敵は自分自身!昨日の己に勝つ!とかいうのは他人と勝負して勝てない人間の逃げ口上のように感じるときもあったりするひねくれた私。
その道の超一流が口にすれば、自分の最高が出せれば自ずと結果がついてくるという自信にあふれた台詞になるけど、二流どころが使うと他人には勝てないかもだけど自分なりの精一杯ができればいいじゃないのヨという言い訳を、やる前から吐いて予防線張ってるようにみえてやや白ける。
とか書きつつも、私も昨日できなかったことが今日できるようになることは他人には分からなくても自分にとって重要な勝利だ、というような意味のことをこれまでも書いてきた。それが本心であることも確かだが、言い訳であることもこれまた否めない。なかなか凡人には他人を打ち負かすような有無をいわさぬ華々しい勝利なんて得られないからね。仕方ないよネ。
というわけで、昨日の自分に打ち勝って昨日ツレなくて釣れなかった魚を釣り上げるために、あれこれ楽しく悩むのが常なのだが、最近蔵をゴソゴソしていて懐かしいルアーを発掘して、なかなか昨日の自分に勝つのも楽じゃない、と思い知らされたところである。
写真のルアーは以前サイトの方のラパラのコーナーでも紹介した「ラパラF改」と呼んでいるラパラフローティングに錘埋め込んでゆっくり沈むぐらいに調整してリップ取っ払ったシンキングペンシルである。まだ本格的なバチ抜け対応シンキングペンシル「ニョロニョロ」が発売される前に私がバチ対応ルアーとして使っていたものだが、現物を蔵から久しぶりに発掘してしげしげと眺め、実に当時の若い自分が細かいところまで詰めていて思い切りもよく完成度が高いことに感心した。
ニョロニョロ10周年記念が数年前だったから、それ以前、このルアーを使っていたのはかれこれ15年以上前になるだろう。
今でこそ春のバチ祭りは東京湾のルアーマンにとってはお楽しみの年中行事だが、いち早くバチの釣りに注目して流行らせたのはフライマンで、その中核適役割を任っていたのが、雑誌でもバチフライの解説とか書いていたドクター小林氏だった。まだ彼が試行錯誤しているような段階から、私の先輩連中のフライマンは彼といろんなパターンの開発とかに精力的に取り組んでいた。
ルアーでも釣れるという情報は散見されたけど、密かに狙ってる特殊な釣り方の印象で、リップ折ったルアーで釣るとかペラをへし曲げたスイッシャーで釣るとかの断片的な情報しかなくフライより遅れている印象で、もう20年近くも昔だろうか当初若い日のナマジ青年はFさんに安く譲ってもらったお下がりの8番フライタックルでバチ抜けに挑んでいった。
何年か楽しんで、フライパターンも諸先輩のも参考にドクター小林氏の中期のバルサヘッドのパターンを自分なりに改良して、強度を上げて浮力を殺した割り箸製の「お手元フライ」を作って70UPのスズキ様も釣って、そこそこの上達を感じていた。
しかしながらこれが、上手い緒先輩方と並んで釣っていると、とことん釣り負けるんである。ドクター小林のフライパターンもイロイロ進化して最終的にはビーチサンダルの素材にチヌバリ束ねたトリプルフックをぶら下げたグライダー(後にティムコから商品化)とかシンプルに一定の行き着くところに行き着きながらも、諸先輩はなお水中パターンとかの独自路線とかも追求していて、追いついたと思ったら置いていかれる状況で、なによりキャスティングとかの技術が違いすぎた。桟橋の支柱の際にきっちり投げ続ける正確性とか、もっと単純に飛距離とか、我流でフライフィッシング教書を読んで覚えた程度の技術ではどうにも対抗できなかった。
ここで悔しくて釣り具屋さんの主催するキャスティングスクールとかに通って技術を磨くのが正道だったのかもしれない。
だけど、邪道、わき道、回り道の大好きな天の邪鬼な性格が邪魔をしてそうはしなかったのである。
「ワシ、毛針投げる技術はあんまりないけど、ルアーならバス釣り出身だし、飛距離も自分のインチキなフライキャスティングよりは出せるし正確性はそこそこイケてるはず。」ということで、バチ抜け戦線にルアーで参戦とあいなったのである。
活性の高い初期とかにはザラパピーとかのペンシルでわりに釣れるのは知っていた。でもバチ抜け盛期になってあまり魚が強く吸い込まなくなると、出るけどかからなくなったり、そもそも出にくくなかったりするようになる。
