先日、遊びに来た釣り仲間と話していて「上級者とか上手い人間がいろんな機能がついた”高級”なリールを使うっていう風潮はおかしいんじゃないか、単純な機能のシンプルな道具を使いこなしてこそ上手い釣り人なんじゃないのか?」という話になって、大いに賛同した。まあフライマン達だったので「フライリールはシンプルで格好いい」っていう結論はフライリールはよほどの大物でも相手にしない限り、釣りが終わった時にラインを収納しておくだけの機能ですむのでちょっと違うような気もして、我田引水気味だなと思うにしても、フライリールやチヌの落とし込みリールのような単純な”センターピン”のリールの格好良さってやっぱりあるように思う。こういう感覚は世界共通であるらしく、ヨーロッパでは今でも鯉釣りとかセンターピンのリールで浮き釣りで楽しんだりする渋い趣味は健在のようだし、オーストラリアだったかと思うけど横転リールでサーフの釣りをするという、糸ヨレしまくりでえらいことになりそうな愛好家達もネットで見た憶えがある。
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左:フライリール、右:横転リール |
ひるがえって、今時のスピニングリールのややこしさと言ったらどうよ?って話で、もう全くぐにもつかんような機能満載で、しつこく何度でも書くけどしゃくったときにガチャガチャいわんってだけの瞬間的逆転防止機構とそれに付随した防水機構は諸悪の根源として、要りもせん箇所に重くて錆びるボールベアリングをズッコンバッコン入れまくりで、アホみたいな使い方してクレームあげてくるアホなド素人客のために、ライントラブル防止でスプールのエッジには小っちゃくひさし付けてくれてあるし、ふけたラインをそのまま巻き込まないように、一旦ラインローラーの手前でしごく機構までついてたりする至れり尽くせりの仕様。なんというか自転車でたとえると、ガキが乗ってるゴチャゴチャ電飾のついたような補助輪付きの自転車みたいなかっこ悪さ、なんなら電動アシストも付いてる感じ。
ちょっと話それるけど、川崎に住んでたころ朝の出勤時、おかーちゃんが前と後ろに子供乗せて、保育所へ送りがてらパート先に出勤するのだろうか、駅までの坂を爆走してるのが日常の風景だった。あの丈夫でなんならこけないように3輪になってたりもする電動アシスト付き自転車は、脚力も運転技術も優れていないだろうおかーちゃん達の心強い味方だなと感心した。素晴らしい自転車だと思うけどカッコ良いか欲しいかというと普通そうは思わんだろう。ただ、どんな世界にもマニアはいて電動アシスト付きで子供座席の付いた自転車のサドルを専門に盗む変態さんがいて捕まってた。まあなんというか頑張るママさん達へのゆがんだ尊敬の形なのかなと、ちょっと分かるような分からんような上級者もいるのである。子供乗せて自転車で爆走してるおとーちゃんが全く居なかったところは今考えると、さすがに男ども役立たずが過ぎると思わなくもない。子供の送迎でそれなら家庭内でも推して知るべしで、家事において男親など電動アシスト付き自転車よりも役に立ってないんだろうなと思うと、都会で共働きで子育てしてるようなおかーちゃん達に手厚い支援策をと思わざるを得ない。
はなしもどすと、スプールのひさし。ARCとかいうやつを代表に、スプールエッジがエッジの効いた角の立った形状だと、ラインの放出性はいいけど、良すぎてドバッとまとめて出てしまうようなトラブルが多いので、ひさしに当てて放出性はチョイ下げつつもトラブル少ない様に良い塩梅に放出性にブレーキを掛けている存在だと思っている。って話を遊びに来た後輩にしたところ「あれは飛距離を出すための形だと思ってました」と妙なことを信じ込まされていた。飛距離的にはひさしなどないほうがラインの放出性がよく良いはずでアル。あるけどワシもスプール往復にプラナマチック機構採用でスプールエッジの角の立った丸ミッチェル「314」では、ラインがドバッと出るトラブル頻発で最初使い物にならなかった。識者に「
糸巻き量を減らすと劇的に改善します」とご教授いただいて糸巻き量減らしたら、ラインがスプールエッジに角度大きく当たり、適度な放出時の抵抗が生じることでトラブルは激減した。まあスピニングリールで”
