2024年11月23日土曜日

野生馬のあらがえぬ魅力

 ルアーマンであっても、フルーガーのルアーに縁がある人は少数派ではなかろうか?

 水面派の経典「ブラックバス釣りの楽しみ方」ではお尻にブレードの付いた小型ペンシルであるフルーガー「ジャーク」が紹介されているが、あまり国内で出回っていた人気プラグという感じではない。

 経典ではジャークの紹介の項でフルーガーのルアーについてもざくっと触れてはいて、引用すると「フルーガーは,(中略)アメリカでも最も古いフィッシングメーカーの一つだ。有名なグローブ,パローマイン,マスタングなど,どのプラグにも一貫した設計思想があってアメリカ人のもつ,良心を感じさせてくれる。」となっている。でも、体の前半が回転するグローブもポッパーみたいな切り込みの入った口型の金具がリップと一体になって装着されているミノーのパローマインも、そして冒頭写真のミノー「マスタング」も日本じゃ当時も今も有名ってほど知られてはないように思う。ちなみに経典の”ライブリーファミリーのプラグ達”の項の集合写真にマスタングが1つしれっと写っているけど、個別の紹介には出てこない。下の写真で指さしてるのがそれ。

 むしろ日本の釣り人には、フライリールの「メダリスト」シリーズや、早くにシェイクスピアに吸収されてしまって、スピニングとかはシェイクスピアリールの色違いの場合が多かったりするけど、「パトリアーク」シリーズとか今でもフルーガーブランドで販売されているので、リールブランドとしては知ってる人は知ってるだろう。

 日本のバスブームの頃には、既に木製の古き良きアメリカ的なルアーは、一部の好き者以外には刺さらなかっただろうし、則さん達のような扇動者たちの”推し”ルアーにはかろうじて「ジャーク」が引っかかった程度で、その他のルアーは注目を浴びなかったのだと思う。そう考えると、則さんたち案外”新しもの好き”だったんだろうなという気もする。あるいは「ライブリーファミリーのプラグたち」で集合写真に写っていて、かつ個別紹介されているのが樹脂性で動きの良いタイガーマーベリックレッドフィンスーパーシャイナーで集合写真に写ってるのに紹介されていないのがマスタングとヘドンのウッドヴァンプらしきルアーで、則さん達使ってたけど、当時国内流通もなかったであろうウッドプラグを紹介しても手に入らんし仕方ないという気遣いもあったのかも。則さんは米軍基地の米兵さんルートでルアー手に入れてたとかどっかで読んだ気がする。

 で、我が国でなじみ深いアメルアーブランドとは言いがたいフルーガーのマスタングにワシがなぜ、しつこく書くけどこの円安の折、モノが仲介業者のセ○イモンに届かず取引キャンセルになっても、米国から送料も高くつくのにあきらめずしつこく確保したのかというと、以前に1回だけヤ○オクで見かけて、エラい格好いいので入札したけど、欲しい人間が2人居ると値段が跳ね上がるの法則で予算をサクッと超えてしまい芋引いてしまい、また出たら買おうと思ってたけどその後出ているのを見つけられなかったからである。ちなみに最初の1個が取引キャンセルになって次のセカイ○ンでお買いもんは石橋を叩いて2個買った。冒頭写真の下2つがそれで一番下のは塗装にひびが入ってたりはするけど比較的美品で真ん中のは塗装剥げもそこそこあるややボロ個体でチョイ修繕して使うつもりで購入。で一番上のリグもサビてボロボロの個体は何かというと、苦労して米国から取り寄せたらヤフ○クにチョイボロのウッドパイキー2本とあわせてジャンク扱いで出てきやがって、腹立って入札してパイキーもろとも押さえておいたブツである。パイキーは年代考えるとジャンク扱いがかわいそうなマシな個体だったけど、マスタングはほんとボロ個体でリグをどうにかするとかから考えなければならんけど、でもそのボロさも格好いいのでボロさを生かして実用可能な弾に持っていきたい。というわけで、デカアメミノーネタの最終回、ルアー図鑑うす塩味第76弾は、名門フルーガーブランドの「マスタング」でお送りしております。ちなみにマスタングもパローマインもどちらも6インチ15センチまでは確認できるので、ブランド最大ミノーは両者同率1位かなと思っちょります。

 で、このルアーの何が格好いいかっていうと、とにかく金属のリグ・パーツが格好いいのよ。

 まずはなんといっても、背中とお腹に貼り付けてある金属板。ネットの画像でこれを見た瞬間、その機能と格好良さが両立したデザインに痺れたんだけど、意外にバスマンとかだと、コレ何のためについてるのかピンとこないようで、古物のルアー好きのバスマンが手に入れたけど「何だろコレ反射板かな?」とか書いている記事とか目について、むしろそこが分からずに買う選択もあるのかと面白かった。