フライでも傾向は同じで、軽く吸い込むのの対策で一つの方向性としてはフライの下にちょっと間を置いてハリをぶら下げてハリが口の中に入りやすくするというのと、もう一つにはハリを一番後ろに持ってきて吸い込まれたときにフライがライン側に引かれても最後までハリが口に残りやすくしたりというのがあった。浮力が強いと吸い込まれにくくちょっと沈めるぐらいの方がいいときも多いというのも感覚的に学んだ。
フライの動きや色はそれほど重要ではないというか、むしろ「ルアー的な動き」がないのが重要だと感じていた。細長い棒が真っ直ぐ進むときの水面の引き波や水中でも水を動かす「水押し」が重要で、いかにもな多毛類っぽい見た目やら色やら素材のウネウネした柔らかさはあんまり関係ないようだった。
そういう見た目釣れそうなバチっぽい見た目に作った凝った労作は、ビーチサンダル流線形に切り取ってハリぶら下げただけのグライーダーパターンに完封されるのが常だった。バチ対応ルアーでも初期のものにはウネウネした見た目や動きのものが種々発売されたと記憶しているが早々に淘汰されていったのもむべなるかな。
最初にだれでも思いつく、バチっぽいワームをジグヘッドリグで引く、というのは当然試してみたけどアタリがあってもほとんどフッキングせずバチルアーとしては不合格だった。
ワームでも写真のようにハリをぶら下げる形か尻に持ってくるリグを工夫すると、かなり改善したけど正直めんどくせえリグの割にはワームなので耐久性がなく、もう一方のミノーの改造が上手くいったのであまり使わなくなる。今でも、手を焼くクルクルバチ対応にメバルワームを使う攻略方があるけど、メバルワームは小さいので吸い込まれやすくてある程度成立するんだと思う。でも重量もたせてシーバスロッドで扱えるようにと考えると吸い込まれにくくなりハリ周りを工夫しなければいけなくなる。そのあたりハリを一番後ろに持っていって解決図ったのが今年のバチシーズン使ったクルクルスペシャルである。
ミノーの改造は、単純にはフローティングミノーのリップ折ってしまえばそれなりに使えるものができるのだけど、どうしても出てもかからないというフッキングの悪さは生じる。まずはフライでやってたようにハリを本体から離してぶら下げてみる。これでかなりフッキングよくなるのだが、ケブラー等強度のある編糸系ラインでハリをぶら下げるとハリが背中側にまわって引っかかる不具合が生じる。これを防止するために写真のF改では熱収縮チューブでラインがグニャグニャしないようにしている。
ニョロニョロが出てきたときに中小型のには軸が長めのシングルフックが装着されていて、バチの釣りでは比較的小さいルアーに良型が食ってくることの対策も含め長軸のシングルフックとはよく理解して作ってるなと感心した。しながらもそのニョロニョロでもまだハリが華奢だと思うのでやっぱりぶら下げスタイルにして今はウレタン系接着剤で背中に回らないようにパリッと張りを持たせている。細かいところだけどハリとラインが釣りで一番気を使うところなので念を入れて丁寧にやってる。写真は中ニョロで上が買った状態、下が使用時。
という今の私の主力バチ対策ルアーであるニョロニョロと違って当時のF9改には後ろのハリが付いていない。当時通っていた湾奥河口護岸のポイントではライズを狙って沖目に投げることが多くて理由は解らないけど前のハリにかかることが多く後ろのハリはハリ同士で絡むだけなので思い切って省略した。ニョロニョロにしてから後ろのハリにかかることが多いので後ろのハリもつけている。
さらにルアー本体に浮力があるとフッキングが悪いので浮力を殺すためとついでに飛距離アップのために、オモリを埋めてゆっくり沈むぐらいに調整していた。ラパラフローティングはバルサ製なので穴掘って錘埋めたりするのは容易で、釣り具屋さんに教わって冬の本栖湖ブラウン狙いで投げたスローフローティングに改造したラパラF13ではついぞ獲物を得ることはなかったけど、シーバス狙いにその改造の知識が生きてくるのである。
サイズ違いのF7改も干潟用にF13改も作ったけど、湾奥のバチ抜けにはF9改の飛距離やら存在感があっていたのかF9改の出番が多かった。フライマンと並んでも釣り負けないようになって溜飲が下がったものである。ハリが前一本でもよくかかったのは今考えるとゆっくり沈む程度の浮力がもたらす「水中での軽さ」で吸い込まれやすかったためかもしれない。まあホントのことはわからんけどね。
ちなみにF改シリーズはウォブリングとかローリングとかのいわゆるルアーらしい動きは全くないただの真っ直ぐ進む棒のようなルアーである。私の中ではこの「全く動かないルアー」というのは、核心的な考え方の一つであるといっていい。
