2018年12月9日日曜日

ごみ☆すぴ

 さあ始まるザマスよ!という感じで今週も引き続きスピニングリールネタ。

 来年使う予定のPENNは確保したし、部屋にあるPENN以外のスピニングも壊れてたのは直し尽くしてしまった。
 にもかかわらず”インスプール熱”の症状は悪化するばかりで、アタイもうスピニングリールなら何だっていいノってぐらいになってきてスピニングリール症候群的な病状になってきた。病膏肓に入る。
 具体的症状を端的に書くなら、スピニングリールが欲しい。触りたい、分解したい、使ってみたい、という物欲が止まらなくなってしまっている。
 欲しいんなら買やあ良いジャンというところだけど、何というか使う予定もない道具を買うのにはどうにも抵抗がある。PENNだけで40台ぐらい所有しておいてなんだけど、私は蒐集家ではないつもりである。PENNが蔵にゴロゴロ転がってるのも基本的には使用を前提にしていて、同じ型のものを予備にと何台も確保しているから多くなってるだけで、集めること自体を目的にはしていない。
 既に書いているように、自分の腕に不相応な名機を買って悦に入るような行為は恥ずべきだとも思っている。カーディナルにしろミッチェルにしろ買おうと思えば買ってしまえるからなおさら自制が必要だと思っている。名機と呼ばれるようなリールって中古の弾数多いから、多少外見がくたびれてる個体なら意外に安くて、ネットオークションとかで5千円も出せば買えそうな場面も何度かあったけど、その度に何とか思いとどまった。ワシが買ってもベール手で起こして壊してしまい現存する稼動している個体の数を減らすだけで、それはやっちゃいけないという思いが変わることはなかった。まあ、最近インスプールの扱いにも習熟してきたので実際には壞さんだろうけどもだ。

 「足ることを知る」というのが幸せに生きるために重要で、このモノが溢れつつも資源の枯渇が危ぶまれているという時代に、なんでもかんでも欲しがるクレクレタコラで、手に入らないことを不足と感じるのは愚かであり、前時代的な感性だと蔑む。
 蔑むんだけどモノが欲しいという欲求って、およそホモサピの根源的な欲求で、なかなか人はそこから逃げられないというのを身をもって知る今日この頃である。
 ああっもっともっとスピニングリールが欲しいっ!!ともだえ苦しみながら一つの答えに達した。

 「逆に考えるんだ」

 今使えるリールをわざわざ壊してゴミにするのに心理的抵抗があるなら、逆に稼動していない壊れたようなリールを入手して直して堪能すれば良いじゃないか。
 直して気に入ったら使うも良し、中古市場に還元するも良し、モノを大事に使うもったいない精神にも合致してて、これなら心理的抵抗感がほとんどない。
 ということで狙うは数百円で入手できるような「ごみスピ(©きゃさ連)」である。
 そう、中古釣具屋のワゴンのガラクタコーナーやネットオークションにジャンク扱いで”売れたらめっけもの”と出品されているような中から”捨てたらゴミ、直せば名機?”をエグリだす。コレしかないだろう。
 何のことはない、今回の熱病発症の感染源となったトゥルーテンパー先生の事例に倣えば良いだけのことであった。

 という方針でここ数週間、朝起きたらまずヤ○オクのスピニングリールの新着を確認し、外出時にはマメに中古釣具屋をチェックし、入手したら手入れして修理して磨いてという”沼”にずぶずぶ沈みつつある現状と活動の成果を報告したい。

 ごみスピ達よ、お前達に生命を吹き込んでやる!! お前達に魂があるのなら…応えろ!!

