2025年8月30日土曜日

サーフリール投げ比べ

 「偽ドラゴンボール販売疑いで逮捕」ってネット記事の見出しを目にして、なにっ!偽があるっちゅうことは本物も売ってるのか?その場合バラ売りなのかセット販売なのか?とかアホなことを一瞬考えてしまいました。海賊版のマンガ売ってるって話やね。まあ、考えてみれば好きなだけ釣りに行って、旨いメシ食って優雅な楽隠居生活、ドラゴンボールそろえたところで何かかなえたい望みがあるかって言うと、デカい魚やらは自力で釣らなきゃ意味ないし、かといって世界平和や温暖化対策はシェンロンにも荷が重いだろう。結局、願うとしたら愛猫の健康とかリールとかルアーとかが関の山で、前者はともかく後者は自前で買いまくってるので間に合ってると言えば間に合っている。       

 という感じでリール買いまくってるわけだが、買ったからには使いたいってなるとどのリールが良いのか、部屋でクルクルしていてもリールの善し悪しは分からん。まあ本当に評価しようと思ったら、10年ぐらい使い込んで、魚も釣りまくって、やりとりの際の限界値や故障の有無や整備のしやすさ、消耗品的部品の減り具合、その他諸々を勘案して総合的に判断するしかないのですぐには分からんのだと思う。それは釣り人それぞれの釣り方や癖、整備の上手下手なんかもあって他人の評価は究極的にはアテにならない。とはいえマイニューギアってしまった場合に、とりあえずリールなら竿に付けて釣り場でぶん投げてルアーとか引っ張ってみて、どっかにラインの先をくくりつけてドラグ試験して、っていうぐらいはすぐにできるのでやっておくべきだろう。投げて巻くのが円滑にできんような道具立てでは話にならんのでまずはそのあたりの様子をみておくのが常道かなと。

 この夏は従来型PENN両軸機の沼に浸かっていたので、我が家にあらたに迎えた両軸機達がゴロゴロ転がっている。転がっているけど一度に全部の機種を使うわけにはいかないので、ある程度使い方釣りものに応じてどの機種を使うか整理して、必要がない機種は売りに出すなり人様に譲るなり、蔵に収納するなりしていかないと収拾がつかない。ということで投げ比べである。一応喫緊の課題となる根魚狙い用の小型機種は「27モノフィル」主軸で控え「180ベイマスター」で固めたけど、ぶっ込み泳がせ用と、大型ルアー遠投用の20ポンド30ポンドを巻いてぶん投げる大きさのサーフリール系の機種達が、それぞれ特徴はあるけどその個性をまだ把握し切れていないので、暇を見てセッセと試投してみたところである。ちなみにサーフリール系7つ集めてみたけどシェンロンは現れなかった(冒頭写真)。

 対象となったのは「スクイダー140」、「スクイダー145」、「ジグマスター500」「ジグマスター505HS」、「320GTi」で320GTi以外はすでに分解整備時に分かる機械的な部分はご紹介済みである。

 320GTiはmasahiroさんと物々交換して入手したもので、最近ワシが従来型PENN両軸機に熱を上げているのを見て取って、プレゼント企画で応募がなく余らしていた5500ssとの交換を提案いただき、願ってもないと喜んで確保したところである。写真見て分かるとおり平行巻機構(レベルワインダー)が付いている。従来型PENN両軸機において、レベルワインダーない方が単純で回転も良いのは確かだけど、スプール幅の小さい小型機なら問題になりにくいけど、スクイダー145とか使っててスプール幅の広い機種だと、やっぱりラインの巻かれかたが偏ってしまうのは避けにくく、このぐらいの大きさのサーフリールではあった方が良いのか悪いのか、また小型機では明らかに投げるときの”ブレーキ”として有効に働く連動式のレベルワインダーの恩恵はこのクラスのリールだとどうなるか?試しておかねばなるまいという気がする。

 既に使用可能な状態に整備されていたので、分解してもドラグを乾式から湿式にしたぐらいで、主に内部の機構を把握していくためにバラしていく。1980年代後半の登場らしく、比較的設計が新しく、レベルワインダーもNo.9ピアレスのようにラインガイドがウォームシャフト下面から伸びてきてる方式ではなく、丸アブ同様のウォームシャフトを覆う円筒ごと貫通したラインガイド関係の部品が用いられている。駆動は側板側にコグホイールが入っててスプール軸から回転を持ってきてるのは同じ。ボールベアリングが従来型PENN両軸独特のキャスコン摘まみとかと一体化したモノではなく、規格品を填める方式になってるし、フレームはカーボン樹脂一体でフットだけ頑丈なステン系のをリペットでガッチリ留めてある。面白かったのはドラグで、3階建て方式ではなく、5階建て方式になっている。ドラグは奇数階なら増築できるけど、増やせば安定したり高負荷が掛けられたりとかがあるのだろうか?とりあえず滑らかなドラグではあるけど、正直3階建てとの違いまでは分からない。逆転防止の方式やらクラッチの方式はいつもの従来型PENN両軸機って感じでそこは信頼の方式を蹈襲している。腐食に強く軽量なカーボン一体型フレームで近代化したレベルワインダー付きの従来型PENN両軸機という印象。


 ということで、それぞれの機械的な特徴などは把握した上で、いざ試投へ。

 まず最初に5つも両軸機リュックに入れて背負うと重かった。あと、後ろを通ったりする釣り人の”アホを見る目”に心を折られかけた。

 でも頑張って投げまくってみた。竿は2本用意して、当然のごとく竿も今回の従来型PENN両軸機の症状が出てから購入したもので、リールに症状が出ると当然とはいえ竿も増える。アタイ病気がにくいッ!で、迷ったのが4.5mぐらいの石鯛竿系にするか、3m前後の船竿系にするかで、結局4.5mもの長尺ものはルアー繰り返して投げるのはしんどいだろうということで、船竿系で行くことにした。ルアーロッドは今時のダブルハンドロッドは基本リールを上に付けての利き手サミング前提であり、ワシ500gからある両軸機を利き手でぶん回すのがしんどいので引き手の左手でサミングしたくて候補から外した。1本目のダイワ「クロスカーボ剣崎30号300」はまあ目的からいって妥当な線かなとクロスカーボとかの時代のダイワの竿が丈夫なのは経験済みだし3本継ぎで携行性も良好。2本目がキチガイじみた豪竿でシェイクスピア「TUNAⅡ240」って尻に十字が切ってないのが不思議なぐらいのクソぶっといマグロ竿。アグリースティックじゃないしゴツすぎるしで出品されているのは目にとまってたけど無視してたら、いつまでも売れないので在庫してるのも邪魔くさくなったのか処分価格の送料別780円になってたので仕方なくワシが買うしかないかと、ワン&ハーフで携行性も悪く送料2950円もかかったけど買いました。まあどこ製か分からんけどアメリカ市場にマグロ用としてぶっ込んだブツなら丈夫さは心配せんで良いのは確か。

 最初竿も新しくなって、慣れない引き手サミング両手投げで上手く投げられなかったりしたけど、明確に言えるのは竿とリールとラインに適合した重さっていうのがあって、それが合わんとどうにも投げづらい。けど合う重さが分かってしまえばフランジを親指で押さえるサミングも最小限で済み気持ちよく投げられる。スクイダーは16ポンド巻いた145も20ポンド巻いた140も1オンス程度のやや軽めのルアーと相性が良くて、28gのエゴンとかフィーッと独特の空力ブレーキ音を残してカッ飛んでいく。3.3:1のギア比なのでルアーのスピードを出そうと思うとかなり一所懸命巻かないとだけど、逆に深く潜るデカクランクは巻きやすい。ジグマスターは2オンスクラス60グラムとかのジグが好適で、505HSは5:1で巻き取りスピードが速いのでペンシル早引きとかジグ水面滑らせるぐらいの高速引きができてクランク引かず青物狙いならコレだろう。500の4:1はクランク巻くには重く、早引きは正直スクイダーとたいして変わらん感じで帯に短したすきに長しな感じか。320GTiは最初他のリールと同じような重さのルアー投げた感触では、一番飛距離が出ずパッとしなかったけど、竿TUNAⅡの方で80gとかの重いルアーを投げたら飛ぶしトラブル少ないしでハマってくれた。レベルワインダーを動かす分どうしても回り出しに力が必要で軽いルアーではその力が不足するけど、重いルアーで最初の回り出しを確保してしまえば、高速回転時には適度にレベルワインダーがブレーキの役割を果たしてくれる感じで、正直8fのゴン太竿でルアー投げるのなんかまともにできないだろうと思ってたけど、100g前後の重いルアー投げるならむしろ太竿の方が簡単に感じた。あたりまえか。ロウニンアジとかスピニングの次は両軸で大物狙うつもりが、そこまで行かずに歳食ってしまって時間切れした感じだったけど、メッキ達も越年する年が出てきて今後大型に育ちそうな予感もあるので、港でGTをっていうのにこいつらの出番が来るかもしれん。「GS545」もあるので充実の布陣。

 てな感じで、基本青物狙いは剣崎と20LB巻いたスクイダー140で、一発大物狙いで100g級のポッパーやらペンシル投げるならTUNAⅡに30LB巻いた320GTiって感じで良さげ。走らせて良いポイントが多いので基本ナイロンで良いと思っている。ややこしいポイントで釣るならドラグの強化と太いPE使った適切なラインシステムの構築が必要になるだろう。

 ちなみに通路の柵に引っかけてドラグのテストも各機種やったけど、PENNのドラグは特に何も言わなくても優秀。ガッチリ止めたいとかの場合だけパッドの素材を滑りにくいのに変えるとかが必要になるかもだけど、基本はいじる必要ない。

 っていう感じで、それぞれの機種の特徴やら癖やらも見えてきたけど、まだまだバックラッシュ無く投げ続けるには習熟必要だし、とにかく普段使わない筋肉を使うのか体の節々がガタついて痛くなるので、おりを見て練習はしておきたい。カマス寄ってる冬がメインだけど、近所漁港はその時期に限らず回遊魚のたぐいは入ってきては出ていくようなところなので、練習と言っても魚が食ってくる可能性のあるところで投げているので、けっこう緊張感もって楽しめる。そのうちドカンときてもワシャいっこうにかまわない。落としダモも持ち込んでいつでも準備はできている。魚釣ってみないと魚を釣る道具としての評価としては”それがどうした”って話にしかならんので、しっかり評価できるように精進して実績積んでいきたい。まあ難しいけど、時間かけていいからボチボチやっていこう。

