2018年11月3日土曜日

大森ダイヤモンドは永遠に

 最近アタイ以外のリールにばっかりかまけてて悔しいッ!

 と、430ssgちゃんやら4400SSちゃんやらがプンスカしてそうだけど、今回もPENN以外のスピニングリールネタ。まあ「昔の女」的な想い出話なので許してネ。

 全てのスピニングリールをスピンフィッシャーでまかなうような偏狭で妄執に凝り固まった私だけど、最初っからそんな釣り人じゃなかったということはここに書き記しておきたい。ダイワもシマノもリョービも使ったことがある。オリムピックはそういやトゥルーテンパーが初めてだな。
 でも「PENN使い」になるまえに好きだったのは大森製作所であるというのは以前にも書いたとおりで、今でも学生時代から社会人になってしばらくの間愛用していたダイヤモンドリール3台が蔵に眠っている。”ダイヤモンド”キャリアーNO.1、同マイコン302TB、同マイコン301TBである。
 2台はベールスプリングが折れているので使用不能で3台とも後継はスピンフッシャーに任せて引退させてあった。

 しかしながらも恥ずかしながら最近スピニングリールのことばかりを考えていて、引退させてたダイヤモンドリールもクリクリ回してみて、部品1個ありゃ直るのになと思ってしまった。
 古リール好きが、パーツを特注して愛機を使い続けているというのは知識としては知っていたけど、バネ一つだけ作ってもらうっていうわけにはいかず、何十個とかの単位で買わねばならないものだと思っていた。それってお高いんでしょう?
 そういうマニアが大量に作った部品をネットオークションでばら売りしているのとかは散見されたし、ABU社カーディナルとかミッチェル社のインスプールモデルとかの人気機種の部品ならあるだろうけど、大森製作所じゃ無理だろなと思いつつも、ネットオークションでひょっとして程度の悪い中古でも”ゴミスピ”価格で安く手に入れば、そこから部品持ってきても良いかと眺めてみたら、部品ばら売りがなかったのは予想してたけど、ダイヤモンドリールの人気の高さは正直予想外で驚いた。
 インスプールのコメットが人気なのは知ってたけど、アウトスプールのマイクロセブン、タックルオートやマイコンシリーズも軒並みイイ値段で、特に小さいのはちょっとパーツ取りに1台って感じじゃない。キャリアーとか弾数少なくて相場が分からなかったので検索かけて調べてみたら、一番小さい”SS”は何万円って値が付くらしい(訂正:ゴメン一番小さいのは”ミニ”だった)。


 ネットオークションはあきらめて、nori shioさんに教えてもらった「須山スプリング製作所」さんでベールスプリング作ってもらったらなんぼするンやろ?でもお高いんでしょう?と試しに見てみたら、なんと最小単位はアウトスプールの”トーション式”なら5個から、インスプールのグルグルバネ式なら2個から、どちらも1000円+消費税送料で請け負ってくれるとのこと。頼んだ。脊髄反射で速攻で。


 「見本」として折れたベールスプリングを郵送して待つことしばし。ってほどでもなく1週間もしないうちにサクサクッという感じで、見本とともに5本ずつできたベールスプリングが郵送されてきてポストに入ってたので、ワクワクしながら早速組んでみた。
 ベールを折りたためる機構も同じ場所に入っているのでちょっと組み立ての順番がパズルっぽかったけど、まあ初めてじゃないし昔取った杵柄で何とか組み込んで無事復活。
 こういうサービスは本当にありがたい。モノなんか壊れたらどんどん新しいの買って経済回しましょうなんて、それも大事なことかも知れないし現実そうなってる部分もあるんだろうけど、そんなんばっかじゃもういろいろ立ちゆかないだろうって状況になってきてるし、良いもの大事に直しながら使ってくのって、やっぱり理屈じゃなくて直感的にそれも正しいんだと思う。新品売らなきゃならん釣具屋やらはその分苦労するのかも知れないけど、そういうご時世だと思って気合い入れて良いもの作ってくれとしか言いようがない。再利用とか部品だけとかに関連した小商いとかも、それはそれで立派な経済活動だろという気もする。

