2019年12月29日日曜日
2019年のベスト3(エンタメ編)
釣りに行く、帰ってきたら道具塩抜きして魚下処理して、シャワー浴びてメシ食って、余力があったら顛末記書いて、なければ明日回しにしてとりあえず明日の釣りの準備はする。
釣りに行かない日には、溜まってた洗濯物かたづけたり、買い物行ったり主夫としてやらなきゃならんことはそれなりにある。
仕事もせずにノンビリ釣りだけして暮らせば、本読む時間ぐらいいくらでもあるだろうと思ってたら大間違いで、ひたすら釣りの準備と釣りと釣りの後の整理とで、家のことをやってくれるメイドでも雇えりゃ話は別なんだろうけど、主夫業と365日体制の釣り師の2足のわらじは結構忙しい。やることやりたいこと沢山あって超絶楽しいからいいんだけど。
ということで、エンタメには今年の後半は記憶にないぐらい時間が割けなかった。
それでもアニメは放映中のを週10本ぐらいはネット配信で見ているし、マンガも続きモノの続刊は出れば読んでいる。活字本はさすがに「積ん読」が増えてる。
でも、いつまでも体ぶっ壊しそうな勢いで釣りに行き続けることもできないだろうから、「積ん読」にしておく本は積んどきゃいいって気がする。紙の本じゃないので場所取るわけじゃなし、読める時期が来たら読めば良いぐらいに思ってる。
そんなわけで、いつもより少ない本数から選んでるけど、かといってつまんなかったとか小粒だったとかいうことはなくて、たぶん自分にとって一番面白そうなヤツから順に手を出してるんだろうから上位の水準はたいして変わらないものなのかもしれない。
○活字本:一位角幡唯介「極夜行」二位吉村龍一「海を撃つ」三位西尾維新「余物語」
一位の「極夜行」は文句なし”角幡文学”の最高到達点。この地球上に人が踏み入れていない場所なんて残されていない”冒険家受難”の時代に、自分はなぜ冒険を求めてやまないのか?冒険とは何ぞや?という答えのない禅問答に、日の昇らないなか極寒の北極圏を旅するという、なんともどれだけそれが冒険的なのか素人には分かりにくい手法で迫りまくる。凄く哲学的な自問自答に溢れてるんだけど、小難しくてややこしいこと考えてるくせにやってることやら漏れ出る感情とか妙に抜けてたりしておかしみが滲み出るのが”角幡文学”の隠し味。なんでも便利になって与えられた安全に安寧としていると、気付かないうちに魂が家畜化してそうな昨今、魂を柵から解き放つにはGPSももたずに暗黒をさまようしか手段がなくなっている、なんていう悪夢的な管理社会が現実化しているのかもしれない。
二位の「海を撃つ」は”和製白鯨(東北地方版)”という感じで、漁師の執念というか獲物に掛ける情念を描いていて秀逸。釣り人なら楽しめること間違いなし。古い時代背景で書かれているけど、作中出てくるメカジキ突きん棒漁は銛が電気銛になったぐらいで同じように現存してます。
三位はライトノベルです。活字本に数えて良いのかどうか迷ったけど、一般小説でも芸術作品と娯楽作品の違いってあるんだかないんだかオラしらねぇってぐらいで、いちいち分ける必要ないダロって話で、それより分けるなら面白いか面白くないかの視点で分けろってことで、ラノベでも面白ければ良いじゃんって”物語シリーズ”最新刊は面白かったので入れてみた。ラノベって何だ?って聞かれるとたぶん一番分かりやすい分け方は、各出版社の”ライトノベルレーベル”から出てる本がラノベってことになるんだろうってぐらい、実は内容とかそのあたりは一般の小説にもラノベの内容のはあるし、ラノベにもクソ文学的な作品もあったりする。その中で私が分かりやすくラノベ読んだことがない人にラノベとは何ぞやを説明するなら「少年マンガのノリの物語を活字で表現したモノ」となる。人気作が長期連載化するのとか全く少年漫画的で本作もシリーズ第26巻という長編シリーズになっていて途中アニメ化して盛り上がってた頃正直本編引き延ばし感があって中だるみしてたけど、大学生編に突入して俄然本来の面白さを取り戻した。今後も続刊すぐ出る系の速筆な西尾先生に期待。
○マンガ:一位「ライドンキング」二位「ディザインズ」三位「1518!」
「ライドンキング」はもう、どうしようもなくしょうもなくてオレ好み。プーチン大統領を元ネタとした、架空の旧ロシア小規模独立国家の大統領プルチノフ閣下が剣と魔法のファンタジー系異世界に飛ばされて、持ち前の近接格闘術やら軍事的知識に強気の交渉力やらで大活躍というバカバカしいにもほどがある作品なんだけど、妙に細かい所まで凝ってたりして痒いところに手が届く面白さ。魔法の軍事的利用方法とかなかなかに鋭い視点で馬場先生の慧眼に敬意を表するところである。ライドンッ!