2025年8月23日土曜日

従来型PENN両軸機の裏技

左通常、右裏技
 両軸受けリールは場合によっては”ゴリ巻き”が可能なリールだと何度も書いてきたところではある。ただ、その場合一定の制限があることは気をつけておくべきだろうと思う。いくら低速機でパワーがあるリールだとしても、例えば大型のトローリングリールを手持ちで扱おうとすると普通は巻けない。巻けないはずなんだけど繁殖地でホホジロザメに位置情報やら水温やらの情報を記録するいわゆるデーターロガーを取り付けて放流する研究者達が、手持ちというかバットを脇に挟んだトローリングタックルでホホジロザメとしては小型とはいえ200キロに達するかというような魚をゴリゴリ寄せてる映像を見て、さすが米国民は”パワーこそ力”のゴリマッチョ、とても真似できんと呆れると共にまあ200キロのサメでも竿とリールであげられんこともないんだなと認識したしだいである。

 端的に言って、固定できてなくてグラグラの状態の大型の両軸受けリールは重いので重力に引っ張られて下向こうとするので、それをまともに上に保持したうえでハンドル回さなきゃならなくなってしまい、デカい魚が引っ張ってる状態でとてもそんなことやってられないのである。

 両軸受けリールはひっくり返らないように上下が固定されていないと巻きにくい。

ジグマスター、投げるときの指の位置
 それはナニも大型のトローリングリールに限らず、ルアー投げるのに使うベイトキャスティングリールも含んで両軸に共通する。って書くと「オレ、ベイトリール使うときにファイティングチェアーの竿受けに十字切った竿尻突っ込んだりもしてないし、竿掛けで船縁に固定したりもしてないぞ?」と思うかもしれない。上下を固定っていうとそういう印象を受けるかもしれないけど、ベイトキャスティングリールでもみんな上下ひっくり返らないように固定して使ってるはずである。道具は使わずパーミングなりトリガーグリップに指かけるなりあたりまえにしているだろう。従来型PENN両軸でもサーフリールに分類されるようなジグマスターやらスクイダーやらはパーミングしやすくはないけど、左手で側板の方を固定することができるのでギリギリ道具は使わなくてもなんとかなる。ぶっちゃけこの大きさならロッドのフォアグリップ握ってのファイト時にもしっかり握っときゃそうはひっくり返らないぐらいに固定できる。

 しかしこれ以上大きくなって、従来型PENN両軸機でもセネターの4/0以上とかになると、道具無しではどうにも巻きにくくなる。最低限竿尻に十字切ってあって、ジンバルの金属棒に突っ込んで固定しないとどうにもならんだろう。ただ、さらに竿尻に加えてハーネスで背中というか腰からぶら下げたりを併用すると、ファイティングチェアーなど使わないいわゆるスタンダップファイトで、10キロ以上のドラグ値が余裕でかけられるようになったりする(写真では背景がごちゃついていて見づらいかもだけど、ハーネスで吊した9/0セネターで10キロのダンベルをぶら下げている)。そこは”さすPENN”でセネターでも4/0以上からハーネスで吊す用のリングがフレームの上部に設けられている。逆に3/0以下のセネターにはリングはない。そのクラスのライトタックルで狙う魚とのやりとりにはリール吊すひつようなないという判断なんだろう。まあ3/0にはあっても良い気はするけどね。アメ人基準ということか。

 で、当然ながら「そんならリール下に付ければ良いじゃん」って釣り人は考える。チャーマス北村氏も、リョービの「マーフィックス」あたりを使ってて、上付きのリールは使いにくいのでどっかで下付きの両軸受けリール作ってくれないか?なんならオレが図面描いてもいい、とか書いてたように記憶している。下に付けるとギアが1枚増えるけどまあ回転軸90度変えろとかいうよりは簡単だろうと思う。両軸じゃないけど片軸では下に付けるリールとしてチヌ用下付け片軸機とかダイワの「バイキング」とかの前例もあるのでできなくもないはずである。それらにはドラグがなくてムーチングリールとかの”センターピン”系ダイレクトリールの発展系だけどあれにドラグ付けてくれって話。まあ日本の市場に限らずかもしれないけど、両軸受けリールは船縁の竿掛け使ってゴリゴリ巻くので上付けじゃないと売れんのかもしれん。けど、ジギングとかで手持ちでやる釣り用にはあっても良い気がする。実は存在する(orした)けどワシが知らんだけか?(チヌ用のは存在するようだ)

 っていうなかで、簡単に両軸受けリールを下付けで使う裏技がございます。これが、今時のフルフレームな一体構造のリールにはできなくて、横棒(ピラー)をネジ留めしてフレームを構成している従来型PENN両軸機のようなリールだとできる裏技なので、知ってて損はないと思うところ。

 

 やり方は簡単。ハンドルが右なら右で同じにして下に付ける、付けると当然裏返った状態になって、本来ラインが出ていた方向は逆になって竿尻側を向いてしまう。このままでは当然どうにもならない。ここでラインを反対側の竿先側から出すのである。スプールの向きが変わるのでスプール上部からラインは出てこず下から出てくる。その下から出たラインがピラーでフレームを組んでいるリールの場合、ピラーの下の方の隙間から引っ張り出せるのである。リールの本来なら尻の下の方からライン出している格好になる。写真はパーミングできるサイズだけどセネター1/0にモデルになってもらってます。

 この状態では、キャスティングやハンドブレーキは難しい。でもリール下付けにできるし、ラインを逆に巻き替えるとかの面倒くささも無い。「ちょっと待ってくれ、それハンドル逆回転しないといけなくならないか?」とかって頭がこんがらがる人もいるだろう。ハンドルは正回転でいい。裏の裏それはクルリと元通りって感じで、上下ひっくり返して前後ひっくり返して2回裏返しているので元に戻るのである。分かりにくい人は、両軸受けリールをハンドル軸を真ん中にして前方にでんぐり返しさせるイメージで考えて欲しい。ハンドル軸は中心で動いてないから、でんぐり返ししてもハンドルを回す方向は一緒。どうしても腑に落ちない人は手頃な両軸受けリール(丸アブでも回転方向の確認だけならできるはず)で確認して欲しい。

 この裏技、昔から知られてはいたようで、ワシいつどこで知ったのか思い出せないけど、ネットフリックスのドキュメンタリーに「バトルフィッシュ」っていう、ビンナガ漁を追ったシリーズがあって、それぞれ船ごとにいろんな戦略とかがあって面白いんだけど、そのうちの1隻がやや資金潤沢とは言えない感じのチームで、船長と船員の3人でやってて、釣れ始まると一人は冷蔵庫に入って釣った魚を氷に突っ込む作業やら操船を主に担当するので、釣り手の方は2人で釣ってハリ外して冷蔵庫に繋がるレーンに魚を投げ込んでという甲板上の仕事を、バカ釣れしてて間に合わないとき以外は2人でやっつけていた。そうなるといちいちリールをハーネスで吊って悠長にファイトしてる暇はなく、手持ちの竿でガンガン寄せて2人で交互にギャフ掛けしてってやるのに、アグリースティックのタイガーシリーズの黄色い竿に下付けしたパワハン装備のセネター使ってた。アグリータイガーは荒っぽく使えるタフな竿だし、セネターもそういう荒っぽい仕事に充分耐えるプロ御用達の道具である。っていうぐらいに少なくとも本国米国では珍しいってほどでもない運用方法らしい。

 というのもあって、わしデカいサメを船から釣ることを妄想してセネター買ったときには、新しくカーボン一体フレームとかに改良されたタイプじゃなくて、ピラーネジ留め方式の時代のを確保している。デカいの想定でスタンダップロッドと組ませてハーネスで吊る想定の9/0セネターにはライン下巻きにPE10号300m、ナイロン80LB500m巻いた。10キロドラグで800mまで走られても大丈夫なら相当な大物が相手にできるだろうけど、ワシの体力的に800mも10キロドラグで巻き取る体力はもう無いので、もっと小型の機種で十分な気がする。ということで冒頭写真の4/0セネターに下巻き50LBナイロン巻いてPE6号を100m巻いたのも用意した。7キロドラグとかでハーネス使わずジンバルは使って下付けでって考えてるけど、それも体力的にはだいぶしんどいってのが実情かも。で、その他になに写真の「349マスターマリナー」まで確保してるねん。って話だけど、下付け想定ならこのいかにも上付けだとバランス崩しそうなスプール幅の狭い機種も、逆に下向かせたら安定するだろうし、もともと幅が狭いのはレッドコア(鉛芯入り)ラインとかの縒れに弱いラインを想定した深場用らしく”手動レベルワインド”なしでもラインが偏って巻かれることが少ないだろうってことで、あんまり状態も良くないのが送料込みで2500円で出てたので確保して、そもそも船に乗らなくなって久しいので放置していた。せっかくの機会なので分解整備しておく。

 ハンドル周りからなにげに小型機やサーフリールとはちょっと違ってる。まずハンドルそのモノがカウンターバランサーのオモリが付いてるいつもの形状じゃ無い。そして穴の位置が2カ所あってハンドルの長さを2つから選べる。そしてハンドルナットが微妙に大きくていつも使ってる従来型PENN凸凹ナット用のでは小さくて回せない。しかたないので、F師匠に貰ったバイスプライヤーでしっかり挟んで回して外す。バイスプライヤーはハンドル端のネジ巻いて開き具合を調整すると、その開き幅でパチンとしっかり挟んで止まるようになっていて、F師匠はルアー塗装するときにアイはさんで固定して塗ったりするのに便利だよって言ってたけど、確かにぶら下げた不安定に揺れるルアーに塗料塗るよりしっかり固定してある状態で塗った方がやりやすく、良いモノ貰ったと思ってたけど、挟みたい幅でしっかり固定できるっていうのは色々と応用効いて便利。グルグル回りがちなピラーをネジ留めするときにもバイスプライヤーあると塩梅良い。F師匠アザマス!

