ハイ、エッブリワン!今日も大森沼の底の方で楽しく溺れているかい?
なになに、もっと深く潜りたいけど自分で整備するのとかちょっと取っつきにくくて、って何を言ってるんだ良い若い者が!そんなモノは安ずるより有無を言わせないでレッツトライだ!!四の五の言う暇があったら手を動かす!分かったな?
そんな諸君達にちょうどよい教材となる事例があるので、今日はしっかりダイヤモンドリールの分解整備の方法を学んでいって欲しい。なお今回学ぶ方法は独自の”ナマジ流”なので、専門的な知識のある人からみたら、やっちゃダメなこともしてるかもしれんが、でもまああんま気にするな。ダイヤモンドリールはタフだから全く問題無いぜ。気軽にリピートアフターミーすれば、沼の底の濃い仲間にカモンジョイナスだぜ!
ということで始まりました、ダイヤモンドリール分解整備講座、講師のナマジでございます。若輩者で恐縮ですが本日は皆様よろしくお願いいたします。
はい、まずは準備が大事、何事も段取り上手に行きましょう。準備で何が大事かっていえば、
とにかく作業する台にする”お盆”これが無いなら分解整備するなっていうぐらいに重要。とにかく細かいパーツが転がってどっか行ってしまうのは、お盆の上に分解した部品を並べていくことでほぼ防げます。というかテキトーな場所でバラしてると組み上げたときに部品が足りなくなること必至。”ほぼ”と書いたのはそれでも”跳んで脱走”系の部品があって、バネがたまに外した途端にピョンと跳ねることもあるけど、鬼門と言って良いぐらいに跳ねるのがCクリップで、始めから跳ねることを見越して、リール本体内に跳ね落ちるような角度から外してやるのが吉。細かい部品をネジとかどこのだったか混ざってしまわないように分けるための小皿もあると便利、パーツクリーナー液に部品を泳がせるのにも小皿有用。でもって、分解するのに必要な工具、ドライバー、スパナ、六角レンチ、細かい作業用のペンチ、場合によってはトンカチなどを用意して、固まった古い油を落とすにはパーツクリーナーとパーツクリーナー用のお盆(油で汚れるので大きめの食品トレーで何回か使ったら捨ててる)と歯ブラシ、ちなみにパーツクリーナーは「モノタロウ」オリジナルのお徳な増量版を愛用。そして何はなくてもティッシュ、あとは綿棒、グリスとオイル、意外と重要なのがデジカメ、というところが主な準備するモノだけど、リールが手に入って道具達の準備ができたらハイ始めましょうとはいかない場合もあるので要注意。錆びまくってて固着が心配されるようなときは一旦CRCをぶっかけまくってビニール袋に突っ込んで結んで数日放置し固着部にCRCが浸透して外し易くなってから作業した方が良い場合もあったりする。まあ、どうにもならん固着はそうやってもどうにもならんけどな。大森だと外蹴りアウトスプールの「
マイクロセブン」と同時代の「
タックル5」のベールアームの反対側のローターに止めるネジと、ベールアームにラインローラーを留める、円錐に切り込み入れた形のナットが固着外せず後者はねじ切った前科あり。ここで大事な事は
固着は無理に外さない、ということか。ラインローラー固定でも使えるけどねじ切ってからベールアームごと再建とか難易度高いのでヤバそうに思ったら放置。あと、購入なり落札なりしたリールが届いて、ハンドル回したりするときも注意。ここでも動かなかったら無理に回さないことが大事。グリス固まったり変なところが腐蝕して固着してたりすると回したら壊れたということもあり得ます。
ということで、準備もできたのでダイヤモンドリールを代表する”標準機”だとワシャ感じている、大森スピニングと聞いて思い浮かぶような仕様がだいたい全部乗せで揃っている「タックルオートNo.2」を分解しつつ整備のコツやらその機構やらをご説明してみましょう。分解していくときに、先ほど準備するものとして意外と重要だと指摘したデジカメでバシバシ写真撮りつつ作業を進めてください。あとでブログネタにするから撮影が必要ってわけではなく、部品の填まってた位置関係、順序、特にバネがどこに掛かっていたかなんてのは、見たモノを全て記憶しておける直感映像記憶能力でも持ってなければ憶えていないモノで(我が姉が能力者でトランプの「神経衰弱」で一回めくった札は全て憶えていた)、あとでどう填めていいか分からなくなってしまうのはありがちなので、分解時デジカメで部品の填まり方とかを撮影しておいて組むときに分からなくなったら画像で確認する。コレ大事。デジカメのない時代に丸ABU分解して、ストッパーのラチェットをはさむ薄い板のついた爪をどう填めたら良いのか途方に暮れるのは、あの時代にリールをいじった人間の共通体験だったのではないだろうか?
