2020年8月8日土曜日

ダルトンさんの特製


 はい、前回引っ張った謎のスイッシャーの正解はダルトンスペシャルでした。
 ちゅうことで、ルアー図鑑うすしお味第42弾スイッシャー編の後半戦はダルトンスペシャルを中心にあちこち横道それつつ行ってみよう。
 1982年に出版された「井上博司のブラックバス攻略法」ナツメ社において「1930年、P・ダルトン氏がが開発した伝統あるトップウォータープラグ。」等と紹介されていて、御年90歳のお爺ちゃんルアーである。アメルアの水面系にはこういう歴史ある渋いルアーが結構あって、100年生き残ろうかというその実力と実績は、なんか”見た目それっぽい”一瞬話題になって流行するけどすぐ消える”泡沫ルアー”どもとはモノが違うように思っている。
 その長い人生(ルアー生か?)は山あり谷あり紆余曲折があったようで、1998年に出版された地球丸の「バスルアーカタログ」において「フロリダ・フィッシング・タックルから遍歴を経て、ルーハーとブランドは変わっても、残り続ける大傑作」と紹介されていることからも分かるように、比較的最近まで生産・販売されていたこともあり、時代と共に販売する会社やブランド、生産地やらが変わっていて、頭の方の下あごを削った独特の形状は不変なれど、時代によって味わいというか率直に言ってデキが違ったりする。
 まあ主に塗装のグチャッと下手くそな時代があって、そういう時代のモノは塗装自体は得意の黄色に白のツートンカラー”紀伊色”に再塗装してしまえばいいっちゃいいんだけど、塗装がグチャな時代って、強度とかの構造的にもヘチャじゃないだろうな?っていう疑念が振り切れず、できたらしっかりした時代のを相応の価格で買いたいなというところ。
 今わりと手に入る、一番しっかりしていたであろう時代のは80年代の”バラクーダ社”なのか、ひょっとすると前述の「井上博司のブラックバス攻略法」では”ダルトン社”製となっているので”バラクーダ”はブランドなのかもしれないけど、とにかく商標上の”バラクーダモノ”だけど、これも実は後述するようによくわからん細かい経緯があるようにも思う。
 バラクーダブランドのその後、ルアーメーカーの統廃合の流れの中で、ニップアイデディーやバスオレノが”サウスベンド社”からハスルアーとかのスプーン作ってた”エバンス社”を経て最後”ルーハージェンセン”に90年代当初ぐらいに移籍するんだけど、同時期ぐらいに”ダルトン勢”もバラクーダからルーハージェンセンが引き継いだんだと思う。バスオレノとかは日本でも人気ルアーなので、そのへん調べれば日本語のサイトでも紹介されていると思うんだけど、そう、実はダルトンスペシャルは日本じゃあんまり人気のないスイッシャーであり、日本語サイトでは詳しい移籍の状況とか年代ごとの見分け方とかに辿りつけなかった。
 本国米国の英語サイトなら探せば”ダルトン沼”に深く潜っているマニア氏のサイトとかあるんだろうけど、英語苦手なので、よう探さんかった。ダルトンには他に「ダルトンツイスト」というジッタースティックみたいなルアーもあって、ずっと木製という渋いルアー達に愛好家がついても良いようなものだけど、日本じゃ日陰者である。ヘドンモノやヘルレイザーあたりは経典「ブラックバス釣りの楽しみ方」とかで則さんたちが絶賛しているし、結構本国でも地味なはずのミローの「サーフェススピナー」も「道楽」の山根氏やら「ズィール」の柏木さんやらが褒めたたえているなど影響力のある”仕掛け人”たちがある種”宣伝”していたので日本じゃ人気者だけど、そういう仕掛け人の後ろ盾がなかったダルトンモノは実力も歴史も雰囲気もあるのに日本じゃあんまり人気ないのである。
 そのおかげもあって、ダルトン安い。デキの良いバラクーダモノでも箱入りで2千円前後と値段がついていない。ヘドンの人気ルアーの80年代のとか状態良ければ万札飛ぶからね。かつ、やたらと中古でルーハージェンセン時代のが安く売ってて、ボロめの個体とか500円切るような値段で買えたのもある。
 しかしながら、この”ルーハーモノ”が細かく仕様変更が繰り返されているようにもみえ、一部”サウスベンド→ルーハー移籍組”のバスオレノとかとも共通するのかもだけど、どれがどの時代にどこで作られていて、どの時代のを避けるべきか?っていうのが結構複雑怪奇。
 逆に80年代”バラクーダモノ”以前のにはネットオークションとかではお目にかからないので、”ダルトン社”やら”フロリダ・フィッシング・タックル社”時代はいつだったのかとか、他のブランドとかで出てたこともあったのか?なんてのは分からないけどとりあえずは無視しておいて実害はなさそう。

