2022年1月22日土曜日

オミクロンよりアトラスのほうがヤバい?

  昨年末に大森製のコンパック「アトラスⅡ」を紹介したときに、norishioさんとオリムピック製初代?「アトラス」との交換密約が締結され、年明けてお年玉交換とあいなった。左が我が家にやってきたそのオリムピック「アトラス」。

 「ねっとり濃厚なレビューを」とのご要望ではあったけど、正直古い時代の単純なウォームギア機で目新しい機構とかあんまりないだろうから、ネットリ書けるか自信が無かったけど、分解清掃してみたらこれはなかなか相当に面白かった。

 ということで、ネットリ濃厚になるよう書きまくってみたいので、ご用とお急ぎでないお好きな皆様におかれましては、楽しんでいただければと思っちょります。

 まずは、届いて外観見てクルクルッと回してみたりするんだけど、塗装も銀系だし、スプールもアルミの鏡面仕上げで全体的に銀ピカでキリッとしてる。そしてコイツは国内販売版なんだとおもうけど、昔懐かしい”トビウオ五輪マーク”で「Atlas Olympic」と銘がある。多分蓋だけ国内版と輸出用「コンパック」ブランド版を変えてたんじゃないかと思うけど、本体は金型作り直すような手間はかけられなかったようで「Compac Japan」と足裏にある。「アトラスⅡ」の時に「gapan」って謎の国名は何じゃろ?って思ったけど、筆記体のJの大文字だったと判明。分かってみれば謎でも何でもないな。

 ワシうすうすお気づきの方もおられるかもしれないけど、ちょっと”ウォームギアフェチ”な部分があるようで、ギアを重ねず横並びにするウォームギア機ならではの薄っぺらい本体にたまらない魅力を感じたりしちゃうんです。キュッと締まったこのボディーライン、実にイイ!

 こまかいところだけど、ラインローラーを固定してるマイナスネジ、それをラインを引っかからなくして収めるために金属製の襟巻き?みたいな部品がハマってて、なかなかに丁寧な仕事ぶり。ラインローラーは固定式で固い金属系。

 逆転防止のオンオフのスイッチが変わってて、ハンドルの根元の樹脂性の円盤で切り替えする形式。

 お尻の油差しのキャップがハマってる筒は内部では主軸のお尻が刺さる場所でもあるんだろうなとは思うけど、本体のお尻の部分がパスッと叩き切ったような造形で、そこから筒が伸びてることには意味があるんだろうか?まあ、バラしていけばそのへんはオイオイ分かってくるはず、とこいうことで、とくに整備せずとも良いぐらいに軽やかに回っちゃいるけど分解清掃。

 まずはスプールからいっとくかと、スプール外そうと樹脂性のドラグノブをクルクル回していくと、主軸からスプール自体は抜けるんだけどドラグノブはスプールにくっついたままで、頭にマイナスのネジ山が見えるしネジ外すんだろうなと、外すとそれでもまだドラグパッドを押さえている金属部品は外れず、スプ-ルにハマってるCクリップを外してようやく部品外せてドラグパッドが抜けるという謎構造。オリムピックの設計者ってドラグノブが落っこちるのをよほど恐れていたのだろうか?「エメラルド350」でもドラグノブは主軸から外れてもCクリップで引っかかってて力かけないと外れないつくりになっていた。

 でもって、ドラグパッドとワッシャーも独特っていうか、ドラグの構造自体がまだ黎明期の日本のリール設計思想ではちょっと理解が届いてない感じがして、それはそれでなかなか味わい深く面白い。写真にあるようにドラグパッドは厚めのフェルトのが2枚入ってるんだけど、ドラグの仕組みというか構造を分かってる読者の皆様なら「???」と頭に疑問符が並ぶだろう。ドラグパッド2枚使うドラグシステムが無いわけじゃない。通常は直径小さく摩擦力小さくして「ドラグパッド」の仕事を邪魔しないようにチョンとスプール座面に単なるワッシャーとして乗せられているパッドをスプール上面のドラグパッドと同様の大きさ素材にしてスプールを上下から挟むようにしたドラグとかで、「ミッチェル314」とかは実質そうなってる気がする。