 でもって、復活したリールをクリクリ回したり、ベールをハンドル回してカションと戻り具合を確かめてみたりして、改めてダイヤモンドリールのデキの良さを実感させられた。
 大森ファンは声を大にして褒めちぎるけど、正直使ってたけどそれ程でもないやネ、普通の良いリールだヨと思ってた。しかしながら、認識改めてワシも褒めちぎらざるをえんなこれは。
 使ってたときも以前サイトの方でキャリアーについて「どうということはないリール」と書いてたように、取り立ててスゴイ高性能だったり驚きの機能があったりというリールじゃなくて”普通”のリールだと思ってた。
 でも、よく考えたら年間100日以上平気で釣りに行ってたような若い頃に、何年も使い倒して、ベールスプリングが折れるまで他のを買う気も起こらなかったという不具合のなさが既に非凡である。
 リールとしての基本性能である回転性能とかがなにげにイイ。今現在愛用してるのがスピンフィッシャーという丈夫方面とドラグ方面が得意だけど、そういう方面は全然期待してないリールだからというのもあるだろうけど、巻き取りが軽やかで単に軽いというよりバランス良く回ってくれる。ベール手で返してたので今回初めて分かったけど、ハンドル回してベールが返るときの抵抗も軽くて音もガッチャンじゃなくてカションと鳴る。
 そんなこと言ったって、いまのイグジストやらステラやらと比べたらショボいでしょ?と思うだろう。それは半分正解で半分不正解だと思う。
 ダイヤモンドリールの少なくともマイコンやキャリアーは大手の旗艦機と比較するようなリールじゃない。どっちかというと安い価格帯のリールでダイワ、シマノ、オリンピック、リョービの四天王の隙間を縫って職人技と上手な設計で良心的な価格で玄人好みの良いリールを売ってた「スピニングリール屋」謹製のリールだったのである(断言)。
 私が買った90年代には既に大森製作所は傾きかかってて、釣具屋さんも古い在庫を貧乏学生に買える値段で安く売ってくれたように記憶していて、キャリアーは3千円かそこらだったような気がする。だから万札飛んでくよな値段付いてるとビックリするんである。なんせ高価なベアリング様は1個しか使ってないような庶民派でっセ。
 もし、今時のリールで比較するなら5~7千円とかの機種で比較しろと。そのぐらいの機種となら20年以上経った今でも使い心地で互角以上に闘いそうなぐらい回転性能良いし、逆転防止の遊びも少なくて4桁スピンフィッシャーほどには今の機種に慣れてる人が触っても違和感ないように思う。ゴチャついてない適材適所な基本設計からくる壊れにくさとか「上位機種の劣化版」という印象がなく特別感があるというのなんかを上乗せすれば多分圧勝する。だから中古でも5~7千円なら人気機種でなくても普通にしてるんだと思う。今の5~7千円のリールがダメなんじゃなくて凄く良くなってると思うんだけど、20年前においてはダイヤモンドリールが多分特別だったんだと思う。
 今の5~7千円のリール買っても、古いダイヤモンドリールの程度の良いのを探してきても、多分ほとんどの釣り人が「クソたっかいリール買わんでもコレでいけるやン」と普通に使えると思う。
 回転軸を90度捻ってグリグリ回すというケッタイな糸巻きで”普通に使える”といのがどれほど難しいかってところで、今の普及品も昔の大森もエライってことだろう。

 でもって「マイコン」についてだけど、過去私は「ドラグの効きはいまいち」と書いた。「いつもスムーズに動かない小さい方(註:301TB)のドラグが奇跡的に働いてくれて釣れた」という昔話も紹介した。
 「ダイヤモンドマイコンさんスイマセンでした。私が間違ってました。」
 と、まずは平謝りに謝っておこう。
 いや~ネットの情報ってあてになんないよね~嘘ばっかり。

 今回2台を復活させたついでに、分解してじっくり鑑賞するとともにグリス塗り直すかなとバラしてみて、仕舞うときに分解清掃したのか綺麗な状態で、マイコンは海で使いまくってたけどドラグを押さえるバネがちょっと錆びてたぐらいで問題なく、錆だけ落として本体はグリスもそのままでドラグだけ何とかイマイチ状態を脱出するにはどうすれば良いかなといじくってて、そもそも使ってた当時の状態でライン引き出してみて違和感が走った。
 「えらい堅く締めてるな?」
 マイコンシリーズはドラグがスプールの上の方じゃなくて、リールのお尻のほうに付いている”リアドラグ”方式が大人気を呼んで、ダイヤモンドリール史上最大のヒット作となったシリーズ。同時にスピニングリールに一大リアドラグブームを巻き起こした歴史的なリールでもありながら、それまで手堅い設計で玄人好みのリールを作ってた大森製作所がへんな方向に行き始めた元凶となった傾国のリールであるとも好事家の間でまことしやかに囁かれていて、そのせいか弾数の多さゆえか中古でもそれ程値段が付いていない。
 リアドラグって一般的に糸巻いてあるところから距離が離れるから効き悪いよねってのが今時の常識で、大森製作所をもってしてもそこから逃れられないと思っていた。

