2025年11月15日土曜日

見せてもらおうか、チャットGPTの性能とやらを

  先週修理と発送の様子をネタにしたロッドは無事タイ王国の釣りの上手い人の手元に届いたようで、早速近所の海に釣りに行ったようで釣果報告が来ている。夜討ち朝駆けとやりたい放題の様子。

 右のヒメジ系は以前ネタにしたこともあるヨメヒメジ。左のアカマツカサ系というかエビスダイ系のは似たのが多くてやや自信ないけど、別写真とかもあわせて見るとおそらくテリエビスだろうと同定した。やや低い体高が一番の特徴でニジエビス、ヒメエビスと迷うけど背びれの膜の色でテリエビスとみた。

 っていう同定結果を伝えたところ、釣りの上手い人はネットで簡単に使える生成AI(人工知能)の代表的なものであるチャットGPTに写真示して聞いたところホウセキキントキだと回答しているとのこと。キントキ系は鰭の付き方が特徴的だからまったく違っていて別系統だろ?似てるのは夜桟橋とかから釣れて色味が赤白ってところぐらいでアホかと。おそらく現時点のAIの写真判定って大まかな形と配色程度しかみてないんだろうと思う。最近ネットフリマとかでルアーの釣書をAIに書かせてると思われる事例が散見されるようになってきて、「緑と黄色で小魚の形が特徴です」とか、まるで意味をなさない情報しかなくて、そんなもん見れば分かるから説明ない方がマシって思わされるけど、生き物の同定でも同様に、素人が良くやるなんか色と形が似てるからコレだろうっていう「見分け方」のレベルで、まったくアテにならないどころか、危険ですらあるので注意喚起しておきたい。具体的になにが危険かというと、生物でも食べることを前提とした場合に、間違えると食中毒やらで下手すると命取りになるからで、例えばツムギハゼ釣ってコレ食えるのかなと写真でAIに問い合わせて「マハゼです、日本各地の沿岸や河口部に生息し、天ぷらなどで美味な魚です」って回答を信じて死んでもだれも責任取ってくれないし取りようもないって話で、もっとヤバいのが先日もネタにしたキノコの世界で、この秋もツキヨタケが猛威を振るってるけど、あんなもん裂いて黒い部分を確認しても、食べられるキノコと混生してたりして全部裂いてる暇などないだろうしで混じってしまい当たるぐらいの難しい判定を、学習するといってもネットにある情報を広く一般的に集めることしかできないだろうAIに、個別具体的な事象についてそれぞれ判断ってのは無理があるだろう。結局責任を持って判断できる人間、多くの場合は識者に頼ることになるだろうけど、最終的にその者を信じるかどうか含め自分自身の判断でないと同じ死ぬにしても納得イカンと思うけどどうだろう。ネットの言うことを鵜呑みにして死んだらバカくせぇと思うよねって話。

 ただどのぐらい現時点で使えるのか使えないのか、あるいは質問の仕方しだいでどうにかならないか?ちょっと興味が湧いたのでチャットGPTは自分のパソコンにソフトを落とさなくても使えるようなので試してみた。お手並み拝見ってところである。

 まずはワシがテリエビスって同定したやつ。この写真の方が各鰭が開いていて同定には向いているだろう。実際のやりとりの際の画面を取り込んだのを適当に切り貼りしてます。問おう「この魚は何ですか?」 

 





 








 で回答は、以下


















    






   

 言ってることがだいぶおかしい。ミギマキとは似ても似つかんやろって突っ込みは捨ておいて、最初ミギマキに似てるといった舌の根も乾かんうちに、「より正確に言うと、~ではなく、~エビスダイ科の魚である可能性が高いです。」と、まあAIに舌があるのか知らんけど、どっちやねんっていう煮え切らない回答ぶり。まあ最終候補にヨスジエビスっていうエビスダイ系っぽい名前が出てきたのは上出来か?でも、どんな魚だっけってヨスジエビスを検索してもそんな和名の魚はヒットしてこない。学名はこういうとき極めて役に立って、お作法どおりの斜字体じゃないにしても書いてあるので大西洋の魚のだというのが分かる。っていうか手元の「魚の分類の図鑑」調べたらエビスダイ科って日本じゃ呼ばないはずでイットウダイ科のことだろうけど、英語圏のネット情報から学習していて英語名の直訳で和名とか科名をでっち上げてる気配がある。あと、整理された特徴だとこんなもんイットウダイ科のほとんどがあてはまるし、他にもいっぱいあてはまるだろう。同定の基準たり得ない。

 とりあえず、エビスダイ科は日本語ではイットウダイ科のことだと解釈して、追加の質問というか突っ込みを入れてみた。
























  

 はいそのとおりですって、素直な回答と「とても鋭いご指摘です」と使用者に忖度した言い回しをいただいた。けど、テリエビスの特徴が、だからその程度では同定できないんだってっていう状態なのは変わらずで、まあこりゃダメだ。一番下に「必ずしも正しいとは限りません」と逃げ口上を書いてあるけど、もっとデカく書いておいて欲しいお粗末さと言って良いだろう。

 とはいえ、エビスダイ系なんていうややこしいマイナーな魚ではネット上の参考情報も限られるだろうし、この1件をもってダメ判定はかわいそうだろう。ということで2問目。スズキ(セイゴ)でいってみました。


