2019年12月22日日曜日

妄想フライボックス カマス始めました

 前回の「妄想タックルボックス」が紹介したルアーがワーム以外、文字通りアタリもかすりもしなかったという、わたくし史上稀に見る大ハズレをやらかして、まさにワシの頭の中だけに存在した”ザ妄想”という感じで、ある意味実に良いネタだったと苦笑しているところである。
 魚釣りで作戦どおりに事が運ぶなんてのは、10試みて1あれば万々歳で、上手くいかなくて当たり前なんだけど、ここまで綺麗にお手上げっていうのもある意味めずらしく、こういう今までの認識が通用しない獲物が身近にいたっていうのが新鮮な驚きでもある。
 カマスってあのでっかい口でガンガン餌でもルアーでも見境なしに食ってくる印象を持ってたんだけど、間違いなく苛烈な魚食魚のはずなのにワームの色が違うだけで沈黙するとか、早い上下動に反応する活性の高い日は稀で、底近くにいるののチョイ上ぐらいをデロデロ~ンとユックリ引いてくるワームやらフライにしか食ってこないことが多いというやる気のなさが、これまで釣ったことある魚食魚たちとはチョット異質だなと感じている。
 逆に言えば、腹に餌入ってる個体をコレまで1匹しか見なかったっていうぐらいで餌食ってなくて、たぶん基本冬ごもり中で波穏やかな湾内で群れているくせに、近くに来れば餌襲うし、あまつさえ何かの拍子で活性高ければジグやらサビキやらしゃくる激しい動きでも食ってくるっていう食い気を抑えきれないという事実の方がカマスのやんちゃぶりを示していると見るべきなのかもしれない。

 てなかんじで、ルアーは黄色オレンジのパルスワームのデロデロ引き以外に展開が作れず、これフライで釣るってのも切る札として使えないだろうか?ぐらいのダメ元で狙ってみたら、開けてびくりで自分のつたない”インチキ”なフライフィッシングの技術でも何とかなってしまうぐらいに釣りやすいことが判明した。
 ということで、コレから紹介するフライは、これで釣りたいなとかコレで釣れるに違いないっていう”妄想”だったのは始める前で、すでに釣ってしまって現実化した妄想フライボックスになっているという展開の早さだけど、カマス用に妄想たくましく新たに巻いたフライやコレまで巻いたフライの再利用なんかについて紹介してみたい。
 
