2024年3月9日土曜日

僕が考えた最強の大森タックルオート

 最近釣友が、職場の釣り好きに誘われたのがきっかけとかで、貸しボートでのカマス・アジ釣りにハマっている。昔使ってた魚探引っ張り出して、ボート用の台座自作して取り付けたり、アジの時合いにはアジ釣りマシーンと化して釣ってたり、なかなかに楽しんでいるようだ。で、その時に狭いボートの上で竿先に絡んだ道糸をほどこうとしてたら、反対側のリールが誤ってチャポンと海水に浸かってしまったらしい。一瞬チャポン程度ではどうっちゅうことないだろうという楽観視を尻目に、しばらくしたら中でジャリジャリとした感触が生じ始めた。

 「ほんの一瞬浸かっただけやで」と嘆こうが、覆水盆に返らずっていうか、今時のスピニングリールにおける諸悪の根源”瞬間的逆転機構”がろくな防水機構もなくローターの下に入れてあったら、一瞬ドボンなどもってのほか、水道ジャバジャバ水洗いなんてとんでもない、雨降っても、波かぶっても、あんなところ防水してなければ無防備状態で、しつこく書くけど水辺で使う道具なのに、水かぶった程度で不具合が生じかねない。雨が降ったら釣りに行かず、小さなミスも犯さない、リールを水中に落っことしたり、自分がコケてリール水没させたりしない人間用なのであろうか?ワシャそんなん自分がコケて肋ヒビ入らしているぐらいで、とても上手にあつかわんわい。

 釣友も「別にご大層なリールが欲しいわけじゃなくて、それ買ったら面倒がなくそれっきりで良いのってどれよ?」とぼやくわけである。彼の所持するリールにはそういう良いリールがあるにはあるけど、若き日の相棒であり、もうおいそれとは出したくないらしく、次買うときに同じような面倒な機種はウンザリだということらしい。

 手っ取り早くいくなら、大手の1万円ぐらいからの大衆機で、瞬間的逆転防止機構にガッチリ防水機構が付いているのを買うという選択。整備性は良くないけどラインローラーとかの外回りだけ気をつけてやればよさげ。あとはメーカーメンテ。

 中古で探すなら、そういう耐海水性能で強いのはPENN、整備性が良いので面倒臭くないのが大森、という感じだけど、ボートでアジやらカマスやらを狙う小型リールでとなると、PENNはちょっと弾数少なくかつお高い。大手の大衆機よりヘタすると高くつく。大森No.1サイズはボロければ値段安いし、見た目ボロくても整備すれば機能はなんら問題ないことがほとんど。ということで、どうせわが家で出番もなしに蔵に在庫しているだけなら、使ってもらった方が道具として正しい有り様である。ということで「余らしてる大森でよかったら使えるようにして進呈するよ」ということになった。

 ちょうど、TAKE先生が「コメットG1」の逆転防止の消音化部品を売りに出したところであり、コメットはタックルオートをインスプール化したような機種でハンドル軸のギアとか設計に共通点が多く、件の消音化部品も「タックルオートNo.1」にも適合するとのことで、そのあたりも組み込んで、ワシが考え得る現時点での最強の「タックルオートNo.1」に仕上げて引き渡したい、ということになった。なったんだけど、他に良いリールはないかと、自分が使うのを想定して「面倒臭くなくて優秀なアウトスプールの小型スピニング」にはどんなのがあるか、ってのをちょっと数え上げて考えてみた。

 まずPENN勢は「430ss」「4300ss」「430ssg」あたりだろう。前2者はベールスプリングを折れたら交換する必要があるっていうほかに、欠点と言わなければならんほどの不具合はない。ただ、さっきも書いたように弾数少なく値段高いのでおいそれとは買えん。430ssgは瞬間的逆転防止機構搭載なんだけど、油グッチャリの湿式で使えるので浸水しても平気ではある。ただ寒いとグリスの粘度が上がって逆転してしまったりする。逆転防止機構を一方通行のベアリング一個に任せて単純に仕上げてるのは整備性良くて良いんだけど、欠点もある。弾数少ないのは一緒。