 さらにハンドル外してスタードラグはずすと、曲げワッシャーとスリーブを挟んで、ドラグを押さえる分厚いワッシャーが露出していて「これ防水とか諸々大丈夫なのか?」って感じだけど、まあドラグに水が入ってもかまわないって割り切れば良いのか?通常だと樹脂で覆われてカバーされていてスリーブがある程度露出しているかたちだからどのみち完全防水ではない。ドラグ自体は3階建ての多板方式なんだけど、ドラグパッドがまた前回の500ジグマスターに引き続き繊維をベークライトっぽい樹脂で固めた謎素材。しかもコレが分厚くて2ミリぐらいはあってちょっとやそっと削れたところでどうってことないって仕様。

 この機種はスプールをつないだ状態でハンドルが逆転する”ナックルバスター”状態にできるんだけど、そのために切り替えレバーがクラッチの他にも1本出ていて、逆転防止の爪をラチェットから持ち上げることができるように、爪の後ろの方にミョーンと伸びた棒が伸びていて、レバーで切り替え可能になっている。そのため逆転防止関係もプレートの上に乗っているので組み付けは簡単になっている。

 あと、深い海から重い仕掛けと魚引っ張り上げてくる関係か、丈夫な設計になっている。フットのネジは片側2個から3個に増やし、ピラーは3カ所にまとめてあるけど2本づつで6本と多くなっていて、ハーネスで吊すためのリングは上部2本のピラーのネジ2本で支える形になっているけど、これがかなりの負荷なのか、ピラーを止める外側の金属リングのねじ山の部分が割れてしまっている。どういう使い方されていたのか知りようもないけど、この構造でも壊れる時は壊れるんだと驚いたと同時に、どんな道具でも無理したら壊れるワケで、PENNといっても過信してはいかんなと思わされた。円高ならセカ○モンでお買いモんすればパーツ売りあるので復活させられるけど、とりあえず、今回下付けで吊さないので表裏2枚の金属リングの1枚割れただけなので、浮いてきてライン挟んだりしないように組んでからウレタン接着剤で留めてお茶を濁しておいた。リング自体は千円2千円で買える部品だけど、送料手数料だけで4~5千円かかってくるのでバカ臭い。使う場面が出てきて良い魚釣って武勲を立てたら褒美として部品交換検討してやるか?コイツのための部品だけでは費用対効果が悪すぎるので、他のモノも買わざるをえない状況になったときについでで買うか?まあ出番も想定されていないのでとりあえず放置。

 っていう感じで分解整備一応終了なんだけど、ちょっと驚いたのがスプールの重さで、スプールの側面に、なんか金型に金属まわりきらなかったような”引け”が見て取れるので、これ重さから言って真鍮鋳造に鉄系の心棒でクロームメッキ掛けているように思う。とにかく重い。投げて釣ることは想定してない機種でむしろ深い海を攻めるために長いライン巻くのでラインの圧でスプールが割れたりしないように丈夫さ重視でクソ重くなっているのだろう。外周のリングの値段とか調べてたときに目に入ってきたけど、このスプール、ニューウェル社で軽量スプールとか作ってるようだ。ニューウェル自社ブランドでもリール作ってるけど、わりとPENNの社外パーツも作ってる。っていうか米国の小規模両軸メーカーはPENNの社外パーツ作りがちな気がする。アキュレートとかもPENNコラボモデルとかがたまに中古市場にも流れている。米本国の釣り人達には、使い慣れて馴染みのある従来型PENN両軸機をカスタムして使うっていう楽しみ方もあるようだ。

 で、せっかくなので下付けが想定されるセネター4/0と349マスターマリナーは竿に付けて、ダンベルぶら下げたりしてテストしてみた。

 竿は、ダイコーの隠れた名竿「サザンクロススティック」の「STC70X」をセネター4/0に「STC70H」を349マスターマリナーにあわせてみた。もう1本転がっているのは「STC66H」と、我が家にはサザンクロスの両軸用は結構在庫している。黒くて太いサザンクロススティックは、グラスか?っていうぐらいに太くて丈夫、そしてしっかり曲がってくれて、バキバキの体に悪い堅すぎるような竿とは違う実に優れた竿だけど、いかんせん黒基調の地味なデザインが、華やかな製品展開で流行し始めたオフショアルアーの世界では実力のわりにはイマイチ受けなかった。ただスピンフィッシャーにしろ、従来型PENN両軸機にしろ、PENNのリールにはよく似合う竿で、ワシ、スピニングももういっちょ持ってるぐらいには気に入ってる。そこそこ中古の球数もあるのでクソ高い道具買いたくなければ非常にいい選択になると思う。

 ダンベルテストは、349マスターマリナーのほうはドラグが5kgが限界で、もっとドラグ値上げたかったらドラグパッドをカーボン製の”HT-100”に換装とかだろうけど、吊さずジンバルぐらいで手持ちだと5kgドラグはワシの方の限界っぽくまあこんなもんで良いのかもしれない。5kgでもしっかり曲がってくれるのは腰の負担が少なくて爺さん助かる。あらいぐまラスカル。セネター4/0の方は5キロ余裕。でもワシの方が余裕じゃない。この組み合わせで出すなら、筋トレは必須だろうな。どちらの組み合わせも重いリールとラインガイドが下側に付いているので、保持するのにグラついたりの不具合はなく良い感じではあった。

 ワシが使うとなると、岸壁泳がせで77シーホークで御しきれない魚が掛かるようになって、より強い道具でってなったときぐらいが想定されるけど、多分77シーホークの戦闘能力ってかなり高くて、10キロの根魚上手くすれば上がるつもりでいるので、それ以上ってなんね?って話ではある。そうするとワシがこの裏技を使う機会はないのかもしれない。だれかこの記事を読んで、やってみて自分の技術にしてこの古くから引き継がれてきたと思われる伝統ある裏技を次代につないでいってくれると嬉しい。どっか頭の片隅にしまっておいて、知識として知っておけば、何かの時に役に立つかもしれないし、たたないかもしれないので、憶えていってくれると嬉しいです。

2025年8月16日土曜日

PENN「ジグマスター500」「No.9ピアレス」は現行機種です

 従来型PENN両軸機も実釣用の機種は既にそろってきていて、とりあえず小型機種とかで購入候補だったのは概ね買えたし、一部値段が付く機種は安い出物があったら考えるかなという状態。ってなかで「ジグマスター500」と「No.9ピアレス」2台のセットがネットオークションに出てきた。ピアレスは平行巻機構(レベルワインダー)ありの小型機で欲しかったけど、意外に安くないようなので諦めていたけど、開始価格が安かったのでダメ元で入札してみた。ジグマスター500のほうはギア比5:1のハイスピード版の505HSは2台既にあるけど、ハイスピード版だとマグナムディープクランクベイトを巻くのにはちと巻きが重いので、ギア比3.3:1の140スクイダーでも良いけどジグマスタ-500はもうちょい高速でギア比4:1なのでそちらでもイケそうに思って、あれば比較検討できるので悪くないだろう。でもでもピアレス単体でも3000円ぐらいしていることが多く、高いと5000円以上していたりもするので、落とせないだろうなと思ってたけど、いつもの「2220円」ぴったりで落札。おそらく競合者はこちらが2200円入札と読んで2210円で刻んできたんだろうけど、それでもダメだったので「デカい金額入れてるな」と予想して芋引いてくれたんだろう。してやったりな気分。今回、ゼリー飲料の箱に新聞紙緩衝材と、わりと雑い簡易包装で配送されてきたけど、PENN両軸機壊れるようなタマじゃないので問題なし。

 で、いつものように分解整備。ジグマスター500からやっていく。やっていくんだけどコイツ、長~いパワーハンドルが付いていて、現物来る前に写真でも「パワハン付いてるな」ぐらいには思っていたけど、実物手にするとやたら長い。PENN純正パワハンの一番長いやつのようだ。上の写真左がジグマスター500で右が比較に普通の長さのハンドルが付いているロングビーチ60。長くて邪魔なぐらい長い。ハンドルの長さって手首でクリクリ回転させることができる範囲であればそれほど巻くスピードが遅くなりはしないけど、このぐらい長いと肘使って回してやる必要があり、巻く速度が落ちる。ハイスピードのギアを搭載しておきながら、巻きを軽くするためにハンドル長くして、ギア比を相殺するような組み合わせにして結果巻き取り速度を”普通”にしてしまったら元の木阿弥で意味ねえだろ?って思う。だったら最初っから低ギア比の巻きが軽い機種で巻いておけって話だと思う。本来こういうのの需要って、船で竿掛けに固定した竿とリールでゴリ巻きするときに、通常の長さのハンドルでは重くて巻き取りにくい時とかが出番ではないのだろうか?少なくともジグとか投げて素早く巻きたい時には向かない仕様だと思う。なので、ハンドルは出番なさそうでかつ、元々低速機で2.5:1のロングビーチ60のと交換して、長ハンドル装備のロングビーチは超ゴリ巻きウィンチ仕様ってことにしておこう。この仕様ならゴリゴリ巻いてくるだけで多少の”重い”魚でも寄ってくるだろう。逆にノーマルハンドルの500に限らず高速機で”重くて巻けん”ってなったらどうするか?そんなもん別に両軸はゴリ巻き”しなければならない”ってわけじゃないので、ポンピングして竿で稼いだ分巻いてやれば何の問題もないはず。船縁でもピトンで磯に突き刺したとかの場合でも竿掛けに道具を固定したままゴリ巻きするのが前提なら重くて巻けない問題は生じかねないけど、手持ちでせいぜいジンバルぐらいしか使わないのならポンピングしない理由はなく、それほど困りはしない。PENN両軸機のハンドルには純正品から社外品から色々あって、ドラグを完全に止めてしまって、やばくなったら放出できる”ハンドルドラグ”とか力こそパワーなマッチョ仕様のものから、ハンドルが折りたたみナイフみたいにたたんで長さを変えられて、早く巻きたいときは短くしておいて、パワーが必要なときは伸ばして使うというのがあったり、なかなかに面白い。後者はあまり丈夫なモノにはならないだろうから中小型機用だろうけど”2スピード”をギア比ではなくハンドル長で実現していて鋭い。

 500も”テイクアパーツ”機構で、本体側はネジ一つ緩めてグリッとねじるとパカッと外れる。505HSでは真鍮が多かったけど、500はステンの部品が目立つ。クラッチを下げるのに引っ張る方式が採用されているのとかは505HSと同様、逆転防止の爪がギアの乗ってるプレートに付いてて填めやすいのも一緒。メインギアが大きくて本体枠いっぱい使ってるのも一緒。順番的には505HSに500の仕様が引き継がれているんだろう。 

 ちょっと変わってたのがドラグ。構造自体は3階建てでメインギアに入ってて一緒なんだけど、パッドの素材がメインギア下の座面には表面に小さなへこみを付けたアルミっぽい金属板、ドラグパッドにはベークライトのような堅い樹脂素材でグラスとかカーボンの繊維を固めたような謎素材が使われている。これ三桁スピンフィッシャーの「650ss」のスプールから出てきたこともあって、PENNのドラグパッドが天然素材でバラツキやら経年劣化がある革から、HT-100カーボンワッシャーに変遷していく途中に一時的に採用していた素材のようだと考えている。あと、505HSとの違いとしては、505HSにはボールベアリングが奢られていたけど、500に関しては金属製(真鍮かな)のスリーブというかベアリングでスプールの軸両端は支持されている。っていう細かな違いはあるけど、基本的には500の高速化版が505HSなので設計は似通っている。ハンドルはロングビーチから普通のを持ってきて分解整備いっちょあがり。青物限定で早引きするなら505HS一択だろうけど、マグナムクランクもついでに巻いちゃおうって時に、500かスクイダー140にするか、練習がてら試投を重ねて検討してみよう。

