2024年8月24日土曜日

フューズ 起爆装置たり得るか?

  海外物の悪漢小説なんかで、敵の下っ端をつかまえた主人公が情報を聞き出すために銃を突きつけながら「早くしゃべったほうが身のためだぜ、オレの引き金は軽いぜ」とか脅すというシーンはありがちだけど、こういうすぐに撃っちまうこらえ性のない輩からの連想で、性の営みにおいてこらえ性がなくすぐに撃っちまう輩をあっちのスラングで「ヘヤートリガー」と言うそうな、髪の毛の重さで発射してしまう敏感な銃の引き金。で、逆に天井の染みを数えていればすぐ終わると聞いていたのにいつまで経っても終わらなくていい加減眠くなってしまうような輩は「ロングヒューズ」と言うんだそうな。導火線が長すぎてなかなかドカンと爆発しない爆弾のイメージか。導火線の意味から転じてヒューズには起爆装置の意味が生じ、いまでは一定以上の電流が流れると溶けて断線する安全装置の呼び名となっており、ボカンと爆発させていたのが、そうさせないようにと回路を切断する装置にと、同じ呼び名の装置の役目がほぼ逆転していて、なかなか面白い。

 で、デュエル社フューズ(FUZE)シリーズは、当然ながら釣果なりなんなりを爆発させるための起爆装置となるべく開発されたルア-達という意味の命名なんだろう。なかなか中二的センスで嫌いではない。

 実際に、海水温上昇対策と称して派手なミノーを選定する作業の中で、フューズ「マッディーミノー」になんか分からん良い魚が食ってきたことに端を発し、クランクによる底物・根魚狙いという”根魚クランク”にハマっていくことになり、マッディーミノー自体、ちょっと代替品が見あたらないぐらいの暴れん坊ミノーで個性的なルアーであることも有り、ワシの釣りに新たな火を付けてくれた起爆剤となってくれているのは確かである。

 マッディーミノーがこれだけ個性的なルアーなら同シリーズの他のルア-も気にならないと言えば嘘になる。気になったならまあ買うのである。っていうか買った。人気もなくクソ安いので、いつものとおりスルルのポチチである。ということで、今回”ルアー図鑑うすしお味”第67回は、デュエル社”フューズ”シリーズで行ってみます。

 フューズ軍団構成員としては、我らが「マッティーミノー」を筆頭に、水面系の「バナナボート」がペンシル、「ZZポップ」はその名の通りポッパー、潜るのが「クランクMAX」ディープダイビングクランク、「ロケットシャッド」が重心移動搭載のリップ長めのシャッド。「ジャミングバイブ」がバイブレーションで、バイブは後に「ソニックブレード」という細身のものも追加された。魚型のバイブのはやり始めがこの頃だったのだろう。「マッディーミノー」「バナナボート」「クランクMAX」「ジャミングバイブ」にはそれぞれjrサイズが設けられ、クランクMAXには逆にマグナムサイズも設けられたようだが、最終的なラインナップはそれで全部かやや心もとない。が、気にしても仕方ないノでそうだったとしておこう。ついでにワームもフックとセットで展開して出していたようだけど、これもここでは気にしないでおきたい。

 で「マッディーミノー」「マッディーミノーjr」については以前書いているので省略。まあ良く暴れる特殊な派手アピールミノーであるとだけ書いておこう。

 他の構成員達も個性派揃いの攻めたルアーではなかろうかと期待したけど、そこは肩すかしをくらった。ただ、悪いデキではないように思う。「バナナボート」は斜め浮きのペンシルで、jrも含めて首振りもダイブもそつなくこなす優等生で、使いやすいペンシルに仕上がっている。ただこのルアーじゃなければ、という特別な特徴は無いように思う。でも優等生なので、バナナ型の形状と口の窪みは「L-ブルー クイックドッグペンシル100F」に引き継がれていっている。っていうか金型一緒か?