 お次、大森製作所なら「マイクロセブンC1」「キャリアーNo.1」「マイコン301TB」「タックルオートNo.1」「タックルNo.1」あたりか、正直海水での実用性では本体樹脂製の「マイクロセブンC1」がもってこいな気がする。けど、現在使用中の機種であり今回の選からは惜しくも外した。キャリアーも樹脂製だけど人気機種なので値段が高い。「マイコン301TB」も良いリールだけどリアドラグのツマミの隙間から浸水してドラグの調整幅出すバネが錆びがちなのでその点やや注意必要。値段という点では「タックルオートNo.1」「タックルNo.1」はクソ安い。ボロいと2千円しないことが多い。消音化パーツが出たことで「タックルオートNo.1」は若干注目が上がって値もあがるかもだけど、「タックルNo.1」など左巻のネジが失われてることが多いのが難点だけどゴミのような値段で買えるし、じっさい買って今年使用予定で整備済み。ということで、今期も今後も使用予定がなく、大森らしい軽くベールが返る内蹴り機構と簡易ローターブレーキを楽しんでもらうにも「タックルオートNo.1」が最適な機種だろうと考えた。チョイボロすぎる個体をスペアスプール要員兼部品取り個体として抱き合わせてセットで、片方をカリッカリの実戦対応モデルに仕上げて進呈しよう。いじるのは消音化はオマケで、大森スピニング最大の欠点とされる”なで肩のスプールエッジ”、”スプール往復幅より広い糸巻き幅”をレイの方法でアレしてやる。

 と方針はこの時点で決まったんだけど、この際他にも実用性の高い機種ってあるか?と続けてアレコレ考えてみた。

 ABU「カーディナルC3」は合格だろう。ドラグ含め濡れたら困る機構は本体内に収めてある。アキレス腱のベールスプリングも長寿命ベールスプリングを組み込めばだいぶ戦えるはず。ダイワ「ウィスカートーナメントSS」は、かなり良い、ルアー用小型スピニングに初めてロングスプールを採用、まだこの時代は瞬間的逆転防止機構が搭載されておらず、ラインローラーにもベアリングは入ってない。650サイズのベールスプリングは普通のトーションバネだけど、750サイズから上になると耐久性の高いグルグルコイルバネが採用されていて「樹脂ボディーの瞬間逆転防止機構の搭載される直前の機種が実用性が高い」というワシの持論に合致している。バラしにくく整備性はイマイチってことぐらいしか欠点が思いつかない。ラインを端まで巻くとドバッとまとまって出てしまうトラブルが多いらしいけど、糸巻き量減らすことで対応可能。渓流で使ってたけど気持ちよく使えていた。ダイワがトーナメントSSならシマノは「92’ツインパワー2000」が瞬間的逆転防止機構が付く前の樹脂本体機でマルチポイントストッパー方式。分解整備しただけで使ったことないけどこれは良い気がする。ベールスプリングがコイルグルグルなのはポイント高い。リョービ「サイノスXS1000ZM-T」も2000番の同型機をいじった程度だけど、マルチポイントストッパーでベールスプリングがコイルグルグル、ラインローラーに無駄にボールベアリングが入っておらず、やや樹脂で回転部を受ける構造が多いのが耐久性的にどうかと思うけど、まあそれなりに持つんだろうとは思うと上出来。で、ルー(韓国日吉)「ゴールドスピン」は使ったら良かったので、弾が少ないので入手はやや難しいけど実用性高いアウトスプールスピニングとなれば出しておかねばという感じ。他にも、ワシが知らんだけで、瞬間的逆転防止機構が搭載される前の機種で実用性の高いのはあったんだろうと思う。オリムのその時代の機種は触ったことないけど何かあったんだろうし、日本じゃあんまり見ないけど、ゼブコとか絶対アメリールらしい実用性の高いのを用意してただろう。そして、そういうのを下請けしてた韓国、中国製のリールでも丁寧に拾っていけば良いのはあるかも。

 というときに、自分が評価する項目として、重要な項目から書き連ねると「瞬間的逆転防止機構が付いていない」「整備性の良い単純設計」「必要充分な耐久性」「まともなドラグ」「適正な幅のスプール」「適正な形状のスプールエッジ」「ラインローラーにはボールベアリングではなく樹脂製スリーブ」「回転部を受ける工夫」「ベールスプリングはグルグルコイル」「本体樹脂製」「ハンドルはワンタッチ折り畳み不採用、取り付け方法はねじ込み式が望ましいが共回りも可」「ハンドルノブが長時間使ってても指が痛くならない形状」「ローターブレーキ採用」「指がスプールエッジに届く設計」あたりを評価基準にしている。いるけど、いじくってどうにかしてしまえる、あるいは外法で対応可能なら欠点は補完できると思う。 

