2022年3月26日土曜日

PENNスピンフィッシャー”714z”解体新書

 

 714zは優等生である。ってのは以前にも書いたけどまた書いておく。釣り場でも手入れにも面倒くせぇところが何もなく、長く使っていくのに全く不愉快な思いをしなくて済むし、不具合も限られている。不具合で憶えているのは、ベールスプリングが折れたのと、スズキとのやりとり中にドラグの”音出し”が外れて巻けなくなった事ぐらいで、前者は現在のコイルバネ式以外では避けようがないし、折れてもローターを手で回しながらベールを起こして釣りは最後までデキるといえばできる。後者も、魚が掛かったままの状態でワンタッチのスプールを外して外れてローター内で引っかかってる金属製の”音だし”を抜いてやってやりとり再開。最終的に魚は手にしている。

 分解しての整備、注油なしで、普段は釣り場から帰ったら蛇口から水道水ジャバジャバ掛けて塩気を落として、ボロ布で拭いて乾燥後、ラインローラーとハンドルノブ根元にオイルを注して、たまにスプール外して主軸にもオイル注しておくっていう手入れだけで、昨年の秋で2年は蓋開けず、ほったらかしに近い手入れ状況だったけど、機関に不調など生じず。いつも調子よく回ってくれている。

 っていうぐらいに、塩気のある釣り場で使っても手入れが楽。以前書いたように投げて巻いて魚釣る場面でも、ライントラブルは少ないし、巻きはウォームギアでちょい重めだけど滑らかで快適だし、ドラグはPENNなので当たり前に優秀。米本国では古リール好きの多くが、小型インスプールスピニングなら”ゼブコ”のカーディナルやら”ガルシア”のミッチェル、シェイクスピア(大森SS含む)、D.A.Mクイック、なんかを抑えて、一番のお気に入りにPENNのインスプール710系を推すだろうと思う。特にあちらの人は緑の通称”グリーニー”と呼ばれる時代のが大好きなようだ(へっへっへウチにも714と712の2台あるですよ、いいでしょ)。

 正直、魚釣る目的のためだけなら、714zだけ使っておけば良いっていうか、430ssgや4300ssでも430ssでも、あるいは適切な大森でも、今まで使ってきたスピニングだけで全く事足りる、というのはイヤッちゅうほど分かっちゃいる。分かっちゃいても”そういう病気(スピニング熱)”なので仕方ない。いろんなリールを使って楽しんでみたいのである。ということで、今年のシーバスは春は”丸ミッチェル”314とPENN720z、秋はシェイクスピア2062系ダムクイック220を使う予定でいる。っていうかミッチェル314が早速ジャジャ馬っぷりを発揮してくれていて、釣り自体はやること単純明快で単調になりがちなシーバス狙いを楽しくするリールとなってくれている。

 となると、714zはしばらくお休みで蔵で眠ってもらうことになる。使っているとベアリングなんかも塩噛んでたとしても意外に錆びないモノで平気なんだけど、長期保管になって動かさないと、潮かぶってた表面とかも腐蝕しかねないし、ネジ周りとかも塩が浸みてると固着しかねない。ということで1回塩抜き兼ねて、全バラししてパーツクリーナーで古い油脂類と汚れを落として、ガッチリ大盛り”グリスシーリング”に仕上げて保管しておこうということになった。バラすついでに、ワシ的にはインスプールスピニング最高の傑作機だと思う「714z」の機構やら構造やら、ネッチョリと書いてみようかなと思っちょります。まあ単純な構造で蓋はネジ一つで開けられる整備性の良さ。部品数も写真見て分かるように少なく、全バラしてもたいした手間ではなかったりする。

 スプールは、安全策ならラインも抜いておいたほうが腐蝕が避けられて良いけど、除湿剤入れた衣装ケースで保管なのでそこまで気にしなくて良いかとティッシュで拭きまくってグリスを適宜塗っておくにとどめた。

 スプールはワンタッチ式で、ドラグ1枚式だけどスプール上面の直径いっぱい使ったもので、純正のドラグパッドはテフロン製で、海で使うには耐久性に不安があるので4400ss用のカーボンシート(HT-100)のドラグパットに換装してある。純正のテフロン乾式もあんまり走らない魚相手なら充分以上の性能と使いやすさだとは思う。714zは小さいリールでもデカイ魚が狙える”スーパースポーツ”な機種なので、ワシゃドラグは換えた。性能はPENN社の長年の、トローリングっていうドラグを一番使う(締めッパじゃなくて適宜滑らせて使うという意味で)釣りで培って実績を積んできたドラグパッドの素材なので、調整幅とか細かいところはともかく、安定性や耐久性といった基本性能では国産機種にも負ける気は全くしない。っていうか負ける理由がないと思っている。