 ただし、通常スプール座面にはさっき書いたように小さなワッシャーが入ってるだけで、ドラグとしてはスプール上面から穴ぼこもうけてそこにドラグパッドとドラグワッシャーを配置する。その場合は3階建てが主流でドラグパッドは3枚入る。あるいは1枚というのも珍しくはない程度にある。大型リールでロングスプールの中に3階建て以上のドラグをぶち込んでるのもあったと思うけど珍しい事例で、かつその場合のドラグパッドは奇数だったハズである。なぜなら、多層式のドラグの場合は構造がスプールと同期する面(以下「ス面」)と主軸と同期する面(以下「軸面」)で適度な滑りと摩擦の素材でできたパッドを挟んでやって、固定された主軸に対して回転するスプールとのズレに対し適度に摩擦力を生じさせる事によってブレーキとして”ドラグが効く”ようになってるので、底の方から考えると最初は「ス面」でスプールそのものかス面同期のワッシャー、次にドラグパッド(ドラグパッドをワッシャーが兼用というのもあり得る)、その上に軸面同期のワッシャーが来て、またドラグパッド、ス面ワッシャー、ドラグパッド、軸面ワッシャーという感じに3階建てだとなってて、ス面と軸面は交互に来ないと、ズレないので間のパッドも一緒に同期して回るか止まってるだけで意味を成さないし、かつ一番上が軸面ワッシャーで終わらないと、ドラグノブでスプールと一緒に回転するス面ワッシャーを押さえる事になりドラグノブが回ってしまいかねずこれまた塩梅が悪い。ドラグパッドの数を増やせば増やすほど比例して安定性に寄与するとかなら、ドラグパッドとワッシャーを兼用させてかつ薄くして5階建てとかもあり得るのかもしれないが、ドラグパッド1枚でもデキの良いドラグは充分性能良いので、多けりゃ良いってもんでもなさそうには思う。ちなみにスプールと主軸の回転時のズレで摩擦抵抗を発生させる通常のドラグと逆に主軸が回転して本体同期面とのズレでドラグを効かせるリアドラグ方式ではドラグパッドは2階建てとか偶数になるハズだと思う。両端に回転する軸面ワッシャーが来ないようにすると最小枚数では本体同期ワッシャーで軸面ワッシャーをサンドイッチにするからワッシャー同士の間、ドラグパッドが挟まる面は2面となる。大森マイコンシリーズはそうなってる。

 でもって今回のアトラス。ブ厚めのフェルトパッドが、スプール底面のス面の次に来て、次に写真の様に主軸に縦溝を入れてその溝に出っ張りをはめる独特の形状の軸面ワッシャー、その上に2枚目のフェルトパッド、そしてドラグノブを構成するドラグパッドを押さえる金具と来ている。これ、上の方のドラグパッドは軸面ワッシャーとドラグパッドの金具というどちらもドラグが効くときには主軸に固定されて回らない部品の間にあって挟まれてるだけで仕事してねえんじゃネェの?という状態である。ドラグノブが上からネジ止めされているとか複雑な構造なので、ひょっとしてこれネジが主軸に直結してるけど、ドラグパッドを押さえてる金具は”浮いてる”構造になってて、ドラグ作動時にはス軸と同期して金具は回るけど、ドラグ値が変わったりしないようになったりしてて、とかも考えてみたけど、ネジは金具と樹脂性のドラグノブの部品を止めてるし、ドラグ効かせた状態でスプール回してみても、ドラグノブ関係はどの部品もスプールと同期はせずに主軸に固定されているようにしか見えない。

