2022年12月17日土曜日

デカ大森の魅力

 ハイッ!買っちゃってますね!!
世間では一部リアドラグ機とか除いてあんまり人気のない大型大森スピニングの魅力について、語る人も少ないし、読む人も少ないだろうけど、そうであるならなおワシが書かずして誰が書く?という謎の使命感に突き動かされ書いてみようかと思っちょります。まあぶっちゃけワシも何台かいじった程度で例によって沼の浅場でビチャビチャ泥遊びしてる程度のことのご報告ではあるけど、ご用とお急ぎでないむきはゆっくりしていってくださいな。

 買っちゃいました冒頭写真の機種は大森製作所謹製の「スーパー2000」でこの蓋の形状とかは大森ファンにはなじみ深いのではないだろうか?「マイクロセブンDX」とかに通じる形状で、脚が付いてる本体は左右共通で、どちらかにハンドルとハンドル軸のギアが、反対側にスプール上下のオシューレーション機構関係が入っててアルミ板の蓋で閉じられているパターン。発売は1964年とマイクロセブンDXよりちょい前だけどだいたい同じ時代の機種。

 なんであんたそんなモン買ってんねん?って話だけど、説明させてください。いつものことですが説明させてください。前回取りあげたコンパック「スーパー7」は次の展開は博打打った海外からの部品取り用の個体が大平洋渡って我が家に来てからで、まだしばらく後になるだろうってことで、それはそれで粛々とことを運んでいけば良いんだろうけど、なんか勢いついてしまって、大森のゴッツくて力強い大型機をいじってみたい!って思ってしまって、思ったとしても売ってなかったら、あるいは以前触ったことがある「マイコンNo.6」とかなら買わずに済んだんだけど、なんかスーパー7のときに見たようなベールアーム周りの構造が見てとれるこの機種が、ネットフリマに送料込み3,800円で売りに出されていたのを見て、理性では使うアテもないしそもそも右巻でオマエ使えんやろ?っていう話だしで無視しようとするんだけど、感情はもう”欲しい”の1択で言うこと聞いてくれんかった。無視できんかったんじゃ。アタイ病気が憎いっ!

 まあ、スプールは共通っぽいスーパー7の後継機的な見た目だし、部品いろいろ共通ならスーパー7の方と融通しあってニコイチなりサンコイチなりになってもまあ着地点としてはアリかなという計算もあって我が家にお迎えいたしましたスーパー2000、800g弱の迫力ボディにウットリしつつ、早速分解清掃に入っていく。

 まずはスプール外してドラグ周りから。って分解初めて3階建てのドラグが入ってるの見て違和感が走る。スーパー7はドラグ一階建てだった。これドラグが違ったらスプール互換性無いんじゃなかろうか?って思ってスプール比べてみたら互換性もクソも、ドラグ云々よりそもそも直径若干小さく違っててダメだこりゃ。加えてなんかそれ以上に強烈な違和感があるなと”なんだろう?”ってしげしげ見てて気がついた。ローター逆回転やんけ!ベールアームの向きが当然逆なのが違和感の正体。右巻仕様のリールだから左投げを想定して意図的に変えてるならさすが大森という感じ。正回転ローターの左巻き仕様のもあったのか気になるところだけど、とりあえずスーパー7とはローターも含め異なり新しく金型起こした新機軸の機種のようだ。部品の互換性とかビタイチないんでやんの。

 まあしゃあない、気を取り直してドラグ周りを見ていく。

 ドラグノブ外すと、ノブの中にバネがなくて、ありゃこれだと調整幅出ないんじゃねえの?と思うんだけど、ほじくっていくと3階建てのドラグの下にバネが入ってる。そして、ドラグが良く分かってないリールとお小言を書いたダイワ製「スーパースターNo.2」の時に「ワシこういうことが言いたかったのよ」という設計がされていて、さすが大森!わかってるぅ!!と思いましたとさ。バネの上面にはスプールと同期して回る耳付きワッシャーを入れていて、バネはバネとしては機能するけどスプールと一緒に回るので”ドラグとしては機能しない”というかドラグの仕事を邪魔しない設計。なのでよく見る3階建てのドラグの6枚円盤に加えて1枚耳付きワッシャーが多い7枚の円盤が入ってるのである。ちなみにドラグパッドは革製でカピカピに干からびて堅くなってるので実釣に使うなら交換が望ましいけど、使う予定がないのでとりあえずグリス塗ってそのまま”純正”状態を保存しておくことにした。皮でドラグパッド作ったことないけど加工の難しい素材じゃないし蔵になんぼか端布があるので一回どんなもんか試作してもいいかも。

 でもって、本体蓋をパカッと開けると予想どおりスプール上下のオシュレーション機構が入ってるんだけど、これがなかなか面白い。部品がスーパー7で採用されていた亜鉛鋳造だと大型リールの部品としては強度不足がやっぱりあったのか、真鍮と言うより青銅っぽい色合いの素材になってるのも面白いけど、クランクにつながってる歯車っぽい部品がぱっと見ただの円盤で歯が切ってなくて、なんじゃこりゃ?って思って、ハンドル側もパカッと開ける。するってぇと、ギアがローター軸のが傘じゃなくて真鍮の円筒形にグルグルでハンドル軸のギアは綱系の芯を鋳込んだ亜鉛鋳造で平面的な斜め切りの歯車のまさに大森”ハイポイドフェースギア”でちょっと感動するんだけど、それ以上にハンドル軸のギアの芯から延長するように歯車が突き出してて、本体真ん中に開けた穴を貫通してる方式に「ナルホドこの手があったか」と意表を突かれる。オシュレーション用の歯車は3枚目写真の様に歯が内側に向けて切られているちょっと変わった設計のものだった。直径大きくしてスプール上下を減速して巻き上げ時に掛かる力を減らす目的だろうか?良くあるハンドル軸のギアから下にズラした歯車を介して減速オシュレーションになってる方式よりは直径大きいハンドル軸のギアと重なる部分が多くて直径が大きくとれるのは確かだろう。

