紀伊半島は雨が多い、そして暖かい。川崎在住時には公園で食えるキノコを採りまくってた”キノコんちゅ”でもあるワシとしては、とうぜん紀伊半島のその気候ならキノコもモコモコ生えてきて、採り放題食い放題だろうと思っていたけど、まあキノコはよく食べているけど、それは買ってきた地場産の椎茸とエリンギであり、キノコ採りはぜんぜんである。なぜならちょっと前にも書いたとおり、紀伊半島の山林では林業が盛んで、山はだいたい私有地で許可無く勝手にキノコとって良いと思えず、さらに言うならスギやヒノキの林に生えるキノコはなくもないけど多くはないと聞くので手が出にくい。
| かつて狩った獲物 |
というワシが狩ることができるキノコであるヤマドリタケモドキとタマゴタケはドングリの森の落ち葉の林床からモコモコッと生えてくるキノコなので、当地でそういう場所が見あたらないので、キノコ狩りはしていなかった。やろうと思っても膝に使用制限がかかっていた状態だったので、川やら歩き回るので精一杯でキノコまで膝を使う余裕もなかった。
ただ、近所の整形外科で教えてもらった膝痛体操を続けて股やらふくらはぎやらの筋肉を鍛えたら、最近膝はだいぶ調子が良い。くわえて釣り場に行く途中にある神社の駐車スペースの隅の落ち葉から、神奈川の公園でも見慣れたキノコであるテングタケがニョコニョコと生えているのを見つけて心がときめいた。もちろんテングタケはTHE毒キノコっていうぐらいの代表的な毒キノコで、炙って置いておくとハエが食べに来て毒に当たって死ぬとか、そういう使われ方をしていたぐらいの毒キノコで、主な毒性分はムスカリンとイボテン産、ムッシモール。中毒すると吐いて下してという胃腸系をやられるのと、精神にも影響が出て酔っ払うとのこと。
学名はAmanita pantherina、中島らもファンなら先生が各種向精神性の薬物について書き記した名著「アマニタ・パンセリナ」を思い出すだろう。先生勘違いしてベニテングダケの学名だと書いてたけど、テングタケの学名(のカタカナ読み)です。テングタケについては毒性が強いし食べたという話は聞かないけど、ベニテングタケ(Amanita muscaria)については、白土三平先生が(疎開先の)長野では冬の食料が乏しいので、ベニテングタケも塩蔵して毒抜きして利用していた、オレは炙って食べる、旨みの強いキノコであるとか著書で書いておられた。ベニテングタケはわりと食べる話を聞く。ネットでも食べてみた系の記事で挑戦して、イボテン酸は強い旨み成分のアミノ酸なので美味しいけど、その後吐いて下して酔っ払ってという体験談が拾える。あんまり良い”酔い方”しないようだけど、まあこの手の向精神性のオクスリって”セッティング”と呼ばれる条件が整わないと、悪酔いするだけの”バットトリップ”に終わるというのはお約束だろう。アタるかどうかビクビクしながら食っても羽化登仙とはいかんわな。向精神性のオクスリなら何でも一緒、酒でも天にも昇るような酔い心地の甘露にもなれば、胃袋口から吐き出して丸洗いしたくなるような二日酔いもある。ベニテングタケは以外に古くから嗜まれてきたようでロシアの少数民族のシャーマンが霊的体験のために使ってたとも聞くし、バーサーカー(狂戦士)の元祖であるヴァイキングの連中も、恐怖感を吹き飛ばすべくキメて戦場におもむいたとか、幸村先生の「ヴィンランドサガ」でもそういう表現は出てくるし、「スーパーマリオブラザーズ」のパワーアップキノコもそういうベニテングタケ伝説に基づいているとワシャ分析している。実は人間以外だと意外に食うやついるようで、ちょっと前に北海道でエゾジカやエゾリスがベニテングタケをモリモリ食べてることが報告されて、酔っ払わないのか何らかの抵抗力があるのか?雪の下からベニテングタケをほじくり出してトナカイが食べている映像を見た記憶もあるけど、そのトナカイの目は血走っていてキマってたように思う。北の方のベニテングタケはキマる成分配合なのか?ベニテングタケ一種類じゃないかもって話で、シベリア・ベーリング地域から各地に広がっていく過程でいくつかのタイプに分かれていったらしい。まあ、日本のベニテングタケ、テングタケでは気持ちよくなれないから食べちゃダメって考えておけばいいんだろう。日本でキメられるキノコといえばシロシビン配合のワライタケが馬糞とかに生えてくるけど、麻薬原料植物に指定されているので、中毒リスクに加えてしょっ引かれるリスクもあるのでダメ絶対!って話だな。しっかし、キノコはどう考えても植物じゃねーだろ、正確に言葉を限定するために詰めすぎて麻薬の原料になりそうなのはガマの毒もキノコ(真菌類)もあるのに植物ってまとめてしまう文系のお賢い人のアホさが露呈してしまっているように感じるのはワシだけか?シロシピンは幻覚剤の代表格で、その昔マヤ文明の末裔のメキシコ先住民のシャーマンであるマリア・サビーナ婆ちゃんが幻覚キノコの扱いに長けていることで名をはせていて、ディズニーだのジョンレノンだのも彼女の案内でトリップしたそうな。まあ米国内で違法なLSDやってますとは言いにくいので、アリバイ作りの面もあったんだろうなと思うけど、ディスニー映画「ファンタジア」やビートルズの「Lucy in the Sky with Diamonds」が幻覚剤の影響で花開いたサイケデリックカルチャーの代表として後世に伝わっているとかいないとか。武一先生の「コブラ」でソード人の敵方の仕掛けてくる精神攻撃が、視覚と聴覚を入れ替えるというやつで、音が見えるというブッ飛んだ世界をマンガで表現していて、武一先生の発想力に恐れ入ってたけど、後年、幻覚剤の見せる”ビジョン”でそういう事例があると知って、先生直接キメたのか文献で知ったのか、いずれにせよコブラもまたサイケな作品だと言えよう。ホントか?