まずは外し易いところから順番にという感じで進めていく、ハンドル外してスプール外して、でハンドルはこの時代のは分解できないので汚れをパーツクリーナーで飛ばして拭き取ってからグリスとオイルで適宜整備というかんじだけど、パーツクリーナーはイソヘキサンという油をとかす溶媒が主体にアルコールとガソリンという主成分のようで、イソヘキサンは樹脂に悪影響があるようなので、ハンドルノブは今のところ大丈夫だけど、細かいパーツやら接着面には使わない方が無難でCRCで磨いておくか樹脂OKのパーツクリーナーを使用するべきとのこと。ワシャハンドルとか金物と外せない場合を除いてCRCで汚れ落とすようにしている。
スプールは、裏面のドラグの”音だし”が写真撮っておかないと分からなくなりそうな構造で、バネからのびる針金部分を開いてスプール裏の出っ張りを挟んで、その挟んでできた隙間に音出しの爪の曲がった部分を刺してネジ止めしてある。
ドラグ周りは、ドラグパッド留めてるCクリップさえ外れればあとは外すだけなので、特に問題はないけど、ここでも順番を写真に収めていないと間違えるかも。良く考えていけば順番分かるはずではある。スプールと一緒に回る底か耳付きワッシャー、と軸に固定される小判型穴ワッシャーが交互に来て、その間にドラグパッドのグリス漬けの硬質フェルトが来るというドラグの基本構造が分かっていれば間違いようはない。スプール座面の赤いファイバーワッシャーはドラグの一部としても邪魔しない程度に機能してるハズだけど、邪魔しないようにするならもっっと摩擦の少ないテフロンとかが好適で、かつ長い期間においては赤いファイバーシートは経年劣化するのでテフロンワッシャーに交換できればしている。この時テフロンワッシャーの枚数変えたりして厚みを調整することで、ある程度ラインの巻き形状の調整もできる。薄くするとスプールが下がるのでそのぶん”前巻き”になる。ドラグパッドもパーツクリーナーにしばらく浸して拭き取って、また浸してと2,3回もやれば古い油が抜けてくるので、乾燥後新たにドラググリスを塗ってやる。
次に本体蓋をパカッと外してやると、オシュレーション(スプール上下)のクランクのピンが主軸に突き刺さってるのを抜けば、ハンドル軸のギアも抜けてくる。ピンが抜けると主軸もローター軸のギアから抜けて、ローター周りを分解する準備も整う。
ハンドル軸には力の掛かってくるギアの側に一個ボールベアリングが使われている。同時代の簡易版的なタックルオートではハンドル軸のギアは両側真鍮スリーブ受けとかで、それで小型機の巻きが重くなるとかは特に感じず、あんまりありがたみは感じたことはないけど、本体内なので錆びるような場所でもなく、あって悪いというほどではないと思っている。また大型機ではオシュレーションシステムがクランク方式ではなくハンドル軸の回転から歯車回して減速する方式らしいけど現物はまだ見たことがないので、見てみたいという症状が出かかってます。
ハンドル軸のギアをヌポっと抜くと、ローター軸のギア直上の歯に掛かる、逆転防止の爪とか、スイッチ関係が見えてくる。
右が逆転防止スイッチON状態で、本体にネジ止めされた”爪”はバネによってストッパーの歯に押しつけられている。左が逆転防止をOFFにして切った状態で、下げたスイッチから繋がる銅の部品が、爪の歯車に当たるのと反対側のお尻を引っかけて下げることにより、爪は歯車から離れてストッパーが掛かってない状態になり逆転するようになる。バネの巻いた部分はネジの下にあり片方の端が爪を引っかけて歯車に押しつける方向に効き、もう片方の端は本体上部の角の方に引っかかってる。オレンジで囲んだところがバネの各端。というようなややこしい部分は写真に撮っておく感じ。
主軸も抜けたら、ローターが外せるようになるのでギア含め外していく。ここでちょっと注意が必要なのは、大森スピニングの場合、ローターを留めているナットは逆ネジがほとんどなので、正ネジのつもりで「堅くて回らないな」とグイグイ締めてしまっていると、ネジ山が飛んだりしますのでご注意を。
