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2020年3月8日日曜日

狙う魚が違えども釣りの根本はいっしょ


 昔は「魚釣り」って一括りにするのはあまりに大雑把で、トローリングでジャイアントブラックマーリン釣るのと用水路でタナゴ釣るのとでは全く違うと思ってた。「魚釣り」って有名な定義のように「糸の端にバカが居て、もう一方の端に魚が居たり居なかったりすること」っていうぐらいしか共通点はなく、スポーツでいえば「球技」ぐらいの大まかなくくりで、魚釣りが趣味ですっていう人でも私のようになんでもヤる人間は少なくて、普通は熱烈なサッカーファンのイタリア人と長年選手として闘ってきたインドのクリケットプレイヤーが「球技」を共通の話題として盛り上がれるかっていうと通訳の問題はさておき非常に難しいだろうって感じで、カジキ釣りの人とタナゴ釣りの人ではやってることも感じ方も興味の対象も全然違うだろうッテ思ってた。
 でも最近、”ゆるふわヘラ道”の続きとしてマアジ釣りに熱中していると、コマセで寄せつつその中にいかに刺し餌を同調させるかあるいは逆に目立たせるかとか、コマセ螺旋にアミコマセ付けて刺し餌オキアミのアジ釣りが、まんま冬のヘラ釣り食い渋り対策のウドンセットの釣りで、2年の短い期間とはいえ、基礎からみっちり試行錯誤して身につけたヘラ釣りの技術がまんまアジ釣りに使えるので、ヘラ釣りもアジ釣りもプランクトン食性の魚を寄せ餌効かせながら、浮子で水中の様子探りながら釣るということ自体は全く一緒で、そうなると縦誘いで刺し餌を動かして口を使わせるのとか、食い渋ったら長ハリスで長待ちが効くとか、違えば違うほどいよいよ同じと思わざるを得ない。
 特に、ヘラ釣りでも思ってたけど、消し込むような大きなアタリって実は違和感感じて逃げ出してる状況なはずでイマイチで、教科書見てもそういう”良いアタリ”を出すように餌とかハリスを調整しましょう、ってなってるんだけど、ヘラでもアジでもこちらが見にくい小さなアタリは向こうも違和感感じにくい状態にあって”居食い”していることが多くて、そういうアタリを出せて拾えるようになると上顎センターばっちりで釣れてくるんである。ホントだよ。
 ヘラ釣り真面目に練習しておいて良かったと感じるのは、まさに釣りの基本である”ハリとイト”についてきっちり自分なりに試行錯誤して実践をふまえて考え直す機会を得たことだとも思っている。
 ハリはそこそこ考えていたけど、イトのほうは切れなきゃいいやぐらいに考えてたので、ハリスの細い太い、長い短い、それによる張りの違いなんかを、オモリと浮子とのバランスも含めて考えるようになって、ハゼ釣りとか小物釣りにおいても”切る札”が増えて如実に釣果につながった感触がある。

 三平くんがゴッツイ道具で大物を釣るのがビックゲームなら、繊細な道具を駆使して小物を釣るのも同くビックゲームで”小さなビックゲーム”なんだよって、外国からの客人をもてなした話はまったくそのとおりだなぁと、今では素直に得心する。
 結局釣りなんて、糸の先に付いてるハリに魚が食いつくような餌なりなんなりを付けて、口使わせて掛けて釣り上げる、っていう本質的な行為はおんなじで、魚の大きさなんて多少小さくても竿を柔らかくとかイトを細くとかでいくらでも増幅可能であり、どうでもいいっちゃよくて、結局どんな釣りも面白いし、自分好みの釣りをすれば良いんだろうってだけだと思う。
 こういうことを、小物しか釣ったことない釣り人が言うと、単なる負け犬の遠吠えに聞こえるので、それが嫌で他人から見てもそこそこ大きい魚を釣っておきたいと思ってた。フッフッフ、ワシゃロウニンアジ30キロオーバーもスズキ90アップも釣ってるから多少エラそうなことほざいても許されるよネ。ロウニンアジ?まあデッカいアジだったですよ、ちゃんとゼイゴもありましたよ。とか生意気言っちゃったりして。
 
 釣りメディアとか釣具屋側が流す情報を鵜呑みにしていると、この魚はこう釣らなきゃダメだ的な洗脳にハマったりするけど、そんなもん同じ魚でも場所や時間が違えば違う性格をあらわしだすぐらいで、同じ魚でもいろんな釣り方があり得る。逆に一つの釣り方でなんでも釣ってしまうっていうことも、きちんと授業料払って身につけた釣り方を持っていればできることも多いと感じていて、私はルアーの釣りをラージマウスバスで憶えたので、基本障害物や地形変化狙いの接近戦が得意で、ルアーで釣るときは渓流のイワナだろうが港湾や河川のシーバスだろうが、障害物・地形変化をピンポイントで狙う近距離戦に特化している。
 内房の運河で使ってた6.5fのランカーギアXは多分バスロッドのたぐいで、実際バス用に買った竿だったけど、内房運河で飛距離なんて全く必要ないけど、障害物の際とかにぶち込む精度は必要なのでその長さでちょうど良かった。紀伊半島の河川のシーバスに使ってる竿も7fのアグリースティックエリートで決して長竿じゃない。
 バチ抜けは結構川の真ん中でライズしたりするので8fのブリストール持ち出すけど、それ以外ではシーバスって基本岸近くのかけ上がりやら浅瀬をやってくるのが狙いやすい魚なので飛距離なんて必要ないと思っている。飛距離的には6fの竿でもやれると思うけどある程度竿でタメてバラさないようにと思うと7fぐらい欲しいなって感じ。

 あと、この地に移住してきて”違えば違うほどいよいよ同じ”だなとつくづく思ったのが、アジ科の魚食魚は種類違えど大きさが違えどルアーとかに対する反応が一緒ってこと。
 まあ同じ系統の魚で同じ餌食いにやってきてるなら一緒で当たり前なんだろうけど、カンパチの小さいのが、メッキと同じようにポッパーやらペンシルなんかに食ってくるし、ブリの子供も同じだったのは面白かった。
 メッキがギンガメッキでもロウニンメッキでもトップにパコンと出るのは親譲りだなと思ってたけど、一族郎党親類縁者まで含めて一緒のようだ。
 カンパチってやや深い根についてて、ルアーだとジギングの印象が強いけど、浅いエリアにやってきたら当たり前にトップに食ってくるんだなというのは、知識としてはミッドウェーだかでフライのポッパーで釣ったデカいカンパチ抱えてる丸橋先生の写真とか見た憶えあって知ってたけど、自分で釣ってみるとやっぱりちょっと意外で面白かった。

 陸っぱりからの青物狙いではメタルジグぶん投げるショアジギングが一般的かもしれないけれど、遠目を回ってくるなら飛距離重視でメタルジグ一択だとしても、プラグの射程距離内に回ってくるなら断然大きさがあってアピール力の強いプラグが有利で特にトップが何故か釣れると内房のカヤックでのワカシ釣った経験からも、この地で釣ったメジロの派手な出方からも確信している。
 カヤックでナブラ打ちしてたときなんて、メタルジグなんて食わんから使わんかったぐらい。小さいカタクチ食ってても、小さいメタルジグなんて食ってこずにザラパピーを水面滑らせるようにシューッと引いてくるとバコンとでたものである。
 おそらく、ブリ一家に限らずどんな魚でも、海域やら時期、天候や潮、餌の状況、魚の機嫌によっていろんな釣り方が成立したり、その時々の勝ちパターンがあったりするんだろう。
 そういう、複雑な状況を読み切って、最適な釣り方をいつも選択できるように、なーんていう理想論は机上の空論で、”絶対トップで釣れるはず”とかいう苔の一念で魂込めて釣れるまで投げ続けるのがワシには結局取り得る唯一の方法なんだろうなと思う。
 そういう中で情報収集して失敗も経験して修正かけて、自分の中の正解にたどり着いていきたいモノである。大丈夫、今までもそうやって釣ってきた。基本は一緒。
 他人がどんな釣り方でどれだけ釣ろうが、オレが釣ったわけじゃないから関係なくって、自分の釣る魚をしっかり見つめていきたい、と隣で釣られると心千々に乱れることが多いのでここに決意として書いておこう。

2019年3月23日土曜日

異邦人狂詩曲


 全国50人くらいのナマジファンの皆さんスイマセン、今週もスピニングリールネタの予定だったんだけど、だいたい予想通りに釣りが忙しくなってきてくれてて、長々とクドクドと冗長にネチっこいナマジ品質の記事書いてる暇が作れずスピネタお休みです。

 実際に釣りに行けるのは体力的な限界もあって週2か3ぐらいなんだけど、魚釣れるといろんな情報が得られるので、次の戦略を練って備えなければならなくなり、浮子やらルアーやらを増産掛けたり新作作ったり、ライン巻き替えたりハリス結んだりとやることはいっぱい出てくる。

 ヘラ釣りの方は、完全に春っぽい釣りになってきて、魚の多い公園池では”釣れすぎる”状況になってきたので、次回から魚のうっすーい管理池で、今年こそキッチリ釣り込んでみたいと決意も新たに準備している。桜の咲く頃2年前に始めたヘラ釣りももう3年目に突入する、もう初心者じゃないし、基礎からきっちりクンフー積んできたという自負もある。
 数はやっぱり半日やって5~10釣れるぐらいの適度な難しさの時が一番面白いように感じる。それ以上の自分に不要な魚を釣る必要はあんまり感じない。
 公園池、なぜかここ何回かうどん系の刺し餌食ってこなくて両ダンゴが好釣だったので両ダンゴの修行が予期せず進んでしまい、新しく得た知見をふまえて両ダンゴ用の浮子など増産してみた。
 基本、浅棚の両ダンゴ用の浮子は、足が長くてスマートなタイプが多いようで、そういうのを作ってあったんだけど、魚が上ずって餌が上の棚でつかまるようになると、立ち上がりが早いはずの足の長い浮子が意外に立ち上がってこない。
 たまたまペレット配合系の重い餌を支えるためにトップ太く長くという浮子も作ってあったので使ったら塩梅良かった。
 足の長い浮子は立ち上がり始めるのは早いし小さな力で立ち上がるけどユックリと立ち上がる、対して足が短かい浮子は立ち上がり始めるまでは遅いけど立ち始めると早いという浮子作りの基本があるようだ。加えて足を短くするとその分浮子自体は軽くなって、それとバランスするオモリが当然重くなるので、餌を引っ張って早く沈んでくれるという要素も絡んで、足短めでトップも中空パイプで浮力があって軽い浮子の方が、表面張力だの上下の重量バランスだのも含めた総合的な釣り合い方で、餌が上で止められる状況では結果的に早く立ち上がって早いアタリがとりやすいという結果だったのかなと推測している。
 写真右が好釣だった「パ45太」で左は一般的なバランスで細いパイプトップで作った「パ45」。この二つを比較して浅棚における浮子の立ちやすさ早さなんていうのも検証してみようと思う。
 多分餌がオモリより下にある時点で食ってくるなら、ハリスが下に引っ張られる方向に魚の影響がでてトップ軽く足長くな左の浮子の方が良いとか、状況によって差が出るんじゃないかと思っている。
 かつ、今の主流の浮子というか釣り方が、あまり早いアタリをとらないナジミ込んでいく途中の釣りを想定していると考えると、逆の早いアタリに特化した浮子と釣り方は、そういう狙われ方していない魚が多いかもしれず、玄人衆を出し抜ける手札となり得るんじゃないかと期待している。
 管理池のほうは魚が少ないので、昨シーズンまでは回遊してくる魚をじっくり待てる底釣りを中心に釣りを組み立てていたけど、今期は周りに”寄せ負け”しないように速いテンポで餌を打っていく浅棚や提灯の釣りを重視してみたい。
 あと、魚少ない分型は良いので、ハリスを0.3号中心から0.4号中心、0.5号もということで、底釣り用のは両ダンゴのハリスも昨年のがあったけど、浅棚用のハリスはなかったのでだいぶ結んだ。
 首尾良く釣れると良いんだがどうなることやら。

 その前に、今日からシーバス3連戦で、そろそろカワゴカイ系のバチパターンは終わりそうな時期なのに加え、だいぶ釣り人にも叩かれバチも食べ慣れて食い方が弱く、選球眼も厳しくなっているハズなので、いつもの中ニョロだけでなく、いくつか投げる予定のルアーを用意して追加で作ったりしたところ。準備おさおさ怠りないつもり。
 基本的には一番上、いつもの中ニョロは引き続き先発ローテに入ってもらい、やや軽くて動きがない「お手元ルアー」と「F改」で中軸担ってもらおうかと思ったんだけど、F改の在庫が心もとなくなってたのでラパラF9は在庫まだまだあるので改造しようかと思った。けど、過去のは鉛使って重量をゆっくり沈むぐらいに調整してたのを”鉛フリー”でスズハンダとかでとなると鉛より沢山埋め込まねばならず面倒くせえ、タングステンの錘でも使うかと思ったけど、そういえば昨秋好釣だった「自作シンペン」は”動かない動き”といいボリューム感といいF改と同等だったなと思い出して、秋のイナッコが餌の時用のより細めのを増産してバチでもハクでもドンとこい仕様のを用意してみた。ちなみに写真では一番下。
 今日は雨が降らないなら下流エリアの砂州ポイントあたりで始めるつもりだったけど、雨が降るなら釣り人も減るだろうからカワゴカイ系の抜ける2本目橋下に入って、最後過ちポイントも要確認という作戦。

 てなことをやりつつ、復職向けたリハビリメニューも意外に真面目にこなしてて、マスクしながらジョギングも週2で続いているし、電車で出かけて机仕事想定してどっかで時間潰して帰ってくるというのも続けている。ヘラ釣りでも痛感するけど、まだ8時間座ってる体力集中力がないのよね~。困ったもんだ。と人ごとのように思っておく。
 春分の日は、久しぶりに同居人と映画など見に行ってみた。人混みと映画の長い時間集中して観ているのが疲れたけど、「ボヘミアンラプソディー」とても良い映画で楽しめた。
 英国の伝説的バンド「クイーン」を題材にした映画で、評判良いのは聞いてたけど、期待を裏切られずにすんだ。
 多分、私は直撃している世代よりちょっと下の年齢なので、思い入れが強すぎることもなく、素直に作品世界に入って行けたように思う。
 傑出した才能の持ち主がありのままに生きる、その難しさや苦悩や孤独について描きつつも、良い塩梅に暖かい物語に仕上がっていた。
 クイーンあたりのいわゆる「洋楽」って、JOSさんが大好きで、釣り場への行き帰り車の中では「クイーン」「ディープパープル」「ポリス」あたりが良く流れていたのを懐かしく思い出す。あとツーテンの虎ファンさんの車内にはだいたい「ボブ・マーリー」か「六甲おろし」が流れていたのも懐かしい。
 まあでもマンガオタ的には「キラークィーン」とか「バイツァダスト」とかが流れる度にジョジョを思い出すんだけどね。
 クイーン関連商品も売り上げ好調で楽曲ダウンロード数とか凄いらしいけど、野中先生がすかさず便乗して「魁!!クロマティ高校」の外伝描いてるのには腹抱えて笑わせてもらった。クイーンファンの皆様はフレディ出てくるけど「クロ高」読んじゃダメ、絶対!!
 なにしろ巨人史上最強の外国人助っ人の呼び声も高いウォーレン・クロマティー氏に訴訟起こされたという伝説級のバカマンガ。ワシャ好きやけどな。
 
 てな感じでユルユルとしつつもそれなりに忙しくて、リールいじるのは後回しにしてて、かつ昨日もリール1台人様に進呈したりもしてて、やっと目標の90台まで後1台に迫り順調に数を減らしており、スピニングリール熱は”峠を越えた”と思っちょります。
 油断してまたぶり返さないようにしっかり魚釣って養生していこうと思います。
 スピニングリールネタはあと2つぐらい残ってるので、また書くので楽しみにされていた方はしばしお待ち下さい。

2019年2月9日土曜日

キリリと冷えた敗北の味


 冬の夜シーバス釣りから帰ってきて、腰にぶら下げてたペットボトルの水を飲むと、キンッキンに冷えてて、最後悪あがきであちこち自転車でみて走り回って渇いた喉と興奮やら悔しさやらで火照った体にに染み渡る川崎の美味しい水。
 釣れたらもっと美味しいんだろうけど、釣れなくても一仕事終えた後の一服というかんじで、無収入になる日も近そうなので節約せねばとペットボトルに水道水詰めただけなんだけど、甘露甘露という感じである。

 この一杯のためだけでも寒い中釣りにでかける価値がある、なんてご大層な代物ではもちろんなく、ただの水道水なんでそんな万能の聖水みたいな霊験あらたかなわきゃなくて、スカ食ったらクッソ悔しいわけで、今日もふてくされてナニもする気にならずゴロゴロしてたんだけど、いつまでもグダッてるわけにもいかないので、今後の作戦など考えてみる。

 まあ作戦っちゅうても、シーバス狙いの場合は基本「釣れそうな日になるべく釣り場に行ってルアーを投げる」以上。
 てなぐらいでやることは決まってるんだろうけど、もうちょっと細かく想定して行くと、昨春のシーバス11連敗の時もそうだったけど、どうにも混雑した釣り場が苦手で、横で他人が釣ったりすると焦ってペースが乱れる。心が千々に乱れる。
 今年はこれまで以上に”人山”立ったりしてるので、人山立ってるところを避ける作戦を当初想定していたより極端に詰めて実践するのかなと。
 いつもの2本目橋下流周辺のネット蛇篭やⅠ本目橋ぐらいでは逃げ切れなくなってるので、思い切って下って水門上流や3本目橋周辺を主体に釣る。まだそっちは細かい川底の地形変化まで把握している釣り人は少ないだろうから、シレっと良い場所確保して広々と釣りできそうに思う。
 っていっても溢れるほどの人山立てばそちらにも人は流れてくるはずで、もっと極端にいっそ今まで釣ってなかった上流部とかも早い時間に釣れて余裕ができたら探りに行くべきかもしれない。なかなかそこまで手がまわらんか?

