2021年7月31日土曜日

「べっぴん」と「デラ・べっぴん」なら後者を選んでました

 大森製作所謹製、ダイヤモンド「マイクロセブン・デラックス(DX)」!うぉりゃっ!! どやっ!!

 ああっ、インターネットの情報網の向こう側で「また、買ったンかい!?病気全然治ってないやんけ!」と呆れられているのが目に浮かぶようだ。しかしながら、おそれながら、毎度のコトながら、いちおう説明させて下さい。仕方なかったんですよ。

 発端は「マイクロセブン替えスプール500円(送料込み)」というのをネットフリーマーケットで発見してしまい、ひょっとして我が家の「マイクロ2世」にも流用可能かなと思い、識者に聞いてから購入したら良いようなものを、そんなチンタラしてたら売れてまうがな、ということでまた反射食い。届いてみれば軸にはハマるけどドラグノブの大きさが違ってハマらないということで、スプールだけ持っててどうするの?状態。ちなみに「マイクロ2世」用の替えスプールはすでに1個確保してあって、2個目の必要性はあまりないけど、500円って安さに魔が差した。まあ売りゃあ良いンだろうけど、今思うと病状が出ていたんだなと思うけど「コレも縁、マイクロセブンDXを手に入れろという思し召しだろう。」とか完全に頭湧いた思考で、それからマイクロセブンDXを中心に海外版の「シェークスピア2200」とか「コンパックなんちゃら」とかの手頃な出物がないかと探す日々。

 最近、景気悪いせいか”大森スピニング”に限らず中古釣り具市場全体的に値段下がってきている気がするけど、マイクロセブンDXも1万円以上になるのは珍しく、そこそこの個体で、7、8千円ぐらいに下がってきてて、見た目ボロい個体ならもっと安い。売ること考えると見た目は良い方がいいなとボロ個体に手を出さずに我慢してたら、3500円即決送料込みという安値で「自分なりに分解注油してみたけど回らない、シャフト(主軸)が歪んでるのかも」というジャンク扱いの見た目は小マシな右巻機の出品があった。博打要素はあるけど、素人が分解して組んだら回らなくなったっていうなら、写真だと右側に写ってるハンドル軸のギアの上のピンが、写真左側真ん中へんのオシュレーション(スプール上下)スライダーの溝に填まってないって可能性が大だな、と読んで博打を打ってみた。右巻なので自分では使えないけど、売りさばくの前提なので、右はやや値段下がるけどスプールとあわせて完動状態で売りに出せば手間賃ぐらいは取れるだろうし問題ない。などと獲らぬ狸の皮算用。

 届いてみると、回らないとあったけど実際には回った、ただ回すたびにローターとスプールのどっかが干渉しているのかカシュカシュッと擦れる音がする。博打失敗で本当に主軸曲がってるゴミ掴まされたのかも。見た目には正直曲がってるのかどうか、曲がってるようなそうでもないような。

 とりあえず、スプールぶつけたり上に重い物乗せたりして曲がったのなら、逆に曲げ直すという荒療法で治れば儲けものぐらいで、ヤるだけやってみるかと、まずはスプール外して蓋を開けて主軸を抜いて、カシュカシュ音がしていた方向に油性ペンでマークを付けておいて、ペンチでスプール側を挟んで本体側を手で押して徐々に曲げて、組み直して音がなくなるかどうか試してみる。

 試してみると、音がする反対の方に気持ち曲がったかなというぐらい力掛けてやってから組み直してみると、明らかに音が小さくなった。コリャこの方向で正解だなと、慎重にちょっとずつ曲げて”まっすぐ”になるように調整してみるんだけど、これが上手くいかない。もうちょっとだなと微妙に曲げると音が大きくなってしまって、ある程度音を小さくはできるけど、まったく無い状態にはできなかった。曲げる方向が違うのか?とか悩んだけど、どうもそうじゃないような気がして、ここで長考。

 わかった、これスプールの底が下がりすぎててローターカップの下側面かどっかに触ってしまってるんだ!とスプールが乗る座面に本来乗っているべき赤い繊維性のワッシャーがない違和感から気がついた。早速、まあ後で巻き形状見ながら調整するにしても1ミリも嵩上げしてやれば大丈夫だろうと、ちょうど良い内径外径の厚さ0.2mmのテフロンワッシャーを5枚入れてやったら”正解”だったようで、カシャカシャ擦れる音はしなくなった。おそらく、実際に曲がってたというのもあったけど、それは本当は座面のワッシャーが抜けててスプールが下がってるのが原因で音してて主軸は曲がってない状態だったのに、異音がするので曲がってると判断して直そうとして無駄に曲げてしまってたんじゃないかと思う。スプールが乗る座面のワッシャーは油断しているとスプールの裏にくっついてしまうので、紛失することはありそうである。

 これで”回らない(実際にはスプールとローターの干渉)”っていう最大の問題は回避できたようだし、完動品に持って行けそうな気配になってきたんだけど、一目見てもう一箇所ヤバそうなところがあって、ラインローラーが妙に隙間が空いているし固着してるのか回らない。とにかく外してみようって外していくと、ラインローラーとベールアームの間に金属のワッシャーが入っていて、そこに糸噛みしそうな隙間できつつラインローラーの回転を止めてしまっている。明らかにワッシャー入れる必要のない場所に入ってるようにしか思えないんだけど、本来入ってて然るべき、ベールアームにベールワイヤを固定するための6角ナットの内側には既に1個同型のワッシャーが入っていて、入れる順番を間違えているというよりは、なぜかワッシャーが多く入っているように思うんだけど、どういう経緯でそうなったのか今一良く分からん状況である。

 まあ、ワッシャー1枚余ったという整理で進めよう。なかなか味わい深かったのが、ラインローラーのスリーブで、後年大森製作所は、滑りと耐久性の良い樹脂性のスリーブを入れているんだけど、大森製作所の最初の小型スピニングであるらしいマイクロセブンDX(マイクロセブンの名前は長く受け継がれていくことになる)の時代は、スリーブに真鍮製の物を入れていた。マイクロ2世でもそうだったけどハンドル軸のギアの上のオシュレーションのピンにも真鍮製のスリーブ被せてあって、回転して摩耗するようなところにはとりあえずスリーブを入れるというところが、真面目な大森製作所らしい。ちなみにマイクロセブンDXは1966年登場らしく、初期型が茶色?でこの黒っぽい濃い緑のは後期型とのこと。ワッシャー1枚抜いて、組んでみておかしくなさそうなので、ちょっと回転悪くなってたのをれいによって、輪ゴムでルーターに繋いで回して当たりをとって良く回るようにしておいた。

 とりあえず、大きな問題は解決できたように思うので、いつものように分解清掃。

 今回、売るつもりなのと、カーディナルなら33と同じぐらいの小型機なので海じゃ使わないだろうなということで、グリスはいつもの耐塩性重視の青いグリスじゃなくてABU純正グリスがまだあるのでグリグリと盛ってやった。大森はPENNほど塗装とかに海水耐性がないと思うのでグリス大盛りだよりで”海で使っても後はほったらかし”だとやや不安が残る。まあ、釣りから帰って来たら水洗いして拭いてやる、長期保管の時は防錆効果のある潤滑油とか塗って拭いてやるぐらいのお手入れで、往年使ってたマイコン302TBは特に錆錆にはなってないので、海でも使えなくはないと思うんだけどこの時代のはどうかまではちょっと自信がない。
 