 上のドラグパッドはドラグパッドとしては機能しておらず”死に体”のようである。ただドラグパッドとしては機能してないけど、無くて良いかというとこのリールにおいてはそうでもなさそうなのである。このドラグ、多少調整幅は小さめだけどちゃんと効いてくれてドラグとして充分機能しているのである。ドラグとして機能するために地味だけど重要な部品が一見なさそうに見えるんだけど、おわかりだろうか?何かといえば”バネ”である。普通の3階建てのドラグなら多くはドラグノブの中に、ミッチェルとか多分その真似しただろうPENN714zとかではドラグノブの下にビヨヨンと金属板を加工したバネが配置されている。これ適度にドラグノブでドラグパッドとワッシャーを締め付ける圧力を調整してくれて、無いと調整幅が極小さくなって使えないドラグになるようだ。でもバネ無しのアトラスのドラグ、まあそこそこ使用に耐える実用的なドラグには仕上がっている。どうも、ブ厚めのフェルトパッドが、1枚はドラグパッドとしては死に体だけど調整幅を持たせるバネ的には効いてるようで、無駄に入ってるわけでもなさそうなのである。こんな日本スピニングリール黎明期(「ベルせか」でみると1957年から60年のカタログに「アトラス No.89、1,600円」で登場、大森製「コンパック89 アトラスⅢ」の”89”ってなんじゃろ?と思ってたけどオリム由来なのか?)から、小型リールのドラグパッドにはグリス染ませたフェルトが良いなんてのはあったりまえのコンコンチキだったようである。何度も何度もしつこく書くけど、今さらすんごい性能のドラグができましたってなことを謳ってる宣伝文句はデタラメ大げさ紛らわしいことこのうえないったらありゃしないのである。

 てな感じで、スプール関係はこんなもんだろうと満足して、次に本体蓋をパカッと開ける。

 うわっなんか内部も銀ピカやな!という一目見ての感想なんだけど、オシュレーション(スプール上下機構)カムが真鍮製なぐらいで、他はローター軸のギアはまあ良くあるとしてハンドル軸のギアも見た目ステンレスなら、オシュレーションのクランクもネジも当然主軸もステンレスにしか見えない。

 ウォームギアって精度出すの難しいンじゃないの?ステンレスって固くて加工しにくい印象だけど、オリムピックってなにげに技術力あったんだなと感心する。ハンドル軸のギアはステンじゃなくてニッケルシルバー(銅と亜鉛とニッケルの合金「洋白」)って可能性はあるか?でもそれなら真鍮でよさそうだし必然性がないか?いずれにせよさすがは一時は国内で向かうところ敵無しを誇った釣り具メーカーっていう技術力である。海外のリールマニアの掲示板で「時計のSEIKOから暖簾分けしたメーカーだから技術力あったんだよ」とか書いてる人がいてちょっと笑った。それ精工ちがいでオリムピックは元の名前が「植野精工」で時計のほうは「服部セイコー」って教えてあげようかと思ったけど、あんなマニアックな輩どものところに、のこのこ「古いリールの大好きな日本人でーす」って無邪気に入ってったら、待ってましたとばかりに質問攻めにされて英語力もないのにエラい目に遭うことは間違いないのでやめておいた。まあ英語圏じゃオリムピックはSEIKO関連企業だったという伝説があったって良いんじゃないの。誰も傷つかないし、そういう遠くに行くと伝言ゲームで根も葉も生えて話が盛り上がって繁ってくってのも楽しいジャン。

 でもって、この時点で銀ピカ以上になんじゃこりゃなのが、オシュレーションのクランクが文字通りクランク(曲折)してることで、通常の単純クランク方式と違うのは、支点からの距離が違う事でスプール上下の幅が変わるのと、当然それに伴って動かす幅が違えばそのために必要な動力も変わってくるっていうのがあって、このアトラスの場合はスプール上下させるほうの”枝”が短いので、スプールの上下幅は小さく、スプール上下に必要な力は小さく済むはずである。要するに”テコの原理”そのもの。ギアの歯車を介してスプール上下を減速して必要な力を軽減するオシュレーション方式は一般的だけどこういう方式は初めてみた。そして、もう一つ、曲げてるので本体内でクランクの可動位置がギア方向に小さくおさえられていて、スプールの上下幅(≓スプールの幅)が狭い事ともあいまって、リール全体で寸詰まりのコンパクトな設計になっている。お尻に筒が突き出てるけど、その部分を除いたぶった切ったような本体後部までにギアと主軸の先を除いたオシュレーション機構が収まっていて、逆転防止もハンドル軸裏にラチェットの歯を設けてる方式なので全体的にちっこいスピニングリールになってるのである。この方式がオリムピックの独自設計なのかコンパックブランド側の指示なのか、はたまた元ネタがあるのか、いずれにせよ初めて目にする方式で面白い。お尻の筒は同社を代表する大ヒット作「モデル93」シリーズも彷彿とさせて、この時期日本のメーカーは海外製品の模倣の時期にあったはずだけど案外オリム独自の設計だったりして。

