2021年7月31日土曜日

「べっぴん」と「デラ・べっぴん」なら後者を選んでました

 大森製作所謹製、ダイヤモンド「マイクロセブン・デラックス(DX)」!うぉりゃっ!! どやっ!!

 ああっ、インターネットの情報網の向こう側で「また、買ったンかい!?病気全然治ってないやんけ!」と呆れられているのが目に浮かぶようだ。しかしながら、おそれながら、毎度のコトながら、いちおう説明させて下さい。仕方なかったんですよ。

 発端は「マイクロセブン替えスプール500円(送料込み)」というのをネットフリーマーケットで発見してしまい、ひょっとして我が家の「マイクロ2世」にも流用可能かなと思い、識者に聞いてから購入したら良いようなものを、そんなチンタラしてたら売れてまうがな、ということでまた反射食い。届いてみれば軸にはハマるけどドラグノブの大きさが違ってハマらないということで、スプールだけ持っててどうするの?状態。ちなみに「マイクロ2世」用の替えスプールはすでに1個確保してあって、2個目の必要性はあまりないけど、500円って安さに魔が差した。まあ売りゃあ良いンだろうけど、今思うと病状が出ていたんだなと思うけど「コレも縁、マイクロセブンDXを手に入れろという思し召しだろう。」とか完全に頭湧いた思考で、それからマイクロセブンDXを中心に海外版の「シェークスピア2200」とか「コンパックなんちゃら」とかの手頃な出物がないかと探す日々。

 最近、景気悪いせいか”大森スピニング”に限らず中古釣り具市場全体的に値段下がってきている気がするけど、マイクロセブンDXも1万円以上になるのは珍しく、そこそこの個体で、7、8千円ぐらいに下がってきてて、見た目ボロい個体ならもっと安い。売ること考えると見た目は良い方がいいなとボロ個体に手を出さずに我慢してたら、3500円即決送料込みという安値で「自分なりに分解注油してみたけど回らない、シャフト(主軸)が歪んでるのかも」というジャンク扱いの見た目は小マシな右巻機の出品があった。博打要素はあるけど、素人が分解して組んだら回らなくなったっていうなら、写真だと右側に写ってるハンドル軸のギアの上のピンが、写真左側真ん中へんのオシュレーション(スプール上下)スライダーの溝に填まってないって可能性が大だな、と読んで博打を打ってみた。右巻なので自分では使えないけど、売りさばくの前提なので、右はやや値段下がるけどスプールとあわせて完動状態で売りに出せば手間賃ぐらいは取れるだろうし問題ない。などと獲らぬ狸の皮算用。

 届いてみると、回らないとあったけど実際には回った、ただ回すたびにローターとスプールのどっかが干渉しているのかカシュカシュッと擦れる音がする。博打失敗で本当に主軸曲がってるゴミ掴まされたのかも。見た目には正直曲がってるのかどうか、曲がってるようなそうでもないような。

 とりあえず、スプールぶつけたり上に重い物乗せたりして曲がったのなら、逆に曲げ直すという荒療法で治れば儲けものぐらいで、ヤるだけやってみるかと、まずはスプール外して蓋を開けて主軸を抜いて、カシュカシュ音がしていた方向に油性ペンでマークを付けておいて、ペンチでスプール側を挟んで本体側を手で押して徐々に曲げて、組み直して音がなくなるかどうか試してみる。

 試してみると、音がする反対の方に気持ち曲がったかなというぐらい力掛けてやってから組み直してみると、明らかに音が小さくなった。コリャこの方向で正解だなと、慎重にちょっとずつ曲げて”まっすぐ”になるように調整してみるんだけど、これが上手くいかない。もうちょっとだなと微妙に曲げると音が大きくなってしまって、ある程度音を小さくはできるけど、まったく無い状態にはできなかった。曲げる方向が違うのか?とか悩んだけど、どうもそうじゃないような気がして、ここで長考。