 ヘラ釣りの方で癒やされておけば、シーバスのスカは耐えられるという補完関係にあると思うので、ヘラ釣りで魚の感触楽しんでおきたいんだけど、ヘラがまた渋い時期突入中で、いつデコってもおかしくない状況。
 今日は関東大雪の予報は外れたようでちょっと降っただけで済んだけど、来週も天気不安定で気温もなかなか10度を超えない寒い日が続きそう。食い渋り時の頼みの綱の”段底”が最近イマイチなかんじなので、とにかく段底の感を掴むのが生命線になりそうなので、次回用に手札を一つ用意した。
 公園池は8尺で底が取れてしまい、8尺で提灯ウドンセットをやろうとすると刺し餌が着底してしまうので、浮子を竿先からある程度離した「提灯風」ウドンセットしかできないんだけど、例によって「逆に考えるんだ」と考えれば、8尺で足下近くで段底ができるのである。
 そんなもん沖の方が深いだろうし長尺の段底の方が有利だろう?と普通思うだろう。実際そう思ってるのか底釣りのオッチャン達は長竿振ってスコープでアタリ見てる。でも、そういうオッチャン達って一日中スコープ覗いてるだけであんまり釣ってるように見えない。
 長い竿で深くを釣るにはそれなりにオモリが重くないといけないし、それにあわせて浮子も大きく仕掛けも太くせざるを得ないはず。かつスコープで見てたって細かいアタリ取りきれるかって話。

 その点、足下を8尺で釣るならオモリも浮子もそれこそ宙の釣りで使うような軽めのを使って仕掛け全体を繊細に仕上げることができる。弱い吸い込みでも浮子が近くにあるので小さいアタリ見逃さず取れそうにも思う。繊細な仕掛けで吐き出すのも遅くなってくれるはず。
 魚が深い沖にしかいないってのなら負け確定のバクチだけど、どうもそんなでもないように感じている。
 沖目深めであまり動かない魚もいるんだろうけど、活性のある魚は岸近くにもやってきていてそういうヤツを狙った方が策が填まったときに確実に釣り込めるンじゃなかろうか。これまで昨期も含めて厳寒期でも浮子が動くところまでは何とかなることが多く、寒くても案外ヘラブナ活動的な気がしている。冬眠せんで良いのか?と疑問に思うぐらい。

 正直言って沖の深めに餌ぶち込んで、延々と活性が何かの要因で上がったら回遊してくるであろう程度の魚を1日待つのは、魚の薄い天然水域とかの釣り方で”箱”に近いような小さな公園池では、段底でも積極的に餌撒いてやる気のある魚を寄せ続けて食いアタリに繋げていくのが正解なんじゃないかと見ていて思うところなので、小浮子の足下作戦でちょっと、デコらない厳寒期の釣りってのを狙ってみたい。
 意外に底切って提灯風ウドンセットが厳寒期でも通用する可能性もあるので、反応なくなったら寒くて手もかじかんで面倒だけど、持ってる手札切りまくって反応探っていきたい。

 そうやって苦労しているうちに、春になって季節が良くなって花粉症酷くなる頃にはグダグダッと釣れるようになっていくんだろうけど、そこまで厳しい釣りをしのいで、ちょっとマゾヒスティックに楽しんでみたい。
 全く釣れないのは面白くないけど、適度に苦戦すると良い出汁が出て釣りに味が出るってなもんだと思う。

2018年4月7日土曜日

ヘラ釣り1周年!


 昨年の今頃、願はくは花の下にて春釣らむ、とヘラ釣りを始めたわけだが、管理池で屈辱のオデコデビューを果たし苦節1年の修行を経て、先日リベンジマッチに挑むも返り討ちにあい、1年ぐらいじゃたいして上手くはなんねぇなと思うものの、それなりに得たもの感じたものも多かったので、そのあたり振り返りつつ、今後の目標なども書いてみたい。
 
 まずはなんといっても、ヘラ釣り面白くて楽しめていることは良いことだろう。
 ヘラ釣りにおいては凝り性の日本の釣り人が、細かいところ微に入り細に入りという感じで、これでもかというぐらいに様々な技術を考えて、実戦され、今日でも日々洗練・改良されている。
 そういった体系化された技術を一つ一つ憶えていくと、それもお勉強で頭に入れただけではなく体をつかって習得すると、きちんと魚が釣れてくるようになる。努力に応じて結果がついてくるのはやっぱり嬉しいモノである。
 ヘラブナ釣りでは、餌の重さ分トップが沈む「なじみ」と餌が溶け落ちることなどにより浮子のトップが上がってくる「戻し」を把握しながら釣っていくのが基本中の基本なのだけど、最初餌付けがままならず、餌が水中で持たずに割れ落ちたりしていると上手く「なじみ幅」が出せない。
 それが、ハリに餌をしっかり付けるなんていう基礎中の基礎ができてくると、餌の重さでなじみ混んで沈んだトップが餌が溶けたり底釣りだとハリスの傾斜が真っ直ぐになったりして「戻して」くるとかの水中の餌の状態が浮子で把握できるようになってくる。
 その基本中の基本ができてはじめて、「底釣りのアタリはなじんで戻してツン」というのとかが狙って出せるようになってくる。
 ごく基本なんだけど、基本っていうのはきちんと理解して実戦できれば効果が大きいから最初に習うべき基本たりえるんである。
 バラケを餌付けできずに、ボタボタ手前に落としてコイに食われまくってた始めたばかりの頃と比べれば、バラケをしっかり付けることも、逆にユルくしてわざと早い段階でハリから落とす「抜く」こともそれなりにできるようになって、基本がようやく分かってきた段階だけどちょっとは進歩を感じられる。
 去年の今頃、ほんとに何にもできなかったのに、今はバランスの底釣りは好きな釣り方と言えるぐらいに管理池でも実戦を重ねたし、段底、提灯ウドンセットもこの冬にだいぶ練習して理解が進んだ。浅棚ウドンセットもちょっと囓った。
 もうワシャ初心者じゃないねン!と宣言しておこう。

 私にとって浮子はまだ単純で取っつきやすかったので、浮子を中心とした仕掛けを自分なりに最適化していくのは、浮子作るのが楽しく、作った浮子で釣るのがまた楽しいということもあって、あれこれ楽しみながらヘラ釣りにおける浮子というものについて、ずいぶん理解を進めることができたと思う。ヘラ釣りするなら浮子は自作した方がイイと重ねてここでもお薦めしておきたい。
 浮子の感度は、小さなアタリを大きく表現させたいのなら細いトップが向いている。そのかわり大きくゆっくりアタリを拾う(大きく動くアタリだけ拾えるバランスがあり得る)ので短い刹那に数多くのアタリを拾うようなことはできない。とか、小さい浮子のほうがオモリも軽くできて魚が吸ったときの違和感が小さいはずだけど、小さい浮子の軽いオモリでは途中で魚につかまったりすると棚に餌を届けることができない。とか、トップの長さはその浮子を使った釣り方でどれだけなじみ幅を出させるかで決まる。3目盛もなじめばよいバランスの底釣りではトップは短めで良い。逆に浅棚用の小浮子でも、重いダンゴ餌をぶら下げるのならトップは太くて長い必要がある。とかとか、結局用途に合った良い塩梅の浮子があるわけで、極端に振った性能の浮子は特殊な状況でしか力を発揮しないけどハマれば強く、適度にほどほどの性能にした浮子はそれなりに何でもこなすけど、物足りないときも出てくる。という感じのごく当たり前のこととを学んで、自分の釣り用の浮子は市販品で合うのを探してくる手間と費用を考えたら、多少デキが悪いぐらいは我慢して自分で作った方が良い浮子を使えると思っているところ。

 餌については、各種餌のブレンド(配合)とか考え始めると収拾が付かないので、とにかくバラケはダンゴ兼用で3種類、「軽くてまとまるの(両ダンゴA)」と「やや重くてばらけるの(両ダンゴB)」と「重さがあって粘るの(底釣り)」を用意して、とにかくこれらの比率を変えたりして、①どれだけバラけさせるか、②どれだけ重くするか、の2点を基本に考えて、むしろ餌の配合よりは作ったバラケ餌をどうやってハリに付けるか、手水の追加で柔らかく、練って粘らせる、グルテン追加でまとまりを出す、等で調整してどのくらいハリで持たせるかをなじみ幅を見て確認しながら使ってきた。
 今のところの感想としては、ハリに持たせるあるいは抜くというのの調整などは、これだけ単純化した餌構成でも充分可能。
 はたして、餌屋さんが推奨するような複雑なブレンドや釣り方毎にバラケを変える必要があるのかについては大いに疑問を感じている。
 大会で勝つとかシビアな釣りをやるんじゃなければ、ダンゴ餌をバラケさせてセットのバラケに使っても何ら問題ないように感じている。先入観なくやっちまえば案外やれるもんである。
 自分の中でバラケの使い方の課題として「ウワズリ」をいかに抑えるかというのがある。小さくしっかり付けるようにするという基本対応の他に、ペレット系の粒餌を追加するというのが推奨されているのを目にするが、それならペレット系で重い「底釣り」を後から基餌状態で混ぜてやると、重さもつくしバラケ性が抑えられるのは餌実験で確認しているので、それでかなりいけるんじゃないかと思っているところ。じゃあどのくらいの比率で追加で混ぜてやれば良いのかとか、実戦でこれから浮子の動きと魚の掛かりかたとかを見ながら試していきたい。
 餌実験で基本的な餌の性質が把握できたのは、餌を使っていくうえで極めて有用だったと思う。水中の餌をどうしたいのか、その時考えられる方法にはどういうのがあるのか、なんで「餌を混ぜる順番」があるのか、分かっていればバラケ餌3種類でも結構やれるという根拠になるし、行き詰まったときにどの要素が足りなくて足すべき餌は何なのかとか絞りやすいと思う。知識を基礎から積み上げるのは大事。

 このあたり、何も分からぬまま餌屋さんの戦略にはまってしまうとヘラ餌の袋が際限なく増殖していくので、種類増えてもその分1種類毎の使用量が減るわけで、全部を悪くなる前に使い切れれば、餌にかかる費用は単純に増えるって訳じゃないので良いといえば良いんだけど、可能なら自分の理解できる範囲に単純化して無駄なものに労力さかずに済ました方が、方針やら持っていく餌やらがスッキリすると思う。
 各種新発売の餌を加えることによる違いよりも、加える水の量とか付け方とかでの調整による違いの方が大きくて、なきゃないで今まで釣ってきたんだろってぐらいで、餌屋のいうことを100%信じなくてもいいと思う。いつも書いているようにほどほどに騙されておきたい。
 
 まあ、そのあたりの釣り人の新しもの好きというか、都合の良い魔法の道具とかを信じたがる性質は、釣りモノが変わってもというか、変われば変わるほどいよいよ同じで、高い道具やら最新の餌やらが好きな人は大いに使って釣り業界を潤してあげて欲しい。ワシャつきあわずに安竿つこて、餌も適当にやらしてもらいまッサ。すんまへんな、堪忍しておくんなはれ。

 これからの目標なんだけど、なんといっても管理池でデコらないを目標にしたい。
 ヘラ釣り始めて良かったことの一つに、魚の「大きさ」とか「他人からの評価」とかって、やっぱりあんまり自分には関係ないんだなというのが再認識できたことがあると思っていて、まあ大きい魚が釣れて他人様から褒められたりしたら嬉しいっちゃ嬉しいんだけど、管理池で放流されたヘラブナを何匹か釣ったところで、別にヘラブナとしても大きくなく巨ベラとかじゃないし、大会で勝つような分かりやすい勝利でもないので、多分ヘラブナ釣りやってる人から見ても、「管理池でデコらずゆるふわ目標値の5匹釣った」とかいう結果は一言「あっそ、そりゃ良かったね」ですむ釣果である。
 にもかかわらず、私にとってはその釣果が、喉から手が出るほど欲しいし、釣れればまた脳内良い汁がビュルビュルッとほとばしるに違いないぐらい価値があるんである。
 魚の大きさなんてのはそれにあわせた道具立てで釣れば良いだけだし、他人の評価なんてどうでも良いジャンと正直思える。
 私にとっては、近所の管理池の素人衆泣かせの渋さの中で、なんとか技術を磨いてデコ逃れたら、そしてゆるふわ目標値の5~10匹とか調子に乗って釣っちゃったら、オレだけにしか分からない価値ある釣果になると思っている。

 始めて一年経って、浮子は良い感じに基礎が分かってきた、餌は難しいけど、両ダンゴ含め、バラケ(ダンゴ)餌の調整を今年の技術的課題として意識していきたい。
 管理池でコンスタントにゆるふわっと5~10匹釣って、早めに余力残してきりあげるぐらいの、ゆるふわ的「やれる釣り人」に私はなりたい。

 心の底からデコはもう嫌じゃ~!釣れてた組の末席汚すぐらいに出世したいっ!

