直受けは極力避けている印象。

 唯一のアルミ直受けはハンドル軸のギアの軸受け部。って、そこは一番真鍮のスリーブ噛ますべきところと違うのか?という疑問が湧くのはワシだけだろうか?ちなみにハンドル軸のギアは亜鉛鋳造で軸に真鍮を鋳込んである。

 逆転防止のストッパーはハンドル軸のギアの裏にラチェットの歯が切ってあるタイプで、特に可も無く不可も無くだけど、形状とかでどこかに似ているとかの情報は引き出せなかった。

 ラインローラーは固定式で、使用時にラインが当たってた面が溝できかかって錆びており、錆びた面を上に向けると見た目悪いが使用を前提として整備するならこれは仕方ないところ。まあ使うあてないけどな。


 パーツ数は真鍮のスリーブがやや目立つけど、それほど複雑じゃないので少なめ。投げて巻くだけの機械に複雑な機構突っ込んでもジャマなだけで、必要な機構をシンプルに備えた設計がスピニングリールとして良い設計だと常々思うところではある。釣り場でトラブるような機構は蛇足。ジャムったら命に関わるような銃器の世界でコルトガバメントみたいな100年前の古くてシンプルな設計の銃が現役なのをみても、ミスったら後がない場面を任せる道具に求められるモノは何かというのが知れるというもの。とはいえウクライナに行くロシア兵にモシンナガンが配給されたってのを読んだ時は笑ったけどな。名銃だろうけどロシア帝国時代の銃でっせ。戦況が長びけばそのうちマズルローダーやらまで出てきて長篠の戦いまで後退するかも?もういっそ素手で殴り合っとけ!CQC(徒手近接戦闘)はプーチン閣下お得意のはずだろ?

 閑話休題。組むとき、スラストボールベアリングはローターの締め具合で適切な圧を掛ける必要があるけど、締める方向に回すとハンドル軸のギアが回ってしまう。外すときはストッパー掛ければ良かったけど、締める際にギアを無理矢理固定するとギアの歯を痛めそう。なんとかならんかと考えてオシュレーションスライダー用のギア上の突起を利用する方法を思いついた。さすがにこの突起は折れんだろう?オシュレーションスライダーをつっかえ棒にして、とりあえず締まるところまでしっかり締め気味で、どんなもんだろうと塩梅をみたら、ガタつかず回転は軽くちょうど良かった。

 整備していつものように青グリス大盛りで、軽く回るし、ベールの返りも良い感じに仕上がったんだけど、ごらんのように本体蓋の面がのっぺらぼう。蓋にブランド名や商品名が本来貼られていたのでは?そういうOEM用のリールで発注元に収めなかったのを、無銘で国内販売したものとかか?とか思って、同じ形の海外メーカーの製品とかないか、ネットで探ってはみたけど見つけることはできなかった。どなたか「同じ形のリールで名前が付いてるの見たよ」という方がおられましたら、情報提供よろしくです。

 という塩梅で残念ながら大森とは関係なさそう。ひょっとしたらオリムとは下請けなどで付き合いがあったとかで、ちょっと似た部分があるのかもとかも考えたけど、特に関係なく、海外からOEM(相手先ブランド名生産)請け負ってた工場で、歴史に名の出てこないようなところの製造なのかもしれない。まあ、オリムは部品普通に互換性があるぐらいのフルコピーが得意だったから、コピー先にこういう仕様のリールがあったという可能性も無きにし有らずだけど、オリムピック製だとすると、本体もとより箱にも取説にも社名がないのが不自然であり、その線もないのかなと思う。なにせミッチェル300系のフルコピー品に堂々と自社名を掲げてたぐらいである。そういうユルユルな時代もあったのさ。

 というわけで、今回”パソコン椅子探偵”としては、この子のお家はどこですか?という謎は迷宮入りで、どなたか何か情報をお持ちの方がおられたら、タレコミお待ちしております。あと使う予定もないので実物いじってみたい方とかおられればご相談下さい。

