2023年11月4日土曜日

また出た日本製PENN!-パソコン椅子探偵PENNパワーグラフ2000編-

  「PENNマニアの方のお遊び用にどうですか?」という”つり書き”に綺麗に釣られて、れいによって入札者ワシだけで1800円落札+送料660円。

 PENNブランド(ピュアフィッシング社)公式PENNリールアフターサービスの「ミスティックリールパーツ」さんの「パワーグラフシリーズ」の紹介によると、1999年から2002年までの販売で、淡水から海まで対応の7モデルがあり、本体とローターは炭素繊維強化樹脂製、スプールはアルミ、そして大事なのは”瞬間的逆転機構”が採用されていません、ってところ。れいのローターの裏にストッパーの歯を設けた”マルチポイントストッパー方式”で、ワシが提唱する”スピニングリールの最高傑作は樹脂製本体で瞬間的逆転防止機構が採用される前に出現する”という法則にピッタリあてはまっている。

 で、足裏には"MADE IN JAPAN"とあり、日本製なんだけど一体どこのメーカーが作ったリールかというのが今回のお題。前回の日本製PENNである「PENN101」はダイワ製と推理したけど、今回のブツはマルチポイントストッパーだし、そもそも発売が1999年ということを考えると、既に世界的にも2大ブランドの1角にのし上がっていたダイワ様が他社ブランドの下請け仕事をやってたとは考えにくい。

 当時マルチポイント方式を採用していたのは、「メタロイヤルVS3500ZM」や「サイノスSS700ZM-T」で確認取れているリョービと「92”ツインパワー2000」で確認取れているシマノがすぐに思いつく。

 とりあえずシマノ様はダイワと同様既に他社ブランド生産(OEM)しなきゃならんような状況にはなかったし、かつ”バランスドローター”となってるローターの腕?のあたりとかの形状がリョービの「サイノス」とかの”Zローター”っぽいなとネットで画像を探して比べてみると、「サイノスXS2000ZM-T」と特徴一致。部品の形状とかハンドルノブも同じの使ってて、コイツのOEM版がPENN「パワーグラフ」という感じ。「パワーグラフⅡ」になるとドラグがPENNの「HT-100」ドラグパッド入りになってちょっとヤる感じになってくるけど、無印初代パワーグラフでも手で回した感じからいってドラグも悪くなさそう。ちなみにパワーグラフは第4世代まで続いたようだ。

 期待して集まってくれてたPENN沼の関係者の皆さん、謎解きいきなり終了してしまったので解散してください。お疲れ様でした。

 リョービは、いつまで経っても下請け体質が抜けなかったのか、シマノの後を継いでルーの「スピードスプール」も作ってたようだし、ゼブコ「XRL」兄弟は以前紹介したとおりだし、フィンノールブランドで出てた「エイバブ8」とかも確かリョービが作ってたはず。「メタロイヤルVS」も海外ではフィンノールブランドで売ってたっけ?あと海外ブランド向けに限らず、国内でもズィールとか古くはミノルタとか、自社のブランド力がイマイチなせいもあって仕事選ばずという印象。

 とまあ、珍しく早々に謎は全て解けたわけですが、せっかく我が家に来てくれたのでパックリ割ってじっくり整備してみたいと思いますので、ご用とお急ぎでなければごゆっくりとお楽しみください。

 

 まあ、この時代の標準的な日本製リールの域を出てないだろうし、そんな酷い作りでもないだろうから、適当にサクサクとバラしていく。

 まずはドラグなんだけど、ドラグパッドはちょっと表面ざらついたテフロンみたいな白いブツで、なんなんだろうな?とミスティックリールパーツさんのサイトのパーツ図で調べるとやっぱりテフロンで、ツルツルだと滑り良すぎて日本のドラグをしらない釣り人には「ツマミがしっかり締まらんがな」と怒られてしまいがちなので、あえて表面ざらつかせてたんだろうな。ご苦労様です。なんか金属ワッシャーの数が3階建てにしては1枚多い気がすると思いますが、高さ調整で1枚余分に入ってるだけなので気にしないでください。スプールにはドラグ用のボールベアリングもブッシュも入ってなくてアルミの直受け。スプール裏のドラグ用の音出しが、ライン引っかける樹脂製パーツの反対側に突き出てたようだけど折れてるのでコレはタチウオ用のステンレスワイヤーを折り曲げてでっち上げておいた。アルミスプールはチリチリリンと良い音が響く。