 ということで、本題の「タックルオートNo.1」の改善に取り組んでいこう。タックルオートNo.1を上の評価項目で評価すると、「適正な幅のスプール」「適正な形状のスプールエッジ」「ベールスプリングはグルグルコイル」「本体樹脂製」「ハンドルノブが長時間使ってても指が痛くならない形状」以外は問題なしである。つまりこの5項目のうち対応可能なものに手を付けようという方針。ベールスプリングはグルグルコイル式に改造できないか考えたことはあるけどなかなか難しい。むしろトーション式のベールスプリングの自作で対応する方が簡単なので、まあ定期的に交換か予備を用意しておくことで対応してもらおう。本体樹脂製じゃないけど、整備性の良さと逆転防止機構まで本体内に入れた、ある程度防水性がある設計でカバーできるので耐海水、耐腐蝕的には充分対応可能だと思う。釣りから帰ったらジャブジャブ洗って、から拭き乾燥。たまにラインローラー、ハンドルノブ、スプール外して主軸の根元に注油程度で問題生じないはず。ハンドルノブの形状については、一概にこれが良いという話ではなくて、釣り手のツマミ方、握り方、手の形大きさで変わってくるので、なんとも言えんところで、ワシは大森の三角パドル型は摘まみやすいし痛くなってこないので好きである。一応マイクロセブンCシリーズのウッドノブ型と2つ用意して使いやすい方をという選択方式にする。で、のこった「適正な幅のスプール」「適正な形状のスプールエッジ」についてはれいによってFRPの板を使って、スプールエッジの形状等調整をやってしまうという方針。あとせっかくなので消音化部品も組み込む。

 まずはだいぶ慣れてきた感のあるスプールエッジの形状等調整。No.1サイズの場合、スプールの幅が約13ミリにたいしてスプール上下幅は約11ミリなので、11ミリの高さの厚紙の下駄を履かせて、填まるように切り出したFRP、8ミリの板をズレないように填めておいて、隙間にティッシュの紙縒りをクルッと入れて瞬間接着剤を染みこませて、その上にさらに紙縒りを重ねてまた瞬間接着剤。という感じで大まかな形状を整える。その上でハンドドリルに填めてエッジの面取りをしてティッシュも削ってある程度滑らかにしたうえで、エポキシで隙間とか窪みを埋めつつロッド回しに刺してコーティング。固まったら銀色のラッカー塗料でヌリヌリで完成。

 でもって、消音化部品の組み込み。消音化部品は樹脂製で出るかと思ったけど、樹脂製だと温度差とかで作動が安定しないとかで、バネ的部品でハンドル軸の回転を拾ってそれを、金属製のカムに伝えてカムの隙間にストッパーの爪を入れて正回転時にラチェットから遠ざけるという仕組み。チョイ面倒だけど金属製なのは丈夫そうで悪くない。

 写真上左が元のストッパーで矢印の位置に爪がない。で外して消音化部品と並べたのが写真上右、右の爪付きのストッパーに交換して、ワッシャーで高さ調整の後、写真下左のように金属製カムを隙間でストッパーの爪をはさむように設置。チョイ見づらいけど写真下右のようにハンドル軸のギアの軸にバネ的部品を填めて、その出っ張って曲げてある部分を金属製カムの隙間の反対側の凹部に填めてやるという手順。そんなに難しくなく、想定していないだろうぐらいにグリスグッチャリなので滑りすぎると上手くいかんのでバネ締め直しとか調整必要かと思ったけど、一発で決まって問題なく機能してくれた。

