クランクベイトというのは、特定の餌生物に似せようとか、そういった発想から生まれたルアーではない。アメリカの淡水にあんなフグみたいな小魚がいるとは聞いたことがない。
ではなぜ、あの形が生まれたか、なぜフレッド・ヤング氏はあのズングリムックリな形にビッグOはじめすべてのクランクベイトの原型になるプラグを創造したのか。
端的に言えば機能があの形を欲したから、ということになるだろうか。強い浮力をもち、ブリブリと激しく動き水中に潜っていくために、あの形が必要だったのである。ルアーの場合多くの場面で釣り具として求められるのは、ぱっと見で「餌に似ている」というような”素人を釣るための要素”ではなく、どう動くか、どう水を動かすか、どう潜るか、どう浮くか、どんな音を出すか、どんな飛沫を上げるか、どんな光り方をするか、どんな大きさ形状か、というような機能である。そのルアーの持つ機能が、魚の本能や学習能力をして、いかに食いつかせたり頭突き食らわさせたりするかが重要で、「お魚そっくりでしょ」ってやることは、釣り人のやる気には多少関係してくるんだろうけど、機能的にはほとんど意味のないことであることは、古今東西史上最高のルアーデザイナーの一人であろうジャームス・ヘドン氏がルアーを売り始めるときにそう看破している。100年は昔の話である。クランクベイトにワシが求める機能は、最初浮いていて、引くと急速に潜り始め、激しい動きで、水を動かしつつ、多くの場合ラトルが音を出し、そうでなくてもハリやリングが音を出し、そういう動きをしながら一定の棚を引いてこられる。巻くのを止めると浮く。という機能である。
今回、ルアー図鑑うすしお味第69弾では、”根魚クランク”において1.5mを超えてさらに深い場所を攻められるクランクベイトについて書くわけだけど、深いところを狙うなら重いジグヘッドのワームやストンと沈む重いバイブレーション、あるいはメタルジグやクルクル、鉄板系など金物を使う方が一般的かもしれない。でもそれらのルアー達には一定の棚を引いてこられる性能”棚キープ力”とでもいうべき機能があまりない。引っ張ると浮いてくる。よほどゆっくり浮き上がらないように引くか、上げて下げてを繰り返すかしてやらないと深い棚を攻められない。ぶん投げて巻いてくるだけで、助走距離は必要だけどある程度一定の棚を攻められるというのは、シャッド型やミノー型も含めディープクランクをおいてほかにない。トローリングで深い棚を引いてくるのに使う「ダウンリガー」のように、重いオモリを使って、天秤で絡まないように注意しながら棚をとりつつ引っ張ってくるっていう手もありそうには思うし、写真の天秤?付きオモリで棚まで届けシャッドの大きめリップで棚キープするカマス狙いのシャッドキャロは実際に効果を上げているけど、正直仕掛け作るのも面倒くさければ、投げるとやっぱり絡むのも面倒くさい。ルアーを大きくできないなら仕方ないけど、デカくて浮力も強くてその分でデカいリップを備えてゴンゴン潜っていくディープクランクは、その点面倒くさくない。深いところで手返しよく広く探りたい。そのために手返しよく投げて巻いてを繰り返したい。派手な動きや音のアピール力で、やる気のある魚を寄せて食わせて勝負を決めたい。となると機能的にディープクランクが適任なのである。根魚や底物を陸っぱりで狙うならワームのジグヘッドリグ、とかメディアや他の釣り人が言ってたとしても、自分のやりたい釣りに求めるルアーの機能として、ワームじゃダメだとなったら、必要な機能を有するルアーを使うってだけの話である。わざわざやりにくいことをやる必要はない。なんにせよ近所漁港ではワームは各種フグ軍団に集中砲火をうけて釣りにならんしな。だからこそ”竿抜け”的に一般的な釣り人が狙えていない獲物がいるのだと思っている。
で、まずはピーナッツⅡDRの1.5mぐらいの潜行深度より深い、1.5~2mぐらいまでの棚用だけど、これはいろいろあるけど抜群に良いというかワシと相性の良いのがマジェンダ80のFとSP(サスペンド)、冒頭写真のチャイロマルハタもこいつが働いてくれた。基本浮き上がりの良いFモデルを使っているけど、フックをシングルに替えると海水中ではSPでもしっかり浮くのであんまり違いはないのかもしれない。このルアーの良いところは、とにかく釣れるっていう実績。釣り具で魚が釣れるのは大正義でありほかの要素は時にこだわることもあるけど、まあ無視していい要素。バスルアーなんだけど、シーバスにも効くと評判になってシーバスバージョンも売ってたように記憶している。ぶちゃけワシ、バスは釣ったことがない。シーバスには東京湾でも紀伊半島でも安定した実績があって、何が良いのか分からんけどとにかく魚が釣れるルアーなのは間違いない。動き的にはあまり前傾せず、バイブレーション的に細かい動きでラトル音響かせつつスルスルと潜っていく。