2017年7月9日日曜日

君の名は。超難問フナ編


 ヘラ釣り始めると、雑誌でもネットでもあちこちで「半ベラ」とあるのを目にする。
 ヘラブナとマブナの交雑種とされていて純粋なヘラに比べると「ハズレ」扱いで、記録ものの大型でも半ベラは記録認定してくれない。でも、じゃあ半ベラってどう見分けるのよ?って調べても誰もどこにも決定的な方法を示せていなくて、記録認定している雑誌とかでも「こちらで判断させてもらいます」というていたらくで、判断基準は明らかにしていない。
 だいたい、マブナっていうのがいわゆるギンブナのことなら、ほとんどが3倍体といわれているギンブナと普通に2倍体のヘラブナとの間に交雑が起こるとは考えにくく、一般にヘラ師がボンヤリと思っている「半ベラはヘラとマブの混ざったヤツ」というのは疑わしいことこの上ない知識である。
 だいたい「釣り師魚を見ず」で、釣り人って自分たちが釣ってる魚なのに、いい加減なことばかり言っているのはいかがなものかと思ったりする。
 一昔前の磯の底物師とかが、チャイロマルハタでもヤイトハタでもマダラハタでも「クエ」とか言ってたのには呆れるを通り越して怒りを覚えていたほどだ。
 まあ、そういういい加減な釣り師の言ってることの中にたまに学者も知らないような真実が紛れ込んでいたりするので油断ならないのだが、もうちょっと自分の釣る魚をはじめ魚についても勉強してもバチはあたらんのではないかと思う。
 私だって、知らない魚もいっぱいいる、同定しそこなうことだってあるだろう。でも自分の好きな「魚」について知ろうともしないというのはおかしいのではないかと思う。「無知は罪、馬鹿は罰」だそうである。罰は甘んじて受けるつもりだが、罪からは逃れられるものなら逃れたい。

 というわけで、当然ヘラ釣りを始めるにあたって、ヘラブナとは何ぞや、フナってほかにどんな種類がいるのか、それぞれの見分け方(同定方法)は?ということを勉強してはみたんだけど、勉強する前から「フナ問題」は数ある同定難易度の高い魚のグループの中でも、最高にややこしい問題だと知ってはいたので気が重かった。お気楽に「これは半ベラ」とか言ってくれるなよと言いたくなる。

 まず、ヘラブナっていうのが何か。これはそれほど問題ない。細かいところは諸説あるけど、琵琶湖原産のゲンゴロウブナを釣りのために体高高いのとかを選抜して育てたカワチブナと呼ばれるフナがもとになって、釣り堀文化や関東での天然湖沼への移入を経て全国に散らばったもので、現在でも食用に供されることは例外的で、ほぼ釣り用のためだけに増養殖されているという、世界でも他にはアメリカ南部のラージマウスバスやNZのニジマスぐらいしか例をみない特殊な釣り用の魚である。ラージやニジマスがあっちはキャッチアンドリリースのイメージがあるけど結構釣った後食べられることも多い中、ほとんど釣られてから食べられることが無いのも独特。歴史的には100年ぐらいは遡れるけどヘラ釣りは日本伝統の釣りと言われつつも、割と新しいハイカラな釣りなのである。まあ浮子を使ったフナ釣り自体は江戸時代ぐらいにはすでにあっただろうから、その流れで行くともっと古い釣りにはなる。
 生物としての種的にはゲンゴロウブナであり、釣り用に選抜育種しているのでその1品種として考えてもいいかもしれないけど、あまりヘラブナを品種ととらえるのは一般的ではないので、ゲンゴロウブナの釣り用に増やした「飼育型」のヤツがヘラブナぐらいの認識で正解だろうと思う。ヘラブナも種としての標準和名はゲンゴウロウブナで問題ないはず。

 次に「半ベラ」との関係もでてくるのだけど、日本には他にフナの仲間にはどんな種がいるのか?それぞれの同定方法如何というお話だが、今のおそらく最新の知見を元に出さざるを得ない答えを最初に書くと「日本にはゲンゴロウブナとその他に名前の確定していない1種類のフナがいる。」ということになるだろう。
 なにをナマジはトチ狂ったことを言い始めたんだ、また自分が同定できないものは同一種とか無茶苦茶言ってるんだろうと思うかもしれないが順次説明していく。

