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2018年11月25日日曜日

日本よ!これがドラグだ!!


 日本の釣り人にリールの「ドラグ」というものが何なのかというのが理解されるようになったのは最近のことだと思う。でもまあ分かってない釣り人が多いと思うけど。

 かくいう私も同様でね。

 「アンバサダーはドラグがショボくて」「マイコンのリアドラグがイマイチ」なんて書いててゴメンナサイ。いかに日本の釣り人がドラグについて知らなかったかの好例がここにあり、という感じである。
 そんな私も釣りを始めて苦節40年経ってようやくドラグが分かり始めた。ような気がする。断言してまた頓珍漢なこと書いて後で身をよじるよな恥ずかしい思いをする心配がなきにしもあらずだけど、そんときゃそん時でまた謝りゃいいし、ワシの場合恥かくのも芸風だと最近思うようになってきた。恥部さらけ出すつもりでワシワシ書いていこう。

 最近の釣り人がリールのドラグについて知るようになったのは、ルアーでも管理釣り場のマスだの海だとメバル、アジ狙いだのといったやたら細い道糸を使いたがる方面の人気が要因としては大きいようで、細糸は嫌いというかアホかと思ってる私としては遺憾に思わんでもないけど、道具についての正しい知識が広まるのは悪いことじゃないように思う。正しい知識があれば釣具屋に騙される回数が気持ち程度は少なくなるかもしれない。
 繊細さに”女々しい”と今時の男女平等の思想からすれば言葉からして怒られてしまいそうな印象を持ち(のわりにハゼ釣りとか小物釣り好きだけど)、豪快さを良しとする昭和のオッサンなら、ドラグというものを糸が切れそうなギリギリの時に滑ってくれれば良いという”保険的”にではなく、積極的に”滑らせて”一定の負荷を与えつつ魚を走らせて釣るという方法を学ぶのは、船で沖に出てのシイラ・カツオ釣りで初体験という場合が多いのではないだろうか。

 かくいう私もそのくちで、シイラ初挑戦の時にJOSさんにビミニツイスト練習しておけとナイロンラインのボビン渡されて、細い道糸に太いハリスであるショックリーダーを繋ぐ”ラインシステム”というモノについての薫陶を受けたけど、正直説明聞いただけでは「なんで魚の目につくハリスの方が太いねん?」という疑問が頭に渦巻くだけであった。
 しかし魚掛けてみると、体で理解が進んでいく。たかだか50センチかそこらのぺんぺんシイラが止めろと言われても止めきらないぐらいに引きやがる。まあ後年GT狙いのときにメーターオーバーのシイラ掛けて、ドラグ一瞬ジジッと鳴っただけで止まってしまい、道具の力を上げていけば止められるっちゃ止められるンだとも知ったりはしたけど、だんだん分かってくるけど止める必要がない魚と止めなきゃならん魚があって、止める必要ない魚は走らせて疲れさせてからあげた方が、バレにくいし何より引きが楽しめて面白いということだと思う。
 止めなきゃならん魚は止めなきゃ障害物に巻いたり突っ込んだり穴や砂に潜ったりする魚で、淡水の魚の多くはそうで、バスにしろイワナにしろ障害物周り狙うのにアホみたいな細糸で狙ったらそら切られるって話で、逆に走らせて良いのは大河川や湖のコイ系ぐらい。だから鯉釣り師は昔からドラグの使い方知ってたようで、学生時代ゴムボートでプカプカ浮いてバス釣ってたら鯉釣り師がデカいの掛けてて走ったコイがボートの下通っていったことがある。走らせまくってからキッチリ上げてて、あんな魚を走らせる釣り方もあるんだなと思った記憶がある。
 逆に海だと砂浜でも沖でもなにも逃げ込む場所がなければ本来無理に止める必要もない。
 当然だけど同じ魚種でも状況によって止めなきゃならん魚だったり止める必要がない魚だったりする。例えば同じスズキ釣るにしても止めなくて良い場所なら6ポンドのナイロン道糸ハリス3号か4号あたりでドラグが鳴るのをドキドキしながらしばらく聞いてれば良いけど、カヤック出して杭周り狙うとなったら止めるために倍以上の16ポンドナイロンにショックリーダー40ポンドが必要だと感じている。多少障害物際も狙う近所では間の8ポンド道糸で場所毎にドラグの締め方変えている。
 
 っていう違いがある中で、日本の釣り人は長い間、淡水では止めなきゃならん魚を主に釣ってきたというのと、海では日本ならではの釣り事情で止めて釣ってたので、ドラグなんてのはラインが切れそうになった時にだけ滑る保険であって、なめらかに道糸を放出するよりしっかり止まることの方が重視されてきたという”ドラグ不遇の時代”が長かったんだと思っている。
 まず淡水では滅多に止めて止められない魚はかからないし、ドラグなんて締めッパで良かった。逆にドラグが滑るとアワセが決まらないので、最初ドラグ締めておいてアワせた後に魚がデカければドラグ緩めるというのが、むしろ技術として使われていたのが実態だと思う。
 今の若い人にはこのあたり意味不明かもしれない。今時の伸びないラインと刺さりの良いハリを使ってれば、アワセの時以上の負荷が後からかかる状況って想定しにくいだろうけど、そうじゃなくて軸が太いうえにゴツい返しのついたハリをビヨーンと伸びるナイロンラインで魚の口に確実に掛けるには”アワセ重視”で滑らせずに強くハリ掛かりさせることが必要で、ハリがかかった後はドラグ多少緩めて慎重にやりとりしても良いってのが実態だったんだと思う。そういう使い方には今じゃ低評価に甘んじている”リアドラグ”方式が使いやすかったのかも知れない。
 今でも太いハリを使わざるを得ない水生植物の茂った場所でのライギョ釣りではアワセが効きにくくて苦戦するけど、昔のナイロンラインの時代にはあわせてもライギョこっちに飛んできて全然かからんことも多かった。当時から玄人衆はダクロンという伸びの少ないナイロンの編み糸を使ってたようだけど、田舎じゃそんなの売ってなかったから、中空フロッグのぶっといダブルフックと比較したらまだ細いワームフックを使うホウグフロッグやらスワンプラットを使うようになって格段にライギョが釣れるようになったのを書いてて思い出した。
 昭和の時代、淡水の少なくともルアーの釣りではドラグはしっかり締まって滑らずアワセが効くのが良いドラグだったのである。

 じゃあ海の方はどうなのよ、砂浜での投げ釣りとか昔から人気の釣りじゃん?と思うだろうけど、そっちはそっちでまた事情があったらしくて、思いっきり遠投する場合にドラグが滑るとラインの摩擦で指を怪我する恐れがあって、これまたドラグはきっちり締まらなきゃダメだったのである。かつナイロンラインで遠投してたら道糸がショックを吸収してくれるのでドラグ締めっぱなしでもスズキぐらいなら何とかなったというのがあったんだと思う。なんともならなくてもアカエイのせいにしとけば万事問題なし。
 沖ならドラグ締めなくても良いジャンと思うのなら、アンタは昭和のというか今でもそうだろうけど、日本の遊漁船の釣りのなんたるかが分かっちゃいない。魚走らせてユルユル引きを楽しもうなんて不真面目な態度では船頭さんに「リール滑ってるよツマミもっと締めて」と怒られてしまうのである。ドラグノブなんてスプールを固定するためのツマミ扱いである。たまの休日ぐらいユルユルと楽しみたいと思っても、ジャパンでは船頭さんの監視の下、横並びで空気読んで太仕掛けで効率的にサッサとあげなきゃならんのである。
 釣り具会社のテスター様あたりがもっと細仕掛けで楽しみましょうと主張するのにも一理あるんだろうけど「そりゃテスター様は船貸し切り状態だろうから好きにやれるだろうけど、しがない素人衆は両舷に釣り人びっしり並んだ状態でそんな自分勝手が許されるわけないでしょ」とボヤきたくなるというもの。
 という感じで海でも日本じゃドラグ使ってたのは金持ちの道楽的な印象が強いと私が僻んで思っているトローリングぐらいで、磯の底物釣り師なんて太鼓リールのスタードラグをハンマーで叩いて締めてた始末である。
 唯一ドラグ使いそうな磯の上物師は、これが日本独自のガラパゴス化路線でドラグじゃなくてレバーブレーキという特殊な機構を育て上げてきた。凝り性の日本人らしい職人芸的な技巧を要求されるブレーキで、ブレーキの強弱が指で調整できるというより、本質はレバー一発で逆転スイッチを切り入れして根ズレしそうになったら一瞬で道糸を緩ませてライン切れを回避するという機能にありそうだ。
 磯に立つルアーマンも根ズレしそうになったらスプール返してラインを放出して魚を沖に走らせて「仕切り直し」をするとは読んだことあるけど、それを瞬時にやってのけるための機構らしい。
 西洋式のあらかじめ決めておいた負荷より大きな力がかかったらラインが出ていく「ドラグ」が自動的で車で言えばオートマなのに対して、自分でブレーキのタイミングや強さを手動で調整する「レバーブレーキ」はマニュアル車に相当するのかもしれない。
 オートマにはオートマの利点もあるけど、やりとりの途中でブレーキの効き具合をいじるなら、リアドラグ方式にしたって左手をハンドルから離して調整する分の時間差が生じるので、投げるとき以外は空いている右手の人差し指を最初っからブレーキレバーに掛けておけるレバーブレーキ方式の方が瞬時に対応できて理にかなっているように思う。加えて、そいうあしらいに技術のいる道具を使いこなす楽しさもあるだろう。
(訂正:レバーブレーキは逆転スイッチを切り入れして、グレの引きをためられる竿の角度を確保するのに使うそうで、レバーブレーキにはブレーキの効きの強弱を調整する機能はないそうな。あと青物にはハンドル逆転じゃ間に合わないので普通にドラグとかベール返してとかで対応するそうな。また嘘書いてゴメン。風雲児さん教えてくれて感謝です。)

 でもまあ、磯っていう障害物の上に立って魚を障害物に寄せてくる釣りだからそんな技巧が求められるんであって、単純に障害物から離せば良ければドラグ締めて、障害物無ければドラグユルユルでというので普通は間に合うと思っている。かつやりとりの途中でドラグをいじるのは難しい。私は何度も書くように「赤子泣いてもドラグいじらない派」である。
 普段のシーバス釣ってるときのドラグの使い方としては、8ポンドのナイロン道糸なのでいにしえからの教えに従うなら1/4の2ポンド(1キロ弱)に設定するところだろうけど、シーバスの場合ブレーキ強めで道糸張ってやりとりすると、やたら跳んだり首振ったりでバレる場合が多いのでもっと緩めの500グラム以下ぐらいのユルユルに設定しておいて、やりとりの間は一切ドラグノブには触らない。アワセはドラグが一瞬チッと鳴るぐらいを目標におもいっきりかますけどナイロンラインだと意外に力伝わらなくてなかなかドラグ鳴るようなアワセは決まらないのでその分しつこく複数回あわせる。PEとか伸びない道糸の場合だと逆にドラグきつめだと切れるぐらいにアワセの力は伝わる。初めてPEラインをベイトリールに巻いてバス釣りに行ったら14ポンドの強度のハズの道糸がアワせる度にバッツンバッツン切れて往生こいたものである。結び方云々以前に伸びがないと意外なぐらい衝撃に弱い。そういう伸びの少ない道糸を守る意味でも今日ではちゃんと”滑る”ドラグの重要性が増しているように感じる。
 ”赤子泣いてもドラグいじらない”の例外は明らかに口に掛かってるデカいコイの場合でヤツらはシーバスを想定したユルいドラグ値だと巡航速度で延々と走りかねないので口がかりならまずバレないのでドラグ慎重に締める場合がある。
 でもまず途中でドラグはいじらない。最初の設定は昔は秤で計ってたけど、最近は自転車の前カゴにルアーのフック引っかけて竿の曲がりを見ながらアワセ食らわせたり後ずさりしたりして決めている。
 赤子泣いてもドラグいじらない派としてはドラグノブは触らないけど、それでもやっぱりラインの放出を止めたいときや逆に出したいときは生じるモノで、障害物の方に突っ込み始めたとかで魚を止めたいときはスプールに指をあてて、なんならガッシとスプール鷲づかみして負荷をかけてやる。コレなら負荷かけてたら急に突っ込んだ場合でもドラグノブを元に戻すような手間暇掛かってかつ不安定な方法じゃなくて指を離せばすぐに元のドラグ値にもどるので”竿をのされてラインブレイク”とか、今時「あんたのリールにはまともなドラグついてないの?」と小馬鹿にされそうな恥ずかしい失敗を犯さなくてすむ。

 達人の映像とか見ると、ロウニンアジとかを最初の突進だけドラグ滑らせてかわしたら、ドラグ締めまくって鬼のようなポンピングで寄せきって勝負つけてたりするけど、あれ真似しようとしたけど相当難しくて、ポンピングで竿下げるときだけじゃなくてずっとゴリゴリとリール巻き続ける位じゃないと魚反転して反撃食らって腰砕けにされる。オレには無理。かつそういうゴリ巻き系の使い方するとスピンフィッシャーだとハンドルのピンが折れてハンドルもげるらしい。だから第3世代スピンフィッシャーには改造用の強化ハンドルが売られてたんだろうし、現在の高級リール様は最初っからバカみたいに丈夫にできてるけど、安易に道具の強度を上げて対応してしまうってのが正直気に入らないのでワシャそっちには行かずに済む方法を模索してきた。道具は大事だけど道具に依存するのは技術の進歩を阻害しかねないと思うんだけどどうだろう。まああんまり偏屈になるのもどうかと思うので、なんでもそうだし何度も書いてるけど良い塩梅が大事だとは思う。

