2024年12月21日土曜日

ワシの大森は格好いい!

 先日、遊びに来た釣り仲間と話していて「上級者とか上手い人間がいろんな機能がついた”高級”なリールを使うっていう風潮はおかしいんじゃないか、単純な機能のシンプルな道具を使いこなしてこそ上手い釣り人なんじゃないのか?」という話になって、大いに賛同した。まあフライマン達だったので「フライリールはシンプルで格好いい」っていう結論はフライリールはよほどの大物でも相手にしない限り、釣りが終わった時にラインを収納しておくだけの機能ですむのでちょっと違うような気もして、我田引水気味だなと思うにしても、フライリールやチヌの落とし込みリールのような単純な”センターピン”のリールの格好良さってやっぱりあるように思う。こういう感覚は世界共通であるらしく、ヨーロッパでは今でも鯉釣りとかセンターピンのリールで浮き釣りで楽しんだりする渋い趣味は健在のようだし、オーストラリアだったかと思うけど横転リールでサーフの釣りをするという、糸ヨレしまくりでえらいことになりそうな愛好家達もネットで見た憶えがある。

左:フライリール、右:横転リール
 ひるがえって、今時のスピニングリールのややこしさと言ったらどうよ?って話で、もう全くぐにもつかんような機能満載で、しつこく何度でも書くけどしゃくったときにガチャガチャいわんってだけの瞬間的逆転防止機構とそれに付随した防水機構は諸悪の根源として、要りもせん箇所に重くて錆びるボールベアリングをズッコンバッコン入れまくりで、アホみたいな使い方してクレームあげてくるアホなド素人客のために、ライントラブル防止でスプールのエッジには小っちゃくひさし付けてくれてあるし、ふけたラインをそのまま巻き込まないように、一旦ラインローラーの手前でしごく機構までついてたりする至れり尽くせりの仕様。なんというか自転車でたとえると、ガキが乗ってるゴチャゴチャ電飾のついたような補助輪付きの自転車みたいなかっこ悪さ、なんなら電動アシストも付いてる感じ。

 ちょっと話それるけど、川崎に住んでたころ朝の出勤時、おかーちゃんが前と後ろに子供乗せて、保育所へ送りがてらパート先に出勤するのだろうか、駅までの坂を爆走してるのが日常の風景だった。あの丈夫でなんならこけないように3輪になってたりもする電動アシスト付き自転車は、脚力も運転技術も優れていないだろうおかーちゃん達の心強い味方だなと感心した。素晴らしい自転車だと思うけどカッコ良いか欲しいかというと普通そうは思わんだろう。ただ、どんな世界にもマニアはいて電動アシスト付きで子供座席の付いた自転車のサドルを専門に盗む変態さんがいて捕まってた。まあなんというか頑張るママさん達へのゆがんだ尊敬の形なのかなと、ちょっと分かるような分からんような上級者もいるのである。子供乗せて自転車で爆走してるおとーちゃんが全く居なかったところは今考えると、さすがに男ども役立たずが過ぎると思わなくもない。子供の送迎でそれなら家庭内でも推して知るべしで、家事において男親など電動アシスト付き自転車よりも役に立ってないんだろうなと思うと、都会で共働きで子育てしてるようなおかーちゃん達に手厚い支援策をと思わざるを得ない。

 はなしもどすと、スプールのひさし。ARCとかいうやつを代表に、スプールエッジがエッジの効いた角の立った形状だと、ラインの放出性はいいけど、良すぎてドバッとまとめて出てしまうようなトラブルが多いので、ひさしに当てて放出性はチョイ下げつつもトラブル少ない様に良い塩梅に放出性にブレーキを掛けている存在だと思っている。って話を遊びに来た後輩にしたところ「あれは飛距離を出すための形だと思ってました」と妙なことを信じ込まされていた。飛距離的にはひさしなどないほうがラインの放出性がよく良いはずでアル。あるけどワシもスプール往復にプラナマチック機構採用でスプールエッジの角の立った丸ミッチェル「314」では、ラインがドバッと出るトラブル頻発で最初使い物にならなかった。識者に「糸巻き量を減らすと劇的に改善します」とご教授いただいて糸巻き量減らしたら、ラインがスプールエッジに角度大きく当たり、適度な放出時の抵抗が生じることでトラブルは激減した。まあスピニングリールで”ライントラブル多くて扱いにくければ糸巻き量減らす”っていうのは応用が効き単純明快な方式である。放出性の良いスプールエッジの角の立ったリールを使いこなし遠投性の良さの利点を生かすという方向もありそうなモノだけど、まあ、遠投投げ釣りリールならともかく、今の釣り具市場でそんなとんがった仕様が受け入れられるわけもなく、素人でも扱えるように、となるとひさしが付いてるのは親切設計だと思う。でもそれが”飛距離が出る”と優良誤認されているのはいかがなモノか。あと、角の立ったスプールエッジにちょっとひさしが付いているような、実用性重視のリールは昔からある。いまさら特にそれを宣伝するまでもないだろって話。写真の左から4200SS、と丸ミッチェル304のスプールエッジは角が立ってる、でも右の4400SSのスプールエッジはゆるいひさし付き。何世代も前の古いリールでっせ。

 そして、もひとつ例に出した、ラインローラー手前でラインをちょっとしごく仕組み。あれがいかにも新開発ですって顔で出てきたときに、TAKE先生は90年代中頃の怪作ミッチェル「クォーツ」で同様の機構がすでに採用されていたことをご指摘されていたし、ぬこさんはPENNスピンフィシャーの小型アウトスプール機を始めいろんな機種で、ラインローラーまでのベールアームとベールワイヤーの間が狭く絞られていて、実質”しごいてグチャッとしたままのラインを巻き込むのを防ぐ設計”になっていて、昔から珍しくもないことを指摘していた。写真の上から覗いてるのはマイクロセブンC1。右が4300SS、左が420SS。ワシも下の写真の1960年代製の古い大森大型機スーパー2000」やらコンパック「スーパー7」あたりに、おなじようなラインをしごく仕組みが既に実装されているのを知っていて、その機構は、二番煎じどころか少なくとも四番煎じの出がらしであるということである。それをさも新技術のごとく宣伝する売りたい側の言ってることって、まあ基本疑っていいよねって話。

