2023年12月30日土曜日

一つの回転する石は無のコケをかき集める-樹脂製ラインローラー実験結果報告-

 今年も終わりそうになっております年の瀬、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 今年は”スピニング熱”が悪化しまくって、リールの改造に手を出してしまい、まあ改造って言っても世のボールベアリング教神徒の方々が、せいぜい”交換”でしかない”フルベアリング化”とか錆びる箇所が増えて重くなるだけの無駄な改悪を喜んでるのとはワシ違うけんね、ワシスピニングリールの機能の根本的なところに鋭く切り込むけんね、と息巻いてスプールエッジいじくったりラインローラーを自作したり、ベールアーム取っ払ってマニュアルピックアップ化したりっていうのを、旋盤とか本格的な機械工作じゃなくてハンドドリルぐらいのお父さんの日曜大工レベルの技術と資材で挑戦してきたわけだけど、改造して実釣で試験しないと使い勝手やら耐久性やらは分からんわけで、これからも引き続き検証だけど、ラインローラーの方は春のシーバスシーズンのコンパック「カプリⅡ」での実験に引き続き、秋のシーバスシーズンPENN「スピンフイッシャー714z」とメッキ等小物用のルー「ゴールドスピン」で実験して大まかな感触は得られたと思うので、その今のところの結果について皆様にご報告したいと思います。

 今回自作したラインローラーは樹脂製で、通常ラインローラー自作といえば、真鍮削って成形して硬質クロムメッキというのが正道だろうけど、そんなもん日曜大工で作れるもんじゃないって話で、じゃあ丈夫な樹脂とか日曜大具の道具で加工成形できるのはないかと考えて、ラインローラーのスリーブにも使われていて、金属面との滑りが良く耐摩耗性にすぐれている商品名ジュラコンとかの”ポリアセタール樹脂”なら、加工しやすい規格サイズの安い部品がモノタロウとかで手に入るので、これでどうかと元々の金属製のラインローラーが腐蝕で割れたカプリⅡの時に思いついて、耐摩耗性が高くてヤスリが効きにくいけど、刃物は通るという特徴からアートナイフであらかた成形してしまって、ハンドドリルで回転させつつダイヤモンドヤスリで表面をなるだけ整えるという方法で、ラインローラーを作って運用してみた。当然金属に比べれば柔らかい印象の樹脂製のラインローラーが、実用に耐えうる耐久性を持っているのかが検証の内容となる。

 カプリⅡではポイント限定で出番が短時間だったせいもあって、春1シーズン使ってちょっと糸溝ができかかってるかな?ぐらいの削れてるんだか削れていないんだか分からない状況で、それなら秋に本格的に主力のリールで運用して耐久性試験をしてみようということになった。

 結果から書くと、小物釣りに1号ナイロンで運用していたゴールドスピンの方は1シーズン使いきって、写真ではわからんぐらいだと思うけど、糸溝ちょっとついたかな?ぐらいでまだまだ使えそう。ただ、流石にシーバス用主軸機としてナイロン2号で運用していた714zのほうは1シーズンもたなかった。とはいえしょっちゅう交換しないといけないほど糸溝が削れるということはなく、シーズン中予備を一個か二個も用意しておけば間に合うので、ラインローラーが破損、あるいは紛失してしまっている場合の代替策として、ご自身で日曜大工レベルの工作ができて苦にならないのなら充分選択肢の一つとなり得るという感触を得たところ。ただ、どんな人が買うか分からない中古市場に出すときは少なくとも説明が必要で、交換前提なのであまり適さないかもだけど、自分で使うことを想定するのであれば、なんとか及第点をあげても良いかなというのが、この秋の実験結果の概要。こんな手もあるよというのを頭の隅に置いておけば、何かのおりに役に立つかもしれません。

 という判断となった実験の様子を、その中で面白いことに気がついたりもしているのでご紹介してみたい。

 主に714zについてになるけど、9月に秋のシーバスシーズン開幕しましたってなって実験開始。最初特に削れてもいないようなので1シーズンぐらい持つかなと思ってたんだけど、10回釣行したあたりでなんか糸溝できてるかなって感じになってきて、そのまま使っていたら、15回釣行でいかにも薄くなった感じで下の軸が透けて見える感じになってきた。写真の谷の底左側のほうが右と比べて谷が深くなって、暗色に下が透けているのが分かるだろうか?この状態まで来たら穴が開くのは時間の問題だろうということで、また新たにラインローラーを作成し、交換することとした。