 ローター軸のギアは、ちょっとミッチェルを思わせるような本体のステンレスっぽいパイプに刺さってる設計で、まあ漢らしく、ボールベアリングなしの真鍮ブッシュですよ。ギア比1:3.5ぐらいの低速機で上に書いたように減速オシュレーションなのもあって巻きは特段重くはない。

 ストッパーはハンドル軸のギア裏にあるこの時代の大森では標準的方式。切り替えレバーが樹脂製じゃなくて真鍮製でこの機種は徹底的に丈夫に作ってる感じ。遊びはそれなりにあるけど、普段はストッパー外しておくという”ミッチェル式”で丸ミッチェル使ってて思うのは、ハンドル握ってるんだから遊びが多少あっても関係ないというか、ハンドル放す必要がある取り込みのときにストッパー効かせれば良いっていうので間に合うということで、逆転の遊びなんぞなんら問題ないのが良く理解できる。何度も書くように瞬間的に止まる利点はシャクりまくる釣りでガチャガチャいわないことぐらいで、デメリットはとにかく種々邪魔くさいのはこれまでしつこく書いてきたとおり。

 ベール周りは、前回紹介のスーパー7と同様に巻き取る前にラインの緩みをしごくワイヤーの関門が設けられているのに加えて、なぜか立ち上がったベールアームの角のところにローラーが追加されて、上部の”補強の棒”とは違ってこちらはちゃんと回転している。

 なぜここに、ローラーが必要だったのか、当然ラインが摩擦で切れないようにだろうけど、この位置にラインって掛かるか?と疑問には思う。でもわざわざ付けたってことは角に擦れて切れたとかがあったからなんだろう。ぶっといナイロンラインだと外側に膨らんであたるとかがあるのだろうか?まあ気にしないでおこう。当然塩水かぶる部分で腐蝕しかかってはいたけど、固着はしておらず、汚れ綺麗にしてラインローラーは良く回るように調整しておいた。今回は整備上手くいって、ちゃんと稼動品に仕上がってすっごく気分が良い。

 という感じで、スーパー7の反省を踏まえたのか、スーパー2000はとても頑丈な作りになっていて、ちょっと実戦投入してみたくなるんだけど、右巻なのよねこいつ。グリス盛りつつ組んでる最中の本体の真ん中の板の写真だけど、こちらハンドル軸のギアが入る右側なんだけど、こちらにもオシュレーションの歯車が乗るピンが突き出てて、左巻き版もあったのかもしれない。そのへん確認したくて、以前教えてもらった欧州のシェイクスピア関係法人のサイトから古いカタログとか眺めてスーパー2000に相当する機種がないか、特にその左巻き版の有無を確認しようとしたんだけど、ドンピシャのが見つからなかった。72年カタログの「シェイクスピア2250」が後継機のようでかなり近いけど、ベール反転のバネが入ってるあたりの機構が異なるように見える。それより古いカタログではコンパック版スーパー7的な「キャデラック」が64年カタログにあるけど、その中間っぽいスーパー2000同型機は探しきれなかった。少なくとも左巻き仕様はあるんだろうなたぶん。で、左巻きが出てきたら欲しいと思ったんだけど、よく考えたらむしろさらに進んだ設計のハズの「2250」こそ狙い所なんではないか。ってヤーメーテーオーケ~!!いい加減にしろと我ながら思うのである。既にもう一台部品取り個体が我が家に大平洋を越えてくることは確定済みで、これ以上”デカ大森”の重石で沼の深みに沈んでどうするねんって話。場所くうし値段付かないから売れないし、使う場面もなかなか難しいし、そろそろ手を引かないと収拾が付かなくなる。とはいえ、一度でも欲しいと思ってしまったら、ネットオークションとかで出てきたら手が出てしまうような、そんな未来が見えてはいる。

 諦めて収拾つかないけど蒐集しておくか。トホホ。

2 件のコメント:

  1.  ナマジさん、引き続いてのヘビーな解剖レビューごちそうさまです。
    大森は変則的なことするイメージが無いので、”デカ大森”がこんな複雑凝り凝りだなんて思わなかったです。

     スーパー7のスクリューに噛むホイールが複雑骨折してるのは痛いですね。
    私の手元にも一生使わないようなやつがゴロゴロしてるので”収拾つかない蒐集”が他人ごとではないと言うか仲間がいて安心すると言うか… 中途半端じゃいけないという焦りも湧いて複雑です。

     

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    1.  やはりどこの技術者でも、アイデアつっこんで試してみて複雑なモノを作って失敗もして、そうしてからじゃないと単純で効率的なところには到達し得ないのかなという気がしています。

       収拾のつかない蒐集、我らの定めだと思ったりもします。
       ほどほどにしたいです心から!

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