 でもう一台の「No.9ピアレス」。これは275ヤード/15ポンドという可愛らしい機種で、16ポンドラインとかでルアー投げる釣りにはちょうど良い大きさかなと。PENN公式の糸巻き量表示において、意外に重要なのがラインの太さだというのが色々試し投げしていて分かってきた。だいたいその太さに合わせて全体のバランスが調整されているようで、まあ竿も投げる”オモリ”も関係してくるとは思うけど、ラインは想定されている太さのを使ったときが実力を発揮させやすいというか使いやすいように感じたところである。具体的には145スクイダーに16ポンドナイロン巻いてジグマスター505HSに30ポンドナイロン巻いて試投していて感じたんだけど、ジグマスター505HSは想定されているのが30LBで、巻いたラインと一致していて、この組み合わせで重めの2オンスぐらいのジグをぶん投げると、スプールの回転によるラインの放出スピードと実際にジグが飛んでいく速度が釣り合ってる感じで、スプールのフランジを押さえるサミングは着水時ぐらいに必要なだけで、難しくもなんともなく投げられてしまって拍子抜けなぐらいである。一方、1オンスぐらいの軽いジグを投げることを想定しているスクイダー145はラインは20LB想定なんだけど、ライン細いほうが飛距離出るだろう、って想定より細めの16LBを巻いて投げたら、フランジ押さえるサミングでだいぶ投げられるようにはなったけど、どうにも投げるときに初速が上がりすぎて回転しすぎ、ライン放出速度が上がりすぎ、初っぱなからサミング積極的にかけていかないとバックラッシュしまくった。結局初速を落としてユックリ目に竿を振って調整したけど、おそらくドンピシャの全体構成になってないんだろうと思う。というなかで、15LB想定のNo.9ピアレスはいま根魚クランクで使ってるラインが16LBナイロンなのでちょうど良い機種だと考えて確保対象としていたところである。

 で、No.9に関しては、従来型PENN両軸機では初めて手にする305レベルラインみたいな半分逆ひねり棒方式じゃない、より一般的なラインガイドがスプールの回転と連動式のレベルワインド(平行巻機構)搭載機種(レベルマチックは除く)ということで、早く投げてみたくて分解整備するより先に試投に持ち出した。27モノフィルのマグブレーキ化のときに書いたけど、連動式のレベルワインダーは遠心ブレーキ的に効くっていう理屈を、実際にそうなのか試して実感してみたかった。スプール回転からコグホイールを介して”ウオームシャフト”が回ってラインガイドは左右にラインを導いていく。ということはその、コグホイール、ウォームシャフトあたりに働く摩擦を重めにしてやればブレーキ力は上がるはずである。ということで、堅めのPENNグリスを盛り気味に盛って抵抗を上げて試投してみた。結果、普通に遠心ブレーキ機種みたいに投げられた。やはりリールは理屈どおりに機能する機械である。ベアリング沢山ぶち込んだからといってワケの分からんフォースがいきなり発生したりするわけがない。あたりまえ体操。コイツはボールベアリング無しだけどそれなりに重さのあるルアー投げるのなら上出来の性能だろう。でも、じゃあこれ投げやすいから27モノフィルの代わりに使うかっていうと、使わないだろう。普通にレベルワインド搭載機種なら今使ってるABUライト系で良いだろうし、レベルワインド無しで単純な分、壊れる箇所が減り整備が楽になるのが利点でもあるので、従来型PENN両軸機の15ポンドラインを想定した小型機でどれを使うかとなったら27モノフィルや180ベイマスターのほうが、今のワシの釣りや嗜好には向いている気がする。むしろNo.9ピアレスを使うなら、クラッチが手動式な他は普通にルアー投げるのに使う他のベイトキャスティングリールと似たような感じなので、バス釣りとかに使ったら、道具が他者とかぶることが少なくて良いかもしれない。バス釣りはそれこそケンタッキースタイルのダイレクトリールの愛好家も居るぐらいで、単純な道具で遊ぶ余地はあると思う。その中でも東海岸というかニューヨークスタイルなPENN両軸でとなると、レベルマチックはそれなりにファンもいるだろうけど、No.9ピアレスは盲点ではないだろうか?ラインガイドが径の大きなスプールに合わせて上下広いものになっていて、それを支えるピラーも間隔が広く、通常の従来型PENN両軸機では前に2本、後ろに2本のピラーがあって、後ろの2本の上にくるピラーがサミングの邪魔だというのは以前書いたところだけど、No.9ピアレスでは前が上下に間隔広い2本、後ろは1本の3角形な感じで本体と側板を固定している。その結果後ろの1本のピラーの位置は低くてサミングする指を邪魔しにくくなっているのも、ルアーキャスティングには好適かと。

 ということで、とりあえず確保したけど、すぐには使いどころはないかもしれんので分解整備して蔵に眠らせておこう。

 分解していくと、レベルワインダーの分は確実にややこしくなっているけど、その他はTHE従来型PENN両軸機という感じで、ギア回りも見慣れた構造。ドラグもこの個体の時代は伝統の革パッド。革パッドは生きてたので脱脂の後、グリス塗り塗りで仕上げ、メインギアの下の赤ファイバーワッシャーはポリアセタール樹脂製に換装も手慣れた作業になってきた。

 レベルワインダーの仕組み自体は、丸アブとかのスプール連動式とそうは変わらない。スプールの回転をコグホイール(白い樹脂の歯車)で拾ってウォームシャフト(グルグル棒)を回している。ただ、丸アブとかだとウォームシャフトを囲った筒ごとラインガイドを貫通しているけど、本機においては、ラインガイドはウォームシャフト自体は貫通しているけど、ウォームシャフトの覆いは貫通していないので、覆いは下が広く開いていて、その開いている下からラインガイドの針金部分がミニョーンと伸びてきている構造になっている。 

 でもまあ、面倒くさいってほどの機構でもなくサクサク分解整備していくんだけど、なんか謎のネジが側板側にハマっている。左が分解前の側板の状態で、下の2本のネジはフットを止めるもの、その他の3角形の頂点に存在するような小さいネジは、ピラーを固定するネジ。真ん中のでかいのはスプール軸がハマるベアリングの摘まみ。その上は音だしのスライドボタン。左端の大きめのネジはレベルワインダーを留めるネジ。その上というか斜め左に付いているネジが、裏面に貫通してなくて何をしているのか分からんネジ。よく見ると周りに「SPARE PAWL」となっていて、なんの予備が入ってるんだ?と開けてみたら、中にグルグル棒に刺さる三日月状の角が生えている部品が入ってた。一つ上の写真の真ん中上に囲んだところで刺さってる場所が分かると思うけど、ラインガイドを下から留めるネジの中に入ってて、グルグル棒に切られた溝に沿って左右にラインガイドを動かすための部品だけど、この部品ステンでも錆びるときは錆びます。塩水かぶって浸水しやすいレベルワインダーの中でも、塩が入ると溜まって出ていかない場所なので、当然整備の際には気をつけて塩抜きするけど、油断してると錆びる。ワシ「インターナショナル975」で一回錆びさせてしまった前科がある。その当時はミスティックリールパーツ社の前身であるスッコッツアンドベイトカンパニーで部品の通販可能だったので、お取り寄せして事なきを得て、ついでに予備も確保したけど、ここが錆びるってのを分かってて予備が入ってるってのは親切。まあ錆びないようにしてくれると一番良いけど、次善の策であり良心的だと思う。

 レベルワインダーはこの大きさの機種だと、まあなくても良いかなという程度の機能だけど、あっても左の全バラ時点での写真で右下のカップ1つ分に治まっている程度の部品数ではある。スプールの幅がもっと大きくなってくると、多少ラインの巻かれかたに偏りも出て気になるといえば気になるので、あれば良い気もするけど、幅広いとラインがラインガイドにきつい角度であたりかねず強度的な不安も出てくるのでその辺は判断難しいところ。いずれのせよコイツは組み上げて手にしてクリクリ回してみると、なんとも手に収まりの良い可愛い機種である。 

 で、お題にも書いたように、今回の2機種はまだカタログに載ってる現行機種なのである。従来型PENN両軸機でクラシカルな機種では他にセネターも生き残っている。いずれも、ハンドルがソフトノブのT字型に変わったり、セネターはフレームが一体型になったりとアップデートされていたりとかもあるけど、No.9ピアレスで1942年登場、ジグマスター500は1958年登場、セネター登場にいたっては1936年に遡るというぐらいに、改良は加えつつも時を超えて愛され続けている古強者どもである。ひとえにそれは単純な設計ゆえの整備性の良さトラブルの少なさ堅牢さ、単純な設計ではあるけど、その中に必要十分な魚釣りの道具としての機能を落とし込んだ、基本設計の確かさがあったからだと思っている。要するに、魚釣ってて釣り人が「コレで充分」って納得できる性能があったから、ここまでの超ロングセラーになっているんだろうと思う。現在ジグマスター500については遊漁船の船長が貸し出し用として使ってるパターンが多いそうで、単純でイラン機能はなく壊れるところが少なく丈夫で整備性が良いうえに、お客さんは落として巻く簡単な仕事をすれば良いだけで、その作業を問題なく確実にできるだけの機能を有している。平行巻機構がないのは、糸巻き量少なめにして多少偏って巻いても大丈夫な感じで運用するのがプロのキャプテンたちのお約束だそうだ。

 ワシまだ、従来型PENN両軸機の本領を発揮させるような釣りにはなっていないけど、習熟して細かいところを詰めていけば、世界中の釣り人が何十年って愛してきたこれらのリールの実力を思い知るような釣りができるのではないかと、以前にも書いたかもだけど妄想しているところである。

2025年8月9日土曜日

三体(再びの)