 ということで、明日もヘラ釣りの予定なのだけど、前回管理池デコで次は公園池で練習という予定だったのだが、脳内3賢人会議でナマキオールもナマタザールも「調子に乗らずに地道に練習」という意見だが、また強行派のナマパールが「デコるかどうかヒヤヒヤする中で本気でいかねば「ゆるふわ」の奥義は掴めぬ、管理池に行くのじゃ」とゴネている。玄人衆の今日の釣果情報とかを確認して今夜また脳内3賢人会議を開催して決めたい。

2018年3月3日土曜日

日曜大工のお父さんの復権を

 長年乗ってきたSUZUKIワゴンRを最近全く使ってないので車検通す費用ももったいなく思い廃車とすることにした。
 さまざまお世話になったね、ありがと。
 我が家では車は釣りぐらいにしか使っておらず、車はカヤックと双璧をなす高額の釣り具という認識であった。
 カヤック積んだりしてアクアライン超えていく釣りは、ずいぶん時間も手間もかけて開拓した釣り場が多い。車なしとなるとそれらを捨てざるを得なくなり、そう思うと断腸の思いである。
 なんだかんだいってワゴンR、永く乗ってて愛着もあったし。
 付随して、カヤックで攻める浅場の大型シーバスのためFマグ100個ぐらい備蓄してあるのがただの死蔵になってしまう。まあFマグには使い道またあるだろうけどね。
 雨後の内房の運河も手堅い釣れっぷりだったので、これからも美味しい釣果を収穫できる釣りだったはずで後ろ髪を引かれる。
 でも、体力的に不安があって帰り道の運転を安全に行える集中力に全く自信がない状態なので、しばらく車の運転は避けた方が賢明だろう。
 車がなければ、自転車と電車である。結構車なくてもやれるってところを示して行けたらなと思っている。

 自動車って、アクセル踏んでハンドル握るだけで、簡単に人をひき殺せるだけの大きな力が手にはいることにより、事故でも起こせば責任の取りようもないことになりかねず、心のどこかに不安を感じて運転していた。自分の体の延長線をこえた過剰に大きな力はとても制御しきれず恐ろしさを常に感じ、私は男子には珍しく、車の運転があまり好きではなかった。
 そういう有り体にいって「運転が下手」な人間は、人が制御できるぐらいの速度でゆっくりと行く自転車と、プロの運転手が運転する公共交通機関を利用するのが妥当なのではないかとも思う。街に住む限りはそれで不自由しないだろう。
 車と自転車で比較して自転車が好ましいのには、パンク修理だのブレーキワイヤー交換だの、基本的な整備程度は店に持っていかなくてもできるところ、自分で手を入れられるあたりにも大きな魅力というか安心感を感じるというところもある。

 今時の車なんて電子制御的な部分も多くて素人が修理するような余地はあんまりない。それじゃ私は道具としての愛着は感じにくいと思う。むしろ屋根に積んだカヤックから垂れた塩水で錆びて穴があいて防水テープでペタペタ取りあえず塞いだあたりに愛着は生じ得る。
 自転車はそのあたり、自分で整備するのが当たり前なので、愛着は湧きやすい。と、リールも自分で分解整備できなきゃつまらないと常々思っている人間の感じるところ。 

 私の父を思い出すとそうなんだけど、昭和の男は日曜大工で大概のことは片づける能力があった。
 パンク修理の方法や刃物の研ぎ方はじめ扱い方、簡単な木工仕事、横で見ながら身につけたものである。
 いま日曜大工って言わなくってDIY(ドゥーイットユアセルフの略だっけ?)って言うんだろうけど、なんか電気屋さんに頼んだら金が掛かることを自分でやるための方法とコジャレたインテリアとか作ってSNSとかでドヤる方法の2つに2分されるように感じていて、前者は必要性は理解するし自分もするけど大工というより電気屋だろうし、後者はケッという感じだと思っている。

 なんというか、日曜大工って必要に迫られて、有り合わせの道具使って、なんだかんだ間に合わせてしまうようなやっつけ感と即興性が味のうちで、デザインよく素材も吟味してとかやっちゃうとちょっと私の思う日曜大工とは乖離していくように思う。
 たとえば昨年、同居人からの、ゴーヤと朝顔でグリーンカーテン作りたいから、ネット吊して。という命令に、前の住人が室外機吊してた金具のナットを緩めてルアー作成用の太いステンレス線を巻き付けてナット締めて固定。2カ所でステンレス線でネットを吊した。ネットの下の方は柵にビニールひもで固定。って感じでありあわせの材料とかをつかって、見た目はアレだけど何とかしてしまうというのが日曜大工の腕の見せ所だろうと思う。材料レシピ通りに買ってきて作る料理じゃなくて冷蔵庫にある食材でなんか美味しそうなものをでっち上げるのに似てる気がする。
 
 なぜに、日曜大工の話なんてし始めたかというと、冬の間寒いと部屋にこもりがちで、へら釣りが始めたばっかりで浮子を中心にいろいろと作るものがあったり、ルアーいじったりというのが、冬の外に出るのもおっくうな時期の良い暇つぶしなので、自分の手でモノを作ることについてちょっと考えてみたのである。
 「モノ作り」なんていうと、なぜか凝り性な日本人は作務衣着て「匠」になりきって大層なモノを作りたがる気がするけど、そうじゃないいい加減な「日曜大工」仕事が、実はめちゃくちゃ面白くて実用的で、っていうのが今回書きたいことの趣旨である。


 ヘラブナ釣るのに浮子作りから入ったのは本当に大正解。
 ご存じのように私の作るへら浮子「ゆるふわ」シリーズは、羽浮子のように貼り合わせたり、カヤ浮子のように絞ったりというような難しい行程はいっさいない、バルサを削ってトップと足を突っ込んだだけの簡単設計である。
 これで浮子としての出来が悪ければ仕方ないけど、細かいところの詰めや耐久性とかは市販の良い浮子に負けるにしても、オモリを背負って浮いて、引かれればトップが沈むという基本性能において、全く問題なく使える性能を有している。
 道具もあるし材料もルアー作りに使っていたバルサにウレタン塗料に加えてトップを買うぐらいで、まったくありモノで間に合わせられている。
 自分の釣り場での課題や好みに合わせて、細かい調整や改良を加えて浮子を作って行くのは、浮子の持つ役割の理解が深まるとともに、釣りそのものへの理解も深まる。
 なので釣り方を試す度にドンドコほしい浮子を作りまくっているのだが、これまで40~50本ぐらいは作っただろうか、これを作らず買っていたらエラいことである。一本3000円とすれば10万円以上かかっていたはずで、これからも増えることを考えると作ってすませることができてホッとする。

 私の作る浮子もルアーも見た目はいまいちショボい。でも実用性は十分で実戦投入して成果を出せている。それはとても楽しいことで、「匠」の名品を作ろうとしがちな釣り人には、もっとゆるふわっといい加減に作ってもいいんですよ、と強くお勧めしたい。
 世の中には本物の「匠」が作った漆の塗りもきれいな高級浮子とかがいっぱいあるけど、私が私の釣りのために必要な機能を持たせて作った「ゆるふわ」な浮子は私にとってそういう高級浮子以上に愛着がもて、かつ自分用に作ってるだけあって使いやすい浮子になっており、もう高級浮子など買う気にならないぐらいである。

 日曜大工って、いろいろできるようになっておくと、道具と材料を使い回せるようになるし、技術も応用が利く。例えばさっき例に出したゴーヤのネットを吊すために使ったステンレス線はGTルアーの補修の為に道具入れにあったステンレス線を使ったところであり、ルアー作成の道具素材が浮子にも使えるのは書いたとおり。
 ルアーの壊れたところを接着剤で補修する技術なんかは、同居人の靴のヒールが欠けたときに応用したりしている。

 戦後派の私の父世代は、高度経済成長下でお金を稼ぎつつも、今ほどモノが何でもある便利な時代じゃなかったので、何でも作ったし直した。その技術をかろうじて受け継いでいる私も日曜大工の技術は釣り具作成修理の技術とも混同しながらもなんとか保てている。
 モノがバカスカ売れて、壊れれば買い直した方が早い、仕事はあるので買い直す金を稼ぐことは簡単だ。という大量消費廃棄文化の時代には日曜大工の技術なんて全く無用の長物だっただろう。
 でも、これから迎える超小子高齢化でかつ日本じゃ景気よく稼げる業種が得意の自動車製造ぐらいに限られてきて仕事が少ない、働き手が減る分は人工知能による効率化とか外国人労働力とかで経費削減しながら対応するという社会になってくると、金が稼げる仕事があんまり回ってこないような気がする。
 そうなると、まだ直して使えるモノを再利用するなんてのは、また必要性が高くなってくる技術なのではないだろうか。エコロジー(生態学的)の観点ではなくエコノミー(経済的)という観点から、そうせざるを得なくなるのはと思い、世知辛いとともにモノを大事にするという良いことにつながるのではと思う。
 ボロッちくなった家具に、サンダーかけて表面の古い塗装をはがして、改めて好きな色に塗り直してやる。一部の部品が破損して機能しなくなった道具を、3Dプリンターで部品作ろうが、木を削って部品作ろうがとにかく動くようにして使い続ける。
 なんてのが、仕事が減って稼ぎが少なくなるなか、余暇が増えたなら、楽しく生活していくための必須の技術になるのではないだろうかと思っている。
 
 そういういい加減な部分もある「日曜大工仕事」を楽しむために必要なのは、いい加減で見てくれの悪いのを許容するというか、むしろそこを愛でることができる感性が重要になってくると思う。
 例えば、最近作ったへら用の「タモの柄」。凝り性の日本人らしく作務衣着て気合いを入れて竹の火入れから始めてしまうとすれば、なかなか作ろうという気にはならないし、作ったとしても本物の匠の作ったものと比べたら、なんぼ身びいきしてみたところで見劣りしてしまいかねない。
 そこを、実用上問題なくて簡単に作れればいいや、と私のような日曜大工派は考えて、中古で安売りしていたグラスロッドの素材を使ってロッドビルディングの技術とか応用しながら作ってみた。
 割と簡単で安上がり。かつグラスの素材の持つそこはかとない昭和感はB級ぽくはあるけど、それなりに味のある逸品に仕上がったように思う。と作った本人悦に入れる程度にはお気に入りなのである。

 見た目を過度に気にし始めてしまうと、素人の日曜大工仕事で作ったモノなんて大したモノにはならないと感じてしまう。でもその程度でも例えば釣りに使えるとかの実用性は十分得られるので、見た目気にせず、ある程度いい加減さを許容しながら楽しんでいくと、日曜大工は実に楽しく心持ちを豊かにしてくれると思うのである。
 大量生産、大量消費、大量廃棄なんて、二十一世紀にまでなってやるべきことじゃないと思うので、景気よかった時期に手放していた「日曜大工」の技術をみんなもう一度取り戻してはどうか。
 見た目なんて気にせずに、手でモノを作り出すという、人間がもっとも得意とするところの根源的な楽しみをめいっぱい楽しんでほしいとお勧めしておく。

2018年1月26日金曜日

絶対王者の陥落


 フロロのハリスはというか細いハリスはクレハ社「シーガーグランドマックス」で間違いない、と永年思ってきた。

 金地に赤のパッケージ、定価が50m3千円もするハリスは、出た当時、今までのエースとかとそんんなに違うわけがないやろという予想に反して、ぶっちぎりに良いフロロカーボンのハリスだった。最初に結んだときにもう、結びがそれまでのフロロカーボンのように堅い感じじゃなくてしっとりキュッと締まる感じがしてそれだけでちょっと違うなと思わされたし、とにかく強度があってスレに強くて、表面がザラザラになるような場面でも切れずに魚が上がってきて「グランドマックスで良かった」と胸をなで下ろす経験を、愛用者なら何度かしているのではないだろうか。
 「直径が半分ぐらいになる切れかかった状態でも魚があがった」と言っている釣り人がいたのもあながちホラとは思えない高性能さに絶大な信頼を置いていた。

 ただ、ルアーのリーダーのような太いハリスであれば、引っ張り強度が必要なのはリーダー部分じゃなくて道糸だし、スレに強いハリスが欲しければ物理的に太いハリスを選んでしまえば良いので、わざわざそのために高価なグランドマックス様にご登場願わなくても大丈夫で、ジギングとかの太いハリスはデュエル社の「船ハリス」つかってたし、ナイロンの太いのを選択することもある。普段のシーバス釣りでは生分解性ショックリーダーが廃盤で手に入らなくなってからは、シーガーの「エース」や「フロロショックリーダー」を使っている。昔あったヤマトヨ社の「ジョイナー」は安くて良いフロロハリスだったのだけど最近見かけない。
 ちょっと脱線するけど、生分解性ショックリーダーの「RTE」はビヨーンと良く伸びるラインでPEを道糸に使う時にはクッションのように機能していたように思う。PE使用が全盛のシーバス用とかでアタリをはじかない「伸びるナイロンリーダー」とか売れないだろうか?などとアホなことも思ったりする。

 話もどして、道糸より太い「リーダー」じゃない、フライのティペットのような細ハリスの場合、引っ張り強度も欲しいし細さも欲しいスレにも強くという贅沢なことをいい始めると結局シーガーグランドマックスだよねということになる。0.3号の細ハリスでデカいヤマメ掛けたときにあげる確率を少しでも上げたければ信頼する一番良いと思うハリスを結ぶしか選択肢はない。現在ではグランドマックスにはよりソフトなFXもあるようだけど、細ハリスではフロロカーボンのパリッとした張りがクシャッと絡まるのを防いでくれてる気がして個人的には好み。なのでFXは使ったことがないけど、強度は同程度でメーカーも釣り方とかでお好きな方を選んで欲しい的なことをいっている。

 ただ最初の方でも書いたけど、グランドマックスちょっとお高い。さすがに定価では売ってなくて50m2千円弱で買える。あんまりハリス替えないインチキフライマンな私のフライフィッシングならそんなにハリス減っていかないのでたいしたことないんだけど、ヘラ釣りみたいなハリス交換しまくる釣りではその値段でもちょっときつい。
 なんか安いのないかなと考えて、前回ナイロンの安いハリス候補を探したときに、細いルアー用のフロロの道糸は結構あったのを思い出して、試しにと買ってみた。
 アジング用だの管理釣り場のマス用だの各社から出てるけど、シーガーからも「R-18」というのが出ていたので1ポンド0.3号相当のを買ってみた。フロロのラインはクレハ社シーガーブランドならやっぱり安心できる気がする。100mで定価は2500円だけど、実売は1500円程度。50m750円はかなりお買い得。

 道糸用なのでややグランドマックスよりしなやかな感じか?まあそのあたりはおいおい使って調子を見ていくにしても、まずは強度がないと話にならないので、秤もってテスト。
 スプールから出したラインの先に8の字でループを作って秤に掛けてスプールを引っ張ってゆっくり切れるまで。切れたところの数値を読む。グランドマックス、R-18それぞれ3回平均をとる。ホントはもっと回数必要だろうけどまあ主観的な感触得るぐらいはこのくらいでいける。
 結果はグランドマックスが650g、540g、620gの平均約603.3g、対してRー18が500g、665g、570gの平均578.3gと結果としてはグランドマックスが僅差で逃げ切ってるけど、正直測る毎にぶれる誤差もあって、この程度の差は誤差の範囲内で「引っ張り強度」だけみれば同程度の強さがあるように感じた。
 まったく、問題なくヘラ用のハリスとして使えそうな強度はある。
 ナイロンじゃなくてフロロを選択する時って、ヘラの場合フロロのスレに対する強さとかはあまり必要じゃないので、パリッとした張りと伸びの少なさでアタリを明確に出したいときなどに使うのが想定されるけど、その役割は充分果たせると思う。そして安い。0.4号も買っちゃった。っていうかフライ用のティペットもR-18で良いんじゃなかろうかと思えてきた。

 そして、こうなるとどうしても気になる。
 今時のヘラ用ナイロンハリスとフロロハリスはどっちが引っ張り強度あるのか、試してみたくなった。
 一昔前ならフロロはナイロンの1.5倍の引っ張り強度があるというのが大きな利点の一つに数えられていた。でも、前回ハリスの強度を測ったときに、今時のヘラ用ハリスはちょっと前のナイロンラインの1.5倍は引っ張り強度があって驚いたところである。
 ならば、フロロと同じ方法で同じ太さを測ったらどう違うか、どちらが引っ張り強度的に優れているか。ナイロン代表には前回0.5号で驚きの強さを発揮してくれた「バリバススーパーへらハリス」0.3号に登場いただいた。
 結果は、600g、650g、670g、平均640gで測ってるときの感触としても明らかに強い。伸びて粘る。ある程度予想できたモノの衝撃的である。

