2023年10月14日土曜日

ティースプーンでも買ってきて柄をぶった切った方が早い

  メッキ釣ってて、スプーンに反応良い日があってスプーンも良いなと思ったんだけど、ふと考えてみると我が家には各種厚さの銅板やら真鍮版やらがあり、金ばさみ、金鋸もドリルもある。

 「これスプーン自作できるんじゃないの?」


 といらんことに気がついてしまったのである。こまったことに。

 現在メッキ用に用意してるルアーはスタンダードな形状性能のスミス「ピュア2.7g」、水面近くをヒラヒラとイレギュラーな動きが魅力のルーハージェンセン「ハスルアー」3.5g、思い入れのある”忠さん”ブランド、現アートフィッシング「リトルマスター」2.5gあたりで、ぶっちゃけその布陣で困ってない。弾数もそれなりに備蓄あり。

 でも作ってみたくなったのだから関係ないんである。作るのである。

 ルアー製作において、実際にメーカーで製造するのにスプーンのあの曲面を均一に出すのは結構技術が必要で、木を削ったり、樹脂を金型に流し込んだりして作るプラグよりずいぶん難しいとは聞いたことがある。金属板から型を打ち抜いてプレスかけるんだろうか?

 「バイト」の制作者である常見忠氏は、最初銅板を金切りバサミで切って、トンカチで叩いて形状を出したそうで、ほぼ鍛造の世界である。やろうと思えば確かにできるけどそれで微妙な形状調整をとなると、何度かやり直しすることを考えると気が遠くなる。その方向は捨てるのが無難かと。

 じゃあスプーンにならないじゃん?と思うかもだけど、平面の板を折ったり曲げたりだけでも、スプーンとして成立はするようなのである。先ほど名前が出てきた「ハスルアー」はまさに平面的な金属板の腰?のあたりをクイッと1回曲げただけである。リトルマスターも基本的に平面の本体を頭の方をちょっと上に曲げ、お尻の方をちょっと下げて、写真の様に横から見たらS字状にうねらせているだけである。でもどちらのスプーンも充分以上に魚は釣れる性能に仕上がっている。

 方針としては、食卓のスプーンのような局面を打ち出しとかで作るのは面倒臭いので、曲げを二カ所か一カ所入れて、その曲げ具合の調整とかで釣れる動きのスプーンに仕上げていこうと思う。これなら素人がペンチで曲げるだけという簡単な作業で作成可能である。

 それでは早速作ってみよう。っても簡単である。一応同じ形のを量産したいなと、リトルマスターをやや引き延ばしたような形状の”型紙”を養生テープで作って1ミリの真鍮版に貼り付けて周りをマジックでなぞって、型紙ペリッとはがしてまた隣に貼ってマジックでなぞってと型を写す。一番左の赤いのは参考にしたリトルマスター。

 とりあえず3タイプつくってみるので3つ。

 金ばさみで、大まかに切り出して、端を切れるだけ金ばさみで切っておいて、グルッと周りをサンドペーパーで削って面取りしつつ角を丸めていく。金ばさみでゴリゴリッと切り出すとちょっと曲がるので、そのあたりはあとでペンチ使って曲げるときに戻して良い塩梅にする。

 アイとフックの穴をドリルで開ける。真鍮は削りやすいので電動ドリル使うまでもなく、手動で充分穴が開けられる。小型のスプーンなのでドリルの直径は1.5mmを使用した。

 ここまで来たらあとは曲げるだけ。ペンチ2本使ってギューッと力入れて曲げてやる。1mmの真鍮板はわりと簡単に曲がる。現場でも調整可能だろうと思う。

 3つあるので、それぞれちょっとづつ曲げ方を変えてみた。

 上の写真、上から緩やかに曲げてアイ側をちょい上げ、フック側を下げた物、真ん中が、やや鋭角的にアイ側をちょい上げフック側を下げたもので、一番下だけ二カ所曲げではなくフック側を下に一カ所曲げている。

 下の写真は横から見たところで、左から緩やかに二カ所曲げ、真ん中やや鋭角に二カ所曲げ、右がお尻の方一カ所曲げ。

 という感じで、色ぐらい後で塗っても良いけど一応完成したので釣り場に持ち出して試し投げしてみた。

 これは難しい!今売ってるルアーのほとんどが、アイ側の上げが大きい「オークラ」型、アイ側の上げが小さく比較的幅広の「ダーデブル」型、平面を曲げた「ハスルアー」型のどれかにほとんど収束していて、その派生程度にしかバリエーションがないのも頷ける。

 今回作ったのは、3つめの平面を曲げたハスルアー型の派生形になるんだと思うけど、最初の曲げ方の段階で全て低速でもクルクル回ってしまい、ラインが縒れて使いものにならんことが想像に難くない状態だった。これ、ワシだけじゃなくて初期の日本製スプーンでもありがちで、ダイワのクルセイダーの小さいサイズのは回転しまくりで「クルクルクルセイダー」とか呼ばれてた。なにしろ最初からアイにはヨリモドシが装着されて売っていたぐらいである。ある程度以上の速度になると回転してしまう、というのは悪い面だけではなく、それはそれで使いどころがあって、回転しやすいぐらい水を噛むってことは回転しない低速では動きが良いってことで、忠さん「バイト」の4.8gは高速では回転しやすくて流れ横切らせたりするとライン縒れまくったりするけど、止水では動きよくて頼りになるスプーンだったりする。とはいえ、作った3個は使用に耐えないレベルで低速でも回転する。

 でもまだ慌てる時間じゃない。最初から上手くいくわきゃないことぐらい想定している。ペンチを出して、ああでもないこうでもないと曲げを変えて投げてみる。

 結果的に二カ所曲げてる場合はユルい曲げ方にした方が回転は治まるけど、やや調整難しく、2個のうち片方はどうにも調整しきれなかった。二カ所の曲げ具合のバランスもあるのでか意外に用件複雑で上手く決まらない感じ。

 一方一カ所曲げたヤツは曲げをややきつめにすると回転は治まってくれて、動きも尻振りを基本にたまにバタバタッと変な動きが入る感じで、曲げ方が似てるからあたりまえかもだけどハスルアーに動きの質が似ている。これは調整も難しくないし実用的だと思うので、当面自作スプーンはこのタイプの形状違いやら大きさ違いを暇見て作って詰めてみようかなという感触。ちなみにウグイちゃんで試してみたら普通に釣れました。まあちゃんと動けばあたりまえに釣れるって話。

 スプーンはルアーの元祖的な存在で単純な形状素材なんだけど、その動きを制御しようとするとなかなかに難しいというのが理解できた。どこのメーカーが作っても似たような形状になるのは、そこから外して釣れるルア-として成立させるのが超難問だからなんだろうなと納得した。簡単そうだし自分で作って釣ってみたいと安易に手を出したけど、なかなか一筋縄でいかず学ぶことが大きかった。そのことが分かっただけでも自作してみたかいは既にあったのかなと思うところ。

 ということで、ルアー図鑑うすしお味第57弾は自作スプーン作りを主体にメッキ用スプーンということでいってみましたとさ。

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