形がクランクベイトっぽくなくやや細長いのも特徴か。重心移動版と固定重心版があって近距離戦では固定重心版を愛用しているけど、主にスロープ沖の砂底を広く狙うのに使うので根魚クランクでは重心移動版を使ってる。深い護岸の壁際でも魚が浮いてきていると想定する時には食わせる能力に信頼をおいて投げている。次は潜行深度2~3m強ぐらいまで、港内いくつかこいつらがちょうど良いポイントがあって、砂底の2~3mの場所、4m水深ぐらいの捨て石が入ってる護岸際、あたりで、捨て石入ってるところは着底させると、見えないところで引っ張ることになり根がかるのが避けにくいので、ちょい上の深棚を通す方針で行く。根掛かり覚悟の釣りはワシャまったくやる気がない。根掛かり覚悟しなきゃ釣れないような場所の魚はワシには釣れない魚なので居ないのと同じ。釣り場にゴミ放出するのを前提にした釣りなどするべきじゃないと思っている。
で、このあたりの水深のはいろいろあるんだろうけどスミスの「ハスティー3」(写真下)が巻き抵抗大きめなのが、逆に水中で砂底叩いているのかとか、どういう状態かわかりやすくて良い。あと、リップがみょーんと長いダウンディープラトリンファットラップ7(写真上)は急速潜行、足下ぎりぎりまで潜ったままという感じで個性的で良い。ほかにデュエルのフューズシリーズ試したときになんぼか買った「クランクマックス」と「クランクマックスjr」があるので、これもせっかくなので機会を見つけて使うつもり。で、”根魚クランク”と言いつつハモ、ヒラメ、マゴチ、アカエイ、ワニエソなんかの底物も狙いたく、そうすると5mちょいぐらいある水深の、いつも泳がせやってる砂底の底を叩く、あるいは水深6から7mの護岸沿いの石積み周辺、底は叩かずちょい上を通す。っていう5m以上の潜行能力のディープクランクが必要になってくる。
ま、ワシらジ様にとって深く潜るマグナムディープなクランクと言えば、ティムコ「マッドペッパーマグナム」とノーマン「DD22」が双璧かなと、バス釣りで琵琶湖のディープを攻めた経験などないんだけど、カヤックシーバスで一定の深棚引いてくるのに良いんじゃないかとか試したので蔵に眠ってて、まずはこいつらを試してみた。どちらも重量あってかつマッドペッパーには重心移動まで入ってるので飛距離はでるし、巻き始めるとゴリゴリ潜っていって頼もしい。頼もしいんだけど思ったほどは潜ってくれない。だいたい5mぐらいの水深だと思う場所で底を叩く感触がない。意外に底叩いてても深いと分からんとかかと、3m水深ぐらいで試すと普通に底をコツコツしているのが、特にDD22はよく分かる感じで、明らかに5m潜っていない。いろいろ理由を考えたけど、カタログスペックでは16LBナイロン使用時でそのぐらい潜るとのことだけど、カタログスペックの前提条件といろいろ違う条件で使っているので実力を発揮させられていないのだろうと思う。その要因として1つには飛距離が足りんってのがあって、ワシ的にはぶん投げて珍しく遠投してた部類なれど、近距離特化型のワシの遠投ではたかがしれてるだろう。飛距離が関係していることを裏付けるのは、護岸沿いテクトロしていくとしばらくして着底して底たたき始めることからも分かる。次にリーダーが太いことで、バス釣りなら16LB直結なんだろうけど、ハモだのクエだのヒラメだのといった歯のきっつい魚も想定すると、リーダーは道糸直結とは行かず、8号フロロを入れて先端に抜けない輪っか作ったザイロンかぶせて1回固結びの”歯ずれ対策”仕様にしている。この太いリーダーも当然足枷になってるだろう。もう一つ地味に効いてるかも?なのが海水中だとSP(サスペンド)設定のルアーも浮くって話と関係あるけど、海水中だと浮力が強いってのも案外効いてるのかも。そのへん本当はどうなんだろう?どなたか知見のある方ご教授いただけると助かります。でもって、今時ならもっと潜るディープクランクぐらいあるだろ?ってネットで調べてみたらありました。ただ、最近のそういうウルトラディープなマグナムクランクの使い方って、エレキでトローリングするいわゆる「ドラッギング」ってやつを想定しているのも多いようで、キャスティングで5m以上となると種類は限られているようだ。なんというかドラッギングって何だかなぁってテクニックで、そんなことするならトローリングをルール上ありにして、砲丸の球にクリップ付けたようなやつとか、各種潜行板とかの”ダウンリガー”でも使えば良いのにと思わなくもない。まあダウンリガーの類いは陸っぱりでは使いにくいので、単体で深く潜るディープクランクが開発されるのはありがたいんだけどな。ちなみにホッパーストッパー(のちにヘドンに移籍)「ヘルベンダー」のでっかいサイズは米本国では潜行板扱いでハリ無しで売ってるダウンリガーモデル「W08-D」もあってなかなかに趣がある。道糸長く出してのトローリングだと20m以上潜らせられるんだとか。その名のとおり地獄の底まで餌をお届けしますって感じか。