 もちろんフロロカーボンのハリスには、引っ張り強度以外にも表面が硬くて耐摩耗性に優れスレに強い、張りがあって伸びが小さいのでアタリが直接的に出やすい、比重が重くて沈めやすい、屈折率が水に近く水中で見えにくいなどの利点もあるけど、一番の魅力はナイロンの約1.5倍の引っ張り強度があって細いのが使えるということだったように思う。
 今日、引っ張り強度の欲しい状況ならハリスは高級ナイロンハリスを選ぶべきなのかも知れない。
 例えば渓流のフライのティペットならヤマメ狙いなら細ハリスでの吸い込みやすさも含めてナイロンの方が適しているかも知れない。イワナだと石に潜られて擦れてとかがあるのでやっぱりあんまり細くないフロロの方が良いのかも。

 というぐあいに、道具が日進月歩で進歩してきているので、それまでの常識がひっくり返ったときには、もう一度、なぜそのハリスを選んだのか、その釣りで使うハリスにはどんな要素が求められるのか、それを満たすハリスは現在どの商品なのか、なんていうことを再度検討して詰めておく必要がある。
 最終的に引っ張り強度が欲しければ単純に太くして、食いが落ちるのは技術で補えばいいと割り切るにしても、選択肢として知っておくことや限界値を把握しておくのは悪くないはずだ。
 道具を替えると、替えたことによる不具合も生じるので、道具が進歩してもあえて替えないという選択肢もあるけど、ラインやらハリやらは消耗品であり新しいのしか売ってなかったら買わざるを得ず、安くて良いのを探し続けることになるのかなと思っている。

 ナイロンラインの高性能化にはちょっと注目して、今時の高性能ナイロンなら何ができるか?ってことも気をつけて考えておきたい。今時のナイロンラインは、もう我々古い釣り人が知っているそれとは別物と認識した方が良さそうだ。

 新しい釣りを始めてみると見ること聞くこと試すこと新しいことばかりでやっぱりどうにも面白い。苦労もしてるけどね。ハリスも結んだし明日は寒いけど釣りに行くか。

2017年7月9日日曜日

君の名は。超難問フナ編


 ヘラ釣り始めると、雑誌でもネットでもあちこちで「半ベラ」とあるのを目にする。
 ヘラブナとマブナの交雑種とされていて純粋なヘラに比べると「ハズレ」扱いで、記録ものの大型でも半ベラは記録認定してくれない。でも、じゃあ半ベラってどう見分けるのよ?って調べても誰もどこにも決定的な方法を示せていなくて、記録認定している雑誌とかでも「こちらで判断させてもらいます」というていたらくで、判断基準は明らかにしていない。
 だいたい、マブナっていうのがいわゆるギンブナのことなら、ほとんどが3倍体といわれているギンブナと普通に2倍体のヘラブナとの間に交雑が起こるとは考えにくく、一般にヘラ師がボンヤリと思っている「半ベラはヘラとマブの混ざったヤツ」というのは疑わしいことこの上ない知識である。
 だいたい「釣り師魚を見ず」で、釣り人って自分たちが釣ってる魚なのに、いい加減なことばかり言っているのはいかがなものかと思ったりする。
 一昔前の磯の底物師とかが、チャイロマルハタでもヤイトハタでもマダラハタでも「クエ」とか言ってたのには呆れるを通り越して怒りを覚えていたほどだ。
 まあ、そういういい加減な釣り師の言ってることの中にたまに学者も知らないような真実が紛れ込んでいたりするので油断ならないのだが、もうちょっと自分の釣る魚をはじめ魚についても勉強してもバチはあたらんのではないかと思う。
 私だって、知らない魚もいっぱいいる、同定しそこなうことだってあるだろう。でも自分の好きな「魚」について知ろうともしないというのはおかしいのではないかと思う。「無知は罪、馬鹿は罰」だそうである。罰は甘んじて受けるつもりだが、罪からは逃れられるものなら逃れたい。

 というわけで、当然ヘラ釣りを始めるにあたって、ヘラブナとは何ぞや、フナってほかにどんな種類がいるのか、それぞれの見分け方(同定方法)は?ということを勉強してはみたんだけど、勉強する前から「フナ問題」は数ある同定難易度の高い魚のグループの中でも、最高にややこしい問題だと知ってはいたので気が重かった。お気楽に「これは半ベラ」とか言ってくれるなよと言いたくなる。

 まず、ヘラブナっていうのが何か。これはそれほど問題ない。細かいところは諸説あるけど、琵琶湖原産のゲンゴロウブナを釣りのために体高高いのとかを選抜して育てたカワチブナと呼ばれるフナがもとになって、釣り堀文化や関東での天然湖沼への移入を経て全国に散らばったもので、現在でも食用に供されることは例外的で、ほぼ釣り用のためだけに増養殖されているという、世界でも他にはアメリカ南部のラージマウスバスやNZのニジマスぐらいしか例をみない特殊な釣り用の魚である。ラージやニジマスがあっちはキャッチアンドリリースのイメージがあるけど結構釣った後食べられることも多い中、ほとんど釣られてから食べられることが無いのも独特。歴史的には100年ぐらいは遡れるけどヘラ釣りは日本伝統の釣りと言われつつも、割と新しいハイカラな釣りなのである。まあ浮子を使ったフナ釣り自体は江戸時代ぐらいにはすでにあっただろうから、その流れで行くともっと古い釣りにはなる。
 生物としての種的にはゲンゴロウブナであり、釣り用に選抜育種しているのでその1品種として考えてもいいかもしれないけど、あまりヘラブナを品種ととらえるのは一般的ではないので、ゲンゴロウブナの釣り用に増やした「飼育型」のヤツがヘラブナぐらいの認識で正解だろうと思う。ヘラブナも種としての標準和名はゲンゴウロウブナで問題ないはず。

 次に「半ベラ」との関係もでてくるのだけど、日本には他にフナの仲間にはどんな種がいるのか?それぞれの同定方法如何というお話だが、今のおそらく最新の知見を元に出さざるを得ない答えを最初に書くと「日本にはゲンゴロウブナとその他に名前の確定していない1種類のフナがいる。」ということになるだろう。
 なにをナマジはトチ狂ったことを言い始めたんだ、また自分が同定できないものは同一種とか無茶苦茶言ってるんだろうと思うかもしれないが順次説明していく。

 まあ、3倍体で雌が生んだ卵が他のコイ科魚類の精子の刺激で発生を始め雌だけでクローンで増えているギンブナとされていた魚の存在と、北の方にはいるとも聞くギンブナの雄が本当にいるのかどうか、雄雌いるキンブナとの関係性はどうなのか、魚類学会でも答えがでていないようなことを聞いていたので、あらかじめ覚悟はしていた。
 とりあえずは同定するなら「日本産魚類検索(第1版)」をということで、全種の同定をうたっているぐらいだし、基本はここからだろうと紐解いてみる。
 同検索図鑑によれば日本にはフナの仲間はゲンゴロウブナ、ギンブナ、キンブナ、オオキンブナ、ニゴロブナ、ナガブナがいるようだ。ちなみにゲンゴロウブナだけ種レベルで違い、その他の5種は同じ種内の「亜種」の整理(なのでこの整理でも2種といえば2種である)。
 最初に分けられるのは、ゲンゴロウブナとギンブナの2つとそれ以外のフナで、同定の最初の分け方は体高と体長の比率で、体長が体高の2.1~3.0倍と体高高いのはゲンゴロウブナとギンブナ、2.8倍~3.6倍と体高が低いのは以外の4つのフナなので次のページへという感じになっている。愕然とする。
 いままで、「フナ」は沢山釣ってきたが、明確なヘラブナ(ゲンゴロウブナ)以外はまあギンブナなんだろうなということで、しっかり検索図鑑すら見ていなかった自分の不明と不勉強を恥じる。
 検索図鑑の最初の外見上の見分けるポイントで分かれないジャン。比率が2.8~3.0倍の間のフナはどちらもあり得るということである。かつ体高高いギンブナもいるということになる。よく言われる「ヘラは体高が違う」というのは傾向としてはあるかもだけど決定打にはなってない。
 九州で釣ってた「マブナ顔のフナ」はいつも、東海地方にある実家の近所で釣ってた「マブナ」より体高があるので「なんなんだろう、これが半ベラってやつか?」とか思っていたけど、ギンブナ自体がフナの中では体高高いグループに属していて九州の「ギンブナ」は体高が高いということなのかも知れない。
 写真は上が九州のフナ、体長は体高の約2.7倍でヘラブナかギンブナで顔からいってギンブナと思う、写真下は関東のフナ約2.8倍でなんとも言えないということになる。数値以上に体高が違うように感じるのがおわかりいただけるだろう。まあ、放流由来のヘラブナ以外どこのフナもそれぞれの地域にしかいないフナなんだと思って愛でておくのが正解なのかも知れない。

 他にもヘラブナは外見では右の写真ででも分かるように目が下の方向いてるとか、上唇があまり伸びないとか言われている
 けど、確かに典型的な個体を見分けるには役に立つかもしれないが、そんな数値化されていない基準、中途半端な個体がでてきたら通用しない。
 まあ厳しめに疑わしきは「ヘラ以外」とすれば、純粋なヘラを混じりなく抜き出すのには十分で、ヘラの記録認定とかの場合にはその方法を現実的にはとっているのだろうけど、じゃあその「ヘラ以外」とされたフナは何者なのか?多くのヘラ師にとってはどうでもいいことなのかもしれないが、私にとってはどうでもよくない。大型の体高高い「ギンブナ」なのか、それとも半ベラとよばれる交雑種(キンブナやオオキンブナと交雑?)なのか、それとも「ヘラ以外」判定を受けたけどやっぱりヘラなのか。
 
 幸いなことに、形態上の同定のポイントで第1鰓弓の鰓耙(サイハ)数は、ゲンゴロウブナとそれ以外のフナで明確に分かれる。植物プランクトンを水ごと吸い込んで鰓耙で濾し取って食べているゲンゴロウブナは鰓耙数が92以上と多い。魚を殺す必要がでてくるが、ゲンゴロウブナを同定することは可能となる。琵琶湖でヘラブナとゲンゴロウブナと区別は付かないし、鰓耙数多い半ベラがでてくる可能性は否定できないけど、生物について絶対の正解を求めるのが土台無理で鰓耙数で見て92以上ならヘラブナも含むゲンゴロウブナ、72以下ならそれ以外のフナ、72から92ならたぶん交雑種か例外的な変な個体ぐらいの整理しかないだろう。今時DNA鑑定すりゃ良いじゃん、というのは後で言及するけど、「3倍体のフナ」かそれ以外かを分けることができるぐらいで、従来のフナの仲間の分類通りの同定には今のところ使えそうにない。
 いずれにせよヘラブナ(ゲンゴロウブナ)については植物プランクトンを吸い込んで補食している魚だからこそ、釣り餌を吸ったり吐いたりする事によって、餌自体も釣りの技術も随分とややこしく特殊で面白くなっているなっているのだから、植物プランクトン食という生態に起因する鰓耙数の違いを基準に同定していく、というのは釣り人的にもしっくりくる。100%の同定が無理だとしても納得がいくのだがどうだろうか。

 さて、比較的すっきりしたゲンゴロウブナだが、じゃあその他のフナであるギンブナ、キンブナ、オオキンブナ、ニゴロブナ、ナガブナをそれぞれ同定するポイントはどこなのか、検索図鑑読んでも、ゲンゴロウブナ、ギンブナとその他のフナの見分けるポイント以上にカブリまくりで、中間的な個体が区別つかないというよりは、むしろその種の特徴が際だっている個体しか同定できない基準になっている。
 待ってくれよ、せめて琵琶湖で漁師が値段いいので明確に分けて狙って穫ってるニゴロブナぐらい形態的に違いあるだろうと思うのだが、ネットで検索図鑑に加え原著論文にもあたったらしいマニア氏が整理したカブリ具合の表をみても同じ結果で、マニア氏もこれじゃゲンゴロウブナとそれ以外のフナに分けるのに加え、特徴がよくでている個体は同定できることもあるかもぐらいと書いていて、同定お手上げに困惑しているようだ。
 ニゴロブナはなんで珍重されるのかというと、割と動物食が強くて内蔵が短いので琵琶湖名物「鮒寿司」にするときに歩留まりが良いのが好まれるらしい。ゲンゴロウブナは逆に植物食なので内蔵が長くて鮒寿司にされることはあっても自家消費やニゴロブナの代替品あつかいが多くて「高級品」にはならないようだ。なので、腸管の長さとかデータ取りまくったら違いがでてくるのじゃないかと思う、というかありそうな気がするけどどうなんだろう?鮒寿司自分でも漬ける鮎迷人にでも聞いてみたいところ。

 というわけで、形態で差がつかなければDNAだろと誰でも考えるところで、魚類学者も調べてぼちぼち報告されてきている様子。
 その今のところの報告によれば、ゲンゴロウブナ以外のフナ5亜種を分けるような遺伝的な差異は認められない。ということだったらしい。論文も色々出ているようだけど、マーカーとする遺伝子やら、たぶんサンプルの引っ張り方によっても結果が違うようでまだ最終的な答えにはなっていない感じ。5亜種と関係なく3系統に分かれるとか、それとも異なる結果が出たとか混乱に拍車がかかっている気がする。
 まあ、あたり前っちゃあたり前。内水面のような閉鎖的な環境では、それぞれの水系ごとに違った遺伝子集団がいて当たり前で、違うと言い始めれば水系ごとに全部違って5種類やそこらで済むわけがないし、でも現実としてちょっとずつ違っていて、5亜種に特徴的な個体を持ってくればそれなりに違っていたりする。でもその中間的なやつの出現を拾っていけば、全部が一つながりの「種」に整理するしか無いというのが基本的な分類学の整理なので、仕方なく最終的に「ゲンゴロウブナ以外の日本のフナは1種」に整理するしかオチどころがないように思っている。どのみち「種」とか「亜種」とか言ったって線の引けない自然の現象に線を引くための整理でしかないので限界はある。
 でも、商品価値が明らかに違うニゴロブナとなじみがないけど北陸、山陰とかにいるらしいナガブナは体型が細長いので「細長系」として、いわゆるマブナなんだろうなと素人目に見える「マブナ系」のギンブナ、キンブナ、オオキンブナの2つのグループ間の違いぐらいは形態でもいいので分けて亜種のあたりを再整理してほしいと思うのだけど、どうなることやら結果がでるのはまだ先になるようである(沖縄の在来のフナは遺伝的にもちょっと違いがありそうという結果もあるようで、そこは新たに分けられるかも。)。
 ちなみに半ベラに注目してDNA調べたような報告は今のところ目にしていない。いずれにせよDNAの違いはフナではよく分からんようなので、誰か真面目に本当に「半ベラ」とされているのが鰓耙数数えてどっちにあたるのか調べてほしい。鰓耙数が中間ならほんとに交雑してる可能性もでてくるだろうし、どちらかに判定できるならどっちかだと整理するんだろう。
 個人の主観的な判断に基づいて「半ベラ」とかいって、他人の釣果と魚自体を貶めるような姿勢は、たとえその判別方法が結果正しかったとしても気分が悪いので止めていただきたいものである。どうせ私も含めみんな分かってもいない癖して偉そうなこと言うなと。でっかいフナが釣れたら喜んでおけば良いじゃないのかという気がする。このことについては文句があるなら根拠を示せと書いておく。写真の個体、ちょっと上唇伸びてるけどヘラかそうじゃないか客観的な判断基準を持って判定できる人がいたら是非教えて欲しい。

 とかく「ヘラ釣り」を始めて鼻につくのが、他者を貶めようとしているとか思えない言動である。
 「半ベラ」しかり、安竿をけなす言葉しかりである。
 そういう輩が信望している「高尚なヘラ釣り」像について坊主にくけりゃ袈裟まで憎いで、唾吐きかけて雑菌まみれのクソを塗りたくりたくなってしまうので「それをいっちゃあおしまいよ」かもしれないが書いちまおう。
 「ヘラ釣りは日本の伝統的な釣りで・・・」なにをいけしゃあしゃあと、100年だかの歴史しかないくせに。餌木とかの漁具を除いても、20世紀初めの湯川へのカワマス放流とかの時代に始まっただろう日本のルアー・フライとどんだけ歴史に違いがある。
 「大自然とのふれあいが・・・」ほとんどの釣り場で釣り用に放流されてるヘラブナが「大自然」かね?意地悪な言い方だけど、自然環境を破壊する移入種じゃないの?