 海のルアーとかやる人間なら一目で、コレが銀鱗模様の美しいこの木製ルアーのボディーを、歯のキツい魚の牙から守るためにある。という明確な意図がみてとれるはずである。例えばマスキーやパイク、海ならバラクーダにワフー、ブルーフィッシュといった牙魚たちのその牙に対抗するための盾として、クロームメッキされた真鍮の部品を装備させたのである。ちなみにこの金属板無い版もあったようで経典の写真とかそっちのようである。

 歯のキツい魚の攻撃力って相当なモノで、ロウニンアジってそれほど歯がキツい印象はないかもだけど、それでも高価なウッドルアーが何匹か釣るとボロボロに塗装剥がされて歯形だらけの迫力のある見た目になるのは避けられず、長いペンシル系とか噛み折られている写真も見たことがある。いわんや歯のキツいバラクーダやらおやというところである。

 お次にリアフックをぶら下げるリグも独特で凝っている。

 写真左は、分かりやすいようにすこしネジを緩めて引き抜きかけた状態。そう、リアフックはヒートンでぶら下げられている普通の方式ではなく、フックをぶらさげて、かつネジの軸をクルクル回ることができる右写真の左のフックハンガーを介してぶら下げられている。フックハンガーは、後方になるフックを入れる方が細めでフックが後方には自由に動くことができるけど、前方になるボディー側は太くなっていてフックが前に振れることを妨げていて、フックがボディーを傷つけることを避けている。フックハンガー自体が軸を回転するので、細長い体で”デスロール”のような回転系の暴れ方をしがちなワニ体型の牙魚が暴れてもフックハンガーの回転で追従してバレを防ぐ仕組みになっているんだと思う。ちなみにネジ留めで、他のパーツも含めてこのルア-の分解にはマイナスネジが一本必要。

 でもって、そういう暴れん坊な大物を狙うために、リップ回りもこれまた凝った頑丈なリグが奢られている。

 リグは共通してネジ以外は真鍮にクロームメッキなんだけど、まずは結ぶところが2つあるアイの部分が、本体前部下側に掘られた溝に填まる。そして、それを固定するのは、本体前部下面を覆うような形でリップと一体化したパーツで、ボディー先端の鼻先と、リップの根元左右の3箇所をネジで留めるという頑丈なリグになっている。そしてリップには「Pflueger Mustang made in USA」の刻印あり。渋いゼ。

 なんというか、陳腐な表現かもしれんけど、さっきも書いたように”古き良きアメリカ”っていう感じの、丁寧な仕事ぶりなんである。年を経てヒビが入ってしまってるのは仕方ないとして塗装も綺麗だし、リグも凝ってて、かつ何のためにそのリグの工夫がされているのかという目的が明確で、作った人の思いが詰まってる感じがしてとても好感が持てると同時に、実釣能力もかなり高いのではないだろうか?という期待をいやが上にもしてしまうところである。

 ということで、一番綺麗な個体はさっき書いたようにそのまま保管用として蔵に眠ってもらうとして、その他2個は実釣使用を想定して補修できるところは補修して準備してみたい。

 基本方針は、まずはリグを全部外して、錆を落とせるだけ落として、フックを適切なモノに交換。ボディーは塗装ハゲはパテで目立たないように埋めて、ウレタンでコーティングしてこれ以上は塗装の劣化が進まないように処理して防水性を上げておく。

 というあたりを基本方針に、あとは現物見ながら臨機応変に仕上げていきたい。

 まずは一番ボロい個体からやるか、とネジを外そうとしていきなり問題発生。

 ネジが錆びてるわけじゃないのに脆くなってて、ネジ回そうとしたら頭がポロッと欠けてしまう。コリャダメだ。ネジはもういじらずにリグごとウレタンコーティングしてしまうぐらいしか手がないか?フックハンガーもお尻の以外はネジ頭が飛びそうで外せないので、ハンガーにスプリットリングでフックをぶら下げるか、ダブルフックでいくか?そこはどうにでもなるけど、はたして魚が掛かった時にネジが飛んでしまわないか不安な状態である。飛ぶなら今この場で飛べと、グイグイ手で引っ張ってみたけどとりあえず大丈夫そうではある。いっそ今のネジをドリル使ってでも取っ払ってしまって、太目のネジを入手してネジ穴も拡張してという大改修をしてしまうのが安全かもだけど、とりあえずリグごとコーティングで使う前にドラグセットして引っ張って試験してから使うぐらいでいこう。強度が掛かる位置のネジはリップ回り3つ、フックハンガーが4つの7つもあるのでフックハンガーは単純に位置ずらせば良いだけだけど、リップ回りは綺麗に同じ位置に頭のとれたネジを抜いて穴を開ける必要があり、それは技術的にめんどくさく難しいのでまずは避けたい。

