ミノーとしてはなんてことはない感じで、約10センチのやや太目のボディーに立った角度のリップが突き刺さってて、プラのミノーなんだけど形状的にはラパラCDっぽい。しかしながらはコイツフローティングなんである。太目で立ったリップとなると、タイガー・・というより後ろフックのアイの位置からいってマーベリック的な水面使いで楽しそうなミノーである。あるけど、さすがに新品袋入りで一個しか持ってないので、使う勇気がない。資料として蔵に寝てもうらうことになりそう。
趣深いのがまずは”札”の部分で、お馴染みの「YO-ZURI」表記の上に、イカを象った意匠で「YOFISHING」と記されているYO。でもって、裏面見ると海外向けも展開していた品らしく、メイドインジャパンの文字とイカマークに加えて「FOR COMMERCIAL FISHING」、つまり漁業用となっているのが興味深いところ。
ラパラマグナムとかが曳き縄漁師に使われてたってのは、日本に限らずあったようだけど、そういうプロの使う漁具として売ってますっていう方針だったのか、宣伝戦略だったのか、いずれにせよ曳き縄でガツンと良い魚を掛けても大丈夫なようにか、単にラパラを参考に素材をプラに置き換えただけなのか、ワイヤー貫通式の構造になっていて、そこはプロ仕様を謳っても良いぐらいの美点だと思う。海外に売ってた気配がアリアリの包装なので、1970年代後半ぐらいの、海外へ販路拡大してた頃の製品ではないかと思われる。ネットで同様の包装の製品を探ってみると、他にソフトベイト的なドジョウやイカが確認できた。ドジョウに関しては隠れたロングセラーじゃなかろうか?90年代ぐらいまでタチウオ仕掛け、タチウオテンヤと一緒の棚あたりで売られてたのがあったように思う。
というように70年代後半に始まったらしいヨーヅリミノーは、80年代の第2次ルアーブームのあたりで爆発的に増殖し始める。
おそらく順番的に、先陣を切ったのは以前チョロッと取りあげたLジャックミノー軍団あたりだろう。当時の(今でもか)ミノーのお手本であるラパラ軍団を、プラで再現してるんだけど、その際のヨーヅリ的解釈が独特で、そこそこの数買ってみたけど、結局はこれはあんまり頼りにならないなということにあいなった。性能的には特に問題があるようには試投段階では思えなかった。なら何が頼りにならないかというと、フローティングの中古の弾数が少なくてかつ、フローティングとシンキングの見た目での判断が難しいからである。Lジャックミノー軍団には通常のリップが付いたLジャックミノーのフローティング、シンキングがありジョイントもそれぞれあり、ラパラFマグのようなオフセットリップが付いたLジャックダイバーのこれまたフローティングとシンキングがあり、さらに金属リップのLジャックマグナムにもなぜかフローティングとシンキングがあるという、ラパラ軍団をさらにややこしくしたような軍団構成になっている。ちなみにラパラのオフセットリップのはフローティングマグナムでシンキングはないし、金属リップはカウントダウンマグナムに採用されており金属リップのフローティングはないという役割分担だけど、ヨーヅリがパクるにあたってはガン無視されている。デキ自体は悪くない。Lジャックミノーはその後反射板入れてタキオン名でも売ったようだし、オリムでも名前変えて売ったようで、ラトルの入ったレーベルミノーみたいな感じで、かつ、貫通ワイヤーのリグをここでも踏襲していて、丈夫で基本性能を押さえたミノーになっていると思う。しかし、先ほど書いたように、フローティングとシンキングの見分けが箱無しだとつかない。マグナムは目が小さいのがフローティングっぽいので見分けられるカモだけど、その他はどうにも外見ではわからん。買う前に質問するのも500円かそこらのルアーについて細かいこと聞くのは、結果買うなら良いけど「じゃあいらないです」って断りにくいノーといえない日本人なワシである。ということで結局これだけ集めて、フローティングは買い増しした分ではLジャックミノーでは当たらず、ダイバーとマグナムで一本ずつという惨憺たる結果になってしまった。シンキングはシンキングで使いどころはあるんだろうけど、ワシには今のところ用が無い。フローティングは中古市場の弾数もそれほど豊富じゃないようなのもあわせてLジャック軍団は諦めた。多分ずいぶん昔から蔵に転がっている、上の方の巨大ミノーたちもLジャック軍団の一員なんだろうな。もちろん全く使うアテはない。ていうかデカいジョイントのほうはデカさのわりに重さがなくて投げられん。それこそ曳き縄用想定なんだろう。2番目の方は7インチ級でまだ常識的(いつどこの誰の常識か?)。