 でも違った。
 マイコンのリアドラグは、 右の写真のようにドラグを締めるネジを切った部品の上に数字を振ったキャップをネジ止めする構造になっていて、キャップは1周しか回せないけど、どのぐらい締めるかはあらかじめ持ち主が調整しておけるようになっている。ドラグパッドを押さえつけるバネがへたってきたりグリスアップでドラグの効きが違ってきたりしたら再調整ができるというよく考えられた仕組みである。これだと調子に乗ってゆるめすぎてキャップを落としたりしないし、あらかじめ調整して数値化して把握しておいたドラグ値にファイト中にサッと変更可能である。
 でも、リアドラグ方式はそもそも安定しないから数値どおりのドラグ値になんてならないよねと思ってたのだけど、ハッキリ言って当時のナマジ青年がドラグのなんたるかをよく知らなかったから調整に失敗して締めすぎてたというのが判明した。
 手で引っ張ったときにズルズル出てこないぐらいに「締めたときには止まる」のが大事だと思ってきつめに締めてた。結果最大限ゆるめてもそれ程ライン出て行かず実質的な調整幅も極狭くて「ドラグ効かない」と感じる状態になっていた。
 普通にシーバス狙うときのような8ポンド2号のナイロンラインを切れないように、締めたとしても2ポンド約1キロ前後で滑り出す程度を上限にまあ1ポンド以下を中心にというような、実釣に即した緩めの設定にしてやると「ドラグが良い」とまでは行かないまでも、充分にドラグを使った釣りになる程度の性能がありそうに思う。部屋の中で手で引っ張るのと竿も介して魚に実際に引っ張られるのとでは違うことも多いけど、昔の想い出の中にあるマイコンのリアドラグの印象とは全く別物のまともなドラグだというのは間違いなさそうである。海より深く反省した。

 とはいえ、リアドラグが好きになるかというとそうでもなくて、写真見てもらえば分かるように大森製作所の職人技を持ってしても、リアドラグをまともに機能するように設計すると、部品も多くなるし実際ドラグを押さえる大っきなバネが錆びたりと、壊れる部分が増えてしまうのである。
 この写真を撮ってからグリス拭き取りながら作業してたら、さらにキャップの中にはもう一枚スリーブが入ってたし、一番左の部品は筒状の部品にドラグ音鳴らす歯車とワッシャー2枚が組み合わさっていて写真以上に部品数多いのである。さすがに手が油で汚れてから写真撮り直すのははばかられたので想像以上のややこしさを写しきれてないのはご容赦願いたい。

 部品数が増えれば当然リール自体が大きく重くなる。
 実はマイコン301TBはキャリアーNo.1より大きくてPENNで言えば4400に相当すると思ってて、そう過去に書いていた。
 マイコン301TBはJOSさんが元の持ち主に「うちの後輩に大森のリール好きなヤツがいるよ」と話したら、もう使ってないのがあるからあげるよということでJOSさん経由でいただいたモノで、その時点でシールも剥がれていて、今回ネットで調べて大森製作所でいうところの「No.1」の糸巻き量に相当すると初めて知ったところである。ちなみに「ミニ」とつくのが一番小さくてその次に小さい「SS」がPENNなら4200相当で「No.1」が4300相当、以降数字が大きくなるとリールも大きくなる。
 写真で並べても同じ糸巻き量なのに大きさ違って見えると思うけど、実物だともっと差があるように感じる。

 そのぐらい大きく重く複雑にしてまでリアドラグにする必要あるのか?と聞かれれば、ファイト中にドラグいじる人には価値があったのかな?という気もするけど、ファイト中には赤子泣いてもドラグいじらない派の自分としては、別にいらんがナと正直思う。
 じゃあなんで、そんな質面倒くさい機構をマイコンは付けたのか、そして人気を呼んでリアドラグブームまで来てしまったのか?
 私が思うには9割方その理由は昔のABU社カーディナルのリアドラグが格好良かったからだと思う。
  釣り具なんて好きか嫌いかが重要で、性能とか重いとか、ましてや値段の高い安いなんてのは格好良さの前では割とどうでも良かったりする。
 遊びで面白おかしく魚釣りするのに、多少のデキの悪さだのは我慢できても格好悪いのだけは我慢できないってのはお好きな人なら分かるでしょって話。

 マイコンシリーズ、中古市場を見る限りじゃそれほど人気ないし、評価しない人もいるかも知れないけど、そんなことはどうでも良いんである。
 学生時代から愛用してベールスプリング折れるまで使い切ったマイコン302TBもキャリアーNo.1も、縁あって手元にやってきた2人の主人に仕えて楽しい釣りを友にしてくれたマイコン301TBも自分にとっては最高に価値のある格好いいリールで、3台とも使える状態になったし、想い出に浸りながらいつの日か釣り場に再度持ち出す日まで、また蔵で眠ってもらうことにしよう。

 想い出の詰まった思い入れタップリのこのリール達。なんぼ金積まれても売る気はないけど、私にマイコン301TBを託してくれた釣り人の気持ちは歳食ってなんとなく分かってきたような気がしている。
 想い出だけ心に残れば、使ってくれる人にあげるってのは悪くないのかもしれない。

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