※情報提供いただき、初期のダイワ製と判明しました。捜査協力ありがとうございました。

2022年10月8日土曜日

私だけのチヌポッパー

  これまでメッキ用のポッパーといえば、ほぼダイワ「BHポッパー」の出番で、たまに飛距離出して広範囲を探りたいときにバスディ「クリスタルポッパー」あたりを登場させることはあるけど、BHポッパーにまかせていたと言って良い。

 早引きすると、BHポッパーは適度に泡を引きながら、水中をユレユレしつつ泳いできて、その動きにたまに竿先弾いて飛沫上げさせたり、止めを入れて食わせの間を作ったりという、早引き系のポッパーとして、その軽さから来る動きの良さでこれまで多くのメッキを釣ってきた実績と信頼の一本である。

 正直、メッキ釣るためのポッパーはこれがあればだいたいOKとおもってて、在庫もたんまり確保していた。

 ところが、先日和幸さんにチヌ狙いに連れていってもらい、横でどうやって釣ってるのか見ていたところ、見るより何より、和幸さんの操るポップRが実に良い音をあげているのが隣のワシにも聞こえてきて、魚を見つけて狙う”サイト”の釣りではない、やや濁った水域や距離を取っての水面で魚をさそう釣りでは、自分のルア-がどこで何やってるかが分かりやすいというのは、釣りをする上で重要で、BHポッパーはその用途にはまるで向かない。飛沫も音もおとなしすぎる。早引きでは無類の強さを発揮するけど、メッキとかに比べりゃそれほど泳ぎが早くなく、後ろから波立ててルア-に襲いかかるというチヌには早引きポッパーはあんまり効果が期待できず、むしろダムの立木周りでバス釣りするときみたいに、広い範囲をリズミカルにポコポコと音と飛沫を出させつつ魚が襲いやすい速度で首を振らせるぐらいのポッパーの動かし方が重要になりそうだ。

 と同時に、我が家のご近所でチヌを狙うとなると、これまでもそうであったように、チヌ単体を狙うのでは確率が低すぎてイヤになっちゃうので、メッキを釣っててチヌが来たら釣ってしまう(あるいは見つけたら狙っておく)、という基本方針は変えがたい、そうなると、メッキも釣れる小型のポッパーでチヌ釣るような、良い音出して首振らせることが可能なポッパーをということになる。

 チヌ狙いのポッパーとしては専用に設計されたジャクソン「RAポッパー」、ジップベイツ「ザブラポッパー」なども一応持ってはいたけど、サイズが7センチ前後と大きく、チヌはともかくメッキが食わんだろうから、せっかく入手済みだけど1軍から外れる。シーバスには使えるし、また必要になる状況も出てくるだろう。それまで2軍行き。

 シーバスで実績の多いストーム「チャグバグ小」もそう考えると大きめで、デュエルの3DSポッパーと共にコイツらシーバス用だし、これもチヌ用としては2軍行き。
 チヌの大きさ考えると、シーバス用のポッパーの流用で行けるかなと思ってたけど、メッキ釣りつつっていう感じになると、もっと小型のが必要になってくる。

 和幸さん愛用の、ポップRは国産の良くできたポッパーと比べて、飛距離の点などでやや劣る。でも軽さから来る、竿先で動かしたときの追従性の良さ、つまり動かしやすいってことと、良い音が出て良い飛沫が出るっていう、釣らせる機能に関してはやっぱり優れているとのこと。基本飛距離を重視して優等生に仕上げると、こと魚に口を使わせる”くわせ”の能力に関してはその分削がれがちで、結局、頼りになるのは軽くて良い音で良く動くアメルアになるという、どっかで聞いたことがあるような話であった。ということで、ポップRもメッキも釣れそうなサイズの「R50」は買ってみた。対抗馬として、日本製の良くできた小型ポッパー代表でラッキークラフト「ベビーポッパー」も購入。ポップR50は確かに良い音と飛沫。ただ元気に首振りすぎてるのか前フックがちょとリーダーに絡みやすい。ベビーポッパーは投げやすさはこっちの方が上で悪くないけどちょっとおとなしめか。マリアの名作「ポップクイーン50」は早引きで良し、首振らせて良しのオールラウウンダーでとりあえずは及第点の優等生。