っていう、いろんなエピソードを頭にうかべて心ときめかせたっていうだけではなく、テングタケってワシの狩るキノコ二種と発生時期、発生場所が似ているので、これは探せば生えてるのではないか?とキノコんちゅのゴーストがささやくのよ。ってことで、長袖長ズボンにバフガードと帽子に軍手、30%ディードに蚊取り線香で武装して、神社の周りの鎮守の森を探索することにした。神社の敷地内でキノコ採りして良いかどうかは後で確認とるとして、まずは偵察である。
とりあえず、駐車場の隅にはテングタケ以外にもモコモコ生えていた。写真上の、シメジみたいな茶色くていかにも食えそうなキノコに素人は手を出してはいけない。なぜならこんな見た目のキノコには有毒種も食用種もなんぼでもあるからである。食菌のハタケシメジに見えると言えば見えるし、代表的な毒キノコであるカキシメジにも見えるっちゃみえる。その2つ以外にも素人目に似たような種類はいっぱいあって、まず分からん。東北時代に地元の人に連れられてキノコ狩りに行って、ムラサキシメジとクリタケを収穫してとても楽しかったのを憶えているけど、クリタケそっくりさんのニガクリタケという毒キノコとどう判別してるのか聞いたら「見分け方はあると言えばあるけど、基本的に例年生えてくる場所で出てくるの以外は手を出さない」と仰っていて、そういう経験則も交えて総合的に安全策で行くべきなのが、中毒と隣り合わせのキノコ狩りという楽しみなのだろうと思わされた。公園に生えた白いキノコをバーベキューで焼いてくって中毒とか論外だけど、そのぐらい慎重にいかないと最悪死ぬ。白いキノコって悪名高い「殺しの天使」ドクツルタケとシロタマゴテングタケの致死毒ツートップに始まり毒キノコ列伝状態で、外来種で九州時代にベランダのプランターに生えたこともあるオオシロカラカサタケなんてのは最近公園とかで普通に見られるようになったらしいけどバーベキューで食うなよって話で、バカに生まれたやつは罰ゲームの多い人生を歩まなきゃならんってことだろう。賢い皆様は君子危うきに近寄らずでおねがいしやす。白いキノコで食えるのもあるけどワシなら絶対手をださん。曖昧模糊として線引きが難しい多様性に富む生物を相手にミスったときに死ぬリスクがある判断を、せんでもいいのにあえてする必要性は感じない(ワシ専門の魚ならある程度リスク込みでやれる自負はあるけどな。)。
で、下の写真のころっと可愛いのが、どうも柄は太いし表面網目模様あるし、そこそこ大きいしでヤマドリタケモドキのように思えるけど、ここから成長できなくなってしまったようで、大きくなったら収穫しようとちょくちょく見てたけど、結局この大きさのまま腐ってしまった。でも、この駐車場で出るときは出そうに思うっていうのとテングタケが出るところと時期はやっぱりワシの狩る二種も可能性高そう。秋の初めというか夏の終わりのキノコのような気がする。いつも蚊取り線香で蚊と闘いながらの狩りだった印象。写真の時点で10月半ばで”夏の終わり”ってのも、夏以外のなにかが決定的に終わってる気がしてならんけどな。
で、参道の階段を上ってお参りしたりしつつ、鎮守の森の林道を蚊に追われながら”キノコ目”になりつつ探っていく。まあ、キノコ自体は生えている。そりゃ鎮守の森はその地域の元の植生が残ってることが多いってぐらいでスギヒノキばかりじゃない。なんか紀伊半島っぽい常緑照葉樹とやっぱりスギヒノキに混じってドングリのなる木があるようで、足下に小さいのが転がってたりして、落ち葉も林の中はフカフカと積もってる。ただ、素人には同定が難しそうな地味なキノコがほとんどで、どうにもこうにも。
サルノコシカケは、薬用とかで売れるかもと帰宅してからメルカリとかで調べてみたけど、千円するかどうかで鎮守の森でノコギリ引いて良いかどうかの確認の前にやる気が失せた。ちょっとオオッとなったのは、右の白くなった腐りかけのキノコで、大きさから言って”いぐち”の仲間の可能性が高いなと思ったけど、傘裏が棘状になってる特徴的には、香り高くて有名で、地域によっては珍重するコウタケの可能性もあったりして?ちょっと崩れかけで色も抜けてるので分からんけど真ん中が凹んでるのも特徴に一致する、コウタケ出るなら頑張ってみようかなと思わなくもない。とはいえ、食べられるキノコがワシャワシャ生えるという感じでもないので、たまに気が向いたら健康のために山道歩くかなという程度の低いテンションでいいのかな。写真撮れればいいや。食べるのは椎茸とエリンギがあるしな。と久しぶりにひと狩りするつもりがカラぶったので「あのブドウは酸っぱいに違いない」と言う狐。



0 件のコメント:
コメントを投稿