2020年2月23日日曜日

3日間飢えたくなかったらカマスを12匹釣って干物にしなさい


 先週のブログはいつもに倍するぐらいの閲覧数を稼いだ。
 元がたいしたことないのでアレではあるが、既にブログさえ流行らん時流でもあり今更という感もあるけど、やっぱりせっかく書いてるからにはなるべく多くの人に読んでもらえたらそら嬉しい。
 自分の備忘録的なこととか書きたいことを書いてるだけなので、たとえ閲覧者数ゼロでも書くにしてもだ。
 ”インスタ映え”の逆を張るようなメジロの血まみれの写真ですら読者倍増である。やっぱり”グルメ記事”は手堅いのか?あと、猫の写真が載ってるとSNSとかでも受けがいいとも聞く。
 となると、いわゆる世間一般のアホグルメどもが喜ぶような「ノドグロの脂のノリが」とか「大間のクロマグロの大トロが」とかみたいな記事は1ジンバブエ・ドルほどの価値も認めていないので書かないし書けもしないけど、ネッチョリと魚の血と腸とでベタついて、干からびた鱗がこびり付いた魚を捌いたその手で書く超個人体験的な”お魚グルメ”記事ぐらいは書かねばならんという気がしてきた。あと猫の可愛い写真も撮らねばなるまい。
 猫の写真はウニャ子はカメラ向けるとイマイチご機嫌斜めになるのでオイオイ撮っていくにして、とりあえずアカカマスの干物もずいぶん作ってきて、自分なりに今のところの最適化した手順とかが固まってきたので、例によって自分の備忘録も兼ねて書いてみたい。

 まずは釣ったら、なるはやASAPで仕込む。コレ重要、っていうかコレでほぼ決まる。干物って干してる間にも分解が進んで熟成されていって味が濃くなっていくんだと思ってるけど、塩効かせてからさらに干し上げるって2日ぐらいはかかるわけで、鮮度良い状態から始めないとできあがり時点で分解進みすぎてグニャグニャッとした干物になってしまう。スーパーで安く売ってる干物なんかは冷凍原料で作ってるのでワシが思う理想の”干して引き締まった肉質”にはほど遠いグズグズのものが多く、旅館の朝食とかで出てくるアジの開きとか脂のノリはイイのも多くてそれはそれで旨いのかも知れないけど、ワシの思う干物の理想型には遠い。
 刺身は正直釣って次の日に食べても、魚種によっては死にたてほやほやの食感ゴムの味の薄い刺身より美味しかったりもするぐらいで、疲れてたら料理次の日回しでも良いけど、干物はその日のうちに仕込んでしまうことにしている。

 とりあえずはアカカマスの場合、まずはまとめて鱗を取る。写真右下の保冷剤の上に見切れている”鱗取り”は鱗が飛び散りにくくてイイ。アカカマスは鱗剥がれやすいのでそれ程手間ではないけど、日本の台所って女性が使うことを想定しているのでワシのような平均的な身長の男性でも流し台の底で作業しようとすると腰をかがめなければならず腰痛の元なので、最近は膝立ちで作業すると楽だと気付いて膝立ちでやっている。

 鱗が取れたら開いていく。わりと大事なのは包丁の切れ味が悪くなったらすぐに研ぐことで、切れない包丁で無理にどうにかしようとすると失敗するし怪我にも結びつきかねない。
 まずは、目の前ぐらいから先の上下のアゴを切り取る。歯が付いてるとせっかくパリッと焼き上がった頭が食べにくい。
 そして背ビレの上から尾ビレに向けて背骨の上に刃を沿わせるように包丁を入れる。この時は腹の辺りは背骨チョット越えるぐらいまで、シッポの方は皮残してぐらいに深く切る。返す刀で腹腔に刃先を入れていき腹骨を切りながら頭の手前まで刃を進める。ってところが上から2段目の写真。そこからヨッコイショと頭を縦にして包丁でテコの原理みたいにしてギコギコと力を入れて頭を割る。
 割ったら、内臓と鰓を指で摘まんで引きちぎって”開き”の完成。
 あとは洗って汚れを落として塩水に漬け込む。
 ちなみに開いているときに出る内臓のうち、一部は洗って飼ってる魚たちの餌に、浮き袋とちょっと膨らみ始めた卵巣はラップにくるんで冷凍しておいて味噌汁の出汁に使っている。
 ニベ科の浮き袋が膠成分多くて良い出汁が出ると中国人が追いまわすというのを聞いていたので、カマスも魚体の割に立派な浮き袋が取れるので物は試しと、干物作るときの12匹分を味噌汁にぶち込んでみたら、縮んで具としては存在感無くなってしまうんだけど、その程度の量で次の朝味噌汁がプルンプルンとゼラチン状になってるぐらいで出汁も良い味出てる気がする。まあバカ舌なので味は自信ないけど。