 「ZZポップ」は意外に使ってみると芸達者で楽しい。短い体躯を生かしての、飛沫吐きながら移動距離の短い首振りが得意で、小場所でじっくり狙うのならその性格が生きてくるのではないだろうか。ただ、そういう使い方しそうな水面系の釣り人にはあんまりウケけそうな見た目ではないところが欠点か。個性を分かって使う分には楽しめそうなルアーではある。

 「クランクMAX」シリーズは、「オーソドックスなフォルムに、遠投性、ヒラ打ち、障害物回避性能を加速させる新機構「多段バラレルチャンバー」」を内蔵した、となってて何か重心移動的なラトルがジャラジャラ入っているけど、それがどうしたんだ?っていうぐらいに普通のディープクランク。ちなみにカタログ数値だとオリジナルが65mm、18gで潜行深度3.5m、ジュニアが55mm、12gで潜行深度2.5mだけど、そんなに潜ってない感じ。そして実際に使ってみると、「バスフラッペ」やら「フォーミュラット」の昔からの伝統のヨーヅリディープダイバーの長いリップに障害物回避性能を期待したけど、普通に根がかって特に回避してる感じがしてこない。ただ、蛎殻への根掛かりはルアーよりもリーダーが挟まる系の根掛かりが多いので、海水での使用に向いてないだけで通常の湖沼の石とかには根がかりにくいのかも?そのへんは分からんところではある。人気もなく安いのでガサッと買ったけど、砂底とか底を切って使うとか、根掛かり想定されない使い方で使うんだろうな。使えなくもないけど、特にどこかが優れてるってことははなく凡庸と言って良いかも。中古の値段が安いのは美点。  

「ロケットシャッド」は重心移動搭載で飛距離が売りのようだけど、まあこれも凡庸なシャッドかな。あんまり使い方がピンとこない。リップが長いのでグリグリ潜るのなら使い道もあるけど、1.5mぐらいしか潜らないようなので使いどころがイマイチ思い浮かばない。

 バイブレーションの「ジャミングバイブ」「ジャミングバイブjr」は低速時と高速時で動きが違うゼみたいなことがカタログに書かれているけど、低速時と高速時で動きの質がブレないなら凄いけど、変わるのが普通じゃないの?って感じで、ちょっと不安定で千鳥気味なアクションは面白いけど、もともと陸っぱりでバイブレーション使わないので、とりあえず買っただけって感じ。

 「ソニックブレード」は、ラトル音小さめのソリッドな感じの小型バイブで、マールアミーゴやレンジバイブより小型で細身にして差別化して隙間産業的に売りに出したのかなんなのか?これは昔から持っていて、東京湾の陸っぱりチヌ、キビレ狙いでソリッド系の小型バイブレーションで底を引いてくるっていう釣り方があるらしいので、中古屋でそれっぽいルアーを見つけて、名前も知らずにこれで良いかと買った代物で、実際にはキビレ狙うような東京湾の河口エリアで、ゴミだの蛎殻だのが沈んでるのにバイブレーション底引きとか金をドブに捨てるようなモノでアホかと思ったので、結局使わなかったので蔵に残っていた。 

 という感じで、90年代にもなってくると、各社自社製品だけである程度全分野カバーしたがるようになってきていて、フューズシリーズにもバス釣りのルアーが一揃い揃っている。ついでに竿まで出してた。その昔はダイワの村越氏とか深場を狙える重いジグがダイワにないので、仕方ないのでスピードジグ2連結とかやってたけど、各社が全タイプをおさえてる必要なんてあるんかね?と常々思う。例えば忠さんスプーンの「アートフィッシング」さんなんて、スプーンしか作ってないような”スプーン屋”だけど、だからこそスプーンについては信用できる。一揃い揃えるために、あからさまなパクリルアーを製品ラインナップに加えるとか見てて見苦しいしね。ある程度餅は餅屋で良いの作れるメーカーに任せて、ただでさえ狭い市場に我も我もと参入せずとも良いのにと思う。

 って感じで、90年代のバスプームの頃、自社製品の爆発的ヒットの起爆剤となるべく世に出されたフューズ軍団だけど、それなりには評価もされ売れたようではあるけど、爆発はせんかったようである。それでも「マッディーミノー」のような攻めた設計のルアーを世に出したし、バナナボートみたいに後世のルアーに引き継がれていったものもあり、頑張って作って売った価値はあったのではないだろうかと愚考する。

 ワシ的にはマッディーミノーはアタリだと思って今後活躍してくれるだろうと期待しているし、その他のルアーも悪くはないので、それなりに使って楽しめるだろう。バナナボートとZZポップはシーバス釣りとかでわりと遊べるかも。クランクMAXjrはそこそこ数買ってしまったので、根魚クランクに使用してみよう。

 使ってみたら、意外な実力を発揮して見直すような展開が、待ってはいないのかもだけど、普通に釣りはできるだろう。別に他のルア-達を使ってもいいからコイツらをあえて使う理由に乏しいけど、コイツらを使うのがまずい理由も特になさそうなので、なんかデュエルっぽいっていうかヨーヅリっぽいコイツらの個性を楽しむために選んでもバチはあたらんだろう。

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