 一方、止めてしまいたい場合と逆に道糸緩めたいときは、まずは竿を寝かせてそのぶん緩めるってのと、その延長線で腕を前に伸ばしたり水に落ちなければ前進したりというのがある。それで間に合わなければ小指で逆転スイッチ切って道糸繰り出すか、ベール起こして道糸放出だけど、ユルユル設定だと放出したい時って限られてて、魚が足下で食ってラインの伸びによる衝撃吸収とかが期待できないときぐらいで、そん時は即ベール起こすというのを知識として知ってた方がイイ。ちなみにアワセはライン送った後でも間に合うのでとにかくベール起こすのが先、ととあるシーバスボートの船長さんに教えてもらったけど、そこまで冷静な対処はできたことはない。
 参考までに書いておくと、今まで一度も起きたことがないけどドラグを緩めた方が良いとされている状況としては、想定外に走る魚を掛けて道糸がどんどん減ってスプールがやせ細ってしまった場合というのがあって、ライン残量少なきゃドラグ締めて止めなきゃでしょだと感覚的には思うんだけど、実際には長い道糸は水の抵抗も大きいのでそれだけで”止める力”が強くかかるようになっているうえに、スプールの直径が小さくなっているのでテコの原理でドラグが強くかかるようになってきているので緩めないと切れる。というのを昔釣友がネットで紹介してるのを読んだと記憶している。でもドラグ緩めて船で追っかけながら道糸回収するという選択肢がある釣りと、追っかけられない岸からの釣りとかでは条件違うだろうから、護岸からシーバスとか元々余裕のあるユルユルドラグで釣ってる釣りなら赤子泣いてもの基本方針どおりドラグいじらずで徐々に強くなるドラグが効いて止まってくれるのを信じて我慢、船で追っかけられる釣りなら同船者の皆さんゴメンナサイでドラグ緩めて追っかけてもらうとか、竿の曲がりとかでドラグの効き具合とかも感じながら、その時々の状況よくみて考えて判断するんだろうな。

 という感じで、現代の伸びの少ない道糸を想定するとスピニングリールのドラグの使い方の基本はどんな釣りでも上記同様にやりとり中にドラグノブいじらず止めたけりゃスプール手で止めて、道糸出したきゃベール起こすかハンドル逆転、でだいたい一緒だと私は考えている。あとは障害物までの”距離”によってどこまで走らせるかが決まってきて、魚の大きさや引き方とあわせて自ずとドラグ値が決まり、ドラグ値が決まれば道糸の強度が決まり、全体の道具立てが決まっていくという感じで、例外は力を上げようとしても限界のある道具である”自分の体”が使える道具立ての上限を決めるので、なんぼ引く魚を障害物の際で釣ろうとも、自分の体力で扱えない道具は使いようがないので、自ずと道具に制限がかかってくるという場面で、具体的にはまあまたロウニンアジとかなんだけど、そういう場合は裏技的に竿を真っ直ぐ魚に向けてしまってスプール手で押さえて”綱引き”しかないのかなというのが長き模索の結果の今のところの私なりの解答。


 で、使い方はある程度整理できたつもりなんだけど、ドラグってそもそも何なのよというところも、理解しておいて損はないので、具体的な実例をあげつつその構造やら仕組みやらを整理していきたい。

 ドラグはそんな複雑なしろものじゃない。以前サイトの方でブレーキについて書いたときにも、リールのドラグについては
 「原理は単純、スプール軸など(たまにスプール軸からギアなど介して別のところに持ってきている場合があるがだいたいダメ)に金属やらカーボンやらテフロンやら皮やらコルクやらの輪っかを何枚かあるいは1枚噛ませて、ネジで締め付ける。締め付けをきつくするとブレーキが強くかかる。以上。ぐらいのモンで、まあ、熱に強い素材やら適当な滑りの確保やら、表面積と直径は大きい方が良さそうだとかは分かるけど、根本的にめちゃくちゃ高性能なものが出るわけがない、単純な機能である。」
 と書いているぐらいで、その認識は今も変わらないんだけど、古いスピニングリールとかいじり回していて色々と感じたところもあるので、もう少し細かくみていきたい。

 まずはスピニングリールのドラグとして一番単純なのは、スプールの上面をドラグノブで直に締め付ける。スプール底の座面受けとドラグノブがスプールに接している2カ所の抵抗がブレーキとなる。とか書くとそれっぽくなるけど、要するにスプールを上のネジで止めてるだけで、ドラグとしてホントに使ったら安定したブレーキ力が云々より、摩擦面が削れていって不具合が生じる。ネジ止めするだけにしても接触面にはワッシャーぐらいかませてやれよというところで、大昔のオモチャのような安物以外ではまず見ないだろう。

 でも先日バラした我がルアー用の初めてのスピニングリールであるスポーツラインST-600Xは”つまみ”にワッシャーかませたのみ状態に近いモノがあって衝撃を受けた。70年代の安い日本製品はこんなモンでっせ。凝った浮き彫りで飾ってる暇あったらドラグパッド入れといてくれだと思うけど、どうせ締めっぱなしでドラグの”滑らせる”機能なんて使ってもらえないならコレでも問題なかったのだろう。事実私もこのリールのドラグに文句言ったことはない。基本は締めッパな時代のリールだったのである。
 でも同じような、ツマミにワッシャー噛ませたような単純な構造でも、ワッシャーやツマミの素材を吟味してスプールとの摩擦を上手く使って良いドラグに仕上げているのもある。
 写真左のスピンフィッシャーだと4400ssとかに採用されている方式は、カーボンシートのドラグパッドは耳付きでスプールに固定されていて、それと金属ワッシャーの摩擦でドラグを効かせるという、ドラグパッドがスプールと一体化してて、それにワッシャーかましてドラグノブ締めて終了。という単純な方式だけど、写真のようにドラグパッドの面積がスプール直径のいっぱい近く大きく取ってあるので、調整幅の狭さは若干あるかもだけど実用充分で、ドラグの滑り出しやら安定性やらは実に優秀で信頼できる。
 右の714Zの耳無しのテフロンワッシャー1枚をドラグパットとして使う方式も同様に単純だけどやっぱり信頼できるドラグになってて、枚数が多かったり、ましてやスムーズさを確保するためにドラグにベアリングまで入れる必要性は感じない上手な仕上がりになっている。

 ちょっとスピニングじゃないけど1枚ドラグパッドで素晴らしいのがティボー”リプタイド”でフライリール。写真左下の金属にコルクを貼り付けた大きなドラグパッドが左上のスプール底面を押す単純な構造だけど、調整幅も安定性も素晴らしく、ワシ程度のインチキフライマンが使うのはもったいない分不相応なテッドおじさんの力作で、90年代の登場から多少軽量化で穴が増えたぐらいで今でも支持を受けている。コルクって難しい素材のようで、ティボーの真似したのかいくつかのメーカーからコルク製ドラグパッドのフライリール出てたけど、小マシな魚が走るとコルクがオガクズになり果てるお粗末なデキのものも結構あったとか。

 でもまあ、スピニングリールのドラグの一般的な形は、耳付きとか多角形の「スプールと同期して回るワッシャー」と欠けた円状の穴とかの「スプール軸と同期して回らないワッシャー」でドラグパッドを挟んだのを重ねた”3階建て”のものだろう。ドラグが効きながらスプールが回るとき必ずワッシャー2枚はドラグパッドを挟んでズレる動きをする。
 なので全てのドラグパッドが上下の、あるいは上か下どちらかのワッシャーと摩擦しながら回るので安定してドラグ力が発揮される。
 限られた直径のドラグのスペースに複数のドラグパッドを入れることよって、表面積を稼いで安定したドラグ力を得るとともに、締め付けたときに”締まる”高さを稼ぐことで調整幅の広さにもつながっているのだろう。
 また、ドラグパットの素材の特性を踏まえたり組み合わせを考えたりということにより、ドラグの効き具合を調整できたりもするように思う。このへんまだお勉強が必要だと思うけど、例えば写真の左はスピンフィッシャー750ssなんだけどドラグパッドは下から白いテフロン、灰色のカーボン、カーボンという3枚になっている。一回試したことあるけど全部テフロンにすると滑り良すぎて強めのドラグ値に締められなかったように記憶している。1枚だけテフロンだと5~7キロのドラグ設定がちょうどやりやすい感じになる。もっと締めたければ全部カーボンとか、さらには滑りのさらに悪い石綿代替品のドラグパッドに替えてやるとかでいろいろ調整はできそうに思う。PENNには”バーサドラグシステム”というワッシャーとドラグパッドの並べ順を替えてドラグの効きを変えるドラグもあったりする。
 真ん中のキャリアーNo.1のドラグは、小型リールらしく低いドラグ値で作動が滑らかで調整幅も大きく、古いリールとは思えないぐらい優秀なことに改めて感心させられた。ドラグパッドは3枚とも良く滑るテフロン製のようだ。適材適所な素材の選択とか比較的低価格のキャリアーでもちゃんと3階建てのドラグを入れてて手抜きはないところとか、いかにも大森製作所のリールらしいところ。
 40年前のインスプールスピニングであるオリンピック製トゥルーテンパー727でもドラグの方式は写真右のように3階建てで基本一緒で、経年による変化でコルクっぽいドラグパッドがペッタンコになってるからか、一番下のドラグパットだけやや堅い別の素材でできていて、そいつが引っかかり気味なのか、やや滑り出しやら安定しない感じである。ただ、ドラグパッドは適当な素材を買ってきて作ればいいし、3階建ての方式自体は今時のリールと同じなので充分”良いドラグ”に調整可能だと思っていろいろ試してみた。そのあたりはまた別の機会に書いてみたい。
 他にドラグパッドとして使われる素材としては油をしみこませたフェルトとかも調整幅が大きくとれて、ドラグが熱を持つほどの高速でスプールを回す魚を釣るわけじゃない小型のリールとかで一般的なドラグパッドの素材の一つのようだ。

 他に特徴的なドラグを持つスピニングリールとしてはスピンフィッシャーの950ssmがある。写真は第4世代だけどスプール共通なので同じドラグの導入は第3世代の9500ssからである。
 一番上の写真見ると750ss同様にスプール上部にドラグ入ってるように見えるんだけど、ここの外しにくいCリングを外してみると、ワッシャーとカーボンシートが1枚づつ入ってるだけで肩すかしを食らう。
 実はドラグの本体はスプール底面に鎮座しているのである。
 今時のリールには珍しくもなくあるのかもだけど、ドラグの直径を大きくとるためにスプール底面を使うという、本気でデカい魚をドラグ使って獲る仕様のスピニングリールが、90年代の9500ssですでに登場していたというのがいかに先進的だったかは、当時チャーマス北村氏もフィッシャーマンの鈴木文雄氏もジギングでこのリールを愛用していたことからうかがえるというモノ。
 同じ第3世代のスピンフイッシャーでも8500ssから4500ssまでは750ss同様の3階建てのドラグで”ssj”が出るまではラインローラーにベアリング入れてたのも9500ssだけだったし、30ポンドナイロンが300m以上巻けるというデカさもあいまって、真に”漢”らしいリールだったのである。
 ドラグの構造自体は単純で、スプールの底にはめ込んで接着された土星の輪っか状のカーボンのドラグパッドに金属のデカいパッドを押し当てる方式で、確かにドラグの効きを左右するのはドラグパッドの円周外側の回ったときに移動距離が大きく摩擦が大きくなる部分だろうから、中心近くの部分はあまり効いてないのかもしれないし、ドラグパッドがへたって薄くなるときに周辺部から薄くなったりしたら中心部分の摩擦が相対的に増えてしまいせっかく直径大きい設計の利点が死に体になりかねないので意図的に真ん中を抜いているのかもしれない。素人にはその辺の細かい設計の妙が理解し切れているとは思えないんだけど、単にドラグパッドの数増やしました、面積増やしましたというのではなく、狙って設計しているンだということは想像に難くない。
 同じようにドーナツ状のドラグパッドを持つリールとしては、80年代の丸いアンバサダーの5000番台がそうで、それ以前の7000番台とかには既に3階建てのドラグが入ってたのとあわせて考えると、淡水での使用が主と想定される5000番台にそういう釣りで想定されるドラグの強さや使い方に適したドラグ方式を当時のABU社は採用していたんだと、5000のドラグパッド固着事件を経て理解するに至った不肖ナマジであった。


 あと、「(たまにスプール軸からギアなど介して別のところに持ってきている場合があるがだいたいダメ)」とか書いたし、リアドラグは効きがイマイチ的なことも書いてたことを先日反省したところだけど、写真右のオービス「バテンキル」は典型的なスプール軸からギアを介してドラグを作動させる方式のリールで写真の右下の雪だるまみたいに見えてる二つのギアの小さい方にくっついてるのがドラグで、同じ平面上にドラグを持ってきているのでリールが分厚くならないですんでいる。Sスイの店員さんに用途と予算を伝えて相談してお薦めされるまま買ったんだけど、ドラグがコレじゃダメなんじゃないかと買ってからちょっと思った。だけど、使ってみたら何の問題もなく充分優秀なドラグだった。マイコンのリアドラグがそんなに悪くなくて結構使えそうだというのは先日書いたとおり。
 このへん、理屈どおりじゃないんだけど、道具なんて実際使ってみなきゃ分からんってことだと思う。大森製作所とオービス様の技術力にとりあえず敬礼。