 買いまくって、入手したダルトンスペシャルとネットオークションやらで売ってるあるいは売れた個体の写真等で確認していくと、概ね”バラクーダモノ”は80年代いっぱいまでで、特徴としては、
 ①緑の箱にツネミっぽい日本語シール(シール無しもある)、②アゴに頭を上にして「DALTON SPECIAL」「DALTON SPECIAL CLEARWATER」の刻字ありあるいは「無銘」、③5/8オンス以上のモデルのペラは曲線ペラで「バラクーダ」の刻印有り、④フックはイーグルクローっぽいネムリの入ったハリ先のもの。
 という感じで、塗装が綺麗だったり凝ってたり、ペラの「バラクーダ」の刻印も凝ってて格好いい。
 少し小さい3/8オンスのものは単純な形状のペラで、この場合ルーハー時代とかとペラでは区別が付かないんだけど、箱入りじゃなくても個体数みておけば、②の刻字の特徴でだいたいあたりをつけて、あとは塗装が綺麗か凝ってるかっていう”顔”で判別がつく。
 買ったのは3/8オンス中心なんだけどバラクーダモノと判断したのは2個。
 銀ラメの凝った塗装には刻字しにくいのだと思うけど無銘となっている。5/8オンスなんだけどペラは単純な形状で元々そうだったのか変えてあるのか不明。

 フロッグカラーのは、テツ西山氏監修・翻訳「改訂版ルアー&フライフィッシング アメリカ流淡水魚釣りの全て」ブティック社の英語版初版が1985年とちょうど80年代で、その中で”プロップベイト”の一つとして写真に乗ってるのが同じカラーで、ルーハー時代の塗り方とは配色が異なることからも80年代モノと判断している。上がルーハーモノ、下がバラクーダモノ。

 箱入りのが手に入れば、箱に様々な情報が記載されているし、塗装とかの目視した感じも分かるので2千円がとこだして、箱入りポチッと買っちまおうかと思って、ふと「なんかこの緑色の箱に見覚えあるような気がする・・・」と思って蔵をゴソゴソやったら、出てきました箱入り新品の14gは「格好いい刻印入りのペラのが1個欲しいのアタイ!」と狙ってた5/8オンスだと思う。箱カビてるけど中身は大丈夫。買った記憶ない耄碌ジジイだけど、たぶんどっかの釣具屋の棚で見つけて”エグった”んだろう。値札は1700円となっていて貧乏な80年代のバス釣り少年時代には買えなかっただろうから、就職してから買ったんだと思うけど「エラい、よく確保しておいた!」と昔の自分を褒めておきたい。

 これがペラの刻印。格好イイっしょ。
 ちなみにこの個体は刻字無しの無銘で普通の色でも無銘もあるようだ。
 箱書きやっぱりためになる情報満載。
 この時代の製造元は「Marine Metal Products Co.,lnc.,1222 Range Ave.,Clearwater,Florida 33515」とあることから「マリンメタルプロダクツ」社というところだったようで、ダルトンスペシャルのほかにダルトンツイスト、バラクーダリフレクトスプーン、ベイトセイバーとスーパーセイバーエアレーションシステム、フローティングフィッシュネットの製造元だと明記されている。
 刻字に「CLEARWATER」の文字が入るのがあったので、なんのこっちゃろ?色によって濁り水用と澄み水用の違いでもあるんかな?と思ってたけど、フロリダにそういう地名の場所があるらしい。フロリダの透明な水の流れる地で作られていたのかと思うと、紀伊半島も透明な水が流れる地なのでなんか釣れそうな気がしてくる。
 会社自体は釣り具製造業というよりは、会社名からして船用の金属艤装製造会社的な響きがあって、船用の活魚水槽の製造あたりが本業で、まあ土地柄釣り好きな社長さんとかで、バラクーダリフレクトスプーンを作ってたバラクーダ社がダルトン社かフロリダ・フィッシングタックル社からダルトンモノの商標権買ったのを、さらにまとめて買ったんじゃないかと想像している。
 ちなみに箱の中に「発売50年の品質」的なことが書いてあるので、1980年以降の製造だと分かる。