 わかった、これスプールの底が下がりすぎててローターカップの下側面かどっかに触ってしまってるんだ!とスプールが乗る座面に本来乗っているべき赤い繊維性のワッシャーがない違和感から気がついた。早速、まあ後で巻き形状見ながら調整するにしても1ミリも嵩上げしてやれば大丈夫だろうと、ちょうど良い内径外径の厚さ0.2mmのテフロンワッシャーを5枚入れてやったら”正解”だったようで、カシャカシャ擦れる音はしなくなった。おそらく、実際に曲がってたというのもあったけど、それは本当は座面のワッシャーが抜けててスプールが下がってるのが原因で音してて主軸は曲がってない状態だったのに、異音がするので曲がってると判断して直そうとして無駄に曲げてしまってたんじゃないかと思う。スプールが乗る座面のワッシャーは油断しているとスプールの裏にくっついてしまうので、紛失することはありそうである。

 これで”回らない(実際にはスプールとローターの干渉)”っていう最大の問題は回避できたようだし、完動品に持って行けそうな気配になってきたんだけど、一目見てもう一箇所ヤバそうなところがあって、ラインローラーが妙に隙間が空いているし固着してるのか回らない。とにかく外してみようって外していくと、ラインローラーとベールアームの間に金属のワッシャーが入っていて、そこに糸噛みしそうな隙間できつつラインローラーの回転を止めてしまっている。明らかにワッシャー入れる必要のない場所に入ってるようにしか思えないんだけど、本来入ってて然るべき、ベールアームにベールワイヤを固定するための6角ナットの内側には既に1個同型のワッシャーが入っていて、入れる順番を間違えているというよりは、なぜかワッシャーが多く入っているように思うんだけど、どういう経緯でそうなったのか今一良く分からん状況である。

 まあ、ワッシャー1枚余ったという整理で進めよう。なかなか味わい深かったのが、ラインローラーのスリーブで、後年大森製作所は、滑りと耐久性の良い樹脂性のスリーブを入れているんだけど、大森製作所の最初の小型スピニングであるらしいマイクロセブンDX(マイクロセブンの名前は長く受け継がれていくことになる)の時代は、スリーブに真鍮製の物を入れていた。マイクロ2世でもそうだったけどハンドル軸のギアの上のオシュレーションのピンにも真鍮製のスリーブ被せてあって、回転して摩耗するようなところにはとりあえずスリーブを入れるというところが、真面目な大森製作所らしい。ちなみにマイクロセブンDXは1966年登場らしく、初期型が茶色?でこの黒っぽい濃い緑のは後期型とのこと。ワッシャー1枚抜いて、組んでみておかしくなさそうなので、ちょっと回転悪くなってたのをれいによって、輪ゴムでルーターに繋いで回して当たりをとって良く回るようにしておいた。

 とりあえず、大きな問題は解決できたように思うので、いつものように分解清掃。

 今回、売るつもりなのと、カーディナルなら33と同じぐらいの小型機なので海じゃ使わないだろうなということで、グリスはいつもの耐塩性重視の青いグリスじゃなくてABU純正グリスがまだあるのでグリグリと盛ってやった。大森はPENNほど塗装とかに海水耐性がないと思うのでグリス大盛りだよりで”海で使っても後はほったらかし”だとやや不安が残る。まあ、釣りから帰って来たら水洗いして拭いてやる、長期保管の時は防錆効果のある潤滑油とか塗って拭いてやるぐらいのお手入れで、往年使ってたマイコン302TBは特に錆錆にはなってないので、海でも使えなくはないと思うんだけどこの時代のはどうかまではちょっと自信がない。
 

