2023年9月13日水曜日

神か、武一先生を連れて行ったつまらん男さ

  「コブラ」で知られる寺沢武一先生が8日心筋梗塞で68歳で亡くなられたとの訃報が・・・謹んでお悔やみ申し上げます。

 刺青に宝の地図を隠すといえば、今時のマンガアニメ好きは「ゴールデンカムイ」を思い出すんだろうけど、ワシら昭和のオッサンオタクどもはコブラに出てくる、古代火星文明の秘宝のありかを示す地図が背中の刺青に隠された美人3姉妹を思い出すわけである。

 先生68歳とまだお若いことにネットのオタクどももちょっと驚いていた。何しろ齢50代のワシが小学生の頃に読んでた少年ジャンプにコブラは掲載されていたぐらいで、えらい若いときに描いてたんだと驚きを隠せない。それほど代表作の「コブラ」は完成度が高く、なんというかちょっと少年マンガにしては大人びていて、セクシーでカッコ良くて、渋いおっさんが執筆してたという印象を勝手に持っていた。

 なにしろ3姉妹のドミニクが普段着として履いているパンツは、今時のズボンを表すほうの”パンツ”ではなく、そのまんま下着というか水着っぽいデザインでかつ、当時言葉も一般的でなかった細い”Tバック”だったのである。田舎のクソがきであったワシら大興奮して、こんなエッチなもんマンガで描いてて怒られないのか?と驚愕すると共に件の品は「ドミニク線パンツ」という呼称で呼び交わしていたものだ。

 武一先生は好きなマンガ家を聞かれたらあげる一人なぐらいで、どうにも好きで当ブログでも「カゲロウ山」とかつい最近も人工知脳が人の相棒となる事例として「アーマロイド・レディ」を例に出したりと、小ネタにさせてもらっているし、影響も受けてきた(レディはアンドロイドに人の精神記憶をインストールしたもので人工知能とは違うか?)。

 なんというか、登場人物がともかく格好いいんだこれが。一番印象深い話をというと、金なんかより相棒や一族の誇りの方が価値があるっていう痺れる結末の「カゲロウ山」も候補だけど、アーマロイド・レディがコブラと宿敵クリスタルボーイの闘いの際に宇宙が先祖返りしたときに機械がレディ含め全て生物になってしまって闘いが終わって、生物のままならコブラとずっと恋人同士でいられるのに、その選択を捨て「この時を永遠に憶えておくわ」的な台詞をのたまうシーンかな。少年のころは全く理解できなかったけど、五十路越えると、その一瞬さえあれば何もいらないというぐらいの永遠にも勝る瞬間があったりするのも、それなりに分かるようになって、ワシも大人になりましたよ武一先生、と感慨深い。(追加註:読み直してみたら「この一瞬を胸にきざんでおくわ」だった、さすが本家の方がセンスが良い)

 コンピューターグラフィックスを作画に取り入れたりとかの先進的な取り組みにも積極的で、SF的な世界観とあわせてワクワクさせてくれたり、写真と作画を融合?させたガンドラゴンシリーズでは失礼ながらズッコケさせてもらったりもした。

 先生の作品のなかでは「コブラ」がダントツに人気で、いまでも多くの台詞がネットミーム的に使われていたりするけど、他の作品も総じて面白くて「ゴクウ」のあらゆる情報回線に接続可能な”神の目”とか、サイバーテロでインドの都市が電気止められたとかが現実に起こる時代になって、武一先生の作品世界の技術やらが現実になってきたなと、不安も覚えるけどわくわくもしてしまう。ちなみに”ドミニク線パンツ”は1990年代ぐらいには既に現実世界で流行を見ている。

 コブラの宿敵クリスタルボーイが敗北したときの「そんな手が残っていたとはな!」の台詞は結構使ってるけど、状況がよっぽど整わないとクリスタルボーイの台詞とは気付いてもらえないのが悩みの種。作中ではまさにコブラは手(拳)をサイコガンで飛ばしてエネルギー弾を無効化する特殊なクリスタルボーイの体に大穴開けたわけで、宿敵も洒落た台詞を吐きやがるんである。

 想い出しているといくらでも書けてしまうのでこの辺で切り上げよう。

 武一先生、面白いマンガをありがとう。あの世でコブラと「タルカロス」でも酌み交わしながら、安らかにお眠りください。

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