 アメルアの”釣る能力”がやはり頼りになるとすれば、昔から売ってて今でも売ってるポッパーなんてのがあったら”正解”じゃないかと考えた。チャグバグは前述のように小さい方でもまだ大きい。ヘドンのチャガーはタイニーなら良いかもだけど入手が困難、同じヘドンの「タイニーラッキー13」は在庫してるけど、一ヶ所でネチョネチョ向きで首振らせてテンポ良くってのには向かない。なんだかんだ考えていて、そうだアレがあるじゃん、と思いだしたのはアーボガストの「フラポッパー」、フライサイズまであったはずだけどと思って調べてみると、今でも3.1cm、5gの小っちゃいのが作られていて、これは首は振らんかもだけど、音は良いしフラスカートも誘いそうで、中古でフラ無しが安かったので2個ほど入手。早速1個はシリコンラバーでフラをでっちあげておいた。音は良いし確実に出る。意外に使えるかもな穴馬的存在か。

 とまあ、色々と買いあさってみたんだけど、投げてみて、実際にメッキとかも釣って、コレで行こうと決めたのが、ワシの場合は結局デュエル(旧ヨーズリ)のポッパーとあいなりました。

 上の方のちょっと形が違うのが「タイニーティップ」でこれは往年のメッキ釣り爆釣名機なので、問題ないだろう。その他のはデュエル「ハードコア・LGポッパー50」「エバポッパーF」、ヨーズリ「アームズポッパーマイクロ」で、見てもらうとなんとなく察しがつくと思うというか「何がちがうんや?」だろうけど、この3種類は色が違うだけで、金型一緒の同じルア-を名前だけ変えて売り続けてます。これがなかなか立派で、金型って金が掛かる部分であり、その費用を節約できるなら値段が安くできる。実際、通販で買うと新品のLGポッパーが800円台と、千円しないのである。アームズポッパーからの愛用者にしてみれば、癖も分かった同じポッパーが安く安定して手に入るわけでありがたく、お化粧直ししてちょっと今時っぽくして売られてるのを初めて買った釣り人にとっても、既に良く釣れた実績のあるルアーを安く手に入れることができて誰も損していないという、素晴らしい商売。

 まあこの手のポッパーって、国産でも色々でてるけど、結局ポップRの焼き直しの域を出ないわけで似たり寄ったりで、それなら安くて安定供給されるブツがありがたい。個人的な相性として竿とかも関係してるんだろうけど、ポップR50はちょと暴れすぎて前フックがリーダ-に絡みやすいと感じたんだけど、コイツら3種はそういうこともなく、音も飛沫も良い感じで、ワシの”メッキ狙えるチヌポッパー”の主力はこの3種で良いんだろうなと、買い取り強化月間突入でチマチマ中古品を買いあさると同時に、1個ぐらい一票入れるつもりで新品も買っておくかと購入。まあ880円だからな。左写真の下3個左からLGポッパー、エバポッパーF、アームズポッパーマイクロで、頭に目印塗ったり、リアフックと毛をいじったりもしてます。いちおうカップの中にさらに窪みがあってアピール力がどうとか謳われてますけど、特にどうということはない普通の小型ポッパーではある。でも性能が安定して、供給が安定しているというのは重要な要素。安いのも重要だけど、じゃあ他のメーカーの開発したルア-の丸パクリの安物を使いたいかというと、それは気持ちよくない。人件費削って労働者虐めて作ってたり、パクリで開発費かかってなかったり、というような”ズル”をして安いのには一票入れるべきじゃないと思っている。デュエルのルア-の安さは、海外市場にも強くて数が売れるので単価安く設定できるのと、お色直しして古いルア-を金型換えずに売ったりというケチ臭くもまともな企業努力で安く売ってるので、ワシは清き一票を安心して入れられるのである。