 でもって、次かどうか不明だけど80年代終盤の製造元は「GENUINE CRANKBAIT CO.」という所のようで、ネット上でダルトンツイストのカップにバラクーダの刻印がある個体の腹に横書きで会社名と製造年月日を表すとみられる「9/15/89」の刻字が認められた。おそらく商標と一緒にバラクーダ時代のカップや塗装用の型とかも譲り受けたのだろう。


 っていうのが存在すると同時に、アゴ下にテール側上にして「DALTON SPECIAL」か「DALTON SPECIAL CLEARWATER」という刻字が認められるものもネットオークションで売られていたものには散見され、クリアウォーターの刻字が残っているのはおそらく刻字用のマスクごと譲り受けたとみられるので、GENUINE CRANKBAIT社の前か、あるいは同時並行で製造販売していた別の会社があったのかもしれない。
 この「アゴ下にテール側上にしてルアー名」モノの塗装がグチャッと下手クソである。買った1/3オンスの個体の目を見て欲しい。ダルトンの目は書き目で大きいのが伝統なんだと思うけど、その目がグチャなのはどうかと思う。ダルトンさんが泣いてるようだ。書き目は円筒状の棒に塗料を盛り上がるぐらいにつけてから判子のようにポチッと押して塗装するんだけど、押すときに手が震えてしまってる。ついでにいうなら刻字もズレてクリアウォーターが読めなくなってる。
 多分、80年代終わりころから、人件費の安い新興工業国に製造工場を持ってったり下請けさせたりっていうのがルアーの世界でも世界的な流れになっていて、そういう本国じゃないところで不慣れな工員というかパートのオバチャンが、ポチッと上手に目を入れられなかったり、エアブラシ塗装の時のマスク掛けが上手にできなくてズレてしまったりしたんじゃなかろうか。

 というような、80年代終わりのごたごたをくぐり抜けて、最終的には販売元は「ルーハージェンセン」ブランドに落ち着く、アメリカのルアーメーカーの再編では、群雄割拠の小規模ルアーメーカーが、もともとレーベルの親会社的なプラスチック会社に吸収されていった”プラドコ社”(エビスコ社傘下)と、エバンスやらダルトンやらの金物系・ウッド系をまとめた感じのルーハージェンセン社に加えストームともくっついた”ラパラ社”、ラインメーカーでガルプシリーズで大当たりしたバークレイを母体としABUガルシアやらPENNやらシェイクスピア、ハーディーまで飲み込んだ”ピュアフィッシング社”あたりに収束していき現在に至る(註:再編状況舌足らずだったので8/9修正)。
 確実にルーハーモノと特定できるもので一番古いのとして「”DALTON SPC”3/8OZ。F0728(改行)LUHR-JENSEN 12/03/92」というのを確認しているので、90年代初めにはルーハーブランドから販売されていたようだ。ただ、商標権を複数の会社が同時に行使してて複数の会社が作ってたっていう可能性は否定できない。けど、どちらかというとあちこちの会社で作ってたとしてもブランド的には”ルーハージェンセン”で売られてたのかなとは思う。
 あちこちの会社あるいは工場で作ってたんじゃないか?と思うのは、刻字の方法とかの違いで製造された年代が整理できるんじゃないかと、手元の現物とネット上の画像を見まくったんだけど、どうも同じ年代でも刻字の方式が違うとかがあるように感じたからである。とはいえ、同じ刻字方式とかの特徴をもつものは同じ工場で作ってたんだろうからデキの良いのと悪いのを選別するには有効かもしれないので、とりあえず分かった範囲でおおまかに4つに分けた。その内容は下記のとおりである。 