 ラインローラー製作は、前回やったときと基本同じで、外径6mmのジュラコンスペーサーの穴を4mmにドリルで拡張し、長さ合わせて切って、アートナイフで大まかな形を削り出して、ハンドドリルで回しながらダイヤモンドヤスリで表面をある程度ならして”空気銃弾型”に整える。やや4ミリだと隙間があってガタつくので軸はケブラースレッドでちょっと太らせてあったので、そこはそのまま利用。

 これで、この秋の残りの釣りぐらいは大丈夫だろうと実験再開。ところが、これが2回持たなかった。ちゃんと機能してるかなと2回目終わった段階で何気なく眼鏡外してじっくり確認したら、既に写真の上側の谷を見ると分かるように、糸溝が掘れきって穴が開いて下の軸が見え始めている。

 少なくとも前回は15回の釣行に耐えてまだ穴は開いていなかった。それが2日でダメになるってどういうことなのか?つらつらと原因考えて、ひょっとして回ってなかったとかか?と思い至り、輪ゴムでラインローラーの回転具合を確認してみたら、引っかかって上手く滑らかに回ってくれない状態。

 要するに、回転して摩擦がそもそも少ない場合や、そこまで行かなくても回転することによって、ラインとの摩擦が起こる面が一箇所に固定されないことによって、摩擦熱が分散されていれば糸溝が掘れにくくなるのではないだろうか?ということに思い至った。

 となれば次は、回転の確保ができていることをしっかり確認してから実験に入ってそのことを検証したい。

 ということで再度”空気銃弾型ラインローラー”を作成して、軸の太らせ方も調整して、輪ゴムで回してやって滑らかに回転することを確認してから、実戦導入。ところが、これが使用時あんまりクルックルには回ってるように思えない。思えないけど前回のようにすぐに削れてくる気配はなく、結局今期12月前半まで使いきって、写真下のように糸溝できてるかどうかわからん程度で済んでいる。クルクル回ってはないけどラインが張ったときとか負荷が掛かると回るぐらいはしてるのかな?とラインローラーに一箇所黒点をマジックで打って、釣ってる最中にたまに確認してみると、黒点の位置は一定してなくて、想像したように、クルクルではないけど削れない程度には回って摩擦を逃がしているようだ。ちなみにラインが縒れたりという不具合は、たまに回ってる程度はもとより、回ってなくてラインロ-ラー(実際には回ってなかったのでラインガイドか?)が削れまくった状況でも生じなかった。これはワシがナイロンライン使用で1回使ったら先切って、2回使ったら前後ひっくり返す、3回使ったらまた先切って、4回使ったら交換というお作法でラインを使い古さない運用をしているので、同じラインを長く使うとかだとまた違ってくるのかも。いずれにせよワシが困るほど糸ヨレしなかった。

 ということで、ラインローラーが回ってると、ローラーが摩擦で削れるのがある程度防げるんだ!という考えればあたりまえのことに気がついて、なかなかに面白いと思っていたら、TAKE先生が先日違う方向から、ラインの当たる場所が常に変化することにより、摩擦熱の蓄積や糸溝の発生を抑制することができる旨指摘されていて、昔のミッチェルの固定式のラインガイドがそれで、あの曲線のついた円錐形のラインガイドはラインの位置が一定しないのでラインが傷みにくいし削れにくいとのこと、で凝り性のTAKE先生、セラミックメーカーにミッチェル用のラインガイドをSICで作ってもらって売りに出しております。ワシんちにも写真の最初の314とかこのラインガイド使えるヤツはあるので、一個買っておくかとポチッとしかけて、値段の0を一つ間違えていたことに気がついて焦った。1万7800円でっせ。普段ワシFuji工業さんの、たっかいガイドを竿に沢山付けようと仕向けてくる態度には不信感を抱いて「釣り具のYKKめ!おまえんとこの買うしかないからってボリやがって!!」と思ってたけど、ステンフレームSICガイドが5,6百円からするのぐらいで高いとか言ってたらいかんのやな。Fujiが沢山売るから単価が安く設定できるだけっていうのは、まさに富士工業様の企業努力というやつなんだろう。本来SICは単価メッチャ高くつく素材なんやなと知って反省。ワシやっすい酸化アルミ系の「Oリング」愛用してるけど、その手の安いのも引き続き売ってくれるなら、高いの買わされてる人らのことは関係ないし文句言わないでおこう。トルザイト買いたいやつは好きに買やええんじゃ。