でもってローターの下には、ベール反転蹴飛ばし関連と、ベアリング及びギアを押さえてる円盤、銅製の板を曲げた簡易ローターブレーキが見えてくる。
3箇所のネジを外して、抑えの円盤を取っ払うと、No.1以下のサイズではローター軸のギアの上部を引っ張れば、ギアがボールベアリングごとヌポっと抜けたんだけど、このNo.2ではまずベアリングを上に抜いておいてから、下の本体内部側からギアとストッパーの歯車を抜く方式。
たまにというか、ちょくちょく本体にローター軸のボールベアリングが固着してしまってる場合があって、錆が酷くなければここでも”無理に抜かない”で放置で良いんだけど、ベアリング錆々とかで抜かざるを得ない場合は、ベアリング壊して外しても規格品のボールベアリングなので本体壊さないようにだけ気をつけて、裏からドライバー当ててトンカチでどついて無理くり外したり、ドリルで穴開けて破壊してむしったりしても、新しいボールベアリングでクルックルに復活させられます。No.1、No.2サイズは共通で外径14mm、内径7mm、幅5mm、No.3サイズで外径24mm、外径9mm、幅7mm、いずれも国産のステンレスボールベアリングであれば数百円程度。ベアリング買うのはモノタロウ便利。
ローターもローター軸のギアも引っこ抜けたら、本体は残ってる逆転防止関係、爪はネジ止めされてるのを外し、スイッチ関係はEクリップで留まってるので外せばガラのみになる、その後はローター関連。
まずは、固着しているという触れ込みのラインローラーだけど、実は全く心配いらない。ローラーを留めているネジなりナットが固着している場合は前述したようにヤバい場合があるけど、ラインローラーにはルーロン系樹脂スリーブが入っているので、固着しているといっても真鍮スリーブやまして鉄系スリーブのように錆びて腐蝕して分かれがたく融合してしまっているような固着は起こり得ない。ルーロン系樹脂は錆びないので、CRCぶっかけたりしてつついてみたり捻ったり引っ張ったり、それでもダメならある程度柔軟性もあるので、金属部分との間に千枚通しでも突っ込んで変形させつつ引っぺがせば、剥がれてくれる。形は元に戻る。で腐蝕して緑青吹いて太ってしまってる真鍮にクロームメッキのラインローラーの内側、両サイドを目の細かいサンドペーパーなどで慎重に削り取って、本来あるべき寸法に戻してやって、引っかかりつつも回りそうになってきたら、
隙間にコンパウンド(ワシ歯磨き粉で代用してます)塗って輪ゴムでルーターと接続して回して当たりをとって滑らかな回転に仕上げておく。なんら問題無い状態に復活。グリス塗って回転が重いようならオイルをさして緩めてやってお好みの回転具合に。
ローターにはベールアーム側にベールスプリングとベール折り畳みのポッチが付いている。
ベールスプリングはトーション2回巻きで、使ってると数シーズンで折れるのはいかんともしがたいところ。バネは作ってもらうか自作して用意して、折れたら交換と割り切るしかない。釣り場で折れてもアウトスプールのリールなら、投げ終わったらいちいち手でベールをキッチリ位置まで返してやるのが面倒だけど釣りが全くできなくなるということはない。インスプールだと手で返せないので難しいけど、釣り場ではしかたないので左手でローターを回しつつベールを手動で起こして釣りしたこともあるけど、それに比べればアウトスプールの場合はなんぼかましである。
折り畳みのポッチがベールアーム基部の左上ぐらいにあるのが分かるだろうか?中にバネが入ってる先がふさがった筒がローターの穴に出たり入ったりする構造で、普段はちょっと出てベールアームをライン巻く位置で止めているんだけど、ポッチをローター内に押しこんでやると、ベールアームの止めが外れてライン巻く位置を越えてパタンとたためてコンパクトで携行や収納に便利。ハンドルさえたためない今時の高級スピニングさまのようにエラそうに手間やら場所をとらせない親切設計。