 てな感じで、まずトップバッターは海水かぶって納屋にでも放置されていたのか、白く粉吹いて見た目サビサビのボロっちいリール。
 落札価格は490円とまさにごみスピ価格。送料がかかってしまうのはネットオークションの難点だけどまあ800円かそこらだし、送料込みで”数百円縛り”の上限に設定した1000円以下(本当なら未満だろうけど堪忍してつかあさい)に収めるとなると実質200円で、さすがにいかんともしがたい。
 こいつがなんと、大森製作所の「オートベールNo.1」である。これが他のワシから見てもこりゃゴミだなというリールに混じって、即決価格で出てた日にゃワシゃ反射食いで確保したったですばい。
 出品者は総合リサイクルショップで、おそらく倉庫の整理かなんかの依頼を受けてガラクタ扱いで値段付けずに引き取って、ハンドルもろくに回らんようなゴミを買うバカがいたら儲けものと投げ売り価格で出品したんだろうけど、こんなもん大森のリールが潮かぶって放置したぐらいで使用不能な状態になるわきゃなくて、本体あけてみたら案の定グリスが古くなって固まってるだけでギア等に腐食はみられない。さすがにサビサビの外側は場所によっては塗装も浮いてハゲてるしだけど、気になるなら塗装し直せばいいし、陽極酸化処理(いわゆるアルマイトのことで弁当箱のあれね)してある地金露出したままでも使用上は問題ないはずで、オラ見た目なんて気にしねえダ。

 というわけで、分解清掃。
 分解して改めて感じたんだけど、大森製作所のこのオートベールやタックルオート、樹脂製のキャリアーあたりのスピニングはアウトスプールのルアー用小型スピニングリールの一つの完成形といって良いかもしれない。
 生産性に優れて性能もよいハイポイドフェースギア方式、確実な内蹴り式のベール返し、錆びないし小型軽量な樹脂製スリーブの入ったラインローラー、3階建てのドラグ(こいつはフェルト製ドラグパッド)、単純で確実性の高い逆転防止機構(こいつはローター軸のギア直上のラチェットに歯をかける方式)、ハンドル軸とローター軸に各一個のベアリング。手入れもなしに放置しても塗装が多少やられる程度の耐久性のある素材。これ以上の性能がどうして必要というのだろうか。平行巻き機構も小型リールなら単純クランク方式で充分だろう。
 もちろん正解は一つじゃないだろうし、いろんなリールがあった方が楽しいと思うけど、機構が大きく重くなって確実性にも劣る一方通行のベアリングを使用した瞬間的な逆転防止機構を「遊びがなくてガチャガチャいわない」程度の利点でなんで採用する必要があるのか、遊びの大きさが気になるならラチェット方式とかでも歯の数増やせば十分遊びは小さくできるのに。ベアリングにしたって2個も入ってりゃ滑らかに回るっての。
 っていうのが、清掃終わって快調に回ってくれるこのリールを触ってみれば実感できる。きわめて満足。これは手放さずにいつか使おう。

 二番手は「SLS2」っていっても、さすがにこのブログの読者諸氏でも知らんやろ。心配いらない。ワシも知らんかった。



 ではなぜ私が、知りもしないぶっこみ投げ釣りに使いそうなサイズの、塩でラインローラー周りが完全に錆びまくっているこのリールを買ったのか。
 答えはこのリールがD・A・M社製だからである。あとぶっちゃけ開始価格も安かったというのも大きい。入札ワシだけで480円でハンマープライス!
 独逸のD・A・M社といえば、古いバスマンには両軸のダムクイックの印象があると思うけど、実はアウトスプールのスピニングを最初に販売しだしたのはD・A・M社説もあるぐらいスピニングも伝統的に得意なメーカーで、当ブログでも、現在進行形で生産されているウォームギア搭載機「ダムクイックレトロ」が話題にのぼったりしていて、いっぺんキッチリいわしたらなあかんけんのぅ、と思っていたのである。

 西独がなんぼのもんじゃい。と正直古い時代の日本製リールみたいな見た目だったこともあり舐めてかかってた。
 ドラグノブを外して蓋のような部品を外してもドラグパッドが見えてこず、ひょっとしてドラグノブ=スプールを固定するネジ系のリールかと不安になったけど、スプール外したら、スプールの下からロータの上に大きな土星の輪っか状のドラグパッドを樹脂製の台座に乗せたドラグが出現してなかなかやるなと感心して、次に本体の蓋を外して目を疑った。
 何じゃこのギアは?ローター軸のギアが単なる縦溝やンケ!
 一番単純なフェースギアのローター軸ギアみたいな感じだけど、このリールはハンドル左右に付け替え可能で、ということはローター軸とハンドル軸は直交せずズレてオフセットしているので、フェースギアではない。かといって斜めの傘状のベベルギア系でもなく、平面と平面で接しつつ、ハンドル軸のギアが斜めに切ってあるという見たことない形式。リールには使われてないだけで機械の世界では普通に名前のある方式なのだろうか。名前を予想するならオフセットフェースギアとかか?ちなみにローター軸のギアがローター側にくっついてくるのも独特だ。ドイツのリールは世界一ィィーッ!!ではないにしても、とっても個性的。