 ハンドルは心棒六角形のワンタッチハンドルでネジ留め式。なんでワンタッチハンドルが一般的になったのか、亜鉛一体成形のハンドル軸ギアに心棒突っ込む方式では、共回り式なら別にワンタッチでなくてもねじ込み式同様緩めて折りたたむのでも良いけど、共回り式は防水性良くないのでということでネジ留め式にして蓋つけて防水すると、ワンタッチじゃないと工具使わずにハンドルたたむ方法がない。ということで国産スピニングは、金の掛かる芯に堅い素材を鋳込んだギアにねじ込み式ハンドルじゃなくて、亜鉛鋳造ギアに心棒ネジ留め式が一般的になったら自ずとワンタッチが一般的になったということだったんだろうな。で、昔の大森スピニングやら4桁PENNやらABUカージナルCシリーズとかの爪の垢でも煎じて飲んだのか、我が国スピニングも近年やっと高級品はねじ込み式ハンドルが主流になったんだけど、こんどはあつものに懲りて膾吹き始めてハンドル折りたためなくなってやがんの。バカじゃねえのか?でパワーグラフに戻ってパカッと開けるのにネジがタップネジ直なのは、まあ樹脂製本体なら雌ネジも金属製のを入れろとか耐久性にこだわるうるさ型には、PENN社としては「それならスピンフィッシャー(当時4桁で5500以下が炭素繊維強化樹脂製本体)をどうぞ」って話だろうし、日本では、それをやった大森「マイクロセブンC」シリーズがたいして評価されていないことからも需要がないからこれでいいんだろう。って話だけど、パワー”グラフ”って名前でカタログスペック的にも堂々と「カーボン繊維強化樹脂製の本体とローター」となってるのに、なんだこの白い安っぽい樹脂は?せいぜいガラス繊維強化樹脂だろ?これはいかんのとちがうか?ちなみに最初蓋だけかなと思ったら、本体もローターも塗装が薄いところは同じような樹脂が見えている。炭素繊維って黒いよね?まあその程度の安いリールってことか。でギアはさっきも書いたけどハンドル軸のが亜鉛鋳造でローター軸のが真鍮切ったのでできたハイポイドフェースギアというまあ普通のギア。ちょっと良いのがボールベアリングがローター軸に1個だけで、でもハンドル軸の両側には真鍮のブッシュが填まってて樹脂本体で直受けにしていないところ。亜鉛の軸が削れないのか若干心配だけど、リョービもドリルとか回転モノの機械作ってる会社だし大丈夫なんだろうと信用しておこう。スプール上下は何の変哲もないハンドル軸のギアの回転から歯車回してオシュレーションカムを上下させる減速式で、この時代独特の順テーパーのロングスプールにわりと綺麗にラインが巻かれていたのでメタロイヤルに入ってたヤツみたいな凝ったのが入ってるのかと期待したけど肩すかし食らった。

 でもって、このリールの最大の売りである”マルチポイントストッパー”なんだけど、まあメタロイヤルとかと基本一緒で、ローターの裏に山が設けてあって、本体上部ローター内のオレンジの丸で囲った角がこれに引っかかって止まる。角が外に出るように部品の下にバネが入っている。で、正回転時に矢印のように回ると、ローター軸のギア上部に填められた部品に填まってるワイヤーによってストッパーのパーツが内側に引っ張られて、ローター裏の山にはアタらなくなって正回転時には静音化されている。でもって、下のほうがストッパーの部品を取り出してパーツクリーナーかけた後の写真なんだけど、この部品がさすがダイキャストメーカーであるリョービという感じでちょっと格好いい。亜鉛じゃないちょっと堅そうな材質で、なんだろ銅系かな、磁石はくっつかなかったので鉄系じゃないけど、これが綺麗に鋳造されていて、型に刻まれてた数字がワシの指の指紋の幅2,3本分しかないけどしっかり「2」と読める。型の隅々までちゃんと流し込んでるなという感じか。