<類型1>腹に年代も分かる横文字刻字、例:「DALTON SPECIAL(改行)LUHR-JENSEN1999」「”DALTON SPC”3/8OZ。F0728(改行)LUHR-JENSEN 12/03/92」、90年代当初モノから終盤の1999年まで確認できた。安っぽい塗装で木目が感じられるぐらい薄くて不安に見えるのもあるようだったけど、全体的には割としっかりしてそう。もう一つ特徴としてはハリは茶バリ。

<類型2>腹に年代記号化したんじゃないかと思われる横文字刻印、例:「”DALTON SPC”3/8OZ(改行)"LUHR JENSEN"F#868」、「”DALTON SPC”1/3OZ(改行)"LUHR JENSEN"F#979」、”868”が1986年8月とは考えにくいので記号は直接年代を表していないぽい、のだろうか?これも安っぽい塗装と綺麗なのがあり、購入したモノは刻字が薄くて読めない。年代の違いかもしれないけど”安っぽい率”が比較的高いように思う。ハリはクロームメッキの安っぽいヤツ。

<類型3>腹に横文字刻印「DALTON SPECIAL」だけ。フックは茶バリで、たぶんダルトンモノ以外のバスオレノとかでも同じだと思うけど、この手のヤツは塗装綺麗で腹の白に薄くパールが吹いてあったりして、中古屋でそれまでルーハーモノとみられるバスオレノとか見つけても塗装も薄い感じで安っぽくて買う気にならなかったけど、初めて見たとき「オッ明らかに塗装良くなってるジャン」と小型のを一個買ってしまっている。製造時期は不明。バスオレノとかニップの愛好家で「その刻字なら●●年代の××製」とか分かる方がおられればご教授願います。

<類型4>無銘でハリはクロームメッキのやや安っぽいヤツ。ごく最近まで普通に売ってたのがこの手のやつで、今でも通販で在庫残ってる店があったのでいくつか箱に記載された情報も欲しくて買ってみた。
 バーコードの入ったシールに記載された情報から、箱入り3つのうち2つが97年製、一つが98年製と見られる。アメルアじゃお馴染みのメキシコ製。
 もっと最近まで製造されてたんだろうと思ってたので、90年代終盤の製造年は意外だった。釣具屋の棚で見かけたおぼろげな記憶から2000年代後半とかの印象だったけど、本国で売れずに大量在庫してたのを日本の輸入業者がガサッと買い占めてチビチビと放出し続けていたのかもしれん。真相は不明だけど。
 ”1999”年の刻字入りのと製造年代が被っているようにもみうけられた。
 デキ的には塗装も綺麗で作りも問題無さそう。かつネットオークションとかの中古市場に弾数が多くて安く手に入る。箱に入ってなければ千円しないぐらい。

 まあ、80年代おわりから90年代当初にかけて、安い人件費の国で生産するようになった時に、最初は不慣れで手が震えて書き目をグチャッとさせてしまってたパートのおばちゃんも、5年も経てば立派な”熟練工”でヒョイヒョイッと同じ塗料の量で真円にちかい目を入れられるようになるだろうし、エアブラシ使った塗装も上手になって「薄っすくお腹にパールを乗せて艶めかしい感じを出してくれ」なんていう高難易度の依頼にも「ハイハーイまかせといて!」ってなモンだったのだろう。
 よく、新興工業国の製品がデキがヘチャでよろしくない事例とかがあると「日本製の方が優秀。日本人は手先が器用で物作りに向いている。」云々というようなことを誇らしくおっしゃられる愛国者様がいるけど、そんなもん特殊な技術的蓄積の必要なごく限られた分野では否定できないのかもだけど、一般の工場労働者に求められる技術ぐらい、どこの国の人がやったって慣れたらできるって。
 米国産時代のバグリーのルアーの塗装の美しさとか素晴らしいモノがあったけど、地球丸「バスルアーカタログ」では、当時のバグリーの工場見学の報告が載ってるんだけど、アメリカ人のオバチャンがプシュプシュとエアブラシで綺麗に仕上げてた。そのバグリーもアメリカ生産をやめて一時ヘチャになったけど、ドミニカ共和国産の今のバグリーのルアーは米国時代に負けず劣らず素晴らしいデキだと個人的に思っている、ってのを以前紹介したようにどこの国の人だってちゃんと給料払って雇って教育して経験積ませたなら、美しい塗装ぐらいはわけないんだと思っている。