 スプールが乗っている金属製スリーブの台座の上にはテフロンのワッシャーが噛ましてあったんだけど、巻き形状が後ろ巻きだったのの修正のために、厚さを純正の1mmぐらいのから0.3mmのに変更している。後ろ巻きの修正の方法としては、他に720でやったようにベールアームの形状をいじるか、ベアリングとローターの間に適当なワッシャーを填めてローターを嵩上げするするなどの方法もあるけど、スプール台座のワッシャー変更で済めば一番楽。

 ドラグの調整幅を出すスプリングは一目見てミッチェルの影響が見て取れる。まあミッチェルは量産スピニングの元祖的存在なので、色んなところに影響を与えているということで大目に見てあげて欲しい。でもPENNらしいのはドラグパッドが直径デカいのでドラグパッド押さえる金属ワッシャーもデカいところ。頼もしいぜ。

 真ん中の写真のスプール裏、金属の板を曲げたものが一回外れた”音だし”部分で、止めているネジのところを緩まないようにネジの緩み止め剤「ロックタイト」で外れないように処置済み。ドラグ音はチリリリリ~ッという金属らしいかん高い音でなかなか良い。

 スプールでPENNらしいのが、中心の穴がスプールのアルミ剥き出しじゃなくて、真鍮製っぽいスリーブが填まっているころ。ワンタッチの差し込む方のスリーブはステンレスだと思うので、アルミ直受けだと柔いアルミの方が削れるからだろう。4桁スピンフィッシャーの大型機種とかになるとカーボンかジュラコンか樹脂系のスリーブが入ってて、アルミが削れないように耐久性を持たせるという設計が丈夫なPENNっぽいし、ドラグを安定して作動させるには、ドラグパッドが”摩擦力でお仕事”するのをジャマしない範囲で滑らかで小さい力で滑れば良いってのが良く分かってる感じがして好ましい。ドラグにボールベアリング?まあドラグパッドのお仕事のジャマはしないだろうから、よりドラグパッドの性能だけで仕事できるのかもだけど、どう考えても、締め付けたドラグパッドに掛かる摩擦力に比べてスリーブだけの滑らかさでも無視できる程度には充分小さくて、それをボールベアリングにしたところで違いが出るほどか?って思う。誰か実験してくれやんものか?極端な話7500ssとかでドラグ6キロとかに締めたら、スリーブだけでドラグノブ全く締めずに回したときの負荷がその6キロに対してどれだけの割合かってのを考えればイメージしやすいか?ドラグノブ外して刺してあるだけのスプールを回すのに必要な力は数グラムとかじゃないの?そうなるとトドのつまりは千分の1単位の世界のどうでも良いような微差のためにボールベアリングが2個も入ってるってことになる。実際にはドラグ作動時には力掛かってある程度の速度で回るから数グラムって事はないかもだけど、それでもドラグ締めてもスリーブが締まるわけじゃないからたいして抵抗増えないだろう。アホかと感覚的に思うよねって話。

 本体に移って、蓋を止めてるネジを外してパカッと開ける。左巻き専用機なので、蓋は本当に蓋としてだけ用をなせば良いので、途中から金属製から樹脂製に素材が変更されている。

 グリスグッチャリでもとは青グリスなんだけど、真鍮の銅から緑青が出ているのか緑っぽい茶色に変色している。

 スプール上下はハンドル1回転で1回上下の単純なクランク方式、逆転防止のストッパーはハンドル軸のギアに掛けるっていう単純明快な設計だけど、随所にPENNらしい耐久性にこだわった真面目なところが見て取れる。

 スプール上下のクランクがハンドル軸のギアに乗ってるところには、スリーブが入っているし、ハンドル軸のギア自体は真鍮のギアにステンレスの芯で、芯を受ける本体にも真鍮のスリーブが填められている。芯の真ん中へんがちょっと細くなってて、油溜まりなのか設計上の理由があるのか、ワシャ分からんけどなにかあるんやろな。