 従来型PENN両軸機買ってて毎度のように思うのは、昨年、昔の塩鮭みたいに塩吹いた大森三台買ったときもそうだったけど、今回の従来型PENN両軸機三台も典型でヤフオク1540円落札+送料940円と、手間賃考えたら絶対出品者さんに儲けなんて出てないのに、丁寧に梱包してくれてあってありがたいとしか言い様がないって話。三台まとめては、どちらの出品者も釣り具専門じゃない中古品屋さんで、こういう値段にならないモノでもコツコツ売りに出して商売されているんだろうなと思うと、改めて銭を稼ぐのはどんな仕事でも大変だなと思わされ頭が下がるところ。「こんなもん値段もつかんから捨ててしまえ」ってなったら、ワシの元にリールが来なくなってしまう。まあそれはそれで「「ある」のがいけない!!!」 の逆で無きゃ買えないので症状は治まってくれて良いのかもだけど、そんなのつまんねぇって話で、ワシ、欲望にかけるブレーキなんぞとっくに壊れてるからもっと買いたいのである。と同時に従来型PENN両軸機のような、今でも充分に実用性が有り、かつ堅牢で整備性が良く”面倒くさくない”リール達が、時代遅れのゴミとして中古市場にも出てこずに捨てられてしまうことをどうにか避けたいので、微力ながら、その魅力をお伝えできたらなと思っている。マジでPENNの両軸は値段に現れない価値がある超級実用品だとだんだん理解できてきた。

 もう、当面使う実釣用の機種は確保済みで、買わなきゃならない機種も別にないんだけど、不当に安い出物があると「ワシが買ってあげなきゃ!」って思わずマウスが滑るのであった。今回は「ジグマスター505HS」っていうサーフキャスティイング系の高速ギア機種が2台で替えスプール体制バッチリだったのと、PENN社の歴史上もっとも初期から存在したロングビーチシリーズの末っ子「60ロングビーチ」は1台ぐらいあっても悪くないなって感じのお得な3点セットが千円開始で出てたので、まあ2220円ぐらいで入札しておくかと入れておいたら、1530円と細かく入札してきた競合者をおさえて落札。両軸受けリールって今時のがどんなことになってるのか買わんから知らんけど、両軸はそんなに複雑化する要素もないし、この3台を選ばない明確な差違など無いだろうと思うんだけど、なぜこんなに安い?ギア比がこの時代の設計のは低すぎて巻くのが遅いってのはあるかもだけど、2.5:1のロングビーチはともかく、ジグマスター505HSの”HS”はハイスピードの略でギア比5:1。今時の高速機は6:1以上あったりするけど、スプール径も大きいので充分高速巻き取り可能だろうと思う。両軸だから強度が問題にはなりにくいし、ドラグはPENNだから良いに決まってるし、国産高級機種ってなにをどうしたらそんなに金額上げられるのかよく分からん。アルミ削り出しフレーム?小工房で作ってるような売れる数も少ない機種ならそっちのほうが良いだろうけど、大手メーカーで沢山売れるなら金型代回収可能だろうし、樹脂に金属フレーム足して強化しておけば足りるでしょ?っていうかさんざんPENNの真似してそういうリール作ってきたはずで、そいつらがダメだったようにも思わんのだけど、両軸機には馴染みがないのでワシが知らんだけで今時の両軸機は進化してるのか?構造的に一緒のようなものしかないと思うけどどうなんだろう。PENNでもジグマスターシリーズの「500」はいまだ現役カタログモデルだし、今時な6.1:1の高速機の「スコールⅡ」シリーズも樹脂に金属フレーム強化で190ドルぐらいの販売価格で高級ってほどでもない。国内だとピュアフィッシングジャパンが正規に扱ってるのはフルメタルのファゾムⅡが主のようで3万円ぐらい。ダイワのソルティガだと6万円ぐらいするけど、倍の金払うような違いが生じるとは考えられん。そもそも最初の頃のソルティガの両軸って石鯛用のシーラインの色違いみたいなんじゃなかったっけ?PENNでもトルクシリーズとか高級機種もあるから、旗艦機種が高価なのはそういう高級機種をありがたがるお客様用ってことか。まあワシには関係ないわな。

 ジグマスターは、日本じゃれいによって石モノとかぶっ込みタマンとかの釣り人が愛用していたようで、巻かれていたオレンジの道糸は10号ぐらいあるゴツいナイロンラインで、そういう強めの道具構成で大物狙いっていう使い方だったようだ。
 米本国でっていうか、もともとどういう用途で設計されたリールなのかなと、ミスティックさんところのリール情報覗いてみると、1983年のPENNカタログから「ジグマスター:ゲームフィッシュはライブアクションルアーを好むため、ジグマスターリールを使用すると、ストライクとキャッチがさらに増えます。独自のハイギア配置と大口径のスプールにより、これらのリールは簡単にキャスティングでき、高速リトリーブができるので、使うのが楽しくなります。」ってな引用がされていて、メタルジグぶん投げて、ハイスピードリトリーブで勝負するためのリールとして生み出されたようだ。
 さらにリール情報には2000年のカタログからもなかなかに痺れる宣伝文句を引っ張ってきてくれていて、曰く「ジグマスター:ハードな釣りをこなすソルトウォーターアングラーにとって、サーフマスターなどのペンの汎用型リールは、母親、アップルパイ、そして古き良きアメリカと同じくらい高く評価されています。これらのリールは、耐久性のあるアルミスプール、精密加工されたギア、ペンの有名なHT-100ドラグパッド使用の多盤式スタードラグなど、本格的な機能を有する価値あるリールです。サーフのストライパー、ビーチのコビア、または外洋のビンナガにカツオの群れ、ヒラマサにも最適です。」だそうで、おそらくサーフマスター、スクイダーと併せて主にサーフでストライパーを狙う東海岸の釣り人用だけど、ちょっとハードめな獲物なら岸からでも船からでも何でも来いなぐらいに十分な基本性能と汎用性を持って愛されているリールとのことであろう。自社製品を褒め称える宣伝文句など耳タコではあるけど、”オカーチャン並みの製品”ってのは、並々ならぬ自負がうかがえてなかなかに心に刺さる口説き文句になっている。

 でもって分解していくと、ジグマスターシリーズの最初の「500」は1950年代に登場だけど、ハイスピード版の「505HS」は1985年の登場だそうで、比較的設計が新しく、コレまでいじってきた機種と微妙に違うところもあったりして興味深い。
 コイツもスクイダーと同様に”テイクアパーツ”機構で本体側がネジ一つ手で緩めてグイッとひねると外れる設計。
 オオッ!と最初に目に付くのは、本体の直径ギリギリまで使って大型化したメインギア。本体にハメ殺しの補強の金属の輪っかの一部削れてというか凹んでいてホントにギリギリ攻めている。これ以上メインギアを大きくしてギア比を上げるとなると、今時の高速機みたいにメインギアの部分だけ飛び出した形状にする必要がでてくるだろう。あれハンドル位置を下げて巻きやすくする意味もあるんだろうけど、大元のところはギアの大型化でそうせざるを得ないんだと理解できる。
 そして外観では、ピラー(横棒)が二本が融合してプレート状になっていてガチッと強固な面構えになっていて、実際ゆがみとかには強くなっていそう。ベアリングは2+1となっているけど、ボールベアリングは2個ハメ殺しのが入ってるのは確認できる。側板側のボールベアリングが入ってる部分はキャスコンつまみ?になってるけど、摘まんで回す方式ではなくコインかなんかで回す方式でやや面倒か。
 内部構造では、ピニオンギアを填めている横板をバネに逆らって沈めてクラッチを切る方法が、これまで見た機種では斜めの突起部で”押して”いたのが、505HSでは”引いて”いるという違いがあり、理由があるのだろうけどなぜそうしたのかよくわからんかった。
 そしてワシ的に評価が高かったのは、逆転防止の方式。絶対にこっちの方がやりやすい。これまで見た機種は、本体の樹脂側に金属プレートを留めるネジを軸として利用して逆転防止の爪を配置していたけど、ギア入れるときに隙間からバネを所定の位置に収めるのはやや器用さが求められる感じだった。本機種では金属のプレートの方に軸が用意してあって、先にメインギアと逆転防止の爪はセットした状態で本体に填めることができる。そしてドラグはメインギアが大きくなってるので当然直径が大きくなっていて、時代も進んでからの機種なのでドラグパッドも最初から革製ではなく、カーボンの「HT-100ドラグパッド」だったのか、あるいは歴戦の機体のようなので前の持ち主が換装したのかいずれにせよ、カーボンパッドの申し分のないドラグになっている。
 という多少の違いはあるけど、分解整備に難しいところはなく整備性の良さは変わらずというかちょっと前進かな。
 で、こいつが歴戦の強者なんだろうってのが偲ばれるのは、クリックブレーキの爪の摩耗具合で、この部品ハメ殺しなので交換するわけにいかなかったんだろうけど、写真真ん中のように先の方が削れてしまっている。国内で石鯛やらハタ系やらタマン(ハマフエフキ)やらあたりを釣ってたんだろうから、ぶっ込んでクリックブレーキでアタリを待っていて、ギィーヤーーッっと良い音で何度も鳴いたのか?あるいは止めきれない大物が掛かって、締め込んだドラグ逆転させながら突っ走られたのか?いずれにせよ釣り具として生まれて、その機能をめいっぱい発揮してきたんだろうと想像に難くない。前の持ち主の主軸機種だったのは、同じ機種をもう一台の二台体制を組んでいることからも分かる。もう一台は比べると損耗度が少ないので、こちらの個体がメインで使われていたんだろう。
 このクラスの機種を前の持ち主以上に使いこなすというのはなかなか難しいだろうけど、快調に整備してやって遠投修行に付き合ってもらって稽古付けてもらおうと思っている。
 ワシが従来型PENN両軸機でのルアーキャスティングに苦戦している様を心配しMasahiroさんからご助言をいただいていて、曰く「親指をフランジに!」というのがキモだそうである。で、ジグマスターはやや大きめの機種(30lb/275ヤード)なのでフランジ部も大きく練習には最適だそうである。ジグマスターのカタログには樹脂製のスプールには"Easy-Thumb Spool Flanges"というのが付いているとの説明があるようで、Masahiroさんによると「フランジとはスプールの両端にあって、内側に向かってはみ出している「つば」部分のことです。キャストし、スプールがフリーになった後は、この「フランジ」部を親指で触ったり、離したり、強く抑えたり、弱く抑えたりしながら、回転を調節します。いわゆる「サミング」ですね。
 ライン部に親指を乗せて「サミング」してもいいのですが、ライン部は当然、ラインの放出に合わせて高さが変化していきます。一方で「フランジ」部は、どれだけラインが放出されようが高さは変わらず、親指を使って一定のプレッシャーをかけやすいのです。また、ラインを直接触らないので、ラインが傷んだりすることもありません。
 私の場合、この「フランジ」部を使うことに気づき、そして練習をしたら、スクイッダーでもジグマスターでも、磁石なしで、まったく普通にキャスティングできるようになりました。」
 とのことで、ワシもその域に達するべく、ちょっと両軸受けリールでの両手投げのクンフーを積んでみようかなと思っちょります。ということでマグ化は今回無しで。
 ちなみに、真ん中写真の右「スクイダー140M」に付いているような真鍮クロームメッキの丈夫なスプールはキャスティング用ではなく、船でのトローリングやら底釣りを想定していてキャスティング用ではないというPENN社の整理だそうで、そうであればフランジも空力ブレーキも付いていないこととも整合性がとれてなるほどである。まあ重いスプールは回り出しも悪いし回り出したら止まらんしで回転慣性がデカすぎてキャスティング向きじゃないわな。今回の505HSには丈夫で軽量なアルミスプールが装備されていて、キャスティング対応で立派なフランジが設けられている。いっちょやってみますかね。ってなると竿が一本欲しいんだよな。ぶっ込みに使えるような石鯛竿か長めの船竿あたりにまた症状が・・・。