 ということでルアーの選択自体はこれで一安心なんだけど、ちょい悩ましい問題がある。魚釣りで悩まなければならない問題は数あれど、そのほとんどがどうでもいいようなくだらん問題だったりする中で、釣果を直接左右する問題はやっぱり大事な”ハリとイト”って話で、今回ハリの方が悩ましい。

 小型のルアー全般に言えることだけど、付いているフックが小さく細く弱い。まあ、本来想定している対象魚がメッキとかセイゴとかの小型魚やそもそも淡水のラージマウスバスとかなので、そいつら相手に”掛け重視”ならしかたないんだけど、チヌ狙うにはちょい華奢。でもチヌ釣りしてる場所はせいぜいゴロタの浜で障害物少なく、ドラグ緩めで時間かけて走らせてやれば噛みつぶされる問題はあるけど伸ばされてバレるのはあんまり想定できなくて問題ないっちゃないと思ってたんだけど、想定外のことがえてして起こるのが海の釣り。別件で導入検討してたキーパプースっていうシンキングのオフセットリップの小型ミノーを元のハリのまま試投してたら、チヌとおぼしき魚が食いよった。まあドラグに任せて走らせておけば大丈夫だろうという予想に反して、流れてきたゴミに突っ込んだようでバレて上がってきたのはゴミだけというなさけない結果。バラしたあとで悔やんで後悔して、帰宅後すぐにフックを写真上のように前シングル、後ろダブルに交換したけどあとの祭りで、覆水盆に帰らず、こぼれた牛乳を嘆いてもしかたなく、死んだ子の年を数えるようなもので、想定外のことも起こりうる、メッキ狙いで投げた小型ルアーに巨大なスズキが食ってもおかしくないと念のためフックは丈夫なのに換えておくべきだったと改めて肝に銘じる。

 じゃあ、悩ましがらずに変えときゃ良いじゃん?って話だけど、小型ルアーに乗るハリの大きさって限度があって、単純に太軸のトリプルのに換える、ってだけでは動きに与える重量バランス的な要素とかもあってどうにもならん。ということで同じ重さでバランス取るならシングルフックやダブルフックの出番なんだけど、同じ重さにすると軸が太るのに加えて、ハリ自体が大きくなって、それ自体は深く刺さる要素でバレにくくなって良いんだけど、小さいルア-の場合問題が生じる。前後のハリの距離が短いのでハリとハリが絡んでしまうのである。あと、前のハリがリーダーやらルア-の頭に絡む不具合も増える。対策としては以前にも書いたけど、ウレタン接着剤である程度固定してしまうというのがあるけど、正直面倒臭い。あと前フックはともかく後ろフックをサイズ大きくして固定してしまうとルア-の動きに悪い影響ありそうで気が進まん。

 で、どうするか?一つには後ろのフックを、スプリットリングを介さず直づけにしてしまう、というのがある。スプリットリングを介さず後ろのアイに直づけすることにより後ろのフックはある程度の角度までしか前に倒れなくなり、前フックと絡むことが防止できる。じゃあそうすれば良いじゃん?って簡単に行かないのが悩み所。後ろのアイがヒートンのルア-ならアイを広げてハリ交換して”直づけ”可能なんだけど、今時のルア-の多くがハリのアイは”エイト管”方式でスプリットリングの使用が前提であり、シングルフックに交換して”直づけ”っていうのは難しい。難しいってことは不可能ではないのか?と疑問に思われるかもだけど、方法はあるのである。というか”あった”と過去形にした方が実情に合っているだろうか?昔ガマカツからシングルフックの定番として「サイワッシュ」という商品名のフックが売られていて、これにはアイが最初開いていてペンチで閉じてルア-のアイに接続する”オープンアイ”仕様のモノがあって、小型ルア-のシングルフック化にはとても便利な代物だったのだけど、廃盤になって久しく、わが家の蔵にも小さいサイズのがもうほとんどない。小型ルアーの種類も対象魚も増えて戦略も多様化している中、また復活させてくれないモノかと思うけど、ハリのことに細かくこだわる層って少数派だと思うから復活はないんだろうなと諦めている。ハリむちゃくちゃ大事なのに。