 まあ、部品がとにかく本体除くと真鍮とステンレス多用で、その分重いのかもしれんけど、海で使うにゃ心強い。グリスグッチャリにしておけば、およそ腐蝕する気がしない。

 ステンレス製の主軸も抜いて、ローターを抜く。ローターは716zの解説でTAKE先生のお褒めにあずかっていたように、ベールアーム・ベール反転バネとベール返しの引き金レバーを反対側に配置して錘無しで回転バランスとってます。

 そして、ベール返しの引き金レバーは横方向の板を折り曲げているのが一般的だけど、714zでは写真の様に縦になってて、ついでに両側から本体の出っ張りで保護されていて”熊の手”でベールを起こそうとしても無理な構造になっている。まあベールワイヤーへし曲げたクマはいたかもしれんけどな。

 ミッチェルやカーディナルがベール返しの引き金レバーを折り曲げて上の方に持って来ているのは、下の方にあると余計な摩擦抵抗やらがかかるからなんだそうです。その点も縦方式だと引っかける位置が上の方に来るので上手な設計になっているんだろうなと思っちょります。

 でもって、ベールアーム周りは快適に長く使うためにチョコチョコと手を入れて使っております。

 まずはラインローラーが水平になるように、ベールアームを止める樹脂の突起に、写真(右上)では分かりづらいかもだけど、下駄履かせて高さ調整してあります。714zのラインローラーはラインが転がりにくいV字谷的な形状で多少水平じゃなくても大丈夫かもだけど念のため。

 あとベールアーム周りで意外に大事なのが、ベールワイヤーの形状をちゃんと整えることで、ローターにベール関係のパーツを組むときの順番は、ベールアーム、ベールワイヤー付きのベール返し(ベールアームの反対側)と止めて最後にラインローラーの填まったベールワイヤーの先端をベールアームに差し込んで、ナットを締める。っていうのがやりやすい手順なんだけど、ナットを締める前にベールワイヤー先端が自然に無理なくベールアームの穴に填まるようになっていないと塩梅が悪い。ベールワイヤーが変形して開きすぎたりしていると、当然ベールの開閉に余分な摩擦力が生じてしまい上手く閉じなくなりかねない。
 ということで、ベールワイヤーが変形しにくいようにするには、収納時に折り畳めるようになっていたり、ベールワイヤーが太くなっていたりと、いろんな対策がとられるんだけど、PENNの場合は米国らしく”力こそパワー”な解決策をとっていて、バネを留める穴の位置がキツくなるように設定されていて、多少の不具合は無理矢理力技で閉じるようになっている。純正状態だとハンドル回してベールアーム閉じると”ガチャン”と思い切り力強く閉じる。多少のゆがみは何のそのという感じである。ただ、そのままだとバネ自体は5回巻きと標準的で特別丈夫に作られてるわけじゃないだろうからバネの寿命も短くなるし、恐ろしいことにベールワイヤーが折れるという噂も目にする。なので上から2番目の写真のようにドリルで穴を開け直して閉じる力を弱くしている。よく見ると穴開け失敗して内側穴ギリギリに開けてしまったのも含め4箇所穴があって、一番右が純正の穴で、真ん中上の成功した穴でもまだ強く感じたので、結局一番左の、ベールアームが止まるときにバネの先端が来る位置に開けた穴を使っている。この位置だとたまに閉じた反動でちょっと戻ってしっかり閉じた”止め”の位置に収まってないときもあるけど、ラインを巻き始めるとラインローラーが引っ張られることでベールアームは正しい位置に納まるので巻き形状が変にになったりの問題は生じていない。

 ラインローラーはどうもステンレスの無垢っぽい表面の感じで、ベールワイヤー側の部品もステンレスっぽいので、スリーブとか入ってなくても削れることはなさげ。ベールアームは真鍮か鋼系にメッキっぽいので長期的には削れるかもだけど、ナットの増し締めで間に合わなくなるまで削れるのは遠い先の話だろう。ただ、ステンレス無垢ってそこまで堅い素材じゃないようで、軸との接点ではなくてラインとの接点の方、V字谷の底の方にうっすらとラインが削った溝ができかけてる気がする。まあこれもすぐにどうこうなる話ではなく、スペアのラインローラーも確保済みなので問題ないんだけど、復刻版が出るなら硬質クロームメッキをかけるか、材質をセラミックやタングステンに変えてもらえればモアベターよ。