 まあ、3倍体で雌が生んだ卵が他のコイ科魚類の精子の刺激で発生を始め雌だけでクローンで増えているギンブナとされていた魚の存在と、北の方にはいるとも聞くギンブナの雄が本当にいるのかどうか、雄雌いるキンブナとの関係性はどうなのか、魚類学会でも答えがでていないようなことを聞いていたので、あらかじめ覚悟はしていた。
 とりあえずは同定するなら「日本産魚類検索(第1版)」をということで、全種の同定をうたっているぐらいだし、基本はここからだろうと紐解いてみる。
 同検索図鑑によれば日本にはフナの仲間はゲンゴロウブナ、ギンブナ、キンブナ、オオキンブナ、ニゴロブナ、ナガブナがいるようだ。ちなみにゲンゴロウブナだけ種レベルで違い、その他の5種は同じ種内の「亜種」の整理(なのでこの整理でも2種といえば2種である)。
 最初に分けられるのは、ゲンゴロウブナとギンブナの2つとそれ以外のフナで、同定の最初の分け方は体高と体長の比率で、体長が体高の2.1~3.0倍と体高高いのはゲンゴロウブナとギンブナ、2.8倍~3.6倍と体高が低いのは以外の4つのフナなので次のページへという感じになっている。愕然とする。
 いままで、「フナ」は沢山釣ってきたが、明確なヘラブナ(ゲンゴロウブナ)以外はまあギンブナなんだろうなということで、しっかり検索図鑑すら見ていなかった自分の不明と不勉強を恥じる。
 検索図鑑の最初の外見上の見分けるポイントで分かれないジャン。比率が2.8~3.0倍の間のフナはどちらもあり得るということである。かつ体高高いギンブナもいるということになる。よく言われる「ヘラは体高が違う」というのは傾向としてはあるかもだけど決定打にはなってない。
 九州で釣ってた「マブナ顔のフナ」はいつも、東海地方にある実家の近所で釣ってた「マブナ」より体高があるので「なんなんだろう、これが半ベラってやつか?」とか思っていたけど、ギンブナ自体がフナの中では体高高いグループに属していて九州の「ギンブナ」は体高が高いということなのかも知れない。
 写真は上が九州のフナ、体長は体高の約2.7倍でヘラブナかギンブナで顔からいってギンブナと思う、写真下は関東のフナ約2.8倍でなんとも言えないということになる。数値以上に体高が違うように感じるのがおわかりいただけるだろう。まあ、放流由来のヘラブナ以外どこのフナもそれぞれの地域にしかいないフナなんだと思って愛でておくのが正解なのかも知れない。

 他にもヘラブナは外見では右の写真ででも分かるように目が下の方向いてるとか、上唇があまり伸びないとか言われている
 けど、確かに典型的な個体を見分けるには役に立つかもしれないが、そんな数値化されていない基準、中途半端な個体がでてきたら通用しない。
 まあ厳しめに疑わしきは「ヘラ以外」とすれば、純粋なヘラを混じりなく抜き出すのには十分で、ヘラの記録認定とかの場合にはその方法を現実的にはとっているのだろうけど、じゃあその「ヘラ以外」とされたフナは何者なのか?多くのヘラ師にとってはどうでもいいことなのかもしれないが、私にとってはどうでもよくない。大型の体高高い「ギンブナ」なのか、それとも半ベラとよばれる交雑種(キンブナやオオキンブナと交雑?)なのか、それとも「ヘラ以外」判定を受けたけどやっぱりヘラなのか。
 
 幸いなことに、形態上の同定のポイントで第1鰓弓の鰓耙(サイハ)数は、ゲンゴロウブナとそれ以外のフナで明確に分かれる。植物プランクトンを水ごと吸い込んで鰓耙で濾し取って食べているゲンゴロウブナは鰓耙数が92以上と多い。魚を殺す必要がでてくるが、ゲンゴロウブナを同定することは可能となる。琵琶湖でヘラブナとゲンゴロウブナと区別は付かないし、鰓耙数多い半ベラがでてくる可能性は否定できないけど、生物について絶対の正解を求めるのが土台無理で鰓耙数で見て92以上ならヘラブナも含むゲンゴロウブナ、72以下ならそれ以外のフナ、72から92ならたぶん交雑種か例外的な変な個体ぐらいの整理しかないだろう。今時DNA鑑定すりゃ良いじゃん、というのは後で言及するけど、「3倍体のフナ」かそれ以外かを分けることができるぐらいで、従来のフナの仲間の分類通りの同定には今のところ使えそうにない。
 いずれにせよヘラブナ(ゲンゴロウブナ)については植物プランクトンを吸い込んで補食している魚だからこそ、釣り餌を吸ったり吐いたりする事によって、餌自体も釣りの技術も随分とややこしく特殊で面白くなっているなっているのだから、植物プランクトン食という生態に起因する鰓耙数の違いを基準に同定していく、というのは釣り人的にもしっくりくる。100%の同定が無理だとしても納得がいくのだがどうだろうか。