 で、その方向で次善の策としては後ろのハリをダブルフックにしてしまうというのがある。ダブルフックの多くは股を開かせてアイにねじ込む方式で”直づけ”できる。同じ重量でシングルほど太くはできないけど、華奢なトリプルよりは断然マシ。なのでけっこうダブルフックは愛用している。ただ10番サイズまではバス中心にライトな海のルア-も想定したカルティバ「スティンガーダブルSD-36」が割りと丈夫でいいんだけど、12番14番という小さいサイズがある「SD-26」は淡水用想定で軸が細く、トリプルよりはマシかと使ってたけど、手のひらサイズの良いメッキをオカズにするために手返し良く釣りたくて、ドラグ締め気味で力入れてポンピングで寄せまくってたら、ハリのフトコロが開き気味になってバレることが増えて、4センチのシンペンにはちょい大きいけど結局SD-36の10番乗せることになってたりする。あと、首振りポッパーの場合は後述する”毛”の問題があって、ダブルフックは毛を付けるならルア-に装着してから毛をつけねばならず面倒臭い。 

 毛については、ここしばらく小型の首振りポッパーの選定作業とかハリの試験運用とかしてみて、意外にといっては失礼だけど、色々と恩恵がある重要なモノだと気づかされた。一般的に目立たせたりユラユラしたりして”魚の食い気を誘う”っていうのと、水の抵抗を増してブレーキとして働いて、移動距離少なくネチネチ攻められるようになる、とかのために付いていると説明されているけど、それ以上に毛があるとハリが絡むトラブルが軽減される。後ろのフックに毛が巻かれていれば、後ろフックが前には行きにくくなるので前フックと絡むことがほとんどなくなる。そして、前フックがリーダーやらルア-の頭やらに絡むのもある程度防ぐ効果があるように思う。前フックがリーダとかに絡むのは、ルア-の首振りが大きいというか”暴れすぎ”てるからそうなるんだろうから、後ろのハリの毛が抵抗になって動きがおとなしくなれば、前のハリが絡む問題も減る。これはある意味ルア-の首振りなどの動きが制限されてしまっているわけだけど、そこは毛の量の調整で好みの”暴れ具合”に調整可能であり、首振りポッパーにおいて”後ろハリの毛”は単なる飾りじゃなく、いろんな役割を果たしているので、あった方が良いときが間違いなくあって、最初からつけられてる製品が多いのである。まあ、なにも考えずに他のメーカーの真似して付けてるだけってところもあるだろうし、LGポッパーのように昔のモデルは付いてたのに今省略なんてのもある。LGポッパーはワシがそう感じるように前フックが絡む問題は生じにくいルア-なので”毛”なしでもいけるのかもしれない。

 ということで、いろいろ試した結果、アームズ、エバ、LGにタイニーティップを加えたメッキ用首振りポッパー主力勢には、写真の様に後ろのハリをシングルにして、ちょい長めのフラッシャブーを中心に獣毛をその周りにという感じで”毛”を生やしておいた。ワシ、フライもやる人間なので毛の増量減量から色や素材の変更まで自由にできて、そのあたりは遊べる要素。前フックは悩んだけど、シングルにするとリーダーに絡むのが増えそうなのと、チヌは後ろから食ってくるそうなので後ろフックの強度を重視しておいて、前フックはむしろ下からバコンと出たメッキの掛かりやすさ重視でトリプルのままで当面運用してみたい。前フックが掛かる場合は口の横蝶番の良い位置で、フトコロまで刺さればあまり伸ばされたりしないだろうという読みもある。実際には掛けてみないと分からんので、釣って失敗して不具合生じたら、その都度改善策を考えてみたい。

 という感じで、いつものごとく獲らぬ狸の皮算用的な話ではありますが、小型ルアーのハリについての考察も絡めて、メッキ釣りつつチヌを狙うためのポッパーで今回”ルア-図鑑うすしお味”第54弾はいかせてもらいましたとさ。

2022年10月1日土曜日

パソコン椅子探偵ー君の名は?稲村編ー

  日課のネットオークション巡回中、なんか細長いインスプールのジャンクなスピニングが目に付いた。見た目ボロく銘板も見当たらず、”中古なんでも屋”が買い取ったガラクタの中に混じってたようで、千円の開始価格で投げ売られてたけど、多分ワシが入札してやらんと誰も買わんな、と思ってしまうともう負けでスルリとマウスが滑ってダブルクリック。今回も止められなかったんじゃ~!