 とまあ、ボロクソ書いたわけだが、じゃあ3ヶ月ほどそれなりに真面目にかつ「ゆるふわ」にヘラ釣りをやってみて、ヘラ釣りが嫌いかというと、まあ顛末記読んでもらえば分かると思うけど、正直かなり好き。深い沼におもいっきり足がハマってしまった感じがする。

 ヘラ釣りの歴史なんて、今のヘラ釣りはたぶん、餌に水中で溶けてバラケるマッシュポテトを使い始めたあたりが大きな転機で、植物プランクトン食の魚に対するある種のルアーのようにヘラ餌自体が進化し始め、日本人ならではの凝り性でガラパゴス的に他の国ではあり得ないような、訳の分からないぐらいの多種多様な楽しみ方が生じているように思う。そういう先人たちの突っ走った取り組みを、文化を享受して楽しむことができることを釣り人として幸せに思う。

 ヘラブナは釣り人のために選抜されてきて放流されてきた極めて不自然な魚である。別に漁業のためとかのような産業的な意味は小さく、観光資源とかにはなるだろうけど、自然環境にとってその放流が善か悪かと問われれば、客観的にみれば悪い面の方が多いかもしれない。
 過去に放流されたっきりで後は自然繁殖しているような釣り場であっても、同じように放流されて自然繁殖しているラージマウスバスと同程度には悪影響があるだろう。
 でもまあ、ヤマメにしろアユにしろ日本の内水面の釣りなんて、放流無しなら成り立たないぐらいのことは分かる。
 それでも若い頃は、放流由来のヤマメより自然に繁殖している支流のイワナとかをできれば釣りたい、「大自然」を堪能したいという気持ちが私にもあった。でも年を食うとそのあたりは、どうせ自然環境もグダグダに変えてしまったのに、魚だけ昔のままにと願ってもどうしようもないだろうと考えるようになった。
 今でも残っている「大自然」や古き良き里山里川里池は大事にとっておくべきだろうと思うけど、自然環境破壊の代名詞的なダムだとか、三面護岸にしちゃって日本の魚たちの多くが産卵繁殖できなくなった池とか、散逸の問題を無視すれば別にバスがいても良いし、別にヘラがいても良い。そこを利用する人たちで決めればベストだし、そうならずに釣り人のゴミとか迷惑行為が原因で立ち入り禁止になるなら、それも自業自得と思っている。

 ラージマウスバスは随分釣ったので、割と良く知っているつもりだけど、バス釣りだって自然に親しむには悪くない方法だと思う。少なくとも私の感覚ではペレット食って育った成魚をガンガン放流した自然河川を「釣り堀化」してのヤマメ釣りより自然な釣りである。随分バス釣りから学んだ。正直もっと賢くバスを利用する方法が、特定外来生物法とかによるレッテル張りで閉ざされてしまった状況が歯がゆく思うが、未だに外来生物の投棄とかがなくならない状況を見ると、愚かな釣り人が「賢く」バスを利用するのもやっぱり難しく思えてくるので、バス問題の答えは私の中では残念ながらまだない。


 でもって、「釣り堀」で浮子を眺めるという場面を想像すると、たぶんそれはヘラブナであるというぐらいの釣り堀の代表的な魚であるヘラブナだけど、釣り堀のヘラ釣りが嫌いかというとそうでもなくて、ちっちゃなプールにごっちゃりヘラブナを入れて釣る「箱」の釣りも面白いと思ったし、「箱」の中で1mの棚規定で1m以浅では釣られないということを知っているかのようなヘラブナの学習っぷりとかには恐れ入ったし、「箱」の中でモツゴが増えて稚魚が湧いているのとか見て、閉鎖された「箱」の中であっても生物はどこまで行っても、多様性にとむ複雑で興味深い「生物」でしかあり得ないのだなと感動したりもする。「箱」の中にも自然は宿る。
 「箱」でのんびりと糸を垂れる爺様達の醸し出すユルい風情も「箱」の魚たちと共に癒やしの空間を醸し出していて味わい深い。


 「箱」でも「管理池」でもヘラ釣りはキャッチアンドリリースの釣りなので、結構ボロボロの個体も釣れてくるし、死んで浮いている魚も散見される。
 嫌でもイヤっていうぐらいに、釣り人が楽しみのためだけに魚を釣って遊んでいるということの罪深さを感じてしまう。
 シーバス釣りならまずあんまり釣れないのでそんな罪悪感は年に数度の大釣りの時しか強くは感じないし、ハゼ釣りやらテナガ釣りなら「食うために釣っている」という心の免罪符があるので、実際にはリリースしながら釣るときでもあまり意識しない。
 でも、食おうがなにしようが、釣られて死んだら魚にとっては同じで、別に楽しみのために釣っているという事実が違う訳じゃない。食ったら成仏するとか、釣り人側の信仰であり、そう思うのはご自由にだけど、それで自分だけ手を汚してないつもりで他人の釣りを批判するべきじゃないと思う。釣り人に限らず現代社会に生きてる人間は他の生物に酷いことして返り血浴びまくりながら生きていることに違いはないはずだ。そう思わないのなら想像力の欠如である。
 釣られた傷が治って、鱗が変な配列になってたり口がゆがんでいたり、あるいは目がなかったり、そういう魚が無言で訴えてくる、釣り人の罪に対する断罪を我々釣り人は忘れてはならないのではないかと思う。
 そういうことを意識させてくれるだけでも、ヘラ釣りは面白いと思う。ヘラ釣りは罪深いと思う。それでも、その罪で、死後の世界がもしあって地獄に堕ちて口にでかいハリをかけて吊されるとしても、釣りをやめられない釣り人の「業」を体現している魚が「ヘラブナ」だと思っている。

 そういう、水の中では地獄のような責め苦を魚が受けているのに、水の上では釣り人が長閑に(あるいはせっぱ詰まって)釣っているという対比の認識が、餌屋やらメディアの垂れ流す情報を鵜呑みにして「高尚な釣り」だと信じているような釣り人には欠けているのではないかと思うので、ヘラ釣り真面目にやってる人が読んだら気分を害するような文章を書いてみたところである。

 ヘラ釣りは残酷な釣りだ、他のすべての釣りと同じように。だからこそ私のようなあなたのようなサディストでありつつマゾッホであるという矛盾を抱えた「釣り人」の心に深く突き刺さって抜けないのだと思う。
 ヘラブナが植物プランクトン食という他の釣りの対象魚にはあまりない食性を持つことから、餌や釣りの技術が、凝り性な日本人の性格も相まって、特殊にマニアックに追求され続けていて楽しまれてきていて、その釣りの楽しみのためだけに生産されている魚がいて釣り場が成り立っている、というこれまた特殊な背景を持ちつつ、釣り堀から天然湖沼まで様々な釣り場で親しまれている、というのがヘラブナ釣りを俯瞰した全体像だろうか。

 ヘラブナの植物プランクトン食という食性から生じる「粒子を吸い込んで捕食する」という独特の餌の食い方は、ともすればバラけた餌だけ吸われたり、吸ってもすぐ吐かれたりということに直結して、そこを何とか口の中にハリの付いた餌を少しでも長く入れさせようとするところに駆け引きや多様な技術が生じて、ヘラ釣り独特の面白さの根本的な要因の一つになっていると思う。べつにマブナ釣っておけば極論餌はミミズで済んでいただろうし、マブナ釣りが面白くないわけでもないだろうに、なぜ先人はヘラブナをそうまでして釣ろうとしたのかよくわからないが、とにかくヘラブナを釣りたいと願った釣り人達がコレまで積み上げてきた多種多様な技術には、よく考えたものだと感心させられるし、そういった技術を一つ一つ練習していくのはとても楽しい。始めて3ヶ月の初心者だけど技術の基本を体に憶えさせて、ちょっとずつ魚が釣れるようになる楽しさを味わっている。憶えなければならない技術がまだ山ほどありそうなことにも楽しみを覚えるところ。
 
 炎天下の釣りは今の体力では耐えられそうにないので、秋までいったん小休止だけど、これからもゆるふわっと、でも真面目にいろんなことを考えながらヘラ釣りを楽しんでいきたい。

2017年6月30日金曜日

ハリスはどっちだ


 腰の具合は思ったほど酷くなくて、この分なら明日は釣りに行けるかなという感じになってきた。痛みというよりは違和感程度にまで回復。

 ヘラ用の0.5号のハリスを一巻き使い切ったのを買い足しに行こうと思って色々考えた。
 まずは、いつもの台詞で申し訳ないが「ヘラ釣りの道具は何でも高い」 というのがなんとかならんのか?と思うところ。
 50mで2千円以上とかの高級品の横に並んでいるから、50m千円のハリスも「普通」の値段に見えるけど、これまで親しんできたルアー用のナイロンラインなら、割と良いやつで100m千円、費用対効果抜群のダイワ「ジャストロン」なら500m千円しない。

 正直、それが相場だから、ヘラ釣り用のラインは中級グレードは50m千円、高級品は50m2千円とかの価格設定になってるだけで、実際の原材料費だの製造費だの製品としての価値だのとかとは別の所で値段が高く設定されているような気がしてならない。

  まだ、ハリスは分かる。直接魚に触れる部分だし、吸い込みよくしなやかで、でも短くても切れないように強度も必要とか結構難しい条件を満たさないといけない。
 でも道糸なんて、見やすくて安定した強度がある以上に求められる要素ってあるの?伸びないように吸水性を抑えるコーティングが、とか流れの影響を受けにくいようにあるいは早く沈むように細く、とかあるのかもだけど、前者は今時のラインならルアー用だろうがなんだろうが当たり前の処理で、ヘラ用だけ高級な理由にならない。後者はフロロカーボンでも使ってろって話。

 なので、最初0.8号の道糸はダイワの良いやつを買ったけど、ハリスを0.5に上げたときには、道糸新たに買うのも馬鹿臭くなって、1号っていったら4ポンドだろうから、昔渓流でルアー投げてた時のがあっただろうと、ごそごそ探してみたら、10数年前の当時お気に入りだったザウルスの「バスラインスピニング4LB」が残っていたので、想い出深いコレを使ってみた。とっておいても仕方ないしね。ナイロンラインって経年劣化する印象が強いかも知れないけど、暗所で紙パッケージに入れて保存してあると、かなりの長期間でもさほど劣化せずに使える。ちょっと試しに結んで引きちぎってみて充分な強度が残っているようなので使っていた。道糸高切れもなく問題なく使えていて、渓流でルアーの航跡を目で追えた白系色の視認性の良さも健在。
 でも、ナイロンラインは2回ぐらい使ったら交換という早めの交換でバンバン使っていくので、半分ぐらいは残っていたと思うこのラインももう使い切りそう。
 ということで、手頃なナイロンラインでまた視認性良いのをと考えると、残念ながらジャストロンが2号以上しかないので、ルアー用で派手めのカラーのを探してみたら、バリバスの「スーパートラウトアドバンスサイトエディション」というのが、蛍光緑で見やすそうで値段も100m千円強とまあこんなもんかというところなので4LB1号相当のを買ってみた。

 道糸用のラインは余り悩まずに済んだのだけどハリスは悩ましい。最初に買ったときに「今時ナイロンハリスなんだ!」と驚いたぐらいで、細ハリスならフロロカーボンの時代に、あえて柔らかいナイロンにこだわらないと吸い込みが悪いと聞くし、細けりゃ切れる確率は上がるしで細くて柔らかくて強くて結びも丈夫というのはけっこう条件難しい。
 とりあえずバリバス「スーパーへらハリス」は50m千円の中級グレード品で、まったく使用に問題を感じていないのだけど、正直「こんなのヘラ用じゃなければもっと安く売ってないのか?」と思ってしまう。
 
 ので、ネットで色々と調べてみた。狙い所としては、ヘラ専用じゃない「銀鱗」とか「スタークU」あたりの一般的な安めのハリスで良いのがないかというのと、そもそもハリスじゃなくて良いから今時の高性能ナイロンで0.5号とかの細いのがないかあたり。

 「スタークU」は既に代替わりで「スタークU2」になって値段もお高くなってしまっている。「銀鱗」は今でも健在で、これの0.5号とか50m500円くらいで使えるかもしれん。とか思っていたら、ヘラ釣り界隈では使える安ハリスとして東洋ナイロンの「レブロン」というのがあるという情報をみつけ、ちょっと調べてみたら、「安いけど太い」という批判もあるにはあるけど「安いのに丈夫」「アワせ切れしにくい」という好評が多く、どうもこれは「当たり」っぽい。特にフライマンがティペットに使ったらアワせ切れがなくなったとか書いているのは、ナイロンラインらしくビヨーンと伸びてショックを吸収してくれているからのような気がする。値段も定価は50m千円だけど実売は600円くらいとお安いので早速買ってみた。

 もう一方の、ハリスじゃなくて今時の高性能ナイロンの細いのも探してみたが、これがあんまり無い。細い道糸自体は管理釣り場のトラウト用にあるにはあるんだけど、だいたい見やすい色が付けられていてハリス向きじゃない。でもまあ東レ「ソラロームⅡトラウトリアルファイターエリアスペックスーパーソフト」というのとバリバス「トラウトエリアマスターリミテッドSVGナイロン」というのは条件に合致しているようなので、バリバスの方が馴染みがあって好きなのでバリバス「SVG」を買ってみた。
 「最高峰ナイロン」を謳うこのラインはなんと、0.5号相当の太さで3LBという強度があるらしい。普通今のナイロンラインは1号相当で4LBなので比率で行けばその1.5倍というメチャクチャな強さ。ホントかよ?という感じだが、お値段は150m千5百円(実売1350円)で安ハリス代表のレブロンより単位当たりの値段は安い。
 製法自体が他のナイロンと違うような説明で、今までのラインの2クラス上の強さとのことだが、それにしては同じバリバスのヘラ用高級ハリス「プロバージョンVへら」「スーパーステージ マスタースペックへら」にはその「SVG製法」は使われていないようで、これはヘラハリス向けじゃないフロロみたいな堅さがあるとか、直線強力があるけど結束強度が落ちるとかそんなのかな?と解せない気持ちが湧いてきた。

 まあ、そんな場合は実験だよね。ということで実験、実験!