 でもって、ローターをすぽっと抜くと、アルミの輪っかがボールベアリングを押さえていて、ベール反転の”蹴飛ばし”はアルミの輪っかの下からステンレスの部品が突き出した設計となっている。普通「なぜアルミの一部を折り曲げて蹴飛ばしにしなかったのか?」と疑問に思うかもだけど、”PENN使い”ならむしろ疑問は「なぜアルミを使おうとしたのか?」というものになるだろう。実際に712ではベアリングを押さえてるのはアルミじゃなくて真鍮でその一部を曲げて”蹴飛ばし”にしている。真鍮でもステンレスでも今さら多少の重量増を気にするかよって話。でも”ウルトラスポーツ”って銘打った小型軽量機を目指すにあたって、どうにか耐久性を損なわず軽量化できないかと悩んだ末の結果なんだろうなとは思う。思うけど、でっかいドラグパッド押さえるステンレスの金属ワッシャーとか、ステンレスっぽいスプール上下のクランクとかのほうがアルミに置き換えやすいんじゃないの?って気はするんだけど、ドラグワッシャーとかアルミで曲がらないようにってPENN基準で考えると分厚くなってダメだったんだろうな。でもクランクのほうは大森とかもアルミで作ってるし、いけると思うんだけど、PENN社的にはダメだったんだろうか。まあらしいちゃらしいよね。蓋をプラの安っぽいのにするのは機能面になんら影響しないので良くても、曲がったワッシャーでは安定してドラグパッドを押さえられないからダメっていうのは、PENN社が真面目に実用機を作ってきた姿勢が現れているようにも思ったりして。

 アルミの輪っかを外すと、714z唯一のボールベアリングが填まったローター軸のギアが抜けてくる。ボールベアリング純正だったか、日本製のに交換してたか確認しようとしたら、シンガポール製だった。純正だろうか?中古なので以前の持ち主が交換している可能性はなくもないけど多分純正か。この個体は蓋が樹脂製、ハンドル根元の注油穴無しの多分後期の90年代製だろうけど、この頃はシンガポール製のボールベアリングを採用していたのかも。シンガポールは海路上の要衝だから工業国でもあるんだよな。でもシンガポール製品って分かる工業製品は始めて目にしたかも。そしてローター軸のギアはステンレス製で堅くて丈夫そうで格好いいのよね。このギア見てるだけで丼飯食えそう。一緒に回るハンドル軸のギアも真鍮製で丈夫なので、いかにも耐久性ありますよっていう感じで頼もしい。ステンレスのローター軸のギアのお尻を受けているのは、アルミ鋳造一体成形の本体構造で直受けにはしていなくて、ちゃんと真鍮のブッシュ入れて受けているのもPENNっぽくていい。回転する軸なりなんなりで素材が違う場合には間にワッシャー、ブッシュ、スリーブなんかを入れるっていうのがPENN社の基本姿勢なんだと思う。ボールベアリングなんてのは片軸受けになってるローター軸の場合は力の掛かる上の方に1個入れときゃ充分ってのが正解のような気がする。

 ちょっと脱線するけど、村田基先生のユーチューブチャンネルに視聴者から「”管釣り”でインスプールのカーディナル使ってたら、隣の人に「カリカリうるせぇ!」って怒られました。どうしたら良いんでしょう?」という質問が寄せられていて、村田先生も困っちゃってた、っていうのを記事にしている方が何人かおられて、スピ熱患者にはツボに填まるネタだったようである。まあ気になるとウルセェって言いたくなるのも分からんでもないけど、そういうのイヤなら混雑する管釣りなんぞで釣りしてなくて、人の来ないような魚少ない釣り場にでも行けよという気もする。

 っていう脱線をなぜしたかというと、714zはカリカリ鳴るストッパーをサイレント化する裏技が存在するので、どなたかPENN使いの先達(沖縄のお方だったか?)が紹介していたように記憶しているけど、人のネタで相撲取ってばかりでアレだけど、714zを管釣りに持っていきたいけど、隣の人に怒られるのが怖くてできないとお悩みの方もおられるかとおもうので、僭越ながらわたくしめからもご紹介しておきたい。