 てなことを書けば、今時の高級リール様の信奉者さんは涙目で「でも、今のリールは巻きが滑らかで軽いから!」って必死に優位性を信じたがるだろうけど、ほんとにそうかな?と今から意地悪にも現実というモノを筋道立てて思い知らせてやろう。まず、負荷が掛かる時には、ギア方式が同じならギア比変えたら変わるけど、同じギア比なら軽くなる理屈が分からん。っていうかそんな現象は起こらないはず。ベアリング入れたりギア同士の接触面を耐久性削って減らせば、負荷が掛かってないときは軽く回るだろう。ただ実際にリールを軽く巻きたいときって、ルアー引っ張るときでも魚寄せるときでも負荷が掛かってる状態のはず。竿で稼いで負荷を抜いて巻くにしても負荷ゼロで巻いたらそれこそ糸ふけ巻き込んでトラブルの元でヘッタクソって話。ギアというやや複雑な機構なので目に見えてどう効果が出てるのかが分かりにくいので、店頭や家で空回ししたときに軽いと負荷が掛かってる状態でも軽いかのように錯覚するかもだけど、もっと単純なテコで考えると分かりやすい。たとえばペンチやハサミを使うとき、もしベアリングが入ったようなけったいな製品があったとしても、ナニも挟まずカチカチチョキチョキする分には軽くても、モノ挟んだり切ったりするときには高負荷が掛かるので、ベアリングが効くような負荷の無い”軽い”状態とでは場合によってはキロとグラムという感じの2桁以上は桁の違う抵抗が生じるわけで、ベアリング無しと有りとで結果的に使用時に感じられるほどの差など生じないはずである。生じて軽くなるならベアリング入りのペンチやハサミが一般的になるはずで、でも実際にはそうはなってなくて、使用感を軽くしたいなら、ペンチなら握りを長くというか全体大型化するなり二段階方式にするなりが必要で、ハサミなら加えて切れ味鋭い刃を付けるとかで、空気挟むときに軽やかに作動したところで本来目的での使用時には誤差程度の差しか生じ得ず意味など生じない。テコってそういう用途と仕組みだろっていうのは、さすがに支点力点作用点ぐらい義務教育受けてたら分かってもらえると思うけど、これがリールのギアになるととたんに何か特別な仕組みのように思って、ありもしない不思議なフォースが働くと信じたがるジェダイの騎士のなんと多いことよ。フォースに目覚めるより先に物理法則勉強した方が良いと思うけど、ワシも物理苦手系なので勉強するほどのことかねって正直思う。まず売ろうとしてくるヤツの言ってることなんぞ疑ってかからねばならんってのが物理云々より先にしなきゃならんことだろ?鵜呑みにするヤツは鵜じゃなくて良い鴨。あと軽いルアー使う負荷の軽い時に巻きが軽すぎるとハンドルに手がしっかり当たってない感じがしてスッカスカな巻き心地で、いわゆる”巻き感度”が悪いっていうのはTAKE先生なり村田基先生なりもご指摘されているとおりだと思う。低負荷時に巻きが軽いようなベアリングやらギア接触面を減らしたようなスピニングリールは、低負荷時に巻き感度が悪く、高負荷時には特に軽くもない。アホかと。ギア方式の全く新しいモノ(もしくはギアを使わない斬新な回転軸を90度曲げる方式)を考案して、今までより力の伝達効率が大幅にアップとかいうなら、それは真に革新的と言って良い称えられてしかるべき技術だろう。ただ現在も40年から昔に考案されたハイポイドフェースギアというギア方式は蹈襲されていて変わってはいない。じゃあそのハイポイドフェースギアを開発したエラいメーカーはどこよ?っていえば大森製作所がその開発には大きく貢献したとされていて、そうなると大森製作所は称えられてしかるべきってことになる。大森製作所のハイポイドフェースギアはガタが来てるのを見たことがないぐらい耐久性に優れ、滑らかさにおいても充分今時の高級リール様に遜色ない。っていうか巻きの滑らかさってそんなにリールに必要か?そこそこギアはやかましめのベベルギアの丸ミッチェルも魚釣ってて不快な感じは全くせんかったけど、気になる人は気にするのだろうか?ワシには分からん。ギアの作りが鍛造?削り出し?高強度ジュラルミン?あほか?大森ハイポイドフェースギアはハンドル軸に鉄系の芯は鋳込んであるけど亜鉛鋳造のハンドル軸ギアと加工のしやすい真鍮削ったローター軸のギアと”経済的”な設計だけど、ギア方式変えずに製法だ材料だをいじったところで、ものの重量は削減できても、巻きの軽さも滑らかさも勝てる理屈ないやんけ?それでいて値段はバカ高い。そしてワシの少ない経験からで申し訳ないけど耐久性はないがしろにされていて劣るとか買う価値まったく見いだせない。

左手サミング修行
 「でも実際に安いリールだと魚がかかったら重くて巻けなくなるけど、高いリールにしたら巻けたから!」って思う人もいるだろう。それはギアの良さではなくむしろ本体の剛性の問題で、片軸受けでローターの回転軸の片側のラインローラーにラインが掛かるスピニングの構造上、まあそうなるわなという本体とかが”たわんでる”高負荷状態でゴリ巻きしようとするから巻けなくなるのを、クソ高い高級リール様だと、ゴリ巻き仕様で過剰なまでの剛性でたわんで巻けなくなるのを防いでるだけで、ギア関係あらへんと思う。以前ネットでバンスタールを買った釣り人か「8万からするリールなのに魚が掛かったらたわんで巻けん、使えんリールだ!」と憤ってるのを目にして「スピニングリールの使い方知らんアホ発見」と思ったモノである。スピニングリールは高負荷時ゴリ巻きするのに向いた構造ではない。でもそんなもんポンピングして竿で稼いだ分負荷を抜いて巻きゃ良いだけのことである。バンスタールも価値の分からんマヌケに買われて災難である。いらんのならワシにくれって話である。そうやってゴリ巻きしないならPENNスピンフィッシャーの、ねじ込み式ハンドルで力が掛かると締め込んでいく構造のハンドルピンも曲がらないので純正のハンドルで問題なく20キロ30キロの魚があがる。社外品の折りたためない高っかいハンドルなんぞ必要ない。ましてや純正状態で折りたためないようなハンドルが付いている不便な今時の高級リール様なんぞ馬鹿臭くて触る気にもならん。なんで、そんなアホなゴリ巻き仕様のスピニングが世にあふれかえってるかって言えば、おそらく船縁に竿掛けで竿ごと固定してゴリゴリ巻いてた両軸使ってた餌釣りから転向した釣り船の船頭さんが、手で持って巻くスピニングタックルでも「竿あおちゃダメ!」と釣り人を指導したからと、釣具屋もアホが勘違いしてくれてるならそのままの方が正しい使い方を啓蒙するより楽で良いって安易にその方向に追従したのと、そのことに気づかなかったアホの釣り人のせいだろう。ワシも釣り船で何度か「竿あおっちゃダメ!」って言われたけど気にせずポンピングして釣ったった。通い慣れてる釣り場の魚や海の知識で本職の船頭さんに勝てるとは毛頭思わんけど、ことルアー使った釣りに関してはワシャガキのころから馴染んでるから、昨日今日ルアー船始めた船頭さんに道具の知識で負ける気なぞさらさらなかった。ポンピングした方が明らかに勝負が早くつくのを見て船頭さんも「そういうやり方もありなんかな?」と己の自信が揺らいでるようだった。良い船頭さんは常に考えて新しい釣りにも対応するから釣り人が賢ければこうはなってない。「20キロ30キロならそうかもしれないけど、もっと大きくなると違う」と涙目で言うかもしれん。そうなったらいつも書いてるけど、スピニングじゃなくてベイト使えって話を今回もジジイの繰り言として書いておく。90度回転軸を変えるなんてけったいなことはしていないから巻き上げ効率は良くて”軽い”し、”両軸リール”ってぐらいで軸の両側を受けているからたわんだりもほぼ気にしなくて良い。投げるのが難しいって、それを上手くやるのが上級者で上手い釣り人ってもんだろって話。素人でも扱える道具しか使えません、っていうならそりゃそいつは素人なんだろう。ワシゃ実践経験はそこまで積むことができてないけど、大型のベイトリールでのキャスティングのための”左手サミング”も一応はたしなんでおりましてよオホホ。あたくし素人じゃございませんの。磯からロウニンアジやらやる人達には結構両軸派はいるので、船からでもどこからでも使えば良いのにと不思議でならない。アベットとかアキュレートとかちょっと欲しくなる程度には格好いいしな。もちろんPENNやニューウェルの両軸も渋くて格好いい。

