2024年9月28日土曜日

繕いながら生きていく

 繕いの多い生涯を送ってきました。

 人間関係を当たり障りのない見せかけの笑い顔で繕い、仕事のミスをとりあえず頭下げて繕い、女性の機嫌をモノでとり繕い、自分の才能のなさを「あのブドウは酸っぱいに違いない」と繕い、繕いすぎて元の自分がどんだだったのか分からんぐらいに繕ってきました。などとダメ人間文学風に始まっておりますナマジのブログですが、まあ人生そんなもんだろうから一々気にしちゃ始まんねぇって話で、本題は文字どおり、針と糸で繕うお話です。

 物価高で何でも高い。そういうときに限って使ってたモノが寿命をお迎えしなさる。まあしゃーないことであり、すべてのモノはいつか壊れるんだから、買い換えも必要である。特に釣り関係の、いわゆる”釣り具”に分類されるようなハリ、糸、竿、リールなんかにはご存じのように金使いまくりで、おかげで多少壊れて調子の悪い道具が生じたぐらいでは、すぐに別のものを代替として用意することすら可能であり、何ら問題がない(財政的には大問題である)。

 ところが、釣りに直接係わるけど、釣り具とはちょっと違うモノ、たとえば水くみバケツ、たとえば魚ばさみ、たとえばウェーダー、たとえば救命胴衣。なんていうのは、良いものがあるからと片っ端から買い集めるような収集の対象にはあまりなり得ず。良くてそろそろ古くなってきたなと思ったら、早めに次の候補を選定し確保して備えておく程度である。ウェーダーやカッパは値段とサイズの問題もあり、壊れてすぐ買うってわけにもいかないので、早め早めに準備はしている。とはいえ物価高騰の折、なるべくなら長く使い伸ばしたいと思うのが人情というもので、ウェーダーは昨年の秋シーズンにいい加減ぼろぼろだったけど「冬までもてば良い」とセメダインスーパーXとか駆使して修繕して、昨年の秋シーズン、今年の春シーズンと乗り切って、もういっちょ修繕して使えないかと試したものの、もうどこからともなく水がしみてきてビチャビチャになる状態で、穴をふさぐとかどうとかいう状態ではなかったので泣く泣く諦めて、今期から新しいウェーダーを下ろして使っている。シューズはソールが削れて薄くなっていたので、本体が壊れたシューズのフェルトソールを引っぺがして”ニコイチ”して復活させておいた。年間200以上釣りに行くとしても、ウェイダー履いて立ち込むのは50日もあるかないかだけど、一般の釣り人と比べたらもちろん酷使してる部類だと思うので、3~5年は修繕しながら持たせたいモノである。

 で、そういう釣りに関するモノが壊れるときはみんなまとめて寿命を迎えて壊れはじめるもので、魚ばさみの挟みつける面のトゲトゲが丸くちびてしまってゴンズイとかヌルヌル滑って挟みきらないのとか、危なくって仕方ないので高いモノでもないしコレは素直に買い換えた。アジ釣りとかに使ってるクーラーバックも、縫い目ほつれてきてダクトテープで応急処置してあったり、ファスナーが本体からはがれたりしてぼろぼろだし、コレまでもロングノーズのプライヤーが貫通した穴とか繕って愛用していたアングラーズハウスのウエストポーチもそろそろ穴繕った跡だらけで、新たな穴も開いたし、そろそろ買い替え時だなと、ウエストポーチの方は廃盤品なのでネットの中古市場を探してそれなりにまだ使えそうなのを確保した。

 ってやってたら、加えて大物がきやがった。自転車のタイヤが芯の繊維が見えるぐらいツルツルに禿げ散らかしていて限界。チューブは明らかな空気穴にはパッチ当ててふさいであるけど微妙に空気が抜けていく感じでこれも寿命だろう。交換の時期はとうにもう過ぎているぐらいか。自分でやったら多少安上がりとはいえ、自転車の後ろタイヤの交換は面倒くさくて、リールの改造は多少面倒くさくても楽しくやるけど、自転車は失敗すると交通事故にもつながりかねず、本職の自転車屋さんにお任せした。10500円は痛い出費。中古の自転車買い直した方が安いことは安いだろう。ただ、まだタイヤ周り交換さえすれば使える自転車をスクラップにしてしまうのは、もったいないと感じてしまうのである。1500円で買ったボロいママチャリに1万円から使うのは”コスパ”が悪いと言われてしまいそうではあるけど、ワシの財布が多少軽くなるとしても使えるモノをゴミにしてしまうことの”もったいない感”のほうが勝る。以前、とある魚料理のブログ記事を読んでいて、磯魚を”塩釜焼き”にして楽しむというネタの時に、卵白で固めた食塩の中に魚を突っ込んで蒸し焼きにするような瀬戸内海のマダイで有名な調理法なんだけど、焼いた魚は美味しいんだけど、釜として使った塩がなんかもったいなくて、良い再利用方法はないのか?と管理人さんがぼやいてたんだけど、それに対して掲示欄に「塩なんて業務スーパーとかでまとめ買いしたらとても安価で、もったいないってほどでもないですよ」と書き込んでる輩がいて、たぶん管理人さんも多くの読者も「そういうことじゃねえんだよ、金うんぬんじゃなくて、まだ使えそうな塩がたくさんあるけど、それは食べるわけじゃないから、卵白で固まってるのをどうにかする方法考えて再利用方が思いつかないと捨てるしかないのが”もったいない”んだよ」って話だけど、金銭的価値しか思い浮かばない輩には言っても分からん感覚だろうな、という気まずい沈黙が掲示欄に漂っていた。