 714zと716zの違いは実はローターの大きさが違うことに伴う違いだけで、本体の中身とかは一緒で、おそらくローターの乗せ換えすら可能で、ギアも一緒で互換性がある。と同時に3桁時代のスピンフィッシャーの小型機430ssと420ssは設計的には714z、716zのアウトスプール版で、ギアとかは基本一緒なんである。ただ基本と書いたけど、微妙に変わってるのが逆転防止のサイレント化で、上の写真がギア取っ払ったあとの714zでストッパーはこんな感じに入ってるんだけど、下の写真、右が714zで左が420ssのギアとストッパーの”ドック”。420ssの方は昔の丸ABUのラチェットに掛けるタイプのサイレントドックと同様に薄い板でギア裏に設置されたラチェットを挟む形になっててサイレント化されている。なので、ギアとサイレントドックごと420ssあるいは430ssから移植すれば、714z、716zはサイレント化が可能なのである。ただ逆に714z、716Zのギアとドックを430ss、420ssに移植する”カリカリチューン”的なことはどうか?というと。サイレントドックはラチェットを挟み込むので外れることはないので、430ssと420ssの本体にはサイレントじゃないドックを固定するネジの穴が開いていない。ギアで上からある程度押さえが効く形で外れないかもしれないけど、こっちの移植は不安があると、以前ギアの互換性についてご質問いただいたことがあって、その時にもその旨書いた。その見解は変わらないんだけど、今回714zと420ssのハンドル軸のギアの違いを写真で示そうとして、オヤッと気がついたことがあって、分解した714zに入ってるハンドル軸のギアは、本来の714z、716z用の「8-716」ではなく、420ss、430ss用の、ラチェットを挟めるように、ラチェットをギアから浮かせるかたちでギアを削って隙間を作ってある「8-420」になっている。違い示せてないやんけ。ご質問いただいたときに比較のため分解したのは蓋が金属製の古めの716zなので、ラチェットとギアがくっついている「8-716」が入ってたんだけど、ある程度新しく、少なくとも430ss、420ssが発売された以降に作られたらしいと分かる今回の714zには、多分流用なんだろう「8-420」のギアが入ってたという話。714z、716Zはアウトスプール版の430ss、420ssが登場した時代はおろか、次の世代の4桁になっても売ってたぐらいのロングセラー機なので、部品の変更やら流用やらはいろいろあるのよね。ちなみに4桁時代の小型機の日本での扱いは「PENNリールジャパン」じゃなくて「コータック」で、コータックの1995年当時のカタログ見ると、4300ss、4200ssとともに、714z、716z、ついでに722zが掲載されている。もいっちょちなみにTAKE先生の著書「Let's Inner Spool!」では716zは「’78年製造開始、’95年生産終了」の大変な長寿モデルと紹介されているけど、”PENN使い”としてさらに細かく補足しておくと、色違いの”グリーニー”な716(と714)の製造開始は’66年とさらに10年以上古く、かつ’95年の生産終了のあと、2001年に714zとともに一度復刻されている(「MYSTIC REEL PARTS」さんの”年表”参照)。復刻版は正規輸入されなかったようだけど、どうもハンドルノブがお馴染みのT字型から後期の4300ssと同様の滑り止めの線が入った台形?のになってるのがそうらしい。

 ということでギア自体が420ssと同じなので、ワシのこの714zはサイレントドックだけ入手すれば、カリカリ鳴らなくデキるわけで「これは管釣りに行くときに必要だから入手しておかねば」とまた悪い病気が発症してしまい、セカイモンでイーベイに出物がないか調べたら、わりと普通に売りに出てる。物自体は即決で安く出てるけど手数料送料考えるとクソ高い。けど、なーにまた関税かからんように1万5千円目処でまとめて他のリールとかも買えば良いじゃんと、今考えると何がいいのか全く分からんけど思ってしまい、買うリールの候補とかも調べ始めて、ハタと「ひょっとしてサイレントドックぐらい我が家の蔵に在庫してないか?」と気がついて、エクセルで作った部品管理表を確認したらば、案の定ございました。そら430ssも420ssも所有してるんだからあって当然だわな。普通のドックはまず壊れない部品だけど、サイレントドックは薄い板の部分がたまに経年劣化とかで壊れるっちゃ壊れるので1個在庫しておりました。蔵をひっくり返してちゃんと実物も確認できて「これで、いつ管釣りに行くことになっても大丈夫」と胸をなで下ろし、セカイモンでお買いモンは今回回避することができた。冷静に考えればワシ今後の人生で管釣りにはまず行きそうにないのでサイレント化する必要など全くない。それでも一度欲しいと思ってしまえば制御が効かなくなって暴走するのが”スピニング熱”の怖いところか。


 てなかんじで、なんだかんだと撮影作業もしながらも、分解、パーツクリーナー吹きながら歯ブラシでゴシゴシ、ティッシュで拭き拭き、乾燥させてグリスグッチャリで仕上げていく。