 さて、組み直したら微調整。

 ”ラインローラーは水平に”が目標だけど、円錐形に絞ってベールワイヤーに蝋付けしている、いわゆる”ロケットベール”でそれをやると、円錐形がベールワーヤーに接続するあたりが高くなってしまい、そこにラインが引っかかった状態で巻いてしまうことがある。「720Z」で気がついたらやってしまっていて、糸溝付きかけてて焦って修正した。一番高いところがラインローラーになるようになだらかに傾斜させておけば、ベールアームがラインを拾ったら、ローターの回転に伴ってラインはラインローラーに移行していって落ち着くはず。

 ベールワイヤー自体の形状って大事で、グリスとオイルで軽くベールが返るようにしてあったんだけど、ラインローラーの角度を変えるのに力を掛けていじってたら、ちょっと形が変わってローターを挟むような力がかかるようになってしまったようで、ベールの返りがやや悪くなってカッチリ最後まで戻ってないことがあるようになった。慌てず騒がず、ワイヤーの形状を微調整して強く擦れず素直に回るように調整した。後年大森製作所ではベールアームを折り畳めるようにしたけど、携帯性以上にこういうベールワイヤーの変形防止に意味があったのかなと思う。一方PENNでは多少曲がっても力技でベールが返るように、初期状態では「714Z」とか”ガシャン”って返りが強すぎる傾向がある。”パワーこそ力”なアメリカンな感じそれはそれでらしいと言えばらしい。でもワシゃベールスプリングの刺さる穴の位置を開け直してユルく返るように調整してる小器用な日本人。

 ベール関係も調整済んだこの状態でスプール座面のワッシャー5枚計1mmで試しにラインを巻いてみると、やや後ろ巻きになって塩梅が悪い。3枚抜いて2枚0.4ミリだとスプールとローターが干渉し始めて、スプールが下がった時にチッと音がする。3枚にして0.6mmだと干渉はせず、写真の様に真っ直ぐに巻けたので、やや前巻きぐらいにしたかったけど、これ以上いじるとなるとベールアームの形状をいじってラインローラー位置を上げるという面倒くせぇ作業になるので、このへんで妥協しておいた。

 動作確認してみると、回転も軽くバランス良くクルクル、ベールの返りも良好、逆転スイッチ切り入れも問題なし。ラインローラーも輪ゴムで擦るとスムーズに回ってる。ドラグもバッチリ、我ながら上出来な仕事ぶりで満足。

 しっかし、なかなかに良くできたリールで、見た目も昭和骨董的な古き良き日本のリール感が醸し出されていて、200gを切る小型軽量もあってなんとも愛らしいスピニングである。左巻きなら自分で使いたいぐらいだ。いっそ左投げで使ってみるか?右手腱鞘炎になったとき左で投げる練習したことあるので一応上投げで真っ直ぐ投げるだけなら投げられないことはない。まあ、比較的綺麗な外観なので塩水で腐蝕させるのはもったいないから止めておこう。でもちょっとボロい左巻きの出物があったら買ってみて、機械的な完成度は高いけど使い心地はベール周りへの糸がらみとかが多くてイマイチ、って玄人衆にダメ出しされてるけどどんなもんか試してみたくなってきて困る。使いやすさって相性もあるので案外大丈夫って可能性もあるんだよな。

 まあ、この個体に関してはしばらくクルクルして愛でてから中古市場に再投下してやって、ジャンクとされていたリールが1台実釣可能な状態に復帰して、道具としての寿命があと何年か何十年か伸びたのなら、それはそれで良かったと思うのである。ということにしておこう。

 大森とPENNをいじるたびに毎度思うけど、ドラグでもギアでも70年代には今と遜色ない性能のものが既にあったのに、新製品売らんがためにアホな宣伝文句で釣り人を釣ろうとしてくる釣具屋側の欺瞞と、それをむしろ喜んで求めている分かってない釣り人の多いことに暗澹とした気持ちになる。

 ドラグはほんと40年前の大森採用方式であるフェルト、PENN方式のカーボンシートでほぼ完成してる(テフロンもイケる)。ドラグ性能を売りにしているようなリールは、それまでろくでもないドラグのリールを作ってきたっていう証拠にしか思えない、恥ずかしくないのかって話。

 ギアも、ハイポイドフェースギアなら亜鉛鋳造で何の問題も無いハズなのに、なぜ世の中にはギアが逝ってしまうような道具が流通しているのだろうか?大森やPENNはギア逝くのまだ経験していない。PENNでもウォームギア機は真鍮とステンレスの組み合わせで素材からして丈夫だけど、4桁SSとか真鍮と亜鉛のごく普通の組み合わせだけどワシのような長期に使い倒す人間が使ってもギアは壊れてない。ギアが壊れるリールってなんなんだって話。余裕を持って作ってないってことだろうか?強度ギリギリで軽量化、先鋭化しすぎてアソビが無いとかか、そうじゃなければ使う釣り人が馬鹿かにしかみえない。スピニングリールの、力の方向を90度曲げて片軸で受けてるってのがいかに強度を確保しにくいか、わからん馬鹿が高負荷かかってる状態でゴリゴリ巻いて壊すっていうのが実態だと思う。高付加時ローターの片側にギュウギュウと力がかかって糸巻きがハマってる主軸をゆがめる方向にたわむハズってのは使っててわからんかね?ワシゃPENNのハンドルを強化しないままで壊したことがないってのは正しいポンピングができてたからだと、密かに誇りに思っている。竿で稼いだ分だけ竿倒してリールにかかる負荷を抜いてやりながら巻く。それだけできていればPENNにクソ高い社外パーツのパワーハンドルなんて必要ないと断言しておく。そして当然ギアも壊れない。

 って、またしつこくいつも書いてるようなことを書いてしまったわい。年寄りの話は同じコトの繰り返しでウザいと自分でも思うけど、まあ書いちまうもんは仕方あるまいて。病気と老いからはいまだ人類は逃れる術を持っていないってことで、ナマジはそういう芸風だとご理解の上、皆様平にご容赦を。

2021年7月24日土曜日

待てばジャンクの出番ありⅢ-蔵に封印されし「455MG」が今その力を解き放たれ覚醒する、かもしれない-

  フライでシーバスのために、前世紀からの遺物であったフローティングラインを破棄し、格安のフローティングのシューティングヘッドを購入したら”ブッとくて入らない”問題が生じ、なんとかバッキングラインを細いのに変えたりして無理矢理いつもの8番竿用のフライリール「ラムソンLP3」にねじ込んだというのをご報告していたところだけど、どうしても奥に巻かれたランニングラインがクリクリに巻き癖つくだろうことは避けられないだろうし、バッキング巻いたは良いけど、バッキングまでライン出されたとして、スプールがやせ細った状態で、そうなるまで走りやがった魚とやりとりせねばならんってのを想定すると、フライリールは増速無しの1:1でハンドル1回転でスプールが1回転という原始的なまでの低速機なので、正直その状況でモタクサとちょっとずつライン回収してたらあれやこれや間にあわんのと違うだろうか?とかいう懸念もコレあり。もうちょっと良い解決策はないものだろうかとアレコレ考えてみた。

 まずは、巻きたいフライラインが太くていつも使ってるラムソンに入らないんだったら、もうちっと大きいフライリールに巻けば良い。っていうのは誰でも思いつくだろう。なにせインチキフライマンのワシでも思いついた。