 もういっちょは”THE従来型PENN両軸機”っていう感じの「ロングビーチ60」。ギア比はさっきも書いたけど2.5:1の低速機、糸巻き量はジグマスターと同じ30lb/275ヤードで、このサイズは石鯛釣り師御用達だったように記憶している。今時の高速機種に馴染みがあると、いかにも遅いと感じるかもだけど、低速機には力強く巻ける、巻くのが楽っていう利点があるので、ルアーを高速で動かさなければならんとかでなければ、魚とのやりとりで力勝負できるのは大きな利点ではある。ぶっ込んでおいて魚掛かったらドラグ堅めでグリグリ巻いてくる釣りなら大いに使いどころがあるだろう。
 歴史的に1933年のPENN最初の市販リールの一つがロングビーチだったって話は以前紹介したところだけど、その頃から設計は基本一緒だと思うので、単純にして問題の少ないある種の完成形だったんだろうと思う。そのへんは後発のメーカーであり、PENN社を起こしたオットー・ヘンツェ氏はオーシャンシティーで働いて、リール造りのイロハを学んで吸収してから独立しているから可能なことだったんだろう。にしても今回一台目に紹介したジグマスター505HSは1985年登場のだけど、しっかりその設計を継承しており、多少のマイナーチェンジにとどまっているところなど、50年使えるのはPENNならむしろあたりまえとして、売り続けられる設計というのは何気にすごいことだと思う。
 キャスコン摘まみを兼用した金属製のスプール軸受け。真鍮を多用した部品を使い確実に作動する逆転防止やフリースプールのクラッチなども後の世界標準になったんだろうけど、なんといっても、樹脂製の側板と本体を金属製リングで補強して、金属製ピラー(横棒)とフットをネジ留めして必要な強度・精度を出す方式、革パッド使用の三階建て方式の優秀なドラグは、これぞPENNという設計と言えるだろう。
 新たな釣法や、新技術、時代の流行なども取り入れつつ、今でも従来型PENNにはロングビーチから派生していったような機種が作られ続けている。なかなかにすごいことだと思う。
 ロングビーチ60にワシが出番を作れるかというと正直微妙だけど、売ってもそれこそ2千円になれば御の字では、手間に見合わないので蔵に転がしておいて、必要な場面や人が現れたらゴソゴソ出してくることとしよう。しっかり全バラ整備してグリスとオイルぶち込んだので、いつ出番が来ても良い状態で働いてくれるだろう。

 という感じで、安く落札できたら御の字って入札しておいてもあっさり落札してしまうような不人気分野なので、あれよあれよと蔵に積み上がってしまい、この夏は従来型PENN両軸機を毎日のようにいじくっている。いじくってばかりではしかたないので、釣り場に持ち出して大型両軸機両手投げの練習もしておかねばだし、なにより魚を釣らねばである。従来型PENN両軸機が魚を釣る能力的にいまだ優れているということは、いじくっていて確信するところなので、実際に釣ってそれを証明しておきたい。
 と同時にまだ何台か紹介しておきたい機種もあるし、関連した小ネタもあるので、あと何回かPENN両軸ネタ、お付き合いいただきたい。

2025年8月2日土曜日

大地震ってクソ暑い夏か凍える冬に来る気がするのは気のせいか?

 新潟中越沖地震はクソ夏い時期だったし、阪神淡路や東日本の時は被災した方達が凍えてたのが気の毒で仕方なかった。能登半島地震にいたっては正月に来やがって、神などいないと強く確信を新たにするしだいであったのは記憶に新しい。

 なので、基本的に無神論者なワシは火山帯の上に住んでるような日本人の心得として、神頼みではなく”備えよつねに”のボーイスカウト精神で、リュックに非常用食料とか詰め込んだモノを神棚に乗せていた。コレに水と猫餌を突っ込んで猫用キャリーバックに愛猫を詰め込んで、有事には自転車で避難所まで爆走する予定であった。

 そしてクソ夏い7月30日の朝にそれはやってきた。アリューシャン列島でマグニチュード8を越えるような巨大な地震が生じて、日本でも太平洋側広い範囲で津波注意報が発令され、それはすぐに最大3mの津波警報に格上げされた。注意報の時点で一回避難経路とか確認するためにも練習で行っておこうかと思っていたけど、いきなり本番初舞台である。ただ、遠い震源地なので情報収集なんぼかしてから避難しても間に合いそうではあったので、とりあえずアリューシャン列島の現地情報が来てから行くかと準備しつつネットに張り付いていた。現地映像でデカい津波が来て4m以上とか言ってるので、それが最大時とは限らないので少なくともそれ以上の津波が現地で起こっていて、間違いなくその津波はこちらに向かってきているので、距離があるので減衰するにしてもちょっとシャレにならんなとそそくさと猫をキャリーバックに詰め込んで、ニャーニャー抗議の声をあげるのを無視して、近所のおばちゃんとか呑気に散歩してるので「逃げた方が良さそうですよ」と声を掛けながら小高い丘の上の避難場所に移動する。

 避難場所すぐ到達できるはずなのに、意外に焦っていたのか一回曲がり角を行き過ぎてしまった。時間的余裕があったのでよかったけど、直下型で一刻をあらそうような場面だったら死んでたかも。まあなんとか避難所にたどり着いて駐輪してから海抜40mまでてくてく歩いて登っていくと汗だくになって、6.5キロの愛猫の重みが肩に食い込んだ。

 ありがたいことに避難施設には空調が効いていて、ペット同伴組はまとめて小会議室に案内されてホッと一息。飼い主さん達と話していて、餌はワシ持ってきてるので猫用のドライフードなら融通できますよって話だけど、猫砂どうしようって猫飼い達は心配するのであった。みな自分たちぐらいはどうとでもできるけど、愛猫がこの異常事態にどうなるか不安なようで、その気持ちよく分かるって共感できるだけでもありがたい。外には土もあるのでトイレはそこでしてくれることを祈るのみである。

 で、会議室に落ち着いてしまうと不安な声で鳴き続ける猫をなだめるほかにすることはなく暇。情報は別の部屋とかにはTVがあるし、ワシもタブレットとポケットワイファイは持ってきていたので、逐次ネットニュースとかは確認できる体制。慌てて持ってきたので充電量が怪しく、自治体の施設からの盗電だけど、緊急時ということで目をつぶってもらうことにして充電させてもらう。ついでに、持ってきたモノの確認などして次回以降に活かすとともに「オレ生きて帰れたら避難所のことをブログネタにするんだ」と死亡フラグ臭いことを思う。

 まずは、非常食と水だと思ったけど、これ意外と大きな避難場所では要らないかも?水もすぐに配ってもらえたし、昼ご飯もお湯を注ぐだけでOKのアルファ米の備蓄食料がお昼頃には配布されて、自治体の備えがその辺しっかりしているならなくても良くて、とにかく体の安全だけ確保するのを優先して急いで避難しても良いのかもしれない。暖かい飯があるのに乾パンは食わんよな。逆に役に立ったのは歯ブラシとタオルの洗面セットで、飯のあと歯磨きして顔洗ってスッキリしてというのは特に夏場の汗かきがちな避難においては有用だった。その視点で足らなかったのは衣類のたぐいで、一応寒かったらかぶれるようにアルミブランケットも用意してたけど、エアコンがちょっと効きすぎるぐらいでガサガサ出してきてかぶるのははばかられて、着替え兼寒暖調整用に下着類はなんぼかあると良さげ。その他に持ってきていたのは片付け作業になったら使いそうな、マスクや軍手。電気が来なくなったときの夜間の行動のためのヘッドランプ、火が焚けるようにマッチ、怪しい水が飲めるように口で吸う簡易浄水器あたりと、あとは今回時間があったので暇つぶし用のタブレットとワイファイルーター、当然携帯を持ち込み充電アダプターも持ってきていた。後半ダレてきてからはタブレットでネットやらマンガやらは役に立った。ただこれらは電源が確保できなければ遅かれ早かれただの箱に成り下がるので、電気が復旧しないという状況では、過去事例で被災地からの映像とか見ていると順番待ちして発動発電機で充電していたけど、手巻き式とかで良いのがあったら用意しておくと良いかもしれない。以前持っていたのは試してみたら発電力が小さくて役に立たなかった。

 ちなみに配布された昼ご飯はこんな感じで、炊き込みご飯やらドライカレーやらがあって、ドライカレー食べたけど普通に美味しかった。水でも戻せるアルファー米だそうだけど、暖かい食べ物が胃に収まると人はかなり落ち着くので、可能なら暖かい食べ物は確保したいところ。この辺は個人ではどうにもならないので、自治体なりの対応を期待したい。インフラが死んできつい状況になると、自衛隊が派遣されてきて、暖かい飯とお風呂が提供されるようで、復旧作業と併せてありがたいことである。ただ東南海地震とかデカいのが来ると被災地域が大きすぎて、必ずしも津々浦々手がさしのべられるかというと難しいだろうから、避難所に持ち込むかどうかは判断だけど、乾パンやら水の備蓄はやっぱりあった方が良いだろう。まあいずれにせよ体が一番大事なので、直下型の場合、早ければ20分かからず津波が押し寄せるとかあるらしいので、とにかく着の身着のままでも良いので素早く避難しろってことだろうと思う。