 パーツクリーナーでペイントマーカーで書いてあった「名前」が薄れてほぼ消えるので、ついでに書き直しておく。この個体は売る気はさらさらないので名前は書いておかねばである。まだそれ程長いつきあいじゃないけどそれなりの頻度で使ってきたので、すでにワシの右手薬指がフットの塗装を剥がしている。置き傷とか不注意の不始末で生じた傷とかは恥ずべきだけど、こういうのはリールと手が馴染んできた証のようでなんとなく誇らしい。キズが付くのがよろしくないのは、見た目が悪くなるという以上に、塗装が剥げて表面処理された金属面が削れて、容易に腐蝕が進むようになるから、という実害面が大きく、指が削った塗装とかは、常に指で擦るので腐蝕してる暇がないので実害もあまり想定されないんじゃなかろうか。

 基本、穴という穴はグリスで浸水を塞ぐ方針で、全ての金属面がグリス(一部オイル)で濡れているのが必須。逆転防止切り換えレバーの根元とかは浸水箇所なので当然グッチャリ多めにグリスシーリング。蓋なんて樹脂製だから腐蝕しないけど、蓋の隙間は浸水箇所なのでやっぱりグリスシーリング。蓋裏にハンドル軸のギアの形がのこるぐらいまで、あちこちグッチャリ盛りまくってやると、組み上げて最初は巻きが重い。しかしある程度回してやって、グリスが落ち着くところに落ち着いて摩擦面とかには必要なだけ付着している状態になると、それなりに軽く回るようになってくる。全ての金属面というのは内部に限らず、外側もグリスチョイチョイと付けてからティッシュで拭き伸ばして、表面もぬらぬらにしておくと保管中に表面塗装が腐蝕したなんていうことはほぼ防げるはず。

 という感じで、グリス増し増しで”全バラフルメンテグリスシーリング”無事終了。

 714zには、これっていう特徴的な機能は搭載されていない。カーディナル33のような格好良く使い勝手の良いリアドラグも、ミッチェル308のプラナマティックのような独自機構もない。単純な設計のウォームギア機である。

 ただ、特に海水でシーバスとか狙うなら、その小柄な見た目と裏腹の、ある程度デカめの魚とやり合っても余裕の丈夫さと、潮かぶりながら釣りしても、水道水で洗って外から注油できるところだけ注油のほったらかしに近い手入れで何年も闘えるタフさ。実釣時のトラブルの少なさ。そのあたりはカタログ数値には出てこないし地味だけど実に実用的な美点で、使えば使うほど、コイツは使えるスピニングだということが身に染みてわかると思う。

 中古市場でのインスプールの需要って、マス用に偏ってて、714zよりは716zの方が人気あるぐらいだけど、シーバス釣りってリールに求められる性能・機能はそんなに厳しくなく、かつ今時のリールより耐腐食性っていうか浸水した時の整備等、トラブルへの対処のしやすさなんてのは古いリールの方が良かったりして、古い名機でシーバスやるっていうのは、楽しいだけでなく、わけの分からんぶっ壊れ方するようなリールで不愉快な思いをしなくていいし、実益が大きいと思っているので、興味がある人はとりあえず714z入手してナイロン2号巻いてハリス4号フロロぐらいでやってみてはどうかとお薦めしておきます。

 インスプールの扱いには最初戸惑うかもだけど、714zは手でベール起こせないように対策されてるし、すぐに慣れて使えるようになります。そうなれば「なんにも困らん!」っていうのが実感できるかなと思います。

 結論としては何度も書いているように、PENNスピンフィッシャー714zは、なんにも困らないで済む優等生なんです!ていうのをしつこく書いておきたかったのとともに、自分なりに思う整備の要点やら豆知識やら、バラバラとあちこちに書き散らしてたのを一回まとめておくか、と今回思いつくままに書いてみましたとさ。

4 件のコメント:

  1. 良さげですね、探してみます。

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    1. 自信を持って”良い”とお薦めします。相場は1万円弱ぐらい見た目ボロめなら7、8千円というところです。

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  2. インスプール対決だとミッチェルが冒険者でペンは安定志向なんですよね

    714より上のサイズで対決ってなるとペンは錆に強いですし

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    1. まさに、ミッチェルは道なき道を開拓した先駆者ですよね。
      ペンはそのへん保守的といえるぐらい古い設計ですが、それでもどうしようもなく独自性のある個性が生じているのが面白いところかなと。

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