 ところがこれが、どうだろなと思って8番ロッドに、いつも9番で運用しているサイエンティフィックアングラーズ「システム・ツー」と10番運用のティボー「リプタイド」を付けてみると、なんちゅうか”似合わない”のである。8番は海で使うといっても軽いクラスの竿で、シイラとかカツオとか、そこそこの大きさの回遊魚とかクリスマスでボーンフィッシュとか釣るのにちょうど良い9番10番にちょうど良いリールたちがイマイチ見た目的にも気分的にも重量的にもピンとこない。単に見慣れてないからかなと、実際どのぐらい重量差があるか比べてみた。

 まずは「システム・ツー」。やっぱりなかなかに重い。どちらもフローティングライン巻いた状態で比較したけど、ラムソン225.5gに対して304.5gと1.5倍近く約80g差はそこそこ重いと言わざるをえない。システム・ツーは右端の写真のように水抜き兼軽量化のための穴が開いてない個性的な見た目なんだけど、フライリールでは一般的な、”あの穴”はちゃんと軽量化に貢献してるんだなっていう感じがする。見た目の大きさ的にはそれ程差がないけど重さは意外に差が出た。

 でもって、「ティボー」様。こちらは逆に大きさ的には口径が大きくスプールが浅溝?の”ラージアーバー”タイプでだいぶ差があるように見えるけど、どちらもライン抜いた状態で比較して、182.4gと276.0gとなって、フローティングラインはバッキング入れて40gぐらいだろうから、ティボーにライン入ってたら315g前後と予想できるのでシステム・ツーと大差ない。軽けりゃ良いってモノでもないけど穴はフライリールにおいて意外に重要なのかも。ちなみにフライリールはロッドを握った手の下に位置が来るので、スピニングや一般的なベイトリールほど”振り回す”必要はないので、多少の重さは気にしなくても良い気がするけど、その分飛距離を出していく過程での”フォルスキャスト”で竿を振る回数自体は増えるのでまあ軽ければ楽は楽。こちらもやっぱり8番にはちょっと合わん感じがする。

 こりゃ、1台軽くて糸巻き量の多い安リールでも買うかと、また要らん病気を発症しそうになって、ふと、我が家の蔵に使ってない高番手用のフライリールが1台眠ってるのを思い出した。F船長にもらった先代の8番ロッドと一緒に「ドラグがまともなのが付いてないから使えないかもだけどボロいライン巻いてあるので、リール買うまでキャスト練習でもするのに使えば良いよ」といただいて、しばらくキャスト練習して、ラムソンをJOSさんから手に入れて、以降日の目を見ることなく蔵で眠り続けていたお宝である。っていうかモノを捨てられない悪癖でずっととってあったけど、高番手に使うような大口径のフライリールでクリックブレーキしかついておらず、かつそのクリックブレーキも不調でカリカリいわないときがあったりするので、毎度、引っ越し時の整理やらで捨てようかと思うも捨てきれずに今ここにある。

 結果として、これはとっておいて良かった。このフライリールはその名をリョービ「455MG」という。特になんの変哲もない安っぽいフライリールに見えるけど、手に取るとちょっと違和感を感じるほどに軽い。なぜならこのリールは最近小型の高級スピニングとかにも使われているらしい、マグネシウム合金製で、そうとしらなければ樹脂性だと思うぐらいである。銘板にはリョービのマーク、機種名と共に「スーパーライトマグネシウム」と誇らしく表記されている。何しろ比重比べると鋳造アルミ合金は2.7、鋳造マグネシウム合金は1.8(竹中由浩著「TACKLE STUDY」参照)と、剛性がアルミの方が上なので力がかかるところとか厚くしなければならないにしても、素材としてアルミ合金の2/3の重量というのはクソ軽い。

 どのくらい軽いか、実際に測ってみると最終的にフライラインとバッキング巻いた状態で179.7gとライン抜いたラムソンと一緒ぐらい、フライライン抜いてバッキングたらふく100m以上入れた状態で140.5グラムで多分本体だけなら120gぐらいというなんじゃこりゃな軽さ。”スーパーライト”の表記は伊達じゃない。今時のフライリールでもここまでの軽さのは高番手用ではちょっと見当たらないんじゃなかろうか?樹脂性のオモチャみたいなのを使ってる人は見たことあるけど、そういうのを除いて普通にまともなアルミ削り出しとかの軽量機でもここまで軽くはないだろう。

 リールの直径自体はスプールの軸が細いにも関わらず、リプタイドとたいして差はなく、バッキングかなり巻いてやらないと、ラムソンに入りきらなかったようなゴン太フローティングライン入れてもスカスカである。左リプタイドの右455MG。

 なんちゅうか、バッキングじゃなくて浅溝化する”エコノマイザー”的な軽い部品をスプールの軸に噛ませて”なんちゃってラージアーバー”化して使っても充分なぐらいの糸巻き量である。

 でもって、なんでそこまで軽いのかというと、素材がそもそもマグネシウムで軽いって
いうのに加えて、この大きさのリールならそこそこ大きい魚を想定しているはずで、今なら当然”ディスクブレーキ”が装備されているはずだけど、455MGにはクリックブレーキしか搭載されていない。しかも通常左右切り替えとかの都合もあって2個付いてるコトが多いクリックブレーキを1個で済ましているという単純設計。余計なモノは全く付いていない潔さで軽さを稼いでいる。見てやってくださいこの清々しいほどに単純な構造を。全バラししても部品数10個以下にしかならんのと違うだろうか?

 ちなみにティボー様は、以前紹介したけどコルクの直径デッカいドラグパッドを同一軸上で締め上げる形式で、惚れ惚れするような性能のドラグになっている。ワシには分不相応なリールだとつくづく思う。ただこの方式は同一軸上に並ぶ部品が増えるのでハンドルと逆側が出っ張る形となりリールが大型化して重量も増える。ラムソン(写真左)とシステム・ツー(写真右)はスプールと同期して回る金属製の円盤の片側をギュッと押さえてブレーキを掛ける方式でこれだと本体内に部品を並列配置できるのでハンドル逆側はすっきり平面にできる。ラムソンは写真下の三角形の部分がブレーキで上の部品は”音だし”、システム・ツーは逆に上がブレーキ部品。ラムソンもシステム・ツーも実用上申し分ないドラグ性能で釣ってて困ったことはない。ティボー様のドラグ性能を必要とするような魚をワシみたいなインチキフライマンはあんまり相手にしていないってことで、やっぱり分不相応に良いリールだと思う。

 ひるがえって、クリックブレーキ1個しか付いていない455MGは実用上問題生じないのか?って考えると、まあシーバス釣る分には生じないよねって思う。手練れのフライマンである”グランドスラマー”ケン一も角のある魚とか狙うときとかは別にして「ビャァーッと走ったときにバックラッシュせんかったら上等。クリックブレーキで充分」って言ってたのでインチキフライマンのいい加減な判断というわけじゃないと思う。いつも書くけど、ぶっちゃけシーバス特別に引く魚じゃないし、なんならフライライン手でたぐってやりとりしてもイケるっちゃイケる。ワシ小マシなシーバス掛かったら一生懸命リール巻いて余分なフライライン回収してリールでやりとりするようにしてるけど、それはリールのドラグを使いたいわけじゃなくて、ワシのようなインチキフライマンのつたないライン処理では、ラインバスケットにたぐり込んだラインが絡んだりして魚走ってラインくれてやるときに困る可能性があるのでそうしてるっていう要素が大きい。唯一シーバス釣ってて良いドラグのリールだとありがたいなと思うのはこの地ならボラが掛かったとき(一般的な都市河川なら加えて大型のコイとエイ)が想定されるけど、まあ滅多に起こらないことだし、そんときゃそんときで気合い入れてスプール手で押さえる”ハンドブレーキ”も、やけどとハンドルに指ぶつけるのには気をつけつつ駆使してやりとりするべし、と割り切ろう。