 今回の実験は単純明快。バリバス「スーパーへらハリス」、東洋ナイロン「レブロン」、バリバス「SVG」の0.5号をアスカ5号に結んで8の字チチワ作って50センチのハリスに仕立てて、ハリを段ボールのカドに刺してハリがどっかに飛ばないようにビニールテープを被せて貼って、チチワの方を秤にかけてゆっくり引っ張って切れたときの数値を読む。3回平均ぐらいでいく。

 0.5号ナイロンは普通引っ張り強度2ポンドぐらいのはずと認識。だけど、100%ノットでもなんでもない外掛け結びでハリを結んでいるし、8の字結びも強度低下するだろうから、1ポンド約454グラムで2ポンド約908グラム、結束による強度低下分で8掛けするなら700グラム台ぐらいが基準で、今時のナイロンならもうちょっと出てくれても良いかなという心づもりで実験スタート。

 まあ、部屋での実験なんてのは、実際に釣り場に行けばまた色々条件違ってきて、あんまり実験の結果に印象引っ張られたりしないように気をつけなきゃなぐらいで、参考程度のものだと思っている。
 思っているんだけど、実験するたびに自分の思い込みがいかに間違っていたか、自分が何も知らないということを知ることになるので、実験はしておいた方がイイと思う。

 でもって、驚きの実験結果。
 まず、バリバス「スーパーへらハリス」が、940g、1230g、1190gの平均1120g。
 いきなり2ポンド余裕で超えました。切れたのはチモト2回、高切れ1回。2回目なかなか切れないと思っていたら「高切れ」ってどんだけ結束強度高いのかって話で、ちょっと信じられない。
 50m千円で高いとかいってゴメンナサイ。

 次に、期待の「レブロン」。事前情報で号数より「太い」と聞いていて、デジタルノギスで測って太いことを証明している人もいたりしたのだが、正直どう太いのか分からない。0.5号のハリスのちょっと太いのが感覚的にわかる人ってスゴいなと感心する。
 結果は、810g、1065g、790gで平均約887g、このぐらいが今時の高性能ナイロンハリスの性能だろうと予想していた数値だけど、もうこのレベルは一昔前の性能なのかも知れない。でも1キロ越えたときはチチワで切れていて(他はチモト)ハリの結び方次第ではもう少し強度稼げるかもという感じ。
 ただ、柔らかくてしっとり伸びる感触があって、実釣では数値以上の使いやすさを発揮するかも知れないと感じた。全然悪いラインじゃないと思う。愛用者が多いのも分かる気がする。

 最後の「SVG」だけど、ひょっとして表示通りの3LBなら1.5キロ近く出てメチャクチャ強いんじゃないかと期待したけどそれ程でもなく、結果は、970g、1030g、1080g。平均約1027gチチワで2回、ちもとで1回切れた。
 「0.5号で3LB、コレまでのナイロンラインの2クラス上」という宣伝文句に偽りありじゃないのか?と思って、試しにスパイダーヒッチでダブルライン作ってそれをダブルにして8の字でチチワ作ってスプールから直接引っ張って切ってみたら、あっさり1200g越えて、どうも直線強力自体が3LB相当というのは嘘って訳でもなさそう。でも結束による強度低下がわりとあって、このラインの本来の性能引き出したいならビミニツイストでダブルライン組んで1号とかのフロロのリーダーに接続してやるべきだろうけど、管理釣り場のトラウト狙いでナイロンラインを使うならリーダー無しで直結してそうで、そのへんどういう使われ方をしているのかちょっと気になった。まあどうでも良いか?ハリスとしては強度はこれだけあれば問題なさそう。値段もヘラ用ハリスに比べればお買い得。あとは実釣で「レブロン」と逆にちょっと堅くて伸びが少ないようなところが、合わせ切れやら食いの悪さにつながらないか見極めていきたい。フロロほどは堅くはなくて割といけそうに思う。

 ということで、しばらくメインの0.5号は「バリバススーパーへら」「レブロン」「バリバスSVG」をローテーションで使って使い心地を試してみたい。
 もうすぐ使い切りそうな0.4号、次はとりあえず手堅く「バリバススーパーヘラ」でいこうと思っている。今使っているダイワの「スペクトロンへらXP」は「高級品」だと思うけど、いきなり走られさえしなければ60ぐらいのコイが寄るぐらいで強さは充分なんだけど、ヘラでもスレ掛かりで突っ走った時とかにあっさり飛ぶことがあって、ショックを吸収する適度な伸びは「高級品」より「中級品」のほうがあって、バランス的には「中級品」が普通の釣り人にとっては優れているのではないかと今のところ感じている。
 そのへん、「箱」でバンバン釣って比較してみると良いのかも知れない。

 しかし、思いの外ハリスが丈夫というのが分かって、心配になるのが道糸の方が先に切れるんじゃないかということ。
 試しに、買った4LBの道糸を8の字で輪っか両側に作ってペン片方に刺して足で押さえて片方を秤に掛けて引っ張ってみたら、案の定1200gぐらいで切れることが多くて、「バリバススーパーへら」なら上手く結べているとハリスの方が強くなってしまう。
 チチワのところで道糸高切れした時になぜそうなるのか不思議に思ったけど、これはなるわナ。
 「小ネタ」にも書いたけど地味に最近改善策として実施している、竿先に繋ぐチチワをスパイダーヒッチで作る「蜘蛛撚り式チチワ」だとどうだろうと、4LBの道糸を両側スパイダーヒッチでチチワ作って測ってみたら、だいたい1700gぐらいで弱くても1500gは越える感じで、やっぱりこの方が安心である。

 ヘラ釣りの教科書にも、上手い人の仕掛けを見ても、道糸はハリスの2倍の号数というのが定石で、昔の弱いハリスならそれで良かっただろうし、今の強いハリスでもそれにあわせた「高級道糸」を使うのならチチワを8の字で作っても問題ないのだろう。
 でも、私のように道糸はあんまり高性能なのいらないだろうと思って「普通」のナイロンラインにしてしまうと、ハリスが信じられないぐらいに強くなっているので道糸のチチワから高切れする可能性が高くなる(サルカンに結ぶユニノットをもっと弱い結びにすればサルカンで切れるようにはできるか?)。

 私のような初心者が結ぶの下手で高切れするのは、まああることなんだろうと思っていたが、雑誌とかで「手練れ」がコイに浮子ごと持ってかれたとか書いていて、そういうケースはそれ程特殊じゃないと感じるようになるにつれ、なんで糸太くするなり、結びを変えるなりしないんだろうと違和感を感じていたけど、今回の実験でなんとなく原因は分かった。みんな、ハリスがこんなに強いなんてイメージできていないのではないだろうか。

 古くからの慣習的に、道糸はハリスの2倍となんの疑問も持たずにやってきていたのだろうと思うけど、時代と友に道具も進化していくので、常に釣り方は更新していかなければならないと思ったところである。まあ、難しいけどね。

 私もヘラ釣り初心者だから、真っ白な頭で疑問に思ったことには突っ込んでいけている気がするけど、5年も釣っていけばドップリはまって手癖で釣り始めるだろうから、今の「初心」のうちに思いつく疑問やら何やらは意識して拾ってチマチマとつめておきたい。

2017年6月25日日曜日

まだ使いきっていないと思いたい


 人生初になると思うが、ドブ漬けコーティング用の「ウレタンクリアー」を使いきった。



 最後、ドブ漬けというより底にたまっているウレタンを傾けて入り口の方にトロッと流れ出しそうになる状態にしておいて浮子を突っ込んでクルクルと回してコーティングしていた。ここまでくれば残りは新しいウレタンに混ぜてしまえば良い。



 いつも、ルアーとか作りたくなって買ってきて、ひとしきり作って飽きると放置しておいて、次にルアー作りたくなったときに出してくると、中で固まっていたりゲル状になっていたり、という惨状はルアー作りやったことある人には「あるある」ネタだと思う。
 それを使いきったのは、ここしばらく精力的に「ヘラ浮子」を作りまくっていたので使いきったというのが直接の原因なのだが、ヘラ浮子作り始める以前に買って、ルアーのコーティングに使ってしばらく放置していたウレタンクリアーがぜんぜん劣化していなかった理由を小ネタ的にみなさんにお伝えしておきたい。
 まあ、どっかで過去にも書いたけど、「冷凍庫」に入れておくと空気や水蒸気と反応したり2液が化学反応したりするタイプの塗料、接着剤は「低温では化学反応は進行が遅くなる」という一般的な法則どおりで、常温で放置しておいた時と比べて飛躍的に使用できる状態が永く保てる。


 写真が我が家の冷凍庫のドアポケットだけど、ロッド補修用なので使いきることが少ないけど、放置しておくと2液混ぜてもいないのにやっぱりゲル状になっていたりするエポキシコーティング材、おそらく使うときにはカラカラに乾燥していて買い直すのはどなたも経験しているだろうアロンアルファは水と反応するシアノアクリレート系、ネジのゆるみ止めのロックタイトも同系統。意外なところでペイントマーカーのペン先がガチガチに固まって使えなくなるのも冷凍庫に入れておくとかなり防げる。ウェーダーの穴をふさぐアクアシールも一度でも封を開けてしまうと冷凍しておかないと使うときに固まってる。
 ちょっと、別の話のようで、でもたぶん「酸化」という化学反応が遅くなるという原理は一緒だと思うのけど、右端に入っているインド土産のカレー粉。何年も前のものだけどいまだに辛いし、香りも結構する。
 冷凍庫は偉大だ。家庭用冷蔵庫は昔「三種の神機」の一つに数えられていたがむべなるかな。

なかなか使いきれないもの、となると一般的にはボールペンのインクとか100円ライターのガスとかもあるかもだけど、我が家で使い切れそうにないのは50LBのボビン巻きのナイロンライン「クインター」。同じボビン巻きでも巻き換えの多いシーバス用のメインラインのダイワ「ジャストロン」8LBは毎シーズン使いきるぐらいに使うのだが、50LBはショックリーダーとして買ったのだけど、50LBをショックリーダーにするシイラ釣りとかなかなか行かなくなったのでほとんど減っていかない。まあ、使うときでも一ヒロずつぐらいしか使わないリーダーなので一生分あるだろう。
 その並びで、ハリスなんて1回に使う長さは短いので、すぐにはなくならないつもりでいたら、へら用のハリスは意外に消耗が激しくバリバスの0.5号50mは使いきって、ダイワの0.4号も底が見えている。
 ヘラ釣りではハリスの長さを変えて反応をみていく場面が多いのに加え、ちょっと絡んだりして縮れたりヨレたりしたハリスも交換していくので思ったより使う量が多い。
 へら釣りの道具は何でも高いけど、ハリスも高くて高級品だと50m2千円したりする。たしかに今時のナイロンハリスの性能には感心するばかりだけど、正直、直線強度、結束強度ともに太くしてしまえばある程度稼げるので、私はそんなに高性能なラインを必要としていない。安定してそこそこの性能なら問題ないので、50m千円ぐらいか75m千5百円ぐらいの「普通」ので良いのを探したい。とりあえず今使ってるバリバスの「スーパーへらハリス」は合格点。ダイワの「スペクトロンへらXP」はちょっと高性能すぎて値段も高い。とりあえずバリバスかなという感じ。

 とまあ、良い感じにヘラ釣りに熱中しているんだけど問題発生。

 腰がッ!

 腹筋の方法を変えてからこっち腰の調子は良く、これは腰痛とはおさらばできたかと思っていたら、台所でしゃがんでペットボトルの包装を剥がしたり分別作業をしていたら、いきなりお尻に衝撃が走った。
 悶絶して、前のめりに倒れたのを横向きに転がるのも必死。10分ぐらいしてゆっくりと手を使って起きあがると過去のぎっくり腰より下の方のお尻のあたりに重い痛みがこもっている感じ。歩けないほどではないけどこれは2週間は完治にかかりそう。
 昨日は午後早めに釣りを切り上げたけど、実は2、3日前から脇腹が原因不明で痛くて、今思うと体に疲れが貯まっていたのかもしれない。
 ここしばらく雨の中でも渋い釣果でも根性出して粘れていて、体力はまだ回復途中だけど根性はけっこう戻ってきたと思っていたんだけど、体の方は思ったよりも回復していなかったのかもしれない。

 もう体の方は使いきってしまってたりしたらどうしよう?と不安になってくるけど、まあそれならそうでも仕方ないか。とりあえず来週は梅雨空のようだし安静に寝ておきます。  

2017年6月18日日曜日

鉛よさらば


 鉛という金属は何かと便利である。ある程度柔らかく融点が低いので、電化製品の基盤とか溶接に使うハンダに使われたり、昔は割れにくい柔らかさから水道管にも使われていた。
 釣りの世界ではその「重金属」とも分類される比重の大きさ、つまり「重い」という性質から仕掛けを沈めるオモリとして好適で、オモリという意味で「ナマリ」と使うぐらいに利用されてきた。融点が低く加工が楽で様々な形に成型可能、柔らかく板オモリのような使い方もできる。
 そのうえ、鉛は貴金属ではなく割とありふれた金属で値段も安いので、釣りに限らず様々な分野で利用されているところ。

 ところが、この鉛には毒性がある。水道管に使われていたぐらいで、表面がすぐ黒ずんで酸化皮膜に覆われて水に対しては安定していて普通健康被害が出るほど溶け出したりしない。
 ただ、鉛には毒性とともに蓄積性もあるようで、普段の食事から摂取される量の鉛ぐらいなら尿とかで排出されるようだけど、削れた砕片などが口から取り込まれるとか、排出が追いつかない量になると体内に蓄積され中毒を起こし様々な健康障害を起こすようだ。
 ということで現在では、水道管も塩ビ管に置換されていっている。

 釣りの世界で、鉛のオモリを使うことが問題視されるようになってきたのはここ、10年来ぐらいであろうか。
 その論拠は主に、散弾銃の弾の鉛と併せて、池とかにばらまかれた鉛玉を、水鳥が餌をすりつぶすために砂嚢に貯める砂利などと一緒に飲み込んでしまい鉛中毒を起こして衰弱し死んでしまう、ということを防ごうという趣旨からのものだと理解していた。

 中には、海の中に鉛のオモリを残してくると、その周りに貝も海藻もいっさい生物が付かなくなる。海で鉛のオモリを使ってはいけない、と主張する意見もあり。鉛ごときで付着生物が防止できるのなら船低塗料に毒性の強い有機スズとか使う必要なんてなかったわけで、なにを言ってるんだ?という気がする眉唾な話だと思う。鉛はダイオキシンやらPCBとは違ってもともと天然に存在し、まあぶっちゃけ海水中にもそれなりに溶けている。

 ということで、鳥の口に入りそうなサイズのオモリを鉛から、スズだのタングステンだの鉄だののものに置き換えていけばいいやと思っていた。


 なので、ヘラ釣りを始めるにあたって、オモリは鉛の板オモリを使うことが常識となっていたが、スズ製のオモリで何とかならないかと考えて、最初は市販のスズ製ガンダマを使おうと考えていたのだけど、微調整がきかないので困ってしまい何かないかと調べていたら、「鉛フリー」のスズ主体のハンダが売っていることがわかり、これの直径1ミリのと0.6ミリのを買って、仕掛け用パイプに巻き付けることで微調整も可能な「鉛非使用」のヘラ用のオモリとすることができた。上の写真のような感じである。
 調整幅も自由自在でちぎったり追加したりも爪でできるぐらいで簡単。仕掛けが絡んだり回転したりもなく不具合なく使えている。
 機能性やらをいい始めたら、もっと高性能なオモリ周りの工夫もあるかもだが、環境影響をふまえた評価をすれば、現時点で最も進歩した最先端のヘラ釣り用オモリになっているという密かな自信がある。
 スズは鉛より比重が小さいので沈降速度が遅くなる可能性はあるが「ゆるふわヘラ道」ではそんな細かいことは気にしないし、気にする人はヘラ用のタングステンシンカーは市販されているので、それと組み合わせて使ってみてはどうだろうか。高比重のタングステンシンカーでストンと沈めつつ重さの微調整はスズハンダでってやれば完璧かと。

 ついでに、ハゼ用の中通しシンカーとかもスズハンダをパイプに巻いて作ってみたりと、スズハンダを使ったオモリのバリエーションを考えていて、ふと「なんで「鉛フリー」を謳うハンダなんか売ってるんだろう?」と疑問が浮かんだ、鉛主体のハンダを使っていると、鉛の削りくずとかができて、それを吸い込んだりして人間に健康被害が生じるからかな?とかボヤッと思っていたが、今時そのぐらいはネットでサクサクッと調べられるので調べてみた。

 欧州基準では、既にハンダは「鉛不使用」が原則になっているらしい。
 電化製品の基盤やらに含まれる鉛ハンダは最終的には埋め立て処分される。それで昔は問題がなかったのだが、近年欧州で問題になっている酸性雨が最終処分場の埋め立てられた鉛を溶かし、地下水や河川を鉛で汚染するという状況が生じており、生態系への影響やひいては人間への健康被害を防ぐため喫緊の課題として「鉛不使用」が進められていて、欧州へ家電製品とか輸出するためには、鉛不使用でないといけないらしい。
 というわけで、日本でも普通に「鉛フリー」表示のハンダが売っている。
 日本ではまだ酸性雨の被害は顕著になっていないので、問題としては表に出てきていないけど、地球規模で起こっている環境問題なので明日は我が身というつもりでいた方がいいように思う。

 オモリを始め、鉛を使った釣り具は可能な限り、スズやタングステン、鉄などを使ったものに置き換えていくべき時期にきたのかもしれない。狩猟の世界では既に北海道で鉛の散弾が禁止となっている。釣り人も続くべきだろう。

 アメリカの通販では鉄製シンカーとか豊富な種類がそろっていて、かの国のこういうところでは真面目な姿勢がうかがえる。
 日本でもバス用のシンカーなら高比重でストンと沈められる高性能なタングステンシンカーが種類豊富に出ている。
 非鉛素材のオモリのメーカーとしては「フジワラ」というところが、鉄製の海用の大型オモリから、スズ製のガンダマやワカサギシンカーとかも作っていて、是非ガンダマとかはここのスズガンダマを買ってあげて欲しい。テナガ釣りとかに私も愛用している。

 という感じで、ナマリ不使用の動きはすでに釣り具業界でも始まっているので、利用できるところから利用していってはどうだろうか?とすべての釣り人に押しつけてみたい。

 とりあえず私も各種オモリに加え自作のルアーのオモリはスズハンダ使うことにして、新作の「お手元ルアー改環境対応型」とかも作ってみている。

 魚釣りなんて、魚がいなければできない遊びだから、しょうもない目先の釣果のことばかりを考えていないで、たまには釣り場を含めた環境のことも考えるべきだろう。


 環境に配慮した釣り具で、私が推薦しまくっていた「生分解性ショックリーダー」は、全く流行らなかった。今はどこからも出ていない。
 多少太くて伸びるぐらいの性能の悪さぐらい、我慢して使えよ、そこをカバーして釣るのが、上手いつり人ってもんだろうがよ!と思うのだが、世の多くの釣り人はちょっとでも細くて強くとか、低伸度で感度良くとか、正直ショックリーダーにはあんまり必要ないことにこだわっていて、本当に大事な釣り場のためになる性能を評価しなかった。

 とても残念なことだ。 

2017年6月3日土曜日

貧乏金なし

 あまり知られていないことかもしれないが、私ことナマジは安竿が好きである。知ってるって?


