2024年9月14日土曜日

深くやかましく潜航せよ!

 クランクベイトというのは、特定の餌生物に似せようとか、そういった発想から生まれたルアーではない。アメリカの淡水にあんなフグみたいな小魚がいるとは聞いたことがない。

 ではなぜ、あの形が生まれたか、なぜフレッド・ヤング氏はあのズングリムックリな形にビッグOはじめすべてのクランクベイトの原型になるプラグを創造したのか。

 端的に言えば機能があの形を欲したから、ということになるだろうか。強い浮力をもち、ブリブリと激しく動き水中に潜っていくために、あの形が必要だったのである。ルアーの場合多くの場面で釣り具として求められるのは、ぱっと見で「餌に似ている」というような”素人を釣るための要素”ではなく、どう動くか、どう水を動かすか、どう潜るか、どう浮くか、どんな音を出すか、どんな飛沫を上げるか、どんな光り方をするか、どんな大きさ形状か、というような機能である。そのルアーの持つ機能が、魚の本能や学習能力をして、いかに食いつかせたり頭突き食らわさせたりするかが重要で、「お魚そっくりでしょ」ってやることは、釣り人のやる気には多少関係してくるんだろうけど、機能的にはほとんど意味のないことであることは、古今東西史上最高のルアーデザイナーの一人であろうジャームス・ヘドン氏がルアーを売り始めるときにそう看破している。100年は昔の話である。

 クランクベイトにワシが求める機能は、最初浮いていて、引くと急速に潜り始め、激しい動きで、水を動かしつつ、多くの場合ラトルが音を出し、そうでなくてもハリやリングが音を出し、そういう動きをしながら一定の棚を引いてこられる。巻くのを止めると浮く。という機能である。

 今回、ルアー図鑑うすしお味第69弾では、”根魚クランク”において1.5mを超えてさらに深い場所を攻められるクランクベイトについて書くわけだけど、深いところを狙うなら重いジグヘッドのワームやストンと沈む重いバイブレーション、あるいはメタルジグやクルクル、鉄板系など金物を使う方が一般的かもしれない。でもそれらのルアー達には一定の棚を引いてこられる性能”棚キープ力”とでもいうべき機能があまりない。引っ張ると浮いてくる。よほどゆっくり浮き上がらないように引くか、上げて下げてを繰り返すかしてやらないと深い棚を攻められない。ぶん投げて巻いてくるだけで、助走距離は必要だけどある程度一定の棚を攻められるというのは、シャッド型やミノー型も含めディープクランクをおいてほかにない。トローリングで深い棚を引いてくるのに使う「ダウンリガー」のように、重いオモリを使って、天秤で絡まないように注意しながら棚をとりつつ引っ張ってくるっていう手もありそうには思うし、写真の天秤?付きオモリで棚まで届けシャッドの大きめリップで棚キープするカマス狙いのシャッドキャロは実際に効果を上げているけど、正直仕掛け作るのも面倒くさければ、投げるとやっぱり絡むのも面倒くさい。ルアーを大きくできないなら仕方ないけど、デカくて浮力も強くてその分でデカいリップを備えてゴンゴン潜っていくディープクランクは、その点面倒くさくない。深いところで手返しよく広く探りたい。そのために手返しよく投げて巻いてを繰り返したい。派手な動きや音のアピール力で、やる気のある魚を寄せて食わせて勝負を決めたい。となると機能的にディープクランクが適任なのである。

 根魚や底物を陸っぱりで狙うならワームのジグヘッドリグ、とかメディアや他の釣り人が言ってたとしても、自分のやりたい釣りに求めるルアーの機能として、ワームじゃダメだとなったら、必要な機能を有するルアーを使うってだけの話である。わざわざやりにくいことをやる必要はない。なんにせよ近所漁港ではワームは各種フグ軍団に集中砲火をうけて釣りにならんしな。だからこそ”竿抜け”的に一般的な釣り人が狙えていない獲物がいるのだと思っている。