 正直、ワシの貧乏は計画的な貧乏であり、ある程度蓄えもあれば、年金も後々もらえるはずで(やや疑わしいがワシだけの話じゃないのでとりあえず棚上げ)、タイヤに1万円払える余裕はある。ビンボで金なんかあんま使わなくても楽しく幸せに生きていけるんだよってのを示すために、ビンボを楽しんでるという側面もある。そういう中で、1500円で買った自転車に1万円からの修理費用を掛けるのはコスパが悪いとか言い出すのは、なんか違うんである。ワシの目指す幸せはそんなしょうもないコスパを求めた先には無いと思っている。モノは大事に長く使うのが多少費用対効果が悪くとも”もったいなくない”と考えて進むその先にこそワシの幸せが待っているような気がしたりしなかったりするのじゃ。

 とはいえ、1万円からの出費はナマジ家会計的には厳しいのも事実。要りもせんのにこの夏買いまくった釣り具の出費に比べたらかわいいモノだけど、それはそれこれはこれというやつである。我が家の緊縮財源をさらにキュッと締めねばなるまい。

 ということで、ウエストポーチは交代要員確保したけど、再度繕ってもうひと頑張りしてもらい、クーラーバックも同様に繕って今しばらくの現役続行をお願いすることとした。

 チマチマめんどくせぇ針仕事ではあるけど、やることは単純で、丈夫な糸とごつい針で破れ目、裂け目を縫いまくって、途中で切れてほつれてくるのをある程度防止するために、縫い目をセメダインスーパーXやウレタン系接着剤で固めてしまう。丈夫な糸としては、竿のガイドのラッピングやら飾り巻、補強に使ってる”イカリ印補修糸”がナイロンとかポリエステルとかの丈夫なのがあるので、最近は竿のラッピングも入れ物関係の補修にもイカリ印補修糸愛用してます。指ぬきがあると作業がはかどるので、100均ショップに行ったら買おうと思って毎回忘れてて、爪で針の頭を押してます。裂けてたところは穴がふさがり、外れかけてたジッパーもしっかり縫い付け、ダクトテープは剥がすとベリベリッとなりそうなので、そのまま縫い込み、クーラーバックもウエストポーチもまだしばらくは働いてくれそうに復活。

 エコとかロハスとか、分かったようなよく分からんことはイマイチワシ腑に落ちないけど「道具は大事に直しながら最後まで使う」っていうのは、それが道具の本懐だろうから素直に腑に落ちるので、昭和の男はそういう風に育ってきたんだ、と思っちょります。

2024年9月21日土曜日

この夏のデカアメミノー熱波ーナマジ家円安下の収支報告ー

  なんでよりにもよって円がくそ安い今年に限って、アメルアのそれもマイナーすぎて国内流通が少ないたぐいのブツに執着してしまったのか。ことの始まりは海水温上昇対策という視点で、南方系の魚が今後増えるならいつもシーバスに使ってるようなおとなしめの動きのミノーよりもっと強い動きのあるアピール力のあるミノーをというところからで、そうなると当然ボーマーのロングAとか、それだけで間に合うだろ?ってぐらいには備蓄もしてあるけど、米国産ミノーがなんじゃらごちゃごちゃと気になり始めて、我が家にあった在庫確認とか始めたら、なかなか面白いことに気がついたあたりがことの発端。

コレがダニーだ!
 アメルアって、日本で第2次ルアーブームを引き起こした要因がバス釣りだったから流れ的に当然だけど、バスマン中心にエラい深い沼に沈んでるどマニアどもがいくらでもいて、いろんなルアーがネット上だけでも広く深く紹介されていて、そういう記事を読むだけでも楽しい。でも、シーバスマン始め塩水系のルアーマンって、リールでもそうだけど、なんか国産のエラそうな能書きたれてる道具をあがめ奉ってる雰囲気が色濃くあって、アメリカンなソルト用のミノーとかって意外に紹介されていない。まあ端的に言って東海岸のストライパー系のミノーとか、比較的そっち方面に興味のあるワシでさえ”ダニー”っていうのがギブスの1ルアー名ではなく、”ダニータイプ”とでもいうべきジャンル名だというのをご教授いただいて初めて知ったぐらいである。せいぜい我が国のシーバス黎明期にラパラのような北欧系の他にボーマー「ロングA」とかコットンコーデル「レッドフィン」とかが活躍したことを、オッサン世代のシーバスマンならうっすら憶えている程度ではないだろうか。

 でも、アメリカの海用のルアーってそれだけじゃもちろんない。ないんだけどみんなが知らないようなメーカーの海用アメルアを紹介したところで、その線では海用アメルア好き同志のMasahiroさんのブログ「アメリカのソルトルアーで日本の魚は釣れるの?」におよぶわけもなく、あんまりうちのブログでやる意味がない。本場の海用ルアーの渋いところを知りたければそちらを読んでくださいって話である。でも、日本ではバスルアーで馴染みのあるアメリカのメーカーやブランドでも実はソルト用のあるいはマスキーやサーモン用のでっかい海で使えるようなミノーを作ってるところって意外に多くて、っていうよりほとんどのところでそういうのも作ってます。っていうのは意外に知られていないのかなと思い、そういうのうちの蔵にもいくつも転がっていたので、これはネタとして”ドヤッ”て感じでワシも楽しめるし、バスマンであっても塩水系のルアーマンであっても意外な視点で楽しんでもらえるかなと、ルアー図鑑うすしお味らしいネタでもあるかなと思い、第70弾はそういうネタの序章という感じにいってみようと思っちょります。

 一発ネタで単独でネタにしようかと思っていたけど、調べ始めたら気がついたときには沼にドブンと首ぐらいまで浸かってしまっていて抜け出せず、ええいままよ!毒くらわば皿まで!!とアホのように散財してしまい、えらい目にあったので、当初の目論見はもろくも崩れ去り、とても1回では紹介しきれない有様で、まずは反省も自戒も込めて、どのくらいえらい目に遭って冒頭写真のようなルアー達が集結することに至ったのかご報告してみたい。

