2026年8月1日土曜日

阿波踊りするコメットさん

 大学時代の友人アユ君がコメット使いだったので、自分がコメットを使うことはないだろうと考えていた。リールが仲間内でかぶるのは避けたいところだし、その人とリールの関係に敬意を払っておきたい。ワシが大森好きになった最初のきっかけはアユ君が大森製作所をコメットを激褒めしていた影響で、「マイコン302TB」続いて「キャリアーNo.1」と購入。確かに使いやすくて消耗品だったベールスプリングが折れる以外に不具合が生じない丈夫さもあってすっかり魅了されていったのであった。今でも大森製作所のリールのデキの良さは何ら価値を失ってない、どころか重くて作動が不確実で濡れると困る瞬間的逆転防止機構をはじめとした蛇足を付けすぎてムカデみたいな歪な姿になってる今時の最新のスピニングリールより、スプールエッジの形状の”緩さ”とかの欠点はあるけど、基本性能のしっかりした無駄の少ない設計の”実用機”としての魅力は、ますます輝きを増しているように感じる。ワシ欠点はれいによってアレして解消する改善方法を考案・実践済みでありどうとでもなる。

 というわけで、「コメットG1」である。コメット使うことはないんと違うんかい?って自分でも思うけど、冒頭写真のように脚を短く改造した個体が安くネットオークションに出てきたので「コレって、逆転防止スイッチを切っておいてローターの下部を指で押さえて調整しながらラインを放出してやる逆転釣法用の改造だよね」と興味が湧いて、ものは試しと入札してみたらアッサリ落札。一時期5万円とか異常な値が付いてた人気機種が我が家にお越しあそばせになった。前々から、取っ払える機能を取っ払えるだけ取っ払って逆転釣法で使うためのインスプールの改造用素体をさがしていたので、現状でスプールに指が届きやすいように脚が詰めてあるならちょうど良いおあつらえ向きの個体だ、とこいつをいじってみることとした。常々書いているけど、トラブルにならないようにスプールエッジにひさしがついてたり、ふけたラインを巻き込まないように”しごく機構”がついてたりといったまともにスピニングを使えないヘタクソ向けな機能や、重くて複雑で動作が不確実で濡れたら困る瞬間的逆転防止機構や、意味不明に多いベアリングとかの、実超能力にあまり関係のない空回ししたときの店頭性能とカタログ上のこけおどしでしかない無駄機能でゴテゴテに飾り付けられた、ガキが喜んで乗るような電飾ぴかっぴかの補助輪付き自転車みたいなクソリールはダサすぎると思っているので、その逆の必要最低限な単純な機能で、足りない機能はカリスマの腕で補って釣るようなスピニングリールをと考えていたのである。これまでに、ラインローラーのベアリングを樹脂製ブッシュに換装したり、ベールワイヤー取っ払ってベールレス機にしたりという改造は行ってきて、あと取っ払えるとすれば何だろうと考えて、逆転防止とドラグだなという結論に至った。もいっちょ取っ払うならスプール上下機構だけど、クローズドフェイスリールで体験した感触ではグシャッと巻かれすぎてラインの傷みが早い印象もあり、あった方が良いとの判断になった。今回のコメットG1の改造は、ベールレス機にして逆転防止機構を取っ払い、ドラグを殺して”逆転釣法仕様”でいきます。もちろんスプールエッジはアレします。

 ということで、方針は決まってるしスプールエッジの修正とラインローラーの作成ぐらいが生じる作業で、逆転防止機能はすでに別途「キャリアーss」にスイッチ移植してしまって無いし、ドラグは滑りの悪い赤いファイバーワッシャーをドラグパッドにしてギッチリ締めれば機能しなくなるだろうし、サクサクといくと思ってたら思わぬところで不都合が生じた。この脚の状態だとフットを中指と薬指の間に挟めんがな。写真上のようにローターが近すぎてベールアームが普通に巻いてるときにも人差し指にブチ当たって巻けん。これ、フットを人差し指と中指の間?に持ってくる握りを前提にしているようで、そうすると写真下のようにスプールエッジにも人差し指は届くので投げる時のフェザリングもできるし、当然ローターの下の方に指を当てて逆回転を制御するのも容易な位置になっている。そういうモノだと割り切ってこのリールを使うときだけ握り方を変えて使うというのも考えなくはなかったけど、なんか気持ち悪くてしっくりこない感じだったので、グリグルと巻いてある補修糸を引っぺがして、添え木あてるなりなんなりして脚を伸ばすこととした。握り方にこだわりはあまりない方で、基本のサムオントップじゃない軟式庭球握りで握ってたりするけど、リールの脚の位置はさすがに許容できない感じがした。”逆転釣法”特に徳島あたりの磯釣りで行われていた”阿波釣法”で使われていた実機で歴史的な価値もあるだろうけど、まあ使うとなれば仕方ない南無三という感じで、一回解体作業に入る。”阿波釣法”はその名の通り徳島の磯釣りで行われていた釣法で、浮子だの仕掛けだのも含めた釣り方の呼称だと思うけど、象徴的なのが、竿をノされたときにラインを瞬時にくれてやって立て直すために、脚を短くして指が届きやすくしたインスプールリールのローターに人差し指をあてて回転の制御をしつつ、逆転防止は切ってラインを出すという技術で、それ様にオリムピック「トゥルーテンパー727」や今回の「コメットG1」の脚を切って溶接したり、グルグル巻きで短くしたりという改造が行われ、「リールの脚を切って短くするといっても、普通の人はなかなかできんで。ほなけん、ようする人は注文を受けてやりよった。そうこうするうちに、足の短いインスプールリールがリョービから出てきた。グレキラーっていうやけど、よう売れたな」そしてS45年にスポーツライン500LB、1000LBが登場。「あっという間じゃ。皆がLBに変わった。そら見事やった」という流れだったと「磯釣りスペシャル」で阿波釣法の生き字引である高橋康生さんがインタビュー受けている。氏の阿波釣法に関するお話は「徳島釣りの輪」主催の「阿波の釣りの夕べ」という講演がYOUTUBEにあるので、ご興味ある人は観てください。紀州勢と阿波勢のしのぎの削りあい、技術の交流で釣法が伝播していく様とかなかなかに興味深いお話です。