 という感じで、やっぱりドラグなんてのはそんなに複雑じゃなくて、でも大きさやらドラグパッドの素材やらそれらを生かす設計やらで良し悪しが確実に存在するモノだというのが私の今現在の理解である。
 ご大層に今時の高級スピニングリールにはドラグの滑らかな回転に寄与するためにベアリングまで入れてあるんだそうだけど、ワシにはその必要性がいくら考えても理解できない。
 ベイトリールのスプール軸にベアリングが入っているのは分かる。だって投げるときになるべく抵抗は少ない方が良くて軽く回ってもらわないと困るから。スピニングリールのローター軸にベアリングが入っている必要性も学習した。多少重いのは味のうちだと思ったりもするけどローター軸のベアリングが錆びて単なるスリーブと化したら使うのが嫌になる程度に巻くのが重くなって、少なくともスピニングリールにはローター軸に1個ベアリングを入れるべきだと思う。他の場所にはベアリングじゃなくても丈夫なスリーブとか軸受けでも何とかなるかもしれないと思っている。
 でもドラグってそもそも摩擦力で抵抗かけて回転を重くして効かせる機構でっせ。なんぼベアリングのところで摩擦が少なくて滑らかでも、ドラグパッドがブレーキ掛けてるのに滑らかに回る理屈がない。ドラグパッドより少ない抵抗で回ってドラグの仕事をじゃましないスリーブなりワッシャーなりが入ってれば、軸が通ってるスプールの穴自体も含め、引っかかって明らかに滑らかじゃない品質なら別だけど、その抵抗も含めてドラグって効いてきてちゃんとブレーキがかかるんじゃないの?ドラグにベアリング必要なぐらいの無視できないぐらい大きく不安定な抵抗がどっかで生じるっていうなら是非教えて欲しいものだ。「ドラグパット以外の抵抗を極力減らしドラグパット本来の性能を引き出し滑らかなドラグ作動を実現する」とか説明するのかも知れないけど、ぶっちゃけアホかと思うね。ほぼベアリングに対する信仰でしかなく、ベアリング様が入っていればありがたがってるんじゃないだろうか。
 ベアリングって軸を受けるのに回転抵抗少なくできるし小さくても摩擦ですり減らないという意味では丈夫だしで、軽い回転と軽量化には役立つけど、錆びたりして壊れる部品だし、昔より安くなって”高級”でもなくなってるとはいえスリーブよりは経費のかかるものだから不利な面もあって、軸さえあればどこにでも突っ込めばいいってモノでもないという認識だけど違うんだろうか?

 スピニングリールのことを改めて考えるきっかけになったトゥルーテンパー727のドラグをみると40年前から3階建て方式である。今でもそこからたいして進化してないしシーバスやら釣るためならほぼ必要充分だろう。トゥルーテンパーはドラグパッドがさすがにヘタってたのでちょっと調整したけど顛末記読んでもらえば分かるように魚釣るのに問題ないドラグになっている。

 500m突っ走るような何百キロの魚相手や、そこまでの大きさでもなくても最初の突進を通常使用する道具立てで止められない魚を相手する場面やら、細糸で慎重にやりとりする場面なんかではそれなりに”良いドラグ”が必要だけど、それ以外なら普通のドラグで充分だと思う。今時のリールなら昔の日本製みたいにドラグノブが単にスプールを固定するネジの機能しか持ってないようなリールはないはずなので充分である。

 PENNスピンフィッシャー以前は、ドラグ使ってやりとりすることを想定したような”良いドラグ”のついた大型スピニングリールは少なくとも日本製ではなかった。アングリング誌上で鈴木文雄氏が各社の大型スピニングの滑り出しカーブ等を比較していたと記憶しているが、たしかダイワもシマノも滑り出し引っかかってた。ってぐらいルアーでロウニンアジやらカンパチやら釣るようになるまで日本じゃドラグは”放置”されていた。それが釣り人がドラグの良いスピニングが欲しいと求め始めて、何のことはない欧米の真似して作ってた頃に戻って、まともなドラグを追求し始めたらすぐに”良いドラグ”は実現したんだと思う。それ以上は蛇足だと感じている。
 第3世代のPENNスピンフィッシャーと同等な性能で大型スピニングリールのドラグは必要充分だと思っている。カーボンのドラグパッドは大型リール用としては現在最良の選択だろう。
 ドラグの良し悪しは、実際にドラグ使わなきゃならない魚をかけないとなかなか評価が難しい。私がスピンフィッシャーのドラグに絶大な信頼をおいているのは、グレートバリアリーフででっかいヨコシマサワラかけた時に、尋常じゃない速さで走られてドラグがウィーンって音を立ててスプール回転して、ライン切られるんじゃないかと不安になったけど、7500ssのドラグは見事に安定した作動でしのぎきってくれたという経験があってのことである。20キロのキハダも30キロのロウニンアジもあれに比べれば走る速さ自体は一段落ちぐらいだったのでラインを引き切られる心配はしなくて済んだ。
 そういう”引き”を疑似体験するとともにドラグを試験するなら、実際に竿にリール付けてドラグ設定して原付とか車に結んで走ってもらうというのが冗談抜きで有効である。マグロとか本当にそのぐらいの勢いで走ってくし、走らせて獲る場合が多いからお薦めしておく。
 釣友が一緒にターポン遠征行くときに原付で走ってもらったそうで、アジア某国製のシイラとかでは問題なかったそこそこ良いリールがしゃくりまくってドラグ安定せず、スピンフィッシャー6500SSは滑らかにドラグ作動してPENN圧勝だったそうな。
 それでもPENNの評価が日本で低いのは、まあ重いからってのもあるんだろうけど、いまだにドラグをハンマーで打ちつけてた思考を引きずってるからでは?と思っている。ロウニンアジでも根に持っていくのを力ずくで止めようと考えすぎだと感じている。例えば根ズレ対策でメインラインを太くするとかはショックリーダーを長くとるのが定石でメインラインに根ズレで切れない太さを求めるのならむしろナイロンラインに戻るべきだろうとか、止めるためにドラグ値どんどん上げるというのは特殊な”パワーこそ力”的筋力崇拝だろうとか。そういう釣りがあってもいい。でもそんな使い方をしないできない普通の釣り人が、使いも使えもしないドラグ値を備えた過剰なリールを特殊な玄人の言うことを鵜呑みにしてありがたがってどうすると思う。
 そもそもそんなに力をかけて壊れないリールが必要ならベイトリール使えば良いじゃんと思ってしまう。
 日本人はドラグがまだ分かってないんだと勝手に思うし、スピニングリール自体分かってない気もする。「オマエの方が分かってないわエラそうに」と思われるだろうけどそう思うので書いてしまう。
 スピニングリールは無理したら壊れるんだって、そこをどうするかが腕の見せ所で作戦の立てどころなんだって。
 無理矢理止めなきゃならないような所では魚をかけないっていうのも取り得る作戦だし、スピニングリールの構造上どうしても強く負荷がかかっているときに巻くと、ローターの片方に寄っているベールアームの方にローターが歪むので”巻けない限界”が生じると織り込むべき。その限界があるのでそれにあわせて他のギアだのハンドルだのの部品の強度も造られているハズである。そこを高負荷がかかってる状態で巻くからハンドルやらなにやらが壊れるのだと思う。じゃあってハンドルだけ強化しても次はドラグやらギアやら負荷のかかるところからこわれて、結局全体を”ゴリ巻き仕様”に設計し直すようなはめになる。
 スピニングリールでは”ゴリ巻き”はしないし巻きアワセもしない。っていう制限つけて使えば、おいそれとは買えなくなってる値段の高級スピンニングじゃなくても充分釣りが成立する。
 どうしても魚を止めなきゃならないときは、リールを巻くんじゃなくて巻く手はハンドルから離してリールのスプールを直接鷲づかみで止める(やけどしないように手袋したり水かけたりの工夫は自分で考えてやってね)。必要ならそのとき竿は真っ直ぐ魚向けて綱引きする。それで魚が止まって竿が立つようになったら竿を立てた分だけ巻き取るポンピングで寄せる。高負荷でゴリ巻きしなければスピニングリールもそうそう壊れない。
 というのが、ドラグについてあれこれ考えながらそのまま勢いでスピニングリールについても考えた私の今のところの整理である。

 異論はあるだろうし正解もあるようでないんだろうけど、メーカーやらカリスマやら他人の言ってることを鵜呑みにせず、ちゃんと考えて釣り人それぞれがたどり着いたのなら、それがその人にとっての正解だと思うので、みんな誰かの意見に安易に流されずに、いろんな人の言うことは参考にしつつ自分で納得いくまで探求してみたほうがいいよと、おせっかいながら書いておきたい。

 釣り人みんなバカばっかりで簡単に道具造る側に騙されていると、ろくでもない道具しか売ってない状況になると感じでいるので、アホみたいに他人の下した評価を鵜呑みにする輩の多さを腹に据えかねてエラそうに書いてみたところである。ああ~スッキリした。

2019年6月23日日曜日

ドラグについて大げさなことを謳ってるリールは信用しなくて良い(当社比)


 常々書いてきているように、ドラグなんてのは40年前のリールに既にいまと遜色ないような性能のものが搭載されていたぐらいで、ハッキリ言って画期的な性能を喧伝しているようなリールがあったら疑ってかかった方が良い。
 基本的にドラグという機構は、回ろうとするスプールと一緒に回るワッシャー(一番底ならスプールそのものでも良い)と回らない主軸に固定されたワッシャーの間にドラグパッドを挟んで適度に摩擦抵抗を発生させながら滑らせるという仕組みである。
 日本の釣り人は”日本製リールドラグ暗黒時代”が長かったので知らなかったから、急に進歩した技術が出てきたように感じるのか妙にありがたがってる節があるけど、あんなもんはドラグパッドの材質を適度に滑りが良くて調整幅に繋がる弾性があるものを選んでやることと、主流の3階建て方式にするか、パッド1枚で済ますかの選択とかで、表面積と直径を適切に稼いで安定した能力を発揮するようにどう設計してやるってだけの話である。
 ほかにも主軸が太いとスプールの傾きが押さえられるとか接する面積が増えるとかで安定性に寄与するのかもとかはあるけど、ドラグにボールベアリングはあきらかにベアリングの使いどころを間違っている。摩擦を安定的に発生させて作用するのがドラグであり、その時に発生している摩擦力に比較して極めて小さい摩擦力で回ってしまうベアリング入れてどうする。安定は必要だけど低摩擦性は全く必要ない機構のハズである。この辺もっと物理詳しい人とかにガッチリ理論整然と「アホ認定」していただきたいものだ。オレが分かってないアホなのか?
 ただ、そういう基本があった中で、リールの性格や使う状況に応じてどういうドラグを選ぶべきか、適切な選択ってのはあるように感じてきていて、ワシもドラグがやっと分かってきて面白くなってきたので、色々いじって楽しんでるので、そのあたりのドラグネタで、ドラグネタ自体は以前も書いたんだけど、それでもしつこくいってみよう。

 ドラグをパッド1枚にするか3階建てにするかは、現在主流が3階建て方式なのでそっちの方が優れていると思われているのかもしれないけど、前回ドラグネタ書いたときにPENN9500SSのスプール裏面の土星の輪っか型ドラグやらティボーのコルク1枚ドラグの優秀さを紹介したように、1枚でも直径大きくして表面積稼いであると良いドラグになってたりする。直径が大きいとその分回転したときに長い距離で摩擦を発生させるので摩擦を発生させて機能するドラグとして利点が生じているんだと思う。


 PENNスピンフィッシャーの小型の機種もドラグパッド1枚方式のが多くて、シーバスで愛用の4400ssや430ssg最近お気に入りの714Zも1枚方式である。
 ただ、これが714Zはデッカいテフロンのドラグパッドで、テフロンのドラグパッド自体は大森ダイヤモンドでもお馴染みなのだけど、1枚方式は初めてだった。
 これが、色々調べると普通はグリス無しで”乾式”で使うんだけど、乾式で使ってると摩擦で削れてしまうことがあるという情報もあり、そりゃまずいなとごく薄くドラググリス塗って使ってみたら割と良い塩梅で、これなら大丈夫だろうと調子に乗ってネッチョリと多めにドラググリス塗ったところ、思いっきり安定性がなくなって、止まるときは思いっきり止まるけど、ユルくしていくと全然止まらなくなり欲しいドラグ値に調整できなくなってしまった。
 ドラググリスの粘性って思いのほかドラグの効きというか調整幅に影響してきて、これまで使ってた緩めのモリブデングリスより、今使ってる比較的粘っこいCAL'sのドラググリスはあきらかにあまり締まってない早くからドラグが効き始めて、普通の3階建て方式のドラグについては調整幅が広くなった。グリスの粘性がドラグパッドが回るのにブレーキに働いてドラグ表面とワッシャーの摩擦以外のブレーキ力として補助的に効いている感じである。
 その粘性が、そもそもテフロン素材の1枚パットの場合、表面が滑りやすいことを利用して良い塩梅にブレーキ掛けてたのに、表面積が大きい1枚型ゆえにテフロン本来より滑らずネッチョリと粘るようになって、このクラスのリールで出したいドラグ値が出にくくなってしまったのではないかと考えた。
 グリス拭き取って”乾式”で使えば良いんだろうけど、ご近所はシーバスはともかくコイをかけるとドラグにかなり頼るやりとりになるので、そういうのを想定していない小型リールのドラグパッドのままでは”削れる”のが不安になってきた。
 ということで、幸い手に入らなくなってる714Z用のテフロンドラグパッドの代わりに4400ss用のカーボンシートのドラグパッドが使えるとのことなので、交換して様子を見てみた。
 当たり前だけど、これまで使ってた4400ssと同様に良い塩梅のドラグになって、カーボンのパッドとCAL'sのドラググリスは相性良く、調整幅も申し分ない。
 3階建てのパッドの場合、テフロンにCAL'sのドラググリスでも違和感なかったんだけどなかなか微妙なモノである。