 独特のクランク方式も初めて見たけど、初めて目にするといえば、このリール、ネット情報によるとスラストベアリングとかいう、見たことないボールベアリングの一種が使われているらしくて、これは是非ともみておきたいと、ローター外そうとしたらば、またこれが問題発生で”外れない”。

 外れないのはダム社「クイック110」で経験済みで、ローター自体にネジが切ってあってローター軸のギアを固定してローター回すんだろうなというのは、ローター止めてるナットを外してもネジ山がローターに続いている感じにみえるので、予想はできるんだけど、パーツクリーナーで洗浄するために一旦外してたハンドル軸のギアを填め直して、ハンドル軸の穴に先細ペンチを突っ込んでギアの回転を止めて、ローター回そうとするんだけど、ローターが外れるより両ギアがズルズルと回るのが先で外れてくれない。困ってしまって、元の持ち主であるnorishioさんに助けを求めると、手元にあるもう1台の方はハンドルまで付けた状態でローター回せば外れたとのことで、少なくとも”ハメ殺し”ではなく固着してなければ外せそうではある。1回諦めて全体組み直してあったのを、最低限必要な部分だけ外して、ハンドル残してローター回そうとしたらハンドルが外れて上手くいかなかったけど、クランクが残ってるのをみて、ひょっとしてクランク残したままハンドル軸のギアの穴に棒突っ込んで回したら”つっかえ棒”状態になってギアは回りようがなくなって、ローター回せるのでは?と閃いて試してみたら”ビンゴ”でローター回ってくれて外れた。一安心。

 外してみると、ローターの下から噂のスラストベアリングがおでましになる。あれやね、なんか回転する玉をはめたタンバリンみたいな輪っかを、玉が転がるへこみが設けられたリングでサンドイッチにしてる構造で、なにが普段よく見るボールベアリングと違うんだろうと、簡単にネットでお勉強してみたところ、カチッした金属の枠の中に玉が収まってるボールベアリングとは、横というか側面が空いてるところが大きな違いで、挟みつける力加減で適切な回転の軽さとかに調整できるようになっているようだ。

 回転を締め付けで調整するという点では、「ミッチェル408」とか触ったことのある機種では「アルチェード2CS」にも入ってた、開放式で外すと玉が転がり落ちてしまうタイプのベアリングに似てるけど、このスラストベアリングでは玉が転がり落ちないように枠でまとめている。なかなか珍しいベアリング方式で、色々と変わった個性的なリールだなと思う。

 ちなみに、ベアリングのはまってる横にチョコンと突き出してるのはベールリターンのための”蹴飛ばし”。

 という感じで、ローター外すのに苦戦したけど、でっかいCクリップではめ殺しっぽくなってる逆転防止の樹脂性オンオフスイッチは特に変わった構造でもなさそうなので今回放置したけど、ほかは無事分解できて、透明で部品の様子がよく見えるので最近気にいり始めている「ABU純正グリス」でベアリングにもグッチョリ、ギアにも当然グッチョリで仕上げた。小型機ならいいけど、PENNの大型機をこのグリスでいつものようにグリス漬けにしたら、ワシ老後の資金が心配になるな。まあそんな感じで仕上げたんだけど、ベアリングの締め付け具合がやっぱりコツがいる感じで、最初キッチリローターで挟んで組んだら強すぎたようで回転重く、仕切り直しでちょっとユルいかなというぐらいにローターはしておいて、ナットでしっかり留めたら正解だったようで軽やかにクルクル回ってくれるようになった。ナットは最初緩み止め剤が付着していたので、実際に使うならネジ用の緩み止め剤を使っておくのがイイのかも。