Lジャック軍団より、独自性を打ちだした”ヨーヅリオリジナル”なミノー達もおそらくLジャックより後に出たんだろうけど、だとしても同時に存在したくらいのタイミングで80年代に最初の世代が生まれているのだろうと推定している。それはスイングミノー、クリスタルミノーの登場であり、そのぐらい古いのだろうというのが”金バリ”付きの個体が散見されることから推定できる。 という時期である80年代にヨーヅリは”アタックル”ブランドを展開し、バス部門では頭のおかしい奇天烈ルア-を爆誕させまくっていたけど、ミノーはタキオンやらパイクといった、反射板を内蔵しているのが新機軸なミノー達をぶち込みつつ、スイングミノーやクリスタルミノー、トビマルといった実釣能力の高い”ヨーヅリミノー”をも生み出しつつあったんだろうとみている。ちなみにタキオン買ったらコイツらもシンキングでLジャックミノーに反射板入れただけの方じゃなくて、丸っこい小さい形状の可愛いのはハリをシングルの軽いのにしたら何とか浮いた。 で、90年代真ん中になるとデュエルブランドを立ち上げて、新機軸のルアーはそっちで展開していく。1996年のカタログが手元にあるのだが、デュエルとヨーヅリでは別冊になっていて、デュエルではバスルア-として”フューズ”ブランドを前面に押し出していて、バナナボート(ペンシル)、ZZポップ(ポッパー)、今回買ったマッディミノー(ミノー)、クランクマックス(ディープクランク)、ロケットシャッド(ディープシャッド)、ジャミングバイブ(バイブ)と一通りそろえてジュニアサイズとワームもなんぼかという布陣。正直このシリーズは評判もとれず売り上げもそんなに良くはなかったように思う。海外展開ももちろんありで(米国ではフェンウィックブランドで!)、安いのでそれなりには流通しただろうけどあんま評判聞かないし、その中では良くできてるというマッディーミノーを”濁水対策ミノー”といううたい文句に期待して入手してみたけど思ったほど暴れず迫力不足だった(この個体がハズレだったかも)。しかし試し投げ中に魚が食うということが起こってしまい、ちょっと買い増し決定。ルアーにおいて魚が食うのは正義。一方、トラウト用として”アイル”シリーズがフローティング、シンキング、リップレスとこれまた一揃いなんだけど、こっちは細身でシュッとしつつもジャパンミノー伝統のセッパリ形状をやや踏襲して重心移動をぶち込み良い感じに仕上がっている。こちらはこの時期のデュエルを代表するようなシリーズになっていって、この年海でもデビューで”ソルティーアイル”が海のアイルデビューと紹介されている。で、もひとつ90年代のデュエルの海用ミノーとしてはCSミノーが一時期雑誌広告もバンバン打って売り出していた。「高性能トラッド」を謳い形状的にはラパラCDに近く、重心移動搭載したCDの線を狙ったルアーだったと思う。一時期よく売れてたけどいつの間にか消えたように記憶している。ワシの蔵にもなんぼか転がってるかと思ったけど見あたらんかった。ルアーでは良くある現象だけど、大ヒット作が長寿ルアーになるとは限らない。ぶっちゃけCDの方が釣れるから一回試してみて「こんな感じか」で終わる。次はCDを買う。釣果であれにはなかなか勝てんだろ。 一方、同96年のヨーヅリカタログには、定番のクリスタルミノー、左写真のトビマル、に加えここでアークミノーが”NEW”っと登場、ということはその前身であるスイングミノーがお役御免。あとはミノーとしてはマイナーな断面3角のデルタソード、タチウオ用の夜光3色のみのサーベルミノーはデルタソードの色違いっぽいかんじ、ってのがあって、海でもライトなルアーが流行りつつあったのを反映して、淡水用からピンズミノーがソルトっぽい色にお色直ししてピンズミノーSWとなって新登場のほか、トビマルをシンキングにして小型化していったようなエンペラーミノー系統が配色系統の違いで3シリーズも用意されていて、加えてさらに小っこいクランクみたいなこれも淡水用先行だった気がするLミノーもラインナップ。 ってのが90年代中盤までのおおよそのヨーヅリミノーの展開具合だけど、その後ぐらいから、さらに新世紀に入ると商品開発の間隔が釣り具でも短くなり、新たなシリーズが生まれては消え、また生まれしていく、トラウト用ミノーで始まったアイルシリーズに何が違うのかよく分からんけど特許技術のマグネット式重心移動システム搭載のアイルマグネットミノー誕生、そこから派生した写真のマグダーターとかいまだに九州男児御用達のようで、ヨーヅリブランドでマグダーターとしてもいまカタログモデルだし、デュエルブランドからは新生アイルマグネットTGダーターとなってでている。