 という感じで、避けた方が無難なのが「アゴ下にテール側上にしてルアー名」で、狙うべきなのは、実弾としてならルーハーの無銘モノか年代がわかるやつで90年代終わりのもの。古き良き時代の丁寧な物作りを楽しみたいのなら80年代の”バラクーダ”モノ、歴史的価値のあるものを蒐集したいのなら、日本じゃお目に掛からないけどイーベイとかアメリカのネットオークションでも探して1930年物でもなんでも好きなの集めてください。
 ワシ的には実弾として考えているので、90年代後半モノを中心に買ってみましたとさ。
 日本で人気ないからといって釣る能力が劣ってるわけじゃないってのは先週も書いたとおりで、とくに紀伊半島でシーバス狙うならタダ引きしたときの暴れすぎない、今時の日本製シーバスミノーみたいなユルヨタな横揺れが非常に良いんじゃないかと自分の感覚ではしっくりきている。しばらく雨の増水もなさそうだけど、秋の低気圧とかが来たら活躍してくれると信じているところ。
 逆にトップウォータープラグとしての”首振り能力”的にはどちらかというと1箇所首振りより足の長い”走る”動きが得意なので、そのへんも日本での不人気の要素かなと思う。
 バス釣り主体にしてた若い頃にも、井上先生も激賞しているし気にはなってたけど、バラクーダモノの時代には、田舎じゃ売ってなかったし、ルーハーモノは90年代前半ぐらいまではダルトンに限らず安っぽくて、気にはなる存在だったけどイマイチ食指が動かなかった。
 それが、令和の時代になって、何の因果かしっくりきてしまい買いあさることになるとは全くもって釣り具と釣り人の縁とは不思議なものである。

 って締めくくって終わりにしたかったんだけど、火の付いた”買い物欲”が暴発して暴走してしまっているのでその症例など報告して、皆様の健康被害防止のお役に立てればとおもっちょります。
 何があかんかったって、目的のルアーを定めずにネットオークションでスイッシャーを安い順に見ていくなんていうことをやっちまったもんだから「あっ!コレ安い!!」と余計なモノを買う流れが連鎖して先月釣り具代2万円超という有様だったのである。

 まず買ったのが、「名称不明」とされてゴミ価格で売られていたグデブロッド社「シナースピナー」の小さいの、って「オイオイ、ナマジよ、”ゴールデンアイ”が特徴のグデブロッドのルアーがシール目なわけないだろ?」とネット回線の向こうで突っ込みが入っていることと思うけど、これ、ゴールデンアイといいつつ、実際には白目がオレンジの樹脂製アイがついてた、トラブルメーカーとかブラバーマウス、バンピングラインドなんかがオッサンには懐かしいグデブロッド社の”ゴールデンアイ”ブランドのルアーで間違いないと思ってる。
 グデブロッドも会社なくなる最後の方は経費削減のためか、最大のヒット作「マーベリック」もシール目にされていて、当時水面引きできるミノーをということでタイガーが結構良かったので好敵手のマーベリックもネットオークションとかで探してたんだけど、結構な数のシール目マーベリックが取引実績に出てきてたので、安いこともあって狙ってたんだけど、その時は出玉なくて購入には至らなかった。ってのがあったので目はシールでもグデブロッド特有のプラスチックボディーの内部に金属を蒸着させたような鱗模様からいってもコイツは「シナースピナー」と判断したところ。偽物安くつくるならこんな面倒な塗装の仕方はしないと思う。
 ただ、さっきも書いたようにグデブロッドのルアーといえばパッチリおめめの”ゴールデンアイ”が独特の表情を作ってたのに、その象徴的な目を捨てたのはワシでも「そら売れんくなるよな」ってのは正直思う。ある時ロッドのガイド交換が必要になってスレッドの色をあわせたいので、ガイドラッピング用のスレッドメーカーとしては世界でもっとも定番のメーカーだったので当然のようにグデブロッドので同じ色のがあるだろうと買おうとしたら、グデブロッド社潰れてたという有様。多くの釣り人が”ゴールデンアイ”じゃなければグデブロッドのルアーじゃない!!って思ったんだろうな。もちろんそれだけが潰れた理由じゃないにしてもだ。
 それ以降、ロッドのラッピングスレッドは国産の「錨印」のナイロンスレッドを愛用するようになった。ナイロンスレッドなんて横文字で売ってはいなくて「セキ糸(極細)」とかなってるのを買うと、グデブロッドのより太くて巻き上げに掛かる時間も短く済むし、厚ぼったくなるけど丈夫に巻ける。