 さすがに、半世紀を越える昔のこの時代の綺麗な個体を、淡水ならともかく海で使う気には恐れ多くてならんけど、使ったら多分これ普通に魚釣れそうに思う。思った以上にしっかり作られてるリールでちょっと驚きに似た感情を覚えたところ。オリムピックっていうと、後年「マミヤOP」時代にダイワ・シマノに水をあけられてパッとしなかった時のイメージが正直残ってるんだけど、ワシがインスプールに手を出してズブズブと沼に沈む原因の一つになった「トゥルーテンパー727」もしっかりした作りの実用性充分の良いリールだったし、オリムピックってのは日本で一つの時代を築いた偉大な先駆者だったんだなと改めて認識させられたところである。オリムピック「アトラス」興味深くてなかなかに素晴らしいリールでした。norishioさんありがとうネ。

 でもって、気がつくとこれで我が家に、3機種「アトラス」が揃ったわけで、せっかくなので並べて記念写真パチリ。

 写真でもオリムピック「アトラス」の寸詰まった感じが分かるんじゃないでしょうか?あと、右端の「アトラスⅢ」で200g切るぐらいとかなりの小型機なんだけど、他の2台もさらに小さいかもってぐらいに可愛い大きさのリールで、1950年代の昔から、こういう小さく”精巧”なモノを作らせると日本の技術者はやっぱりやりおるんだなと感慨深い。

 ということで、今年1発目の”スピニング熱”ネタはいきなり筆が乗って書きまくっておりますが、実はこのあとに控えてるネタが結構あったりして、今年もスピニング熱の症状はぜんぜんおさまっちょらん感じで、先行きが危ぶまれるのであった。

 ということで、リール好きの沼の住民の皆様、今年もボチボチと書いていきますので旧年同様ご贔屓に。この記事最後まで読んじゃってるような人は、もう沼から抜け出せない運命だと思うので、一緒に沼に沈んで仲良くやりましょうね。

10 件のコメント:

  1. アトラスの件、濃厚なレビューありがとうございました。

    初代、2代目、3代目と歴代アトラスが揃った画像は壮観ですね。
    どういった経緯でオリムピックから大森に名前を残したまま移管していったのか、コンパック連合がどう解散していったのか当時の背景が気になります。

    ドラグに関して、自分も分解していなかったのですが、中身がフェルトだったのですね。
    どうりでやけに効きが良い思ってました。
    1950年台の発売初頭からフェルトだったとすると、ひょっとして最古(もしくは最古に近い)フェルトワッシャードラグ搭載のスピニングになるのではないでしょうか?
    大森がフェルトワッシャーを最初に搭載したモデルが分からないので何とも言えませんし、他の海外勢ですでに採用実績があったのかもですが…

    我が家にある後発オリムスピニングのシャルマンだと、ドラグワッシャが皮っぽい謎素材になっていてドラグ性能が悲惨なので、それより前のアトラスも似たような素材だと決めつけていました。
    オリムピック自体が、リール屋というより釣り具の総合商社的側面があるので、もしかしたらアトラスの製造元とシャルマン等の後発組の製造元は違うのかもしれません。

    他に同年代のオリムリールとしてモデル85を所有しています。
    これはイタリア、コプテスMASCOTTE(初期型オービス100)のほぼコピー製品になるのですが、モデル85の完成度、工作精度はあまりよくないです。
    ギアだけは悪くないように見えるのですが、各部のネジ、逆転防止機構、ベイル周りろう付け部など細かい部分が明らかに雑で、とてもアトラス モデル89に近い年代の同ブランドのリールとは思えないです。
    こちらも含めて、もしかしたらオリムピックリールには複数の製造元があるような気がしてきました。

    でもオリムピックの出自が植野精工ならやはりリールは自前な気が…

    あまり興味のなかったモデル93あたりも機会があれば手を出してみて、オリムピックスピニング史を探ってみたいと思います。

    ちなみアトラス89の独自路線な点としては、普通のリールとはローターの回転方向が逆なことも挙げられます。
    自分の知る限りこの回転方向のリールは左利き専用の右ハンドルミッチェルくらいでしょうか?