 ということで、多少お化粧直しする程度でお茶濁す。とにかくリグが全部腐蝕で表面がボロいのでどうにかしたい。基本はお酢かなと酢を含ませたティッシュをあてがってしばしのち磨くも、その程度ではどうにもならん。そんなレベルではない。歯磨き粉で磨き始めたけど、歯磨き粉で丁寧にいってると時間がいくらあっても足りん感じなので、結局サンドペーパーでガリガリと磨いていく。本来はリグはクロームメッキ仕上げで銀色だけど、こいつは真鍮剥き出しのコパーカラーで行きます。リップの刻印もサンドペーパー掛けたらやっとでてきた。これで上からウレタンコーティングでいこう。

 もういっちょの方は、リグは全部外して歯磨き粉で磨いて、本体の方の塗装が剥がれて木地が見えているところをパテで埋めて、っていう状態でウレタンコーティング。

 パテで白く塗装剥がれたところを埋めるだけでそこそこごまかせるというのがお分かりいただけるだろうか?上2段が左使用前右使用後みたいになってます。

 あと、ウレタンコーティングは最近筆塗りでやってるんだけど、なぜドブ漬けじゃなくて筆塗りかというと、ドブ漬けできるデカい容量のウレタン樹脂液を買っても、使いきる前に瓶の中で固化してしまって無駄が多いから、少量瓶で買って筆で塗っていた。そんななか、今回瓶の中で固化するのを防止するのにかなり効果がある方法を知ったので、皆様にも知識共有しておきたい。ウレタン樹脂系の塗料は溶媒が揮発して固化するというよりは空気中の水蒸気と反応して固化するタイプがほとんどらしく、いかに空気と触れさせないかが重要とかで、過去使ったら表面に薄め液をヒタヒタと注いでおいて空気と遮断すると良いとかいうのも試したけど、あんま効果なかった。封切って使ったら一月もすれば冷凍庫保管でもゲル化してる。今回試して効果があったのは意外に単純な方法で、瓶に直接筆を突っ込まず、取り皿に使う分出してから筆塗りに使って余ったら戻さず捨てる。というもので確かに瓶に直で筆突っ込んで筆塗りしていると、空気と接触しまくった筆についたウレタン樹脂液を瓶の中に戻してしまうわけで、瓶の中で反応がすすんでしまうのもむべなるかな。残った瓶の中の空洞分の空気に含まれる水蒸気量はたいしたことないようで、筆でペタペタ塗る作業やこぼれたのを受ける皿に戻る際には空気とグチャグチャかき混ぜられているので、そこから垂れてくる分とかは反応が進む条件に合致しているので瓶に戻してはいけない。でも瓶に入れられたままで、使う分出すときに傾けられた程度の動きしかない残り分は反応進みにくいようなのである。実験も兼ねて1月くらい時間をおいて2回目の塗装をしてみたけど瓶の中で固化しておらず問題無く使えた。2回使って瓶に残った1/4ぐらいをまた冷凍庫に保管しているけど、今見たらまだ液体状を保っているので効果大だと思う。竿のガイドを留めるラッピングスレッドを固定するのに以前はそれ用の2液性エポキシを使ってたけど、これがまた使用期限が短く、竿なんてそう頻繁には組まないので、ある程度本数溜まってから作業してたけど、最近は固化開始時間がこちらで調整できて値段が安いという利点を気に入って”百均UVレジン樹脂”を使ってたけど、ウレタンここまで保存ができるならウレタンでも悪くないと思う。ウレタン塗料は昔から竿の補修等には使われていた素材でもある。

 で、ダンボールに針金をWWWって感じに曲げて渡してある”塗装ブース”で乾燥させて片方にはリグを付けて、フックはとりあえずついてたので仮置き。ボロ個体はフックはダブルフックでこれまたとりあえずということで修繕完了。

 ウーン格好いいじゃないの!マスタングはあっちじゃ人気あったみたいで、フルーガーがシェイクスピアに吸収しされてからも製造されてたようで、1980年代ごろまでは作られていて「香港シェイスクピア」で作ってたのかどうかは不明だけどメイドイン香港版もあるそうな。なかなかのロングセラー。

 これまでワシ的に最も格好いいデカアメミノーは、ソルトウォーターグレードボーマー「ロングA17A」ギブス「ダニー」かと思ってたけど、フルーガーのマスタングも負けず劣らずの格好良さだと思う。紀伊半島が南の島化していって、川の中にシーバスじゃなくてフエダイ系とかの歯もキツくてパワーもあるような魚が上がってくるようになったら、コイツの出番じゃないかと妄想している。

 ということで、海水温上昇に端を発して今年の夏にあらぬ方向に突っ込んでしまっていた暴走のご報告であるデカアメミノー編は一応の最終回で、デカアメミノー好きの皆様にもそうでもない皆様にも楽しんでいただけたなら幸いです。デカいルアーってやっぱり格好いいですね。

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