 そしてやはり、手間なのが愛猫関係で、キャリーケースに餌のカリカリのほかに、キャリーケースの中だけでは狭くてしんどいだろうし、外の土でトイレさせるためには逃げられないように繋いで外に出さねばならず、ってのを想定してハーネスを購入済みで、試しに付けたことはあったけど、今回初の本格運用。意外にハーネス自体はいやがらず大人しく着用してくれたけど、不安げな雰囲気やら知らない体臭やらをまき散らす人間どもが沢山いる、知らない場所にいきなり連れてこられて、最初ほぼ固まってケースの中で不安げな鳴き声を上げ続けていた。人間は避難する理由も状況も分かってるけど、猫にしてみればなぜこんな騒々しく不穏な場所に来なければならないのか、納得いかないところであろう。とにかく頭をなでたりして落ち着かせようとするけど、人見知りもするビビりな性格でもありお水も飲んでくれないし前半心配した。10:30くらいに避難所に入って、12時過ぎに昼ご飯食べて、ってやってると多少は慣れてきたのか、単に疲れてきたのか鳴き止んで大人しくなってきて、湿らせた指も舐めてくれるようになった。そしてケージから出たがり始めたので、ハーネスにヒモを取り付けて”猫の散歩”状態で愛猫の現場確認作業に付き合ったんだけど、そこは猫なので身を低くして机の下とか通りたがるので難儀して適当なところで切り上げさせて、抱き上げてなで回したけど「オマエ、オレ騙した」って感じの不審の目をむけて腕から逃げるので、会議椅子のフカフカしたのが気に入ったようで、その上で座って大人しくなったので、ミャーミャー抗議の声をあげ続けているけどまあ良しとしておいた。

 状況は、15時半を過ぎると、東北の久慈で1.3mとやや高い津波が観測されていたけど、この地は数10センチで、それ以降は治まっていくように見え、皆さん帰り始めたので、愛猫のストレス的にも限界だろうから、ワシも撤収した。今回の被害的には震源地近くのアリューシャン列島やらのロシアでは陸上施設に被害もあったようだけど、国内は比較的人的被害は少なく、避難を急いで崖から落ちた事故で亡くなった方がいたぐらいのようだった。まあ、防災無線もメディアも「急いで命を守る行動を!」と緊迫感のある尻のタタキ方をしていたので、焦る気持ちも良く分かる。けど、急ぎつつも冷静確実にということを肝に銘じたい。結局、警報出たけど人的被害が出るような大きな津波は来なかったじゃないか、避難指示必要だったのか?って話はいつでも湧く。でも基本は厳しめの予報に基づいて行動しておいて「思ったよりたいしたことなくて良かったね」って言えるのは何ら問題はないけど、予想を逆に外して、油断してたら津波に持ってかれたって場合、死人に口なしで文句も言えないので、この手の避難の呼びかけは外れてオオカミ少年になっても良いぐらいでちょうど良いんだと思っている。急ぎつつも焦って事故が起きないような呼びかけの方法とかは報道機関も工夫して欲しいけど、結構今回の津波でも大丈夫だろうと避難していない人も多かったように感じるので、尻を精一杯叩くのは気象庁やら自治体、報道機関の正しい役目なんだろうと思う。

 ロシアの被災した方々、国内で亡くなられた方にはもちろん心よりお悔やみ申し上げるところだけど、それとは別に、陸上に被害が少なくても洋上で海水が大きく動くと当然、養殖施設等への被害が生じていて、自然相手だとある程度仕方がないとはいえ、お気の毒で胸が痛む。お見舞い申し上げるとともに、なんか良い感じの復旧支援なりを行政にはお願いしたいところである。

 我が家に戻ってくると、愛猫のワシへの信頼は脆くも崩れ去ったようで、部屋で可愛がってあげようとしても、チュールだけ食べたら下の階に行きたがるので、コバンの城である下の階に放流して「ワシのこの愛が分からんのか?」と悲しくなるけど、多分コバンも分かってくれていると思う。翌日のお昼寝の時にはいつものように股ぐらで丸くなって寝てくれた。可愛いやつめ。東南海地震とかクソデカいのが来たときに生き残れるか、それは時の運だろうと思うけど、愛猫と共に生き残れるよう今回の経験も生かして、油断なく備えておくこととしよう。生きるか死ぬかは運もあるというのはコレまでの津波災害とかで得た教訓である。やるだけのことをやって、後は運が良いことを願おう。皆様”備えよつねに”で一つよろしく。


※PENN両軸ネタの予定でしたが、津波ネタは鮮度の良いうちに提供しておきたかったので先に入れました。あしからずご了承ください。

2025年7月26日土曜日

PENNのドラグの素晴らしいブレーキ性能がワシの購買欲にもあればいいのに

 アタイ病気がにくいッ!って自虐気味の”ネタ”だと思われるむきも多いとは思うけど、購買欲が止められなくなって、自分の意思でどうにもならないというのは、盗癖、アル中、ギャンブル依存等と似たような種類のあからさまな病気であり、生活やら社会性に問題が生じなければ治療の必要がないというだけで、それもまた例に出した依存症のたぐいでも同じだろう。

 ワシ、好きな釣り具が値段が安いのが多いので、経済的に破綻しないから生活が成り立ってるけど、高価なアンティークタックルとかに手を出し始めて、借金してでも買い求め始めたら、買い物依存で自己破産とかシャレにならん結果が待ってるだろう。そう分かっていても欲しくなってしまったら止められる気がまったくしない。

 どのくらい、止められていないかこの三本の「アグリースティックGX2 USCA662MH」を見ていただければある程度分かるだろうか。2本目が欲しいということで、円安も関係なくネット釣具屋で確保したのは以前にご報告しているとおり。2本目を買おうとしていた時点で、待っていれば国内の中古市場に流れてくるのを確保できる可能性は大きいと思っていた。そう分かっていても、今すぐに手に入れてしまいたいという欲求を抑えられなかった。その欲求は切迫したモノであり理屈や意思で止めようのない種類のモノだというのがおわかりいただけるだろうか。割高だったけど買ってちょっと症状は落ち着いた。落ち着いたけど、その後しばらくして予想どおり某中古屋のネット通販サイトに同じ竿が出てきた。なんのためらいもなくそれも確保した。一本の竿は折れても三本の竿は折れないと毛利元就も言っている(言ってない)し、竿は消耗品なので予備が多くて困ることはない。ってのは言い訳で、見たらとにかく欲しくなったので買ったというだけのごく単純な話である。で、このアグリースティックが屈指の名竿というのなら分かる。でもこの竿クソ丈夫でそこは他の追随をゆるさないぐらいだと思うけど、その他はショボい竿でもある。ガイドがステンフレームに直接クロームメッキをかけたような”アグリータフガイド”でショボく、今使ってるのは”当たりロット”のガイドだったのか削れてこないけど、ガイドセッティングが今ひとつ分かってなくて、一番曲がって負荷がかかるだろう、2ピースの竿先側の継ぎの上のガイドがシングルフットになっていて、必死でドラグ堅めで魚寄せてくると毎度のように曲がってブランクス側に寝てしまってるので手で摘まんで起こさなければならないというていたらく。そのうち金属疲労で折れるだろうからその前にガイド換装が必要になるだろう。同じようなパワーのフェンウィックの低級グレードの「FVR66CMH-2J」では、その位置のガイドはダブルフットになっていて、そこはさすがフェンウィック”さすフェン”で竿というモノが良く分かってるのである。下の写真の上がGX2で下がFVRなんだけどGX2の継ぎの上のガイドはスレッド剥離しかかってるのがおわかりいただけるだろうか?シェイクスピアのガイドセッティングやらグリップの配置やらがイマイチなのは今に始まった話ではなく、ワシが最初に買ったスピニング7fのアグリースティックもグリップが短くてトップヘビーでバランス悪くて最初「何じゃこのクソ竿」と思ったものである。それがグリップにオモリかまして調整して使ってるうちに「何じゃこの丈夫で応用範囲の広い竿」って惚れ込むようになるのである。

 というわけで、2本持ってても3本目を買うぐらいには頭がおかしくなってるんだろうと思う。ついでに書くなら前回書いたアグリースティックの9fの船竿?も見つけて即買った。

 幸いなことに、今症状が出まくってる従来型PENN両軸機は安いので個別に見ていくとどうということはないけど、安いとはいえ調子に乗って数を買ってしまうのでここしばらく、月の釣り具予算3万円は軽く超過してしまっている。2千円3千円で買えてしまうと、ブレーキの効きが悪く、マウスはスルスルと滑りがち。

 まあブログネタには困らなくて良いなと思うけど、今の時代一体どれだけの釣り人が従来型PENN両軸機に興味があるというのだろうか?興味あるようなマニア氏達は既にワシの知ってる程度のことはご存じだろう。でも書く。なぜならいつもの基本姿勢でワシが書きたいから書くのである。まあそういうわけで皆様お付き合いいただけると嬉しいです。

 今回は買う予定などなかったけど安かったので思わず買ってしまった、ちょっと面白い2機種を紹介してみたい。

 1台目は「350レベルライン」、コイツは従来型PENN両軸機には珍しく平行巻機構が付いている。付いてるんだけどレベルワインダー(平行巻機構)といって普通想像するような、グルグル棒で行ったり来たりする仕組みではない。従来型PENN両軸機にも「No.9」シリーズには若干丸アブとは違う形式だけど似たような平行巻機構の搭載された機種はある。だがしかし、コイツの平行巻機構はかなり独特で、リールの前方やや上に左右というか前後対称に半分ずつ逆になったひねりの入ってる棒があって、それがユックリ回ることによってスプールにラインが並行に巻かれていくという仕組みで、PENNの特許技術らしい。けどゼブコのベイトキャスティングリールで似たようなのがあったような気もする。サイズも大きめで使うアテはまったくないんだけど、どういう仕組みなのか面白そうで興味あったのと、金属部分のメッキ剥げとか激しめで捨て値で競ることもなく入手できそうだったので確保した。ちなみに千円スタートで送料込みで1760円。発送してもらう手間考えると儲けにもクソにもなってなさそうで申し訳ない気がするぐらいだけど安いのはありがたい。

 分解整備は、平行巻機構の分部品が増えたけど、基本は単純明快なつくりなのでたいした手間でもなく、ギア下の赤繊維ワッシャーが腐ってて割れたけど、ドラグパッドの革はまだしなやかだったので、ギア下ワッシャーだけジュラコン製に換装して組み上げて、早速ライン巻いたらどうなるか試してみた。