 お次に、最近いじったドラグで驚いたのが前回もちょっと触れたけど、ポスカ1のドラグ。2枚が写真のような薄緑と白の混じったパッドなんだけど、メチャクチャドラグ値が上げられる。ラインが全く出ていかないいわゆる”フルドラグ”が余裕でできてしまう。石綿代替品とかいうやつだと思うけど手触りザラザラでいかにも摩擦力強そうな素材。スプールの座面に乗っている赤い繊維質のワッシャーもざらついてるけどそれ以上。
 ただ、逆にユルいドラグ値を安定してかけられない感じだったので、間に薄いテフロンパッドを噛ませて実質殺して小型リールに必要な適度なドラグ設定が可能な調整幅を確保しておいた。

 で、もいっちょちょっと面白かったのが、ハズレ引いたアルファ030のドラグ。フェルトか何かの柔らかい素材に樹脂がかけてある表面のドラグパッドなんだけど、2枚が完全に耳付きワッシャーに固着してしまっている。
 実はこの状態でも問題なくドラグ作動していて、固着していない面がワッシャーと滑ってるので機能するのである。無理矢理剥がすとボロボロになりそうだったので、グリスアップだけしてそのまままたぶち込んでおいた。
 この方式で、耳付きワッシャーの両面に滑る素材の薄いシートを貼り付ければドラグの高さが低くできて良いんじゃなかろうか?とか考えてたら、最近出たTAKE先生のリール本読んでたら、本職の技術者はさらに突っ込んでいて、耳付きのワッシャー自体を耐久性もたせたドラグパッドの素材で作って、ドラグパッド、耳付きワッシャー、ドラグパッドの3枚を耳付きドラグパッド1枚で代替、という設計のリールが紹介されていた。大型リールではちょっと強度面が心配だけど、小型リールなら問題ないだろうし軽量化と小型化に貢献しそうでナルホドという感じ。
 基本単純な機構で、もう新しい工夫とか出てこないように思うけど、こういう意表を突く改良点とか出てくるのをみると、まだまだ革新的技術が出る余地はあるのかもしれない。けど今のところ40年前のドラグからそれほどは変わってない。

 てな感じで、ドラグについて最近学習したことをまとめると、
一.ドラググリスの粘性はドラグの効きと調整幅に影響する。粘度が高いグリスにすると締めがユルい段階から効き始め調整幅は広がる。ただ、テフロンの表面積広い1枚もののドラグパッドとはテフロンの表面の滑らかさを消してしまうので相性悪い。
二.ドラグパッドの素材の性質がドラグの性能に大きく影響する(当たり前)。表面がざらついて摩擦が大きいモノほど高いドラグ値がかけられる。多分順番は石綿代替品、赤い繊維性、カーボンシート、テフロンの順でフェルトはカーボンと同じくらいで柔らかい分調整幅が大きくて耐久性とかが必要とされない小型リールに好適。

 という感じだと思う、で以前から気になってたのがスピンフィッシャーの3階建てドラグの場合、パッドが上からカーボン、カーボン、テフロンなんだけど、ひょっとしてこれ、同じ枚数でもその構成を調整することで効かせるドラグ値変えられるんじゃないか?ということ。
 そのへんをついでなので750SSで試してみた。予想では全部カーボンにするといつもよりドラグ値上げられるンじゃないか?というのが主な関心事項。
 いつもはドラグノブ締めていってギュッと止まるあたりで7キロ前後という認識で、そこからさらに締めることもできるけどあまり安定しなくて、ギュッと止まるあたりが調整しやすい得意なドラグ値だと思っている。なのでギュッと止まるあたりまで締めて秤でその時のドラグ値を3回計ってみた。
 結果は驚くほどに綺麗に予想通りで嬉しくなる。やっぱりドラグって単純で理屈どおりの機構である。わけの分からん不思議なフォースとかを発生させたりはしない。
 全部カーボンだと3回計って10.4、8.9、10.3キロと10キロぐらいのドラグ値。実際にはそこまで締めるとワシャ竿支えきれんのでこのドラグパッド構成にはしないけど、スピンフィッシャーのドラグをもうちょっと締めたいと思ってるマッチョな貴兄には全部カーボンをお薦めする。10キロぐらいなら余裕でリールはもちます。スプール握りしめて立木と引っ張り合いして確認済み。
 以下、通常の1枚テフロンが7.8、7.5、7.8で8キロ弱、実際には竿の曲がりとか見てもうちょっと緩めて6~7キロで使ってた。
 テフロン2枚だと6.4,6.7,6.6、全部テフロンだと5.0、5.2,5.4と順次ユルくなっていきましたとさ。
 ということでもっとドラグ値上げたいならばドラグパッドに石綿代替品か赤い繊維質のを混ぜるとかで、もちろんリールの耐破壊強度を超えないようには考えなきゃだけど、ドラグ値なんて上げられそうなんである。
 カタログ数値でドラグ最大30キロとかのスピニングリールがあっても、30キロのドラグ値をスピニングタックルでかける場面って想像できなくて、そんな数値はカタログ上のこけおどしでしかないということである。
 実際に使うドラグ値を想定してその付近の調整幅や作動の安定性があるかどうかってのが重要で、そこはカタログ見ててもわからんから魚掛けてみるか、車とかにラインの先結んで走ってもらうとかして確かめていくしかないんだと思う。
 ちなみにこの実験ではグリスは以前使ってたモリブデングリス、ドラグノブは純正のはドラグワッシャーを押さえる部分が樹脂製で、長距離走られると熱で溶けるという噂があるので、念のため押さえるところが真鍮製の第4世代750ssmのドラグノブにしてあるのが細かい気遣い。グリスは次回出番がめぐってきたらCAL’sに塗り直しの予定。


 スピニングリールにおいて10キロ程度までドラグが締められたら充分で、耐熱性含めた耐久性を考えると、大型リールではカーボンのパッドが今のところ最良で、小型リールでは広い調整幅とか扱いやすさでフェルトが選ばれてるんだろう。テフロンは滑りが良いので台座とかのワッシャーに使うのにもドラグに与える影響が少なくて良いだろうし、ドラグパッドとしても経年変化とかが少ないし良い素材。
 石綿代替品は”フルドラグ”が必要な特殊な釣りにおいては使うのかも知れないけど、正直リールか体を壊しそうで怖いぐらい止まる。
 赤い繊維質のワッシャーの素材はそこまで極端じゃなく、リールにはよく使われてきた素材なので耐久性やらにも問題無さそうだしドラグ値上げるならむしろこっちを試す方が危なくないかもしれん。
 写真は左から、ポスカ1の石綿代替品2枚と赤い繊維質の1枚、750SSのカーボン2枚とテフロン1枚、マイクロセブンC1のテフロン3枚、714Zのテフロン1枚、タックル5No.1のドラググリスでグッチャリ濡れたフェルト3枚でございます。

 というようなことをお勉強して、ドラグは単純な機構であり、説明できないような不思議な力を発揮するようなモノはないと改めて確信しているので、皆様釣具屋にはいつも言ってるように適度に騙されておいて騙されすぎないようにしましょう。というお話でした。

2022年1月22日土曜日

オミクロンよりアトラスのほうがヤバい?

  昨年末に大森製のコンパック「アトラスⅡ」を紹介したときに、norishioさんとオリムピック製初代?「アトラス」との交換密約が締結され、年明けてお年玉交換とあいなった。左が我が家にやってきたそのオリムピック「アトラス」。

 「ねっとり濃厚なレビューを」とのご要望ではあったけど、正直古い時代の単純なウォームギア機で目新しい機構とかあんまりないだろうから、ネットリ書けるか自信が無かったけど、分解清掃してみたらこれはなかなか相当に面白かった。

 ということで、ネットリ濃厚になるよう書きまくってみたいので、ご用とお急ぎでないお好きな皆様におかれましては、楽しんでいただければと思っちょります。

 まずは、届いて外観見てクルクルッと回してみたりするんだけど、塗装も銀系だし、スプールもアルミの鏡面仕上げで全体的に銀ピカでキリッとしてる。そしてコイツは国内販売版なんだとおもうけど、昔懐かしい”トビウオ五輪マーク”で「Atlas Olympic」と銘がある。多分蓋だけ国内版と輸出用「コンパック」ブランド版を変えてたんじゃないかと思うけど、本体は金型作り直すような手間はかけられなかったようで「Compac Japan」と足裏にある。「アトラスⅡ」の時に「gapan」って謎の国名は何じゃろ?って思ったけど、筆記体のJの大文字だったと判明。分かってみれば謎でも何でもないな。

 ワシうすうすお気づきの方もおられるかもしれないけど、ちょっと”ウォームギアフェチ”な部分があるようで、ギアを重ねず横並びにするウォームギア機ならではの薄っぺらい本体にたまらない魅力を感じたりしちゃうんです。キュッと締まったこのボディーライン、実にイイ!

 こまかいところだけど、ラインローラーを固定してるマイナスネジ、それをラインを引っかからなくして収めるために金属製の襟巻き?みたいな部品がハマってて、なかなかに丁寧な仕事ぶり。ラインローラーは固定式で固い金属系。

 逆転防止のオンオフのスイッチが変わってて、ハンドルの根元の樹脂性の円盤で切り替えする形式。

 お尻の油差しのキャップがハマってる筒は内部では主軸のお尻が刺さる場所でもあるんだろうなとは思うけど、本体のお尻の部分がパスッと叩き切ったような造形で、そこから筒が伸びてることには意味があるんだろうか?まあ、バラしていけばそのへんはオイオイ分かってくるはず、とこいうことで、とくに整備せずとも良いぐらいに軽やかに回っちゃいるけど分解清掃。

 まずはスプールからいっとくかと、スプール外そうと樹脂性のドラグノブをクルクル回していくと、主軸からスプール自体は抜けるんだけどドラグノブはスプールにくっついたままで、頭にマイナスのネジ山が見えるしネジ外すんだろうなと、外すとそれでもまだドラグパッドを押さえている金属部品は外れず、スプ-ルにハマってるCクリップを外してようやく部品外せてドラグパッドが抜けるという謎構造。オリムピックの設計者ってドラグノブが落っこちるのをよほど恐れていたのだろうか?「エメラルド350」でもドラグノブは主軸から外れてもCクリップで引っかかってて力かけないと外れないつくりになっていた。

 でもって、ドラグパッドとワッシャーも独特っていうか、ドラグの構造自体がまだ黎明期の日本のリール設計思想ではちょっと理解が届いてない感じがして、それはそれでなかなか味わい深く面白い。写真にあるようにドラグパッドは厚めのフェルトのが2枚入ってるんだけど、ドラグの仕組みというか構造を分かってる読者の皆様なら「???」と頭に疑問符が並ぶだろう。ドラグパッド2枚使うドラグシステムが無いわけじゃない。通常は直径小さく摩擦力小さくして「ドラグパッド」の仕事を邪魔しないようにチョンとスプール座面に単なるワッシャーとして乗せられているパッドをスプール上面のドラグパッドと同様の大きさ素材にしてスプールを上下から挟むようにしたドラグとかで、「ミッチェル314」とかは実質そうなってる気がする。

 ただし、通常スプール座面にはさっき書いたように小さなワッシャーが入ってるだけで、ドラグとしてはスプール上面から穴ぼこもうけてそこにドラグパッドとドラグワッシャーを配置する。その場合は3階建てが主流でドラグパッドは3枚入る。あるいは1枚というのも珍しくはない程度にある。大型リールでロングスプールの中に3階建て以上のドラグをぶち込んでるのもあったと思うけど珍しい事例で、かつその場合のドラグパッドは奇数だったハズである。なぜなら、多層式のドラグの場合は構造がスプールと同期する面(以下「ス面」)と主軸と同期する面(以下「軸面」)で適度な滑りと摩擦の素材でできたパッドを挟んでやって、固定された主軸に対して回転するスプールとのズレに対し適度に摩擦力を生じさせる事によってブレーキとして”ドラグが効く”ようになってるので、底の方から考えると最初は「ス面」でスプールそのものかス面同期のワッシャー、次にドラグパッド(ドラグパッドをワッシャーが兼用というのもあり得る)、その上に軸面同期のワッシャーが来て、またドラグパッド、ス面ワッシャー、ドラグパッド、軸面ワッシャーという感じに3階建てだとなってて、ス面と軸面は交互に来ないと、ズレないので間のパッドも一緒に同期して回るか止まってるだけで意味を成さないし、かつ一番上が軸面ワッシャーで終わらないと、ドラグノブでスプールと一緒に回転するス面ワッシャーを押さえる事になりドラグノブが回ってしまいかねずこれまた塩梅が悪い。ドラグパッドの数を増やせば増やすほど比例して安定性に寄与するとかなら、ドラグパッドとワッシャーを兼用させてかつ薄くして5階建てとかもあり得るのかもしれないが、ドラグパッド1枚でもデキの良いドラグは充分性能良いので、多けりゃ良いってもんでもなさそうには思う。ちなみにスプールと主軸の回転時のズレで摩擦抵抗を発生させる通常のドラグと逆に主軸が回転して本体同期面とのズレでドラグを効かせるリアドラグ方式ではドラグパッドは2階建てとか偶数になるハズだと思う。両端に回転する軸面ワッシャーが来ないようにすると最小枚数では本体同期ワッシャーで軸面ワッシャーをサンドイッチにするからワッシャー同士の間、ドラグパッドが挟まる面は2面となる。大森マイコンシリーズはそうなってる。

