2022年12月10日土曜日

「スーパー7」ってこんなんだったっけ?

  コンパックブランドの「スーパー7」というのが、ネットオークションにやや高めの5千円ででてた。スーパー7ってこんなリールだったっけ?という見た目で、後年の大森ダイヤモンドブランドの「スーパーセブン」はアウトスプールのウォームギア機で、今回見つけたインスプールのコンパック版スーパー7とはだいぶ見た目も違い名前が引き継がれてるけど別物とみてよさそうだ、そして一番の違いは見た目もなにも、大きさが違う。ダイヤモンド版スーパーセブンにもNo.6サイズがあったら互角かもしれないけれど、コンパック版はそのぐらいデカく、あからさまに海の大物用で、自重は880gと900g超えのPENN「スピンフィッシャー9500SS」に迫る巨体。米国の釣り人コレで何釣ってたんだろ?ただ、製造元は大森製作所なのはその見た目の雰囲気からも、ハンドルやら上面に穴の開いたスプールやらの特徴からも明らかなところ(情報も確認できて1961年発売の機種と判明)。

 使い道ワシが分からんぐらいなら、この国で分かる人間は少ないはずで、このあんまり見かけない機種の価値も含めみんな分からんだろう。ていうか国内で古いスピニングのマニアは渓流向けとかの小型機優先でこんな場所ばかり取る得体のしれない大型リールはそもそも守備範囲外でワシが落札してやらんと燃えないゴミ行きで、それはあまりにも忍びないということで、いらぬ深情けでマウスが滑って開始価格で落札。送料込み6千円がとこもあれば、もっと使いどころも整備して売れる目もある機種が買えただろうけど、まあそんなことはどうでも良いのである。ワシャこいつを燃えないゴミになどしたくなかったんじゃ。「コンパック”スーパー7”お前に魂があるのなら...応えろ!(©皆川先生)」と整備にかかったんだけど、結果から書くと応えてくれんかった。ちなみに大きさの比較に置いたのは渓流で使うぐらいの大森製小型機「マイクロ二世301」。

 まあ、これだけの大型機で大森製となれば丈夫に作ってあって、巻きが重くなってるのぐらいはグリス入れ換えでどうとでもなるし、スプール上下しなくなってるのも、組み間違いとかで正常に作動してないだけだろうと舐めてかかったら、ちょっとどうにもならんかったでござる。

 パカッと本体蓋開けると、きったねーグリスが固まった状態でいまいち全体像が掴めないけど、ギアの方式は斜めに歯を切った傘車の”スパイラルベベルギア”で、大型機で力のある巻き上げを可能にする設計意図が見て取れる。でそのローター軸のギアの直下にローター軸の回転を利用する形でウォームギア(スクリューギア?)のグルグルが鎮座していて、ウォームギア機のスピニングとは反対にグルグルがスプール上下(オシュレーション)の歯車を回す形となっている。っていうか機械的にはウォームギア機のスピニングにおける歯車の方を回してグルグルの方に回転を伝える方式は珍しいのかもしれない。普通逆で今回のようにグルグルを回すことによって歯車を回すのは、時間はかかるけど力は強くて、「魔改造の夜」でも電動ドリルの限られた力で重い熊の手刀を持ち上げるのに使ってた。てっいうぐらいでギア比にもよるんだろうけど力強くスプールを上下させるコトができる設計のハズだった。でも、実際にはその力強い機構に耐えうるだけの部品の強度が出せておらず、当初は機能していたのはラインが綺麗に巻かれていたのからも確かだけど、グリスが固まってから巻いたとかかもしれないけれど、写真でもお分かりいただけるように、オシュレーション関係のパーツは歯車は歯が飛びまくり、カムはバキバキにヒビが入って折れまくりで、多分こういう形だったんだろうなと復元したのが写真一番下の列で、設計的にもウォームギアで力が掛かるところの部品に亜鉛鋳造では元から強度が不足していたのかもしれないし、折れて割れて、きったねぇグリスに亜鉛の破片が混ざりまくっているのを見ると、製造工程で温度管理とか失敗してて”す”が入ってしまっていた疑いも強い印象で、現時点ではちょっとした力でボロボロと割れてしまう状態。滑らかに上下させるために白い樹脂製のタイヤを履かせてあるとか、なかなか凝った設計で面白いんだけど、見るも無惨な状況になっていて、こりゃちょっとやそっとでは直しようがない。ナマジガックリ。

 でも、いつの日か強度が十分確保できる3Dプリンターとかが利用可能になるまで、整備して腐蝕進まないようにして現状維持で壊れたパーツも可能な範囲で復元をしてから保存しておこう。