ローターのベールアームの反対側には、内蹴りで”オート”にベールを反転させるための機構が入っている。
上の写真がベールが返った状態で、下がベールを起こした状態。いずれも側面の蓋をハズした状態。
ベールを起こすと、ベールワイヤーのお尻の部品にある出っ張りが”リリースレバー”の棒の部分を右に押しやって、リリースレバーの下部がバネをたわませつつ下の写真の矢印のように先がローターの中心に向かって出っ張る。
その状態で、本体上部、ローターの下に入る部分の蹴飛ばしに、リリースレバー下部の先(写真×部)が回転して、まず軽くローターブレーキに当たりながら接触して、写真下の矢印と逆の方向に各部が動いて、ベールスプリングの力でカションとベールが返る。という仕組み。
ちなみに、このリリースレバーを左側に寄せているバネがあるんだけど、No.2についてたのは填めるときにちょっと苦戦した写真上のグルグル巻きタイプ。
大森熱患者には、小型機の眼鏡マークみたいな、バネの片方をネジ止めするタイプ(写真下)の方がなじみ深いかも。こちらの方が上下幅は必要としないけど、巻き数少ないので力と耐久性は劣るのかも。まあ、そのへん適材適所で必要な形に変えてあるんだろうなと思ってます。
以前いじった「スーパーセブンNo.3」でも上のグルグルバネだったので、内蹴りのNo.2とNo.3のサイズがグルグル、それ以下は眼鏡型、No.4以上は残念ながら触ったことないので不明。大森のこの辺の代表的機種でNo.4かNo.5あたりの大型機は一度触ってみたいところ(使うあてはないけど欲しいモンは欲しいんじゃ)。
という感じで、ローター周りも取っ払ったら分解は終了。
パーツクリーナーによる汚れ落とし洗浄作業は、固まってるグリスとかはマイナスドライバーで掘り取って、大まかな汚れをティッシュで拭いてから、パーツクリーナー液ぶっかけて、ひたすら歯ブラシでシュッシュと、細かい所は竹串やら爪やら使いつつ、汚れを落としていく。固まってないユルいグリス汚れならパーツクリーナーのスプレー圧で吹き飛ばせる。汚れが落ちたらセッセとティッシュで拭きまくってしばし乾燥という感じ。
細かい部品は、ローターならローター関係、ハンドル軸周りならハンドル軸周りと小皿に分けて、小皿にパーツクリーナー液をためて漬け置き洗いすると汚れを落としやすい。
オートベールにはややこしい機構が搭載されているわけではないので部品点数もそれほど多くないし紛らわしい部品もあまりない。あるとしたらベールアームを留めるネジと反対側のベールワイヤーのお尻を留めるネジが似てるぐらい、ハマらなかったら逆ってだけでたいしたことはない。ややこしい部品が多い機種を分解するときは、デジカメで判別できるように撮影しておくのは当然ながら、小皿多めに用意して混ざらないように気をつけるのが良いと思う。
で、4枚ある内の1枚がすでに剥がれて逸散してしてしまっている本体の銘板、残ってるのもどうせすぐ剥がれるだろうから、この機会に一回剥がしてしっかり接着し直そうということにした。
ボディーごとお湯で温めて、接着剤ユルくしてマイナスドライバーでも使って剥がすか?と思ってたら、パーツクリーナーで洗浄した時点で、劣化してた接着剤がトドメ刺されたのか、1枚かってに剥がれてしまい、他の2枚もマイナスドライバーでちょっと突いたらあっさり剥げた。接着剤は茶色く干からびたようになっていて、摘まんでペリペリと剥がせた。
さて、接着剤に何を使うか?はみ出した部分の拭き取り処理のしやすさとか美観面ではエポキシなんだけど、エポキシは堅い素材同士の接着はペリッと剥がれがち。接着力なら信頼の「コニシのSU」なんだけど、これは逆にはみ出すと乾いてもベタ付いていて始末が悪い。良いとこ取りしたような都合の良い接着剤ないかなと考えたけど思いつかなかったので、仕事を分担してもらうことにした。銘板中央付近にSUをベトッと付けて、端の方をグルッとエポキシで囲って接着。はみ出したエポキシは固まる前ならティッシュで綺麗に拭き取れる。はみ出さない程度に真ん中へんだけSUってのでも行けるカモだけど、端の接着剤が付いてない隙間に塩水入ってとかすると腐蝕の原因になりそうなので、接着はSUに防水はエポキシにまかせた。