ということで、今時の深潜りするクランクをいくつか買ってみた。ダイワ「スティーズクランク5」は5.2m、デュオ「レアリスクランクG87 20A」は6m以上、デュエル「バレットクランク7+」は7m以上の深さをキャスティングで狙えるというカタログスペックになっている。写真一番上が大きさ比較においたマッドペッパーマグナムで決して小さくはないルアーだけど、潜行深度5m越えのビッククランクがいかにデカいかおわかりいただけるだろう。さて投げてみよう、ってなってさすがにこいつらは普通のバスロッドクラスの道具立てでは投げられん。バレットクランクとか2oz(≓50グラム)クラスであり、当然それにみあったデカいリップとなれば引き抵抗もかなりのものが想定される。まあ、我が家の”蔵”にはいろんな道具が備蓄してあって、なぜ買ったのか本人も全く憶えがない、トラウト・サーモンロッドではない、30LBクラスのガチムチのサーモンロッドが1本転がってたので竿はそいつで行く。フェンウィック「ランカーギアプラスLP89CH-2J」、8.9フィート、ルアーウェイト28~70g、ライン15~30LB、グラスベースでバットにグラファイトを重ねてあるという太く頼もしい剛竿。リールはパーミングカップの80年代初頭モデルのABU「アンバサダー6500C」、ラインはとりあえすは着底とかの感触の分かりやすさと潜りやすさを重視して、2号のファイヤーライン。リーダーはフロロ8号に先っちょザイロンで耐歯ズレ処理。
ぶん投げてきました。単純明快で深く潜るためにはデカい潜行板であるデカいリップが必要で、それを受け止める土台である本体もデカい必要があり、設計で多少巻きが軽いとか、飛距離が出るとかは味付けできるにしても、ほぼデカい本体とそれに見合う面積の広いでかいリップが機能を決めている。結局5m強の水深のポイントでぶん投げて巻いて底がとれたのは、一番デカいバレットクランク7+だけだった。まあカタログスペック通りの順番でもあり、そう考えると潜る深さはある程度そのルアーの持つ能力で違ってくるので、事前にどこまで潜るか知っておけば、水深にあわせて底から1mのちょい上を通すとかの小技もできるように思う。ただ9フィート近い長竿でぶん投げるのは結構しんどい。バスロッドが8フィートぐらいまでしかないのは、初期の”フリッピング”ではそれ以上の長竿が使われてリールがほとんど意味のないものになってたので、スポンサーがそういう投げない釣りをいやがったのかレギュレーションで長さ制限したからだと思うけど、実際問題デカいバスルアーを投げるのに使われている7~8フィートの竿は体力的には正しい選択なのかも。とはいえ1日投げ続けるような釣り方するわけではなく、まずめ時のせいぜい2時間なら頑張って投げろって話だろう。にしても、7m以上潜るというバレットクランク7+で5mから6mぐらいが限界というのは、やはり”ワシの釣りの現場”においてはカタログスペックほどは潜ってくれていない。ないならあるもので勝負するんだろうけど、バレットクランク以上に容赦なくデカいリップがデカい本体からつきだしているクランクが、本場米国にはあるようで、ワシの大好きなピーナッツの親元であるストライクキング社の「エクストラディープダイビングクランクベイト10XD」が25フィート(7.62m)以上もぐるよってなってる。巻くのクッソ重そうではあるけど、お値打ちの出物があったら確保したいところ。ちなみにバレットクランク7+は新品で買った。入手も楽だし5m超のワシの主戦力と考えちょります。
なんとか、他に深い海の底の一定の棚を派手なアピール力のあるルアーを引いてくる方法がないものか?と考えるんだけど、シンキングのプラグでさらに潜っていくルアーはどうや?って考えると、ちょっといけそうにも思うけど、そのルアーの通せるドンピシャの深度ならいいけど、さらに潜って行ってしまうと、底の砂にリップ突っ込ませてつんのめってまともに動いていないような状態になりかねない。フローティングなら止めりゃ浮いてくるし引く速度で調整もできるけど、シンキングで5m以深にドボンと沈んでくれるようなルアーを一定の棚引いてくるってのはどうにもイメージできない。船使って良いならそれこそダウンリガートローリングで、動きの良いフローティングミノーとか引いてしまえば良いのでやりようはあるけど、陸っぱりだと、いまのところディープクランクで護岸に膝ついてグリグリと男巻きするのが一番楽かな。ということで引き続き投げて巻きつつ釣り場で考えるんだろうなと思おもっちょります。
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