ハイロー
 まずは最初っからなぜか我が家の蔵に転がってたものは、ボーマー「ロングA17A」17.5cm、、レーベル「ミノー7インチ」17.5cm、コットンコーデル「レッドフィンC10」17.5cm、バグリー「バンゴー7インチ」17.5cmあたりは、まあどこのご家庭にも転がってるだろう一般的なミノーの7インチ版だから珍しくもないだろうけど、なぜミローの「108MR」を買ったのか、在庫十分なラパラマグナムでは足らんのか、グデブロッドの「スーパーマーベリック」なんてどこで手に入れたのかすら憶えていない。あげくの果てに30cmもあるクリークチャブ「ジョインテッドパイキー」とか頭おかしい大きさである。しかも恐ろしいことにこいつはロシアあたりにタイメン釣りに行くならコレだろって真面目に将来使う気満々で購入していて、フック3つもあると邪魔くさいので尻はブレードに換装して準備万端整えてたってのが我ながら頭がおかしいとしか思えん。他にコレは北欧系だけど最近になって発売されたABU「ハイロー」20cmなんかもなぜか買っているし、ワシもともとデカいミノー方面は患ってたのかもしれん。アタイ病気がにくいッ!

 でもって、アメミノーのデカいのが欲しいっていう変なところに火の手が上がりめらめらと燃え上がり、日本で馴染みのあるアメルアメーカー・ブランドの最大級ミノーを全部集めようっていうアホなことを思いついてしまった。思いついたは良いけど言うはやすし行うは難しで、これが難航する。とりあえず安くはなかったけど国内ネットオークション等で片が付いたストーム、マンズはまだ良かった、でもアメルアっていえばまずはヘドン、アーボガストだろってあたりから行き詰まり、セカイモンでお買いモンに、何度も書くけどこの円安のおりに止めときゃ良いのに手を出して、まずは6月始めにヘドン、アーボガスト、ホッパーストッパーに送料込み19,823円ぶっ込んだ。送料が以前なら3千5百円ぐらいだったのが4千5百円ぐらいになってて戦慄を覚えたけど、もう止まらない。さすがに円安は業務形態的にもろに厳しいようでセカイモンからもひっきりなしに手数料割引等のクーポンが届くのも購買欲に拍車をかける。ブレーキはとっくの昔に壊れている。次に、アメルアで押さえとかねばならんのはビルノーマン、スミスウィックあたりか?フルーガーも前から欲しかったのでいっておくと、送料込み13,158円、ところが6月中旬のこの時に購入したフルーガーのブツが出品者からセカイモンに送られてこないというトラブルが発生。課税対象めいっぱいまで銭突っ込んでないのはそういう理由。追加で購入しようにもセカイモン倉庫での留め置き期間は限られていてイーベイ基準の日数が過ぎてキャンセル・返金になってからではどうしようもなかった。ダメ元で保管期日を延ばしてくれってセカイモンにお願いしたけどダメ。そらいちいちそんなことで延期許してたら保管にも経費も手間もかかるから商売にならんよな。ネットオークションとかにはこういったトラブルはありがちだけど、よりにもよって何度も書くけどこの円安のおりにトラブってくれるなよと泣きたくなる。えらい安い値段だなと思うぐらいの即決価格だったけど、いざ買い手が付いてから惜しくなったのか何なのか?で、頭にきて7月に入ってフルーガーの狙ってたブツを確実に入手できるように2個購入、ついでに余計なルアーも買って課税額手前まで突っ込んで送料込み19,266円。

 おかげさまで、同時並行でヨーヅリやらクランクやら誤爆やらもやらかしているので、釣り具予算は月3万円までという一応の基準を設けているのに、6月の釣り具購入費用は72,575円、7月は59,579円、余波なのか勢いづいて8月も47,342円と盛大にやらかしている。この間リールや竿に関してはほとんど手を出しておらずルアーばっかりでこの始末。物価高騰のおり、お米のグレードも下げてしのごうとしているビンボなナマジ家会計において、無駄な支出としかいいようがない。ないけど病気やから止められんのじゃ。アタイ病気がにくいッ!にくいにくいにくいッ!!

 その他にも購入候補やら要調査案件はあったけど、さすがにマイナーすぎてすぐに入手できそうにないってのが今考えると運が良く、このあたりで止まってくれた。ちなみにその他に買おうと思ってたり調査かけたりしたのは、その名のとおりシダーウッド(セダー)でできたクランクが有名なPOE’sのみょーんとオタマジャクシを引っ張ったようなけったいなミノー、ストライクキングには「HCKVDJ300」っていう現役のミノーがあるけど5インチ弱ぐらいで歴史のあるブランドなのでもっと大きいのもあるかも?他にも、ブランド食いまくって複合化著しいルーハージェンセンが一時扱ってたビックベイトの火付け役「ACプラグ」、「バスオレノ」やらでおなじみサウスベンドは「ラスカル」とか「オーバイト」「シービー」とかいうミノーを作ってたようだけどマイナーすぎて情報追い切れず。ルーハー、サウスベンドと来たらエバンスも調べなきゃという感じではあるけど、エバンスは元々スプーンとかの金物屋でミノーは作ってなさげ。金物屋系ではヒルデブランド、エピンガー、ブルーフォックスも、あとワーム専業メーカーも同様か。「ラトルトラップ」のビルルイスはお約束の背びれ付きのミノーは作ってたけどデカいサイズのは無かった模様。蛇皮スイッシャー「カッパーヘッドジャンパー」のギルモアは「ジャンピングG」にリップ付けたようなクランクは作ってたみたいだったけどミノーは作ってなさそう。っていうかクランクのリップを取っ払ったのがジャンピングGなんだろうけど、このメーカーの場合は逆に水面系のジャンピングGにリップ付けて後付けでクランクにしたんだろうなって思ってしまうぐらい水面系ばっかり作ってる。独特の鎌状ペラスイッシャー「ウッドチョッパー」とその発展系のアマゾン用デカスイッシャーが有名なオザークマウンテンもミノーの陰はなし。「ダルトンスペシャル」のダルトンもミノーは無縁っぽい。ちなみにギルモアもオザークもダルトンも今やルーハー傘下。そして元祖I字形「ニードルフィッシュ」のブーンは今でも独立系ブランドだけどミノーは作ってた気配無し。ブーンの発泡樹脂も独特だけど独特というなら軟質素材のバークも独自色強い変態メーカーで水面計は各種作ってて金属リップのダイバーも作ってたけどミノーはなさげ。代表的なアメルアメーカー・ブランドだけ調べたつもりだけど、それでも過去ミノーを作ってたかどうか?一番デカかったのは?とかは調べきれん!という感じなので、実は作ってたんですよ!とかいう情報あれば是非教えてください。あと、デカいアメミノーとしては「シスコキッド」、「ACシャイナー」あたりは老舗だけどバスルアーのイメージはなくてシスコキッドの大っきいのは欲しかったけど珍しく我慢した。ACシャイナーはぶっちゃけラパラフローティングみたいなミノーで蔵にもそこまで大きくないのは転がっている。写真の真ん中のがそれ、ちなみに上のはジャンピングGスモール、下がルーハー時代のアマゾン用ウッドチョッパー。