ライントラブル多くて扱いにくければ糸巻き量減らす”っていうのは応用が効き単純明快な方式である。放出性の良いスプールエッジの角の立ったリールを使いこなし遠投性の良さの利点を生かすという方向もありそうなモノだけど、まあ、遠投投げ釣りリールならともかく、今の釣り具市場でそんなとんがった仕様が受け入れられるわけもなく、素人でも扱えるように、となるとひさしが付いてるのは親切設計だと思う。でもそれが”飛距離が出る”と優良誤認されているのはいかがなモノか。あと、角の立ったスプールエッジにちょっとひさしが付いているような、実用性重視のリールは昔からある。いまさら特にそれを宣伝するまでもないだろって話。写真の左から4200SS、と丸ミッチェル304のスプールエッジは角が立ってる、でも右の4400SSのスプールエッジはゆるいひさし付き。何世代も前の古いリールでっせ。
そして、もひとつ例に出した、ラインローラー手前でラインをちょっとしごく仕組み。あれがいかにも新開発ですって顔で出てきたときに、TAKE先生は90年代中頃の怪作ミッチェル「クォーツ」で同様の機構がすでに採用されていたことをご指摘されていたし、ぬこさんはPENNスピンフィシャーの小型アウトスプール機を始めいろんな機種で、ラインローラーまでのベールアームとベールワイヤーの間が狭く絞られていて、実質”しごいてグチャッとしたままのラインを巻き込むのを防ぐ設計”になっていて、昔から珍しくもないことを指摘していた。写真の上から覗いてるのはマイクロセブンC1。右が4300SS、左が420SS。ワシも下の写真の1960年代製の
古い大森大型機「
スーパー2000」やら
コンパック「スーパー7」あたりに、おなじようなラインをしごく仕組みが既に実装されているのを知っていて、その機構は、二番煎じどころか少なくとも四番煎じの出がらしであるということである。それをさも新技術のごとく宣伝する売りたい側の言ってることって、まあ基本疑っていいよねって話。
てなことを書けば、今時の高級リール様の信奉者さんは涙目で「でも、今のリールは巻きが滑らかで軽いから!」って必死に優位性を信じたがるだろうけど、ほんとにそうかな?と今から意地悪にも現実というモノを筋道立てて思い知らせてやろう。まず、負荷が掛かる時には、ギア方式が同じならギア比変えたら変わるけど、同じギア比なら軽くなる理屈が分からん。っていうかそんな現象は起こらないはず。ベアリング入れたりギア同士の接触面を耐久性削って減らせば、負荷が掛かってないときは軽く回るだろう。ただ実際にリールを軽く巻きたいときって、ルアー引っ張るときでも魚寄せるときでも負荷が掛かってる状態のはず。竿で稼いで負荷を抜いて巻くにしても負荷ゼロで巻いたらそれこそ糸ふけ巻き込んでトラブルの元でヘッタクソって話。ギアというやや複雑な機構なので目に見えてどう効果が出てるのかが分かりにくいので、店頭や家で空回ししたときに軽いと負荷が掛かってる状態でも軽いかのように錯覚するかもだけど、もっと単純なテコで考えると分かりやすい。たとえばペンチやハサミを使うとき、もしベアリングが入ったようなけったいな製品があったとしても、ナニも挟まずカチカチチョキチョキする分には軽くても、モノ挟んだり切ったりするときには高負荷が掛かるので、ベアリングが効くような負荷の無い”軽い”状態とでは場合によってはキロとグラムという感じの2桁以上は桁の違う抵抗が生じるわけで、ベアリング無しと有りとで結果的に使用時に感じられるほどの差など生じないはずである。生じて軽くなるならベアリング入りのペンチやハサミが一般的になるはずで、でも実際にはそうはなってなくて、使用感を軽くしたいなら、ペンチなら握りを長くというか全体大型化するなり二段階方式にするなりが必要で、ハサミなら加えて切れ味鋭い刃を付けるとかで、空気挟むときに軽やかに作動したところで本来目的での使用時には誤差程度の差しか生じ得ず意味など生じない。