    左ハンドルのアトラスでこの向きにローターが回る理由も謎です。

    とっちらかったコメントになってしまってすみません。
    次回の洋モノの更新、楽しみにしております。

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    1. norishioさん こんばんは

       楽しんでいただけたなら何よりです。

       しかし、逆回転ローターだったとは、気付けよオレ!って感じです。使ったらっていうかライン巻いたら気付くんでしょうけどね。
       本当はリールの記事書くなら使って魚釣って書くべきかもしれませんが、なかなか貴重な個体だと海には連れていきにくいです。

       オリムピックが製造元複数あるんじゃないかというのは私も疑いました。同時期だと思うトゥルーテンパー727とエメラルド350だと、後者が明らかに雑な印象を受けました。トゥルーテンパーもドラグパッドは皮っぽい謎素材でしたけどね。
       本当のところはどうなのか?マミヤOPは竿メーカーとして残ってるらしいですが、古い話が分かる人はもういないんでしょうね。
       あれこれ想像して楽しむしかなさそうです。

       逆回転ローターはミッチェル300がそうじゃなかったかしら?ABUカーディナル800系という怪作もあったような。いずれにせよなんでアトラス逆回転にしたのか謎ですね。

       洋物、一気に5台記事にしようとしてここ3日ぐらいどこの機械工や!っていうぐらいに爪を機械油で黒くしながらシコシコ分解清掃してました。5台分だと写真がとっちらかった収拾つかない感じになってきてまとめるのに苦労しそうですが、今週末目標に書いてみたいと思います。お楽しみに。

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  2. ナマジさん、連日の作業お疲れ様です。

     お腹いっぱいになりました。細部まで整理してまとめられてて、プリンみたいなかわいいリールに煮詰めたカラメルやらファットスプレッドやら濃密ハイカロリーなレビューありがとうございます。おかげさまで解消不能でありましたリール太りが栄養と教養で増強されそうです。

     ミッチェル300の逆回転はハーフベールはこうしたら使いやすいだろうという考えがあってなのでしょうか。その習作からスピニング入門した技術者に回転方向に固定観念がない方がいてアトラスを担当したとかありそうですね。

     オリム製造元複数説面白いですね。
    リョービ製はありますし、大森もオリムの下請けっだったのではと疑える部分が見えたり相互的なものも感じられたりで、見えざる数社で仕事を割り振ったり乱発したり外注したり、オリムピックの場合ありそうですね。
     私の師匠(釣りはしない)がオリムの関西での代理店であった大阪漁具に50年ほど前に空調関係で出入りしていまして、現在は貿易のイメージですが当時はメーカーという雰囲気で、ここがオリム本部だと思うほど本格的に試作等していたらしいです。大阪漁具自身のブランドがあったかも分かりませんが、そういうところで設計されたものがオリムピック名で生産されたりもあったでしょう。
    師匠はオリムピックの大元は大阪漁具だと思っていたので、おそらくその場にあったのはオリム製として作ってるものばかりだったのかもしれません。

     一方、合併前のダイワや稲村でも、同じメーカーの物とは思えない製品間の差異があります。ダイワの場合一機種につき一人の設計者が最初から最後まで一貫して開発するらしく、それが業界で昔から普通のことならモノによってまるで違うのもわかる気がします。現在それでも統一感があるのは、機構のブランド化や○○デザインなど今の事情があってのことでしょう。