 で、まずはピーナッツⅡDRの1.5mぐらいの潜行深度より深い、1.5~2mぐらいまでの棚用だけど、これはいろいろあるけど抜群に良いというかワシと相性の良いのがマジェンダ80のFとSP(サスペンド)、冒頭写真のチャイロマルハタもこいつが働いてくれた。基本浮き上がりの良いFモデルを使っているけど、フックをシングルに替えると海水中ではSPでもしっかり浮くのであんまり違いはないのかもしれない。このルアーの良いところは、とにかく釣れるっていう実績。釣り具で魚が釣れるのは大正義でありほかの要素は時にこだわることもあるけど、まあ無視していい要素。バスルアーなんだけど、シーバスにも効くと評判になってシーバスバージョンも売ってたように記憶している。ぶちゃけワシ、バスは釣ったことがない。シーバスには東京湾でも紀伊半島でも安定した実績があって、何が良いのか分からんけどとにかく魚が釣れるルアーなのは間違いない。動き的にはあまり前傾せず、バイブレーション的に細かい動きでラトル音響かせつつスルスルと潜っていく。形がクランクベイトっぽくなくやや細長いのも特徴か。重心移動版と固定重心版があって近距離戦では固定重心版を愛用しているけど、主にスロープ沖の砂底を広く狙うのに使うので根魚クランクでは重心移動版を使ってる。深い護岸の壁際でも魚が浮いてきていると想定する時には食わせる能力に信頼をおいて投げている。

 次は潜行深度2~3m強ぐらいまで、港内いくつかこいつらがちょうど良いポイントがあって、砂底の2~3mの場所、4m水深ぐらいの捨て石が入ってる護岸際、あたりで、捨て石入ってるところは着底させると、見えないところで引っ張ることになり根がかるのが避けにくいので、ちょい上の深棚を通す方針で行く。根掛かり覚悟の釣りはワシャまったくやる気がない。根掛かり覚悟しなきゃ釣れないような場所の魚はワシには釣れない魚なので居ないのと同じ。釣り場にゴミ放出するのを前提にした釣りなどするべきじゃないと思っている。

 で、このあたりの水深のはいろいろあるんだろうけどスミスの「ハスティー3」(写真下)が巻き抵抗大きめなのが、逆に水中で砂底叩いているのかとか、どういう状態かわかりやすくて良い。あと、リップがみょーんと長いダウンディープラトリンファットラップ7(写真上)は急速潜行、足下ぎりぎりまで潜ったままという感じで個性的で良い。ほかにデュエルのフューズシリーズ試したときになんぼか買った「クランクマックス」と「クランクマックスjr」があるので、これもせっかくなので機会を見つけて使うつもり。

 で、”根魚クランク”と言いつつハモ、ヒラメ、マゴチ、アカエイ、ワニエソなんかの底物も狙いたく、そうすると5mちょいぐらいある水深の、いつも泳がせやってる砂底の底を叩く、あるいは水深6から7mの護岸沿いの石積み周辺、底は叩かずちょい上を通す。っていう5m以上の潜行能力のディープクランクが必要になってくる。 