 シーバス用と割り切ってしまえば、単純きわまりないこのリール、結構はまってくれそうだけど、もともとどういう需要で作られてたのか、リョービってそもそもフライリール作ってた印象もあんまりなかったので、まあこんなマイナーなリール誰も興味ないだろうから情報も出てこないだろうと思いつつもネット検索かけてみたら、なんとこの「MGシリーズ」の設計者さんのブログという濃い情報がヒットしてしまって、コレがなかなかに味わい深かったというかなんというか、自分の無知を恥じたしだいである。元々は小型の255MGというのがあって、これが1981年から15年近くも生産され続けて、欧米中心にシリーズ全体で約8万台も売れたヒット商品となり、好評に応じて455MGは途中で追加された機種のようだ。リョービが釣り具業界に参入して、得意の鋳造(ダイカスト)技術でまだ日本では馴染みのなかったフライフィッシングの世界に殴り込みをかけるにあたって、当時新人だった設計者さんもリョービも気合いを入れて当時も珍しかったはずのマグネシウム合金製で驚くほど軽いリールを作って成功を収めたようだ。255MGは知ってる人なら知ってる名作のようである。まあ中古の相場とか見てみたら3千円台とかだったけど、ぶっちゃけ道具に値段とか最新の機能とか、とくにフライリールみたいな単純な道具には要らなくて、むしろワシが求めているのは、こういう”物語性”である。455MGというなかなかに物語ってくれるリールに、今後は自分との個人的な物語を積み重ねて行きたいと思う。

 ということでイマイチ効きが悪くなってたクリックブレーキも調整して快調に整備したのでフライでシーバスよろしく頼みます。夏場はシーバスいったん終了だけど、秋になったら良い釣りしましょう。

2021年7月17日土曜日

お帰りなさい、京都アニメーション!

 京都アニメーションが好きだ!もう一度言うオレは京都アニメーションが好きだ!!

 あの惨劇から久しぶりで京都アニメーションが深夜枠のアニメシリーズを製作した。原作ファンとしても、放映予定が吹っ飛んでしまっていたのを首を長くして待っていた”メイドラ”の第2期である「小林さんちのメイドラゴンS」が7月から放映開始、すでに第1話は放映済みで楽しく視聴したところである。

 生き残ってたデータとかを復旧させて劇場版作品とかは何本か発表していたけど、本来の主戦場である深夜アニメに”京アニ”が帰ってくるとあっては、オタクなら女房を質に入れてでも視聴せねばなるまい。

 久しぶりのTVアニメシリーズ、原作の巻末でも作者さんが「アニメ2期もよろしく」と紹介していて、それだけで胸が熱くなる想いだったけど、実際始まってみるともう、導入の部分から、オープニングに入って、アニソン歌ってるのも同じ人だし明らかに前作の味わいを丁寧に踏襲・再現してみせていて、「京アニ品質は健在ですよ、ご安心下さい」って言ってくれてる制作者側の意図が見て取れるし、じっさいもうそれは”京アニ健在”をオノレの目で感じずにいられない出来映えで、目頭がうるうるしかかっていたところに「アニメ製作:京都アニメーション」とテロップが流れたときには、今年50になるオッサン、恥ずかしながら声出して泣いてしまいました。ワシの大好きな京アニが帰って来てくれた。もう、それだけで色んな感情があふれ出してしまうのを止めることができない。仲間を職場を焼かれたとしても、京アニの表現者達は表現を止めることはなかった。死んだ人はどうやったって帰ってこない、その傷は深くずっと残り続けるだろう。でもそれでもそのことに負けてしまうような我らがオタク達の”京アニ”じゃないってことよ。心の底から敬意を表したい。あなたたちは最高だ!!

 「小林さんちのメイドラゴン」は簡単に説明すれば、「ドラえもん」型の別の世界から、ドラえもんだと未来の世界だけど、「ウメ星デンカ」なら宇宙から、「おばけのQ太郎」なら霊界から、「ジャングル黒べぇ」なら未開のジャングルからっていいうように、異界からやってきた居候が周囲に巻き起こす笑いあり涙ありのドタバタ騒動っていう、正しく日本のマンガ、アニメの伝統的なお約束的書式に従って描かれた原作マンガがあって、まあ今時のマンガなので、やってきたのは未来の世界の猫型ロボットではなく、剣と魔法のファンタジー世界、いわゆる”異世界”からやってきたドラゴンで、情報産業底辺のシステム関連技術者であるOLの小林さんのところに、メイドとして、女の子型に変身して居候して巻き起こる悲喜こもごもという感じになってる。今時の”萌え”もキッチリ押さえつつ、ホノボノとした笑いから、永遠にも近い命をもつ種族が短命な人間に対して感じる愛情とそれ故の寂しさとか、なかなかに深掘りした題材にも切り込みつつ、もろに現代社会で課題となっている、異文化、異なる多様な価値観との衝突、共存というところを一つの大きな題材として、アハハと笑って楽しんでるだけでも良いけど、割と重いテーマも考えさせられたりもする、原作からして良い作品なんである。

双葉社「小林さんちのメイドラゴン」5巻より
 そのままアニメ化して原作準拠ですすめていけば、面白くなるのは間違いないんだけど、京都アニメーションの丁寧な仕事がその面白さに拍車を掛ける。何しろ京都アニメーションの作画陣は腕っこきである。それぞれの登場人物が動きを伴って非常に魅力的に描かれる。それだけで原作ファンは丼飯何杯もおかわりできるくらいだけど、京アニはまた細かい所の表現も上手くて、原作にはない動きのある中でのアニメ的表現の上手さにいちいち感心して楽しめてしまう。たとえば、近所にメイド喫茶が開店して、自分を差し置いて”最高のメイド”とか誇大広告も良いところで許せないと、”メイドラゴン(メイドのドラゴン)”のトールはクレーマーと化して突撃するんだけど、なぜかその場で”採用”されてコック長として働くことになる。その時の、トールの働きっぷりの手際の良さを表すシーンが、原作では引用させてもらったシーンになるんだけど、このシーンがアニメになると、オムレツをフライパンの柄をトントンと叩いて振動させることで回転させて柔らかいオムレツの表裏に火を通すって技は見たことあると思うけど、アレを大きなフライパンの上で三つのオムライスで同時に、なんというかマツダのロータリーエンジンを彷彿とさせるような感じでトントングルグルと回転させて仕上げて、フライパンから飛ばして皿に盛り付ける、という派手な演出になっていて。トールのフィクションならではの超絶料理技が、それだけで見ていて楽しいシーンになっている。ああっ眼福眼福!