 で、途中に白のラインを入れてあっておしゃれだったりする補修糸を引っぺがしていくと、なかなかに面白い細工がしてあって昔の人の創意工夫に感心する。
 単純に切った脚を束ねて太い補修糸でグルグル巻きにしてエポキシかなんかの樹脂で固めてあるだけではなくて、双方にドリルで穴開けて釘を突っ込んである。釘なので片方の頭がきっちりと引っかかって抜けないし、ネジのように出っ張ったりしないので、補強としてはかなり効いているように感じた。グルグル巻きだけでズレたりしないのか?と疑問には思ったけど、まあ逆転釣法でラインテンションを自由に抜けるからそんなにギリギリとリールの脚に力が掛かる使い方はしないんだろうなぐらいに思ってたけど、これならまずズレたりといった不具合は生じないだろう。溶接となると鉄工所にでも持っていかないとダメだろうけど、このぐらいならアルミに穴が開けられる程度のドリルが一本あれば加工可能である。今も昔も、釣り人はというかホモサピは自らの創意工夫と手の技術で道具を改良してきたんだなと、その末裔として感慨深いモノがあった。
 ということで、釘突っ込んでグルグル方式をまねさせてもらう。左上の写真のように、釘を刺す穴をもともとの本体根元寄りから先の方に開け直す。使わなくなった根元の穴にはステンレス硬線突っ込んで前後挟む形にして補強にする。隙間を適当に埋めて補修糸グルグル巻いてエポキシで固める。これで、だいぶ脚の高さは確保できて、中指と薬指で挟んでも問題なく使える。ただ最初補強に入れたステンレス硬線の分が脚の後方が出っ張ってとがってしまい、使用時に時間経過とともに薬指の腹の脚が当たっている面が痛くなってしまい、当たる面が平面になるよう形状を調整した。

 本体がなんとかなったので、内外細かいところをいじるところはいじっていく。
 左写真真ん中のように、ローター軸ギア上の逆転防止のための歯車はそのままつけたままにしたけど、逆転防止のスイッチ関連、つまみと銅製の逆転防止爪を上げ下げする部品は取っ払ってあるので、逆転防止の機能はそれで無しになっている。スイッチがなくなると填まってた穴が残るので樹脂板を適当に切って接着し蓋しておいた。ドラグは本格的にやりたければ、軸にあわせた俵型の穴とスプールに固定する出っ張りの両方をもつワッシャーを1枚入れれば完全だけど、まあ簡単にドラグパッドを大森標準装備の硬質フェルト製から滑りの悪い赤いセルロースファイバーワッシャーに換装しておいた。これでほぼガチッと回らなくなるぐらいまで締められるので、実質ドラグ機能をキャンセルできる。
 ベールアーム取っ払ってマニュアルピックアップ化するのは、れいによってポリアセタールのスリーブを切り削ってヤスリがけして成型。純正のベールワイヤーをぶった切る覚悟があれば、純正のラインローラーとか使ってでっち上げるのも簡単だけど、場合によってはベールワイヤーありの自動でベールが返るフルベール仕様に戻せるように、純正部品は原状回復可能な感じで温存した。ベール反転関連とかの使わない部品は別途保管。

 スプールエッジのアレは、アウトスプールだとスプールのスカートの径ぎりぎりまで大きくしても何ら問題なさげなので、いつもそうしているけど、インスプールの場合はあんまりスプール径を大きくすると、放出性が悪くなりそうで、色々悩んだ結果、元々のスプールのエッジの径を超えないことにして、それよりやや小さい径の輪っかをはめて、スプールの上下幅にあった糸巻き幅として、微妙にひさしの付いたぐらいの形状にしておいた。実に微妙な形状の変化で、こんなもんで効果あるのかなと疑りながら投げてみたけど、思いの外ライン放出が素直で投げるのが気持ちいい感じで、スプール上下幅にスプールの糸巻き幅をそろえて、スプール上部のエッジは平面スパッとを基本にするだけでラインの放出性に関する性能はかなり向上するというのが改めて感じられたところである。