 という感じで、完全に狂乱索餌状態で手当たり次第買いまくってたんだけど、根魚クランクが盛り上がってきて実弾の選定作業と確保が急務になったこともあって、なんとか”デカアメミノー熱”は症状が治まってくれている。実弾買う分には必要経費なのでしゃーないし健全な出費だと思ってる。熱にうなされて買ってしまったデカアメミノーの中にも根魚クランクで使えそうなのとかはあるので、実弾化してちょっとでも元を取ってみたいとは思う。思うけどへたによく釣れてしまったりすると追加で弾確保せねばならなくなったりしてやぶ蛇かもなと思ったり思わなかったりしております。

 とりあえず全体像を俯瞰すると、この夏のデカアメミノー熱はこんな感じでございました。個別のブツについては暇を見てぼちぼちとネタにしていきたいので、お好きな人はお楽しみに。

2024年9月14日土曜日

深くやかましく潜航せよ!

 クランクベイトというのは、特定の餌生物に似せようとか、そういった発想から生まれたルアーではない。アメリカの淡水にあんなフグみたいな小魚がいるとは聞いたことがない。

 ではなぜ、あの形が生まれたか、なぜフレッド・ヤング氏はあのズングリムックリな形にビッグOはじめすべてのクランクベイトの原型になるプラグを創造したのか。

 端的に言えば機能があの形を欲したから、ということになるだろうか。強い浮力をもち、ブリブリと激しく動き水中に潜っていくために、あの形が必要だったのである。ルアーの場合多くの場面で釣り具として求められるのは、ぱっと見で「餌に似ている」というような”素人を釣るための要素”ではなく、どう動くか、どう水を動かすか、どう潜るか、どう浮くか、どんな音を出すか、どんな飛沫を上げるか、どんな光り方をするか、どんな大きさ形状か、というような機能である。そのルアーの持つ機能が、魚の本能や学習能力をして、いかに食いつかせたり頭突き食らわさせたりするかが重要で、「お魚そっくりでしょ」ってやることは、釣り人のやる気には多少関係してくるんだろうけど、機能的にはほとんど意味のないことであることは、古今東西史上最高のルアーデザイナーの一人であろうジャームス・ヘドン氏がルアーを売り始めるときにそう看破している。100年は昔の話である。

 クランクベイトにワシが求める機能は、最初浮いていて、引くと急速に潜り始め、激しい動きで、水を動かしつつ、多くの場合ラトルが音を出し、そうでなくてもハリやリングが音を出し、そういう動きをしながら一定の棚を引いてこられる。巻くのを止めると浮く。という機能である。

 今回、ルアー図鑑うすしお味第69弾では、”根魚クランク”において1.5mを超えてさらに深い場所を攻められるクランクベイトについて書くわけだけど、深いところを狙うなら重いジグヘッドのワームやストンと沈む重いバイブレーション、あるいはメタルジグやクルクル、鉄板系など金物を使う方が一般的かもしれない。でもそれらのルアー達には一定の棚を引いてこられる性能”棚キープ力”とでもいうべき機能があまりない。引っ張ると浮いてくる。よほどゆっくり浮き上がらないように引くか、上げて下げてを繰り返すかしてやらないと深い棚を攻められない。ぶん投げて巻いてくるだけで、助走距離は必要だけどある程度一定の棚を攻められるというのは、シャッド型やミノー型も含めディープクランクをおいてほかにない。トローリングで深い棚を引いてくるのに使う「ダウンリガー」のように、重いオモリを使って、天秤で絡まないように注意しながら棚をとりつつ引っ張ってくるっていう手もありそうには思うし、写真の天秤?付きオモリで棚まで届けシャッドの大きめリップで棚キープするカマス狙いのシャッドキャロは実際に効果を上げているけど、正直仕掛け作るのも面倒くさければ、投げるとやっぱり絡むのも面倒くさい。ルアーを大きくできないなら仕方ないけど、デカくて浮力も強くてその分でデカいリップを備えてゴンゴン潜っていくディープクランクは、その点面倒くさくない。深いところで手返しよく広く探りたい。そのために手返しよく投げて巻いてを繰り返したい。派手な動きや音のアピール力で、やる気のある魚を寄せて食わせて勝負を決めたい。となると機能的にディープクランクが適任なのである。

 根魚や底物を陸っぱりで狙うならワームのジグヘッドリグ、とかメディアや他の釣り人が言ってたとしても、自分のやりたい釣りに求めるルアーの機能として、ワームじゃダメだとなったら、必要な機能を有するルアーを使うってだけの話である。わざわざやりにくいことをやる必要はない。なんにせよ近所漁港ではワームは各種フグ軍団に集中砲火をうけて釣りにならんしな。だからこそ”竿抜け”的に一般的な釣り人が狙えていない獲物がいるのだと思っている。