 ま、ワシらジ様にとって深く潜るマグナムディープなクランクと言えば、ティムコ「マッドペッパーマグナム」とノーマン「DD22」が双璧かなと、バス釣りで琵琶湖のディープを攻めた経験などないんだけど、カヤックシーバスで一定の深棚引いてくるのに良いんじゃないかとか試したので蔵に眠ってて、まずはこいつらを試してみた。どちらも重量あってかつマッドペッパーには重心移動まで入ってるので飛距離はでるし、巻き始めるとゴリゴリ潜っていって頼もしい。頼もしいんだけど思ったほどは潜ってくれない。だいたい5mぐらいの水深だと思う場所で底を叩く感触がない。意外に底叩いてても深いと分からんとかかと、3m水深ぐらいで試すと普通に底をコツコツしているのが、特にDD22はよく分かる感じで、明らかに5m潜っていない。いろいろ理由を考えたけど、カタログスペックでは16LBナイロン使用時でそのぐらい潜るとのことだけど、カタログスペックの前提条件といろいろ違う条件で使っているので実力を発揮させられていないのだろうと思う。その要因として1つには飛距離が足りんってのがあって、ワシ的にはぶん投げて珍しく遠投してた部類なれど、近距離特化型のワシの遠投ではたかがしれてるだろう。飛距離が関係していることを裏付けるのは、護岸沿いテクトロしていくとしばらくして着底して底たたき始めることからも分かる。次にリーダーが太いことで、バス釣りなら16LB直結なんだろうけど、ハモだのクエだのヒラメだのといった歯のきっつい魚も想定すると、リーダーは道糸直結とは行かず、8号フロロを入れて先端に抜けない輪っか作ったザイロンかぶせて1回固結びの”歯ずれ対策”仕様にしている。この太いリーダーも当然足枷になってるだろう。もう一つ地味に効いてるかも?なのが海水中だとSP(サスペンド)設定のルアーも浮くって話と関係あるけど、海水中だと浮力が強いってのも案外効いてるのかも。そのへん本当はどうなんだろう?どなたか知見のある方ご教授いただけると助かります。

 でもって、今時ならもっと潜るディープクランクぐらいあるだろ?ってネットで調べてみたらありました。ただ、最近のそういうウルトラディープなマグナムクランクの使い方って、エレキでトローリングするいわゆる「ドラッギング」ってやつを想定しているのも多いようで、キャスティングで5m以上となると種類は限られているようだ。なんというかドラッギングって何だかなぁってテクニックで、そんなことするならトローリングをルール上ありにして、砲丸の球にクリップ付けたようなやつとか、各種潜行板とかの”ダウンリガー”でも使えば良いのにと思わなくもない。まあダウンリガーの類いは陸っぱりでは使いにくいので、単体で深く潜るディープクランクが開発されるのはありがたいんだけどな。ちなみにホッパーストッパー(のちにヘドンに移籍)「ヘルベンダー」のでっかいサイズは米本国では潜行板扱いでハリ無しで売ってるダウンリガーモデル「W08-D」もあってなかなかに趣がある。道糸長く出してのトローリングだと20m以上潜らせられるんだとか。その名のとおり地獄の底まで餌をお届けしますって感じか。

 ということで、今時の深潜りするクランクをいくつか買ってみた。ダイワ「スティーズクランク5」は5.2m、デュオ「レアリスクランクG87 20A」は6m以上、デュエル「バレットクランク7+」は7m以上の深さをキャスティングで狙えるというカタログスペックになっている。写真一番上が大きさ比較においたマッドペッパーマグナムで決して小さくはないルアーだけど、潜行深度5m越えのビッククランクがいかにデカいかおわかりいただけるだろう。

 さて投げてみよう、ってなってさすがにこいつらは普通のバスロッドクラスの道具立てでは投げられん。バレットクランクとか2oz(≓50グラム)クラスであり、当然それにみあったデカいリップとなれば引き抵抗もかなりのものが想定される。まあ、我が家の”蔵”にはいろんな道具が備蓄してあって、なぜ買ったのか本人も全く憶えがない、トラウト・サーモンロッドではない、30LBクラスのガチムチのサーモンロッドが1本転がってたので竿はそいつで行く。フェンウィック「ランカーギアプラスLP89CH-2J」、8.9フィート、ルアーウェイト28~70g、ライン15~30LB、グラスベースでバットにグラファイトを重ねてあるという太く頼もしい剛竿。リールはパーミングカップの80年代初頭モデルのABU「アンバサダー6500C」、ラインはとりあえすは着底とかの感触の分かりやすさと潜りやすさを重視して、2号のファイヤーライン。リーダーはフロロ8号に先っちょザイロンで耐歯ズレ処理。