 っていうシナースピナーなんてマイナーで弾数確保もままならんような、実弾候補でもなんでもない気まぐれのお買い物の時に、5個まとめ買いで送料無料となってたので、同じ出品者の売り物をみてバグリー「007jr」×2個、エバーグリーン社「プロップマジック75」×2個をお買い上げ。200円かそこらの送料オマケのために3千円弱の余分な出費。アホかと。
 007jrは先週紹介した「スピナー007」の小型版のペラ無しペンシル。これがお尻重心の縦浮きっぽい形状なのに水平浮き系だということだったので興味出てしまい思わず2個買っちまった。スイッシャー買おうとしたとしても芋づる式にいろいろ欲しくなるのが病気の人の困ったところ。
 動きは、首はそこそこ振るけど、ダイブするでもなし凡庸な感じで2個も買って失敗したなと思って回収のために早巻きしたら、これがなかなか良い感じで、ロウニンアジ用のサーフェスクルーザーとかストライパー用のギブスペンシルやコットンコーデルのペンシルポッパーみたいな”早引き系”ペンシルとして機能する。高速巻きすると、水面を胴の部分で切り裂きつつ飛沫を上げて左右にヨレながら走ってくれて、なかなか個性的かつ”ナブラに効きそう”な動きで、これは秋の港内ナブラ攻略とかで出番あるかもと、ボロくて叩き売りされてたのがあったのでもう一個追加してしまう始末。
 プロップマジック75は実はシンキングのスイッシャー。長年のワシの秘密兵器的な”動かないシンペン系”ってバス釣りの世界では”I字系”って呼ばれてちょっと流行ったらしく、ただ以前も書いたけど”動かんルアーは釣れても売れん”っていうのにルアーの設計者の人達苦労してたようで、なんか毛が生えてたりペラが付いてたり、ワシの自作シンペンのようなタダの棒ではない工夫が凝らされていて、ペラ付きのシンペンというかシンキングのスイッシャーって流行るとどこからでも出るようで何種類も出ていた。本体ごと回る大西洋サケ釣りの”デボンミノー”の次ぐらいにプラグとしては古いであろうシンキングスイッシャーが令和の時代に復活してて温故知新。
 どれか買ってみようと思ってたので、蛍光黄色の良い色のが2個出てたのでポチった。既にシンキングスイッシャーも流行は過ぎつつあるのか、綺麗な中古品だったけど700円かそこらで買えた。送料無料だし。
 動きはこんなもん水中を真っ直ぐ進んでペラが回るだけで想像以上でも以下でもあり得んって話だけど、ワシの自作シンペンも”安定して動かない”ようにアイを上の方に持って来てるけどこのルアーも同様であり、やっぱりプロが設計してもそうなるのかと”正解”のお墨付きをもらった気がしてちょっと嬉しい。
 でもってお次は「これひょっとして”名称不明”となってるルアーで安い値段つけられてて、欲しい人が名前で検索しても出てこないから、赤子の手を捻るがごとく落札できるのがあるんじゃね?」といらんことを思いついてしまい、ネットオークションで”名称不明”でルアーを検索してみると、そんなに甘くなくて価値のある人気ルアーが安く手に入って転売で儲けるとかそういううまい話は転がってはいなかった。うまい話は転がってなかったけど、本当に”正体不明”の謎のルアーは転がってて、安かったこともありまたポチッとしてついでに同じ出品者から安いルアーもう1個買ってまとめて送料お得感を醸し出してみたりとアホなことをまたまたやってしまった。
 オマケで買ったルアーは写真上でニールズマスター社インビンシブル・・・じゃないんですねこれが、実はダイワもその昔はコピーもの結構作ってましたっていうののルアーの代表作がラパラコピーの「バルサミノー」でコイツは本家「ラパラフローティング」のライバルであるインビンのコピーの「シースネーク」であります。新興工業国が先進国の製品のコピーから入るっていうのは何度も書くけど常道で、褒められたことじゃないけどまあ大目に見てやって欲しいところ。
 でもって、正体不明の謎のルアーが写真下。インビンシブルはそれなりに日本でも有名だったからコピー商品があるのは理解できる。しかしコイツは同じニールズマスター社でもあんまり知名度がない、それこそ井上先生の本でぐらいしか紹介されてるのみたことない「スペアヘッド」のコピーなんである。しかも本家のようにバルサじゃなくてプラスチック製。