 でもって今回のアトラス。ブ厚めのフェルトパッドが、スプール底面のス面の次に来て、次に写真の様に主軸に縦溝を入れてその溝に出っ張りをはめる独特の形状の軸面ワッシャー、その上に2枚目のフェルトパッド、そしてドラグノブを構成するドラグパッドを押さえる金具と来ている。これ、上の方のドラグパッドは軸面ワッシャーとドラグパッドの金具というどちらもドラグが効くときには主軸に固定されて回らない部品の間にあって挟まれてるだけで仕事してねえんじゃネェの?という状態である。ドラグノブが上からネジ止めされているとか複雑な構造なので、ひょっとしてこれネジが主軸に直結してるけど、ドラグパッドを押さえてる金具は”浮いてる”構造になってて、ドラグ作動時にはス軸と同期して金具は回るけど、ドラグ値が変わったりしないようになったりしてて、とかも考えてみたけど、ネジは金具と樹脂性のドラグノブの部品を止めてるし、ドラグ効かせた状態でスプール回してみても、ドラグノブ関係はどの部品もスプールと同期はせずに主軸に固定されているようにしか見えない。

 上のドラグパッドはドラグパッドとしては機能しておらず”死に体”のようである。ただドラグパッドとしては機能してないけど、無くて良いかというとこのリールにおいてはそうでもなさそうなのである。このドラグ、多少調整幅は小さめだけどちゃんと効いてくれてドラグとして充分機能しているのである。ドラグとして機能するために地味だけど重要な部品が一見なさそうに見えるんだけど、おわかりだろうか?何かといえば”バネ”である。普通の3階建てのドラグなら多くはドラグノブの中に、ミッチェルとか多分その真似しただろうPENN714zとかではドラグノブの下にビヨヨンと金属板を加工したバネが配置されている。これ適度にドラグノブでドラグパッドとワッシャーを締め付ける圧力を調整してくれて、無いと調整幅が極小さくなって使えないドラグになるようだ。でもバネ無しのアトラスのドラグ、まあそこそこ使用に耐える実用的なドラグには仕上がっている。どうも、ブ厚めのフェルトパッドが、1枚はドラグパッドとしては死に体だけど調整幅を持たせるバネ的には効いてるようで、無駄に入ってるわけでもなさそうなのである。こんな日本スピニングリール黎明期(「ベルせか」でみると1957年から60年のカタログに「アトラス No.89、1,600円」で登場、大森製「コンパック89 アトラスⅢ」の”89”ってなんじゃろ?と思ってたけどオリム由来なのか?)から、小型リールのドラグパッドにはグリス染ませたフェルトが良いなんてのはあったりまえのコンコンチキだったようである。何度も何度もしつこく書くけど、今さらすんごい性能のドラグができましたってなことを謳ってる宣伝文句はデタラメ大げさ紛らわしいことこのうえないったらありゃしないのである。

 てな感じで、スプール関係はこんなもんだろうと満足して、次に本体蓋をパカッと開ける。

 うわっなんか内部も銀ピカやな!という一目見ての感想なんだけど、オシュレーション(スプール上下機構)カムが真鍮製なぐらいで、他はローター軸のギアはまあ良くあるとしてハンドル軸のギアも見た目ステンレスなら、オシュレーションのクランクもネジも当然主軸もステンレスにしか見えない。

 ウォームギアって精度出すの難しいンじゃないの?ステンレスって固くて加工しにくい印象だけど、オリムピックってなにげに技術力あったんだなと感心する。ハンドル軸のギアはステンじゃなくてニッケルシルバー(銅と亜鉛とニッケルの合金「洋白」)って可能性はあるか?でもそれなら真鍮でよさそうだし必然性がないか?いずれにせよさすがは一時は国内で向かうところ敵無しを誇った釣り具メーカーっていう技術力である。海外のリールマニアの掲示板で「時計のSEIKOから暖簾分けしたメーカーだから技術力あったんだよ」とか書いてる人がいてちょっと笑った。それ精工ちがいでオリムピックは元の名前が「植野精工」で時計のほうは「服部セイコー」って教えてあげようかと思ったけど、あんなマニアックな輩どものところに、のこのこ「古いリールの大好きな日本人でーす」って無邪気に入ってったら、待ってましたとばかりに質問攻めにされて英語力もないのにエラい目に遭うことは間違いないのでやめておいた。まあ英語圏じゃオリムピックはSEIKO関連企業だったという伝説があったって良いんじゃないの。誰も傷つかないし、そういう遠くに行くと伝言ゲームで根も葉も生えて話が盛り上がって繁ってくってのも楽しいジャン。

 でもって、この時点で銀ピカ以上になんじゃこりゃなのが、オシュレーションのクランクが文字通りクランク(曲折)してることで、通常の単純クランク方式と違うのは、支点からの距離が違う事でスプール上下の幅が変わるのと、当然それに伴って動かす幅が違えばそのために必要な動力も変わってくるっていうのがあって、このアトラスの場合はスプール上下させるほうの”枝”が短いので、スプールの上下幅は小さく、スプール上下に必要な力は小さく済むはずである。要するに”テコの原理”そのもの。ギアの歯車を介してスプール上下を減速して必要な力を軽減するオシュレーション方式は一般的だけどこういう方式は初めてみた。そして、もう一つ、曲げてるので本体内でクランクの可動位置がギア方向に小さくおさえられていて、スプールの上下幅(≓スプールの幅)が狭い事ともあいまって、リール全体で寸詰まりのコンパクトな設計になっている。お尻に筒が突き出てるけど、その部分を除いたぶった切ったような本体後部までにギアと主軸の先を除いたオシュレーション機構が収まっていて、逆転防止もハンドル軸裏にラチェットの歯を設けてる方式なので全体的にちっこいスピニングリールになってるのである。この方式がオリムピックの独自設計なのかコンパックブランド側の指示なのか、はたまた元ネタがあるのか、いずれにせよ初めて目にする方式で面白い。お尻の筒は同社を代表する大ヒット作「モデル93」シリーズも彷彿とさせて、この時期日本のメーカーは海外製品の模倣の時期にあったはずだけど案外オリム独自の設計だったりして。

 独特のクランク方式も初めて見たけど、初めて目にするといえば、このリール、ネット情報によるとスラストベアリングとかいう、見たことないボールベアリングの一種が使われているらしくて、これは是非ともみておきたいと、ローター外そうとしたらば、またこれが問題発生で”外れない”。

 外れないのはダム社「クイック110」で経験済みで、ローター自体にネジが切ってあってローター軸のギアを固定してローター回すんだろうなというのは、ローター止めてるナットを外してもネジ山がローターに続いている感じにみえるので、予想はできるんだけど、パーツクリーナーで洗浄するために一旦外してたハンドル軸のギアを填め直して、ハンドル軸の穴に先細ペンチを突っ込んでギアの回転を止めて、ローター回そうとするんだけど、ローターが外れるより両ギアがズルズルと回るのが先で外れてくれない。困ってしまって、元の持ち主であるnorishioさんに助けを求めると、手元にあるもう1台の方はハンドルまで付けた状態でローター回せば外れたとのことで、少なくとも”ハメ殺し”ではなく固着してなければ外せそうではある。1回諦めて全体組み直してあったのを、最低限必要な部分だけ外して、ハンドル残してローター回そうとしたらハンドルが外れて上手くいかなかったけど、クランクが残ってるのをみて、ひょっとしてクランク残したままハンドル軸のギアの穴に棒突っ込んで回したら”つっかえ棒”状態になってギアは回りようがなくなって、ローター回せるのでは?と閃いて試してみたら”ビンゴ”でローター回ってくれて外れた。一安心。

 外してみると、ローターの下から噂のスラストベアリングがおでましになる。あれやね、なんか回転する玉をはめたタンバリンみたいな輪っかを、玉が転がるへこみが設けられたリングでサンドイッチにしてる構造で、なにが普段よく見るボールベアリングと違うんだろうと、簡単にネットでお勉強してみたところ、カチッした金属の枠の中に玉が収まってるボールベアリングとは、横というか側面が空いてるところが大きな違いで、挟みつける力加減で適切な回転の軽さとかに調整できるようになっているようだ。

 回転を締め付けで調整するという点では、「ミッチェル408」とか触ったことのある機種では「アルチェード2CS」にも入ってた、開放式で外すと玉が転がり落ちてしまうタイプのベアリングに似てるけど、このスラストベアリングでは玉が転がり落ちないように枠でまとめている。なかなか珍しいベアリング方式で、色々と変わった個性的なリールだなと思う。

 ちなみに、ベアリングのはまってる横にチョコンと突き出してるのはベールリターンのための”蹴飛ばし”。

 という感じで、ローター外すのに苦戦したけど、でっかいCクリップではめ殺しっぽくなってる逆転防止の樹脂性オンオフスイッチは特に変わった構造でもなさそうなので今回放置したけど、ほかは無事分解できて、透明で部品の様子がよく見えるので最近気にいり始めている「ABU純正グリス」でベアリングにもグッチョリ、ギアにも当然グッチョリで仕上げた。小型機ならいいけど、PENNの大型機をこのグリスでいつものようにグリス漬けにしたら、ワシ老後の資金が心配になるな。まあそんな感じで仕上げたんだけど、ベアリングの締め付け具合がやっぱりコツがいる感じで、最初キッチリローターで挟んで組んだら強すぎたようで回転重く、仕切り直しでちょっとユルいかなというぐらいにローターはしておいて、ナットでしっかり留めたら正解だったようで軽やかにクルクル回ってくれるようになった。ナットは最初緩み止め剤が付着していたので、実際に使うならネジ用の緩み止め剤を使っておくのがイイのかも。

 さすがに、半世紀を越える昔のこの時代の綺麗な個体を、淡水ならともかく海で使う気には恐れ多くてならんけど、使ったら多分これ普通に魚釣れそうに思う。思った以上にしっかり作られてるリールでちょっと驚きに似た感情を覚えたところ。オリムピックっていうと、後年「マミヤOP」時代にダイワ・シマノに水をあけられてパッとしなかった時のイメージが正直残ってるんだけど、ワシがインスプールに手を出してズブズブと沼に沈む原因の一つになった「トゥルーテンパー727」もしっかりした作りの実用性充分の良いリールだったし、オリムピックってのは日本で一つの時代を築いた偉大な先駆者だったんだなと改めて認識させられたところである。オリムピック「アトラス」興味深くてなかなかに素晴らしいリールでした。norishioさんありがとうネ。

 でもって、気がつくとこれで我が家に、3機種「アトラス」が揃ったわけで、せっかくなので並べて記念写真パチリ。

 写真でもオリムピック「アトラス」の寸詰まった感じが分かるんじゃないでしょうか?あと、右端の「アトラスⅢ」で200g切るぐらいとかなりの小型機なんだけど、他の2台もさらに小さいかもってぐらいに可愛い大きさのリールで、1950年代の昔から、こういう小さく”精巧”なモノを作らせると日本の技術者はやっぱりやりおるんだなと感慨深い。

 ということで、今年1発目の”スピニング熱”ネタはいきなり筆が乗って書きまくっておりますが、実はこのあとに控えてるネタが結構あったりして、今年もスピニング熱の症状はぜんぜんおさまっちょらん感じで、先行きが危ぶまれるのであった。

 ということで、リール好きの沼の住民の皆様、今年もボチボチと書いていきますので旧年同様ご贔屓に。この記事最後まで読んじゃってるような人は、もう沼から抜け出せない運命だと思うので、一緒に沼に沈んで仲良くやりましょうね。

2018年12月1日土曜日

黄昏よりも移ろうモノ、潮の流れよりも紅きモノ、スプールに埋もれし偉大なる部品の名において、 我ここに闇に誓わん、我らと道糸で繋がりし全ての獲物どもに、我と汝が力もて、等しく重さを与えんことを!