これまでも書いてきたように「全く動かないルアー」はアピール度今一で魚を探す能力は小さいけど、魚に嫌われずに食わせる能力は大きいと思っている。でも動かないルアーは、ワームではそういう発想で売り出したスライダーワームとかにみれらるように珍しくないけど、プラグ系ではほとんど見かけない。動かない系のシンキングペンシルの代表であるニョロニョロでも多少は左右に揺れる動きがある。「ほっとけメソッド」とか「ドリフト」とか「動かさない動かし方」も各種知られているにもかかわらずである。
これはそうしないと「売れない」からというのが理由ではないかと思っている。たぶんルアーを設計する人間なら動かないルアーの方が釣れる場面があるというのを知らないわけじゃないと思う。でもプラグは動かないと売れないから、と多少動かしているんじゃないだろうか。
実際に水中での小魚の動きとか見ると、ほとんど動いたともわからないような微妙な鰭の動きで進んでいたり、全く鰭など動かさずに慣性でススッと動いていることも多いのは、スライダーワームの考案者であるチャーリー・ブリューワー氏のご指摘の通りだと思う。でも多くのルアーマンは大げさにバタバタ動かないと餌っぽくないと思ってしまうのである。バタバタ動くのはラウリ・ラパラ御大の観察通り死にかけた異常な魚なんである。死にかけた小魚の異常な動きは魚食魚にとって強烈な刺激なんだろうけど、刺激の強さ故にスレやすいので諸刃の剣だと感じている。だからすぐにネットで釣り場情報が飛び交い釣り場に人山ができがちな昨今では、スレに強い「おとなしめの動き」のミノーやシンキングペンシルが我が国ルアーマンの間に流行しているんである。なのに全く動かないプラグは買おうとしないんである。
世の釣り人ってその程度にしか見る目がないということで、おかげで昔から動かないルアーで動くルアーでは釣れない魚を釣っていい目を見てきたし、これからも良い思いをさせてもらうつもりである。
「動かないルアー」について、実は過去にはプラグでも例が結構あるんである。かつ自分で作って使ってみても良く釣れる。さっき書いたようにワームでは珍しくないし、ルアーじゃないけどフライならルアー的な動きがないのが当たり前である。にもかかわらず、なぜかルアーマンには動きのないプラグは受け入れられなかった。だからこうやって公開してもこれからも誰もまねしないだろうからと安心して書いている。
過去の例として具体例をあげると、元々動きの悪いダイワのロビンのリップを切ってスローシンキングに調整したら冬のバス釣りに有効で、最初からそういう動かないプラグとして作られたミスタープロンソン、海の向こうでも輸入された日本ではウンともスンとも動かしようがないうえにそもそも沈むのでトップウォータープラッガー達を途方に暮れさせたブーンの怪作ニードルフィッシュ、なんかがある。あるんだけど大ヒットはせずに分かってる人間だけが使いこなす秘密のルアーとして歴史に埋もれていった。ニードルフッシュはその名の通り「サヨリパターン」の攻略用だと近年解釈されていて、そういう使い方もあったんだろうけど、私などはアメリカにもバチパターンのストライパーとか、こいつの「動かなさ」でしか食わせられない状況があったんだろうなと想像している。ニードルフィッシュとニョロニョロ大の収斂現象はそう考えないと納得できない。
というわけで「良く動くルアー」「おとなしい動きのルアー」については、良いのがごまんと釣り具屋の棚にあるので買ってくることにして、動かないルアーは今でも自作しているのである。
そんな私が自信を持って作って実戦導入している最新作が、写真のまだ名前のない自作シンキングペンシルである。
近所ポイントのシーバスのボイル、ラパラCDLが相性良いのか食ってくる場面が結構あったのだけど、杭とかの障害物の上を通す必要があって割と早引きする必要がある。そうするとラインの張りが強いせいかハリがかりが悪くすっぽ抜ける気がする。ので、浮力小さめに割り箸とスズハンダで調整してこれまでの「お手元ルアー」のように作って、ちょっと割り箸一本のままだとCDLと比べて「太ましさ」が足りないなと、フライ巻くときの要領でフェルトを巻き付けてからコーティングして仕上げた。良い出来だと満足していたら、蔵から出てきた「F改」とほとんど機能変わらないことに気づかされて、ぜんぜん進歩がないなと落胆した次第である。
昨日の自分は確かに狂的な強敵なのであった。