 予想どおり落札で送料入れて1680円でやってきましたこのゴミスピ。多分稲村製作所の「ロディーマチック825RL」の銘板落ちか同型機、ひょっとするとサイズ違い?あたりの稲村製作所製のスピニングでございます。1970年代初頭にダイワに吸収された稲村製作所については”ロディー”ブランドで海外、国内で売ってたほかヘドンブランドのOEM(相手先ブランド名生産)なんかもあったりして、昔のダイワのインスプールリール「7250HRLA」には稲村製作所の影響が見てとれるとか、古いリールをいじってると気になる存在ではあって、何度か入札したことはあるけど、”稲村沼”にも沈んでる住民はいるのか、稲村沼民なかなか強敵で落札には至らなかった。ということで気にはかけてたので今回のブツにもその妙な長い形になんか見覚えがあった。「ロディーマチック」には「820A」「2400」といった細長いスピニングがあってその系譜だなと”あたり”はつく、今回のは左右両用なのと逆転スイッチの形状等から「825RL」だろうとパソコン椅子探偵としては推理した。細かい所だけどベールアームのリリースレバーがかかる”切り欠き”の形状の癖が独特で稲村っぽいところだと思ったりもする。

 届いたブツを確認するとフットに「QUALITY PRODUCT OF JAPAN BY RODDY」とあり、推理は外れてなかったようだ。パチパチパチ。銘板はハンドル根元に土星の輪っか状にあるのが外れたのか、もしくは”ロディー”ブランドロゴなしで売ってた版か?

 例によってネジやらナットやら可動部やらにCRC666をぶっかけてビニール袋に詰め込んで、しばしおとなしく順番待ちをしていただいたあと、廊下の特設作業ブースにて居室の愛猫の「なにしてんねん、そんなもんで遊んどらんと、ワレを撫でたりせぬか、この下僕めが!」という視線を受けつつ分解清掃作業に入る。
 とりあえず、古くなったグリスがベットリでろくに稼動しないんだけど、グリスで覆われてた部品達は、年式相応に摩耗してたりはしたけど腐蝕からは守られており。グリスシーリングの霊験あらたかさを改めて感じたところである。

 そして、すでに蓋開けたこの時点で稲村独特という感じが醸し出されているのが、ハンドル軸のギアの上にストッパーの歯が切ってあるところで、これは、ダイワの「7250HRLA」やダイワが作ったと見られるPENN「101」にも引き継がれていった稲村伝来の方式かと。一番下の写真でハンドル軸のギアの端に見えてるギザギザはギアの歯ではありません。歯は裏に切られています。上に見えてるのはストッパーがかかる歯で、通常ハンドル軸にストッパーの歯を設ける場合は、ギアの下にもう一枚ストッパー用の径の小さい”ラチェット”的な歯車を設けるのが一般的だけど、ギア背面?全面をつかうとその分沢山歯が切れるのでハンドルの遊びが小さくできるという設計思想なのかなと思います。

