2023年8月12日土曜日

プランBは時にプランAより良かったりする

  前回の「タックルNo.1」のネジ切ったラインローラー固定ナットの修繕においては、はからずしもプランAが成功してしまい、出番のなかったプランBだけど、わりと楽しげなプランではあったので、もいっちょ固定ナットをネジ切ってしまってた「タックル5No.2」については、せっかくの立案をお蔵入りさせるのももったいないし、同じこと2回やってもつまらんし、ということで最初からプランBのほうでちょっとした改造に手を染めてみたいと思ったしだいでございます。足の遅い台風のおかげでリールいじりが図らずも捗ってしまいました。
 この個体はネジ切った個体ではなく、ボロいのでいいからベール周りを”部品取り”できる安いのをということで入手してあった個体で、すでにベールワイヤー、ラインローラー、ローラーナット、反対側のバランス取りのオモリ兼ベールワイヤー固定部はもう一台に移植すべく正常な状態で一式取っ払ってしまっていて、ベール周りはベールアームが残ってるだけの状態。当然、ネジ切った方の一式は余ってるので、そちらをプランAでラインローラーの填まる軸に穴を掘ってリコイルで雌ネジ作って、というのもやれる余地は残っているけど、とりあえず今回はそっちは放置でプランBに邁進していく。

 今回用意する材料は少ない。写真の外径8mm、内径4mm強のジュラコン製スペーサー、4ミリの真鍮パイプ、M2.6のネジとワッシャーとナット、あとはスズハンダとアルミ板、セキ糸と接着剤のたぐいぐらい。
 ベールワイヤーの素材が見当たらないから察しの良い方なら見当が付いたと思うけど、今回の作業はベールレスというか”マニュアルピックアップ方式”への改造である。ベールワイヤーが折れるとか、折れたジャンク個体を入手したとかの場合に手っ取り早く使用可能な状態に戻す方法としてベールワイヤーを取っ払ってマニュアルピックアップ機にしてしまうというのはありっちゃありだと思う。特に普段ストッパーを外しておいて取り込みとかでハンドルから手を離すときだけストッパーを掛ける”ミッチェル式”とマニュアルピックアップ方式は相性が良いのはすでに紹介したとおりで、そのお作法さえ慣れてしまえば、いちいちラインを摘まんで外したりする必要もなく、実釣に支障を生じない程度には使えるので、ベールワイヤー折れて古いリールで部品の確保もままならん、というときには正直お薦めの方法である。今回はベールワイヤーじゃなくてラインローラー固定ナットが死んだのでいっそラインローラー一式再建してしまおうっていう流れだけど、単純にベールワイヤー折れた状態からのマニュアルピックアップ機への改造は、折れたベールワイヤーを根元から両側バチンバチンとニッパーとかで切って、多少絡み防止とかバランス調整とかしてやれば改造完了と簡単なはずである。

 とはいえ今回のラインローラー再建しつつマニュアルピックアップ化もたいして難しくない。

 ジュラコンスペーサーと真鍮パイプのサイズもピッタリだし、ベールアームの窪みにもジュラコンスペーサーの8mmの外径はちょうど填まるので、ラインが落ちたりすることはない。

 真鍮パイプを若干短くするのは、ネジの頭をジュラコンの中に収まるように4.5mmのドリルで穴を途中まで拡張してやるから。
 ネジの頭がジュラコンスペーサーの外に出ていると、糸落ち防止の”フリル”的な部品がないとネジ付近にジュラコンスペーサーとの間にラインが入る隙間ができてしまう。でも、ネジをジュラコンスペーサーの中に引っ込めてしまえばラインが噛んだり絡んだりする問題は生じないので、単純な設計だけど、ほぼ完璧な対策になるはず。

 ジュラコンにラインローラーの溝を掘る前に仮組みしてみると、ピッタリ填まって良い感じだけど、ネジと真鍮パイプの間に隙間がある分ちょっとガタが出るというかナット締めて固定したときのズレが気になるので対策必要かなぐらいで、問題なくいけそう。

 大枠は固まったので、ラインローラーの形状も調整して組み上げていく。

 ネジと真鍮パイプの間にはセキ糸を巻いてピッタリ填まるように調整して接着剤で固定。
 
 ラインローラーとなるジュラコンスペーサーの形状は、れいによって”空気銃弾型”でいくので、アートナイフで削り出して、電動ドリルで回しつつダイヤモンドヤスリをかけておく。