 鰓の張りだした独特の形状と全体的な体型からスペアヘッドのコピーなのは間違いないけど、なんでまたこんな渋いところを真似しようと思ったのか?実によく分からん代物。コピーモノといえば我が国ではコーモラン社が有名で、往年のコーモラン製コピールアーは”安い”その分ハズレ引くときがある、っていう低い品質で鳴らしたものだけど、コイツは妙に良くできている。プリズムのシール目の表情とかクランクベイトっぽい太めのミノーな感じとか、ヤマリア社のザファースト7センチを連想させるけど、リグが一般的な8管ではなくていわゆる鉄板リグになってて、あんまり国内でこういう作りをするメーカーってないはずで、かつ作り悪くないんである。
 実は本国フィンランドではニールズマスター社はプラスチック版の自社ルアーも出してたりするんだろうか?そんなわけないよね。

 フィンランドでコピールアーで鉄板リグとなると、1社思いつくメーカーがあって”OPM”社といって、エビスフィッシング扱いで90年代にワゴンで売られていた安ルアーのメーカーなんだけど、これがフィンランド製で同国の雄ラパラ社のミノーのコピーも作ってたけど、オザークマウンテン社(そういえばここもルーハーに合流組か)のスイッシャー「ウッドチョッパー」とかABU社「ハイロー」とかマンズ社「レザーバック」っぽいクランクとか選定基準がよくわからん渋いところをコピーしていた。そのレザーバックっぽいクランク、写真の「ミニポットベリー」が鉄板リグなんだけど、今回買った謎ルアーとは塗装の感じとかが違うんだよな、何というか謎ルアーの塗装は日本っぽくて、OPMルアーは素朴な北欧風の塗りだったんだよな、とは思うけど90年代からルアー作って生き残ってるとしたら、パートのおばちゃんじゃないけど塗装技術も上がってこのぐらいの塗りに変化しててもおかしくはないか?
 あと考えられるのは、日本と米国以外で北欧ルアーが好きな国といえばオーストラリアで、豪州なら丈夫な鉄板リグなのも納得だし、黒金系のカラーは彼の地のバラムンディー狙いでは鉄板カラーだし、細かい所だけど一部3重に巻いてある丈夫そうな設計のスプリットリングが、豪州を代表するルアーメーカーであるハルコ社のルアーにも見られたので豪州産ってのもありえるかも。
 いずれにせよ、よくわからんルアーなので真相を知る方からのタレコミ情報をお待ちしています。