 まあ、そんな安竿大好きな私がヘラ釣りを始めるにあたってまず買った安竿が以前紹介したようにダイワの入門モデルのヘラ竿「陽舟」10尺で、快調な使い心地を楽しんでいるところだが、さすがに安い竿でしかも中古なので、ひょっとして耐久性とかに難があったりしないだろうかという不安はちょびっとある。
 安い割に軽くて使いやすいように感じていて、軽いということは、薄くてパワーやら耐久性に劣るのではないかという心配が無いわけではない。
 まあだとしても値段相応なわけで、すぐに折れるような不具合がなければ問題ないとは思うのだが、気になってちょっと使用感の報告とかネットに転がっていないかと検索かけてみたら、良い評価も悪い評価もあって、結局自分で使い込んで判断するしかないと思わされたところなんだけど、なかには初心者モデルを買うにあたってダイワかシマノか悩んでいる質問者に「陽舟とか言ってる奴はヘラ釣りなんて金のかかる釣りはやめておけ」とか書いている奴がいて非常に腹が立った。

 ヘラ釣り始めるにあたって、正直目標が自分でも明確ではなくて、まあとりあえず5匹10匹釣って楽しめるようになろう、ぐらいのゆるふわっとした目標で始めてみたところだけど、始めてみて自分の目標というか、戦うべき敵が明確に見えてきたように感じている。

 ヘラ釣りを妙に小難しい訳の分からん理屈で語って権威付けしようとしたり、高い道具じゃなければダメみたいなことを言って、さも自分が高尚な趣味を楽しんでいるかのように見せかけたり、全く鼻持ちならねえ野郎どもがウヨウヨいるのに反吐が出そうになる。
 そういう輩にネットの片隅から唾吐きかけて喧嘩売って、バカにしておちょくりまくったことを書くのが、そういうしょうもない輩どもに戦いを挑んで打ち負かして楽しく釣るのが、私のヘラ釣りの目標だ。

 もちろん、ヘラ釣りの技術を緻密に理論立てて真面目に求道的に研鑽している人たちもいるし、高い道具の「趣味の世界」だからこその贅を尽くした美しさや機能美に魅力を感じないわけでもないし、それらを楽しんでいる釣り人を悪く思っているわけでもない。
 そうじゃなくて、そういう楽しみじゃなくてちょっと休日釣り堀でヘラ釣りでもしてみようというような初心者やら休日釣り師を小馬鹿にする事によって、自分たちがさも上にいるかのように振る舞うバカどもにムカついているのである。他人を下に見たところでおまえの立っている位置は1ミリだって高くならないんだってわかってるか?

 「高い道具じゃなければダメ」というような奴にとっては、安い道具で快適に釣られてしまっては立つ瀬がないのだろう。どうせそんな連中は魚釣りにおいて唯一自慢できるのが道具の値段だけで、釣果も技術も凡百のヘボ釣り師の馬群に沈んでてなんの特徴もなく、たいして技術の習得に努力も払ってなくて、ゆえに他人の釣技の正当な評価もできず、他人が釣れるのはラッキーで自分が釣れないのは運が悪いぐらいに思っているから、いつまでたっても運など回ってこないことに気づいてもおらず、そういうことを背中で教えてくれるような師匠もいないんだろう。おかわいそうなこって。

 まあ、そういう輩は無視しておくのが精神衛生上も得策であり、相手にしていては自分も同じレベルになってしまうというのはわかっちゃいるのだが、でもまあ自分はお行儀良く賢い人間ってわけでもないしバカで結構、好きに書かせてもらう。
 サッカー元フランス代表のジダンがワールドカップで相手選手に頭突きかまして一発退場食らっていたけど、あのときは相手選手に母と姉を侮辱されたんだといわれている。フランス男児にとっては近しい女性を侮辱されたらブチ切れなければならないものなのだろうし、私にとっては安竿をバカにされたらやはりブチ切れなければならないというものである。愛の問題である。

 ヘラ釣り始めるときにもあんまり金はかけないでおこうと思っていたので、以前にも書いたように餌抜きでだいたい4万5千円ぐらいしかかかっていない。
 餌も、まあそんなに種類を増やさないようにしたりシラタキを鍋したときに確保したりで1日5百円前後かなという感触である。今時ゴカイ買ってもミミズ買ってもそのぐらいはするし、ことさらヘラ釣りが餌代がかかると思わない。
 べつにヘラ釣りするからって、ほかの釣りと違う特別な費用がかかる訳じゃあないと始めてみて実感している。浮子を自作しているのは大きいかもしれないので、貧乏人は浮子を作れと書いておこう。楽しいし。

 他の釣りと違う金がかかる要素をあえてあげるとすれば、竿掛け・万力の組み合わせと座るマットだろうか。
 正直なくても釣りできないことはない。でも短尺の竿はともかく長い竿には竿かけは無いとしんどいだろうし、短尺の竿でも竿を置いて餌付けするときの手返しとか考えると、無しというわけにはいかない気もしてきた。
 座るマットも長時間座る釣りなので、ないとお尻がいたいし、腰痛持ちには背もたれも欲しいところ。

 今使っている竿掛け・万力セットは「おり釣り具」というところが出しているセットもので7000円ぐらい。万力は木製、竿掛けは竹でできていてなかなかに趣があって良い。F師匠に薦められて買ったのだけど、同じような値段のもので竹製とかはあまり売ってなくて、金属とカーボン製のかなり安っぽいものになる。まあそれでも釣りにはなんの不便もないのだろうが、竹製の竿掛けはヘラ釣りの気分を盛り上げてくれるので気に入っている。
 でも、7000円のセットものなんていうのはヘラ釣りの世界では安物で、釣り具屋で黒檀とかで作られた万力を見ると平気で5万円とかしていてちびりそうになる。ヘラ釣りの道具は何でも高い。


 今使っている竿掛け・万力に全く不満はないのだが、竿かけて置いておくぐらい、ホムセンでクランプとか買ってきて細工すれば金なんてたいしてかからんだろうと思っってしまった。そういうやり方を示しておくのも「ゆるふわヘラ道」においては意味があるかなと、渋谷のハンズの金物コーナーでクランプ手にして実際に組み合わせてみたり「ここをこう締めて、こっちは木を持ってきて」とかいじり回していたら、結局竿掛け用の万力に求められる機能は、足下の木の棒に竿掛け全体を固定することと、木の棒と90度交差する形で竿掛けを角度を自由に調節できる形で固定すること、の2つだと理解した。その2つの固定をやってのけるにはクランプが2つあればできるということで、写真のような感じになった。これで竿掛けの万力として使えることは実際に竿掛け用の万力を触ったことある人なら理解してもらえるだろう。
 費用は1000円弱ぐらい。竿掛けは適当に余っているノベ竿をつかって、キャップのようにはめるY字とクランプに挟む木の棒を竿尻に上手く突っ込んで固定できるように削れば出来上がり。たいして手間もかからない。
 実釣でもどんな塩梅か使い心地を確かめてみたいところ。  

 座るマットについても、5000円ぐらいでそれほどお金がかかっているわけではなく、背もたれ付きのを買ったので腰が楽で良いといえば良いのだが、難をいうとデカいのである。マットの厚さと長時間の座り心地は関係深そうなので安易に安い薄っぺらいものに買い換えるわけにもいかなそうだが、もっと安くて腰の痛くならない空気で膨らませるタイプか折りたたみ式のものがないかと探していたら、プロックスから出ている「あぐら椅子」というのが、座面は低くて広くてヘラ釣りにも良さそうだけど、仕舞った時の体積は今使ってるマットの半分ぐらいで、かつ値段が1500円程度と安いのでものは試しと買ってみた。しばらく使ってみて、使用感など報告してみたい。

 とまあ、お金をあまり使わなくても楽しめるよといういうことは発信していきたい情報だが、ちょっとお金をかけたら楽しくなりそうというものもあったりして、買うべきか否か迷っている。
 水中映像の有用性を市販のDVDで感じたところだが、今時、個人でも水中撮影できるようなビデオ機材は手に入る。タブレット端末に接続してリアルタイムで水中の映像を見るような機材はそこそこお高いけど、小型のいわゆる「ウェアラブルカメラ(着るカメラ)」といわれるようなバンドで頭にくくりつけて撮影できるようなビデオ機器でマリンスポーツなどにも対応する専用防水ケースのついたモデルが5千円ぐらいの安価で売られている。
 スイッチを入れたままドボンと水中に放り込んで撮影するので「ドローン」ならぬ「ドボーン」とかいうらしい。
 水中で撮したい方向にどう固定するかとか検討するべき技術的な課題はあるけど、ルアーの釣りのような、どこで魚が食ってくるかわからない釣りとは違って、垂らしている餌のところで食ってくると分かっている釣りなら撮りようがある気がするし、リアルタイムではなくても後から釣れてなかった時間帯に魚が居なかったのか居ても食わなかったのかとか分かるだけでもかなり価値が高い映像だと思う。
 竿のグレードをあげるために使う金が5千円あるなら、こちらに使った方が釣りが楽しくなると思うのだがどうだろうか。ちょっとポチッと発注するべきか迷っている。

 釣りにおいて水中撮影を発展させていくと、その延長線上で水中映像をリアルタイムで見ながら釣るということも機材さえそろえればできるように思うけど、「ヘラ釣りは浮子で水中の状況を把握しながら釣るもの」という固定観念があるのか、いまいちそれは面白くなさそうに感じてしまう。まあ他の釣りでは偏光グラス使っての「見釣り」なんていうのを当たり前にやっていて、その楽しさも知っているつもりなので昭和の男のくだらないこだわりなのかもしれないが、ヘラ釣りでそれは何か違う気がする。

 まあ、情報機器の発達はすごい勢いなので、そういうのに触れて育った世代は抵抗無く自然にそういった機器を使いこなした釣りをするようになっていくだろうと思う。
 そうなった頃に若い衆にそういう釣りを教えてもらうのもまた一興かもしれない。
 ドローンも小型高性能化しているし一般化すれば、釣りキチ三平でラジコンでデカバルト狙ったような釣りのさらなる発展系がありえるだろうし、水中カメラも小型化や低価格化はもとより、先端技術のイルカ型の音響カメラなんかだと濁った水の中でも魚の映像が手に入ったりする。
 とりあえず貧乏人にも手が届くような、広く一般に普及した機器ぐらいは使いこなせるようになっておいて損はないように思う。

 でもまあ釣りなんて、お金がなくても拾ってきたラインとハリを竹藪から引っこ抜いてきた竹にくくりつけてもできる。お金をかけようと思えばいくらでもかけられるけど、なきゃないなりに手持ちの札で勝負するしかないのである。釣りぐらい金が無くても十分楽しめるということは示して情報発信していきたいと思っている。

2017年5月13日土曜日

ほの暗い水の底では

 あからさまに食ってきたようなスコッという感じのアタリが浮子にでて、よっしゃ来た!とばかりにアワセをくらわせると、あにはからんやハリがかりせず空振り、というのをヘラ釣りでは「カラツン」と呼んで、いかにカラツンをちゃんとかかる「食いアタリ」にするか、そのためにハリスの長さ調整やら餌の硬軟からありとあらゆる手を工夫しているのが今の管理釣り場や釣り堀におけるヘラ釣りの「技術」のかなりの重要部分であるように見受ける。

 ヘラ釣り初心者の私もカラツンには悩まされる。正直、ハリがかりしたときのアタリとの違いが全くもってわからない。ほんとにヘラブナが餌くわえてるのか?と疑問になってくるぐらいで、モツゴとかのジャミアタリなんじゃないのかとも疑ったりもするし、実際にモツゴの多い自転車で行く管理釣り場ではモツゴが釣れてくるけど、ヘラの多い「箱」の方ではアワセが決まるとヘラが釣れてくるのでジャミもたまにはあるかもだけど、どうも「箱」ではカラツンの正体はヘラブナで間違いないように思う。管理釣り場のほうでも「ジャミばっかやン」と思って油断している時に隣の釣り人がヘラ釣ったりして、ヘラのアタリも混ざっていたくさい。
 連発でことごとくカラツンになると、頭に来きてイーッとなると同時に水中に頭つっこんで実際に餌の周りでなにが起こっているのか見てきたくなる。スレがかりするのもあるから単にハリスに魚体が触れてるだけの「糸ズレ」とかだったっりしないのだろうかとか、疑い始めるときりがなくなる。

 昔、関西には「ヘラブナ喫茶」なるものがあって、喫茶室から釣り堀になっている大型水槽を横から眺められるというものだったと記憶している。「イレブンフィッシング」だったかで、その水槽で水中のヘラの動きと浮子の動きを同時に見せるというのをやっていた。ヘラなど興味がない少年時代に見たのを今でも記憶していたのは、当時、ヘラが餌を吸ったり吐いたりするのが浮子の小さな上下になって現れるので、吸ったときにあわせないとかからないとかまことしやかに語られていたのが、実際見てみると、ヘラがその場で餌を吸っても吐いても浮子には何の動きもなく、ヘラが餌をくわえて移動して初めて浮子にアタリが出たというのが意外で、水中のことを見てきたように語る釣り人の、いかにいいかげんであてにならないことかと印象深かったので憶えていたのだろう。

 最近でも、高級リールの軽い回転だと魚が食う前の寄ってきた水流変化による「前アタリ」を感じることができる、とか水中のことを見てきたように語る釣り人を、正直「またなんかしょうもないことを言ってるワ」ぐらいにみている。バスでもシーバスでもイワナでも追ってくるのが見える食ったのが見える状態で釣ったことがある人間から見れば、ルアーと同じスピードで追ってきて食った場合には、竿先にも手元にもラインテンションにも何の変化も現れない。見えてるからアワせるけど、見えてない状況で同じような食い方をされたら全くアワせることができない。
 竿先やらに変化がでるのは、食ったうえにハリがちょっとかかって、魚が首を振って初めて「アタる」とうすうす思っていたら、「ザ・シーバス」というシーバスの水中でのルアーに対する反応を納めたDVD付きの書籍が2006年に出て、そのことを裏付ける映像に大いに納得したものである。
 「前アタリ」があった時点で、賭けてもいいけどルアーは口に入っていると思う。口に入って魚が止まってラインがちょっと引っ張られて、高感度な高級リール様を通じて釣り人が「前アタリ」を感じると同時に魚も違和感を感じてペッと吐いているんだと思う。それでもしつこくルアーに食いついているうちにハリがどこかにかかって首振ったのが「本アタリ」として出る。というのが「前アタリ」の正体だと思っている。誰か水中撮影してみてほしい。