 さて、比較的すっきりしたゲンゴロウブナだが、じゃあその他のフナであるギンブナ、キンブナ、オオキンブナ、ニゴロブナ、ナガブナをそれぞれ同定するポイントはどこなのか、検索図鑑読んでも、ゲンゴロウブナ、ギンブナとその他のフナの見分けるポイント以上にカブリまくりで、中間的な個体が区別つかないというよりは、むしろその種の特徴が際だっている個体しか同定できない基準になっている。
 待ってくれよ、せめて琵琶湖で漁師が値段いいので明確に分けて狙って穫ってるニゴロブナぐらい形態的に違いあるだろうと思うのだが、ネットで検索図鑑に加え原著論文にもあたったらしいマニア氏が整理したカブリ具合の表をみても同じ結果で、マニア氏もこれじゃゲンゴロウブナとそれ以外のフナに分けるのに加え、特徴がよくでている個体は同定できることもあるかもぐらいと書いていて、同定お手上げに困惑しているようだ。
 ニゴロブナはなんで珍重されるのかというと、割と動物食が強くて内蔵が短いので琵琶湖名物「鮒寿司」にするときに歩留まりが良いのが好まれるらしい。ゲンゴロウブナは逆に植物食なので内蔵が長くて鮒寿司にされることはあっても自家消費やニゴロブナの代替品あつかいが多くて「高級品」にはならないようだ。なので、腸管の長さとかデータ取りまくったら違いがでてくるのじゃないかと思う、というかありそうな気がするけどどうなんだろう?鮒寿司自分でも漬ける鮎迷人にでも聞いてみたいところ。

 というわけで、形態で差がつかなければDNAだろと誰でも考えるところで、魚類学者も調べてぼちぼち報告されてきている様子。
 その今のところの報告によれば、ゲンゴロウブナ以外のフナ5亜種を分けるような遺伝的な差異は認められない。ということだったらしい。論文も色々出ているようだけど、マーカーとする遺伝子やら、たぶんサンプルの引っ張り方によっても結果が違うようでまだ最終的な答えにはなっていない感じ。5亜種と関係なく3系統に分かれるとか、それとも異なる結果が出たとか混乱に拍車がかかっている気がする。
 まあ、あたり前っちゃあたり前。内水面のような閉鎖的な環境では、それぞれの水系ごとに違った遺伝子集団がいて当たり前で、違うと言い始めれば水系ごとに全部違って5種類やそこらで済むわけがないし、でも現実としてちょっとずつ違っていて、5亜種に特徴的な個体を持ってくればそれなりに違っていたりする。でもその中間的なやつの出現を拾っていけば、全部が一つながりの「種」に整理するしか無いというのが基本的な分類学の整理なので、仕方なく最終的に「ゲンゴロウブナ以外の日本のフナは1種」に整理するしかオチどころがないように思っている。どのみち「種」とか「亜種」とか言ったって線の引けない自然の現象に線を引くための整理でしかないので限界はある。
 でも、商品価値が明らかに違うニゴロブナとなじみがないけど北陸、山陰とかにいるらしいナガブナは体型が細長いので「細長系」として、いわゆるマブナなんだろうなと素人目に見える「マブナ系」のギンブナ、キンブナ、オオキンブナの2つのグループ間の違いぐらいは形態でもいいので分けて亜種のあたりを再整理してほしいと思うのだけど、どうなることやら結果がでるのはまだ先になるようである(沖縄の在来のフナは遺伝的にもちょっと違いがありそうという結果もあるようで、そこは新たに分けられるかも。)。
 ちなみに半ベラに注目してDNA調べたような報告は今のところ目にしていない。いずれにせよDNAの違いはフナではよく分からんようなので、誰か真面目に本当に「半ベラ」とされているのが鰓耙数数えてどっちにあたるのか調べてほしい。鰓耙数が中間ならほんとに交雑してる可能性もでてくるだろうし、どちらかに判定できるならどっちかだと整理するんだろう。
 個人の主観的な判断に基づいて「半ベラ」とかいって、他人の釣果と魚自体を貶めるような姿勢は、たとえその判別方法が結果正しかったとしても気分が悪いので止めていただきたいものである。どうせ私も含めみんな分かってもいない癖して偉そうなこと言うなと。でっかいフナが釣れたら喜んでおけば良いじゃないのかという気がする。このことについては文句があるなら根拠を示せと書いておく。写真の個体、ちょっと上唇伸びてるけどヘラかそうじゃないか客観的な判断基準を持って判定できる人がいたら是非教えて欲しい。