 って感じにごちゃついてうっとうしい今時の高級スピニングリールと比較して、ワシが今年シーバスに年間通して使ってた大森スピニングは、はっきり言って格好いい。冒頭写真のがそれで、集合写真では右下に写ってるやつだけど、モノとしては「タックルNo.2」という、外蹴りアウトスプール時代から内蹴りの時代になっても、単純設計で低価格設定にできるので生き残った機種(「タックル5No.2」の色違いバージョン)で、余計なモノは付いてない。ただ、ギアは既に完成の域にあったさっきも書いた鉄系の芯を鋳込んだお馴染み大森ハイポイドフェースギアで、よく売りに出されているときに「古い時代のものなので、現在のリールと比べると劣ります」みたいな書かれかたしているけど、大概ボールベアリングが錆びてるとかでシャーシャー言ってるだけで、ベアリングの交換で今時のリールと遜色ない滑らかな巻き心地に復活する。逆転防止は瞬間的には止まらないけど、単純小型堅牢で本体内部に収まっているので特別な防水機構を必要としない。防水機構が特段は付いてないのでボールベアリングが錆びるのは、まめに塩抜きするなり錆びたら交換と割り切るしかないにしても、構造単純なので苦にならない。規格品っぽいワンェイクラッチ(片方にしか回らないベアリング)ぶっ込んだ単純な設計ならともかく、今時の瞬間的逆転防止機構はそもそも分解不可なのかもだけど、異様に面倒くせぇ繊細で複雑な機構で触る気が失せる。外蹴り大森はベール外蹴りでベール反転機構って言ったってラインローラーの尻をフットから張り出した”蹴飛ばし”に当てるだけと極めて単純。ドラグは今の小型機のドラグと同じように3階建て方式で同じように硬質フェルトのドラグパッドを使っているので、今時のドラグ用グリスを使えば、当然今時のドラグと同等の性能になる。スプール上下が減速なしの単純クランク方式なの完全平行巻にならない欠点もあるけど、軽負荷時に適度に巻き抵抗になり巻き感度向上には役立ち、綾巻に巻き上がるので放出生は劣るけどライントラブルの少なさは利点となる。で、この外蹴りアウトスプールの大森スピニングが進化して軽いベール反転を実現し、簡易ローターブレーキの搭載で意図しないベール返りを防ぐようになったのが、大森スピニングのある種の到達点である「オートベール」、「タックルオート」の両機種だと思っている。いずれにせよ外蹴り内蹴りそれぞれ利点欠点はあるものの、今時のクソリールどもと比べて、劣っているところもあれば逆に優れている点も多く、単純に古いから劣っているとは全く思わない。むしろ純正状態でも今時のクソみたいな瞬間的逆転防止機構搭載機より実用性で優れていると思うぐらいである。なら、大森スピニングの単純明快な良さを生かして、欠点を補ってやれば”良いとこ取り”の実用性最強のスピニングになるのではないかというのは、ちょっと前にネタにした「オートベールNo.3」のスプール周り改造とも共通するワシの大森改造の基本理念である。加えてこの「タックルNo.2」については、スプールをアレしてやるのに加えて、もっと機能をそぎ落として単純化できる部分はないかと考えて、フルベールのベールワイヤーを取っ払ったマニュアルピックアップ方式の、いわゆる”ベールレス機”に改造した。ラインローラーはポリアセタール樹脂で自作しているが今年1年もってしまって思ってた以上に耐久性がある。削れてきたらまた作って交換と考えていたが、ちょっと溝ができてきたかな?って程度であり、今年はその必要はなかった。同様の改造は「タックル5No.2」で以前にも報告している。具体的な改造方法はそっちを読んで欲しい。フルベールであれば投げた後ラインを確実に拾ってくれる。でもハーディー社がフルベールアームの「アルテックス」を開発するまで(そしてその特許が切れるまで)、ハーフベールやマニュアルピックアップの機種が使われていたわけで、フルベールにするからベールスプリングやらの耐久性が問題になったり、内蹴りの方式の複雑さや意図しないベール反転が生じたりするわけで、マニュアルピックアップにしてしまえばそれらは関係がなくなる。ベールレス機を扱うには多少の技術と慣れが必要で、素人にいきなりやれと言っても難しい。ただ慣れると、ミッチェル方式で通常は逆転防止機構を切っておいて、投げるときにはラインローラーを手前に持ってきてラインを人差し指で拾ったら、ハンドル逆転でラインローラーからラインが外れて投げる体制が整う。投げたら人差し指でフェザリングして着水したらフェザリングしていたその指でラインを拾っておいてから巻き始めるとラインローラーにラインが掛かる。というのが夜釣りのシーバスでも普通にできるようになる。たまにラインを拾い損ねて巻き始めてもラインローラーにラインが掛かってないミスがあるけど、一晩やってて数回程度だし、竿を立ててラインを出しつつ改めて人差し指で拾ってやれば良いのでたいした問題にはならない。まさに単純シンプルな道具を技術で上手く扱えているわけで、ゴテゴテの補助輪付けてもらったようなダッセぇスピニングより、ワシの大森の方が玄人っぽくて格好いいというのがおわかりいただけるだろうか。リールの基本的な構造や使い方をしっかり理解していて、どこを改良すべきか、特にナニを省略できるかが分かり、省略して単純化した分、技術が必要とされる部分を経験や修練でなんとかして、実際に”快適に”魚を釣る。どっかの大手のフラッグシップモデルで釣ったところで、そんなもん誰でも使える道具で釣ったという部分ではなんの自慢にもならない。それを買える経済力は自慢できるかもしれんけど、釣りにはあんま関係ない。でも、マニュアルピックアップに改造して大森スピニングの良さを生かしつつ、素人にはできんような技術で使いこなしてるっていうのは、その道具を選び改造した知識と技術、判断も、使いこなす技量も自慢に値すると自画自賛せざるを得ず、ワシのリールは玄人仕様の格好いいリールなんですよ!って高らかに宣言したい。さっき出てきたバンスタールやらPENNだと706zやトルクのマニュアルピックアップ仕様とかの、あからさまに格好いいところは、素人じゃ使いこなせない、使いこなすのに一手間かかるっていうところじゃないかと感じている。で使いこなすとベール反転関連のトラブルと一切縁が切れる。だってベール反転させないんだから意図しないベール返りもなければベールスプリングの破損も起こるわけがない。遠征の荷物に突っ込んでもベールワイヤーが曲がることもない。技術で単純な道具を補って使う利点は”格好いい”ってだけじゃないということがおわかりだろうか。

 ワシらジ様釣り師になると、経済的にはそこそこ小金持ちなことが多い。クソ高い道具を買ったところで、それほど驚かれはしない。ただ、ワシのベールレス機を「ベールワイヤー取っ払ったった」と言って見せると、そういう酸いも甘いも知ってる経験豊富な釣り人達でも、ちょっとオオッと驚いてくれる。やっぱり少なくとも個性的ではあり、ちょっとやりそうな感じで、ひょっとすると「ちょっとそれは格好いいかもな」と思ってもらえるようにも感じている。ワシの大森は格好いいのである。