 ドラグについてちょっと書いておこうと思ったら、前回予想外に筆が走って長くなってしまい、1回で書こうと思ってたネタが書ききれず。
 前回のが「理論編」としたら、今回はそれを踏まえた「実践編」という感じになるかと。ホントは釣りにおいて実践っていったら釣り場で魚相手にする話かもだけど、お部屋でリールのドラグをいじりまくって調整しまくるという感じになっております。
 ”赤子泣いてもドラクいじるな派宣言”しているところだけど、それは魚とのやりとりの最中の話で、魚釣る前にはドラグの試験やら手入れやら調整やら改良やらあれこれ頭と手を使っていじって遊んで、それもまた楽しという感じ。

 ぶっちゃけ、薄いワッシャーを作るために買ったテフロン仕上げのガラス繊維シートが滑るし丈夫そうだし、量は多くて余ってるしで、ドラグに組み込んで遊べるんじゃないだろうか?というのが直接の動機。
 上手くいかなくても別にそれほど困ってるわけじゃなしで気楽に行く。
 まずは、ドラグに使われる素材の違いとか見るのにドラグパッド1枚の単純なドラグの方が比較しやすいので、ちょうどドラグがイマイチで、もうちょっとなんとかならんのかというスポーツラインST-600Xにまたおでまし願う。
 とりあえずワンカップの蓋でドラグパッド作ったときに、元々ドラグパッドとして?入れられていた曲がった金属ワッシャーと、軸と同期して回らないワッシャーとの間にワンカップ製のを挟んでやっつけ仕事としてあったけど、ちゃんとしたドラグパッドを入れる場合、スプールの底と回らないワッシャーとでドラグパッドを挟んで、曲がったワッシャーは、ドラグノブと回らないワッシャーの間の回らない位置でワッシャーを押さえつけておくためのバネとして働いてもらうのが合理的なように思う。
 ひとまずドラグパッドはあり合わせで3種類用意。下から一応の基準となるワンカップ蓋製、テフロン仕上げガラス繊維製、コルクシート製って感じで、テフロン仕上げガラス繊維製が本命か。これらをグリス塗ってスプールとワッシャーで挟んで、ドラグノブ締めてライン手で引っ張り出したり、竿にリール付けてペットボトルぶら下げてみたりしてドラグの効き具合、滑らかさ、調整幅などをみてみる。

 ちょっと脱線するけど、ドラグに塗るグリスはこれまでモリブデングリスを使ってきた。これは昔の釣り人には”モリブデングリス信仰”とでもいうものがあって、リールにゃ高価なモリブデングリスが良いと信じられていたのである。でも最近じゃ、リールにはリール用のグリスが良いって話になってきてて、でもワシのようなPENN使いにはどっちかっていうとギアの摩耗防止やら滑らかな潤滑性能やらより、海水浸水した時の防水性が重要だと思うので、某PENN使い氏推奨のマキシマのウォータープルーフグリスを値段も安いのでここ何年か使ってる。だけど、ドラグのグリスだけはドラグの効き方が変わってしまうのが不安で昔からのモリブデングリスを使ってたんだけど、調べてみるとモリブデングリスってそもそも圧が掛かる場所の金属用でドラグに向いてるとも思えないので、ドラグ用のグリスで、モリブデングリスに近いどっちかっていうとユルめのがないかと探して、PENNのパーツ屋さんである「MYSTIC REEL PARTS」さんところで売ってる「Cal's Universal Grease」の小型リール用という紫のを買ってみた。順次ドラグ用グリスはこっちに移行しつつある段階。今のとこ実戦投入済みはトゥルーテンパー先生だけだけど問題なさそうで良い塩梅な気がしている。

 話本線に戻して、第1回ドラグパット素材別試験の結果は、期待のテフロン仕上げガラス繊維製は思ったほど優秀って感じでもなく、悪くないけどワンカップ蓋製とあまり変わらない印象。まあ使えるけど改善って程でもない。
 コルクはしゃくりまくって全くダメ。柔らかく弾力あるので調整幅は稼げるかなと思ったけど、引っかかりよすぎて安定しない感じ。そもそも写真貼り付けるコルクボードみたいな安物コルクではダメなのかも。もっと目の詰まった高級ワインの栓ぐらいの上等級のコルクで比較しないといかんのかもだけど、やっぱりコルクは天然素材だし品質差とかあって当然で扱い難しい感じだ。コルクはやめておこう。
 ドラグの効き自体はコルク以外は似たような感じなので、調整幅がマシな感じのワンカップに戻すかなと思いつつ、ダメ元でワンカップの上にガラス繊維製を乗せて試してみたら、なんとなく一番良さげに感じたので、悪くはなってないのは確かなので暫定的にこの組み合わせにして、次はカーボンシートとフェルトという今時のスピニングリールのドラグパッドの素材として最も一般的な2種類も試してみなきゃなと、とりあえず第1回のドラグパット素材試験は終了。
 カーボンとフェルト入手するのに日数結構空いて、その間釣りに行って実際に使ってみて、セイゴ釣ってボラをスレで掛けてバラして、セイゴはアワセた時にチリッチリッと鳴ったぐらいでドラグ使ってる感じにはならなかったけど、ボラスレで走られたとき、意外なぐらいにドラグちゃんと効いてくれて、ハリ途中で外れなかったら上げられてた気がする。それなりに使えるドラグになったようでよろしいンじゃなかろうか。 


 でもって、第2回のドラグパッド素材試験のまえに、トゥルーテンパー727のドラグが、緩めのドラグ値では実用上問題ないけど、きつめに締めて止めたい状況で”滑り始めたら止まらない”という状況が釣り場で生じて、とっさにスプールに手をやって止めて事なきを得たんだけど、ちょっと改善が必要だなという案件になっていた。
 構造から考えて、新品当時のドラグ能力は悪くなかったんだろうと想像できるけど、何しろ永い年月が経っているので、ドラグパッドがペッタンコのツンツルテンになってるのはある程度いたしかたない。
 ここで、適度に滑りが良くて凸凹もあり、かつ布状なのでひたすらツルツルというわけでもなく、締めればそれなりに摩擦も生じるであろうテフロン仕上げガラス繊維製のドラグパットを試してみた。ついでにドラグいじる度に四苦八苦して外すのが面倒になって、穴に先端を突っ込んでCリングを外すペンチも使ってない安物ペンチをハンドドリルでヤスリ回して先端尖らせて作ったった。

 最初、純粋にテフロン仕上げガラス繊維製単体の実力を見てみたいと全交換してみたら、薄くて厚みが足らずドラグノブ一杯に締めてもスカスカでドラグ効かなかった。仕方ないので、元の純正ドラグパッド上乗せにして2枚づつのパッドが入ってる状態にしてみると、多少締めたときのドラグ値が安定したような、それ程でもないようなという感じだった。まあ、これも悪くはなってないかなと実戦投入。ダメならカーボンパッド購入かと思っていた。
 しかし、お部屋での試験はパッとしなかったこの調整が、釣り場では劇的な改善を生じさせた。きつめに締めたときの滑りすぎも改善した感じだけど、ふつうにドラグ効かせて魚が走っているときのドラグの安定性が素晴らしく良くなった。ほぼ竿お辞儀とかなし、竿一定の角度で曲がったままで走ればライン出るし、止まればラインの出も止まって竿が立てられるようになる。ぶっちゃけ”使える”程度じゃなくて”良いドラグ”になってしまったと思う。
 スレ掛かりのスズキとの長時間のやりとりを、身切れもさせず一定の張りを道糸に与え続けてしのぎきってくれた。釣果的には「釣ったけどイマイチ納得してねぇ」感じになっちゃったけど、トゥルーテンパー先生は実に良い仕事っぷりだった。
 話また横道にそれるけど、TAKE先生のレバーブレーキリール本を読んでたら、グレ釣り黎明期には足を短く改造したインスプールスピニングでハンドル逆転させながらローターに指をあててブレーキ調整して魚とやりとりしていて、それをヒントにダイワがリールのローターの底に外側から自転車のブレーキのようにブレーキパッドを押しつける初の「レバーブレーキスピニング」を開発して今に繋がっていくとのこと、その時に使われてたリールが大森製とかオリンピック「ツルテンパー」だったと書いてあって、ツルテン?何か聞いたことある名前だなと思ってたら、次のページで足ぶった切って短くした「トゥルーテンパー(TRUE TEMPER)」の写真がドンと載っていて思わず電車内でオウッフとか変な声でそうになった。トゥルーテンパー、われグレ釣ってたんけ~!

 ということで、トゥルーテンパー先生はこれで良いだろうというところまで調整できたので、予定どおりスポーツラインST-600Xで、まあこれ以上あんまり変化しないかも知れないけど、百均の手芸コーナーでフェルトも入手したし、怪しげなカーボン製中華ドラグパッドも通販で安く手に入れたので、第2回のドラグパッド素材試験。
 ポンチで穴開けて外周はハサミでチョキチョキだけどカーボンシートはさすがに堅くて切るの苦労した。

 上から、ワンカップ蓋製、フェルト製、カーボン製の順で比較は単体で実施。
 密かにカーボン製ドラグパッドが結局良かったというつまらない結果になるんだろうと予想していたけど、カーボンのドラグパッドを入れたところで、この小さい直径のドラグではそれほど安定した作動は見込めないのか、正直ワンカップ蓋製と大差ないように感じた。
 逆にフェルト製は、こいつだけグリスじゃなくて油を染みこませて使ったけど、コルク以上にフワフワと柔らかいのでシャクって使えないのならまだマシで、グチャッと折れて潰れてしまうのではないかと思ったけど、意外に大丈夫で、でもやや不安定でワンカップとカーボン単体に比べると竿先が小刻みにお辞儀する感じ。引っかかって不安定というほどではないのでドラグパット複数枚使う形式とかなら意外と手芸用のフェルトでもいけるかも知れない。
 後はカーボンの上にテフロン仕上げガラス繊維製のパッドを重ねたらどうだろうと、まあワンカップ製とあんまり違わないだろうことは分かりつつ重ねてみた。
 これが、お部屋段階でちょっと良い感じに安定してくれた。カーボン製パッドがスプールの穴にギリギリ填まって回転してないようだけどそれが良いのか何なのか、理屈は分からないけど明らかに良い気がする。ということで次回いつ出番があるか分からんけど、スポーツラインST-600Xのドラグは下からスプール本体、カーボン製パッド、テフロン仕上げガラス繊維製バッド、軸固定金属ワッシャー、曲がった金属ワッシャー、ドラグノブという構成で行ってみたい。部屋でドラグ滑らした感触的には、普通に良いドラグになってて、70年代の古くさい外観のリールに今時基準の実践的ドラグってのはなかなか羊の皮を被った狼っぽくて良いかも。

 なんやドラグの改良って簡単やン。ドラグ値最大10キロ必要とかのキッツイのは素人じゃ無理なんだろうけど、小型スピニングのドラグ程度ならなんも難しくないジャン。っちゅうわけでもっと他にイジリがいのあるリール転がってないかなと蔵を探したら、あったあったダイワの「ウィスカーSSトーナメント600」。
 ダイヤモンドキャリアーNo.1の後継選びでスピンフィッシャー4300ssに敗れ去って蔵で眠ることになったものの、小型スピニングリールに初めて投げ釣り用の遠投リールに使われていたテーパーのついたロングスプールを導入した”革命機”である。
 このシリーズまでリアドラグブームが吹き荒れていた日本のスピニングリールに新風を吹き込み、これ以降はお尻が四角いスプールの長いリールが大流行して、リアドラグブームを起こした革命機マイコンの大森製作所も、晩年にはなんかそれっぽいモデルを作ってたってぐらいに、リールの世界に変革をもたらしたリールのようだ。と最近お勉強した。
 80年代半ばの発売なので、私が使っていた90年代には既に型遅れのリールだったはずで、たぶん代々木にあったカディスあたりの中古釣具屋で買ったかJOSさんに譲ってもらったかあたりだと思うんだけど、入手経路が思い出せない。けど、なんでこのリールだったのかは分かるような気がする。
 スピニングリールが本格的に高級化しだすのは、さらに後のトーナメントEXあたりからで、それにくらべれば、SSは革命的だったんだとしても、ボディーは樹脂製だしラインローラーやドラグにベアリングなんて入ってないし値段も新品でも2万円もしてなかったしでナマジ好みの”実用機”だったんだと思う。
 でも、今に繋がっていくスプールの大きなスピニングの基礎的な機構は揃っていて、例えば長いスプールに平行に巻くためベイトリールのと同じ仕組みの平行巻機構でスプールを等速で上下させていたり、大きな口径のドラグをスプールにぶち込んであったりと基本は良くできているスピニングだと思う。
 使っててバネが壊れてすでに部品が手に入らなかった以外は特に問題なく使いやすく感じてたと思うけど、当時使ってた釣り人のブログ記事とか読むとライントラブルが多くて苦労したとか不評がけっこう目について違和感を覚えた。渓流でも近距離戦が好きであんまり遠投とかしないので、テーパーついてるがゆえのドバッとラインが出る不具合とかにたまたま縁遠かったのかも知れないけど、正直このぐらい良くできたリールに文句言わなきゃならん釣り人ってヘタクソなんと違うか?と疑っている。
 みんな飛距離、遠投ってうるさくいってた癖に、ライントラブルが嫌だからトラブル起こらないリールを作ってくれってなって、ダイワなんてSSトーナメントと反対に逆テーパーつけたスプールをつけるにいたってて、金持ったヘタクソの要望に応えて道具開発するのが正しいのかワシにはよう分からんわい。遠投派の上手い人とか「昔のテーパーのついてたスプールの方が良く飛んで良かったのに」とか思ってないかしら?遠投性能なんてどうでも良いと思ってるから人ごとだけど心配になっちゃうワ。
 コイツの色違いなのか後継機なのか、米国じゃ瞬間逆転防止機構もついてないような”古い設計”の黒金仏壇カラーの「トーナメントSS」が少なくとも2012年までバスプロショップスのサイトで売ってたってぐらいで、テーパーついてて良いんだと思ってた玄人衆もいたんだと思う。けど日本じゃ「助けてダイワえもん!スピニングで投げられないんだよ~」と素人衆に泣きつかれてダイワえもん仕方なく「イーグージースト~」って出してきたんじゃないの?
 とまあ、自分の”昔の女”を悪し様に言われたように感じて感情的になってしまったけど、久しぶりに会ってみたら、最後ベールスプリングが破損してオレたちの関係は終わったんだと思ってたけど記憶違いで、逆転防止機構のバネが壊れてた。ちゃんと部品なくさないようにテープで本体に貼り付けてあるのが我ながらマメだな。
 この頃のダイワの音のしない逆転防止機構は独特で、良く目にする爪についた薄い金属板でラチェットを挟む方式じゃなくて、ローター(軸のギア)と一緒に回る小さな円盤に輪っか状のバネをぐるっと巻き付けて、そのバネの端でラチェットに立てる爪の部分を正回転では引っ張ってフリーにして、逆回転の時には逆方向に引っ張って爪がかかる方式。
 壊れた当時は、リールの構造とかぜんぜんうとかったので直しようがないと思ったけど、今見ると適当なステンレスのピアノ線とかでバネモドキ作ったら直せそうなので、ドラグいじって遊ぶついでに直してしまおう。ベールスプリングみたいに反発力と耐久性が必要な動きをしないので大丈夫そうな気がする。
 バラしててだんだん思い出してきたけど、使ってたときもなんでこんなややこしい組み立てかたしてあるンやと思ってたぐらい、パーツ数自体は大したことないはずなのに面倒くせえ構造で写真上のようにお尻のカバーを外してフォークみたいなピンを外して平行巻の棒を下げると、隙間からマイナスネジの頭が見えるので、コレを外すと主軸が上から抜けて、ローターが外せるようになって、今回はこの時点で目当てのローター軸ピニオンギア上部についてるラチェット等の逆転防止機構部分が出てくるのでここまでしかバラさなかったけど、本体のギアとかにグリス塗ろうとするとPENNとかだと最初に外せる本体カバーが、ローターが外れたこの状態までこないとバラせないという「おまえは箱根寄木細工の秘密箱か!」という状態。今回も組み方分からなくなるといけないので写真撮りながらバラした。
 スプールを長く大きくしたので、ローターも大きくなってその中に逆転防止とかぶち込んだ都合上こうなったと読んだけど、逆転防止って普通ここについてるやろと思うのでイマイチ納得いかないが、事実そうなってるので仕方ない。
 修理自体は、ラチェットの上の円盤外周の溝に合わせてクルッと自然に巻くようにピアノ線曲げて、引っかけるために端に出す長さとかチョイチョイと調整してつつがなく終了。動作確認すると、ごくたまにラチェットに爪掛けきらなくてガガッと1ッコ飛ばしになったりしてるけど、バネじゃないからこんなもんかという感じ。小型リールでは逆転してもハンドル持ってれば実際には困らないのでラチェットの歯を1つたまに飛ばすぐらいは問題ない。油ぎれで一方通行ベアリング方式の逆転防止機構が不調の時困ったのは、タモ入れの時に左手が離せなかったことで、ちょっと焦ったけど右手の人差し指でベールアーム引っかけて回転止めて何とかした。ということがあったりしたので、小さいのは何とでもなるけど、下手すると怪我する大きいリールの逆転防止機構は一方通行ベアリング方式よりラチェットに爪掛ける方式の方が確実性があって良いと思っている。今時は両方付けて瞬間的に止めつつ不調時の保険かけてるリールもあるそうな。多少遊びがあってガチャガチャいうぐらいがそんなにイヤかね?