これで、洗浄とお化粧直しも終わったので、あとは
”全ての金属面がグリスでグッチャリ”を基本にグリス盛り盛りでグリスシーリング。ローターの乗っかるベアリング周り、ハンドル基部、逆転スイッチ周りは浸水場所なのでとくにグリスを厚く盛ってグリスで浸水を防ぐぐらいの気合いで盛る。ドラグはドラググリス(「カルズ」が手に入らなくなったのでPENN純正をドラグ用に流用)、ベアリングと主軸周り、ラインローラーにはオイル追加で緩めに仕上げる。本体やらローター表面、ライン巻くまえのスプール表面にもグリスなすりつけておくと腐蝕防止になんぼか効くと思います。
コレにていっちょ上がり。あとはライン巻いて使うなり、棚に飾ってたまにクルクル回して「は~っ、いいっ!」とか見惚れるなりご自由にプリーズ。
グリスについてだけど、グリスは耐摩耗性潤滑性に優れたリール専用のモノを使うことが常識であり推奨されている。まあそれは基本正しいんだろう。
ただ、大森とPENNに関しては、そんなご大層なグリスを必要としない。海での使用時のタフさで有名な4桁時代のPENNスピンフィッシャーの出荷時のグリスはただの茶色い”芋グリス”だったけど、ギアが摩耗したとか経験が無い。大森スピニングも黎明期のデカい
コンパック「スーパーセブン」のように、亜鉛パーツがボロボロだったという例外除けば、そんな良いグリスが使われてなくてもギアが摩耗していた個体に当たったことがない。「リールのギアにはおよそ過剰なほどの耐久性」という評価も目にしたことがあるけど、それに頷きたくなるギアの丈夫さ。
だから、ワシは容赦なく耐塩水性重視でとあるPENN使いのかたがお薦めしていた青いマキシマのグリスを愛用している。ギアは何かグリスでさえあればもうそれで充分で、海で使っててやられるのが、浸水箇所であるローター基部からベアリングへの浸水でベアリングが錆びるっていうのが一番防ぎたいところで、それには耐塩水性に優れたグリスが適任だと考えている。マキシマの青グリス使うようになってから”ここの浸水はしょうがないので消耗品”と考えてたベアリングを交換した記憶があんまりない(水没させた714zで一回替えたか?)ぐらいなので、塩水による腐蝕防止にはかなり効いてる気がする。調子悪くなければ外回り注油以外は、良くてシーズン一回とかの”ほったらかし”で塩水で使うのなら、耐摩耗性とかに優れたグリスより、対塩性重視で、ギアはそもそも丈夫なモノを選ぶ。っていうのもありだと思っている。そういうギアがなければ仕方ないけど、何十年も前の設計の、ローター軸のギアが真鍮切削、ハンドル軸のギアが真鍮か鉄系の芯入り亜鉛鋳造の組み合わせのハイポイドフェースギアが充分そういうギアなのに、なにをいまさら多少の軽さだの回転性能だののために、グリスが適切でないと持たないようなヤワなギアを選ばなきゃならんのか理解に苦しむ。
何回も書いてるけど、某大手の2番艦モデルをうちの”釣りの上手い人”がもらって使ってて、以前の持ち主とあわせても数年程度でギアが摩耗したっていう実例を目にしている。冬には使わないし、渓流のルアーで上流に投げて巻いてくるのにそんな負荷かかるかよ?っていう使用状況なのに、一流メーカーの高級リール様がこのざまか!と思い出す度に腹が立つ。そんな昔の話もちだされても、今の最新鋭のリールは丈夫になってるって言われても、まったく信憑性がない。当時もそのリールは高級さに見合う丈夫さやらを充分持っているような説明だったはずで、最新鋭のリールも同じようなことを謳ってるのだろう。ただ、メーカー側が設定している、言い換えれば市場のお客さんが欲しがっている丈夫さのレベルがとんと上がってないなら、丈夫さが向上していることは期待ができない。