テコってそういう用途と仕組みだろっていうのは、さすがに支点力点作用点ぐらい義務教育受けてたら分かってもらえると思うけど、これがリールのギアになるととたんに何か特別な仕組みのように思って、ありもしない不思議なフォースが働くと信じたがるジェダイの騎士のなんと多いことよ。フォースに目覚めるより先に物理法則勉強した方が良いと思うけど、ワシも物理苦手系なので勉強するほどのことかねって正直思う。まず売ろうとしてくるヤツの言ってることなんぞ疑ってかからねばならんってのが物理云々より先にしなきゃならんことだろ?鵜呑みにするヤツは鵜じゃなくて良い鴨。あと軽いルアー使う負荷の軽い時に巻きが軽すぎるとハンドルに手がしっかり当たってない感じがしてスッカスカな巻き心地で、いわゆる”巻き感度”が悪いっていうのはTAKE先生なり村田基先生なりもご指摘されているとおりだと思う。低負荷時に巻きが軽いようなベアリングやらギア接触面を減らしたようなスピニングリールは、低負荷時に巻き感度が悪く、高負荷時には特に軽くもない。アホかと。ギア方式の全く新しいモノ(もしくはギアを使わない斬新な回転軸を90度曲げる方式)を考案して、今までより力の伝達効率が大幅にアップとかいうなら、それは真に革新的と言って良い称えられてしかるべき技術だろう。ただ現在も40年から昔に考案されたハイポイドフェースギアというギア方式は蹈襲されていて変わってはいない。じゃあそのハイポイドフェースギアを開発したエラいメーカーはどこよ?っていえば大森製作所がその開発には大きく貢献したとされていて、そうなると大森製作所は称えられてしかるべきってことになる。大森製作所のハイポイドフェースギアはガタが来てるのを見たことがないぐらい耐久性に優れ、滑らかさにおいても充分今時の高級リール様に遜色ない。っていうか巻きの滑らかさってそんなにリールに必要か?そこそこギアはやかましめのベベルギアの
丸ミッチェルも魚釣ってて不快な感じは全くせんかったけど、気になる人は気にするのだろうか?ワシには分からん。ギアの作りが鍛造?削り出し?高強度ジュラルミン?あほか?大森ハイポイドフェースギアはハンドル軸に鉄系の芯は鋳込んであるけど亜鉛鋳造のハンドル軸ギアと加工のしやすい真鍮削ったローター軸のギアと”経済的”な設計だけど、ギア方式変えずに製法だ材料だをいじったところで、ものの重量は削減できても、巻きの軽さも滑らかさも勝てる理屈ないやんけ?それでいて値段はバカ高い。そしてワシの少ない経験からで申し訳ないけど耐久性はないがしろにされていて劣るとか買う価値まったく見いだせない。
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左手サミング修行 |
「でも実際に安いリールだと魚がかかったら重くて巻けなくなるけど、高いリールにしたら巻けたから!」って思う人もいるだろう。それはギアの良さではなくむしろ本体の剛性の問題で、
片軸受けでローターの回転軸の片側のラインローラーにラインが掛かるスピニングの構造上、まあそうなるわなという本体とかが”たわんでる”高負荷状態でゴリ巻きしようとするから巻けなくなるのを、クソ高い高級リール様だと、ゴリ巻き仕様で過剰なまでの剛性でたわんで巻けなくなるのを防いでるだけで、ギア関係あらへんと思う。以前ネットでバンスタールを買った釣り人か「8万からするリールなのに魚が掛かったらたわんで巻けん、使えんリールだ!」と憤ってるのを目にして「スピニングリールの使い方知らんアホ発見」と思ったモノである。スピニングリールは高負荷時ゴリ巻きするのに向いた構造ではない。でもそんなもんポンピングして竿で稼いだ分負荷を抜いて巻きゃ良いだけのことである。バンスタールも価値の分からんマヌケに買われて災難である。いらんのならワシにくれって話である。そうやってゴリ巻きしないならPENNスピンフィッシャーの、ねじ込み式ハンドルで力が掛かると締め込んでいく構造のハンドルピンも曲がらないので