 で、まずはピーナッツⅡDRの1.5mぐらいの潜行深度より深い、1.5~2mぐらいまでの棚用だけど、これはいろいろあるけど抜群に良いというかワシと相性の良いのがマジェンダ80のFとSP(サスペンド)、冒頭写真のチャイロマルハタもこいつが働いてくれた。基本浮き上がりの良いFモデルを使っているけど、フックをシングルに替えると海水中ではSPでもしっかり浮くのであんまり違いはないのかもしれない。このルアーの良いところは、とにかく釣れるっていう実績。釣り具で魚が釣れるのは大正義でありほかの要素は時にこだわることもあるけど、まあ無視していい要素。バスルアーなんだけど、シーバスにも効くと評判になってシーバスバージョンも売ってたように記憶している。ぶちゃけワシ、バスは釣ったことがない。シーバスには東京湾でも紀伊半島でも安定した実績があって、何が良いのか分からんけどとにかく魚が釣れるルアーなのは間違いない。動き的にはあまり前傾せず、バイブレーション的に細かい動きでラトル音響かせつつスルスルと潜っていく。形がクランクベイトっぽくなくやや細長いのも特徴か。重心移動版と固定重心版があって近距離戦では固定重心版を愛用しているけど、主にスロープ沖の砂底を広く狙うのに使うので根魚クランクでは重心移動版を使ってる。深い護岸の壁際でも魚が浮いてきていると想定する時には食わせる能力に信頼をおいて投げている。

 次は潜行深度2~3m強ぐらいまで、港内いくつかこいつらがちょうど良いポイントがあって、砂底の2~3mの場所、4m水深ぐらいの捨て石が入ってる護岸際、あたりで、捨て石入ってるところは着底させると、見えないところで引っ張ることになり根がかるのが避けにくいので、ちょい上の深棚を通す方針で行く。根掛かり覚悟の釣りはワシャまったくやる気がない。根掛かり覚悟しなきゃ釣れないような場所の魚はワシには釣れない魚なので居ないのと同じ。釣り場にゴミ放出するのを前提にした釣りなどするべきじゃないと思っている。

 で、このあたりの水深のはいろいろあるんだろうけどスミスの「ハスティー3」(写真下)が巻き抵抗大きめなのが、逆に水中で砂底叩いているのかとか、どういう状態かわかりやすくて良い。あと、リップがみょーんと長いダウンディープラトリンファットラップ7(写真上)は急速潜行、足下ぎりぎりまで潜ったままという感じで個性的で良い。ほかにデュエルのフューズシリーズ試したときになんぼか買った「クランクマックス」と「クランクマックスjr」があるので、これもせっかくなので機会を見つけて使うつもり。

 で、”根魚クランク”と言いつつハモ、ヒラメ、マゴチ、アカエイ、ワニエソなんかの底物も狙いたく、そうすると5mちょいぐらいある水深の、いつも泳がせやってる砂底の底を叩く、あるいは水深6から7mの護岸沿いの石積み周辺、底は叩かずちょい上を通す。っていう5m以上の潜行能力のディープクランクが必要になってくる。 

 ま、ワシらジ様にとって深く潜るマグナムディープなクランクと言えば、ティムコ「マッドペッパーマグナム」とノーマン「DD22」が双璧かなと、バス釣りで琵琶湖のディープを攻めた経験などないんだけど、カヤックシーバスで一定の深棚引いてくるのに良いんじゃないかとか試したので蔵に眠ってて、まずはこいつらを試してみた。どちらも重量あってかつマッドペッパーには重心移動まで入ってるので飛距離はでるし、巻き始めるとゴリゴリ潜っていって頼もしい。頼もしいんだけど思ったほどは潜ってくれない。だいたい5mぐらいの水深だと思う場所で底を叩く感触がない。意外に底叩いてても深いと分からんとかかと、3m水深ぐらいで試すと普通に底をコツコツしているのが、特にDD22はよく分かる感じで、明らかに5m潜っていない。いろいろ理由を考えたけど、カタログスペックでは16LBナイロン使用時でそのぐらい潜るとのことだけど、カタログスペックの前提条件といろいろ違う条件で使っているので実力を発揮させられていないのだろうと思う。その要因として1つには飛距離が足りんってのがあって、ワシ的にはぶん投げて珍しく遠投してた部類なれど、近距離特化型のワシの遠投ではたかがしれてるだろう。飛距離が関係していることを裏付けるのは、護岸沿いテクトロしていくとしばらくして着底して底たたき始めることからも分かる。次にリーダーが太いことで、バス釣りなら16LB直結なんだろうけど、ハモだのクエだのヒラメだのといった歯のきっつい魚も想定すると、リーダーは道糸直結とは行かず、8号フロロを入れて先端に抜けない輪っか作ったザイロンかぶせて1回固結びの”歯ずれ対策”仕様にしている。この太いリーダーも当然足枷になってるだろう。もう一つ地味に効いてるかも?なのが海水中だとSP(サスペンド)設定のルアーも浮くって話と関係あるけど、海水中だと浮力が強いってのも案外効いてるのかも。そのへん本当はどうなんだろう?どなたか知見のある方ご教授いただけると助かります。

 でもって、今時ならもっと潜るディープクランクぐらいあるだろ?ってネットで調べてみたらありました。ただ、最近のそういうウルトラディープなマグナムクランクの使い方って、エレキでトローリングするいわゆる「ドラッギング」ってやつを想定しているのも多いようで、キャスティングで5m以上となると種類は限られているようだ。なんというかドラッギングって何だかなぁってテクニックで、そんなことするならトローリングをルール上ありにして、砲丸の球にクリップ付けたようなやつとか、各種潜行板とかの”ダウンリガー”でも使えば良いのにと思わなくもない。まあダウンリガーの類いは陸っぱりでは使いにくいので、単体で深く潜るディープクランクが開発されるのはありがたいんだけどな。ちなみにホッパーストッパー(のちにヘドンに移籍)「ヘルベンダー」のでっかいサイズは米本国では潜行板扱いでハリ無しで売ってるダウンリガーモデル「W08-D」もあってなかなかに趣がある。道糸長く出してのトローリングだと20m以上潜らせられるんだとか。その名のとおり地獄の底まで餌をお届けしますって感じか。