 で、さらに腕で不便を補完する方向で、さらに、歴史を遡って何か省略してしまえる機構はないかと考えると、候補は3つ考えられる。一つは「逆転防止機構」、二つ目は「ドラグ」、3つめは「スプール上下機構(オシュレーション)」ぐらいで、あとはどうにも外してしまうとリールとして機能しなくなる気がする。

 この中で、歴史上出現した順番を考えると、スプール上下機構、ドラグ、逆転防止機構の順でドラグが意外に早くから搭載されていることに驚くというか、もっと驚くのが逆転防止機構が存外後になって出てきたことで、フルベールアームのハーディー「アルテックス(1932発売)」にはまだ付いてない感じで、カーパノ&ポンズ(ミッチェル社の前身)の「CAP」リールでも初期のモノには逆転防止は付いていなかった。同時代の後の「300」である「ミッチェル」は1948年登場時にすでに逆転防止機構は搭載されていたようだ。なので1930年代以降1940年代までぐらいで逆転搭載機構は搭載されるようになったと推定する。スプール上下機構は、まあスピニングリールの出自は紡績機械で最初のスピニングリールは細長い糸巻き(スプール)の形状だったので、当然最初のスピニングリールである「イリングワース1(1907)~」にはスプール上下させるオシュレーション機構が付いている。ただ、安価なライバル機の出現でコストダウンを図った「イリングワース2(1910~)」ではスプール幅を狭めてオシュレーション機構を省略している。そしてより機能を進化させた「イリングワース3(1913~)」ではオシュレーションも復活、なによりフロントドラグ方式のドラグ機構が登場となっていて、ワシの現時点のベールレス版タックルNo.2はこの時代に生まれた機能に逆転防止機構が付いてる感じになっている。(参考:國吉昌秀著「ベールアームは世界を回る」)

 歴史を顧みて、逆転防止が一番後に追加された機能であることは意外に思うと同時に、我がベールレス版タックルNo.2からさらに削るとしたら、たしかにそれかなと思わなくもない感じで、最後まで搭載されなかったのも理解できる。スピニングリールの役目が元々は軽い仕掛けを遠くに飛ばすというものであったから、自ずと対象とする魚の大きさも限られてくる。逆転防止がないと取り込むときに片手が離せなくてタモとか使いにくいと思うかもだけど、シーバスぐらいまでならローターに指伸ばして引っかけて逆転を止めてしまう程度でなんとかなる。これは改造も簡単でスイッチ、銅板の爪を上げ下げする金具、爪あたりの関係パーツをいくつかとっぱらてスイッチを外した穴を適宜ふさいで防水しておけば足りる。逆転防止のラチェットはギアの上に填まってるのを同じ幅とかのスリーブに換装しても良いけど、そのままで問題ないだろう。でも外しても大して変わった気もしない機構でわざわざ外すほどでもない気がする。使わないなら切っておけば良いだけだしな。

こいつはなぜか蔵にあった707
 となると、ドラグかオシュレーションか?って話になるんだろうけど、ドラグはちょっとなくなるとしんどい。予期せぬ大物の急激な引きとかにドラグなしだと対応できず怖い部分がある。ただ、その場合でも逆転防止を切るあるいは逆転防止を廃止しておいて、ローター逆転で対応する”逆転釣り”という手段はある。まあ、ドラグを使うより、さらに技術が必要とされるようになるから今回の話の筋にも合致している。ただそうなるとアウトスプールスピニングのローターはベール関係の乗っかる腕が両側に付いていて、これが高速で逆回転するのを手で止めるのは突き指しそうで危なっかしい。かといってハンドルを高速で逆回転させてラインを繰り出すのは難易度が高そうである。そうなってくると、昔の磯のグレ師がフットを切って短く溶接したオリム「トゥルーテンパー727」のインスプールのローター下部のお椀の部分に指をあてて逆転によるライン放出を調節したように、やるならインスプールの機種でやった方が良いように思う。

コイツはなんでしょう?そのうちネタにする予定
 オシュレーションに関しては、まあクローズドフェイスリールではスプール幅狭くしてスプール上下なしってのも珍しくない程度には存在するので、オシュレーションクランクを取っ払って、適切な高さに主軸をピン止めしてスプール位置を固定、ラインがぐずぐずになりすぎない様にスプール幅をアレしてFRP板とかで狭くしてしまうというのはできなくもない。ただ、投げるとき幅が狭いのですぐに糸巻き量が減って、ラインの放出に抵抗がよりかかるようになって、飛距離的にはかなり不利になるだろう。とはいえ使用不可になるほどか?と考えたら、クローズドフェイスリールの事例で実用可能なのは明白だし、もっと単純な機構でと突き詰めるならやる意味はあるだろう。

 実は、逆転機構なし、ドラグなし、オシュレーションなし、マニュアルピックアップ方式のスピニングは、安価なライバル機に対抗して、必要な機能を絞り込んだ最低限の機能で構成された「イリングワース2」がまさにそのような機種であり、究極に単純なスピニングリールと言って良いかもしれない。そう考えるとちょっと、それを当時の釣り人のように使いこなしてみたくなる気もするけど、ドラグの代わりにローター下部を指で押さえて逆転(=ライン放出)することを考えると、適当なインスプール機種の改造母体が必要であり、まあなんかちょうど良いジャンク個体でも出てきたら、挑戦してみるのも悪くないぐらいの感じで、現時点ではあんまりやる気はない。

 むしろ、現在使用中のベールレス版タックルNo.2は、ヒラフッコまでしか釣れていないので、もうちょっと”映える”武勲を立てさせて、この程度の単純なリールでも充分以上に釣りは楽しめるし、なんといっても使ってて気持ちいいんだぜ!ってのを示しておきたいので、来年の話をすると鬼が笑うそうだけど、来年もシーバス用の主軸で使っていこうかなと思っております。大森のデキの良い部分を楽しみつつ、欠点は補ってあって、かつちょいと使うのにコツがいる、使いこなす楽しさ誇らしさを味わえる、なかなかに良いリールに仕上がってると思って、当初想定以上に気に入ってます。 

 ワシの大森は格好いい!