 でもって分解清掃。
 本体やらは何の問題もなく、使うとしたら海での投げ釣りっぽいのでグリスシーリングして、ドラグも乾式だったのをドラググリス塗ったらなかなか良い効き具合になって問題ないんだけど、やっぱりラインローラー周りが難モノ。
 そもそも使ってるときからラインローラー固着したまま使ってたみたいで、ラインローラー削れて糸溝ができてる。
 仕方ないので割り箸にはめてハンドドリルで回してサンドペーパー掛けてメッキごと錆を削り落として糸溝もならしてしまおうとしたけど、さすがに地金の真鍮は堅くてそこまで削れンのでほどほどにしておいて、ティッシュ詰め物にして瞬間接着剤でラインローラー全体コーティングして滑らかに磨いておいた。ベールアームの錆も金属ブラシ回転させて落とせる範囲で落としてグリス塗ったくっておいた。金属の加工技術を持たない素人ではこのぐらいが限界だろう。

 西ドイツ製リールなら、とうぜんラインはアンデでしょということでアンデ20LBを巻いて、極東の地での邂逅気分を味わっていたのだけど、実はこのリール調べてみると日本製。シマノが作ってた。
 シマノがD・A・M社と技術提携して製作とからしいけど、まあ相手先ブランド名製造(OEM)やろな。シマノのOEMといえばベイトリールのルー社スピードスプールがシマノの出世作でもあり有名だけど、こんなんも作ってましたとさ。
 当時のドイツの設計なのかまでは分からなかったけど、今時のリールとは全然違ってるのは確かで、分解してて面白くってそれだけで元は取れた感じだけど、使うかっていうとあんま出番ないような気がする。かといって売りに出しても480円でも売れる気がしてこない。だれかもらってくれんだろうか?実物見てみたい欲しいという奇特な方はご連絡を。

 3番手は、某中古釣具屋のワゴンから540円で確保。
 いかにもな80年代風味満点の、リアドラグの樹脂製スピニング。
 ダイワ社「カーボスピンGS700ーRD」。
 なんでまたこんな今現時点で中途半端に古くて、ちょうど一番ダサめのリールを買ったのか?なぜならば、高校生から大学生の時分にワシこのリール使ってたんですワ。
 それ以前に使ってた、度々登場している同じダイワ製の「スポーツラインST-600X」が故障して、次のを探してたときにケン一から、新しいの買ったからかなんかで余らせてるから竿とセットで買わんか?と持ちかけられて、樹脂製のリールって軽薄でイマイチ好きになれないなと思ってたけど、ケン一の営業話術に押し切られて結局買った。
 このリールの欠点をあげるのは簡単である。まずリアドラグはリールが大きくなるしドラグの精度も落ちる。このころのダイワ方式の逆転防止機構は純正部品でもやっぱりラチェットの歯を掛けそこなってガガッとなったりもする。ラインローラーがセラミックなのは良いとしてスリーブ噛ませてないのは軸が摩耗しないか心配になる。ベールの反転も重くてまあワシャ手で返すからええねンゆうてもハンドル回して返そうとすると結構な確率でベールワイヤー真上で止まってしまってフィギュアスケートみたいにクルクル回ってるのを見ると、さすがにどうにかならんかったのかと思う。ギアや平行巻とかの機構もいたって普通で「カーボン製」と「リアドラグ」という目を引く要素で飾り立てただけの凡庸なリールと言っても過言じゃない。
 でも、使ってみるとこれが何の問題もなく調子よく使えたのである。スプールまで樹脂製で軽いのは使ってて確かに”軽やか”な使い心地で、ドラグも当時はバス釣りに使ってたけどしっかり締まってくれて、竿はカーボンのリボンが一番上に交差して巻いてある時代の「ファントム」という、それまで使ってたダルいグラスのジェットスピンに比べればシャッキリとこれまた軽快な調子でライトキャロライナリグのワームのアワセもビシッと決まってくれた。
 今でも樹脂製のリールが割と好きなのとか、ダイワのカーボンのリボンが交差する仕上げのブランクスの竿とかが好きなのとか、この時のリールと竿に刷り込まれたンだと思う。
 この頃の日本の釣り具会社は、既に高級機種でなくても実用充分なモノは造れるようになっていて、普通のリールで充分なところを何か特徴付けなければ売れないので、色々試行錯誤して売れるリールを造ってた時代で、リールの基本機能はそんなに悪くなかったんだと思う。ぶっちゃけ日本の淡水で使う分には充分だと思う。もうちょっと耐久性が欲しいとかは値段考えれば贅沢ってモンだろう。そのへんのダイワの安い価格帯の製品の潔さてらいのなさは実用性の高さもあって高く評価したい。
 カーボスピンも沢山の魚を連れてきてくれた良いリールである。文句があるヤツぁコイツより良い魚釣ってからぬかしやがれってんだチクショウめ。結局リールの良し悪しなんて使って魚が釣れるかどうかで判断するよりないという一面もあると思う。
 例によって、ベールスプリングが壊れるまで使ったんだけど、捨ててないハズなんだけど蔵から発掘できずにいるところにポンッと出現したのでこれまた反射食い。