 さて、組み直したら微調整。

 ”ラインローラーは水平に”が目標だけど、円錐形に絞ってベールワイヤーに蝋付けしている、いわゆる”ロケットベール”でそれをやると、円錐形がベールワーヤーに接続するあたりが高くなってしまい、そこにラインが引っかかった状態で巻いてしまうことがある。「720Z」で気がついたらやってしまっていて、糸溝付きかけてて焦って修正した。一番高いところがラインローラーになるようになだらかに傾斜させておけば、ベールアームがラインを拾ったら、ローターの回転に伴ってラインはラインローラーに移行していって落ち着くはず。

 ベールワイヤー自体の形状って大事で、グリスとオイルで軽くベールが返るようにしてあったんだけど、ラインローラーの角度を変えるのに力を掛けていじってたら、ちょっと形が変わってローターを挟むような力がかかるようになってしまったようで、ベールの返りがやや悪くなってカッチリ最後まで戻ってないことがあるようになった。慌てず騒がず、ワイヤーの形状を微調整して強く擦れず素直に回るように調整した。後年大森製作所ではベールアームを折り畳めるようにしたけど、携帯性以上にこういうベールワイヤーの変形防止に意味があったのかなと思う。一方PENNでは多少曲がっても力技でベールが返るように、初期状態では「714Z」とか”ガシャン”って返りが強すぎる傾向がある。”パワーこそ力”なアメリカンな感じそれはそれでらしいと言えばらしい。でもワシゃベールスプリングの刺さる穴の位置を開け直してユルく返るように調整してる小器用な日本人。

 ベール関係も調整済んだこの状態でスプール座面のワッシャー5枚計1mmで試しにラインを巻いてみると、やや後ろ巻きになって塩梅が悪い。3枚抜いて2枚0.4ミリだとスプールとローターが干渉し始めて、スプールが下がった時にチッと音がする。3枚にして0.6mmだと干渉はせず、写真の様に真っ直ぐに巻けたので、やや前巻きぐらいにしたかったけど、これ以上いじるとなるとベールアームの形状をいじってラインローラー位置を上げるという面倒くせぇ作業になるので、このへんで妥協しておいた。

 動作確認してみると、回転も軽くバランス良くクルクル、ベールの返りも良好、逆転スイッチ切り入れも問題なし。ラインローラーも輪ゴムで擦るとスムーズに回ってる。ドラグもバッチリ、我ながら上出来な仕事ぶりで満足。

 しっかし、なかなかに良くできたリールで、見た目も昭和骨董的な古き良き日本のリール感が醸し出されていて、200gを切る小型軽量もあってなんとも愛らしいスピニングである。左巻きなら自分で使いたいぐらいだ。いっそ左投げで使ってみるか?右手腱鞘炎になったとき左で投げる練習したことあるので一応上投げで真っ直ぐ投げるだけなら投げられないことはない。まあ、比較的綺麗な外観なので塩水で腐蝕させるのはもったいないから止めておこう。でもちょっとボロい左巻きの出物があったら買ってみて、機械的な完成度は高いけど使い心地はベール周りへの糸がらみとかが多くてイマイチ、って玄人衆にダメ出しされてるけどどんなもんか試してみたくなってきて困る。使いやすさって相性もあるので案外大丈夫って可能性もあるんだよな。

 まあ、この個体に関してはしばらくクルクルして愛でてから中古市場に再投下してやって、ジャンクとされていたリールが1台実釣可能な状態に復帰して、道具としての寿命があと何年か何十年か伸びたのなら、それはそれで良かったと思うのである。ということにしておこう。

 大森とPENNをいじるたびに毎度思うけど、ドラグでもギアでも70年代には今と遜色ない性能のものが既にあったのに、新製品売らんがためにアホな宣伝文句で釣り人を釣ろうとしてくる釣具屋側の欺瞞と、それをむしろ喜んで求めている分かってない釣り人の多いことに暗澹とした気持ちになる。