2024年12月14日土曜日

ダイソーでこのルアーを買え!(命令)

  ネット上で「ダイソーのルアーが安いのに釣れる」とかいう記事のタイトルを目にするだけで、アホかとしらけていた。そんなもん今時どこの国で安く作っても魚が釣れないようなルアーを作るのが難しいぐらいで、それをことさらに意外なことのように騒いで、あまつさえ安いので”根掛かり覚悟の釣りにもうってつけ”とか、水中にゴミを残すのを推奨するようなことを書くバカどもはタヒねば良いのにぐらいに思ってた。

 ワシ基本的に、ルアーの開発、発展に貢献するような姿勢のメーカーの品に一票入れるつもりで買うってのがあって、まあ中古で買って一票もクソもねえかもだけど、気に入ると新品でも買うし、頼まれてもいないのに宣伝したりもするので見逃して欲しい。

 中華製始め、あからさまなモノからクソな大手製までパチモンルアーってあるけど、ダイソーのはまだ、法務部しっかりしていて訴訟沙汰にならんよう、元ネタなんとなくわかるけど、ごまかしてそれなりに独自性あるデザインになってるので、ワシ的にはワシらの時代にコーモランがあったように、少ない小遣いでやりくりする釣り少年の味方的には悪くない存在だと思っている。いい大人は金あるんだから、ちゃんとした独自性のある開発元のルアーをなるべく買って欲しいとは思うけど、まあ個人の自由で好みの問題だろうから大きなお世話だろう。好きなの買ってくれ。

 ただ、かっこ悪いと思うのは、大手が中小メーカーが釣り方含めて流行らせたような種類のルアーの市場に後出しジャンケンで妙にデキの良いのを突っ込んでくるパターンで、典型例が、以前に流行ったワカサギ型I字系ルアーで、どこが元祖なのか分からんけど、後発のどのメーカーも、申し合わせたように尻に毛が生えていて、その手のルアーのキモは不自然な音や動きを極端に排除したおとなしさ嫌われにくさであり、毛はなくてもあっても別の何かでも良かったはずである。元祖は訴訟起こして良いんじゃないかと思うぐらいあからさまのパクリで見てて醜悪すぎて気持ち悪かった。なんぼなんでもそれはないんじゃないかと思う。あと個別のメーカー名を出すと今のご時世、それこそ訴訟沙汰になりかねんので伏せるけど、とある日本のメーカーかブランドか知らんけど、いまだに完全コピー商品を堂々と売ってるところがあって、かつ当然今の技術でそれをやったら、昔のコーモランみたいにオモリ入ってなくて動かんとかいう笑えるオチがつくはずもなく、普通に安くて釣れるので結構売れてやがる。一応我が国は知的財産権ガン無視が基本の途上国じゃねえんだろ?ほんと恥を知れって感じ。廃盤になった昔の名品をってパターンじゃないヤツね。今でも普通に売ってるやつのマルパクリで下手すりゃ釣具屋で同じ棚に並んでる。頭おかしいよね。

 で、今回のルアー図鑑うすしお味第77弾でとりあげるのは、今まであんまり興味なかったダイソールアーで、あんまり好きじゃないイワシカラーのを二個も買ってしまってまで二票投じているので、コイツがなんなのか説明させてもらいたい。まあ二票投じても440円(税込み)のお安いルアーだけどな。

 このルアーが何かというと、植物由来の分解性の素材でできているルアーで、その名も「リップレスミノー90F」という、そのまんまやんけ!ひねりなさい!!という突っ込みを入れたくなる、やる気のない命名のフローティングリップレスミノーなんだけど、でもその意気や良し。実際の製造は中国に外注してるようだけど、たぶんケミホタル作ってるルミカ社が製造元らしく、酢酸セルロース樹脂という(株)ダイセル社とかいうところが「CAFBLO(キャフブロ)」で商標権押さえてる素材のようで、引用させてもらうと「木材や綿花などの非可食バイオマス由来のセルロースと酢酸から得られる酢酸セルロースに、非フタル酸系可塑剤を配合し熱可塑性を付与した環境にやさしいバイオマスプラスチックです。その特性は、(中略)④海洋生分解性で(後略)」となっていて、海洋へのプラゴミ流出・蓄積の問題を解決するための手法として売り出し中の素材のようだ。

 海洋生分解性があるから海に捨てて良いってワケじゃないにしても、今実際に海洋にプラゴミがあふれかえってる現状を鑑みて、それらが何百年も残るような素材ではなく分解されて短期間で生態系に再度取り込まれるのであれば、ずいぶんとマシになるのは明白だろう。ポリエチレンのレジ袋がいつまでも海洋を漂い続け、音響探査ではイカそっくりの反射音がかえってくるので、深海でイカ食うようなクジラがゴミ袋食いまくってるとか、とっととレジ袋が腐ってくれればずいぶん被害は減るだろう。ポリ袋に限ったことではない。”プラゴミ”全般に似たような話があるのだろう。にもかかわらず、根がかって海底で切れてくれればまた売れて儲かる、と二個とかセットで色を組みあわせて使いましょうとか売る方もだまされて買う方も頭の悪さ丸出しで売られているタコエギなんていう、瀬戸内海で何万個も回収されてニュース沙汰になってるような愚行を我ら釣り人はしてしまっている。以前にも何度も書いたけど、クドクドとまたジジイの繰り言でまた書く、書くべきだと思うからしつこく書くけど、日本でせっかく商品化までこぎ着けたのに生分解性のショックリーダーは売れなくて定着しなかった。何度も書くけど、ショックリーダーは物理的な太さが重要な仕事をする部分であり、同じ引っ張り強度のナイロンやフロロのリーダーより多少太いぐらい、魚を釣るうえでたいした不具合を生じ得ない。その程度のことが分からん、釣り場に根掛かりで残してしまったラインが速やかに分解されることの利点がわからんバカばっかだったので、東レ初代「フィールドメイト」も、バリバスのモーリス「RTE」なんて2世代まで開発して頑張ったし、ラインの国内工場持ってるデュエルも作ってたし、ダイワの石鯛の捨て糸用で作ってたのも、フィールドメイトは2010年代にバージョンアップ版も出していたのもあったようだけど、結局屍累々ですべて廃盤になったようだ。フィールドメイトのバージョンアップ版とか性能もだいぶ上がったのだろうから試してみたく中古市場で見つけて買ってみた。東レさんのしつこさに使命感のようなモノを感じる。もう一回懲りずにバージョンアップして売り出してくれないだろうか?東レさんくじけないでくれ。

 という状況下で、タコエギ2つ付けて根がかり覚悟でバンバン使ってください!っていうクソバカよりだいぶ頑張ってるんじゃないだろうかとおもうのが、今回のダイソールアー。ルアーの世界では元々、分解性の素材でってのはこれまでも作られていて、極論すればバルサとか木製のルアーはリップとか塗装は除くと土に還る。水面系のバスマンがぶっといPEラインでウッドのルアーを使うっていうのは、高価なウッドルアーがどっかに引っかかったときに釣り場のゴミにならないで手元に戻ってくる確率が高いというのも良いけど、ヒートンが飛んでラインアイだけ戻ってきても、ウッドプラグはそのうち腐る。プラのエギ一回で2個も海のゴミにしてるのに比べて、やってる人たちはルアーを大事に失わないようにって思ってるだけかもだけど、上品で賢いように思う。同様にラインを強くしておいてハリ曲げて回収はわりと賢い手だと思う。ソフトルアーの世界ではバークレイ「ガルプ」シリーズとかマルキュー「エコギアアクア」シリーズとか蒟蒻系素材とかのものもそこそこ売っている。ワーム使うならそっちを使ってくれれば、根掛かりさせてもなんぼか実害が減るのではないだろうか。河口湖とかでワームを禁止にしたのは何でだったんだろうねって思えば、酢酸ビニルとかのワームはあんまりよろしくないってのは分かるよね。まあ根がからせたらリーダーとか残るだろうし50歩100歩だろうか?