 でもってギアからみていくと、ギア方式はローター軸のギアが直線的でハンドル軸のを斜めに切ってある、ズラした(オフセット?)フェースギア。同様のギア方式はシマノ製の「D.A.M SLS2」でも採用されていた。ただあんまり耐久性とか優れてないようで、使用によって削れ始めてるのが見てとれる。
 ローター軸のギアは芯が真鍮で、鋳造とおもわれる亜鉛かアルミのギアの歯部分が填め込んでEクリップで固定する形となっている。そしてローター軸のギアはボールベアリングで支持されていない。真鍮軸をアルミ本体に鋳込んだ真鍮ブッシュ受け!全国の秘密結社”BBB団(ボールベアリングをボロクソにこおろす者の団、現在団員2名)”団員の皆様お待たせしました。ボールベアリングレス機です。ギア比3.5倍強ぐらいの低速機なのでボールベアリングなんぞいらんのですよ。もちろんラインローラーもボールベアリングとは無縁の固定式。
 ハンドル軸のギアは真鍮を鋳込んだ亜鉛鋳造もので最初に言及したとおり上にストッパーの歯が設けられている。本体が細長いのはストッパーがギア後方に配置されているからというのも一因か。そのかわりギアとストッパーが重ならないので本体は薄い印象。

 ハンドル軸のギアの芯は真鍮が鋳込んであるので、ハンドルねじ込み式なんだけど、これがなかなかに独特でハンドルの逆側にはキャップがされているのではなく、ハンドルの代わりにネジが突っ込んであって、”ねじ込み式の共回り”ハンドルというべきものになっている。なにげにネジ込みのネジが大森みたいな交差したネジ山が切ってある左右兼用方式で、この頃の中小の”リール工場”は大森製作所に限らず、器用な技術を持っていたようだ。

 スプール上下の方式が独特で、ハンドル軸のギア裏(写真上:裏が見やすいようにひっくり返してます)に偏心した円が切ってあって、なんで偏心させてるのかイマイチ理解不能だったんだけど、設計の出発点が左右両用ではないリールのハンドル軸のギアの上に中心を外して”ピン”を立てて、それを左右にオシュレーションスライダーとかのレール上を行ったり来たりさせつつ、スプールの刺さってる主軸を上下させる仕組み(例:マイクロセブンDX)だったとすると、スプール上下は”ピンを行ったり来たりさせてどうにかする”っていう縛りで苦労した結果なんだろう。写真真ん中でお分かりいただけるだろうか?オシュレーションスライダ-が大きく分けて二つの部品によって構成されていて、一番下の写真で外して手に持ってる一つめが本体に刺さりつつ、ピンをギア裏の偏心円に突っ込む。ちなみにピンには真鍮のスリーブが被せてある。ギアが回ると、ピンが偏心円に導かれて行う円運動にともなって、一つめの部品は本体に刺さった部分を軸に、扇状に往復運動をする。二つ目の部品は真ん中写真では見やすいように主軸を外してあるけど主軸が刺さってて、扇状往復運動する一つめの部品の動きの先端方向に設けられた長方形の穴状のレールにピンを刺して、扇状の往復運動を、主軸を上下させる真っ直ぐな上下運動に変換している。なんともややこしいが、これ、後年のPENN101では、同じハンドル軸ギア上ストッパー方式でも、右下の写真の様にギアの上のストッパーの歯の上さらに上に、中心線を外した円形の凸部を設けて、その円を囲むような薄い板で作ったクランクにして、わりと一般的なハンドル一回転スプール上下一往復の”クランク方式”が採用されている。

 本当かどうか自信ないけど、左右両用のスピニングでクランク方式をとなった時に、右写真に見るような、良くある軸を含む形になる輪っかのクランクを使えば単純にできるけど、ピンで発想すると左右に貫通している軸をクランクのシャフトが越えることができずに暗礁に乗りあげる。本機種の方式は部品2個も使って、場所も取るし重くなるしだけど、参考になる前例があんまりない過渡期ならではの工夫と独自性溢れる機構だったんだろうと思うと趣深い。妙に長い本体はオシュレーションスライダーが2個の部品で場所取ってるからというのも一因かと。

 ドラグは男らしく1階建てかつバネ無しで「バネ無しでは調整幅出ないだろ?」と思うんだけど、ドラグパッドが写真左のように分厚い硬質フェルトになっていてその弾性を利用というかバネの代用としていたようだ。ただ、経年でペッタンコになっててあんまり弾性がなく調整幅出てなかったので、ちょうど厚めの2ミリの硬質フェルトもあるので新たに作りました。あれこれいじくってみたら滑り確保した方が良い感じだったので、フェルトをテフロンワッシャー二枚でサンドイッチしたところ、優秀とは言いがたいけれど、まあそれなりのドラグになりましたとさ。ちなみにスプールはワンタッチ式。