 ということで、奇しくもいかに削れない高品質なリール用固定式ラインガイドを作るか、という試みと、手作業で加工できるような長期的には削れるような素材でもって、なんとかかんとか実釣使用可能なラインローラーって作れないか?っていう試みが、求める出力の方向性こそ違えども、根底にある考え方として「ラインが当たるところが一箇所に集中しなければ、摩擦熱の発生や糸溝の発生を抑制できる」という共通の事象にたどり着くってのが面白い。そういうことに気づけただけでも道具の仕組みが理解できて意義深かったと思う。結果、ポリアセタール樹脂製の自作ラインローラーは、削れてくるけどちゃんと回ってりゃすぐに削れるワケじゃないので、予備も用意しつつ運用すれば使えなくもない。というぐらいの華々しくはない成果に落ち着いたけど、まあ悪くなかったと思う。純正のやちゃんとした工房なりが作った部品のほうが望ましいけど、そういうのが手に入らないときの裏技、奥の手的に知ってると使える、あるいは自作して色々試して楽しめる技っていうことで、皆様よろしく。

 そんな感じで、早速実験も終わってないうちから応用編で遊んでて、丸ミッチェル304でそんなに使いかた難しくないというのが分かって、扱いにも慣れてきたベールワイヤーの無い固定式のベールアームを持った「マニュアルピックアップ」方式のリールをでっち上げて遊んでみている。具体的には大森「タックル5No.2」をマニュアルピックアップ化したんだけど、これまた実際に使ってみたら改善しなきゃならないことが出てきたりして、なかなかに楽しい。巻き始めラインを人差し指で拾ってハンドルを巻いて、ラインをベールアームが拾ってラインローラーにっていう感じで、ベールワイヤーがラインを拾って来る場合と逆側からラインローラーの谷にラインが落ちるんだけど、”空気銃砲弾型ラインローラー”はベールアーム側には傾斜が無いのでその上にラインが乗ってしまう(写真上から2つめの状態)。ということがあったので早速そちらにも傾斜をつけて、きちんと谷にラインが落ちるように改善した。来年春期は今年の春の丸ミッチェルに引き続き「マニュアルピックアップ」方式のリールで行くつもりで、コイツともう一台用意して、なにやら比較検証してみたいと画策しているところであります。

 スピニングリールの機能や構造なんかに理解と興味が深まってくると、こうすれば良いんじゃないか?とか、こうやって遊んでみたい、とかの創意工夫ネタが湧いてくる。面白くなってきたという感触があるので、来年も引き続き楽しんでいこうと思っておりますので、皆様引き続きご贔屓に。

2 件のコメント:

  1. ポリアセタール直受けでも15回も持たせれるなら儲け物だとおもいます
    私の713z、12年前だったから新品ラインローラー入手できましたが、
    今はセカイモン通じて厄介な取引きになりますし
    何時でも代用品作成出来るならそれに越した事はないと思います。
    それにローラーのデザイン試行錯誤するのも楽しいでしょうし
    ローラーだけじゃなくZEBCOのピックアップピン作るのも出来るしアンバサダーのブレーキブロック作る事も出来ると思います
    ミッチェルのタングステンガイドのあれ、私も一瞬検討しましたオールドミッチェルでPEって無いですし
    サビ対策も既に304系のガイドに換えて頻繁に掃除すれば問題ないのが判りました。
    あれもポリアセタールで自作可能かと思います



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    1. ぬこさん こんばんは
       ヤスリがかけにくい時点でそこそこもつだろうなと思ってましたが、なかなかに使える素材だと思いました。
       仰るとおり、代替品作成はじめ色々応用できそうな素材です。
       自作する楽しみがあるってのが結局いちばんの利点かもです。

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