     
     ねじ込みローター私も正月に回らず焦りました。自転車の上等なブレーキに入ってるようなまっ平らな受け面のスラストベアリングのやつです。アルチェドとかのは自転車のホイールハブ同様でカップアンドコーンっていうのでしょうか。
    親切にとっかかりなど作っておらず最終的にあきらめてナットを締めた際手ごたえがあり、緩めるとくっついて動きました。
     そのリールはロディ―なのですが明らかに稲村らしくない雰囲気で、眺めていたら突然小声で、「私、ダイワなんです。わかるでしょ」
    海外のマニアのロディ―はダイワ製というのが一部合ってたんだなと。


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    1. レクエル堂さん おはようございます

       300の逆回転はハーフベール由来ってのはナルホドです。確かに開いたハーフベールがライン拾って指に持ってくるには逆回転の方が自然。

       同じメーカーブランドでも、下請けやら相互の乗り入れやらはわりとあったんでしょうね。大森とオリムピックの同時代のギアは似てると思ってましたが、影響があっただけじゃなく下請けもあったというのもたしかに言われるとあるかもなと思います。

       今のシマノとかでも国内で作ってる高級機種と、マレーシア工場で作ってるのは、見る人が見れば違うのかもしれません。私はマレーシア製のナビの方が日本で作ったツインパより良くできてると苦笑しましたが。

       あれこれ想像しながらリールいじってると確かにリールが語り始めるのを聞くような気がして、当分”スピニング熱”は下がりそうにありません。困ったものです。

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    2.  先日入れさせていただいたコメントは深夜のノリで寝ぼけながら書いたものでまとまりなく失礼しました。
       
       大森はオリムの下請けから始まったのかもの話は、ごく初期のものに形状や処理に匂いがする程度に感じているだけで自信をもって言えるほどではないです。
      ナマジさんが似てると思った箇所のこと教えていただけないでしょうか。

       確かに同じ会社でも事業所による違いがあるということも考えられますね。極端な例に富士重工とか。

       スピニング熱とかの菌は風邪系統とは違い、梅毒みたいに一生保菌するタイプみたいですね。私は学生の頃タックルベリーのワゴンから種をもらい、3年ほど踊り狂ったあと数年穏やかにしていましたが、去年釣病の症状につられて炎症を起こし一度平穏の気配があり期待しましたが、聞こえてはいけないものが聞こえるこの現状です。

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    3.  私がオリムピックのリールが大森製に似てるなと感じたのは、トゥルーテンパー727で、ハイポイドフェースギアに単純クランク方式のオシュレーション、ピニオン直上のストッパーというのが大森っぽいと思いました。
       当時の日本製リールの流行だったと言えばそれまでかもしれません。ハイポイドフェースギアは大森が主に開発したと言われていますが、同じような時期に他のメーカーも導入できているのは単に真似したというより、下請けなり技術協力なりの繋がりがあったのかもな、と根拠は無いですが漠然と感じています。

       今日も釣り自粛中につき、古リールの整備中で、ドラグパッドが革製ですでにペッタンコになってて、滑りはそこそこ悪くない感じですが調整幅がピンポイントな感じで狭くなってしまってるので、ドラグパッドを自作するしかないかなと苦戦しているところでした。

       ステイホームはスピニング熱には良くないですね。

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    4.  ありがとうございます。
      ちょうど727最近妄想の種にパソコンの手前に転がしてます。仰るとおり確かにオリムピックらしくない大森風な感じがしますね。コンパックに出していて埼玉で近いこともあり交わらなかったとしたら不自然ですしね。

       自転車部品の話ですが、取引にかかわらず、堺に乱立したメーカーそれぞれ非公式に人間の親密なつながりがあり情報交換等していたという噂があります。ほかにシマノが変速機で先行していた真栄田の研究資料をかなり参考にしたなどの事を思い出しました。

       モデル81とアトラスのほかにオリムピックに左ハンドル逆回転ローターがあるのを思い出しました。SEIKI 940と言って76年ごろの多分輸出専用品です。

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  3. ナマジさん、こんばんは。

     返信ありがとうございます。
    逆回転ローターには超大御所のミッチェル300がいましたね。
    それにカーディナル800も…竹中先生のHPに特設開発秘話があるほどのリールですが完全に失念しておりました。