 という感じで、全バラしするとそれなりに部品数あって、凝った作りと言って良いかと。なんというかこの時代の職人さん達は、今ほど経費削減とか小うるさいこと言われてなくて、丁寧に仕事している感じがして良いモノです。ただ時代が進むと、その凝ったモノ作りをしていた稲村製作所は、削れるモノはギアの歯以外でも何でも削るダイワに吸収され、職人さん達ひょっとしてドラグにドラグパッドが入ってないようなリールも作らされてたのかもと思うと、ちょっと複雑な気持ちになる。

 ともあれ、固着やら破損やらはなく、無事分解清掃作業は終了、青グリス盛り盛りで仕上げてやりました。組むときに注意が必要なのは、真ん中写真の最後蓋をするときで、蓋に逆転防止の爪関連のパーツが付いてるんだけど、これをバネをたわませて戻ろうとする状態で填めてやるのが唯一の注意点かな?同型のリールを分解清掃する人で日本語読める人が何人居るかわからんですが、その人達には是非憶えて帰って欲しい豆知識でございました。

 見た目は塗装ハゲとかあるし、ギアも摩耗しかかってはいるけど、使おうと思えば使える状態に復帰させることができて今回も満足である。

 サイズは糸巻き量的にはカーディナルC4クラス、でも何度も書いてるように妙に長い。糸巻き量的に同クラスと思われるリールで、我が家にあって使ってるのですぐ持ち出せるシェイクスピア「2062NL-2」と比較してみたのでサイズ感とか感じていただければだけど、2062のサイズ感がまず分からんか?まあC4サイズってことでどちら様もよろしく。写真右が2062で左がロディーマチック、上の写真スプール方面から見るとだいたい同じサイズ感だけど、下の写真で横からの姿を比較するとやっぱり長いというのがお分かりいただけるだろう。長い分は分解して分かったように部品がゴチャゴチャと入ってて、その分重く約385gある。2062は約335gでデカいウォームギアが入ってるのでそこそこ重いんだけど、それより50gぐらいは重くなってる。まあ同クラスのPENN4400ssなんて400g近くあるから使って重いかどうかとはまた別問題だけど、重くて長いのに使って軽いとは思えんのよね。ちなみにC4は約300gとこのクラスの糸巻き量のスピニングの標準的お手本のような重量に収めていて軽すぎず重すぎずで好感が持てる。

 というように、1680円でこれだけ楽しめたら、もう元は取れたって感じなんだけど、使うかっていうと、正直あんまり使いたいと思わないのよこれが。稲村製作所が技術力あってヘドンブランドやらロディーブランドでブイブイいわせてたという、歴史の一端に触れられた気がするし、丁寧な仕事ぶりやら、まだよく分からん中での工夫にも好感が持てたけど、ワシが好きなのは単純な作りのリールで、例えば今使ってる2062系とか超シンプルな設計のウォームギア機だし、前回取りあげた大森のスーパーデラックス系はハイポイドフェースギアだけど左巻き専用の単純明快なインスプールだし、とかに感じる「こういう面倒臭くないリールが使ってて手間かからないし、使いやすくていいんだよ」感がこのリールにはあんまりないのである。同じ稲村製作所製でも、もっと洗練された、前述のダイワ「7250HRLA」の元ネタらしい「ロディーコンバーチブル7250RL」とかは多分好みに合致するかもだけど、稲村沼の猛者どもに勝てねンだわこれが。

 でもまあ、”ボールベアリングレス機”ってのは嫌いじゃないので、気が向いたら使ってみるか?売れるような綺麗な個体じゃないし、使いたい、いじってみたいという方はご相談を(註:輿入れ先決まりました。悪しからず。11/17)