 とかく「ヘラ釣り」を始めて鼻につくのが、他者を貶めようとしているとか思えない言動である。
 「半ベラ」しかり、安竿をけなす言葉しかりである。
 そういう輩が信望している「高尚なヘラ釣り」像について坊主にくけりゃ袈裟まで憎いで、唾吐きかけて雑菌まみれのクソを塗りたくりたくなってしまうので「それをいっちゃあおしまいよ」かもしれないが書いちまおう。
 「ヘラ釣りは日本の伝統的な釣りで・・・」なにをいけしゃあしゃあと、100年だかの歴史しかないくせに。餌木とかの漁具を除いても、20世紀初めの湯川へのカワマス放流とかの時代に始まっただろう日本のルアー・フライとどんだけ歴史に違いがある。
 「大自然とのふれあいが・・・」ほとんどの釣り場で釣り用に放流されてるヘラブナが「大自然」かね?意地悪な言い方だけど、自然環境を破壊する移入種じゃないの?

 とまあ、ボロクソ書いたわけだが、じゃあ3ヶ月ほどそれなりに真面目にかつ「ゆるふわ」にヘラ釣りをやってみて、ヘラ釣りが嫌いかというと、まあ顛末記読んでもらえば分かると思うけど、正直かなり好き。深い沼におもいっきり足がハマってしまった感じがする。

 ヘラ釣りの歴史なんて、今のヘラ釣りはたぶん、餌に水中で溶けてバラケるマッシュポテトを使い始めたあたりが大きな転機で、植物プランクトン食の魚に対するある種のルアーのようにヘラ餌自体が進化し始め、日本人ならではの凝り性でガラパゴス的に他の国ではあり得ないような、訳の分からないぐらいの多種多様な楽しみ方が生じているように思う。そういう先人たちの突っ走った取り組みを、文化を享受して楽しむことができることを釣り人として幸せに思う。

 ヘラブナは釣り人のために選抜されてきて放流されてきた極めて不自然な魚である。別に漁業のためとかのような産業的な意味は小さく、観光資源とかにはなるだろうけど、自然環境にとってその放流が善か悪かと問われれば、客観的にみれば悪い面の方が多いかもしれない。
 過去に放流されたっきりで後は自然繁殖しているような釣り場であっても、同じように放流されて自然繁殖しているラージマウスバスと同程度には悪影響があるだろう。
 でもまあ、ヤマメにしろアユにしろ日本の内水面の釣りなんて、放流無しなら成り立たないぐらいのことは分かる。
 それでも若い頃は、放流由来のヤマメより自然に繁殖している支流のイワナとかをできれば釣りたい、「大自然」を堪能したいという気持ちが私にもあった。でも年を食うとそのあたりは、どうせ自然環境もグダグダに変えてしまったのに、魚だけ昔のままにと願ってもどうしようもないだろうと考えるようになった。
 今でも残っている「大自然」や古き良き里山里川里池は大事にとっておくべきだろうと思うけど、自然環境破壊の代名詞的なダムだとか、三面護岸にしちゃって日本の魚たちの多くが産卵繁殖できなくなった池とか、散逸の問題を無視すれば別にバスがいても良いし、別にヘラがいても良い。そこを利用する人たちで決めればベストだし、そうならずに釣り人のゴミとか迷惑行為が原因で立ち入り禁止になるなら、それも自業自得と思っている。

 ラージマウスバスは随分釣ったので、割と良く知っているつもりだけど、バス釣りだって自然に親しむには悪くない方法だと思う。少なくとも私の感覚ではペレット食って育った成魚をガンガン放流した自然河川を「釣り堀化」してのヤマメ釣りより自然な釣りである。随分バス釣りから学んだ。正直もっと賢くバスを利用する方法が、特定外来生物法とかによるレッテル張りで閉ざされてしまった状況が歯がゆく思うが、未だに外来生物の投棄とかがなくならない状況を見ると、愚かな釣り人が「賢く」バスを利用するのもやっぱり難しく思えてくるので、バス問題の答えは私の中では残念ながらまだない。


 でもって、「釣り堀」で浮子を眺めるという場面を想像すると、たぶんそれはヘラブナであるというぐらいの釣り堀の代表的な魚であるヘラブナだけど、釣り堀のヘラ釣りが嫌いかというとそうでもなくて、ちっちゃなプールにごっちゃりヘラブナを入れて釣る「箱」の釣りも面白いと思ったし、「箱」の中で1mの棚規定で1m以浅では釣られないということを知っているかのようなヘラブナの学習っぷりとかには恐れ入ったし、「箱」の中でモツゴが増えて稚魚が湧いているのとか見て、閉鎖された「箱」の中であっても生物はどこまで行っても、多様性にとむ複雑で興味深い「生物」でしかあり得ないのだなと感動したりもする。「箱」の中にも自然は宿る。
 「箱」でのんびりと糸を垂れる爺様達の醸し出すユルい風情も「箱」の魚たちと共に癒やしの空間を醸し出していて味わい深い。