 ぶん投げてきました。単純明快で深く潜るためにはデカい潜行板であるデカいリップが必要で、それを受け止める土台である本体もデカい必要があり、設計で多少巻きが軽いとか、飛距離が出るとかは味付けできるにしても、ほぼデカい本体とそれに見合う面積の広いでかいリップが機能を決めている。結局5m強の水深のポイントでぶん投げて巻いて底がとれたのは、一番デカいバレットクランク7+だけだった。まあカタログスペック通りの順番でもあり、そう考えると潜る深さはある程度そのルアーの持つ能力で違ってくるので、事前にどこまで潜るか知っておけば、水深にあわせて底から1mのちょい上を通すとかの小技もできるように思う。ただ9フィート近い長竿でぶん投げるのは結構しんどい。バスロッドが8フィートぐらいまでしかないのは、初期の”フリッピング”ではそれ以上の長竿が使われてリールがほとんど意味のないものになってたので、スポンサーがそういう投げない釣りをいやがったのかレギュレーションで長さ制限したからだと思うけど、実際問題デカいバスルアーを投げるのに使われている7~8フィートの竿は体力的には正しい選択なのかも。とはいえ1日投げ続けるような釣り方するわけではなく、まずめ時のせいぜい2時間なら頑張って投げろって話だろう。

 にしても、7m以上潜るというバレットクランク7+で5mから6mぐらいが限界というのは、やはり”ワシの釣りの現場”においてはカタログスペックほどは潜ってくれていない。ないならあるもので勝負するんだろうけど、バレットクランク以上に容赦なくデカいリップがデカい本体からつきだしているクランクが、本場米国にはあるようで、ワシの大好きなピーナッツの親元であるストライクキング社の「エクストラディープダイビングクランクベイト10XD」が25フィート(7.62m)以上もぐるよってなってる。巻くのクッソ重そうではあるけど、お値打ちの出物があったら確保したいところ。ちなみにバレットクランク7+は新品で買った。入手も楽だし5m超のワシの主戦力と考えちょります。

 なんとか、他に深い海の底の一定の棚を派手なアピール力のあるルアーを引いてくる方法がないものか?と考えるんだけど、シンキングのプラグでさらに潜っていくルアーはどうや?って考えると、ちょっといけそうにも思うけど、そのルアーの通せるドンピシャの深度ならいいけど、さらに潜って行ってしまうと、底の砂にリップ突っ込ませてつんのめってまともに動いていないような状態になりかねない。フローティングなら止めりゃ浮いてくるし引く速度で調整もできるけど、シンキングで5m以深にドボンと沈んでくれるようなルアーを一定の棚引いてくるってのはどうにもイメージできない。船使って良いならそれこそダウンリガートローリングで、動きの良いフローティングミノーとか引いてしまえば良いのでやりようはあるけど、陸っぱりだと、いまのところディープクランクで護岸に膝ついてグリグリと男巻きするのが一番楽かな。ということで引き続き投げて巻きつつ釣り場で考えるんだろうなと思おもっちょります。

2024年9月7日土曜日

マイニューギアりました!