 そういう細かい表現が冴えている他に、”萌え”的表現は京アニ伝統芸ですらあるけど、意外に魔方陣とかバトルシーンとかの動きのあるダイナミックなシーンも当たり前に上手い。まあ”萌えアニメ”のイメージが強いけど、フルメタ2期みたいなロボアニメもスピードみたいなスポーツアニメも製作してたぐらいで、なにやらせても全体的にとにかくアニメ作るのが上手だとやっぱり感心するのである。

 ジブリやら、あるいはディズニーやらの作るようなアニメみたいな家族向け全年齢向けって感じではないけど、オッサン向け、あるいは腐女子向けといった隙間産業的にオタク向けのアニメを作らせたら、ちょっと抜きんでたアニメ製作会社だと再確認した。こういう我らオタク向けのアニメは欧米では作れないだろうし、今、原画制作とかの下請けで力をつけてきている、台湾、韓国、中国あたりのアニメ制作者は、すでにジャパニメーションの手法、文法でアニメを作り始めててなかなかにできも良いんだけど、まだそれらの国には、手塚治虫も宮崎駿も京都アニメーションも生まれていないようで、追いついてくるにはいますこし時間が掛かるだろう。

 とにもかくにも、今期「小林さんちのメイドラゴンS」は超楽しめること請け合いだし、今後も再始動した京都アニメーションは、オタクどもが喜ぶような良い作品を作ってくれるに違いない。そう確信を持って期待している。

2021年7月10日土曜日

愛のシュープリーム2

 

 ”釣りで大事なのはハリとイト”っていうのはいつも書いてることだけど、恥ずかしながらワシ8番用のフローティングのフライライン、出番少ないとはいえダラダラと延々と使い続けておったしだいで、今期、近所漁港が”禁漁”のおり、フライでシーバスを課題として久しぶりに連続運用してみて、さすがに滑りが悪くてシリコン系の潤滑剤塗布してもイマイチ効きが悪いし、妙に堅くて絡みやすい感じにもなってる。そろそろ替え時っていう時期はとっくに過ぎてるなと思って、一体このラインいつから使ってるのかと写真(左)で確認してみると、驚くことに1998年のフィルム写真の時代に初の70upのスズキ様ぶら下げて喜んでるそのフライラインが、だいぶ白さが眩しいけど紛れもなく同じラインでひっくり返りそうになった。シーバス釣りはその後ルア-でやるようになって、このラインはたまに遠征の時にフライタックルだと荷物がルアーほどは増えないので小物釣り用に持ってって色んな国で色んな魚釣ったけど、使用頻度は多くなかった。にしても、さすがに新品箱入りデッドストック品であっても20年以上経った”前世紀”のラインは経年劣化が怖くて使えと言われても躊躇する代物。我ながらいかにフライの釣りに対して”インチキ”でいい加減に取り組んできたかというのが浮き彫りとなるかたちでお恥ずかしい。お恥ずかしいけどアタイ見て欲しいの。という露悪癖を発揮して書いてみているところである。

 でも、フライラインはラインといっても普通のいわゆる”道糸”とは役割も仕組みも違っていて、フライラインの重さで毛鉤の付いた仕掛けを飛ばすという性質から、道糸であると同時に竿の役割も果たしているとワシャ考えている。犬ぞりとかで使う”ムチ”のような竿が”フライロッドとフライライン”で、その先に徐々に細くなって先っちょまで力が滑らかに伝達するようなった”リーダー”とハリスである”ティペット”と毛鉤が付いた仕掛けが結ばれているという構成。なので、道糸と考えるにはあまりにもフライラインは高額で、普通に30mそこらのが4,5千円はしてくるので、真面目なフライマンでも1シーズンや2シーズンは使い倒すモノだと思うし、消耗激しいにしても、竿だとおもえばそれも納得である。ただ20年は常軌を逸していると我ながら思う。

 思ったので、コリャ必要経費だなと買い換えるためにネット通販やらで調べていると、さすがに20年の年月は短くはなく、色々と隔世の感があって驚かされる。まずは、同じメーカーの同じシリーズがあればそれで良いなと思ったらそうはいかずで、20年前に買ったのはサイエンティフィックアングラーズの「シュープリーム2」っていうシリーズのウェイトフォアード(投げるときに使う前の方が太くなってて後ろは細い)8番フローティングだったんだけど、当時は定番だったと思うけどシュープリームシリーズの後継が現在はないようで、通販の「アマゾン」では高番手はマスタリーって言う7千円から1万円以上もするクソ高いのしかサイエンティフィックアングラーズのフライラインは見当たらない。エアセルって言うのが4千円ぐらいで手頃だけど7番ぐらいまでしか売ってなくて、かつ今回、重さのあるシューティングヘッドを細めのランニングラインと接続する”シューティングヘッドシステム”が、カマス釣るときの沈める釣りで使ってて投げやすくて気に入ったので、フローティングのシューティングヘッド(ST)とランニングライン買おうと思ったんだけど、STはエアセルシリーズにはなさそう。っていうかサイエンティフィックアングラーズ自体が、化学製品大手の「3M」社のブランドだったのが、今はフライロッドで有名なオービス傘下のブランドになってるとか知ってワシ完全に浦島太郎。他にワシでも聞いたことあるような定番メーカーで手頃な値段のはないかと調べてみると「エアフロ」とかがそこそこ安いけど、耐久性イマイチだったという話も聞いたことあって手が出ず、20年も経てば物価も上がってるし7千円のマスタリー様でも長持ちするなら良いかもなと、宣伝文句など読んでみると、どうにもワシの嫌いな”高級道具”の臭いがプンプンしてきて嫌になる。なんか小難しい小理屈書いてるけど、高く売るためになんか新しいことやってみましたっていう以上のコトが書いてあるように思えない。普通に投げられて魚釣れれば充分だっての。

 特にフライの世界でも”飛距離”は売り文句として絶対のようで、最近は投げ方自体も昔なら片手投げか両手投げかぐらいしかなかったのが、バックスペース少なくて済むスペイキャストぐらいは使いどころあるかなと思ったりしたけど、スカンジナビアだディーだスイッチだシューティングスペイだとわけ分からんことになっている。フライロッドで飛距離?鼻で笑ちゃうぜまったく、そんなに飛距離が欲しけりゃ磯投げ竿でジェット天秤の先にフライ結んで投げとけボケって正直思う。フライロッド振ってて飛距離が欲しい状況って、ナブラが遠いとかであるっちゃあるけど、だいたいナブラは多少飛距離出せても届かんことがほとんどだし、飛距離欲しけりゃルアー投げるし、もっと欲しけりゃ磯投げ竿だし、もっと言えば船出してナブラに寄せてまえだろうと思う。