 っていう状況だけど、金型に樹脂流し込んで大量生産、安価販売するプラグで海洋生分解性を謳うルアーは、初めてかどうかは自信ないけど、とにかくまだ珍しい事例だと思う。さすがに皆さん自然に帰る素材である木で作ったルアーだけを使いましょうと言ったって、通常自然素材の木材使ったルアーなんて3千円からはするはずで、ワシも無理。ラパラが異様に安いけど、アレは世界のラパラだからできることであって、中小メーカーに真似はデキない。ラパラ大好きだけどラパラだけで釣れっていうのもどうかと思う。そういうことをつらつら考えると、樹脂製で安く作れるのに生分解性があっていつまでも環境中に残存しないルアーというのは、挑戦的な試みであり、その挑戦に賛辞を贈り一票入れてもバチはあたらないのではないかと思う。

 生分解性なので、放置してると腐りそうだけど、ウッドルアーと同じで結局表面をコーティングしてあれば水が染みこんだアイ周りとかから徐々に分解が進んでいくんだろうと思うので、パッケージには水で洗ってからぬるま湯で漬け洗いして陰干しとか面倒くさいこと書いてあるけど、そこまで神経質にならずとも良いのではないかという気がする。このへんは実際に使った人に聞いてみたいところではある。

 いずれにせよ、個人の趣味に命令とか野暮なので、そもそもそんな権限も持ってるわきゃないし、件名はまあ勢いで書いたまでだけど、「それって良いことジャン」と共感していただけたなら、ダイソー行ったときに買ってやってください。動きとか使ってないので知らんけど、まあ魚釣れるぐらいには仕上げてあるでしょう。そんなもん、生分解性の素材でルアーを作るのがあたりまえになれば、いくらでも爆釣ルアーは生まれてくるでしょうからたいした問題じゃない。そういう方向に釣り具業界が向くように、釣り人は賢くあらねばと思うのです。

2024年12月7日土曜日

夏休み中には終わらなかった宿題

 以前それぞれ1円落札で確保した3台の大森を、部品の提供とかもいただいて、「昔の塩ょっからい塩鮭みたい」といわれたぐらいの塩吹いてボロボロな見た目のジャンク状態から、とりあえず3台とも稼働状態には持っていったことはご報告済みである。その3台のうちリアドラグの「マイコン202」については既に実戦投入していて、お魚もそれなりに釣って活躍してくれている。

 残る2台の「オートベールNo.3」についてなんだけど、機関は問題なく復活させたんだけど、スプールの腐食が激しく、スプールエッジも凸凹の傷だらけなので、これはアレしてやらねばというのと同時に、前々から試したかった大森スピニングのドラグ周りの耐熱化に取り組もうというのを宿題としていた。夏場暑いときに作業する気にはならんので、涼しくなってきて作業始めて、やっとこさ完成(仮)してとりあえずの形はできたのでご報告させていただきたい。

 まずはアレから、アレも既に何度かやってて手慣れてきて段取りも上手になってきた。まずはスプール上下幅を色変えたラインかなんかで把握して、その幅に切った厚紙のテープを用意して、スプールにグルッと巻き付けつつ自然に填まるところまでキュッと締める。締めたらそのときの直径+1mmぐらいがスプールエッジの輪っかを作るときの内径になる。1mm余分に取るのは輪っかの厚さ分の差がちょっと出るのでとりあえずそのぐらい取っておいて、後で必要なら調整する。外径はスカートの直径と同じにしている。内径と外径が決まったら、いわゆるサーキットボードとか基板とか呼ばれているガラス繊維強化樹脂(FRP)の薄板(0.8mmを愛用)をその内径外径で切り出して、スプールエッジの輪っかとする。切り出しは金物バサミでジョキジョキと大まかに穴を開けていってから、ニッパーとかである程度整えてサンドペーパーで仕上げる。そしてスプール往復幅の厚紙をやや緩めて巻いて、その上に切り出した輪っかをカパっとハメる。これで輪っかの下面がスプール往復幅でそろう。そろったら固定するために最初ティッシュで細いこよりを作ってグルッと輪っかと元のスプールエッジの隙間に巻いて瞬間接着剤で固める。それ用の”アクセラレーター”とかの商品名で売ってる固化促進剤を使うと作業がサクサク進む。だんだんティッシュのこよりを太くしていって、隙間が埋まったら凸凹しているところをある程度アートナイフとかで削って、ロッド回しとかで回転させながらエポキシを盛って形状を整えてやる。エポキシ固まったらドリルで回転させてサンドペーパーかけて形状完成。

 アレとはナニをやってるのかというと、大森スピニングの最大の欠点といわれている、スプール幅がスプール上下幅より広くてラインの端がグチャッと崩れて巻かれがちで、かつスプールエッジが”なで肩”でラインが出て行くとき接触が多く放出性が悪い、というのを修正して、スプール幅とスプールエッジ形状を適正化しているのである。今回はスプールエッジが腐食でボロボロな個体だったけど、この方法ならそんなの関係なくなる。ついでにスカートの糸巻き量表示とかの銘板も腐食して剥げていて、全体的にボロかったので、これまではいじくったスプール上部だけ塗装していたけど、今回は全体を銀色のラッカースプレーで塗装して仕上げた。塗料がある程度固まるまでティッシュ詰めて串刺しにしてロッド回しで回して、おおむね固まってからルアー用の塗装ブースという名の、上部に針金渡してある段ボール箱でじっくり乾燥させてスプールの改良完了。

左オートベールNo.3、右PENN4500ss
 で、このまま普通に組んでも良いんだけど、さっき書いたように今回は大森スピニングのドラグ周りの耐熱化にも取り組んでみた。ドラグあんまり使わない釣り人にはピンとこないかもだけど、青物とか走る魚をドラグ使って釣る場合、魚がデカくて、ドラグ値上げてるのにエラい速度でライン出されてドラグが熱を持つなんてのがあり得て、場合によってはドラグノブのドラグワッシャーを押さえる面が熱で溶けたりするので、PENNスピンフィッシャーでも4桁とかはドラグワッシャーを押さえる面は樹脂製から真鍮製に素材を変えて対応していた。クソ高い社外品のつまみまで真鍮製のドラグノブとかも売られていた。っていうぐらいで大型スピニングではドラグが熱を持つのを想定した素材が使われていて、ドラグパッドが小型機では調整幅も大きく微調整も効く硬質フェルトが用いられていることが多いけど、大型機ではPENN方式と言って良いと思うけど、耐熱性の良いカーボン素材のドラグパッドが使われているのが今では一般的である。フェルトって原材料的にはアクリルとかの化学繊維だろうから熱にはそんなに強くない。で、大森スピニングは後年ある程度熱に強くてフライパンの表面加工にも使われているようなテフロン樹脂製のドラグパッドとかも使ってたけど、オートベールにはフェルト製のドラグパッドが使われている。ドラグノブはドラグワッシャーを押さえる面も含め樹脂製である。

4500ss、オートベールNo.3
 No.3サイズは4桁PENNで言えば4500SSから5500SSぐらいの糸巻き量で使用場面は岸からの青物狙いを想定している。ならば、ドラグは耐熱性があった方が安心というモノだろう。実際には熱持つ前にスプールに水ぶっかける”水冷式”とかもあるし、陸っぱりから狙える青物では樹脂製ドラグノブが溶けるほど走ることはあまりないとは思う。ただ、万が一に備えるのと、カーボン素材のドラグパッドを自作できるようになれば色々と応用が利くので、技術として持っていて損はないと思うので、良い機会だしアイデアもあったので試してみた。陸っぱりでマグロはあまり聞かないけど、たまに大型のサメは聞くしワシ自身1mぐらいだけど昔ショアジギングで釣ってるぐらいで万が一はなくもない。

