2021年4月18日日曜日

君の名は?クサフグだと信じてたのに!!編

 ”生け簀”こと近所の漁港でアジ釣ってると、餌が浮子になんの変化もなく落とされる。あるいはハリが切られてて餌付けしようとするとハリが無いやんケ。ってなことを伴い、圧倒的な数をもとにした”フグ時合い”を巻き起こす、ややこしいフグ軍団が居て、小さい個体のパッと見の印象から何の疑問も抱かずクサフグだと思っていた。

 ところがデカめのを釣ると、っていっても20センチそこらだけど、なんか白斑が大きくてクサフグっぽくないので、何じゃこれって気になって調べてみると、まあこれはコモンフグで間違いないでしょうと同定できる。ところが、このデカいのと小さいのの中間的な大きさなのが釣れてくると、これはどっちだと頭が混乱する。で、写真撮って持ち帰って大きいの小さいの中くらいの比べてみると、大きさの差があるし、模様も個体差があるけど、「どれもコモンフグじゃんこれっ!!」っていうことに気がついてしまい。こんなに沢山釣ってる、日によっては本命のマアジより掛けて海にお帰りいただいている(あっち行け-ってブン投げてるけど)フグを同定できてなかったことに、非常に抜かった感があって、悔しく、ぞんざいにあつかったフグたちに申し訳なく、自分の釣りに大きく関連するこの魚たちを正しく何者なのかすら把握できていなかったのである。そりゃ名前知らん様なろくに知らん魚の対策練ろうとしたって無理だわな。

 冒頭の写真のフグたちを見て、クサフグじゃんと思った人はワシと一緒の過ちを犯しているので、悔い改めてこれからお勉強していきましょう。何の問題もなくコモンフグだと同定できる人は、間違い探し的に他のが混じってないかぐらい探してみてくださいな。

 でもって、クサフグとコモンフグの違いはどこか、同定に使うべき特徴は?ってことで、いつもの中坊徹次教授編著「日本産魚類検索 全種の同定」東海大学出版会第1版を使って見ていくと、割と早くに「背・腹面の小棘は胸ビレの前方と後方で連続する」か否かで分かれる。要するにコモンフグは体表面のトゲトゲが胸ビレ周りをグルッと一周してて、クサフグなら背中とお腹の間にトゲトゲの生えていない部分がある。っていうのが一番確実な同定ポイント。たしかにこうやって膨らんだクサフグを見ると、腹の棘が生えている部分と背中の間に棘のないつるっとした部分が見て取れるように思う。ただ、この特徴は現物があって触ることができれば鉄板なんだろうけど、過去の写真を見て表面の棘の有無を調べるっていうのは難易度高すぎて、たまたま良く写ってる写真なら使えるけど、ちょっと写真判定は難しすぎる。

 じゃあどうするか?っていうと検索図鑑にはコモンフグはあっさりと「体側面に白色斑が散在。」しかなく、クサフグも検索図鑑の樹状構造をたどっていくと「体背部の斑紋は斜走帯ではない。胸ビレ後方に1黒斑がある。黒斑に白い縁取りがない。」ってなってて、クサフグには胸ビレ後方に縁取りなしの黒斑があるっていうのは分かるんだけど、右の写真、いずれも左列クサフグ、右列コモンフグなんだけど、どちらも体側面に白斑があるし、胸ビレ後方の黒斑は、コモンフグの上のやや大型の個体では黒斑というより横縞っぽくなっているので違う気がしてくるけど、下の小さめ個体は「これが黒斑です」ってい言われたら、ハァそうなんですか、と騙されそうに思う。

 じゃあどうすんの?ってなって、今回役に立ったのはネットの情報、各種水産試験場とか水族館の解説ページを検索で見つけてきたところ、クサフグとコモンフグの違いは①白斑が背中から体側に向かうに連れて大きくなっていくのがコモンフグ、一様に小さい白点状なのがクサフグ。②目の下にも白斑が現れるのがコモンフグで、クサフグには眼下には白点等は認められない。③胸ビレ後方と背ビレ基部に黒斑があるのがクサフグで、コモンフグの場合は5本程度の横縞が生じている。となってて、典型的なのを2匹引っ張ってくると、こんな感じ。特に目の下に白斑がないのは分かりやすい。

 というわけで、写真判定もそれ程難しくないので過去のこの地での釣果写真を確認して、クサフグとコモンフグの割合。棲み分け的なモノはあるのかを調べてみた。結果、漁港内のは数匹怪しいのがいたけど、たぶん全部コモンフグ。同じように浅い沿岸域や汽水域に出現するとされていて、混ざってても良さそうなものだけど、くっきりと分かれて、クサフグは左の写真がそうなんだけど、主にメッキやマハゼ、シロギス釣ってたゴロタや砂の浜、河口域で釣れている。じゃあそういうシロギス釣れるような砂底の流れ込みで釣れたのはクサフグかなと、港内のシロギスポイントで釣ったのの写真を確認したらコモンフグだった。なぜか当地では漁港内はコモンフグ、それ以外の浅場にクサフグという分布状況のようだ。おそらく似たような生態の2種なので地域毎に状況は違ってたりして、両方混じって釣れてきたりすることもあるんだろうと思う。でもここいらでは棲み分けっぽくなっている。実際に釣ってみないと分からんってはなし。

 生態的には似たような2種とされているけど、おそらくコモンフグの方が”宵っ張り”なんじゃないかという気がしている。キス釣ってて暗くなってくるとクサフグ時合いは終了してたような記憶があるので、港内でアジ釣っててクサフグ(だと思ってたコモンフグ)がいつまでも”残業”を止めないので灯りがあるからかなととか思ってたけど、そもそも性格が違う可能性はあるのかも。まあ分からんがそういうのも気にしつ丁寧に釣っていくには、釣った魚がなんなのか?ってことぐらいはちゃんと知っておけって話だと思うので、ちゃんと見ておけよって話でお粗末でありましたとさ。

 でもって、クサフグは一部で食べる地域があると聞くけど、一般的には身さえ弱毒で食べられないフグという認識であり、釣ってもあっち行けで放り投げて海にお帰りいただくしかないんだけど、コモンフグはそこそこ”安いフグ”として食べられているようで、自分でフグの免許取るのは難易度が高いけど、近所に魚屋さんは事欠かない土地柄なので、免許持ちの人に捌いてもらうってのは有りかもしれない。20センチ以上のとか結構引きも良いけど食うところもありそうで、フグ毒は人があっさり死ぬ猛毒なので素人料理はやるべきじゃないと思ってるけど、そのあたり専門家におまかせするとどのぐらい技術料とられるものなのか?今度近所の魚屋さんで聞いてみようかしら?

 フグをそこら辺に転がして殺して平気な顔してるような釣り人もいまだに見かけるけど、フグが居るってことは、河豚が食ってる餌とかもちゃんとある良い釣り場だってことで、フグをかわしながら、どう釣果をあげていくのかなんていう技術的な部分は魚釣りの工夫のしがいのあるところだし、フグも居らんような寂しい海で釣りなんてして楽しいかねって思う。フグ軍の猛攻に戦略的撤退を余儀なくされて苦渋を舐めさせられることもままあるけどさ、それも含めて”魚釣り”ってもんだと思うので、フグも丁寧に扱って行きたいと思う。

 何も釣れやン時にフグが来てくれると魚の引きが味わえて結構嬉しいモノである。

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