 ドラグはほんと40年前の大森採用方式であるフェルト、PENN方式のカーボンシートでほぼ完成してる(テフロンもイケる)。ドラグ性能を売りにしているようなリールは、それまでろくでもないドラグのリールを作ってきたっていう証拠にしか思えない、恥ずかしくないのかって話。

 ギアも、ハイポイドフェースギアなら亜鉛鋳造で何の問題も無いハズなのに、なぜ世の中にはギアが逝ってしまうような道具が流通しているのだろうか?大森やPENNはギア逝くのまだ経験していない。PENNでもウォームギア機は真鍮とステンレスの組み合わせで素材からして丈夫だけど、4桁SSとか真鍮と亜鉛のごく普通の組み合わせだけどワシのような長期に使い倒す人間が使ってもギアは壊れてない。ギアが壊れるリールってなんなんだって話。余裕を持って作ってないってことだろうか?強度ギリギリで軽量化、先鋭化しすぎてアソビが無いとかか、そうじゃなければ使う釣り人が馬鹿かにしかみえない。スピニングリールの、力の方向を90度曲げて片軸で受けてるってのがいかに強度を確保しにくいか、わからん馬鹿が高負荷かかってる状態でゴリゴリ巻いて壊すっていうのが実態だと思う。高付加時ローターの片側にギュウギュウと力がかかって糸巻きがハマってる主軸をゆがめる方向にたわむハズってのは使っててわからんかね?ワシゃPENNのハンドルを強化しないままで壊したことがないってのは正しいポンピングができてたからだと、密かに誇りに思っている。竿で稼いだ分だけ竿倒してリールにかかる負荷を抜いてやりながら巻く。それだけできていればPENNにクソ高い社外パーツのパワーハンドルなんて必要ないと断言しておく。そして当然ギアも壊れない。

 って、またしつこくいつも書いてるようなことを書いてしまったわい。年寄りの話は同じコトの繰り返しでウザいと自分でも思うけど、まあ書いちまうもんは仕方あるまいて。病気と老いからはいまだ人類は逃れる術を持っていないってことで、ナマジはそういう芸風だとご理解の上、皆様平にご容赦を。

4 件のコメント:

  1. 浜酔人
    昔のリールは味がありますね。
    私も大好きです。
    最近は、スラマー3が増えてきてますが(^^;)))
    ナマジさんに、シーズンオフになったらオーバーホールをお願い有料でお願い出来ませんでしょうか?ご検討のほどよろしくお願いいたしますm(__)m

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    1. 浜酔人さん おはようございます

       昔のリールは今ほどコスト管理とかうるさくなくて、ちょっと贅沢な作りだったりして、仰るとおり味があると私も思います。
       逆に最近のリールは、細かい所まで詰めた完成度の高さとかがあって、違う方向の魅力があるなと感じています。

       オーバーホールの件、アルバイトにしようかなと考えたこともありますが、儲けを出そうとするとお店とかがやってるフルメンテの金額でもキツくて諦めた経緯があります。
       ただ、リールいじるの自体は好きですので複雑な機種はちょっとご容赦願いたいところですが、1、2台であれば修行がてらお受けしても良いかなと思います。
       今まで見た中でフルメンテ費用、最安値は1台3000円でしたのでその金額に送料プラスでどうでしょう?
       よければ機種とかメールにてご相談下さい。メルアドはホームページの方にある連絡先でお願いします。

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  2. ナマジさん
    よろしくお願いいたします。
    価格ではなく、ナマジさんにいじってもらうと
    愛着もわっくってもんです。
    最近のハイエンドリールなんて持っていませんので、よろしくお願いいたします。
    基本的に、ペンとシマノの古いリールばかりです。
    冬になったら、よろしくお願いいたします。
    私、12月から3月は繁忙期なんで、釣りもお休みです。

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    1. おはようございます

       承知いたしました。冬になったらまたご相談下さい。
       PENNはもちろん自信ありますが、シマノも古い型でも展開図をサービスで公開してくれているので何とかできると思います。

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