要するに「軽い」だの「回転が滑らか」だのばかりが求めてられているなら、同じ丈夫さでより”軽く”より”滑らかな回転”にはするだろうけど、もっというならそれらを数字でハッタリ効かせるための目方やボールベアリング数は競うけど、丈夫さ耐久性は、ヘビーユーザーが数年でぶっ壊すような、素人の使用なら次のモデルチェンジぐらいまでは持てば良いっていうろくでもない基準からたいして変わってないハズである。丈夫にするぐらいならその分素材薄くして目方削った方が売れるので優先順位をそちらに振るのは自然というモノ。まあでも、高級機種は逆にそういう尖った性能のものが正しいのかもしれない。素人が荒っぽく使うような機種は丈夫に作られてるのかもしれない。それならそれで悪くはない。ワシャ買わんにしてもな。
ダイワ、シマノ最近はアフターサービスも充実させて道具を長く使う層にも気を使ってきているから、ワシしらんだけで、ひょっとしたら今の最新鋭のリールは本当に丈夫なのかもしれない。でもそれはまだ市場に投入されてから何十年と経ってはいないので、そういう長期間での耐久性の評価がなされていない、今までの傾向からすればまだまだワシにとっては信用できない程度のものである。信用を回復するのって難しいのよ。
じゃあ、なんで充分丈夫だった何十年も昔のハイポイドフェースギアのままでダメで、ギアの素材をジュラルミン(アルミ)系やらにして、ハンドル軸側のギアまで面倒臭い切削やら鍛造やらで強度稼いでまで軽くする必要があるのか。今回いじったオートベールは充分軽い、4桁PENNとかちょい(だいぶ?)重めだけど、その分耐久性も対塩性も信頼性が高いので、そこは利点が大きいし竿に付けて振ったとき意外に重くも感じないので受け入れられる、それらの充分余裕持った何十年って使えるギアを今のリールに入れれば良いはずである。でもそれをすると間違いなくオートベールのような軽快なリールには現代のスピニングは仕上がらないのである。なぜならこれほど”軽さ”にこだわっているにもかかわらず、根本的に重くなるボールベアリングの多用と瞬間的逆転防止機構の搭載がいまさらやめられなくなっているからである。オートベールのボールベアリングは2個、簡素版のタックルオートなら1個である、でも回転は素直に軽く滑らかで何の不足もない。瞬間的逆転防止機構の悪口はこれまでいくらでも書いてきたけど、しゃくったときにガチャガチャいわないっていう利点しかないのに、重いし繊細で扱いが面倒臭いしでろくなもんじゃない。
というなかで、妙に軽くしたギアがいかにして耐久性のない、ハイポイドフェースギアの特性をダメにした分かってない代物かを、ワシ、大森ハイポイドフェースギアをいじくってつらつらと眺めながら考えたので、感覚的で根拠になるようなデータが示せるわけじゃないけど、大きな考え方は外してない気がするので、書かせてもらおう。この辺からは、初心者向け整備方法講座ではまったくなく、沼の底のキチガイの妄執の世界である。初心者の皆様は”ソッ閉じ”でも許します。貴君にはまだ早い。読むなら心して読まれよ。
まずハイポイドフェースギアというのが何者かというところに迫ろうとすると、それ以外のギア方式から紐解きたくなる。このへんはTAKE先生の著書「TACKLE STUDY」にまとめられているので、そのおさらいである。まずは90度回転の軸を変換するとなったら、誰でもそうするだろうっていう円錐と円錐に真っ直ぐ歯を切った”ベベルギア方式”で、とても分かりやすい仕組みで力の伝達効率も良い。我が家にあるリールでは
丸ミッチェルがそう。欠点は主軸ハンドル軸が直交するので左右両用にできないのと、ややギアがシャーコシャーコとやかましめ。で、やかまし目のギアはベベルギアの歯を斜めに切った”スパイラルベベルギア方式”になると、ずいぶん滑らかな回転になる。我が家のリールでは
PENN720zがそう、力の伝達効率が良いのはベベルギア同様だけど、かさ歯車に斜めに歯を切るのは難しいらしいのと、ベベルギア同様左右両用にできないのが欠点。というスパイラルベベルギアの軸をズラしたようなのが”ハイポイドギア方式”で