 ということで、引き続き分解清掃。心臓部のギアはなかなか格好いい。ローター軸のギアはステンレスか焼き入れした鉄系で、ベアリングはニードルタイプが入ってるって情報も拾えたけど、コイツには入ってなくて真鍮ブッシュが漢らしい。ローター軸のギアとオシュレーション用のグルグルを合体させて一番上の写真に写ってる主軸が通るパイプに通して、一番下の写真の様にそのパイプはナットで固定。ローター軸のギアとグルグルが回転する遊びを確保しているかたち。でもってハンドル軸のギアは直径デッカい真鍮製ので、残念ながら鉄系の軸が錆か何かで太ってるのか抜けなかったけど、穴が開けてあるところからパーツクリーナーのノズル突っ込んで、グリスと亜鉛の破片を洗い流して青グリス盛り盛り。逆転防止もこのギアの裏に入ってて特に問題なく作動している。本体は今できることはこれぐらいが関の山か。

 ドラグは一階建ての単純なもので、ドラグパッドが樹脂製のグリップの良さそうな感触のもので、ドラグとしての性能は後の大森製ほどではないけど、ガッチリ締めて使うことを想定していたのか?いずれにせよドラグノブ内にバネが入ってる今時でも同じようなドラグの方式が、1960年代当初には既にあったということである。ドラグノブ分解できそうな構造だったけどネジが固着していて無理に外すより温存かなとグリスヌリヌリでここも放置。

 クソ面白いのはベール周りで、なかなかに凝ってるというか鋭い。まずは右の2枚のベールアーム周りの写真で、見る人が見たら2つ「オオッ!」となる箇所があるだろう。

 まずは、ラインローラーの下に細いワイヤーで”関門”が設けられていて、ラインをスプールに巻く際に、ラインが緩んだまま巻かれるのを防ぐために、ここで一回軽くしごかれて張りを持ちながらスプールに巻かれることになる。そう、シ○ノが同じような工夫を最近高級機種に導入して、新機軸のようなことを謳っててあちこちでツッコミが入ってたのを沼の底の住人の皆様ならご存じだろう。TAKE先生はそれ「ミッチェルクォーツ」でやってたと指摘してたし、ぬこさんがPENN「スピンフィッシャー4300ss(と430ss)」でもここのところは狭くなっててラインのループを巻き込まない設計になってて、古くからある工夫と書かれていたけど、確かに4300ssのそこは狭き門になってる。ワシの若い頃の愛機だけど言われるまで気付かなかったワシの目は節穴。明確にそれ用のパーツまで用意してるのでは1961年製のこの機種はかなり古い方ではないだろうか?シ○ノさんはどうも古くからある工夫を知ってか知らずか「ウチが開発しました新機構」ってやってることがちょくちょく目について、やや恥ずかしいのでやめた方がイイよと書いておく。スプール裏に直径デカいドラグパッド入れるのとか、4桁スピンフィッシャー「9500ss」にあったぐらいだから80年代にはすでにあった工夫だって。逆に言うと、購買層の目に目新しくうつるような機構をと思ったら、温故知新で古いリールいじって遊ん学んでみてはいかがか?当時の技術や素材の限界で企画倒れにおわった工夫でも現在の技術で手直ししてやれば生かせるものがあるかもよ?

 っていう工夫の一つになりえるのが、もう一つのオオッと声が出る箇所。写真2枚目を見てください。これがベールを起こした状態です。はいっ!ベールアームはローターにガッチリ固定というか一体成形、ベールワイヤーのみが反転する仕組みです。昔PENNのベールレス機「スピンフィッシャー706Z」を買ってしげしげと眺めたときに「ベールアームが固定だと壊れにくそう」って思ったんだけど、これそれをあきらかに狙ってます。やはりかなりの力勝負を想定したリールで、多分テストしたらこの形式が一番強かったのではないかと想像してます。インスプールなのもアウトスプールのようにローターの下部、スプールのスカートが下りてくる位置より下からベールアームを立ち上げなくてよいので強度確保に効いてる気もする。で、ラインローラーの固着を外して、滑らかに回るようにいつものように歯磨き粉つけてラインローラーをルーターと輪ゴムで接続して回しつつ、つらつら見てるとラインローラーの上の棒の役目はなんじゃろな?と気になる。ラインが当たる位置でもないしと疑問に思ってたけど、これ単純に”補強”でラインローラーの固定のネジ一本だけでは想定している引っ張り合いのときに歪んでローラー回らなくなるし、下手すりゃここから壊れそう。なので上の方の位置に、ライン巻き取るときの邪魔にならないように両軸リールの横棒みたいに補強を入れているのである。なんともゴツいリールである。