 さてあっさりと修理完了で逆転も止まるようにできたし、本題のドラグについてだけどその前に、テーパーの付いた巻き上がりはこのリールの本来の個性なので直さない方が良いのかもだけど、夜セイゴ釣ったりするのに遠投性よりライントラブル防止だよねと日和ってとりあえずスプールの座面にワッシャー2枚入ってたので1枚抜いたら、ほぼ真っ直ぐに巻き上がった。たいした平行巻機構ついてないリールしか使ったことないので山もできず綺麗に巻けてて感動する。ライター見せられた現代文明非接触の部族民的な感慨。
 あらためてしげしげと眺めると小さいこともあってなかなか可愛らしい。機械の入った四角い箱に糸巻いた円筒をチョコンと乗っけたような単純な造形が、今の流麗な凝ったデザインのリールを見慣れた目に逆に新鮮である。
 ラインも巻いたら準備完了ということでドラグに着手。ドラグが固着してるのはお約束。でも同じ600番台でも70年代のST600Xからは思えば遠くへきたもんだという感じがする。
 ちゃんと3階建てのドラグで、薄いカーボンシートのドラグパットが入ってて、しかも直径が確かに大きくなってて、固着を剥がしてグリス塗った段階で、ドラグちゃんと効いてまっせ!と強烈に主張してくる、王冠のような上部ワッシャーの突起に押しつけるドラグノブ横腹の「音出し(クリッカー)」も、ゴトゴトチンチンと一定のリズムを刻む感じで十分に上出来な感じのドラグである。
 一応、ドラグパッドの大きさに合わせてテフロン仕上げガラス繊維シートを加工して、単品でカーボンの代わりに、カーボンと重ね合わせて、と試してみたけど、お部屋試験の段階では正直違いが分からんぐらいでどれでも問題なさそうではあった。とりあえず重ねておくか。
 革命機ウィスカーSSトーナメントは日本の「ドラグ暗黒期」をも革命した、のかもしれない。

 スピニングリールの歴史も学んで、改めて昔の愛機を眺めたりいじくったりしてみると、PENNじゃなくても大森もダイワもみんな違ってみんな良い的に、それぞれ欠点はあるかもだけど、なにかしら良いところはあって個性的で、楽しい釣りの思い出と切り離せずそこに存在する様に、改めて好きにならずにいられないと感じるところである。
 とりあえずこれで蔵にとっておいてあった古いスピニングも全部使えるように修理できたので、そのうち使ってやらねばならぬ。それってきっと楽しいだろう。

<おまけ:言葉の整理>私基本的に生物の人なので、機械に詳しいわけじゃなくてワッシャー、スリーブ、ブッシュの区別が付いてなくて、過去スリーブとブッシュを一緒くたにしてスリーブと書いてるけど、本当は薄い筒状のがスリーブ、軸を受けるベアリングの代わりになるようなのがブッシュのようだ。今後はそのように整理して書くことにしたい。過去のは賢明な読者のみなさまにおかれましては文脈で適切に読んでいてくれてたと思いますのでそのままとしておきます。訂正とかめんどくせぇし。ちなみにワッシャーは円盤状の薄い奴という認識。あとメーカーによっても違うのかもだけど、スピニングリールのギアでローターと一緒に回るのがピニオンギア、ハンドルと一緒に回るのがドライブギアらしい。でも、普通の釣り人には分かりにくいと思うので、前者をローター軸のギアとか主軸のギア、後者をハンドル軸のギアとか書いているのはわざとです。スピニングリールのローターとハンドルは釣り人なら分かるだろうし、分からなければこんな文読まないだろうな、ということであしからずよろしくです。

2024年12月7日土曜日

夏休み中には終わらなかった宿題

 以前それぞれ1円落札で確保した3台の大森を、部品の提供とかもいただいて、「昔の塩ょっからい塩鮭みたい」といわれたぐらいの塩吹いてボロボロな見た目のジャンク状態から、とりあえず3台とも稼働状態には持っていったことはご報告済みである。その3台のうちリアドラグの「マイコン202」については既に実戦投入していて、お魚もそれなりに釣って活躍してくれている。

 残る2台の「オートベールNo.3」についてなんだけど、機関は問題なく復活させたんだけど、スプールの腐食が激しく、スプールエッジも凸凹の傷だらけなので、これはアレしてやらねばというのと同時に、前々から試したかった大森スピニングのドラグ周りの耐熱化に取り組もうというのを宿題としていた。夏場暑いときに作業する気にはならんので、涼しくなってきて作業始めて、やっとこさ完成(仮)してとりあえずの形はできたのでご報告させていただきたい。

 まずはアレから、アレも既に何度かやってて手慣れてきて段取りも上手になってきた。まずはスプール上下幅を色変えたラインかなんかで把握して、その幅に切った厚紙のテープを用意して、スプールにグルッと巻き付けつつ自然に填まるところまでキュッと締める。締めたらそのときの直径+1mmぐらいがスプールエッジの輪っかを作るときの内径になる。1mm余分に取るのは輪っかの厚さ分の差がちょっと出るのでとりあえずそのぐらい取っておいて、後で必要なら調整する。外径はスカートの直径と同じにしている。内径と外径が決まったら、いわゆるサーキットボードとか基板とか呼ばれているガラス繊維強化樹脂(FRP)の薄板(0.8mmを愛用)をその内径外径で切り出して、スプールエッジの輪っかとする。切り出しは金物バサミでジョキジョキと大まかに穴を開けていってから、ニッパーとかである程度整えてサンドペーパーで仕上げる。そしてスプール往復幅の厚紙をやや緩めて巻いて、その上に切り出した輪っかをカパっとハメる。これで輪っかの下面がスプール往復幅でそろう。そろったら固定するために最初ティッシュで細いこよりを作ってグルッと輪っかと元のスプールエッジの隙間に巻いて瞬間接着剤で固める。それ用の”アクセラレーター”とかの商品名で売ってる固化促進剤を使うと作業がサクサク進む。だんだんティッシュのこよりを太くしていって、隙間が埋まったら凸凹しているところをある程度アートナイフとかで削って、ロッド回しとかで回転させながらエポキシを盛って形状を整えてやる。エポキシ固まったらドリルで回転させてサンドペーパーかけて形状完成。

 アレとはナニをやってるのかというと、大森スピニングの最大の欠点といわれている、スプール幅がスプール上下幅より広くてラインの端がグチャッと崩れて巻かれがちで、かつスプールエッジが”なで肩”でラインが出て行くとき接触が多く放出性が悪い、というのを修正して、スプール幅とスプールエッジ形状を適正化しているのである。今回はスプールエッジが腐食でボロボロな個体だったけど、この方法ならそんなの関係なくなる。ついでにスカートの糸巻き量表示とかの銘板も腐食して剥げていて、全体的にボロかったので、これまではいじくったスプール上部だけ塗装していたけど、今回は全体を銀色のラッカースプレーで塗装して仕上げた。塗料がある程度固まるまでティッシュ詰めて串刺しにしてロッド回しで回して、おおむね固まってからルアー用の塗装ブースという名の、上部に針金渡してある段ボール箱でじっくり乾燥させてスプールの改良完了。

左オートベールNo.3、右PENN4500ss
 で、このまま普通に組んでも良いんだけど、さっき書いたように今回は大森スピニングのドラグ周りの耐熱化にも取り組んでみた。ドラグあんまり使わない釣り人にはピンとこないかもだけど、青物とか走る魚をドラグ使って釣る場合、魚がデカくて、ドラグ値上げてるのにエラい速度でライン出されてドラグが熱を持つなんてのがあり得て、場合によってはドラグノブのドラグワッシャーを押さえる面が熱で溶けたりするので、PENNスピンフィッシャーでも4桁とかはドラグワッシャーを押さえる面は樹脂製から真鍮製に素材を変えて対応していた。クソ高い社外品のつまみまで真鍮製のドラグノブとかも売られていた。っていうぐらいで大型スピニングではドラグが熱を持つのを想定した素材が使われていて、ドラグパッドが小型機では調整幅も大きく微調整も効く硬質フェルトが用いられていることが多いけど、大型機ではPENN方式と言って良いと思うけど、耐熱性の良いカーボン素材のドラグパッドが使われているのが今では一般的である。フェルトって原材料的にはアクリルとかの化学繊維だろうから熱にはそんなに強くない。で、大森スピニングは後年ある程度熱に強くてフライパンの表面加工にも使われているようなテフロン樹脂製のドラグパッドとかも使ってたけど、オートベールにはフェルト製のドラグパッドが使われている。ドラグノブはドラグワッシャーを押さえる面も含め樹脂製である。

4500ss、オートベールNo.3
 No.3サイズは4桁PENNで言えば4500SSから5500SSぐらいの糸巻き量で使用場面は岸からの青物狙いを想定している。ならば、ドラグは耐熱性があった方が安心というモノだろう。実際には熱持つ前にスプールに水ぶっかける”水冷式”とかもあるし、陸っぱりから狙える青物では樹脂製ドラグノブが溶けるほど走ることはあまりないとは思う。ただ、万が一に備えるのと、カーボン素材のドラグパッドを自作できるようになれば色々と応用が利くので、技術として持っていて損はないと思うので、良い機会だしアイデアもあったので試してみた。陸っぱりでマグロはあまり聞かないけど、たまに大型のサメは聞くしワシ自身1mぐらいだけど昔ショアジギングで釣ってるぐらいで万が一はなくもない。

 アイデアは2つあって、カーボンの素材として一般的に売られているのは、バイクや車の補修・改造、模型作成等に使われているらしい、カーボンの竿みたいに焼き固めた感じな板と、焼き固める前のカーボンの繊維を縦横編んだ布みたいなシートがあって、その2つをそれぞれ使ったドラグパッドを考えてみた。これらの素材をドラグパッドにするにあたっては、カーボン板のほうは加工が面倒くさそうなのと、表面が平らになっているのでドラグパッドに求められる摩擦力が得られるか不安があり、逆に表面凸凹で摩擦力は発生させられそうなカーボンシートについては、とくに固められているわけでもないので使用時ばらけてしまわないかというのが懸念としてあった。そのへんどうなるのか試してみんと分からんのでとにかくやってみる。