 そもそも魚まともによう釣らんヘッタクソが、飛距離出せるようになったぐらいで魚釣れるようになるわけがない。ワシフライロッド振ってせいぜい20mぐらいしか投げられんけど、申し訳ないけど魚はそれなりに釣る。なぜならフライについてインチキフライレベルの技術しか持ってなくても、”魚釣り”自体の技術と経験はそれなりに積んであって、魚が遠かったら”飛距離出さなきゃ”ってアホの一つ覚えしか思いつかないシロウトとは違って、立ち込んで距離を詰める、静かに待って寄ってくるのを待つ、潮が引いて寄れるのを待つ、移動方向を読んで狙える位置に回ってくるのを待ち伏せる、時合いになって魚が動き始めるのを待つ、”あの葡萄は酸っぱいに違いない”とこだわらずに違う魚を狙う、自分の飛距離で仕事になる釣り場を探す、日を改める、ポッパーとか音の出るフライで寄せる、コマセ効かせて寄せる、足下に寄ってるハクを蹴散らして寄せる、上流側から流れに乗せて届ける、風船でも付けて風に乗せて届ける、カヤック出す、いくらでも思いつくけど、そのうちの現実的な方法は、特殊な飛距離に特化したような歪な道具を持ち出すより効果的で、だからこそ20mしか投げられなくても普通に魚釣るのならそんなには困らないのである。だいたい”釣れる魚”に限って、やる気満々で浅くて近いところに入って来てたりするから、ろくにラインの着水姿勢等を制御できないぐらい遠くに投げるより、近くて良いので警戒されないように近寄り方やら姿勢やらに気をつけながら、丁寧に静かに良い位置に投げた方が釣れると思う。魚との距離が離れれば離れるほど、フライに限らず仕掛けを正確に投げ入れて操作してっていうのが難しくなり、魚が食ってもアワセが長い糸フケやらで決まりにくくなるし、掛けてからも長い距離を寄せてこなきゃならなくなるのでバレるおそれも増える。ヘッタクソの素人の人達には、飛距離出すことを考える前に、まず魚との距離をどう詰めるかを考えろとキツめに説教してあげたいぐらいである。距離詰めるのやってみれば分かるけど難しい技術だよ。時に四つん這いにまでなって頭低くコソコソズルズルと接近していくのとか、ジッと座って魚が警戒心解いてこっちに向かってくるのを待つのって、シュパーっと遠投決めるカッチョ良さには比べるべくもない地味さで、もちろん闇雲に近寄れるわけはなく、どこまでが警戒心を抱かせないかの見切りとかは経験も必要な技術だったりもするけど、それゆえにやる人少なくて効果的だったりする。フライロッド使ってはいるけど、全く投げずに足下に上から毛鉤垂らして釣る”タッピング”っていう技術がワシにもたらした獲物は、古くは雪の中匍匐前進で距離詰めて釣ったユスリカ系にライズしていたイワナから、杭周りに縄張り作ってた九州のオヤニラミ、当地でのボラやグレに50upのチヌまで様々あって、実に良い魚たちをもたらしてくれたものである。

 っていうぐらいで、投げなくても釣れる時は釣れる。でもある程度投げられるとやっぱりそれは有利で、東京で冬のオイカワ釣り、ライズを繰り返しているのを4.5mぐらいの延べ竿で狙おうとしても10m以内に近づくとライズが止んでしまい食ってこない。これが3・4番フライロッドで10mチョイ投げてやるとほんの数mの違いなのに歴然と警戒される度合いがマシになってちゃんと釣れるのである。そういう、魚の警戒心を解くのとかに必要な飛距離やら、シンキングラインならちゃんと狙った棚を引っ張ってこれるようにキッチリ沈めるために必要な距離を投げる必要やらはあると思う。それは常識的な範囲で投げられたら充分で、ことさら飛距離を五月蠅く言うような必要は全く無いと思っている。そういうチョイと魚の警戒心の外っ側から軽い仕掛けで毛鉤を送り込んでやれるというところに、フライフィッシングの極めて有利な点があると感じている。

 なにしろ、ライン自体の重さで投げるので、基本毛鉤は小さく軽くできる。スレた状況で疑似餌が小さければ小さいほど警戒されにくいなんてのはルアーやる人なら憶えが有るんじゃなかろうか?疑似餌自体が小さく軽く、警戒心抱かせないモノにできるのに加えて、飛ばすのに重いオモリじゃなくて、重さが分散しているフライラインの重さで飛ばすという仕掛けも非常に重要だと思っている。ハッキリ言ってフライは食い込みが良い。単に小さい毛鉤を遠くに飛ばすだけならさっきも書いたように、絡まないように天秤仕掛けでハリスに毛鉤結んでブン投げれば良い。実際そういう釣り方もある。ただ、その場合、ハリスが繋がる天秤に重いオモリが付いていて、魚が食ったときにすぐにそのオモリの重さが”引っかかる”はずで違和感感じて吐き出すのは早いと思っている。その点フライラインの場合重さは分散されているので、引っ張っていけば徐々に重さが加算されていくけど、いきなり重いオモリを引っ張らされるコトになる天秤仕掛けに比べれば、その負荷の掛かり方はジワジワとしたものであり、違和感感じて吐き出すまでにかなりの時間が稼げると感じている。

 鯛釣りとかに使われた一本釣り仕掛けで”びしま糸”というのがあって、名は体を表すで、道糸に一定間隔で割りビシが打ってある。第一の意図としては、オモリを分散させることで潮の流れが上層と低層で異なる2枚潮とかでも、糸ふけが出にくく素直に道糸が棚に入ってくれるというのがあったんだろうと思うけど、これおそらく食い込みも良いはずである。フライラインと一緒で魚が咥えて引っ張ったときに徐々に重さが増えていくけど、いきなりゴツいオモリを引っ張らされることにはならないので吐き出すまで時間が稼げると思う。っていうのは、いま豆アジ釣りで、極軽いオモリと目印を交互に5つ並べた”タナゴ仕掛け”方式の仕掛けを使っているんだけど、明らかに浮子を立たせるためのオモリを一箇所に打ってある仕掛けより、食い込みが良くて餌を咥えて走ってくれることが多く、分散されたオモリの”びしま糸”方式の威力を感じるからで、加えて、タナゴ仕掛けは全体としてゆっくり沈む浮子が負けてるバランスに調整してあるんだけど、これもまた沈みつつある”浮子”を引っ張ってさらに沈めるのは容易ということから食い込みの良さを助けているようで、長いタナゴ釣りの歴史の中ではぐくまれてきたんだと思うけど、小さい魚が違和感少なく引っ張ってくれてアタリが取りやすいようによく考えられているなと改めて感心するところである。

 と、脱線したけどフライラインは買わねばならず、どうしたモノかと色々考えて、結局とりあえず”安物”を試してみることとした。あんまりあやしい安物は強度やら耐久性が不安なんだけど、9番フローティングのシューティングヘッドも約30mのフローティングランニングラインも1200円ぐらいと激安なので、使えたら儲けものぐらいのつもりでネット釣具屋で購入。8番じゃなくて9番にしたのは最近はチョイ重めを買って適当な長さに切り詰めて使うのが主流とか聞いたのでチョイ重めにした。

 早速、接続してリーダーもハリスも付けて、古いラインを抜いたリールに巻いてみた。

 結果、巻けませんでした。なんでやねんって話だけど、理由は明らかでシューティングヘッドが太い。安いから太いのかシューティングヘッドはもとから短く重く作ってあるから太いのが当たり前なのか、インチキフライマンの知識では分からんけど、とにかくリールに収まらない。太いと空気抵抗増えるし流れの影響も受けやすいしどうなんだろう?と思うけど絡みにくそうなのと浮力がありそうなのは素人向けでいいかもしれん。とはいえリールに入り切らんとどうにもならないので、バッキングをそこそこ太いのを入れていたのを細いPEに換えた。バッキングそこそこ太かったのはある程度リールのスプールを太らせて上に巻くことになるフライラインにキツい巻き癖付かないようにというのもあったハズだけど、今回はランニングラインの最後の方はクルクルになるのを覚悟せねばなるまい。いっそバッキング無しというのも考えたけど、シーバスは何とかなるとしてボラが来たときにはバッキングまで出されることは想定されるのである程度の長さを入れておきたい。あとそれだけでスプールの余裕を稼ぐのには足りなさそうなので、ランニングラインが30mぐらいと長いのを20mに切った。どうせ20mぐらいしか投げられないので、シューティングヘッドが9mちょいあるので半分の15mにしてもヘッドと足せば25mぐらいはあり、ランニングラインを半分2回に分けて使っても良いかと思ったけど、今後キャスティングが上手くなって30mぐらいは投げられるようになると良いなと希望的憶測で半端に切った。まあ安いランニングラインだし良いだろう。

 これでやっと、そこそこ余裕持ってフライリールに収まってくれた。あんまりギリギリだとフライリールって平行巻機構が付いてないので片寄ったりしたときに巻けなくなりかねない。