 ということで、今時の深潜りするクランクをいくつか買ってみた。ダイワ「スティーズクランク5」は5.2m、デュオ「レアリスクランクG87 20A」は6m以上、デュエル「バレットクランク7+」は7m以上の深さをキャスティングで狙えるというカタログスペックになっている。写真一番上が大きさ比較においたマッドペッパーマグナムで決して小さくはないルアーだけど、潜行深度5m越えのビッククランクがいかにデカいかおわかりいただけるだろう。

 さて投げてみよう、ってなってさすがにこいつらは普通のバスロッドクラスの道具立てでは投げられん。バレットクランクとか2oz(≓50グラム)クラスであり、当然それにみあったデカいリップとなれば引き抵抗もかなりのものが想定される。まあ、我が家の”蔵”にはいろんな道具が備蓄してあって、なぜ買ったのか本人も全く憶えがない、トラウト・サーモンロッドではない、30LBクラスのガチムチのサーモンロッドが1本転がってたので竿はそいつで行く。フェンウィック「ランカーギアプラスLP89CH-2J」、8.9フィート、ルアーウェイト28~70g、ライン15~30LB、グラスベースでバットにグラファイトを重ねてあるという太く頼もしい剛竿。リールはパーミングカップの80年代初頭モデルのABU「アンバサダー6500C」、ラインはとりあえすは着底とかの感触の分かりやすさと潜りやすさを重視して、2号のファイヤーライン。リーダーはフロロ8号に先っちょザイロンで耐歯ズレ処理。

 ぶん投げてきました。単純明快で深く潜るためにはデカい潜行板であるデカいリップが必要で、それを受け止める土台である本体もデカい必要があり、設計で多少巻きが軽いとか、飛距離が出るとかは味付けできるにしても、ほぼデカい本体とそれに見合う面積の広いでかいリップが機能を決めている。結局5m強の水深のポイントでぶん投げて巻いて底がとれたのは、一番デカいバレットクランク7+だけだった。まあカタログスペック通りの順番でもあり、そう考えると潜る深さはある程度そのルアーの持つ能力で違ってくるので、事前にどこまで潜るか知っておけば、水深にあわせて底から1mのちょい上を通すとかの小技もできるように思う。ただ9フィート近い長竿でぶん投げるのは結構しんどい。バスロッドが8フィートぐらいまでしかないのは、初期の”フリッピング”ではそれ以上の長竿が使われてリールがほとんど意味のないものになってたので、スポンサーがそういう投げない釣りをいやがったのかレギュレーションで長さ制限したからだと思うけど、実際問題デカいバスルアーを投げるのに使われている7~8フィートの竿は体力的には正しい選択なのかも。とはいえ1日投げ続けるような釣り方するわけではなく、まずめ時のせいぜい2時間なら頑張って投げろって話だろう。

 にしても、7m以上潜るというバレットクランク7+で5mから6mぐらいが限界というのは、やはり”ワシの釣りの現場”においてはカタログスペックほどは潜ってくれていない。ないならあるもので勝負するんだろうけど、バレットクランク以上に容赦なくデカいリップがデカい本体からつきだしているクランクが、本場米国にはあるようで、ワシの大好きなピーナッツの親元であるストライクキング社の「エクストラディープダイビングクランクベイト10XD」が25フィート(7.62m)以上もぐるよってなってる。巻くのクッソ重そうではあるけど、お値打ちの出物があったら確保したいところ。ちなみにバレットクランク7+は新品で買った。入手も楽だし5m超のワシの主戦力と考えちょります。

 なんとか、他に深い海の底の一定の棚を派手なアピール力のあるルアーを引いてくる方法がないものか?と考えるんだけど、シンキングのプラグでさらに潜っていくルアーはどうや?って考えると、ちょっといけそうにも思うけど、そのルアーの通せるドンピシャの深度ならいいけど、さらに潜って行ってしまうと、底の砂にリップ突っ込ませてつんのめってまともに動いていないような状態になりかねない。フローティングなら止めりゃ浮いてくるし引く速度で調整もできるけど、シンキングで5m以深にドボンと沈んでくれるようなルアーを一定の棚引いてくるってのはどうにもイメージできない。船使って良いならそれこそダウンリガートローリングで、動きの良いフローティングミノーとか引いてしまえば良いのでやりようはあるけど、陸っぱりだと、いまのところディープクランクで護岸に膝ついてグリグリと男巻きするのが一番楽かな。ということで引き続き投げて巻きつつ釣り場で考えるんだろうなと思おもっちょります。

2024年9月7日土曜日

マイニューギアりました!

 「ギアりたい〜〜〜 めちゃくちゃマイニューギアりたい〜〜〜!!(by後藤ひとり)」とワシの中の承認欲求モンスターが暴れるので、最近手に入れたブツの紹介です。 

 まーたなんか買ってやがる。って話ですが、れいによって説明させてください。お願いします。

 まああれです、いま”根魚クランク”てなことをやってて、ベイトに16LBナイロン巻いてグリグリ巻いてるんだけど、我が家にあるベイトってボート根魚や雷魚釣りで使った丸アブの6500番代が多く、もうちょっと軽いのをというのと、海で使うのに樹脂製本体だと腐食の心配が少なくすんで良いなと、学生の頃並行輸入品を買ったABU「アンバサダーMAX」というのを引っ張り出してきて使い始めている。”アンバサダーLITE”系の電磁ブレーキ版の機種で、正規輸入品では「LITEスペシャル」「アンバサダーマグプラス」とかいうのが近い仕様のようだ。軽くて腐食に強い樹脂本体で電磁ブレーキ、”ウルトラキャストデザイン”で、投げるときレベルワインダーはスプール回転と連動しない分離式、スプールは軸と分離して回る。クラッチはサムバー方式。とてもシンプルだけど無駄がなくて、久しぶりに使ってるけど、ワシ遠心ブレーキの機種の方がなじみがあって「マグはイマイチ」と昔は思ってたけど、不思議なことに、慣れてきたら軽いのも使い心地の良さにつながってるけど、投げるのも良い感じに投げられるようになって、大きめのクランクとか気持ちよくぶっ飛ばしている(当社比)。スピニングで投げるのとはまた違う味があって楽しい。もともとLITE系は丸ABUとかに比べたら安かったけど、こいつはさらに並行輸入品ということで新品で7000円ちょいなだったように記憶していて、若い金がない頃に買った道具って、吟味して選んだだけあって安くても良いのを買ってた気がする。1980年代の今は昔。