まあ金型一緒で鉄球が磁性タングステン球に変わったとか、そういう経費削減したお色直しはヨーヅリお家芸。アームズシリーズとかちょっと価格お安めシリーズのミノーとかピンズミノーに重心移動乗っけたなって顔してるし、クリスタルミノーも自社魔改造により重心移動搭載のマグクリスタルミノーになってたりする。と同時に重心移動無しも健在が嬉しい。クリスタルミノーは中古の弾数多いのに加え新品も買えるので弾切れ起こしそうになく安心。
そして、先進の技術を突っ込んだ”売り出し”モデルはハードコアーブランドから近年は出しているようで、ワシもタングステン重心移動システム搭載のハードコアTTリップレスミノー90FSRとか、とりあえずコモモ以外のリップレスミノーとして備蓄している。気合い入った新製品はハードコアブランドって感じか。たぶん写真の中にはタングステンじゃない鉄球の入った旧モデルも混在している。金型一緒、塗装の印刷も一緒、経費削減してても、なんか新しくて釣れそうな雰囲気を醸し出してくる、それがYO-ZURIの市場戦略。 と同時に、海外向けイカ野郎向けにはYO-ZURIブランドは強いので、いかにもメイドインジャパンな奇天烈ギミックをぶち込んだのとイカはこのブランドで出る印象。デュエルブランドの立ち位置がイマイチ分からんけど国内向けか?本体表面にホロシ-トを張るのではなく、ボディー内に立体的に配置したようなヨーヅリブランドの”3D”シリーズとか見たことあるようなルアーのお色直しだったりしても、ちょっと手が出てしまう感じで3Dインショアサーフェスミノーとかはこの地でも活躍してくれている。こういう新技術の見た目のルアーって海外の釣り人から見たら、いかにも”メイドインジャパン”っぽくって良いンじゃないでしょうか?ヨーヅリブランドのルアーは国内では積極的には売ってないようで、通販ぐらいでしか見かけないけど、モノは良いので新品700円とかアホみたいな値段付いてたりするので買って損はなし。でもこのシリーズ今カタログ落ち。まあまたお化粧直しして再販かかるでしょう。見た目の奇天烈ギミックでは、ボディーに細かいギザギザ山が刻んであって、山のこちらと向こうで色が違うのでの後ろから見るのと前から見るので色が違うという、なんじゃそれ、な”SASHIMI”シリーズとか、今でてるのでは”L-ブルー”シリーズのレンズフィニッシュとかもそう、もっと素材から奇天烈で、昔出てた金魚とかケロちゃんベビーみたいなワームほどじゃないけど柔らかい柔軟性のあるプラ素材を使用した”ゾンビ”シリーズとかもあった。ゾンビシリーズ惜しむらくは、ハリ音とかしないという嫌われにくい特性は、シーバスとかでこそ生きるだろうに、やっかましいほうが釣れがちなバスルア-方面で展開してたのがもったいない気がする。
てな、アタックル時代から続く奇天烈方面の伝統を守りつつあるのも嬉しいけど、もう一つ嬉しい伝統なのが、海のルアーでは本気で行くぜ!なワイヤー貫通構造のルアーが最初期の名も無きミノーから始まって、いまだに用意されていることで、ワシんちの蔵にあるのでは、写真のハードコアミノー120Fパワーがそうなんだけど、こいつはすでに一世代前で、現役だと新生アイルマグネットシリーズのTGミノー、TGダーターはワイヤー貫通構造なんですよ。ってところに別にエイト管だからってクリスタルミノーがぶっ壊されてハリだけ持ってかれるとか思ってないけど、それでも想定外のことが起こる、何でも起こり得るのが”海の釣り”なので、想像もしなかったような”強い”魚にルアーを破壊されても、ワイヤー貫通なら魚はあがる!っていうのが心にあれば、そのルアーを魂込めて投げることができるのではないだろうか。などと妄想が捗るのである。ヨーヅリが守ってきた伝統、それは時に奇天烈と釣り人の目に映るぐらいの挑戦的な試み、そして海に投げるルアーには一ッポン筋を通したのを用意しておく、ってのが貫かれているのではなかろうか、などと贔屓の引き倒し気味に書いてみました、ルアー図鑑うすしお味際63弾。YO-ZURIミノーの歴史を急ぎ足でササッとかいてみましたとさ。まあヨーヅリはこれからも安くて頼りになるルアーを作り続けてくれるだろうってことは、これまでの歴史を見ればまず間違いなかろうて。