PENNの3桁スピンフィッシャーの中大型機で使われているぐらいしかないレアな方式で、左右両用にできるし、ベベルギア系の長所は持ってるしなんだけど、双方のギアの歯を切って作るのがやはり面倒臭いようだ。もいっちょ左右両用ができるのがナマジも大好き”ウォームギア方式”で側面に斜めに歯車を切った円筒と円盤を軸が直行するように横に並べたような作り。これも通常切削で作るので面倒くせぇのと力の伝達効率は悪くて巻きは重め。ただ巻きの滑らかさと丈夫さには定評あり。世間的にはカージナル33とかなんだろうけど、我が家では
PENN714z、
シェイクスピア2062系といったアメリール達がこの方式。お好きな人が好きな方式。
このあたりの方式は、左右切り替えできてスピニングリール向けの方式は作るの面倒くせえ!という欠点を抱えていた。スピニングリールのギア方式において作るのがもっとも面倒臭くないのは、円筒に真っ直ぐな歯を切って、平たい円盤に真っ直ぐな歯を設けた”フェースギア方式”が筆頭で、斜めの傘に歯を切るとかいかにも難しいことはしないので、ハンドル軸のギアを金型使って鋳造で大量生産するのにも向いている。我が家にはないけど古い安物スピニングとかクローズドフェイスリールなんかに使われていたそうな。
コイツは安モンに使われるだけあって、ギアの滑らかさなど期待できないし、耐久性も悪く、左右両用にできない。でも伝達効率が良いのと生産性が良く安上がりなのは魅力。
で、いろいろとフェースギア方式には改良が加えられ”歯をせめて斜めに”と”スパイラルフェースギア方式”ってのもあったようだし、シマノ製
DAMやら稲村「
ロディーマチック825RL」であった、ハンドル軸ギアの方だけ斜めに歯を切って、軸が直交せず左右両用ができる方式(ハイポイドストレートフェース?)もあったけど、これはどうも写真一番下のロディーマチックでもそうだったけど歯が削れてダメだったようだ。
という中で、スピニングリールの90度回転方向を変えて力を伝えるギア方式において、日本発で世界標準になっていったのが、ハイポイドフェースギアである。
写真一番上を見てもらうと分かるように、ローター軸のギア(ピニオンギア)は円筒にぐるぐる斜めに歯を切っている。ネジの山作るのと似たような工程だからかさ歯車のような円錐に斜め歯を切るよりは簡単そうに素人でも思う。
次にハンドル軸のギア(ドライブギア)なんだけど、これは平面的な円盤に斜めの歯を付けているだけで、鉄系の芯を鋳込んではいるけど型に溶けた亜鉛を流し込む鋳造(ダイキャスト)で作れる。
という生産性の良い作りやすいギア方式なのに、滑らかで力の伝達効率も良い。軸が直交しないので左右両用ハンドルにもできる。
なんでそうなのか?ギアだけ取り出してどうその歯が重なって回るのか、手にとってクルクルしてみて裏から表から矯めつ眇めつしてみた。
実際のリールの中では真ん中写真のような位置関係になるけど、歯同士がどう重なるのか、分かりにくいので、重なり具合を視覚的に理解するためにギアの前後と左右を変えて、重なり具合がイメージしやすい位置に持って来たのが下の写真である。円筒状にグルグルと切られたローター軸ギアの歯に、ちょうど良い角度でハンドル軸ギアの歯が重なるのが分かる。
この時、どちらも斜めに歯が切られているのが肝のような気がする。円筒の曲面と円盤の平面に切られた歯が直線状なら、接する面は極端な話1点の狭い位置になりそうに思う。斜めかつハンドル軸ギアの歯は曲面も持たせているので、その分接する面自体が大きく、また回転する中で滑ってアタる範囲も大きいように思うが間違っているだろうか?つまり、動的な中で接触する面が大きいので安定して力の伝達効率が良く、接地面が広ければ当然摩擦にも強く、接触具合が安定してるから巻きも滑らかなんじゃないか?というのがワシの観察結果からの推定。どうでっしゃろ?