 「ギアりたい〜〜〜 めちゃくちゃマイニューギアりたい〜〜〜!!(by後藤ひとり)」とワシの中の承認欲求モンスターが暴れるので、最近手に入れたブツの紹介です。 

 まーたなんか買ってやがる。って話ですが、れいによって説明させてください。お願いします。

 まああれです、いま”根魚クランク”てなことをやってて、ベイトに16LBナイロン巻いてグリグリ巻いてるんだけど、我が家にあるベイトってボート根魚や雷魚釣りで使った丸アブの6500番代が多く、もうちょっと軽いのをというのと、海で使うのに樹脂製本体だと腐食の心配が少なくすんで良いなと、学生の頃並行輸入品を買ったABU「アンバサダーMAX」というのを引っ張り出してきて使い始めている。”アンバサダーLITE”系の電磁ブレーキ版の機種で、正規輸入品では「LITEスペシャル」「アンバサダーマグプラス」とかいうのが近い仕様のようだ。軽くて腐食に強い樹脂本体で電磁ブレーキ、”ウルトラキャストデザイン”で、投げるときレベルワインダーはスプール回転と連動しない分離式、スプールは軸と分離して回る。クラッチはサムバー方式。とてもシンプルだけど無駄がなくて、久しぶりに使ってるけど、ワシ遠心ブレーキの機種の方がなじみがあって「マグはイマイチ」と昔は思ってたけど、不思議なことに、慣れてきたら軽いのも使い心地の良さにつながってるけど、投げるのも良い感じに投げられるようになって、大きめのクランクとか気持ちよくぶっ飛ばしている(当社比)。スピニングで投げるのとはまた違う味があって楽しい。もともとLITE系は丸ABUとかに比べたら安かったけど、こいつはさらに並行輸入品ということで新品で7000円ちょいなだったように記憶していて、若い金がない頃に買った道具って、吟味して選んだだけあって安くても良いのを買ってた気がする。1980年代の今は昔。

 で、メインのリールとして使っていると、どうしても予備機か予備スプールがほしくなってくるというのは、みなさんご理解いただけるだろう(かな?)。仕方ないですよねウン。というわけで、LITEスペシャルあたりの中古をネットで安いのないか探してみると、実用性抜群の割に人気がないのか相場はお安い。まあアンバサダー好きな層はワシもその傾向あるけど丸ABU買うだろうし、非円形の電磁ブレーキのベイト買うなら日本製買うよねってことだろう。こりゃ狙い目である。安っぽい直接印刷した銘が消えてたりする見た目アレな個体だと、だいたい5千円以下ぐらいが相場。「銘なんて飾りです、マニアにはそれがわからんのです」って感じで、銘は結構格好いいのがついてると気持ちよく釣りできるのでおろそかにしてはならん要素だろうけど、安いのなら剥げててもワシャ許す。ということで、文字が剥げはげながら、箱と袋とオリムのカード付きの「アンバサダー”ブラックマックス”」というのがちょうど送料込み3500円程度で出てたので、スルルのポチチで確保とあいなった。「フックセットボタン」「フリッピングスイッチ」といらんものが付いているけど、シンプルなLITEスペシャルは手頃な出物がなく、安いしまあいいやということにした。邪魔ならエポキシで固めて水が浸入する穴ふさぎついでに使えなくしてしまえば良い。で、あんまり細かく写真チェックせず現物が来て驚いたのは、こいつオリムの設定した希望小売価格22,200円という高級機種で、上飯田釣具さん頑張って値引きしてるけどそれでも13,300円というワシには似合わんぐらいのお高い逸品。ボールベアリング3個も入ってる。ベイトでスプール軸の2個以外にどこに入れる必要があるのか全くよくわからんけど、この頃からボールベアリング数が多いのが高級品とされるようになってたんだろうな。アホクサ。

 我が家に来たからには使う前にまず分解整備がお約束。外観的にはMAXみたいなツヤ消しじゃなくてツルンとした表面で印刷が乗りにくそうだけど、形は左手の親指を置くくぼみがもうけられている程度でほぼ一緒の形状。ハンドルもおんなじでこのハンドルはつまみやすくてワシは好き。ハンドル側の上にポコッと出ているのがフリッピングスイッチと見せかけて「フックセットボタン」という謎の機構。フリッピングスイッチはハンドルに隠れてメカニカルブレーキの下あたりに地味にON、OFFスライド式のが付いている。

 良いじゃんこれ!って思ったのが、ブレーキ側の蓋が、ハンドル側の、樹脂製でつまめる頭にしてあるネジ2本を外すと外れて、スプールが外せるところ。

 ベイトリールの普段の整備って、海水浸水させない限り、ずぼらなワシは、一番海水がかかるレベルワインドのグルグル棒と、スプール軸とベアリング、あとスプールエッジへの注油ぐらいしかやらんわけだけど、手でネジ外してカパっと蓋開いてスプールが引っこ抜けるのは整備性良好でよろしい。さすがに今更こんなマイナー機種のスペアスプールだけ手に入らんだろうけど、売ってる当時ならスペアスプール体制組んだら戦闘力高かっただろう。MAXのスプールと共有できるかそのうち試したいけど、次に説明する謎の「フックセットボタン」との関係で互換性はやや怪しいところ。

 でその「フックセットボタン」の仕組みなんだけど、右の写真見ておわかりいただけるだろうか?