 今回久しぶりにルアーを買いあさってみて、同じ名前や形を持ったルアーが販売元やら生産国を変えて作り続けられていく様を俯瞰して眺めることができたように思う。時にはコピー商品のような仁義に反するブツもある。でもそれも含めた混沌としたグチャッとした世界がルアーの釣りの面白さを形作っている一要素のような気がする。
 よく偏狭な原理主義者が、開発当時の会社の製品のみしか認めないとか主張しがちだけど、ワシャあんまり気にしてない。品質が悪すぎて使用に耐えなかったり使う気が起こらないのは困るけど、例えばラパラなんて「フィンランドモノしかダメだ!」っていう人もいるだろうけど、アイルランドモノでもエストニアモノでも”ラパラ品質”は守られていたと思うし、釣れれば良いってもんでもないんだろうけど間違いなく釣れたので、どこで作ってようとラパラはラパラだと思っている。アメリカ資本になってアメリカンなプラスチックルアーとかもラパラブランドで出すようになったけど、それも時代の流れであり許容できる。それでラパラブランドが生き残っていつでもラパラの定番ルアーとかが手に入るのなら大いに結構。意欲的に新作世に問うてくれてフラットラップのような傑作が生まれるならなお結構。
 お気に入りのルアーを作ってた会社が潰れてなくなるのは実弾が補充できなくなるので非常に困る。そういう時に商標権なり設計図やら金型やら引き継いで別の会社が作ってくれるならとても助かる。”忠さんスプーン”のセントラルフィッシング社が忠さんが亡くなって当然無くなったんだけど、いまでも”忠さんスプーン”は広島のアートフィッシングさんで作られていて購入できる。ありがたいことである。
 
 今回買いあさったダルトンスペシャルもダルトンさんが開発してから、永い年月をいろんな会社がいろんなところで製造して販売してきた。時代や製造元によって味わいは違うしヘチャなデキのものもある。でも”ダルトンスペシャル”というものを永らく引き継いできたのは事実でダルトンスペシャルをダルトンスペシャルたらしめている根幹はどの時代のモノにも変わらずあったのだろうと思っている。1つのルアーに込められた魂が経てきた歴史を垣間見た気がする。なかなかに味わい深いことである。ルーハーさんまた適当な時期をみて復刻再販してください(統合先のラパラさんにお願いするのが筋か)。
 
 時代が変わって、経費削減や市場の要望を受けてとかで細かなところでは変わっていくにしても、ルアーやあるいはブランドが販売元や製造元が変わってでも生き残ってくれるのは嬉しいことだとワシャ思っている。メイドインチャイナになってもPENNスピンフィッシャーが黒金で、自分でパカッと開けて整備できるっていうだけで、それはまごう事なきスピンフィッシャーだとワシャ思ってしまう。是非第3世代の9500SSで糸巻き量が足りないぐらいのサメとかにたどり着いて、第5,第6世代の”10500”のお世話になってみたいモノである。その頃には第7世代かもしれん。

 変わっていくのをどこまで許容できるかっていうのは、まったく個人の好みで異なるはずで、でもグデブロッド社が”ゴールデンアイ”ルアーの目をシール目にしたのはいくらなんでもダメでしょうっていう、その時代の多くの釣り人が感じる押さえるべき肝はあるんだろう。ひょっとするとその部分をして”魂”と表現しても良いのかもしれない。
 名前もブランドも引き継いでないけど、今時風に言うなら”インスパイヤー(触発されてとか着想を得てって感じか)”されてぶっちゃけパクったようなルアーなんかでも、あんまり釣り人はうるさく言ってこなかったし、そういうパクリ、後出しのルアーから名作が生まれたりもしているので、あんまり褒められたことではないかもだけど、基本的な形のルアーなんていうのは、ある種の共有財産として権利関係引っかからない程度に真似しつつもみんなで発展させていくっていうのは、まあありなのかなと、それがルアーの釣りの文化なのかなと思ったりもする。
 そのへんあんまりあからさまなパクリが大手を振るのもムカつくけど、良い塩梅におさまる程度に、”良いルアー”を釣り人が選んでいくのがセンスの使いどころなのかなと思うところ。”教祖”のお言葉やらシャブ電波みたいな宣伝文句に踊らされてばっかじゃ選球眼良くならないので、自分の目利きを鍛えなきゃダメだと思うのよねアタイ。

 結局ワシが言いたいのは「ルアーマンの皆様、良いルアーを使って楽しい釣りをしましょう。」ってことです。どうかヨロシクね。

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