 でもって、そのゴツいリールのベール反転のバネがまたゴツい。ベールアームの反対側に樹脂製の蓋に組み込まれた一式がバネと反転機構なんだけど、真ん中のバネ見てください。9巻きも巻いてます。で蓋抜いた左下から伸びてる棒が反転機構のレバー?で本体上部の”蹴飛ばし”がこれを押し上げてベールが戻る仕組み。

 って仕組みは分かる。蓋外したときに反転機構のバネがポロッと落ちてきて、どこに入ってたのか確認し損ねて焦ったけど、反転機構の棒が刺さってたと構造上すぐ分かる。

 分かるんだけど、これがその状態にして元に戻そうとすると、どうやっても上手くいかなくてイーッとなる。何度やっても失敗するので、もうこいつ燃えないゴミの日に出してやろうか?とブチ切れる手前まで行って、なんとか填める方法にたどり着いて一安心。

 みなさま、今日憶えていって欲しいのはここです。コンパック「スーパー7」のベール反転バネと反転機構は、写真一番下のように樹脂製の蓋の方に全部くっつけて、反転機構のバネはギュッと縮めた状態でローターの穴にスポッと入れて、それぞれの棒が穴に入るようにグリグリしてねじ込んでやってください。まあ、この機種分解清掃する機会のある人がどれだけいるか分からんけど、そういう人は検索してこのブログにたどり着くはずなので参考にしてください。ちなみにこの方式はこのあたりの年代の大森製大型スピニングには共通して採用されているようなので、別の機種でも同じようなタイプならハメ方も同じだと思います。これまたご参考まで。

 っていう感じで、とりあえず一段落したんだけど、もう本当に自分でも嫌になるんだけど「コノ個体をはやく稼動品にもどしたい。」という、それやって使うアテがあるわけでなし、意味が無いだろ?って自分でも思う、思うんだけど病気なんでそう思うといてもたってもいられないのである。部品取りできる個体が他に出てないかと国内ネットオークション、フリーマーケット、中古屋のネット在庫を見てみるも、こんなレアと言えば聞こえは良いけど、需要のない機種そうそう出物があるわけがない。ないけど我慢できんのじゃ~!と最近は見ないようにしていた海外ネットオークションを覗いてみると、同じ名前のではないけど、明らかに同型機で少なくとも形が同じなのでオシュレーション機構は同じ方式だろうと思われる機種が2台売りに出てた。1台はフット折れ1台は一応外見は大丈夫そう。値段はどちらも送料除いて4千円台即決。普通なら折れてない方買うと思うよね。でもそれだと結局稼動しない個体が1台出てくるので気持ち悪いのである。その点足折れ個体は本体はもう捨てるしかないので部品取りに置いておくかもだけど、そいつを稼動品にしたいという謎の欲望からは逃れられる。ただ、亜鉛鋳造の部品がぶっ壊れたのの部品を確保するために同じ時代のものを買うというのは滅茶苦茶”地雷”臭がプンプンなのでだいぶ迷った。奇しくもTAKE先生も前述したミッチェル「クォーツ(米国版名プレシジョン)」でスの入ったギアの個体を何台も買ってしまうという罠にハマっておられたのが脳裏によぎる。ラインローラー手前にラインをしごく工夫のあるリールの亜鉛鋳造部品の不具合。”意味のある偶然の一致”っぽくて非常にイヤな予感がする。

 でも、ポチッと買っちゃった。ちょうど届くのはクリスマス前くらいだし、自分へのプレゼント!って寂しい行き遅れOLみたいなことをほざいてますが、このちょっと持ち直したとはいえ円安のなか、あまりにアホと言えばアホ。何せすでに6千円がとこ使ってて、追加で7千円ぐらいぶっ込んで、なんとなく、届いた個体パカッと開けたら亜鉛部品ご臨終で「1万3千円もあったら・・・」という死んだ子の歳を数えなければならん未来に収束するのが避けられるのか、おおいに不安である。不安なので、せっかく船便の送料払うからついでにと、以前から欲しかった部品を確保しつつ、もう1台関係ないリールも買ってしまった。何がどう「不安なので」そうなるのか文脈から読めないところが自分でも恐ろしい。

 いつもながらまったくもってほんとうにとことんつくづく、アタイ病気が憎いっ!

 まあ金額なんてのはね、他人が決めたようなもんだから、欲しいと思ったらワシには関係ないことなのよね。頭おかしいよね。

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