 アイデアは2つあって、カーボンの素材として一般的に売られているのは、バイクや車の補修・改造、模型作成等に使われているらしい、カーボンの竿みたいに焼き固めた感じな板と、焼き固める前のカーボンの繊維を縦横編んだ布みたいなシートがあって、その2つをそれぞれ使ったドラグパッドを考えてみた。これらの素材をドラグパッドにするにあたっては、カーボン板のほうは加工が面倒くさそうなのと、表面が平らになっているのでドラグパッドに求められる摩擦力が得られるか不安があり、逆に表面凸凹で摩擦力は発生させられそうなカーボンシートについては、とくに固められているわけでもないので使用時ばらけてしまわないかというのが懸念としてあった。そのへんどうなるのか試してみんと分からんのでとにかくやってみる。

 まずはカーボン板の方だけど、これは単純に輪っか型に加工するだけの話なんだけど、予想以上に丈夫で苦労した。まあその丈夫さと軽さが利点としていろんな用途に使われているんだろうからそういうモノである。後ほど別の用途でも使うのにある程度厚さが必要と考えて1mmの厚さを選んだけど、加工を考えると0.5mmのほうが良かったと思ったけど後の祭り。

 外周は大まかにカナ切りバサミでバリバリと切ってサンドペーパーで整える感じでいけたけど、軸を刺す穴はドリルで大まかな穴を開けて、ハンドドリルで回すヤスリで拡張して丸めた紙やすりで仕上げた。3枚のドラグパッドと後ほど使う1枚作るのに結構時間も手間もかかった。本当は一気に2台分作る予定だったけどとりあえず1台分だけでうんざりしたのでそのぐらいにしておいた。

 もういっちょのカーボンシートの方は加工は楽ではある。カナ切りバサミでももちろん切れるし、アートナイフで下に穴開いていいペットボトルの蓋をおいてからブスブス刺す程度で芯棒を挿す穴も開けられる。ただそのまま輪っか状に加工しただけでは明らかにバラけてきそうで塩梅良くないだろう。樹脂である程度固めてしまえばバラけなくなる。なるけど今度は樹脂が熱で溶けて耐熱性を考慮してカーボン使ってる意味がなくなる。どうしたモノかと考えて、耐熱性のある接着剤のようなモノがあれば2枚を貼り合わせる形にしてから加工することで、表面の凸凹は残しつつバラけにくいモノができると考えたけど、そんな都合のいい接着剤があるのか?とあまり期待もせずネットで検索してみたら普通にありやがる。今回使ったのは「オートウェルド」というエポキシ系の2剤を混ぜ合わせる製品で280度Cまで耐えるとなっているのでスプールが触れないぐらいに熱を持ってもドラグパッド自体は溶けたりしないモノにできそう。シートを2つ折りにして混ぜ合わせた接着剤(灰色になる)を塗って挟み込み、繊維の間からはみ出した接着剤が剥がしやすいようにポリエチレンのレジ袋で上下を挟んでから平らな板で挟んで、重しを乗せて1日放置。デキた板状になったカーボンシート2枚重ねを輪っか型に加工していっちょ上がりと、接着剤の固化時間がかかるだけで手間はあんまりかからない。端はちょっとカーボンの繊維がグズグズっとなってる部分もあるけど、端の方がチョロッとほどけたところで大丈夫だろうと思う。いずれにせよ、そのへんも含めて試してみたい。

 という感じにカーボン製のドラグパッドは2種類用意できた。次にドラグノブの耐熱対策である。

 真鍮の板を切り出して、ドラグを押さえている一番上のワッシャーの上に入れてやればいけるかと最初考えたけど、結局それってその真鍮の追加したワッシャーが熱を持ったらそれを押さえるドラグノブの樹脂面が溶けるわけで、熱が伝わらないぐらいにブ厚いものを挟まねばならず、厚さ自体は重ねれば稼げるけど、ドラグノブがネジに届かなくなり締められなくなるので、ドラグノブの樹脂面を削るなりが必要になってくる。耐熱性のある接着剤も手に入ったしドラグノブ側をいじって真鍮の円盤を重ねた部分でドラグのワッシャーを押す形にするかと考えたけど、正直面倒くせぇ。

 つらつら考えているときにTAKE先生の「リールの歴史2」を読んでいたら、ミスター・ハラが熱伝導率が低くて摩擦熱を伝えない断熱性に優れた素材として、テフロンやポリアセタール樹脂が良くて、テフロン製のワッシャーで大型スピニングのABS樹脂製ドラグノブの熱変形は止まった。とか書いているのを見つけて「それだ!」となった。真鍮自体は耐熱性があって坩堝でも使わない限り溶けはしないけど、金属なのでとうぜん熱伝導率はよくて熱くなったドラグの熱をドラグノブの樹脂パーツまで伝えてしまう。何しろ真鍮は銅の合金であり、銅のお鍋なんていうのは熱伝導率の良さから弱火でコトコト煮込む料理に使われるぐらいである。逆に熱伝導率の悪い素材であれば厚さがなくても熱をドラグノブの樹脂面まで伝えにくい理屈である。さっそくポリアセタール樹脂である商品名「ジュラコン」製の2ミリ厚のワッシャーを購入、そしてそういえばカーボンも耐熱的な素材としても使われているよなと思って1mm厚のカーボンも試してみることにした。ちなみに調べてみたら黄銅(≓真鍮)の熱伝導率は60W/m・k、炭素23W/m・k、ポリアセタール0.25W/m・kで、カーボン板が炭素と同じ扱いでいいのかちょっと自信がないけど思ったよりは熱伝導率はあるけど、それでも真鍮の半分以下、ポリアセタールは文字通り桁違いで2桁違う。カーボンは熱伝導率の低さより難燃性が特徴か。というわけでポリアセタールのワッシャーを内径削って一番上のドラグワッシャーとドラグノブ下面の間、ワッシャーを留めているCクリップの内側に填まるように加工してみた。ちなみにこの位置だと上部ワッシャーとドラグノブは軸に固定でドラグ作動時回ってないので間に挟む形でも摩擦とかは気にしなくていい。でドラグパッドにグリス塗り塗りしながら組んでみたら、カーボンシート製のドラグパッドの場合上手く填まってくれたけど、1mmのカーボン板製ドラグパッド3枚の場合はギリドラグノブが締められない。仕方ないのでこちらは1mmカーボン板を加工して填まるワッシャーを作ってみた。カーボン板0.5mm3枚なら2ミリのポリアセタールワッシャーも填まるだろうから、ドラグパッドとしての評価の後、カーボン板製ドラグパッドがいけそうなら0.5mmを改めて買うことにして先に進む。ポリアセタールとかがこんなに熱を伝えない素材だというのは盲点だった。ポリアセタール2mmワッシャーと同等の熱を遮断するワッシャーを真鍮で作るとドラグノブが煙突の上に乗っかるような形になるってにわかには信じがたいほどである。今回ポリアセタール樹脂を使ったけど、よく考えたら耐摩耗性とか関係ないからより加工が楽なテフロン樹脂のワッシャーを入れても良いはずと今この文章書いてて気がついた。ちなみにテフロンの熱伝導率もポリアセタール樹脂並みで断熱性は優れている。テフロンのワッシャーなら在庫もそれなりにあるし、せっかく作ったけどカーボン板の断熱用ワッシャーは不採用だな。そして材料性質を比較していて、ポリアセタール樹脂は融点が165度と比較的低く、テフロンは融点327度と高いということも知って、ということなら断熱用ワッシャーはミスター・ハラと同じようにテフロンを使うべきだと今更ながら気がついた。せっかく堅くて加工しにくいのを加工したポリアセタール樹脂の断熱用ワッシャーも結局不採用。ということで紆余曲折あったけど、テフロンは刃物も普通に通る柔らかめの素材であり手間も大してかからないので、在庫していた外径18mmの厚さ1mmのがちょうどCクリップの内側に填まるのでさくさくと作り直した。内径が小さかったのでアートナイフでサクサクと刺して大まかに穴を広げてサンドペーパーで仕上げる。ピタッとドラグワッシャーをおさえるCクリップの内側に填まって気持ちいい仕上がりが上の方の写真。