 左下のスプールに見えている、ピニオンギアに填まる爪の金具の外側円周上に歯車が付いていて、これに「フックセットボタン」から伸びている金具がかかることによって、ボタンを押した状態だとスプールがロックされるという、きわめて乱暴な機構である。いやフルロックは道具にも体にも悪いでしょ?米国でも売ってた機種なんだろうか?日本の釣り人にはやたらドラグをフルロックしたがる人種がいて、そんなことしたら竿立たんからのされるだけだろと思うんだけど、フッキングの時にドラグが滑るのが気に入らん人用なんだろう。ワシャ正直いらん。昔のリアドラグの使い方として、堅めに締めておいてガツンとアワセてから、ライン切られないようにドラグ緩めるってのがあったと「リールの歴史2」で読んだけど、海で最初強めのドラグだと一気に走られたら怪我の元なのでワシには全くいらん機能。「たとえラインを切られようともこれ以上は行かせられん」っていう状況で竿を魚に向けてフルロックとかで使うか?親指でスプール止めるので足りる気がしてならん。まあ、押し続けてないとロックしないので危なきゃ指はなせばいいだろうし、機構自体は単純で整備の邪魔ってほどでもないし使わんだら良いだけの気もするけどな。ボタンから浸水するようならエポキシで埋めてまえだな。MAXとのスプール互換性はこのフックセット用の歯車が邪魔する可能性がありそうに思っちょります。とはいえ同じような感覚で使えそうな予備リールが手に入ったのは運用上非常によろしい。

 で、ハンドル外してギア側の本体蓋を開けると、良いニュースと悪いニュースがあります。
 まず良いニュースは、逆転防止がおっさん世代のアンバサダー原体験で、外したは良いけど、どう填めれば良いのかわからなくなる青銅板で歯車を挟む方式で、瞬間的逆転防止機構にまだなってません。メインギアの下に入ってるのが分かるかな?この青銅版をちょいと広げて歯車挟んで、ギアと同時並行で逆転防止のドックを棒に刺してやるというお作法を、当時のバス少年たちはネットもない時代だから四苦八苦して学ぶというのが通過儀礼だったんですね。まあ、ベイトの場合瞬間的逆転防止機構が入ってても入る位置がハンドルの軸とかでスピニングのローター下のような浸水しまくる場所じゃないし、ローター戻してベールの位置調整なんていう上級者がやってるようなこともしないからスピニングに入れるより実害は少ないけど、F師匠はライギョ釣ってて、瞬間的逆転防止機構の丸ABUで思いっきりアワセ入れたら、ワンウェイクラッチのローラーが、締め付けるスリーブの表面をガリガリに削ったそうで「瞬間的に止まって遊びがないなんて、誰がどういう理由で欲しがってる機能なんだろう?」って不思議がっていて、逆転防止はやっぱり昔ながらの青銅板付きの爪でがっちり止める方式が信頼できると言っていた。全くそのとおりだと思う。
 で、悪いニュースはギアの上ハンドルの根元に銀色の部品が填まってるのが見えると思うけど、これボールベアリングです。ここに必要か?スピニングでボールベアリングを入れる優先順位を考えると、1にロータ軸のギア(ピニオンギア)で2がハンドル軸のギア側、3はハンドル軸の逆側って感じだけど、そもそも低速機ならボールベアリング0でもなんにも問題ないことは経験済み。高速機でローター軸にボールベアリングが入ってないと重いのは、この位置のボールベアリングが錆びたときに経験済みなので、入れた方が良いんだろう。と同時にハンドル軸には耐久性とか考えなければボールベアリングなくても大丈夫なのは、その錆びたボールベアリングをハンドル軸側に回したときにも経験しているし、大森スピニングの多くの機種でブロンズブッシュしか入ってないけどなめらかで何の問題もないことからも体験的に知っている。
 ベイトリールでもハンドルの軸にはボールベアリングいらんだろ?ハンドル周りはそこそこ防水性あるので、錆びそうな場所ではないからあって困るほどじゃないけど、ハンドル1回転するときに1回転しかしていない低速回転の軸にボールベアリング入れてもあんま意味ないだろ?まだ5.1:1に増速されているからピニオンギア周りに入れるなら分かる。実際にはスピニングみたいに回転軸を90度変えるような効率の悪い機械じゃないので、5倍速ぐらいで巻き取り時にピニオンギア周りにボールベアリングが必要かっていえば、実際なくて困ってないしいらんのだろうけど、ハンドルに入れるよりは役に立ちそうに思う。投げるときおもいっくそ高速回転するスプールにボールベアリングが入ってるのは意味があると思うけど、それさえべつにブロンズブッシュである程度はやれるって話で、この時代あたりからおかしくなり始めた”ボールベアリングの数が多い方がエラい”っていうアホな信仰は令和の時代にもなっていい加減やめろって心底思う。
 あとギア側蓋開けて思ったのは、この頃のベイトリールから、いわゆる”メカプレート”方式でハンドル側にフレームと蓋の間にギアやらクラッチやら乗っけた金属板を入れて組みやすくしている構造をやめて、フレームに直接ギアやらクラッチやらが乗ってる。丸ABUは最近?のでもメカプレート方式蹈襲なのでパカッと開けてちょっと新鮮な感じがした。