 清掃する必要もないようなキレイめの個体で、回転も滑らかで軽いし、ドラグもやっぱりギチギチに締めなければ充分に使える感じ。どんな感じのドラグなんだろうと見てみると2階建てで、大森マイコンとよく似てて特許技術の関係で問題なかったのか?という感じだけど、まあその辺は今よりはおおらかだったんだろう。
 ライン巻いてみたらやっぱり若干後ろ巻きで、このリールの場合リアドラグなのでスプール裏の座面には主軸を固定する10字が切ってあってワッシャーとか填まってないので、スプール裏のワッシャーを薄いのに交換してスプールを下げるのの他の方法で上下調整できないかなと分解していじりつつあれこれ考えていたら、このリールの場合ローターを乗せている座面にワッシャーを噛ませればローターを上げることにより後ろ巻きが解消できそうだったので試してみたら上手くいった。上下の端が薄くなって緩やかなフタコブラクダの背中状にこんもり盛り上がるのが80年代風(嘘、単純なクランク方式で往復幅がスプール幅に対して少なめならこうなる)。ローターに負荷が掛かるときに傾くとまずいだろうから、とりあえず余ってたテフロンのワッシャーで感触を見ておいて、いけそうなら堅い金属のワッシャーを買ってきてはめ直そうと思ったけど、ライン巻いてるときも特に問題なさそうだったのでこのままでも大丈夫かもしれない。ちなみに回転しながらズレる場所じゃないので滑らかさとかその逆の止まりやすさとかは考慮しなくて良いはず。
 今の主流の軽金属製でフロントドラグのスピニングリールだって何10年も経てば古くさくなるんだろうし、逆にいま古くさい樹脂製リアドラグのリールが懐かしがられて格好良くなる時代も来るような気が、マイコンやらこのリールやらを触ってみてしてきたところである。
 またリアドラグブームが来るとしたら、その時の進化したリアドラグを見てみたい気もしたりしなかったり。
 

 という感じで、概ね好調なスピニングリール生活を送っており、物欲は上手く手なずけて節度あるお付き合いができている。
 などと無邪気に思っていた時代もあった(感慨)。
 書いている時点でこの3台はすでに数週間前の話になっていて、このころはまだ”スピニングリールの沼”の浅いところでチャプチャプと遊んでいたのだけど、ハッキリいって私は人間の物欲というモノを舐めていた、沼の深さを完全に見誤っていた、と思い知らされることになるのである。

 そのあたりはまた次回。今宵はここまでに致しとうござりまする。

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