 で、ベール周りに行くと、まずラインローラーがPEも問題無さそうな大口径だけど、ここはちゃんと錆びやすいボールベアリングじゃなくて樹脂製ブッシュが入ってるのはエラい。ついでにベールスプリングは既に耐久性の良いグルグルスプリング方式で良し。なんだけど、ベールアーム支持部、反対側のベールワイヤーのお尻の支持部共に回転部をローターの樹脂で直受けしてるので、写真見ると分かるけど既に塗装は剥げはじめていて、長期的には削れていきそう。ちなみにベールアームは樹脂製でベールワイヤーのお尻の部品は亜鉛っぽい金属製。いずれにせよローターの樹脂で直受けでタップネジで止めるより、カラーを入れるかネジの軸を上のほうで太らせてそこで受けるとかの方が耐久性は良いはず。

 もいっちょ樹脂で直受けはどうなのよ?なのがベール返しの蹴飛ばし部分。
 ベール起こすと右の写真の矢印の部分が飛び出て、左の写真の楕円で囲った本体から出っ張った部分にぶつけて蹴飛ばす方式なんだけど、写真の様に塗装はハゲてて白い線状に下の樹脂が見え始めていて、これまた長期的には溝掘れてきそうな感じになっている。
 まあこのあたりの長期的な耐久性を求めるようなリールじゃないってことか?

 という感じで、全体的に安っぽさは否めないモノの、ワシのような道具長年酷使するような釣り人なら、わざわざリョービ製のPENNリールなど買わすに素直に4桁スピンフィッシャー買っておけなんだろうけど、休日にはたまに釣りに行ったりもする、程度の釣り人にとっては悪くないリールなんだろうなという気がする。パーツ数少なめで整備性が良いのはそういう購買層には直接は関係ないだろうけど、単純で壊れる部品が少ないのは実用性高いだろう。樹脂製で錆には強いし、ラインローラーにもボールベアリングが入ってないので、丁寧に道具を扱うための知識があまりなくて放置してもあんまり不具合生じなさそうに思う。クソである瞬間的逆転防止機構が入ってないので間違って水没させたりしても、その場で問題は生じないし、後でベアリングが錆びてシャーシャー言い出すかもだけど、さすがにその程度は釣具屋さんにでも持って行けば直してもらえるだろう。遊びもほとんどなくて上出来。タップネジも分解整備とかせんのなら何の問題もないだろう。ぶっちゃけ樹脂直受け部分が削れるまで酷使することもないんじゃないの?って考えると、米国でもそういう購買層は一定数いるんだろうし、我が国でも同様でリョービの「サイノスXS」はリョービ最高傑作かについては怪しいところだけど、悪くない選択肢だったんだろう。とりたてて良くはないんだけど、ちょっと使う分に不具合が出るとも思えず、わりと快適に使えそうに思う。サイノスシリーズは中古市場でも弾数多くてそれなりに売れてた様子。リョービはわりとリール作るの上手な気はする。だからこそあちこちのお座敷からお呼びがかかったのだろう。

 ただワシが使うとなると、何に使うか出しどころは悩む。重さ約330gで樹脂製なので重量のわりに結構大きめで、糸巻き量的にも10LB220ヤードとか4桁PENNなら4400ssあたりに相当するはずで、そのあたりのリールに任せてる釣りとなると、シーバス用や青物だろうけどシーバス用の今使ってる竿にはちょい大きいし、青物やらせるには信頼感がイマイチ。磯投げ竿でルアーブン投げてタチウオとか狙うのをコイツにやらせるというのは、まあまあイケる気がする。純テーパーのロングスプールなので飛距離は出せそうで良さげ。ただ4400ssを外して出撃させたくなるほどの魅力があるかというと、正直微妙。まあ、こういうリールもあったんだなあというのを愛でて楽しんで、それでとりあえずは良しということにしておこう。なかなかに楽しめました。

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