まあでも、技術の進歩なんてのはそんなもんだという気もする。日産のフェアレディZが最新型と何十年前の古いモデルをチューンナップしたものとでゼロヨン勝負したら僅差で最新型が逃げきったという映像をみたことがある。エンジンぶん回して真っ直ぐ走るという基本性能においては、車という最新技術の固まりのような道具でさえ何十年と経ってもわずかな差しか生み出せていない。それでも基本性能以外の乗り心地やら安全性も含めたら格段に進歩してきたはずである。それに意味がなかったとは思わなくても良いのではないだろうか。
私の新作シンペンもヤッスい材料費でちょちょいと作れて、釣る能力自体は進歩していないかもしれないけど、重さも大きさも思いのままに作れる自由度とか、これまで積み重ねてきた経験も生きてちょっとだけ進化している気がする。
ちなみに私の中では既に定番で一軍起用のフッコスペシャルも「動かないルアー」である。公開してない秘密のルアー扱いは、ちょっとセコすぎる格好悪さがあるのと、釣る能力自体は動かないワームのジグヘッドリグと同等だと思ってるけど、釣る能力以外の部分であまり語られていないシーバスマンには意外なほどの利点になる要素があって、そこは秘密にして独占させてもらおうと思ってるところ、あしからずご容赦を。こちらも、鉛不使用化のついでにといろんなサイズを作ってみて、ネムリバリの効用とかちょっと試したりと日々進化させるべく努めております。
という感じで、ルアー図鑑うす塩味第36弾はありし日を思い出しつつ「動かないルアー」についてひとくさり書いてみました。
「動かないのもまた良い動きである」ってのはなんか禅問答っぽくってかつ小生意気で良い響きだと思う。
動かないルアーが効く時は確かにあるね。
返信削除でも、多くの釣り人が、ルアーがどういう状態にあるのかのイメージを持って釣り続けることが難しいのかな。
動かないルアーで釣り人を釣り上げたルアーは少ないね。
ワームはクリームワームとドラゴンエッグでしょうか?
日産のコマーシャルは、最近のであれば電気自動車のリーフと180のゼロヨンのシーンだね。
古いのがあったのかもわからないけど。
おはようございます
返信削除動かないルアーが釣り人にウケが悪いのは何ででしょうね?ワームだとオナガウジ型のメバルワームとか各社から出てて定番になるぐらい受け入れられているので、プラグに特有の現象だと思うのですが。そう考えると「高い金払ったのにこのプラグ動かんやないか」という心理が案外効いているのかもと思っています。動かんプラグなんて簡単に作れそうですからね。実際作ってみると意外に動いちゃうんでそれなりに難しかったりしますけど。
ワームは下はご明察。上はエコギアストレートです。ワームに針金通してシッポにハリぶら下げようとかクソ面倒くさいことをためらわずにやれていた若いときの自分のアホぶりに感心します。
リーフの宣伝はTVあんまり見ないので見た記憶が無いです。そんなんもあったんですね。私が見たのはネットで紹介されていた英語圏の動画で、子供のころにみた「Z」が新型と張りあってました。想い出補正もあってか格好良さでは旧型がぶっちぎってました。
手元にバイブレーションなり、ルアーの動きが伝わると安心感があるような気がしますね。
返信削除実際には変化を感じ取ることが大事なわけですが、手元に伝わっていたルアーの動きがなくなるというのはわかりやすいですしね。
メーカーも、こんなに動くルアーですという方が、釣り人を釣り上げやすいでしょう。
釣りにたくさん行っているときには、自分でもなぜ合わせたのかわからないような微妙な変化に体が勝手に反応することがありましたが、最近はだんだんと感度が鈍くなっているので、やはり動くルアーに釣られてしまうような気がします。
私も思いついたことをやらないと気が済まなかった時期がありましたが、今は、どうしてこんなにものぐさになったんだろうか、だから魚が釣れないんだと呆れることが増えてきました。いけませんね。
やはり「Z」だったんですね。
私もL型エンジンを積んでいた頃の「Z」に憧れていました。
今たまに見かけても、格好いいなあ、乗りたいなあと思いますが、車を1台しか持てない現状では、たくさん釣り道具を積めないし、未舗装路を走らせるのを躊躇ってしまう車は持てません。車は釣り道具でもありますから。
釣り人が釣れるルアーと魚が釣れるルアーとは必ずしも一致しないということでしょうか。
返信削除年取るとものぐさになるというか、手の抜き方を覚えるような気が私もしています。でも、そのぐらいの方が殺気が出てなくて釣れるかも知れません。