 まずはカーボン板の方だけど、これは単純に輪っか型に加工するだけの話なんだけど、予想以上に丈夫で苦労した。まあその丈夫さと軽さが利点としていろんな用途に使われているんだろうからそういうモノである。後ほど別の用途でも使うのにある程度厚さが必要と考えて1mmの厚さを選んだけど、加工を考えると0.5mmのほうが良かったと思ったけど後の祭り。

 外周は大まかにカナ切りバサミでバリバリと切ってサンドペーパーで整える感じでいけたけど、軸を刺す穴はドリルで大まかな穴を開けて、ハンドドリルで回すヤスリで拡張して丸めた紙やすりで仕上げた。3枚のドラグパッドと後ほど使う1枚作るのに結構時間も手間もかかった。本当は一気に2台分作る予定だったけどとりあえず1台分だけでうんざりしたのでそのぐらいにしておいた。

 もういっちょのカーボンシートの方は加工は楽ではある。カナ切りバサミでももちろん切れるし、アートナイフで下に穴開いていいペットボトルの蓋をおいてからブスブス刺す程度で芯棒を挿す穴も開けられる。ただそのまま輪っか状に加工しただけでは明らかにバラけてきそうで塩梅良くないだろう。樹脂である程度固めてしまえばバラけなくなる。なるけど今度は樹脂が熱で溶けて耐熱性を考慮してカーボン使ってる意味がなくなる。どうしたモノかと考えて、耐熱性のある接着剤のようなモノがあれば2枚を貼り合わせる形にしてから加工することで、表面の凸凹は残しつつバラけにくいモノができると考えたけど、そんな都合のいい接着剤があるのか?とあまり期待もせずネットで検索してみたら普通にありやがる。今回使ったのは「オートウェルド」というエポキシ系の2剤を混ぜ合わせる製品で280度Cまで耐えるとなっているのでスプールが触れないぐらいに熱を持ってもドラグパッド自体は溶けたりしないモノにできそう。シートを2つ折りにして混ぜ合わせた接着剤(灰色になる)を塗って挟み込み、繊維の間からはみ出した接着剤が剥がしやすいようにポリエチレンのレジ袋で上下を挟んでから平らな板で挟んで、重しを乗せて1日放置。デキた板状になったカーボンシート2枚重ねを輪っか型に加工していっちょ上がりと、接着剤の固化時間がかかるだけで手間はあんまりかからない。端はちょっとカーボンの繊維がグズグズっとなってる部分もあるけど、端の方がチョロッとほどけたところで大丈夫だろうと思う。いずれにせよ、そのへんも含めて試してみたい。

 という感じにカーボン製のドラグパッドは2種類用意できた。次にドラグノブの耐熱対策である。

 真鍮の板を切り出して、ドラグを押さえている一番上のワッシャーの上に入れてやればいけるかと最初考えたけど、結局それってその真鍮の追加したワッシャーが熱を持ったらそれを押さえるドラグノブの樹脂面が溶けるわけで、熱が伝わらないぐらいにブ厚いものを挟まねばならず、厚さ自体は重ねれば稼げるけど、ドラグノブがネジに届かなくなり締められなくなるので、ドラグノブの樹脂面を削るなりが必要になってくる。耐熱性のある接着剤も手に入ったしドラグノブ側をいじって真鍮の円盤を重ねた部分でドラグのワッシャーを押す形にするかと考えたけど、正直面倒くせぇ。

 つらつら考えているときにTAKE先生の「リールの歴史2」を読んでいたら、ミスター・ハラが熱伝導率が低くて摩擦熱を伝えない断熱性に優れた素材として、テフロンやポリアセタール樹脂が良くて、テフロン製のワッシャーで大型スピニングのABS樹脂製ドラグノブの熱変形は止まった。とか書いているのを見つけて「それだ!」となった。真鍮自体は耐熱性があって坩堝でも使わない限り溶けはしないけど、金属なのでとうぜん熱伝導率はよくて熱くなったドラグの熱をドラグノブの樹脂パーツまで伝えてしまう。何しろ真鍮は銅の合金であり、銅のお鍋なんていうのは熱伝導率の良さから弱火でコトコト煮込む料理に使われるぐらいである。逆に熱伝導率の悪い素材であれば厚さがなくても熱をドラグノブの樹脂面まで伝えにくい理屈である。さっそくポリアセタール樹脂である商品名「ジュラコン」製の2ミリ厚のワッシャーを購入、そしてそういえばカーボンも耐熱的な素材としても使われているよなと思って1mm厚のカーボンも試してみることにした。ちなみに調べてみたら黄銅(≓真鍮)の熱伝導率は60W/m・k、炭素23W/m・k、ポリアセタール0.25W/m・kで、カーボン板が炭素と同じ扱いでいいのかちょっと自信がないけど思ったよりは熱伝導率はあるけど、それでも真鍮の半分以下、ポリアセタールは文字通り桁違いで2桁違う。カーボンは熱伝導率の低さより難燃性が特徴か。というわけでポリアセタールのワッシャーを内径削って一番上のドラグワッシャーとドラグノブ下面の間、ワッシャーを留めているCクリップの内側に填まるように加工してみた。ちなみにこの位置だと上部ワッシャーとドラグノブは軸に固定でドラグ作動時回ってないので間に挟む形でも摩擦とかは気にしなくていい。でドラグパッドにグリス塗り塗りしながら組んでみたら、カーボンシート製のドラグパッドの場合上手く填まってくれたけど、1mmのカーボン板製ドラグパッド3枚の場合はギリドラグノブが締められない。仕方ないのでこちらは1mmカーボン板を加工して填まるワッシャーを作ってみた。カーボン板0.5mm3枚なら2ミリのポリアセタールワッシャーも填まるだろうから、ドラグパッドとしての評価の後、カーボン板製ドラグパッドがいけそうなら0.5mmを改めて買うことにして先に進む。ポリアセタールとかがこんなに熱を伝えない素材だというのは盲点だった。ポリアセタール2mmワッシャーと同等の熱を遮断するワッシャーを真鍮で作るとドラグノブが煙突の上に乗っかるような形になるってにわかには信じがたいほどである。今回ポリアセタール樹脂を使ったけど、よく考えたら耐摩耗性とか関係ないからより加工が楽なテフロン樹脂のワッシャーを入れても良いはずと今この文章書いてて気がついた。ちなみにテフロンの熱伝導率もポリアセタール樹脂並みで断熱性は優れている。テフロンのワッシャーなら在庫もそれなりにあるし、せっかく作ったけどカーボン板の断熱用ワッシャーは不採用だな。そして材料性質を比較していて、ポリアセタール樹脂は融点が165度と比較的低く、テフロンは融点327度と高いということも知って、ということなら断熱用ワッシャーはミスター・ハラと同じようにテフロンを使うべきだと今更ながら気がついた。せっかく堅くて加工しにくいのを加工したポリアセタール樹脂の断熱用ワッシャーも結局不採用。ということで紆余曲折あったけど、テフロンは刃物も普通に通る柔らかめの素材であり手間も大してかからないので、在庫していた外径18mmの厚さ1mmのがちょうどCクリップの内側に填まるのでさくさくと作り直した。内径が小さかったのでアートナイフでサクサクと刺して大まかに穴を広げてサンドペーパーで仕上げる。ピタッとドラグワッシャーをおさえるCクリップの内側に填まって気持ちいい仕上がりが上の方の写真。

写真上:左シート製、右板製
 で、全体としてドラグとしての性能はどうか?ドラグ締めてみて、手で回したりライン引っ張ったりして試して、さらにはラインの先を結びつけておいて実際に竿にセットした状態でドラグ逆転させながら走った結果、ドラグが熱を持つほどのスピードで爺さん走れんので、断熱ワッシャーの評価は、そのうちお客さんにでも自転車か自動車で走ってもらってテストすることにして後回しにして、まずはドラグ締めていっての調整幅とか締まり具合については、カーボン板製、カーボンシート製どちらのドラグパッドでも問題はなさそう。カーボン板とか弾力もクソもない堅い板なので調整幅が小さくなるかと思ったけど、ドラグノブにバネが入ってて調整幅についてはそっちで出してくれるようだ。手で回す分、ライン引き出す分にはどちらのドラグパッドも滑り出し、滑らかさ、締まり具合ともに問題なさそうで、表面が凸凹に乏しいカーボン板製でもそこそこドラグ値上げることはできる、フルロックに近いところまで締まる。意外にどっちゃでもイケるやんと思っていたけど、竿にセットして走ってみたら、明らかにカーボンシート製の方が滑らかでしゃくらず性能が良い。普通に優秀なドラグって言って良いぐらいの感触が得られた。比べるとカーボン板製ドラグパッドはやや滑らかさに欠け、微妙にウィンウィンいってるけど、使えないほどでもないとは思う。自転車とかで突っ走ってもらったらどうか?長期運用での耐久性とかはどうか?ってのは今後調べていくべき課題だけど、とりあえずカーボンシートを耐熱接着剤で貼り合わせて作ったドラグパッドはなんか良い感じなんである。イケるんじゃないだろうか?これで良いならドラグパッドは好きな大きさのを作りたい放題できる。

 それにもまして、今回良い成果が得られそうなのは、ドラグノブの熱変形を防ぐのにテフロン製の断熱ワッシャーとでもいうべきモノをドラグノブ下面と上部ドラグワッシャーの間に入れてやるだけで劇的な効果が得られそうだということである。それが正しければPENNのクソ高い社外品の真鍮製ドラグノブなんぞ買わんでよかったのかもしれない。ワシャ買ってないけどな。

 って考えるとドラグパッドもテフロンってのもありだとは思う。ただ昔PENNの3階建てドラグで実験したときに3枚全部テフロンのドラグパッドは滑りが良すぎてドラグ値が上げられないという結果だったので、大型スピニングには不向きかも?7500SSでは純正状態だとドラグパッド3枚のうち1枚テフロン、2枚カーボンで必要なドラグ値が出せるように調整してあった。


 なんにせよ、ドラグ周りについて非常に理解が深まったし、オートベールNo.3の最強化への改造もほぼ完成に近い。やっぱり物事を理解するためには本とかで理屈を学ぶだけでも駄目で、闇雲に実践するだけでも駄目で、情報仕入れて学んで考えて、実際に手を使って試してみて、その結果を基にまた考えて試してという試行錯誤が重要なのだなと改めて実感している。

 オートベールNo.3は、ギアは大森ハイポイドフェースギアで滑らかかつ、いつになったらガタがくるのか分からんぐらいに耐久性も高く、これ以降の高級リール様なんかの”より軽く”とかの耐久性を削っていくような方向は全くの蛇足としかワシには思えず、このギアはこれはこれである種完成形だと思っている。逆転防止機構も丈夫でかつ本体内に配置されていて防水機構的ないらんモノをわざわざ取り付ける必要もなく単純明快にまとまっている。ラインローラーは重くて錆びるボールベアリングを使わずポリアセタール樹脂のスリーブ入りで軽く、ローターの回転バランスも良い。ハンドル回してのベールリターンも軽くて感触良く、意図しないベール返りを防ぐ青銅板の”簡易ローターブレーキ”も備わっている。ハンドルはねじ込み式で丈夫で緩まず、ハンドルノブはPENNのトービート型みたいな軸の細い型でワシ好み、かつ気に入らなければネジ止め式なので、調整は必要だろうけどお好きな形のモノに交換も可能。スプールのかかえる、糸巻き幅が広すぎるのとスプールエッジがなで肩でラインの放出製が悪い、という問題はアレして解決済み。完全平行巻ではないのは目をつぶろう。ドラグもカーボンシート製のドラグパッドにし、ドラグノブの熱変形も断熱ワッシャーを噛ますことで解消できたなら、ほぼ実用性最高と言って良いぐらいの中型スピニングに仕上がるだろう。残念ながらベールスプリングが耐久性に劣るトーション式なのをグルグルコイル式に改造するのは難しいけど、ベールスプリングはスピナーベイトとか自作する用のステンレスバネ線で自作可能だし、バネ屋さんで作ってもらってもいいので、予備を用意してバネがへたってきたら交換とかで対応できるだろう。

 最終的な成績評価は、ドラグの高速ライン放出試験を経て、実際に魚釣ってみてしかできないにしても、しょっぱい塩鮭焼いたときみたいに塩吹いてた、1円落札のジャンク個体がよみがえって、そんじょそこらの格好とカタログ数値だけの”こけおどしリール”には絶対負けないぐらいの実用機に仕上がった気がして、魚かけてみるのがが今から楽しみでならない。

 ワシが思うに、以前にも書いたけど古今東西、史上最強の実用機はスピニングではPENNの4桁スピンフィッシャーで間違いないと思っている。今回いじくったオートベールはそれより古い時代の設計で、スプール形状とかに欠点は抱えているし、ドラグも海の大物対応であれば改良すべき点もみられる。そうではあっても日本発で、その開発に大きな貢献をしたという大森製作所による、鉄系の芯を鋳込んだ”ハイポイドフェースギア”の完成度、信頼性は高く、逆転防止機構を本体内に入れた防水防塵性など設計も良くまとまっていて、基本的なスピニングリールの機械部分はもうこれで必要充分というぐらいに過不足なく造られている。そこに現代の知識をもとにスプール周りの改良を加えてやることで、カリッカリにレースチューンを施された旧車のように、ボロい昭和骨董な見た目に反して、4桁PENNに勝るとも劣らぬ実用機が顕現するはずと期待している。