 実際に組んでみて、ギリギリ回るぐらいに拡張する穴の深さを掘っておいて、コンパウンド替わりの歯磨き粉をつけて一回組んでルーターと輪ゴムで接続して回しまくって当たりを取って滑らかに回るようにしておく。

 一旦バラして歯磨き粉とかを洗って落としてから、ネジの余分の長さを切断して、グリス塗りながら組んでナット側はラインが引っかからないようにエポキシ盛っておく。

 回転もスムーズで良い塩梅に組み上がってめでたしめでたし、ところがコレで終了にはならない。というか意外に難しい部分が残っている。ローターの回転バランスの調整である。

 もともとのベールワイヤーのベールアームと反対側には、写真一番上のバランス取るための錘がガッチリ填まっている。今回ベールワイヤーごと一式取っ払っており、ベールワイヤーの根元で切ってオモリ部分だけ回収して使うというのも手としてはあったけど、ネジ切ったラインローラーナットが付いてたベールワイヤー一式も、再生できるならそのうちやっても良いかなと思ってるので、新たにオモリを加えてバランスを取って巻いたときにプルップルにならないようにどうにかする。

 我が家に鉛線の類いは既に金属ゴミの日に出してしまって無いので、こういうときはちょっと不便。スズハンダで代用するけど明らかに軽いので元々オモリが填まってた場所に詰めこんで、アルミ板で蓋したぐらいでは全然まだ足りず横にするとベールアーム側がクルッと下に来る。

 仕方ないので、ローターの中、普段はスプールの下になる部分にもスズハンダぶち込んでいってウレタン接着剤でずれたり外れたりしないように固めて、どうにかベールアーム側との単純な重量的バランスは取れた。ただ、ベールアームは高さがあるので回すとどうしても完全にバランス取れているわけではなく、ややプルッてるかもだけどまあ許容範囲におさまった。

 同じようにベールワイヤー取っ払ってマニュアルピックアップ化した丸ミッチェルは特に調整必要なかったのは何でだろ?と思ったけど、あちらはそもそも回転バランス取るためのオモリは最初からローターにくっついているのでベールワイヤー取っ払っても、ある程度バランスはとれる構造。まあメーカー純正のマニュアルピックアップ化部品使ったのでその辺は問題なく作ってあるって話か。

 ついでにスプールエッジが腐蝕でザラついてたので、主軸ごと電動ドリルで回してサンドペーパーと歯磨き粉で磨いて、腐食防止に一応エポキシ薄く塗っておいた。
 ボロ個体で、ベールワイヤー一式持ってかれたダルマ個体だったけど、まずまず良い感じに改造により復活したんじゃなかろうか?ベールアーム自体から銅板とか加工して作るのも考えたけど、ちょっと金属加工は自信ない分野なので今回ありもののベールアームはそのまま使っている。なのでマニュアルピックアップで意味ないけどベール?を起こすことはできる。逆にベールアームを畳むことができるのはラインローラー部分が上に飛び出してて、雑に荷物に詰めると曲がりそうなベールアームの保護には役立つかも。

 こいつはせっかくなので、出番作ってやりたいところ。マニュアルピックアップ方式という単純で部品少なめな機構と、タックル5の外蹴りで部品数少なくシンプルな設計は統一感があって良い気がする。必要最小限でスピニングを作ったらこんな感じ、的な仕上がり具合に好ましさを感じる。
 ライントラブル防止重視なので、スプールエッジもいじらなくて良いだろうとライン巻き始めたら、No.1サイズは外周ギリギリまで巻くとスプール上下幅より糸巻き部分の幅が広くなってトラブルの原因になりそうだったけど、少なめに巻いてる分には糸巻き部分の幅とスプール上下幅はほぼ同じだった。でも、No.2サイズはわりと最初からスプール上下幅より糸巻き部分の幅が広い。糸巻き部分の下面に円盤追加で1~1.5mmも調整してやればちょうど良くなるハズだけど、面倒くせえので下側がグズグズになるのはそれほどドバッと出ていく原因にならないだろうから放置して、やや少なめの糸巻き量にしたときに上側は上面までキッチリ巻けるようにやや前巻きで巻いてやった。
 実釣で問題生じれば、糸巻き幅調整するけど、以前純正状態で使ったときに特に問題生じてなかったので大丈夫だと思う。

 今回は「ラインローラーが自作できる」と「マニュアルピックアップ方式のスピニングに馴染みがあって使える」の合わせ技一本な感じだけど、スピニングリール色々いじって身についた小技が役に立つようになってきて、なかなか楽しいことになってきたように感じてます。

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