なので、丈夫に作ろうとしたら接触面が大きくなるように歯の切り方を設計してやれば良いはずで、そうすると巻きも安定する。ただ、接触面が大ききければ発生する摩擦も大きくなるので、巻きの軽さという点では不利になっていく。
そのへんの設計における優先度のつけかたで、丈夫かつ安定した滑らかな巻きで、巻きの軽さもそこそこという設計で、大森スピニングやら4桁PENNやらの亜鉛使ったハイポイドフェースギアは作られていたんだろうと思う。
それが”もっと軽く”を、自重においても巻きにおいても追求していくと、歯の接触面は小さい方が良くて、ギア自体薄く軽い素材の方が良い。亜鉛のドライブギアでは接触面があまり小さくなると摩擦で削れて実用的な耐久性から外れていくだろう。なのでより軽量で堅い素材でとジュラルミンとかで鋳造以外の強度が稼げる面倒くせえ方法でということになってきているように理解した。
亜鉛鋳造なら安上がりなのに、それを捨てて”軽い”っていうカタログ数値でアホでも数字が読めれば評価できる指標を稼いで、どうせ巻くとき軽いっていったって、ルアーでも魚でも引っ張るときには重さがかかってくるので、そんなのラインも巻かずにクルクル回したときの”店頭性能”でしかなく、異様なまでの軽さなど意味ないのに、巻きも軽く尖らせた性能にもっていって、挙げ句の果てに耐久性がおろそかにされている気がしてならない。狭い接触面ではちょっと削れたらかみ合わせが悪くなって回らないとか極端な不具合に繋がりやすいだろう、っていうのが実態じゃないの?違うというなら教えて欲しい。
小難しいことはワシ分かってないのかもだけど、間違いないのは軽い素材や軽量化技術で今までと同じ強度で驚きの軽さに、とかなら強度は相変わらす足りてないだろうということ。
何十年も前の設計の、安物ではなかったけど適正価格だった、全盛期の大森ダイヤモンドリールやら、脂の乗ったPENN4桁スピンフィッシャーやらの、芯を鋳込んだ亜鉛鋳造のハンドル軸ギアをもつハイポイドフェースギアは、丈夫だし、安定してるし、充分に巻きも軽いし、重量的にも大森はもちろんPENNでも意外に重いと感じることはない、実用上極めて良い塩梅に仕上がったスピニングだったんだと思う。
始めて買ってシイラ釣りとかで愛用してたPENNスピンフィッシャー5500ssは、ベールスプリングは何度も交換した、ドラグパッドも何回か入れ換えた、主軸に填まってるスプールが刺さる真鍮製ブッシュが一回割れて主軸ごと交換した。銘板などとうの昔に剥がれ落ちた(そういう仕様です!)。ハンドルの塗装をワシの指が写真のように削るほど使った、ということで、どれだけクルクルしたか察していただきたい。でもそこまで使っても、ギアの摩耗など見受けられない。
たしかに「リールのギアにはおよそ過剰なほどの耐久性」なのかもしれない、もっと軽く仕上げた設計のリールの方が好きな釣り人も多いのかもしれない。
だとしても、ちょっとやそっとじゃ壊れないタフなリールに、ワシャ心底惚れ込んでるんじゃ。
いろんなスピニングに浮気はするけど、最終的にはPENNが正妻、大森が2号さんというところに収束していくと思っている。
今回”リールいじり”の導入編みたいなことを書いたのは、この楽しさを知ってもらって”スピニング熱”に感染させて沼に引きずり込みたいって思ってるからで、実際リールの整備とか自分で興味持ってやり始めることで、リールの構造や部品のそれぞれの役割や働き、そうなっている意味なんかが改めて分かってくることがあるので、分解もできん、中になんかゴチャゴチャ入ってて無駄に高額になってる高級リール様をあてがわれてありがたがってるのがいかに馬鹿臭いか、そういうのが分かる釣り人が増えたら良いなと思ってます。そうならんと馬鹿臭い道具しかメーカーも作れないので、もっとみんなが自分たちの使う道具がいったいなんなのか?どこから来てどこへ行くのか?とかに興味を持ってくれたなら、お気楽ブロガーの本懐であります。
ここまで読んでくれた人がいたということは、それが全くの無駄じゃなかったということであり、あなたは既に濃厚接触者で発症待ちだということです。
発症待ちもクソも、現在進行形で酷い症状に苦しんでるって?
同志諸君、スピニング熱は不治の病です。あきらめて共に沼の底で楽しみましょうブクブク・・・ああ今日も仰ぎ見る水面は遠い・・・。
※追加:フェースギア機、我が家にも1台ありました。まさに昔の安いスピニングという感じの初期ダイワ製「スーパースターNo.2」。ベベルギアに一見似てるけど、円柱と平面円盤でギアが構成されています。1,450円は当時安モノってほどでもなかったのか?