 で、メインのリールとして使っていると、どうしても予備機か予備スプールがほしくなってくるというのは、みなさんご理解いただけるだろう(かな?)。仕方ないですよねウン。というわけで、LITEスペシャルあたりの中古をネットで安いのないか探してみると、実用性抜群の割に人気がないのか相場はお安い。まあアンバサダー好きな層はワシもその傾向あるけど丸ABU買うだろうし、非円形の電磁ブレーキのベイト買うなら日本製買うよねってことだろう。こりゃ狙い目である。安っぽい直接印刷した銘が消えてたりする見た目アレな個体だと、だいたい5千円以下ぐらいが相場。「銘なんて飾りです、マニアにはそれがわからんのです」って感じで、銘は結構格好いいのがついてると気持ちよく釣りできるのでおろそかにしてはならん要素だろうけど、安いのなら剥げててもワシャ許す。ということで、文字が剥げはげながら、箱と袋とオリムのカード付きの「アンバサダー”ブラックマックス”」というのがちょうど送料込み3500円程度で出てたので、スルルのポチチで確保とあいなった。「フックセットボタン」「フリッピングスイッチ」といらんものが付いているけど、シンプルなLITEスペシャルは手頃な出物がなく、安いしまあいいやということにした。邪魔ならエポキシで固めて水が浸入する穴ふさぎついでに使えなくしてしまえば良い。で、あんまり細かく写真チェックせず現物が来て驚いたのは、こいつオリムの設定した希望小売価格22,200円という高級機種で、上飯田釣具さん頑張って値引きしてるけどそれでも13,300円というワシには似合わんぐらいのお高い逸品。ボールベアリング3個も入ってる。ベイトでスプール軸の2個以外にどこに入れる必要があるのか全くよくわからんけど、この頃からボールベアリング数が多いのが高級品とされるようになってたんだろうな。アホクサ。

 我が家に来たからには使う前にまず分解整備がお約束。外観的にはMAXみたいなツヤ消しじゃなくてツルンとした表面で印刷が乗りにくそうだけど、形は左手の親指を置くくぼみがもうけられている程度でほぼ一緒の形状。ハンドルもおんなじでこのハンドルはつまみやすくてワシは好き。ハンドル側の上にポコッと出ているのがフリッピングスイッチと見せかけて「フックセットボタン」という謎の機構。フリッピングスイッチはハンドルに隠れてメカニカルブレーキの下あたりに地味にON、OFFスライド式のが付いている。

 良いじゃんこれ!って思ったのが、ブレーキ側の蓋が、ハンドル側の、樹脂製でつまめる頭にしてあるネジ2本を外すと外れて、スプールが外せるところ。

 ベイトリールの普段の整備って、海水浸水させない限り、ずぼらなワシは、一番海水がかかるレベルワインドのグルグル棒と、スプール軸とベアリング、あとスプールエッジへの注油ぐらいしかやらんわけだけど、手でネジ外してカパっと蓋開いてスプールが引っこ抜けるのは整備性良好でよろしい。さすがに今更こんなマイナー機種のスペアスプールだけ手に入らんだろうけど、売ってる当時ならスペアスプール体制組んだら戦闘力高かっただろう。MAXのスプールと共有できるかそのうち試したいけど、次に説明する謎の「フックセットボタン」との関係で互換性はやや怪しいところ。

 でその「フックセットボタン」の仕組みなんだけど、右の写真見ておわかりいただけるだろうか?

 左下のスプールに見えている、ピニオンギアに填まる爪の金具の外側円周上に歯車が付いていて、これに「フックセットボタン」から伸びている金具がかかることによって、ボタンを押した状態だとスプールがロックされるという、きわめて乱暴な機構である。いやフルロックは道具にも体にも悪いでしょ?米国でも売ってた機種なんだろうか?日本の釣り人にはやたらドラグをフルロックしたがる人種がいて、そんなことしたら竿立たんからのされるだけだろと思うんだけど、フッキングの時にドラグが滑るのが気に入らん人用なんだろう。ワシャ正直いらん。昔のリアドラグの使い方として、堅めに締めておいてガツンとアワセてから、ライン切られないようにドラグ緩めるってのがあったと「リールの歴史2」で読んだけど、海で最初強めのドラグだと一気に走られたら怪我の元なのでワシには全くいらん機能。「たとえラインを切られようともこれ以上は行かせられん」っていう状況で竿を魚に向けてフルロックとかで使うか?親指でスプール止めるので足りる気がしてならん。まあ、押し続けてないとロックしないので危なきゃ指はなせばいいだろうし、機構自体は単純で整備の邪魔ってほどでもないし使わんだら良いだけの気もするけどな。ボタンから浸水するようならエポキシで埋めてまえだな。MAXとのスプール互換性はこのフックセット用の歯車が邪魔する可能性がありそうに思っちょります。とはいえ同じような感覚で使えそうな予備リールが手に入ったのは運用上非常によろしい。