 カリカリ鳴るの嫌いじゃないけど、たしかにラチェットに当たるごとに抵抗は発生しているわけで、ラチェットに当たらず音が鳴らないようにしてみると、ボールベアリング一個しか使ってない、でもハンドル軸をアルミの本体で直受けにしたりせず真鍮スリーブを入れているという、丁寧な仕事ぶりが光る大森スピニングの真骨頂的な滑らかな回転が味わえる。さすがの大森ハイポイドフェースギア。回転の滑らかさとか、わりとどうでも良いとワシ思ってるにしても、これはこれでたしかに良いものだと思わされた。そりゃ今時の高級スピニング様はもっと滑らかに回るのかもしれん。しれんけど、そのためにどんだけボールベアリング突っ込んで面倒くせえことになってるのかって話。実用上充分以上に滑らかな回転をボールベアリングたったの一個でやっつけている、同時代のボールベアリング2個入りのオートベールと比べても下位機種なのにこの仕上がり。無駄が無くスッキリしてて良いリールだなと改めて思うのよ。って感じでいっちょあがりが下の個体。スプール調整済み、消音化部品組み込み済み。グリスグッチャリ整備済み、ハンドルは純正のまま。対して上がローターが一部欠けてたようなボロ個体で整備済みではあるけどやや回転の滑らかさとか損なわれている。スプールはそのまま(可能ならどちらも試して比較してもらいたいところ、その後追加でスプール形状調整も承ります)。ハンドルはマイクロセブンCSのを付けてあるので、どちらかお好みのを付けて使ってください、どちらにも付けられます、という感じ。結局、リール改造用の部品とか各種売ってるけど、買って価値あるのはスプールとハンドルぐらいで、あとはだいたいにおいて自己満足程度かなと思っている。スプールは同じ替えスプール買うだけでそのリールの戦闘能力が格段に向上するし、形状やら糸巻き量の適正化やらいじれる要素も大きく、スピニングの飛距離とかトラブルの少なさとかスプール上下の方式とかも関係してくるけど、大きくはスプールの形状で決まる話で、ベアリングの数増やして空回ししたときクルックル回るようになったところで戦闘能力はあがらんのでそれは無駄な金の使い方だと思うし、そんなもんよりスプールに金かけろだろ。そしてハンドルはノブの形状とかが手に合わん痛くなってくるヤツだとつらいモノがあるので大事。見た目より何より使ってて痛くなってこないのが良いハンドル。こればっかりは使ってみないと分からん。

 なんにせよ、基本設計がしっかりしている機種に不足している機能を足していく、あるいは必要な調整を施すのは比較的容易に対応可能。でも基本設計に”瞬間的逆転防止機構”なんていうクソがデデンと鎮座していると、防水性とセットでそこは外せないのでどうにもならん。スピニング作ってる各社は早く外せっての。

 とはいえ、しばらくは瞬間的逆転防止機構の流行はおさまらないんだろうから、ワシそういうのはクソだとネットの片隅で叫び、レジスタンス運動に身を投じつつ、クソが鎮座していない時代のスピニングを愛でていきたい。

 てなことやってたら、大森熱がぶり返して「大森スピニングが整備したい!」ってアタイ苦しかったの。でもご安心くだされ。わが家には整備待ちの大森スピニングぐらいたーんとござる。

 ブッコミ泳がせに使ってる「マイコン202」が調子よくてずいぶん気に入ったんだけど、そうなると替えスプールが欲しいなという症状が出てきて、すると出てくるんですね中古市場にポロポロッとボロ個体が2台、2台とも競りもせず確保。まだマシな方を整備して剥げてた塗装もお化粧直しして、すでに現場投入済み。そして、ワシが整備してやらねば燃えないゴミになりそうなジャンクな「マイクロセブンNo.1」のグリーニーな個体。ハンドル後方の左右交換用のネジ入れに格納されていた左用のハンドルネジが赤さびまみれになっていて泣きそうになったけど、ダイヤモンドヤスリでネジ山を復活させてなんとか使用可能な状態に復帰。てな感じに今期も楽しく大森沼にズブズブと潜っております。皆様もご自愛くださいませ。アタイ病気が憎いっ!

2 件のコメント:

  1. 防水がプアな近代的大衆機種、土砂降りで釣行強行すると異音が出るしベイルリターンが
    極端に悪くなる症状が出ます。
    分解整備すると綺麗に治るからマシですが、
    その整備に3時間くらい掛かってかなり面倒くさいですね。
    極細PEの為にシマノ大衆機種入れてますが、
    後始末に困りますので
    雨天決行はあまりやりたくないです。
    2020年代から防水改善して開放されたかに見えますが、トルクスネジに変更になり部品点数大幅に増えたから
    雨天決行は相変わらずPENN頼みは変わってません。

    ナマジさんが今シーバスに回してるダイヤモンドリール、
    仕様をみると最強状態ってのがわかります
    外蹴りリターンモデルをベイルレスにしてスプールの泣き所解決してますし
    大森の美味しい所取りだと思います


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    1.  アチャー大手大衆機ならいまどき防水しっかりしてるから大丈夫かと思ったけど、面倒くせぇ手間はかかるんですね。

       今使ってるベイルレスのタックルNo.2は良い感じですよ。ほんと余計なモノが付いてなくて単純。しかもストッパーオフで使うので、消音化せずともカリカリ鳴らず大森のギアの滑らかさが素直に味わえます。
       魚さえ掛かってくれればドラグの良さも楽しめるのに、状況が良くないのが残念です。

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