 ちなみにルアーが口に入っただけの、竿先とかにはアタリが出ないはずのアタリを出す裏技はあるようで、クランクベイトなりバイブレーションなりのブルブルとルアーの動きが明確なルアーを使って、ルアーの動きが消えた瞬間にアワセを食らわすというのを聞いたことがある。まあ、私は見釣りを除けば、感度の悪い道具立てで釣り人も魚もハリがかかるまで気づかないようにするという方針なので実践したことはないのだけどね。

 話をヘラ釣りに戻すと、カラツンの水中映像である。今時小型の水中カメラとかもそれなりの値段で入手可能で、一般の釣り人がそういったカメラを使ってヘラブナの補食シーンをとらえた映像もYOUTUBEとかに投稿されていて結構ある。でも、なんちゅうか撮影がへたくそなのか、釣りがへたくそで写すべきものが何なのか分かっていないのか、いまいちカラツンが生じる状況が見えてこない。
 良い映像ないもんかなと探っていると、ちょくちょくとDVDの予告映像がヒットしてきて、どうも私がほしいカラツンが起こっているときの餌付近の映像をヘラ釣りの上手い人の釣っている水面の浮き映像と同時に見せているDVDがあるらしい。「ヘラ管理池REALカラツン大解明」というタイトル。

 3980円と、浮子よりもお高く、安竿2本買える値段だけど、これは買っておくべきかなとアマゾンでポチッた。
 届いたのを早速視聴して、安い買い物だったことが判明。もろにカラツンが起こっている状況の水中。頭を池に突っ込んで見てきたかったその映像が納められていた。
 詳しい内容は買って見てあげてほしいが、高活性時のヘラが集まった状況下で、とにかく想像していた以上に餌がヘラの口に入りまくっている。その上で吐きまくっている。
 浮子にアタリが出ないその場でハリの付いた餌を吸って吐いてとか、溶けた餌やハリから落ちた餌は警戒せず吸っているのは、ある程度想像してた状況だったけど、釣ってる熟練のヘラ師の方が「糸ズレでしょう」「糸ズレかな」と言っているような浮子にモヤモヤとした動きが出たときにも、ものすごい高い確率で餌を口にしているのには驚いた。今時の浮子は吸った角度にもよるけどちょっと吸って吐いた程度でも結構動く。でも絶対それでアワせてもかからんだろうという感じの早いタイミングで吐き出している。そしてカラツンの時もハリスの抵抗を感じているのか何なのか速攻で吐いてるのもあったし、下から上向いて口を開けて食っててアワせても口から餌が抜けていたのとか、正直おそれいった。何十年ってヘラを釣ってきたであろう熟練の釣り人も水中の真実のあまりの予想外の様に衝撃を受けているようだった。

 人の反応速度は、普通に目で見て大脳で判断してという場合、自動車免許の講習で習うと思うけど1秒近くかかる。素人のアワセの早さはこのレベルだと思う。見ていて「遅いって!」ともどかしくなるのもむべなるかな。
 これが、反復して修練を積むと、大脳の判断を経由せず小脳経由で短絡した反射的な反応経路ができて、0コンマ1秒以下ぐらいまで早く反応することができるようになるとされている。そういう事実が知られるまでは、陸上のスタートで0.1秒より早くスタート切った人間は「理論的にあり得ない反応速度」とされてフライング扱いになっていたとか※。「アワセ早いな~」と感心するレベルの熟練の釣り師とかも、0.1秒切るぐらいの反応速度なら普通に出ているんじゃないかと思っている。
 それでも人間がそのぐらいの早さで反応できるなら、養殖されている種だとはいえ、半野生種ぐらいのヘラブナがそれ以上の早さで反応するのは想像に難くない。しかも、実際にはラインがたるんでいる分が真っ直ぐになったっりする時間なんかも経て浮子に動きが出るわけで、反応速度の早さを競う方向ではヘラブナに勝てる理屈がない。

 だからこそDVDの中でも、ハリスを長くしてくわえたときに感じる違和感を減らす方向で調整して、再度連発に持ち込んでいたように、ハリスから餌から、仕掛けからテンポからなにやらかんやらを調整して、ヘラが吐き出すまでの時間を稼いで、浮子が動いてアワセが決まるまで口に餌を入れておけということにつきるのだろう。
 0.1秒も稼げばアワセは決まり始めるんじゃないだろうか。たぶん、ハリスの数センチの違いとか、餌の食いやすい堅さの微調整とか、上手くいっても100分の1秒単位でしか時間を稼げないかもしれない。それでも、そういう微妙な違いを他の要素も加えて重ねていって、なるべく長い時間ヘラの口に餌をとどめて、なるべくたくさんのアタリを出していって、結果ハリがかりする「食いアタリ」を増やしていくという、ヘラ釣りの教科書に書いてある通りのことをやるのみだと再認識できた。

 水の中のことを見てきたように語るには、水の中を見てこなければいけないと肝に銘じておきたい。普段見えない水の中では結構驚くべきことが起こっている。
 今回みたDVDの映像のような現象が、すべての釣り場、すべての状況で起こっているとは限らず、いろんな状況はあり得るんだろうけど、一つの典型的な例として水中の状況を想像するには極めて有用な映像だったと思う。
 面白かったッス。新しい釣りを始めて知らないことだらけで、日々学ぶことがあって嬉しい。


※って書いたら、翌朝短距離の桐生選手が0.1秒切りのスタートで失格とのニュースがあり、いまだにそのルールが生きていることにあきれた。

2017年4月23日日曜日

あなたの知らない安竿の世界

 薄々感づいておられる方もいるかと思うところだが、ナマジは安竿が好きだ。って何回も書いてるからご存じか。

 なぜ好きなのか?「好きだから」と書いてしまうと終わってしまうのでつらつらあげていくとすると、まずは比較して高い竿が嫌いだというのがあるのだろう。

 高い竿のドロドロとした欲望まみれの金儲けの腐臭が漂ってくるところが嫌いだし、薄くて軽くて折れやすいのが嫌いだし、感度だとか飛距離だとか魚をかけたことがない人間でも評価できる要素ばかりに力を入れているのも嫌いだし、ピカピカの高級ロッドが放つ俗臭さが嫌いだし、なにより高くて買いにくいのが嫌いだ。

 その点安竿は良い。まあ安くてだめな竿もたくさんあるけど、素人が乱暴に扱っても大丈夫なように丈夫に作ってあるところが好きだ、田舎臭く分厚い巻きの重量感が好きだ、ダルくて感度が悪くて人も魚もかかったことに気づかなくて早あわせしなくてすむのが好きだ、デカい魚がかかったときに折れてもいいやとギリギリ曲げられる気安さが好きだ、その時に意外に折れずに魚が上がってくる頼もしさが好きだ、自慢臭くならないさりげなさが好きだ、なにより財布に優しいところが好きだ。

 たぶん古今東西の安竿のうちベストオブ安竿を選ぶなら、シェイクスピアのアグリースティックでまず間違いのないところだろう。特にアメ人とかオージーとかの労働者階級の釣り人なら分かってくれるはず。特権階級はセージでも使ってろ!俺たち労働者階級はアグリースティックの透明なグラスソリッドティップを愛するッ!
 主にカヤックのシーバス用で愛用。突然の青物にも余裕で対応の頼もしい竿たちだ。

 ゆうても、普段シーバス釣りに使っている竿は、それほど安物ばかりではない。
 今年一発目に大物スズキを釣る幸運に恵まれたときに、ケン一から「どうせまた安モンのパックロッドとか使ってたんやろ?」とおちょくられたが、ジャクソンの「ブリストールBP805L」を安竿というのは失礼だろう。まあ、手間のかかる5本継ぎで発売当時の定価で2万円くらいだから良心的な価格だとは思うが。

 ケン一のいう安モンのパックロッドとは、仕事帰りの釣りとかで活躍してくれる「NEW WAVE minipack210」のことだと思うが、これは正真正銘の安竿で中古屋で300円で買ったのである。
 しかし、そんな安竿でいいのなら竿なんて何でもいいんだろうと勘違いされては困るのである。ぜんぜん狙って設計していないんだろうけど、たまたま私のシーバス釣りに丁度いい調子に仕上がってしまった奇跡の安竿なのである。
 それまで、鞄に放り込んで仕事帰りや出張のお供としていた竿は、リョービの「ジョイスピン606ML」というパックロッドで、これまた中古で2千円ぐらいの安竿だったけど、竿先は堅いカーボンソリッドでアタリをはじき、突っ込まれると耐えきれずに身切れでバラし、リングのリールシートは滑ってリールがよく落ちるという、なんとかならんのか?という竿だった。しかし、安いルアー用のパックロッドって当時それぐらいしかなくて、出張先で先輩も同じ竿使ってたというような竿であった。
 もっといいパックロッドがあったら買い換えたいと思って、中古屋とかで餌釣り用も含めてパックロッドがあったら伸ばして調子を見てみたりしていたけど、なかなか良いのには出会えなかった。耐久性とか心配な針金ガイドの竿とかは安くても実用性が無いし、ちょっと良い竿だとやっぱりティップが堅かったり全体的なバランスがいまいちだったりする。
 そんな中で、地味な見た目でワゴンで安売りしてそうな「NEW WAVE」は、まず安竿のくせにガイドがハードガイドが付いている。伸ばして調子をみてみると「これはいける!」と確信が走った。ソリッドグラスのティップが柔らかく全体としての調子もダルめのシーバスのアタリをはじかないような調子。しかも値段は300円。ためらうことなくレジへ。実釣での性能も文句なしで超お気に入りの1本となった。石積み護岸でこけて穂先を折った後も、穂先交換して使い続けている。
 中古釣り具屋にいくと、もう一本ないかとパックロッドのコーナーを今でも探してしまう。
 安竿すべてが良い竿ということではなく、安竿にも良い竿があるということだと思う。

 運河でよく使っているフェンウィックも「ランカーギアX」は売ってた当時で実売2万円ぐらいの中級モデルといって良い竿だけど、姉妹竿の「イーグル」は実売1万円ぐらいの立派な安竿である。
 こういう、大手メーカーがいろんなグレード出している中の安い方のシリーズの竿って「当り竿」があってお買い得。単に安出来でダメなのもあるけど、例えば先のフェンウィックなら、ランカーギアXもイーグルもブランクス一緒なのである。ガイドがSICかハードガイドかなんて普通実用上差がでるほどの違いじゃない。上位機種譲りの性能でお値段控えめはお得感大。
 ダイワも初心者用から競技用の高級機種まで、いろんな竿をだしているけど、グラスのオレンジ色の「アタッカー」の時代からダイワの安竿にはお世話になっている(※2018.10.18グラスのは「ジェットスピン」でした)。
 「パシフィックファントム」の振り出しシーバスロッドも丈夫で良い竿だったし、カレイの船釣りで使っていた「早船」も良かったので、もう一セット新しく買ったときにもまた「早船」買ったった。インドネシア製で換え穂も付いて1万円台とお手頃な安竿だった。実用性問題なし。
 というわけで、へら釣り始めるにあたって、まず1本にダイワの「陽舟10尺」を選んだ。中古屋でシマノ「抜作」というイカした名前のと迷ったが、抜作先生の方は中古で1万円ぐらいと、ちょっと高級ロッドぽい感じだったので安竿感満載の「陽舟」に決めた。3千円ぐらいでお財布にも優しいし、初心者にはこのぐらいのがお似合いというものだろう。ダイワのウェブサイトで確認すると全17シリーズにもわたるダイワのヘラ竿のうち一番下のグレードの定価もなくオープン価格のシリーズである。竿の善し悪しが分かるぐらいに上手くなれば良い竿買えばいいようにも思うけど、たぶんそうなっても安竿を愛用しつづけそうな気はしている。

 ヘラ竿としては、もいっちょ13尺の天竜「天昇峰」というのを、これも3千円くらいで買って、やや広い池の管理釣り場はこの2本で始めてみようということになったのだが、管理釣り場で惨敗。「箱」での修行にF師匠から「短竿の提灯ウドンセット釣りを練習するように」との指令があったので、関東の釣り堀では竿は8尺からの規定が多いらしいので8尺を買おうと思って、ハタと気が付いた。8尺って、2.4mだとすると我が家に結構あるんじゃねえの?
 ハゼ釣りやらテナガ釣りに使う小物竿には確かに「NEW白滝240」とかがあるが、小物竿でヘラ釣ると弱すぎてあげるのに時間がかかって案配悪そう。
 でも、「NEW白滝240」が塗装も剥げちょろげになって買い換えたときに、後継の「白滝Ⅳ240」を買ったは良いけど、小物竿にあるまじきごっついグラスの太竿だったのでお蔵入りして、結局「風雅」というカーボンの小物竿を買ったのを思い出した。
 お蔵入りしていた第4世代「白滝」の出番が来た。
 写真見て「小継渓流」となっているのに、なぜ小物用として買ったのか、ナマジはアホなのかと思われるかもしれないが、アホなのは否定しないけど、「NEW白滝」は渓流とか書いてあっても、実にいい案配に柔らかいグラスの小物竿だったので油断した。通販の怖いところである。
 「白滝Ⅳ」は前述のようにバットが太いグラスロッドなので竿受けに乗るかちょっと心配だったけど、ギリギリ乗りそうなので、ヘラ竿として活躍してもらうこととした。
 へら竿っていったって、長尺の竿なら軽い方がいいとかあるんだろうけど、短尺の竿ならそこそこの丈夫ささえあれば何だって良いんだろうと正直思っている。
 特に提灯釣りならあまり振り込みも必要なく竿の性能は掛けてからの楽しさを重視したっていいんじゃなかろうか?竹竿とかはそういう性格もあるんだと思う。
 グラス竿のグネグネとした釣り味は竹にも通じる面白さがあるとかないとか聞くけど、個人的にはとても好きである。
 実際、この竿でヘラを釣ってみて、実にいい案配に竿が魚をいなしてくれるし、グニャっと曲がりつつも太いバットはしっかり魚を寄せてくれて実にいい。8尺は白滝Ⅳで行く。「白滝Ⅳ」で食わせ餌「シラタキ」で釣るというくだらない釣りを真面目にやるつもりだ。

 そもそも、この「白滝」シリーズは、九州の釣り具販売チェーン店の自社ブランドっぽい「タカミヤ」のグラスののべ竿シリーズで。お店の入り口近くのワゴンのあるあたりにぶら下がっている安竿である。九州時代に小物釣りしようと思い立って「とりあえず800円で安いしこれでいいや」と買って、そのまま気に入って「NEW白滝」を使い続けていたのである。ちなみに今タカミヤのウェブサイトをみると「白滝V」となっていて笑えた。第5世代に突入したという、由緒正しい安竿である。
 「NEW白滝」の引退に伴う買い換えで、第4世代白滝はゴツすぎて一端お蔵入りになり「風雅」を買って実戦投入しているが、実はその後「NEW白滝」長さ違いで何本も中古屋で見つけて買ってしまった。「風雅」がくたばったらまた「NEW白滝」を使いたい。ついでに初代「白滝」も中古で見つけてしまいゲットした。
 「白滝シリーズ」第3世代が見つかれば現行第5世代は入手は可能なので全世代コンプリートである。まあ、誰もうらやましがらないコレクションだけど、第3世代の「白滝」を見つけた方はタレコミよろしくお願いします。たぶん名前は「白滝Ⅲ」と予想。

 とまあ、安竿への愛を書き綴ってみたところだけど、私が安竿を使うのは「愛故に」というのが一番の理由だけど、「道具なんて安モンでいいから興味があるなら釣りは始めたらいいよ」と声を大にして言いたいからというのもある。
 釣り具屋側は高い道具を買って欲しがるけど、そんなのとりあえずは無視していいよと、釣り具屋に騙されるのも釣り人の努めだろうな、とは薄々感じつつも、天の邪鬼の役目として安竿への愛を謳うのである。