二位は、遺伝子組み換えとかの禁断の分子生物学的技術を使って動物の能力を取り入れて設計された人間(本作では実は・・・)が戦うっていうSFの世界では佃煮にされるほど描かれてきた題材だけど、五十嵐先生の観察眼と独特の世界観がなかなかどうしてすんばらしいSFマンガ。いつもクールで何があってもケロッとしているカエル娘が後発のイルカ人間チームに格闘訓練でコテンパンにやられて「強くなった、100回やれば99回負けるだろう」って負けを認めるんだけど、一回勝つ方法を聞かれて「今度教える」っていったのは、今度教えるときが実戦で最後の授業になる伏線だろうなと思ってたら、なるほどなって感じで伏線回収して完結した。そういうケロッとクールな戦闘マシーンのカエル娘が水掻きの付いた自分の足にあうようにサンダルを自作してたりする何気ない心理描写もなかなかに味わい深い。次作も期待せざるを得ない。
三位はむせっかえるほどの青春モノ。肘やっちゃって野球できなくなった少年を中心に作者の好みが如実に表れた小柄なヒロインやら同級生やら先輩やらの恋あり笑いありの青春群像劇。オレらしくないマンガを選んだ気がするけど面白かったんだから仕方ない。白秋のオッサンにはこういうのが胸に来たりするんだよね。
○アニメ:一位「空位」二位「彼方のアストラ」三位「どろろ」
一位は「空位」という題名の作品があったわけじゃなく、どっかのバカがガソリン撒いて、作るはずだった人達を焼き殺したので、この秋放送のはずだったけど放映されなかった「小林さんちのメイドラゴン」2期が座ってしかるべき場所を空けておく。
人が人の過ちを許さなければ、復讐の連鎖に飲み込まれ争いがなくならないってのは今放映している名作決定済みアニメ「ヴィンランドサガ」でもイヤッちゅうほど描かれているけど、それでもオレはトルフィンのように仇を目の前にしてオノレの怒りを収める自信はない。何かの弾みで法務大臣にでもなって生殺与奪の権をオレが握ったなら、ためらいなく極刑にすることを了承して、なんの後ろめたさも感じずにその瞬間だけスッキリするだろう。そんなことしても死者は蘇らないし意味などないと分かっていてもケロッとやる自信がある。愚かだなぁオレ。
二位は、原作マンガの評価も高かったようだけど未読で、アニメで初めて知った。宇宙で遭難した少年少女が生還するために奮闘するってSFモノなんだけど、謎解き要素が大きいミステリものでもあって、これがなかなかにトリックが色々と凝ってて面白く、少年漫画的な友情努力勝利もキッチリ織り込んであって実に良くできた物語で高評価も納得。お見事って感じ。
三位はあの世でマンガの神様が、”6鬼太郎”絶好調の水木先生にドヤ顔で「僕の妖怪マンガもなかなかヤるでしょ」と自慢しているんじゃなかろうか。百鬼丸と多宝丸のそれぞれの正義とそれぞれのエゴがぶつかりあって、にわかにはどちらが悪とも正義とも断じられないめんどくささとか、さすがは神様の作品は味わい深いなと思う。思うンだけど”どろろ”の可愛らしい魅力の前にはそんなことは案外どうでも良くなるぐらいに手塚キャラの魅力はなんちゅうか沼のように深いモノがあるように感じる。剣劇場面の格好良さとか映像美も堪能した。
という具合で、今年もいろんな作品が私を楽しませてくれた。作品を作りだしてくれる人々に感謝すると同時に、京都アニメーション放火殺人事件で亡くなった方々に改めて哀悼の意を表します。
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