 おおっ、写真からの情報での判定としては充分及第点あげていい回答。学名も斜字体になってる。やっぱり日本語の情報がネットに多い事柄ほど回答の精度があがるんだろう。沢山データを取り込んで学習すればするほど”かしこく”なっていくという学習型のAIの特性を考えれば当然か。ただ、和名としてマルスズキを使っているのはこの場合減点。釣り人が普通にヒラスズキとの対比としてマルスズキの呼称を使うのは、既に巷間に流布しておりワシャ問題ないと思ってるけど、分類学的には最近”標準和名”は最初に何らかの形で報告を上げた学者が提唱したのを使うという、標準ってなんだ?っていう根本から考えておかしな慣習になっていて、スズキでも何でもないニュージーランドとかにいるカウアイArripis georgianusの標準和名にマルスズキを提唱したマヌケがいて、マルスズキっていうと混同が起こりかねないのである。マルスズキって図鑑には載ってなくてもそう呼ばれてる魚が既に居るならややこしいことになるって分からんだんかねって話。あとヒラスズキは磯でしか釣れんわけじゃないし逆も真なり。一般的なイメージに引っ張られすぎ。

 ついでにもういっちょ、引っかけ問題で遊ばせてもらう。

 面白いぐらい、ものみごとに引っかかってギンガメアジとの回答。ツッコミ入れると「とても鋭い観察ですね」とおべんちゃらを言いつつ、したり顔で解説を入れてくれるのが、むしろ人間くさく感じるぐらいで趣深い。
 
 存分に楽しませてもらったのでお礼を言ったら、ご丁寧な返事をくれたけど、まあ釣れた魚が何か分からんくても今のレベルのAIには聞かんわなというのが正直な感想。


 







 ネット上には、魚の同定に特化したアプリケーションソフトも出始めたように見受けられるけど、ベースが学習型AIなのは良いとして、「みんなで精度を上げていきましょう」っていう方式であり、その方式は結局は責任の所在が明確ではないので、ある程度は便利に使えるモノにはなるだろうし、普通の利用者にはそれで充分なんだろうけど、最終的には以前も書いたけどみんなで情報持ち寄るウィキペディア方式では情報の正確性には限度があると思うところ。誰かが責任もって、中坊博士監修の検索図鑑の同定ポイントをAIに学習させた上で最新の論文とかで明らかになった事項など情報を更新していく方式でないと、とどのつまり”自身の名に賭けて”書いてないお気楽なフワついた書き込みが精度を下げていくのは避けられないと思う。ワシの書いてる記事も匿名ではあるけど、ネット上のナマジという人格はそれはそれでもうある程度独立して確立された人格になりつつあるので、ナマジはナマジの名に恥じぬように書いているつもりである。あと、チャットGPTとやりとりしていて一番問題だと思ったのは、注意書きはあるにしても、分からんことを素直に分からないと言わずに適当な回答を生成してしまうところにあるようにも感じた。いつも口を酸っぱくして書いているけど、生物の世界では線引きができない事象がでてくるので「分かりません」っていうのも一つの立派な回答だと思うので、そこはAIなら設定でどうとでもなるだろうから今すぐ改善した方が良いのになとネットの片隅で思いましたとさ。ソクラテス先生も孔子先生も草葉の陰から同意してくれるだろう。キノコの世界では「分からないキノコは食わない」というのが判断方法の原則の一つになっていることもむべなるかなである。

 とはいえ、この手の技術の進歩の早さって驚くぐらいで、そのうち文句なしに使えるモノになっていくだろうってのは想像に難くない。なにしろ先行している画像映像生成の分野では、生成AIが作った映像が加工無しの映像と区別がつかないレベルにまで来ていて、ネットニュースやらで流れる映像にAI生成のものが紛れ込んでいても見てる側から判別しようがない。元データで加工の痕跡とか調べれば分かるのかもだけど、そんなもんすぐにそれもごまかすような技術は考えられるだろう。視覚だけじゃなく全ての感覚が人工知能の作り出した”仮想現実”にすり替えられている世界を描いた傑作SF映画「マトリックス」の世界に、我々はすでに片足ぐらい突っ込んでる気がしてならない。自分が見ているモノが現実なのか誰かの作り出した生成物なのか、これは夢なのか現なのか?胡蝶の夢みたいな話で知りようがないという悪夢じみた現実が既に眼前にある気色悪さ。「この目で見たモノしか信じない」とかほざくバカは視覚的心理的トリック程度でいともたやすく騙されるわけだけど、見たモノも聞いたモノも”フェイクニュース”まみれでまがい物だらけっていう世界で、なにを信じたら良いのか?結局騙されるときはどうやっても騙されるので、その中でも自分が生きてきて学んだものやゴーストのささやきや論理的な思考、全てを動員して”多分大丈夫・・・かな?”、”これで騙されているなら仕方ない”という感覚が得られれば御の字ぐらいと考えておくしかない気がする。あぐらの上の愛猫の温もりがもし夢マボロシだとしてもオレはそれでも今このときの喜びのためなら騙されていても仕方ないと諦める。

 何しろホモサピは自分の信じたいモノを信じる生き物らしいので、信じる者は騙されているのである。すべてを疑え!

※この記事上げて数時間後、自分で読み直していて「GPT」を「GTP」と書いていることに気がつき修正。まずはテメエのオツムを疑えってか?ロウニンアジ用のポッパーじゃねぇっちゅーの。GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略称だとか、だからローマ字頭文字の略称は嫌いだっちゅうねん。

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