 で、ハンドル外してギア側の本体蓋を開けると、良いニュースと悪いニュースがあります。
 まず良いニュースは、逆転防止がおっさん世代のアンバサダー原体験で、外したは良いけど、どう填めれば良いのかわからなくなる青銅板で歯車を挟む方式で、瞬間的逆転防止機構にまだなってません。メインギアの下に入ってるのが分かるかな?この青銅版をちょいと広げて歯車挟んで、ギアと同時並行で逆転防止のドックを棒に刺してやるというお作法を、当時のバス少年たちはネットもない時代だから四苦八苦して学ぶというのが通過儀礼だったんですね。まあ、ベイトの場合瞬間的逆転防止機構が入ってても入る位置がハンドルの軸とかでスピニングのローター下のような浸水しまくる場所じゃないし、ローター戻してベールの位置調整なんていう上級者がやってるようなこともしないからスピニングに入れるより実害は少ないけど、F師匠はライギョ釣ってて、瞬間的逆転防止機構の丸ABUで思いっきりアワセ入れたら、ワンウェイクラッチのローラーが、締め付けるスリーブの表面をガリガリに削ったそうで「瞬間的に止まって遊びがないなんて、誰がどういう理由で欲しがってる機能なんだろう?」って不思議がっていて、逆転防止はやっぱり昔ながらの青銅板付きの爪でがっちり止める方式が信頼できると言っていた。全くそのとおりだと思う。
 で、悪いニュースはギアの上ハンドルの根元に銀色の部品が填まってるのが見えると思うけど、これボールベアリングです。ここに必要か?スピニングでボールベアリングを入れる優先順位を考えると、1にロータ軸のギア(ピニオンギア)で2がハンドル軸のギア側、3はハンドル軸の逆側って感じだけど、そもそも低速機ならボールベアリング0でもなんにも問題ないことは経験済み。高速機でローター軸にボールベアリングが入ってないと重いのは、この位置のボールベアリングが錆びたときに経験済みなので、入れた方が良いんだろう。と同時にハンドル軸には耐久性とか考えなければボールベアリングなくても大丈夫なのは、その錆びたボールベアリングをハンドル軸側に回したときにも経験しているし、大森スピニングの多くの機種でブロンズブッシュしか入ってないけどなめらかで何の問題もないことからも体験的に知っている。
 ベイトリールでもハンドルの軸にはボールベアリングいらんだろ?ハンドル周りはそこそこ防水性あるので、錆びそうな場所ではないからあって困るほどじゃないけど、ハンドル1回転するときに1回転しかしていない低速回転の軸にボールベアリング入れてもあんま意味ないだろ?まだ5.1:1に増速されているからピニオンギア周りに入れるなら分かる。実際にはスピニングみたいに回転軸を90度変えるような効率の悪い機械じゃないので、5倍速ぐらいで巻き取り時にピニオンギア周りにボールベアリングが必要かっていえば、実際なくて困ってないしいらんのだろうけど、ハンドルに入れるよりは役に立ちそうに思う。投げるときおもいっくそ高速回転するスプールにボールベアリングが入ってるのは意味があると思うけど、それさえべつにブロンズブッシュである程度はやれるって話で、この時代あたりからおかしくなり始めた”ボールベアリングの数が多い方がエラい”っていうアホな信仰は令和の時代にもなっていい加減やめろって心底思う。
 あとギア側蓋開けて思ったのは、この頃のベイトリールから、いわゆる”メカプレート”方式でハンドル側にフレームと蓋の間にギアやらクラッチやら乗っけた金属板を入れて組みやすくしている構造をやめて、フレームに直接ギアやらクラッチやらが乗ってる。丸ABUは最近?のでもメカプレート方式蹈襲なのでパカッと開けてちょっと新鮮な感じがした。

 まあ後はベイトはだいたいそんなに複雑じゃないしで、フリッピングスイッチもオンにするとクラッチがカチッと山を越えるまで上がらないように押さえてるだけの単純な構造と判明して、使わんけど邪魔にもならんなという感じでサクサクと分解していく。ちょっと困ったのがメインギアの乗ってる台座と、平行巻のグルグル棒が抜き方が分からんかったので、抜けるところまで抜いてティッシュでふきふきして新たにグリスなりオイルなり注しておいた。どなたか外し方知っておられたらご教授よろしく。

 ドラグが古いABUによくある大きな土星の輪っか状の革っぽい質感の1枚ワッシャーなんだけど、ペン純正グリスに塗り替えしたら格段に滑らかで調整幅もあるドラグに仕上がった。ギアにカパっと填めて上面だけ滑らせて使う構造なのでひっくり返して理屈上新品の面を使ったのも要因としてあるのかもだけど、今時のグリス類はなかなかに優秀な気がする。

 今回樹脂製本体なので金属部品だけ青グリス(ギアとドラグはペン純正)塗り塗りで、ギアの入ってる方は当分開けなくて良いようにグリスシーリングしておいた。スプール軸周りはベアリング含めオイルで仕上げ。
 MAXはシーバスジギングとか海でも使ってたので、今年使うことになって久しぶりにパカッと開けたら意外なところが錆びてたりした。電磁ブレーキの磁石は当然鉄系なんだろうけど、これが海水はいりそうな場所でもないのにスプールエッジあたりから浸水したのかちょい錆びてた。まあ非接触型のブレーキなので錆びても磁力が生きてたら良いと言えば良いけど、道具錆びさせるのは当然恥ずかしいことなので、今回こいつのマグブレーキの磁石にもグリス塗り塗りしておいた。
 逆転防止の爪以外にも、フリッピングスイッチの向きとか凸凹してるところの組み合わせ方とか、組み方は多少パズル的要素はあれども、ちゃんと分解しながらデジカメ写真撮っているので、分からなくなったら写真で確認して無事いっちょあがり。

 よっしゃ、新しい道具揃えると、釣りに行きたくなるっていう衝動が生まれる。使いもせん道具を積み上げるのは、病気なのでしかたないとはいえ不健全で、今回のような使う道具を買うのは必要経費で良い投資だったと書いておこう。早く使ってみたい。