 とりあえず、カマス用フライっていうと海で使うフライとしては最も一般的なモノのひとつである長い軸のハリに胴を銀色とかで巻いて、ウイング部分を各色に染めたバックテール(鹿の尻毛)やキラキラ光るフラッシャブーなどの素材を束ねたものを、4,5センチの大きさでシュッと細めに作るというのがお作法のようである。
 まあいくつか作って用意した。基本特定の餌に狂ってるという状況でもなく、沢山いるうちのやる気のある個体が反射的にか出来心でか食ってくるっていう状況だろうから、あんまり特定の餌生物を模写したマッチザベイトなフライを作っても仕方なく、こういう場合はなんとなく魚っぽくて、そこそこ派手で嫌われない程度に目立つっていうのが正解なのかなと想定した。
 そうなってくると、頼りになるのは先人達の知恵や経験で磨かれて生き残ってきたスタンダードな古典的パターンから入って行くのが王道というモノだろう。
 ワームで黄色オレンジが効いていたので黄色とオレンジのバックテールを束ねた「ミッキーフィン」は真っ先に思いついて巻いた。左上の2本。
 左下は”紀伊半島は黄色が効く”を証明すべく、黄色のバックテールに目立たせるためにギラギラ反射する商品名でいうところのミラージュというフラッシャブーを混ぜた。こういうのは特別なことがなければ素材名で呼ぶので「黄色ミラージュ」なのかな。
 真ん中左上は透明感ある白系もシラスとかの稚魚っぽくて良いかもと、化学繊維素材のエンジェルヘアーパールブルーを下に上には、何度も野生動物の商取引に関する国際約束、いわゆるワシントン条約で商取引禁止の付属書Ⅰ入りが提案されているホッキョクグマの毛をあしらってみた。呼び名は「白熊」ってことでひとつよろしく。
 北極の気温が上昇して危機的状況にあるホッキョクグマを保護しなければならないという趣旨には反対するわけではないが、動物愛護ファシストどもが”毛皮を着るな”だの被服文化はワシャ知らんにしても狩猟民族やら狩りを生業にする人の文化伝統経済活動を真っ向否定する物言いにムカつきまくるので、希少な動物の毛もご禁制の品でもなければ大事に使わせてもらいます。
 ホッキョクグマの毛、今でこそ透明感のある化学繊維なんていくらでもあるけど、それ以前は、中空で保温性が良く透明で太陽の熱で肌を温めることができるというホッキョクグマの極北で生きるための適応が詰まった毛が、縛ると適度に開いてくれてかつワカサギのような透明感のある魚の質感を産むという、毛鉤作りの素材としては希有な存在だったんだと想像に難くない。
 今では代替するような素材はいくらでも売ってるけど、白熊の毛の方が”特別な力”が宿りそうで、そういう霊的なモノを理屈では信じてはいないけど、そういうふうに思いこむことによって生じる集中力とかがあることは信じている。
 その下は、白系も巻いたら黒系も欲しいな、ということで伝統的な川でのマス釣りに使われてきたストリーマーのパターンから「ブラックノーズデース(黒鼻のウグイッポイ魚)」を持ってきた。これでフライフィッシングを始めた頃(30年近い昔)ニゴイを釣ってたっていう懐かしいパターン。渋い色合いにお尻の赤がワンポイントで洒落てる。
 真ん中右の2種は、小さいのも巻いとくかと黄色のバックテールで胴と頭をオレンジのセキ糸で巻いたものと、茶色のバックテールを茶色のセキ糸で巻いたモノ。
 一番右が、黄色とオレンジの暖色系派手系が強いという、カマスに限らずこの地のルアーでの傾向もふまえてそういう色が多めなので、色目を変えて反応を引き出すのに逆も巻いておくかと寒色系。青のバックテールと青系フラシャブーで巻いてみた。呼称は「青フラッシャブー」だな。

 主軸は、このあたりにあと追加で毎回お試しフライを持ち込んで、反応良ければ主軸に入れていくつもりだけど、フライパターンがどうこうより、良い棚を引けるかとか飽きられたらマメに換えるとかが大事だと思うので、そんなにフライパターンの種類は増やさなくてもいけるかもと思っている。自信を持って投げられるのを作っていくのが大事かなと。

 で、あらたに巻いたのはこのぐらいなんだけど、これまでも海のフライにはそこそこ手を染めていて、巻いた在庫がある。
 その中から使えそうなのをと考えると、あんまり大きなシイラカツオ用やらはダメだろうから、シーバスやメバル用、遠征のボーンフィッシュや珊瑚礁の小物用あたりから選んだ。
 小さめのF'sクラウザーミノーが上の方の写真のボックスの上の棚。
 左下はウーリーバッガーやらウサギの皮系でウニョウニョした地味系。右下は青物ナブラとか発生した時用のコルサーポッパーなど。


 ボックスの写真では真ん中左が最初に紹介した主軸のデシーバー系(ストリーマー系か?)で真ん中右がクリスマス島用に巻いたのが大量在庫してあるクレイジーチャーリー各色で左の写真が並べたところ。コイツはチェーンボールの目玉が付いていて、ちょっと沈むのでカウントダウン数を増やして”ライン根掛かり”の危険性を上げずに棚を微妙に下げる効果も期待できる。
 細いボディーに薄くウイングが付いているのは主力のデシーバー系と共通、それにオモリでもある目玉を付けてフックをひっくり返してあるので根掛かりにも強い。海のフライマンには大人気のパターン。これは絶対釣れるハズの鉄板。