純正のハンドルで問題なく20キロ30キロの魚があがる。社外品の折りたためない高っかいハンドルなんぞ必要ない。ましてや純正状態で折りたためないようなハンドルが付いている不便な今時の高級リール様なんぞ馬鹿臭くて触る気にもならん。なんで、そんなアホなゴリ巻き仕様のスピニングが世にあふれかえってるかって言えば、おそらく船縁に竿掛けで竿ごと固定してゴリゴリ巻いてた両軸使ってた餌釣りから転向した釣り船の船頭さんが、手で持って巻くスピニングタックルでも「竿あおちゃダメ!」と釣り人を指導したからと、釣具屋もアホが勘違いしてくれてるならそのままの方が正しい使い方を啓蒙するより楽で良いって安易にその方向に追従したのと、そのことに気づかなかったアホの釣り人のせいだろう。ワシも釣り船で何度か「竿あおっちゃダメ!」って言われたけど気にせずポンピングして釣ったった。通い慣れてる釣り場の魚や海の知識で本職の船頭さんに勝てるとは毛頭思わんけど、ことルアー使った釣りに関してはワシャガキのころから馴染んでるから、昨日今日ルアー船始めた船頭さんに道具の知識で負ける気なぞさらさらなかった。ポンピングした方が明らかに勝負が早くつくのを見て船頭さんも「そういうやり方もありなんかな?」と己の自信が揺らいでるようだった。良い船頭さんは常に考えて新しい釣りにも対応するから釣り人が賢ければこうはなってない。「20キロ30キロならそうかもしれないけど、もっと大きくなると違う」と涙目で言うかもしれん。そうなったらいつも書いてるけど、スピニングじゃなくてベイト使えって話を今回もジジイの繰り言として書いておく。90度回転軸を変えるなんてけったいなことはしていないから巻き上げ効率は良くて”軽い”し、”両軸リール”ってぐらいで軸の両側を受けているからたわんだりもほぼ気にしなくて良い。投げるのが難しいって、それを上手くやるのが上級者で上手い釣り人ってもんだろって話。素人でも扱える道具しか使えません、っていうならそりゃそいつは素人なんだろう。ワシゃ実践経験はそこまで積むことができてないけど、
大型のベイトリールでのキャスティングのための”
左手サミング”も一応はたしなんでおりましてよオホホ。あたくし素人じゃございませんの。磯からロウニンアジやらやる人達には結構両軸派はいるので、船からでもどこからでも使えば良いのにと不思議でならない。アベットとかアキュレートとかちょっと欲しくなる程度には格好いいしな。もちろんPENNやニューウェルの両軸も渋くて格好いい。
って感じにごちゃついてうっとうしい今時の高級スピニングリールと比較して、ワシが今年シーバスに年間通して使ってた大森スピニングは、はっきり言って格好いい。冒頭写真のがそれで、集合写真では右下に写ってるやつだけど、モノとしては「
タックルNo.2」という、外蹴りアウトスプール時代から内蹴りの時代になっても、単純設計で低価格設定にできるので生き残った機種(「
タックル5No.2」の色違いバージョン)で、余計なモノは付いてない。ただ、ギアは既に完成の域にあったさっきも書いた鉄系の芯を鋳込んだお馴染み大森ハイポイドフェースギアで、よく売りに出されているときに「古い時代のものなので、現在のリールと比べると劣ります」みたいな書かれかたしているけど、大概ボールベアリングが錆びてるとかでシャーシャー言ってるだけで、ベアリングの交換で今時のリールと遜色ない滑らかな巻き心地に復活する。逆転防止は瞬間的には止まらないけど、単純小型堅牢で本体内部に収まっているので特別な防水機構を必要としない。防水機構が特段は付いてないのでボールベアリングが錆びるのは、まめに塩抜きするなり錆びたら交換と割り切るしかないにしても、構造単純なので苦にならない。
規格品っぽいワンェイクラッチ(片方にしか回らないベアリング)ぶっ込んだ単純な設計ならともかく、今時の瞬間的逆転防止機構はそもそも分解不可なのかもだけど、
異様に面倒くせぇ繊細で複雑な機構で触る気が失せる。外蹴り大森はベール外蹴りでベール反転機構って言ったってラインローラーの尻をフットから張り出した”蹴飛ばし”に当てるだけと極めて単純。ドラグは今の小型機のドラグと同じように3階建て方式で同じように硬質フェルトのドラグパッドを使っているので、今時のドラグ用グリスを使えば、当然今時のドラグと同等の性能になる。スプール上下が減速なしの単純クランク方式なの完全平行巻にならない欠点もあるけど、軽負荷時に適度に巻き抵抗になり巻き感度向上には役立ち、綾巻に巻き上がるので放出生は劣るけどライントラブルの少なさは利点となる。で、この外蹴りアウトスプールの大森スピニングが進化して軽いベール反転を実現し、簡易ローターブレーキの搭載で意図しないベール返りを防ぐようになったのが、大森スピニングのある種の到達点である「