 で、概ね覚悟完了なんだけど、実際にライン巻いていじってみると、ローターの下部って、だいぶ下の方にあるので、人差し指でローター下部を押さえようとしても、指を折れそうな角度に曲げないと無理。実際にはローターのベールアームとかにガンガン当たる位置にしか人差し指は来ない。これ、リールがもう少し大きければましかと思って、試しに大森「デラックススーパー777」とかで試してみるも、キャスト時スプールエッジに人差し指が届いて、その人差し指でローター下部を押さえてローターの回転を制御とか人の指の構造からして難しい様に感じた。しかたないので、今回ベールレス機にしてしまって、ベールアームは固定状態なので、ローターの回転から飛び出たベールアームが当たるから指が痛そうだけど、ローターの回転にベールアームを緩く包み込んでしまえば良かろう、と考えてローターの外周をぐるっと薄い樹脂板で囲って、要所要所ウレタン系接着剤で止めて、ベールワイヤー支持部でネジ止めした。まあ及第点という感じで、結局ベールアームの背中とかが指に一番良く当たる。実際に逆転釣法が必要な状況になって、走る魚に対してラインを繰り出してやるときにどこまでできるか?ちょっとやってみないと分からない。

 この時点で、ローターの下部を人差し指で押さえて回転を制御っていうのは、脚を人差し指と中指で挟まないといけないのかな、という気もしていて、それだとやや当初めざした”逆転釣法”の使い手として、”阿波釣法”版コメットG1を現代によみがえらせる、っていうのからは遠ざかる。写真みていただくと、1段は人差し指と中指の間に脚を挟んだ場合で、スプールエッジにもローターの下部にも人差し指は届く(スプールエッジには届くけどラインを拾うのはやや難儀する)。やや脚を伸ばした現在の状態でもそれは容易。で、下段の人差し指と薬指で脚を挟んだ場合、スプールエッジに人差し指が届くのは問題ないけど、ローター下部には人差し指届かず、ローター上部のベールアームとかがあるあたりしか触れない。それでも、日本製スピニングのドラグ暗黒時代には、魚が突っ走ってラインをくれてやるために、小指で逆転防止のスイッチ切って、アウトスプールのゴツいベールアームの付いたローターを指で制御して対応する技も存在したわけで、やってやれないわけじゃないけど、イマイチすっきりしない結果。まあこんなもんか?

 って悩んでたら、面白いブツを手に入れて、なかなかに示唆に富むリールで良い買い物だった。阿波釣法の歴史の中でも言及されていたリョービ「グレキラー」が入手できて、逆転防止が死んでるジャンクという触れ込みだったけど、単なる爪を押しつけるバネ周りの油ぎれで、動作品に復活。写真下段のようにスプールエッジに人差し指が届きつつ、ローターの真ん中、ちょっと頑張れば下部に指が届く。なんでかっていうと、写真左上を見てもらうと分かると思うけど、そうなるように脚の位置がだいぶ後方にある設計。脚が後方で長いままだとスプールエッジには人差し指が届かなくなるだろうけど、短足仕様でその点を回避している。なかなかにリョービの技術者は「どうやって使うのか?」という目的が分かってらっしゃる。ドラグじゃなくてローター逆転でラインの出し入れ調整して魚とのやりとりをするってのも分かってるから、このリールにドラグは装備されていない。潔い。本来、ライン始め道具や人の体が壊れないように、適切に機能しなければならないドラグが”締まれば良い”ぐらいににしか考えていない程度の低い輩どもに合わせた仕様で、ドラグが”抜けている”ような抜け作リールとは全然違う。
 レバーブレーキの登場で、その役目を短命で終えてしまったあだ花的な機種だけど、釣り人達の工夫、ローカルな釣りの現場から生じた改造が基になって商品となった、なかなかに歴史を感じさせる味わい深い1台であった。けど、普段使いするにはちとデカいのよね。370g強でコメットG1が220g強なのと比べると大きいし、350g級でもPENNみたいなミチッと詰まって重いのとちがって、脚を後ろに持ってきたのもあって、長くてバランス的にも既存の竿と合わせるのが難しそう。コメット今回の個体は逆転防止スイッチとっぱらってるから、そのあたりから後方に脚が生やせないかとかも検討したけど、ちょっと現時点でのワシの技術力では難しい。まあ、とりあえず現状の形で魚釣って”逆転”させてみるんだろうな。魚釣らないことにはなんとも評価できない。

 とりあえず、なんとか形になった、阿波釣法の流れを汲む”逆転釣法”仕様のコメットG1、せっかくなので道具としてもう一働きしてもらって、魚釣るのに「無駄な数のボールベアリング」も「逆転防止機構」も「反転するベール」も「ドラグ」もなくても、投げて巻く基本性能と多少の”腕”があれば、魚釣るのに困らないってのは証明してみたいところ。こうご期待。

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