     他のオリムリールでもトゥルーテンパーとエメラルドにて、製造元が違うことが疑われるほどの差があるのですね。
    正直、その年代のオリムリールはシャルマンとミニベストを履修して、後は似たようなものかとスルーしておりました。
    他のモデルもいつかは実機を弄りたいものです。


     レクエル堂さんも大変勉強になる補足情報や解説ありがとうございます。
    お二人とも恐ろしく高カロリーな文章を書かれるので持病が悪化しそうです。

     オリムピック モデル81にてミッチェル300のコピーからリール作りを始めた技術者が、アトラスの逆回転ローターを設計した説はなるほどありえそうですね。

     他にもまさかオリムピック製品に、大阪漁具がそれほどがっつり関わっているとは思いもしませんでした。
    大阪漁具をはじめ、大橋漁具(しもつけ)、谷山商事(バレーヒル)、つねみ、魚矢など思いつく範囲で現代における釣具問屋、商社兼メーカー的な会社のHPを見ると、どこも昭和の初期、中期からの創業。
    これらの企業がどのような事業展開を行ってきたのか、業界人でもなければ分からないでしょうが、きっと当時の何かしらの釣具製品や企画に裏から関わっているのでしょうね。

    複雑怪奇な業界史を企業主観ではなく客観的に紐解いてくれるような情報ベースが存在したら良いのですが…

     最近、私がNFT関連の情報を調べている際に、下記URLの面白いHPを見つけました。
    新興の釣り具メーカー「SHIMANO」さんの製品史がかなり詳しく記載されていて非常に興味深い内容でした。
    もし興味がありましたら是非、ナマジさん、レクエル堂さんにも見てほしいです。

    https://shashi.shibusawa.or.jp/details_nenpyo.php?sid=6870&query=&class=&d=all&page=4

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    1. norishioさん、ありがとうございます。

       社史という刷られても流通しない情報を研究者を介してでも見られるのは貴重ですね。やはりそこに当たってまとめる力はさすが研究機関というものでしょうか。内部からのはっきりした情報を吟味してあげてくれてるのは価値が大きいですね。

       業界人といえば、ロシアの業界紙や雑誌の方らしいバリチェフ氏のサイトがおもしろいです。http://balichev.com クロームで翻訳をかけて読むのですが、竹中先生のような分解しての解説のほか、系統を追ってその世界の情報と共にまとめられています。
      ヨーロッパとアジアの間なので、客観的で遠すぎない立ち位置で書かれているように感じます。
       私はシェイクスピアと大森の知られざる関係をここのアンビデックスの記事で知って泣き崩れました。あああ!大森! orz

       日本でも業界紙はあるらしいのですが、何十年も前の大量に出回ったわけでもないもので知りたいピンスポットを得るのは到底不可能でしょうか。

       師匠は古物商で不用品整理もしている関係で付き合いある廃品業者が受けたオフトの倒産現場にも入ったのですが、時間が限られており持ち出せるものも少なく釣りの知識もなくで、聞き出せた話はわずかでした。大阪漁具の話も正確かは分かりません。

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    2. norishioさん レクエル堂さん おはようございます

       コメント欄が濃い!カロリー高すぎ!!

       私は、書くのも好きで楽しんで(ちょっと苦しいこともある)書いてますが、そこから話題が広がってより深くどっかに行きそうな勢いの展開に毎朝深く満足してます。感謝!

       ロシアのサイト、大森の記事だけ読んだのですがクソ面白いですね。やっぱりアウトスプールのマイクロセブン(アンビデックス)はシンプルで堅牢でロシア人好みなんだなと面白いです。ワシと好み一緒や。あと、英語名アンビデックスの意味と、左右両用の最初のリールかは別におくとして、それを謳って売り出されたのは英国の元祖「アンビデックス」で良さそうだなとちょっとスッキリしました。
       このサイトはあちこちさまよってみる必要ありそうですね。
       シマノ製品史のほうも要チェックだな。

       コメント欄がむしろ”本番”という様相を呈してきてますが、負けじと書いております。明日投下予定のネタもスピニング熱ネタですのでお楽しみに。
       

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