オートベール」、「
タックルオート」の両機種だと思っている。いずれにせよ外蹴り内蹴りそれぞれ利点欠点はあるものの、今時のクソリールどもと比べて、劣っているところもあれば逆に優れている点も多く、単純に古いから劣っているとは全く思わない。むしろ純正状態でも今時のクソみたいな瞬間的逆転防止機構搭載機より実用性で優れていると思うぐらいである。なら、大森スピニングの単純明快な良さを生かして、欠点を補ってやれば”良いとこ取り”の実用性最強のスピニングになるのではないかというのは、ちょっと前にネタにした
「オートベールNo.3」のスプール周り改造とも共通するワシの大森改造の基本理念である。加えてこの「タックルNo.2」については、
スプールをアレしてやるのに加えて、もっと機能をそぎ落として単純化できる部分はないかと考えて、フルベールのベールワイヤーを取っ払ったマニュアルピックアップ方式の、いわゆる”ベールレス機”に改造した。ラインローラーはポリアセタール樹脂で自作しているが今年1年もってしまって思ってた以上に耐久性がある。削れてきたらまた作って交換と考えていたが、ちょっと溝ができてきたかな?って程度であり、今年はその必要はなかった。同様の改造は
「タックル5No.2」で以前にも報告している。具体的な改造方法はそっちを読んで欲しい。フルベールであれば投げた後ラインを確実に拾ってくれる。でもハーディー社がフルベールアームの「アルテックス」を開発するまで(そしてその特許が切れるまで)、ハーフベールやマニュアルピックアップの機種が使われていたわけで、フルベールにするからベールスプリングやらの耐久性が問題になったり、内蹴りの方式の複雑さや意図しないベール反転が生じたりするわけで、マニュアルピックアップにしてしまえばそれらは関係がなくなる。ベールレス機を扱うには多少の技術と慣れが必要で、素人にいきなりやれと言っても難しい。ただ慣れると、ミッチェル方式で通常は逆転防止機構を切っておいて、
投げるときにはラインローラーを手前に持ってきてラインを人差し指で拾ったら、ハンドル逆転でラインローラーからラインが外れて投げる体制が整う。投げたら人差し指でフェザリングして着水したらフェザリングしていたその指でラインを拾っておいてから巻き始めるとラインローラーにラインが掛かる。というのが夜釣りのシーバスでも普通にできるようになる。たまにラインを拾い損ねて巻き始めてもラインローラーにラインが掛かってないミスがあるけど、一晩やってて数回程度だし、竿を立ててラインを出しつつ改めて人差し指で拾ってやれば良いのでたいした問題にはならない。まさに単純シンプルな道具を技術で上手く扱えているわけで、ゴテゴテの補助輪付けてもらったようなダッセぇスピニングより、ワシの大森の方が玄人っぽくて格好いいというのがおわかりいただけるだろうか。リールの基本的な構造や使い方をしっかり理解していて、どこを改良すべきか、特にナニを省略できるかが分かり、省略して単純化した分、技術が必要とされる部分を経験や修練でなんとかして、実際に”快適に”魚を釣る。どっかの大手のフラッグシップモデルで釣ったところで、そんなもん誰でも使える道具で釣ったという部分ではなんの自慢にもならない。それを買える経済力は自慢できるかもしれんけど、釣りにはあんま関係ない。でも、マニュアルピックアップに改造して大森スピニングの良さを生かしつつ、素人にはできんような技術で使いこなしてるっていうのは、その道具を選び改造した知識と技術、判断も、使いこなす技量も自慢に値すると自画自賛せざるを得ず、ワシのリールは玄人仕様の格好いいリールなんですよ!って高らかに宣言したい。さっき出てきたバンスタールやらPENNだと706zやトルクのマニュアルピックアップ仕様とかの、あからさまに格好いいところは、素人じゃ使いこなせない、使いこなすのに一手間かかるっていうところじゃないかと感じている。で使いこなすとベール反転関連のトラブルと一切縁が切れる。だってベール反転させないんだから意図しないベール返りもなければベールスプリングの破損も起こるわけがない。遠征の荷物に突っ込んでもベールワイヤーが曲がることもない。技術で単純な道具を補って使う利点は”格好いい”ってだけじゃないということがおわかりだろうか。