 でもって、塩水につけるんだけど、品質を安定させるために塩水の濃さと漬けおく時間はキッチリ測って一定にしている。
 保存性重視で塩きつめでカチカチに乾燥するか、生っぽくあんまり塩辛くない”オカズ性能”重視で行くかでも、もっと単純に好みでも塩加減は違ってくるんだろうけど、今のところ我が家では塩50gを酒チョット入れた500mlの水に溶かした10%食塩水で2時間30分がお気に入り。
 塩水はジップロックで作ると色々と捗る。まずは塩を溶かすのがバットとかの容器だとスプーンとかでカチャカチャ混ぜても溶け残りがちだけど、ジップロックに塩入れて水入れていったん封をして左右に激しく振って攪拌してやると素早く塩が溶ける。
 そして、開いた魚を入れたら空気を抜いてやれば少ない塩水の量で全体が浸かる。
 この時にも頭の先歯を切ってあるのが重要で、ジップロックに歯で穴が開かない。

 あとは2時間30分後にアラーム鳴るようにしておいて、干物網にならべて干す。1段に4匹ずつ乗るので12匹が干物原料仕入れの際の目標漁獲数となる。皮を上にして干し始めて、ある程度乾燥しきる前に一回ひっくり返すと網に干物がこびり付かずに済む。昼すぎ捌いて塩水につけて夕方干して、夜寝る前に裏返す。翌朝の一夜干しではまだ水分の抜けがあまいのでその日一日か、様子見てもう一晩ぐらい干す。干す時間は天気しだいで特に風があると早く仕上がる。
 パリパリに干し上げていない場合は、冷蔵庫に入れるときには皮の面をあわせた2枚一組みで抱き合わせてラップでグルグル巻いていくと2枚が貼り付いたりせず焼くとき取り出しやすい。
 昼と夜と2枚ずつ食べて3日分のオカズとなる。さすがに飽きてきて、食べる前は”またカマスの干物か”と思うンだけど、食べ始めるとやっぱり旨くて丼飯が進むのであった。干物と大根の味噌汁とかがあれば食事として質素ではあるかもだけど、美味しくて栄養的にも良いンじゃないかと思っている。
 当地では柑橘の栽培が盛んで、規格外品のミカンとかキロ100円切るぐらいで売ってたりするので、デザートにそれらを楽しむことで栄養バランスはさらに良くなる。1月ぐらいまでミカンが出てて、その後ポンカンがちょっと出て、今はハッサクが美味しい。

 カマスの干物って、干した繊維がギュッと締まって弾力が増して塩味と共に味が濃くなって、焼き霜造りも塩焼きも旨いけどまた違う旨さを発揮してくれる。
 干物といえばマアジが定番にして最強かなとも思うけど、カマスもなかなかどうして良い味で今現在の自分の中では干物2強という感じになりつつある。
 実家では、朝の干物といえばマアジ、タチウオ味醂、サメタレのローテーションでたまに”ハゲ”と呼ばれるウマズラハギの干物が出ると「今日は朝から豪勢だな」と思ってた。
 タチウオ味醂とサメタレは干物屋さんが作ったのをスーパーで買ってたんだろうけど、マアジは軽トラ行商の魚屋さんから鮮度良いのを買って婆ちゃんが作ってたンだと思う。あの味をまた食べようとおもえば、自分で干物作るしかないので魚料理できる人間で良かったと思うところである。
 働いてた頃は、正直釣りが終わったら帰ったらとっとと寝てしまいたいという思いが強かったので、魚リリースが多かったけど、今は魚料理をじっくり楽しむ贅沢な時間がとれるので、釣り場の資源管理は気にしつつも、自分が食べるべき魚は、作戦練って準備して楽しんで、実際に釣って楽しんで、料理して食べて楽しんで、それを文章にして楽しんで、皆さんにも楽しんでもらえたらなと思っちょります。

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