 で、早速釣り場で投げてみたんだけど、こんなゴン太ラインまともに飛ぶんかしら?と不安だったけど、さすがに20年物の腐りかけのシュープリームよりは滑りも良くて気持ち良く飛んでくれて、シリコンが効いててかつ気合いも入ってた投げ初めは20m前後安定して投げられたと思う。飛距離明らかに伸びてて投げやすい。チョイ重いかなという感じでシューティングヘッドを切りたくなるけど、もうちょっと様子見て切って詰めるかどうかは決めよう。飛距離は出せているので慣れるとちょうど良く感じるのかもしれない。太さによる流れの影響とかはまあこんなもんかという感じで特に困るような差があるわけじゃなさそう。ボカッと浮いてくれるのは水面でフライを引きたいので好都合。

 とりあえず、当初の性能的にはまあこんなモンかなという感じで悪くない。これで耐久性が良くて2年ぐらいでも持ってくれれば万々歳である。1シーズン持たずに表面塗装剥げたりしてダメになってしまうようならもうちょっとまともなのに買い換える。ってことで良いんじゃなかろうか。

 ボチボチ、セイゴもあんまり活発じゃない季節になって来たけど、キツい濁りと後ろがとれない場所から釣る場合をルア-に任せて、それ以外をフライでシ-バスにちょっと任せて技術的な詰めを、やる気になってる間にできるだけやっておきたい。

※タイトルを当初の「シュープリーム・シュ」から「愛のシュープリーム2」に変更。当初のタイトルは元ネタがマイナーすぎたかなと。

2021年7月4日日曜日

このスピニングどいつんだ?D.A.Mんだ!

 なかなかに送られてきた箱から取り出すのに心が躍るリールでございました。「ダムクイック110N」。

 ダムクイックというと 、我々世代のオッサンには西ドイツのアンバサダー的なベイトリールが懐かしく思い出されるかも。割としっかりしたリールのようで「さすがは西ドイツ製」と思ってると、後年日本の五十鈴工業製になり、そうとしらずにフットの裏の「JAPAN」の文字を見つけた釣り人は「ドイツのリールは日本一~ッ!(byシュトロハイム)」と驚愕したとかしなかったとか。

 まあ、以前書いたようにシマノにスピニング作らせてたこともあったようで、釣り具業界、世界中どこでも生き残りのためにあの手この手をくりださざるをえなかったんだろうなと思うところ。紆余曲折あったんだろうけど、D.A.M社は今でもしたたかに生き残ってます。

 この個体お値段なんと、送料込み8000円と張り込んでしまいました。無職が何やっっとるんじゃとお叱りを受けるかと思いますが、違うんです、また説明させてください、お願いします。

 ダムクイックのスピニングリールは國吉昌秀著「ベールアームは世界を回る」において「頑丈な作りと頑固なデザインは、実に堅実で、隠れたベストセラーとしてアメリカンアングラーに愛されている」と紹介されており、基本米国の釣り人の選ぶ道具は実用本位というか丈夫で使いやすいという印象があるので、気にはなっていた。気にはなっていたけどそれなりに歴史あるお高い逸品達であり、おいそれとは手が出なかった。でなかったんだけど、某ネットフリーマーケットで、3台だけ相場よりずいぶん安く、7、8千円の値段が付いたまま長く売れていないのがあるのは目にしていた。ネットオークションではだいたい1万5千円弱が相場だと思う。相場の半額ぐらいでも売れ残ってるのが、日本での知名度がイマイチなダムクイックらしさという感じもするけど、なぜダムクイックをワシが出物探してたかというと、以前にダムクイックレトロが話題になったときにちょっと調べたらば「ドイツ在住時に知人にいただいたものですが、使わないので出品します」とネットフリーマーケットに数千円で出されていたダムクイックが、どう見てもABUでいえばCDLのような限定モデルで金ピカの逸品だったんである。アホかと、値段付けの桁が違ってる。当然既に売れていたんだけど、日本じゃダムなんて人気薄だから、こういう価値のわからん人間がホイと出してくるのがまたないだろうか?と切り株にウサギがケッつまずくのを待つような物だとは知りつつも、ずっと定期的に確認していたのである。

 で、まあ相場より安いのが3台あるなと思いつつも、人気あんまりないから確保しても必ずしも相場で売れてくれる保証もないしと、あの葡萄は酸っぱいに違いないと自分に言い聞かせて手を出さないようにしていたんだけど、3台のうち残りが1台となって、その時期に低価格で始まったオークションで試しに、5千円ぐらいで入札したらやっぱり同じような機種が1万4千円からになって、8千円はどう考えても安い。確保して気になるあの娘とちょっとお付き合いしてみようかなと購入。という自然な流れ。仕方ないですよね?

 我が家に来たからには、今日は家の人居ないんだ、っていうことで丸裸に剥いて楽しんでやるゼへっへっへ。ということで、回転も重くなっててグリス固まってる感触なので、全バラしフルメンテ敢行。ガッチリグリス盛ってやって、あと50年は道具として生きられるように整備してやる。

 まずは、ドラグなんだけど、意外なことにスプールは樹脂性。アルミボディーで全体的に丈夫感を醸し出してるけど、ここは軽量化のためだろうか。ちなみに本体フット裏に加えてスプール裏にも「メイド・イン・ウエストジャーマニー」の文字が誇らしく踊っている。写真下手くそで写ってなくてゴメン。

 スプール上面にカーボン繊維を樹脂で固めたような6角形のドラグパッドがハマっていて、その上にワンタッチの軸と共に回る金属スリーブが1枚、その上にバネ替わりのウネウネッっと波打った形状のワッシャーが乗っててそれをドラグノブで締め付けるかたちで、一見小さめのドラグパッド1枚方式に見えるけど、写真の様にスプールの底に6角形のドラグパッドがはめ込んであって、ドラグパット2枚方式というか、実質スプールの上下をドラグパッドにしてワンタッチの座面と軸にはめたワッシャーと摩擦させてドラグとしている。素人考えだと、上のドラグパッドは六角形じゃなくてワンタッチの軸と同期させて回す丸いのにしたら、ドラグ面がもう一面稼げるのにと思わなくもないけど、実際ドラグ締めた状態で回してみるとちゃんと機能しているので悪くはなさそう。スプールが普通のプラスチックっぽい樹脂性なので、ドラグパッドを堅いカーボン繊維樹脂製にしてドラグの耐久性と安定性を確保しているとかだろうか?いずれにせよなかなか個性的。


 ただ個性的なのは、ここからが本番という感じで、ローターが一般的なインスプールスピニングのそれのようにお椀型ではなく、ズドンと円筒形した土管型なのは何か理由があるんだろうなと思っていたけど、予想以上に面白いことになっていた。

 ラインローラーと反対側にベール反転機構を持ってきて重量分散してるのはままあるとはいえ、その反転レバーがレバーじゃなくて”丸棒”で丸棒がローター内に引っ込んでベールが返る構造。ちなみにラインローラーは固定式でセラミックか硬質の金属かそんな素材。

 スプール抜いた状態で、なんかまだ底じゃなくてローターの下部にベール反転とかいろいろ入ってそうな感じ、と共に謎の切り替えネジがある。なんじゃろこれ?ベール反転の方は謎の切り替えネジの反対側の金具がスライドして引っ張られて、丸棒が引っ込むんだろうなというのはなんとなく分かったけど、とにかくこのままでは進まないので、本体から主軸を抜いてローターを外す。