ワシらジ様釣り師になると、経済的にはそこそこ小金持ちなことが多い。クソ高い道具を買ったところで、それほど驚かれはしない。ただ、ワシのベールレス機を「ベールワイヤー取っ払ったった」と言って見せると、そういう酸いも甘いも知ってる経験豊富な釣り人達でも、ちょっとオオッと驚いてくれる。やっぱり少なくとも個性的ではあり、ちょっとやりそうな感じで、ひょっとすると「ちょっとそれは格好いいかもな」と思ってもらえるようにも感じている。ワシの大森は格好いいのである。
で、さらに腕で不便を補完する方向で、さらに、歴史を遡って何か省略してしまえる機構はないかと考えると、候補は3つ考えられる。一つは「逆転防止機構」、二つ目は「ドラグ」、3つめは「スプール上下機構(オシュレーション)」ぐらいで、あとはどうにも外してしまうとリールとして機能しなくなる気がする。
この中で、歴史上出現した順番を考えると、スプール上下機構、ドラグ、逆転防止機構の順でドラグが意外に早くから搭載されていることに驚くというか、もっと驚くのが逆転防止機構が存外後になって出てきたことで、フルベールアームのハーディー「アルテックス(1932発売)」にはまだ付いてない感じで、カーパノ&ポンズ(ミッチェル社の前身)の「CAP」リールでも初期のモノには逆転防止は付いていなかった。同時代の後の「300」である「ミッチェル」は1948年登場時にすでに逆転防止機構は搭載されていたようだ。なので1930年代以降1940年代までぐらいで逆転搭載機構は搭載されるようになったと推定する。スプール上下機構は、まあスピニングリールの出自は紡績機械で最初のスピニングリールは細長い糸巻き(スプール)の形状だったので、当然最初のスピニングリールである「イリングワース1(1907)~」にはスプール上下させるオシュレーション機構が付いている。ただ、安価なライバル機の出現でコストダウンを図った「イリングワース2(1910~)」ではスプール幅を狭めてオシュレーション機構を省略している。そしてより機能を進化させた「イリングワース3(1913~)」ではオシュレーションも復活、なによりフロントドラグ方式のドラグ機構が登場となっていて、ワシの現時点のベールレス版タックルNo.2はこの時代に生まれた機能に逆転防止機構が付いてる感じになっている。(参考:國吉昌秀著「ベールアームは世界を回る」)
歴史を顧みて、逆転防止が一番後に追加された機能であることは意外に思うと同時に、我がベールレス版タックルNo.2からさらに削るとしたら、たしかにそれかなと思わなくもない感じで、最後まで搭載されなかったのも理解できる。スピニングリールの役目が元々は軽い仕掛けを遠くに飛ばすというものであったから、自ずと対象とする魚の大きさも限られてくる。逆転防止がないと取り込むときに片手が離せなくてタモとか使いにくいと思うかもだけど、シーバスぐらいまでならローターに指伸ばして引っかけて逆転を止めてしまう程度でなんとかなる。これは改造も簡単でスイッチ、銅板の爪を上げ下げする金具、爪あたりの関係パーツをいくつかとっぱらてスイッチを外した穴を適宜ふさいで防水しておけば足りる。逆転防止のラチェットはギアの上に填まってるのを同じ幅とかのスリーブに換装しても良いけど、そのままで問題ないだろう。でも外しても大して変わった気もしない機構でわざわざ外すほどでもない気がする。使わないなら切っておけば良いだけだしな。
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こいつはなぜか蔵にあった707 |