 まあ後はベイトはだいたいそんなに複雑じゃないしで、フリッピングスイッチもオンにするとクラッチがカチッと山を越えるまで上がらないように押さえてるだけの単純な構造と判明して、使わんけど邪魔にもならんなという感じでサクサクと分解していく。ちょっと困ったのがメインギアの乗ってる台座と、平行巻のグルグル棒が抜き方が分からんかったので、抜けるところまで抜いてティッシュでふきふきして新たにグリスなりオイルなり注しておいた。どなたか外し方知っておられたらご教授よろしく。

 ドラグが古いABUによくある大きな土星の輪っか状の革っぽい質感の1枚ワッシャーなんだけど、ペン純正グリスに塗り替えしたら格段に滑らかで調整幅もあるドラグに仕上がった。ギアにカパっと填めて上面だけ滑らせて使う構造なのでひっくり返して理屈上新品の面を使ったのも要因としてあるのかもだけど、今時のグリス類はなかなかに優秀な気がする。

 今回樹脂製本体なので金属部品だけ青グリス(ギアとドラグはペン純正)塗り塗りで、ギアの入ってる方は当分開けなくて良いようにグリスシーリングしておいた。スプール軸周りはベアリング含めオイルで仕上げ。
 MAXはシーバスジギングとか海でも使ってたので、今年使うことになって久しぶりにパカッと開けたら意外なところが錆びてたりした。電磁ブレーキの磁石は当然鉄系なんだろうけど、これが海水はいりそうな場所でもないのにスプールエッジあたりから浸水したのかちょい錆びてた。まあ非接触型のブレーキなので錆びても磁力が生きてたら良いと言えば良いけど、道具錆びさせるのは当然恥ずかしいことなので、今回こいつのマグブレーキの磁石にもグリス塗り塗りしておいた。
 逆転防止の爪以外にも、フリッピングスイッチの向きとか凸凹してるところの組み合わせ方とか、組み方は多少パズル的要素はあれども、ちゃんと分解しながらデジカメ写真撮っているので、分からなくなったら写真で確認して無事いっちょあがり。

 よっしゃ、新しい道具揃えると、釣りに行きたくなるっていう衝動が生まれる。使いもせん道具を積み上げるのは、病気なのでしかたないとはいえ不健全で、今回のような使う道具を買うのは必要経費で良い投資だったと書いておこう。早く使ってみたい。