 っていう感じで妄想して、実際に釣り場に持ち出したら、ワームでの特定の色への反応の強さから色で明確にアタリの数とか変わってくるだろうと思ってたんだけど、そこまで極端に違いはなくて、むしろ”変えると来る”の効果が結構あるなという感触。
 青フラッシャブーとか、ダメなことを確認しようぐらいのつもりで投げたのに結構良い感じで釣れたので意外だった。
 投げてないフライもまだあるけど、現時点で暫定的に当たりフライを選ぶならオレンジのクレイジーチャーリーと黄色ミラージュかな。
 クレイジーチャーリーは棚が変わる効果もたぶんあったんだと思うけど”変えると来る”が何度もあった。なんでも釣れて超優秀毛鉤。



 カマスの歯はご存じのように鋭くて、ハッキリ言って掛かったときに口の中にティペット(ハリス)まで入ってたらフロロ5号だろうが切れるので、割り切って根がかったときの切りやすさ重視、フライの漂い感と食い込みの良さ重視で2号フロロを使っている。
 切られないようにするには、あんまり一生懸命追わせてガップリ食わせると口の奥に掛かるので、遅く引いてやる気なく後ろの方咥える程度に咥えさせるのが良いらしい。
 逆に食い込み浅くて掛からないなら早く引けだそうだ。ホントかどうか試していきたい。
 何匹か釣ると、ハリス切られなくても歯でウイングが刈り込まれてもともと薄毛に細く仕上げてるのにハゲ散らかしてくるし、胴の銀色のテープが切れて剥がれてくる。
 いちいちエポキシでコーティングするのも面倒だし、どうにかならんものかとグチってたら、ケン一から銀のテープ巻く前に瞬間接着剤を胴の下巻きに塗ってからサッと銀を巻いてしまうと切れてもバラバラとめくれにくくなると教えてもらったので、比較的手間が少ないのでそれで行きたい。
 釣りの情報でこういう細かいコツって大事で、今回引っ張り出してきたラインシステムもJOSさんに連れられてニゴイ狙いに行ったとき、教えを受けて組んだラインシステムで、今見ても取り込みの時リーダーの結び目が引っかかってガイドを通らないトラブル防止に熱収縮チューブが被せてあるのとか、沈みが早く癖が付きにくいシンキングのブレイデッドテーパーリーダが使ってあったりと細かいところの積み重ねでトラブル少なく釣りが続けられるようになってるなと改めて感心した。
 そういう情報って、いくらでも釣りの情報なんてネットに溢れてるなかでも、ホントに欲しい情報にたどり着くのって「我が社の製品を買いましょう」的なクソ情報が多すぎて難しくて、結局は長くやってる玄人衆に聞いちゃうのが早いのであった。
 
 ワシはインチキフライマンで、フライフィッシングはフライが有利な状況やらフライで釣ったら楽しそうな獲物がいたりしたら手札の一つで出してくるって程度だけど、周りに腕利きのフライマンは多いので、お知恵拝借しながらなら何とか魚釣れたりするんである。
 フライフィッシングでも何かというと飛距離だ感度だフライパターンだと道具にばかり目が行きがちだけど、魚釣るのに重要なのはそういうのに関するのも含めて”情報”だと思っている。アホみたいな垂れ流し情報じゃなく、ちゃんとした経験に基づいたりやりこんでる人が提供してくれたりする情報があれば、シューティングヘッドのシンキングラインを15m投げられるだけで海でお魚釣れたりするんです。
 海のフライフィッシングだからといってあんまり難しいモノだと考えなくていいけど、海のフライフィッシングで魚釣れない人間が、ルアーなら餌なら魚釣れるかっていったら、ろくに釣れるわきゃないって話で釣りそのものにつきまとう共通の難しささえやっつける気概があるなら、いまフライフィッシング全体がブームもしぼんで中古の道具も安いだろうし海のフライは初め時かもしれませんよ。と無責任に薦めてみる。

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