となると、ドラグかオシュレーションか?って話になるんだろうけど、ドラグはちょっとなくなるとしんどい。予期せぬ大物の急激な引きとかにドラグなしだと対応できず怖い部分がある。ただ、その場合でも逆転防止を切るあるいは逆転防止を廃止しておいて、ローター逆転で対応する”逆転釣り”という手段はある。まあ、ドラグを使うより、さらに技術が必要とされるようになるから今回の話の筋にも合致している。ただそうなるとアウトスプールスピニングのローターはベール関係の乗っかる腕が両側に付いていて、これが高速で逆回転するのを手で止めるのは突き指しそうで危なっかしい。かといってハンドルを高速で逆回転させてラインを繰り出すのは難易度が高そうである。そうなってくると、昔の磯のグレ師がフットを切って短く溶接したオリム「トゥルーテンパー727」のインスプールのローター下部のお椀の部分に指をあてて逆転によるライン放出を調節したように、やるならインスプールの機種でやった方が良いように思う。
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コイツはなんでしょう?そのうちネタにする予定 |
オシュレーションに関しては、まあクローズドフェイスリールではスプール幅狭くしてスプール上下なしってのも珍しくない程度には存在するので、オシュレーションクランクを取っ払って、適切な高さに主軸をピン止めしてスプール位置を固定、ラインがぐずぐずになりすぎない様にスプール幅をアレしてFRP板とかで狭くしてしまうというのはできなくもない。ただ、投げるとき幅が狭いのですぐに糸巻き量が減って、ラインの放出に抵抗がよりかかるようになって、飛距離的にはかなり不利になるだろう。とはいえ使用不可になるほどか?と考えたら、クローズドフェイスリールの事例で実用可能なのは明白だし、もっと単純な機構でと突き詰めるならやる意味はあるだろう。
実は、逆転機構なし、ドラグなし、オシュレーションなし、マニュアルピックアップ方式のスピニングは、安価なライバル機に対抗して、必要な機能を絞り込んだ最低限の機能で構成された「イリングワース2」がまさにそのような機種であり、究極に単純なスピニングリールと言って良いかもしれない。そう考えるとちょっと、それを当時の釣り人のように使いこなしてみたくなる気もするけど、ドラグの代わりにローター下部を指で押さえて逆転(=ライン放出)することを考えると、適当なインスプール機種の改造母体が必要であり、まあなんかちょうど良いジャンク個体でも出てきたら、挑戦してみるのも悪くないぐらいの感じで、現時点ではあんまりやる気はない。
むしろ、現在使用中のベールレス版タックルNo.2は、ヒラフッコまでしか釣れていないので、もうちょっと”映える”武勲を立てさせて、この程度の単純なリールでも充分以上に釣りは楽しめるし、なんといっても使ってて気持ちいいんだぜ!ってのを示しておきたいので、来年の話をすると鬼が笑うそうだけど、来年もシーバス用の主軸で使っていこうかなと思っております。大森のデキの良い部分を楽しみつつ、欠点は補ってあって、かつちょいと使うのにコツがいる、使いこなす楽しさ誇らしさを味わえる、なかなかに良いリールに仕上がってると思って、当初想定以上に気に入ってます。
ワシの大森は格好いい!
大森のベイル、他所より試行錯誤のあとがありますね
返信削除多くのインスプールのロケットベイルワイヤ以外の別物捻り出そうとしてたのが見えてきます。
ここ5年あまりMitchell8枚ギア多用してますが、
フルベイルの300が出た1955年時点でスピニングリールの完全体って言っていいんですよね
フルベイルと同時に完全並行巻きまで引っ提げてましたし
逆回転ローターにして弱いローターブレーキ付けてベイル返りトラブル根絶していますから
でも60年代初期に重く複雑過ぎとかのオランダかどっかで苦情出てCAPと似た軽くシンプルな304が出た経緯があります。
大森のベールアームの変遷の中で、円錐の両サイドに切り込みを入れた形状のナットは凝ってて好きです。よく固着をねじ切ってますが、ナットも糸がらみしないように自前で作ってしまうところが大森製作所らしいなと思います。
削除いわれてみるとフルベールの300は必要な機能は全部乗ってますね。偉大な先達です。