写真上:左シート製、右板製
 で、全体としてドラグとしての性能はどうか?ドラグ締めてみて、手で回したりライン引っ張ったりして試して、さらにはラインの先を結びつけておいて実際に竿にセットした状態でドラグ逆転させながら走った結果、ドラグが熱を持つほどのスピードで爺さん走れんので、断熱ワッシャーの評価は、そのうちお客さんにでも自転車か自動車で走ってもらってテストすることにして後回しにして、まずはドラグ締めていっての調整幅とか締まり具合については、カーボン板製、カーボンシート製どちらのドラグパッドでも問題はなさそう。カーボン板とか弾力もクソもない堅い板なので調整幅が小さくなるかと思ったけど、ドラグノブにバネが入ってて調整幅についてはそっちで出してくれるようだ。手で回す分、ライン引き出す分にはどちらのドラグパッドも滑り出し、滑らかさ、締まり具合ともに問題なさそうで、表面が凸凹に乏しいカーボン板製でもそこそこドラグ値上げることはできる、フルロックに近いところまで締まる。意外にどっちゃでもイケるやんと思っていたけど、竿にセットして走ってみたら、明らかにカーボンシート製の方が滑らかでしゃくらず性能が良い。普通に優秀なドラグって言って良いぐらいの感触が得られた。比べるとカーボン板製ドラグパッドはやや滑らかさに欠け、微妙にウィンウィンいってるけど、使えないほどでもないとは思う。自転車とかで突っ走ってもらったらどうか?長期運用での耐久性とかはどうか?ってのは今後調べていくべき課題だけど、とりあえずカーボンシートを耐熱接着剤で貼り合わせて作ったドラグパッドはなんか良い感じなんである。イケるんじゃないだろうか?これで良いならドラグパッドは好きな大きさのを作りたい放題できる。

 それにもまして、今回良い成果が得られそうなのは、ドラグノブの熱変形を防ぐのにテフロン製の断熱ワッシャーとでもいうべきモノをドラグノブ下面と上部ドラグワッシャーの間に入れてやるだけで劇的な効果が得られそうだということである。それが正しければPENNのクソ高い社外品の真鍮製ドラグノブなんぞ買わんでよかったのかもしれない。ワシャ買ってないけどな。

 って考えるとドラグパッドもテフロンってのもありだとは思う。ただ昔PENNの3階建てドラグで実験したときに3枚全部テフロンのドラグパッドは滑りが良すぎてドラグ値が上げられないという結果だったので、大型スピニングには不向きかも?7500SSでは純正状態だとドラグパッド3枚のうち1枚テフロン、2枚カーボンで必要なドラグ値が出せるように調整してあった。


 なんにせよ、ドラグ周りについて非常に理解が深まったし、オートベールNo.3の最強化への改造もほぼ完成に近い。やっぱり物事を理解するためには本とかで理屈を学ぶだけでも駄目で、闇雲に実践するだけでも駄目で、情報仕入れて学んで考えて、実際に手を使って試してみて、その結果を基にまた考えて試してという試行錯誤が重要なのだなと改めて実感している。

 オートベールNo.3は、ギアは大森ハイポイドフェースギアで滑らかかつ、いつになったらガタがくるのか分からんぐらいに耐久性も高く、これ以降の高級リール様なんかの”より軽く”とかの耐久性を削っていくような方向は全くの蛇足としかワシには思えず、このギアはこれはこれである種完成形だと思っている。逆転防止機構も丈夫でかつ本体内に配置されていて防水機構的ないらんモノをわざわざ取り付ける必要もなく単純明快にまとまっている。ラインローラーは重くて錆びるボールベアリングを使わずポリアセタール樹脂のスリーブ入りで軽く、ローターの回転バランスも良い。ハンドル回してのベールリターンも軽くて感触良く、意図しないベール返りを防ぐ青銅板の”簡易ローターブレーキ”も備わっている。ハンドルはねじ込み式で丈夫で緩まず、ハンドルノブはPENNのトービート型みたいな軸の細い型でワシ好み、かつ気に入らなければネジ止め式なので、調整は必要だろうけどお好きな形のモノに交換も可能。スプールのかかえる、糸巻き幅が広すぎるのとスプールエッジがなで肩でラインの放出製が悪い、という問題はアレして解決済み。完全平行巻ではないのは目をつぶろう。ドラグもカーボンシート製のドラグパッドにし、ドラグノブの熱変形も断熱ワッシャーを噛ますことで解消できたなら、ほぼ実用性最高と言って良いぐらいの中型スピニングに仕上がるだろう。残念ながらベールスプリングが耐久性に劣るトーション式なのをグルグルコイル式に改造するのは難しいけど、ベールスプリングはスピナーベイトとか自作する用のステンレスバネ線で自作可能だし、バネ屋さんで作ってもらってもいいので、予備を用意してバネがへたってきたら交換とかで対応できるだろう。

 最終的な成績評価は、ドラグの高速ライン放出試験を経て、実際に魚釣ってみてしかできないにしても、しょっぱい塩鮭焼いたときみたいに塩吹いてた、1円落札のジャンク個体がよみがえって、そんじょそこらの格好とカタログ数値だけの”こけおどしリール”には絶対負けないぐらいの実用機に仕上がった気がして、魚かけてみるのがが今から楽しみでならない。

 ワシが思うに、以前にも書いたけど古今東西、史上最強の実用機はスピニングではPENNの4桁スピンフィッシャーで間違いないと思っている。今回いじくったオートベールはそれより古い時代の設計で、スプール形状とかに欠点は抱えているし、ドラグも海の大物対応であれば改良すべき点もみられる。そうではあっても日本発で、その開発に大きな貢献をしたという大森製作所による、鉄系の芯を鋳込んだ”ハイポイドフェースギア”の完成度、信頼性は高く、逆転防止機構を本体内に入れた防水防塵性など設計も良くまとまっていて、基本的なスピニングリールの機械部分はもうこれで必要充分というぐらいに過不足なく造られている。そこに現代の知識をもとにスプール周りの改良を加えてやることで、カリッカリにレースチューンを施された旧車のように、ボロい昭和骨董な見た目に反して、4桁PENNに勝るとも劣らぬ実用機が顕現するはずと期待している。