 外すと見たことない光景がそこに現れる。

 左がローターの裏。左端の金具が写真右のローター底面?に斜めに組まれた部品を滑って内側に引っ張られて丸棒が引っ込んでベールが返るっていうのは予想通り、なんだけど、例の謎の切り替えネジは、どうも外側に丸棒を押し出しているの自体は丸棒に巻き付くように配置されているバネのようだけど、そのバネの押し出しの強弱を調整するために、切り替えネジで左右に張り出したワイヤーの張りを変えるもののようで、押し出しが強ければベール反転のためにハンドル巻く力が多く必要になるし、押し出しを弱めてやれば軽くベールが反転するようになるという機構っぽい。ベールの反転の強さを調節するのに、ベールアーム側のベールスプリングの端が刺さる穴の位置を変えてやるという小技は実際PENN714Zでも使ってるけど、このリールはマイナスドライバーで調節可能なようにあらかじめできている。なかなかの独創性。っていうかドイツの釣り人も細かいこと気にするんだなぁという感じで、米国人とはちょっと違うお国柄が垣間見えた気がして面白い。

 でもって、分解して古いグリス落として綺麗にしてグリス塗り直しだなと、着々とバラしていくんだけど、なんか本体内部が寂しいんである。

 薄っぺらいシュッとした本体からも明らかだけど、ギアはウォームギアで、スプール上下(オシュレーション)はクランク方式。クランクがハンドル軸のギアに乗っかるところにワッシャーが噛ましてあって、他にも基本的に回転する場所にはギアでもネジでもワッシャー入れとけというのがダム社の方針のようである。

 まあそれはいい、単純なウォームギア+クランク式の駆動系だなってのはPENNの710系でもカーディナルでもアルチェードでも一緒で、ある種見慣れたものである。でもなんか足りないなと考えて、”ストッパーが本体内に無い”というのに気がつく。

 そういえば、ローターの”底”の丸棒を引っ込ませている部品はバネが付いてて動くようで、切り替えできるように外側にツマミも付いていたし、あれが逆転防止の爪だな、というのはすぐに思いついた。ただ、その爪が掛かるであろう歯の付いたラチェットとかギアとかが主軸周りにみあたらない。ローターの裏にでも付いてるかとみたけど、やっぱり付いてないなと思ったら、エラいところに歯が切ってあるのに気がついた。

 上の方に貼り付けたローターの裏面の写真にばっちり写ってるんだけど、みなさん気付かれただろうか?既に一目見ただけで気がついていたら拍手喝采、答えを見る前に写真もう一度見て気付いても立派。

 さて、どうだったでしょう?

 そう、ローターの内側側面に歯が切ってある”マルチポイント方式”の逆転防止機構であり、おそらくダム社はこの方式の元祖なんじゃないだろうか?他にもっと古いリールで同じ方式のリールってありますかね?スピニングリールの回転する部位で一番直径が大きいのはローターで、そこに歯を切れば沢山歯が切れるので遊びが少なくできるという、合理的な位置に逆転防止を持ってきている。さすが独逸と感心する。同様の方式はワシの蔵にあるのではリョービ「メタロイヤル」が採用しているし、ダム社とは縁深いシマノも「92’ツインパワーで」採用していた。もっとマイナーなところではTAKE先生の愛機、ミッチェルの怪作「クォーツ」もマルチポイント方式だったはず。ウーンもし本当にダム社が元祖なら立派!サイレント方式じゃないので逆転防止をONにしてリールを巻くと当然音がするんだけど、歯の数が多いので音が連続して「ジィーィッッ」というような独特の鳴り方。

 という感じで、感心しつつ作業を進めるんだけど問題が発生。ハンドル軸のギアが抜けてくれない。固着したとか歪んで取れないとかじゃなくて、ハンドルを外して本体側に抜くのは間違いなさそうなんだけど、ハンドルの外し方が分からん。四苦八苦してどうにもならんので、海外オークションではよくハンドルだけとか売ってるので、ダムクイックのスピニングのハンドルだけ売ってるのを探していくと、いくつかあって、ハンドルそのものだけっていうのは参考にならんのだけど、探してた”ハンドルにピンが付いたまま”出品されているのがあって、多分そうだろうなと思ってたけど、ハメ殺しっぽくネジじゃないピンで止められているのを、ハンドルの穴にピッタリのを棒を突っ込んでピンを叩いてやって、ピンをズラしていって外すので正解のようだ。ちょうど2ミリの穴にピッタリの幅のマイナスドライバーがあったので、リール膝に抱えて穴にドライバーあてがって、トンカチで慎重にコンコンと叩いてズラしていくと、無事外れてくれた。それさえ分かればあとは普通に分解清掃できる。ダムクイックの整備の仕方とかを検索してたどり着いた人はこれだけ憶えて帰ってください。”ダムクイックのハンドルピンは棒突っ込んでコンコン叩いてズラす”これ重要です。

 大きさ的に海では使わんかなという大きさでっていうか、割と見た目も良い個体なのでサビさせないようにして、どっかのタイミングで売りさばくんだろうなという思惑もあり、頓挫した「カーディナルC4」転売作戦用に購入してあったABU純正グリスでモリモリとグリスシーリング。金属部品は全面がグリスで濡れているべきさ!ベアリングがローター軸のギアから外れてくれなかったけど、ベアリングの玉にオイル注して上下グリスでシーリングしたら快調に回ってくれている。

 という感じで、なかなかに面白かったし、グリス固まって重かったのが嘘のようにクルックルに、といってもウォームギアなんでシットリ重めではあるけど、見た目もちょこっと置き傷とフットの塗装ハゲがあるぐらいで、年式考えると非常に状態良いので、しばらくたまに蔵から出してクルクルして愛でてから、金に困ったあたりで売りに出そう。インスプールのダムクイックの中では比較的新しいタイプのようで”N”が付くのは左専用機で、それ以前のモデルは、ハンドル軸のギアごと抜いて左右変更ができるらしいので、ちょっとそれは見てみたいけど、まあ機会があれば程度で積極的には狙わないかな。今回ので結構満足して病気も症状治まってきた気がする。

 使えば良いじゃないの?って思われるかもだけど、渓流で使いたいリールとしては、716zとマイクロ2世があって、3番手では出番ないでしょ、っていうか渓流なんかいついくんじゃって状況なので、まあ良いリールで面白いリールなのは分かったけど、ワシが使うリールじゃないなというのが最終的な判断かな(でも、たまたまスペアスプール単品で売りに出てたの見つけてとりあえず確保してたりする。)。

 やっぱりワシはPENNが好きで、たまに浮気は大森さんってところでコレからも行こうと思っちょります。でも今回みたいに別のリールいじると、っていうかスピニングリールの機構が発達していった時代である70年代ころのリールだったっていうのもあるんだろうけど、個性があって面白く楽しかった。今時のリールいじってこういう個性的なというか突飛なリールに出会うことはできるのだろうか?はなはだ疑問だけど、中国や韓国はすでに”今時”の流れに組み込まれてしまってるけど、マレーシアやらインドネシアやら今は下請け仕事でリールとか作ってる新興工業国が、自分たちも釣り道具使い始めて、これまでの発想にとらわれない自由でやんちゃなリールとか作ってくれたらちょっと買ってみたいなとかは期待している。

 「ダムクイック110N」、歴史ある独逸の釣り具メーカーを代表するような、東西冷戦時代に作られていた実に個性的なリールでなかなかの逸品でございました。