 ハンドル回してラインを巻いていくと、スプール糸巻き部分より高い位置の前方に出ている、”半分逆ひねり棒”の上をラインが巻かれてくるけど、半分逆ひねり棒はハンドルの回転より減速されつつユックリと回転していく。するとその回転にあわせて半分逆ひねり棒の上のラインはヒネリに導かれて端の方にユックリと移動していく。そしてラインがスプール幅の端まで来ると、半分逆ひねり棒のヒネリが逆向きの面になって、今度は端から反対方向に逆向きヒネリに導かれてラインがもう一方の端に向かっていく。端に到達したら同様にまた逆のヒネリの面にひっくり返って戻っていく。という仕組みで、常に棒にラインが接触して摩擦が生じている点やらの欠点もあるけど、自動で平行巻きができるという点において平行巻機構の役目は果たしている。なかなか面白い工夫で国内の中古市場でも珍しくない程度には見かけるので、そこそこ評価されて愛用されてたようである。ただ、整備する前にはどういう仕組みで動いているのかやや不思議だった。「不思議もナニも丸アブとかのレベルワインダー動かすホイールギアみたいなのが側板の方に入ってて減速してるだけじゃないのか?」って思うかもだけど、どう見ても側板側もハンドル側も薄っぺらくて、減速するのに必要な大きな径のギアが入ってるようには見えない。側板側には通常の従来型PENN両軸機と同様の位置にクリックブレーキが入ってるのが見て取れるので、そもそも側板側には余分なモノが入ってそうな気がしない。だとするとハンドル側のメインギアから回転を持ってきてるはずで、クラッチ切ってフリースプールにすると半分逆ひねり棒は回ってないのもそのことを裏付けている。メインギアから回転持ってきつつ減速するけど、幅は増えてないから、メインギアと同一平面上にギアがあるはずで、メインギアと同一平面上のギアは、ウォームギア方式なら可能だけどむしろ増速してしまう。増速してもいいから回転を伝えてしまってから、歯を欠いたような例えば1回転で1回だけ歯が噛みあうギアで半分逆ひねり棒のギアを回して、半分逆ひねり棒のギアには普通に歯を付けておいて逆転防止装置をつけるとかか?

 とか思いつつ蓋を開けてみたら、当たらずとも遠からずナマジ予想自己採点40点ぐらいで、正解は、ハンドル軸に入ってるメインギアから回転を持ってきてるのはそのとおりで写真の黄色矢印でさしているギアがそれ。半分逆ひねり棒のギアに逆転防止が付いてるのもあってた。写真では右の右端ピンクの矢印。ただ、ワシ生物系の理系であり、機械科とか出身の人なら、この手のギアとかラックとかを組み合わせた工夫っていろいろ知ってるんだろうけど、ちょっと想像つかん方法だったので面白かったし感心した。写真で見て分かるように、綺麗にハンドル側本体のベークライト樹脂の端の方の空きスペースに収まっている。黄色矢印のギアでメインギアから回転を引っ張ってきたら、それを一回ピストン運動的な直線運動に変換している。これはスピニングのスプール上下の単純クランク方式と一緒で写真の赤矢印の”十手型”の部品が左右に往復運動をする。そうすると1回転に一回だけ十手型部品の先っちょが緑の矢印で示した半分ひねり棒のギアを押す。その分だけちょっとずつ回っていく。ラインの抵抗とかで逆転してしまわないように写真右端の逆転防止の爪をバネで押しつけている。淘汰されて現在使われなくなった方式だけど、ラインがスプールに均一に巻けるという平行巻機構の役割は果たしていて、端の方がややタイミング一定しないきらいはあったし、さっきも書いたようにラインに常に摩擦がかかる方式だけど、ドラグ逆転してラインが出ていくときに、今の連動式や固定式のレベルワインダーだとスプールからレベルワインダーへの角度がきつくなって、ドラグ値と魚の引きによってはレベルワインダーの破損やらラインの損耗が生じかねないのに対し、棒の上滑るだけの比較的ユルい制限しかないというのは有利な点もあるように思う。レベルワインダーがパカッと開いたり、フリーになったり投げるときの摩擦対策がとられている機構のは何種類か見たことあるけど、高ドラグ値でファイト中にレベルワインダーでラインがスプールに入る角度がきつくなってしまうのの対策としては、レベルワインダー取っ払うのが現時点での最終回答なんだと思う。けど、この”半分逆ひねり棒方式”を発展させたら、例えば通常の巻き取り作業では働く位置にあるけど、ドラグが出て強い負荷が掛かるような場面ではスライドして下がるようにするとか、海用のどえらい値段のトローリングリールでも、レベルワインダーがなくて手で平行に巻けるように均らさなきゃならんって、なんか変な気がする。ワシャそういう”手動”でマニュアル方式がむしろ好きだけど、トローリングリール買うような金持ち相手ならオートマチックにしてその分値段に反映させて錢引っ張ってくるべきじゃないの?って思ったりして。1950年代半ばの登場だから特許も切れてるだろうし、PENNのインターナショナルシリーズの焼き直しでしかないトローリングリール作ってるメーカーさん達は頑張ってみたらどうですかね?(特許切れる前のはずだけどオリムがマルパクしてる「レベルライン胴突」はさすがにパテント料払ってるよね?)

 で、もいっちょが泣く子も黙るPENNブランドを代表する名機。セネターシリーズの末っ子「セネター1/0」。

 まあセネターつったら、使いもせんのに我が家の蔵にも9/0、4/0が転がってるぐらいのもんで、この手のスタードラグ仕様の大型両軸リールの決定版である。特徴としては、以前にも書いたけど樹脂製(初期はベークライト、今時の機種はドライカーボン等)の側板や本体プレートを金属リングでサンドイッチした堅牢な構造。とにかくこの構造は真似されまくっていて、面白いところではガルシアミッチェルもモロパクしてて、ただそこはミッチェル、セネターパクっても白い樹脂を使っててなんかオシャレなの。PENNが作ったミッチェルスパイラルベベル機みたいな720系の裏返しでパクってもそれぞれ味わいが出るのが、さすぺン、さすミッチェというところか。スピニングリールを工業製品として普及させたのが「300」のミッチェルなら、樹脂ボディーを金属板で補強した丈夫な両軸受けリールを工業製品として普及させたのが「セネター」や「ロングビーチ」のPENNなんだろうと思うと、なかなかに両メーカーとも偉大な足跡を残している。ワシPENNについてはスピンフィッシャーシリーズという、PENN社としては”本業”の両軸ではないところから入ったくちで、スピニングの世界ではPENNはもうひとつマイナー感があって悔しいところだけど、両軸に関しては全くもって”世界のPENN”であると、従来型PENN両軸機をいじくってて誇らしく感じるところである。ワシPENNの関係者でも何でもないけどな。

 というなかで、PENN小型機をルアー投げる釣りで使おうというときに、候補をピックアップした中にもセネター1/0は入ってきてはいた。いたけど、本来大型魚を狙うごっつい道具という性格であり、そのための堅牢な作りなわけで、小型機にセネター選ぶ利点はあんまりない。小型機で釣るような魚相手ならそれこそそういう目的で作られているライトタックルな「27モノフィル」や「180ベイマスター」が適切で、セネターは過剰性能だろうというもの。まあ、夢のハタ系10キロオーバーとかPE80ポンド道糸でドラグ締めて狙うとかならありかもだけど、いざ買おうとしても同じように小型機にセネターの性能はいらんだろうと皆考えるのか、中古の球数が少ない上に、たまに出てると良いお値段してるので確保対象からは外していた。いたけど、明らかに安く落札できそうな弾が出てきたので、開始価格3000円にちょっと色つけて入札しておいたら入札ワシだけで確保できてしまった。この個体、程度も良くて機関良好、メッキの剥げも無いぐらいなんだけど、足の裏にデカデカと前の持ち主が名字を彫ってあるという明確な瑕疵があって、今時この手のリールを買う層はコレクターだろうから、こういうキズモノは狙い目だろうという読みがハマってくれた。ワシの手元に来たということは、コレに80ポンドPE巻いてゴツいの釣れという運命の導きだろう。実釣に使うのなら足の裏など竿に付けてたらそもそも見えんので関係ないし、そういうことにしておこう。

 ならば実釣仕様に整備せねばなるまいと分解整備。

 パカッと開けるとステンの銀色が多いなとか、小型機なのに140スクイダーや350レベルラインのような中型機でもそうだったけど、ピニオンギアの上部にリングが填めてあって、ゴリ巻きしてもスプールがハマる切り欠きの部分が欠けたりしないようになってたり、全体的に堅牢な仕様だけど、基本的な構造、設計自体はほぼ従来型PENN両軸機の基本形を蹈襲しているので、分解して増えた部品としては側板や本体の樹脂を挟む金属リングがサンドイッチ方式なので2枚から4枚に増えてるぐらいで部品数は多くなくシンプル。ただ、細かいところでもメインギアの直径が大きく材質が鋼製でピニオンはステンレスっぽい素材で丈夫そうとか、他にも気がつかないけど工夫はあるのかもしれない。ピニオンギアが割れる潰れるって相当な力でゴリ巻きしなきゃ起こらないはずだけど、スピニングでゴリ巻きは愚策だと思うけど、両軸機でゴリ巻きは状況によりありだと思うので、それに耐えうる仕様だと認識しておくのはいざというときの判断材料になるだろう。

 実釣想定でちょっといじったのがドラグとブレーキで、ドラグは革パッドがまだしなやかさを保ってて生きていたけど、ここは”HT-100”カーボンパッド一択だろう。スピンフィッシャーの7500ssとかのドラグパッドが使える。ついでにメインギア下の赤繊維ワッシャーはテフロン製に交換。ブレーキ無しでぶん投げるのは難しいというのがお恥ずかしいけど実態なので、スプールは真鍮にクロームメッキの金属スプールなので側板にとりあえずネオジム磁石2個ウレタン接着剤でくっつけて、投げてみて調整の予定。アルミより真鍮の方が、良伝導体の銅主体なのでマグブレーキは効きやすいのか?

 って感じで、組み上げて80ポンドナイロン下巻きに、ロウニンアジ用にしこたま用意してた7500ss用のスプールから80ポンドのPE引っぺがしてとりあえず巻いてみた。ラインシステムをどう組むか、ロウニンアジ用をそのままだとルアーが泳がない気もするのでどうするかとかもうちょっと悩んでみるけど、とりあえず釣り場に持ち出す用意はできつつある。

 350レベルラインは中身見て面白かったということでワシ的には用済みなので、売れもせんだろうからいじってみたい人はご連絡ください。送料負担していただければお譲りします。1/0セネターのほうは、どうもコイツでゴツいのをやってしまえという流れのような気がするので、ラインシステムに加え竿をどうするかとかまだ詰めるべき所はあるけど、年内に釣り場に持ち込めるように準備していきたい。1/0セネターは久しぶりにガチムチの大物狙い臭のするリールで、ちょっと興奮させられている。3000円+送料の分ぐらいは既に楽しんだと思う。安いもんだゼ。