 「箱」でも「管理池」でもヘラ釣りはキャッチアンドリリースの釣りなので、結構ボロボロの個体も釣れてくるし、死んで浮いている魚も散見される。
 嫌でもイヤっていうぐらいに、釣り人が楽しみのためだけに魚を釣って遊んでいるということの罪深さを感じてしまう。
 シーバス釣りならまずあんまり釣れないのでそんな罪悪感は年に数度の大釣りの時しか強くは感じないし、ハゼ釣りやらテナガ釣りなら「食うために釣っている」という心の免罪符があるので、実際にはリリースしながら釣るときでもあまり意識しない。
 でも、食おうがなにしようが、釣られて死んだら魚にとっては同じで、別に楽しみのために釣っているという事実が違う訳じゃない。食ったら成仏するとか、釣り人側の信仰であり、そう思うのはご自由にだけど、それで自分だけ手を汚してないつもりで他人の釣りを批判するべきじゃないと思う。釣り人に限らず現代社会に生きてる人間は他の生物に酷いことして返り血浴びまくりながら生きていることに違いはないはずだ。そう思わないのなら想像力の欠如である。
 釣られた傷が治って、鱗が変な配列になってたり口がゆがんでいたり、あるいは目がなかったり、そういう魚が無言で訴えてくる、釣り人の罪に対する断罪を我々釣り人は忘れてはならないのではないかと思う。
 そういうことを意識させてくれるだけでも、ヘラ釣りは面白いと思う。ヘラ釣りは罪深いと思う。それでも、その罪で、死後の世界がもしあって地獄に堕ちて口にでかいハリをかけて吊されるとしても、釣りをやめられない釣り人の「業」を体現している魚が「ヘラブナ」だと思っている。

 そういう、水の中では地獄のような責め苦を魚が受けているのに、水の上では釣り人が長閑に(あるいはせっぱ詰まって)釣っているという対比の認識が、餌屋やらメディアの垂れ流す情報を鵜呑みにして「高尚な釣り」だと信じているような釣り人には欠けているのではないかと思うので、ヘラ釣り真面目にやってる人が読んだら気分を害するような文章を書いてみたところである。

 ヘラ釣りは残酷な釣りだ、他のすべての釣りと同じように。だからこそ私のようなあなたのようなサディストでありつつマゾッホであるという矛盾を抱えた「釣り人」の心に深く突き刺さって抜けないのだと思う。
 ヘラブナが植物プランクトン食という他の釣りの対象魚にはあまりない食性を持つことから、餌や釣りの技術が、凝り性な日本人の性格も相まって、特殊にマニアックに追求され続けていて楽しまれてきていて、その釣りの楽しみのためだけに生産されている魚がいて釣り場が成り立っている、というこれまた特殊な背景を持ちつつ、釣り堀から天然湖沼まで様々な釣り場で親しまれている、というのがヘラブナ釣りを俯瞰した全体像だろうか。

 ヘラブナの植物プランクトン食という食性から生じる「粒子を吸い込んで捕食する」という独特の餌の食い方は、ともすればバラけた餌だけ吸われたり、吸ってもすぐ吐かれたりということに直結して、そこを何とか口の中にハリの付いた餌を少しでも長く入れさせようとするところに駆け引きや多様な技術が生じて、ヘラ釣り独特の面白さの根本的な要因の一つになっていると思う。べつにマブナ釣っておけば極論餌はミミズで済んでいただろうし、マブナ釣りが面白くないわけでもないだろうに、なぜ先人はヘラブナをそうまでして釣ろうとしたのかよくわからないが、とにかくヘラブナを釣りたいと願った釣り人達がコレまで積み上げてきた多種多様な技術には、よく考えたものだと感心させられるし、そういった技術を一つ一つ練習していくのはとても楽しい。始めて3ヶ月の初心者だけど技術の基本を体に憶えさせて、ちょっとずつ魚が釣れるようになる楽しさを味わっている。憶えなければならない技術がまだ山ほどありそうなことにも楽しみを覚えるところ。
 
 炎天下の釣りは今の体力では耐えられそうにないので、秋までいったん小休止だけど、これからもゆるふわっと、でも真面目にいろんなことを考えながらヘラ釣りを楽しんでいきたい。

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