2018年10月8日月曜日

僕の前に道はある僕はわきに道をそれる


 昔シーバス釣りでなかなか大きいのが釣れなくて、メーターオ-バーを釣っているS水の店員さんに、なんとはなしに「デカいの釣るコツってあるんですか」と聞いたところ、店員さん曰く「永く釣ってるとある時突然釣れます。」とのことで、続けて「僕はあえて師匠についたり人に教えてもらったりしなかったんですよ。人に教えてもらってると結局その人の釣りの範疇を超えられないと思うんですよ。」ともいっていて当時のナマジ青年はいたく感銘を受けて、効率的ではなく、手間暇もかかるだろうし、目的の場所まで行けないかも知れないけれど、自分も独自路線を貫こうと心に決めたモノである。
 当時、周りの手練れのフライマンにコテンパンにやり込められていて、彼らの後ろについておこぼれ頂戴していれば食いっぱぐれはないだろうけど、彼らを越えていくことなどできるわけはないと薄々感じてしまっていて、それでも釣れれば楽しいジャンと割り切らない程度の意地があったのだと思うけど、そこそこ釣ってたフライでのシーバス釣りを放棄してルアーに軸足を移し始めた時期でもあった。
 人の真似しても上手に真似できないという技術的な問題もぶっちゃけあった。

 ということで釣りに関しては、正直いって他人が開発したような流行りの方法とか割とどうでも良いとおもってるので、新しい釣り始めるなら独学我流で結局基礎から積み上げるという地道な作業をするのが常で、なんか雑誌とかで紹介されていた方法で「簡単爆釣!」なんてしたことないので、そういうのは自分には合わないと思って、ヘラ釣り始めるときも雑誌とビデオで基礎編のお勉強と困ったらF師匠の通信教育ぐらいであとは実地で試行錯誤という感じだったし、アユ釣りに至ってはアユ雑誌すら買ってなくて思いっきり好きなようにやっている。アユではむしろアユの生態、とくに餌の変化とかがキモだと思うので、そういうアユの生態学の基礎的な読み物は何冊か読んで勉強はした。でもほとんど釣り場で見て考えている。出たとこ勝負ともいう。

 でもって、この秋、ドングリ拾いを再開しドングリスト宣言するとともにキノコ狩りにも手を出したわけなんだけど、これも師匠につかず独学で基本やっている。
 さすがに最初の獲物を食べるときには、有識者に写真をメールで送って確認とったりもしたけど(お手数おかけしました)、場所も探し方も全くの我流で、近場の都市公園でもとりあえず発生するキノコはあるようなので、湾奥のシーバスのポイント探索と一緒で片っ端が基本だなと、電車か自転車で30分で行ける近場で林があるような規模の公園を片っ端から歩いてみた。
 30分もあればぐるっと一週回れてしまうような小さな公園でも、高低差のある林道を半日かかって回るような比較的大きな公園でも、どちらでもキノコは結構出てる。これは今年の夏が暑くて9月に雨が多かったのでキノコの「当たり年」だったのかも知れないと思っている。けど、なにせ初参戦なので去年以前がどうだったのか比較しようがなく事実かどうかわからないけど、そういう気がするぐらい9月は良く出てて、特に1カ所当面の獲物であったヤマドリタケモドキとタマゴタケが良くでる公園があって、3回ほど紙袋いっぱいの収穫を楽しんだ。
 他の場所でも何カ所かヤマドリタケモドキは出ているし、食べる対象としていないというか毒茸とかも含めればどこでも9月は出ていて、「動植物を許可無く採取しないでください」となってるのが「キノコって菌類だから動植物じゃないはずだけど植物扱いなんだろうか?」というような疑わしい公園では採らないことにして、3,4カ所を定点観測していく場所にしようかなと思っている。
 
 ヤマドリタケモドキは車の通る道に面した植え込みにまでボコボコでるぐらいだし、図鑑では10月ぐらいまでは発生するとなってるからしばらく楽しめるだろうと思ってたら、今日前述した我が一番のシロ(釣りでいうところのポイント)で1つも採れなかった。
 全体的にキノコ自体少なく乾いた感じで、ヤマドリタケモドキなんかはすっかり虫に食われて腐った痕跡のようなのしかなく、傘が高くてよく目立つテングタケ類も少なく、あっても干からびて破れ傘になってたりした。これがあのキノコだらけだった9月と同じ場所かというぐらいで、やっぱり天然の産物は採れるときは採れるけど、時期を外せばどうにもならんというのは魚釣りと全く一緒。
 
 これが一時的なもので、雨が降ればまた発生するのか分からないといえば分からないけど、たぶんテングタケ類とイグチ類は夏のキノコらしいので、今後は秋のキノコが発生し始めるのではないかという気がする。
 ヤマドリタケモドキとタマゴタケが採れるのであれば、正直この2種だけ狙っていれば良いやというぐらいである。見分けるのも難しくないし、何しろヤマドリタケモドキはモドキといっても高級食材ポルチーニ茸の仲間、充分美味しい上にデカくて収穫量が多い。傘の直径18センチが最大だったけど、虫に食われてて採ってこなかったモノにはもっとデカいのもあった。
 タマゴタケに関してはとにかく味が良い。適当に天ぷら油で炒めて醤油かけてご飯に乗っけて食ったら、その旨味の強さに感動したぐらいだ。
 旨味の強い茸としては栽培モノでもマイタケとか大好きだし、椎茸とか干したら良い出汁出て最強の部類だと思ってたけど、それらともまた違って独特の甘いような旨味で、野生のキノコには旨いのがあるとは聞いてたけど、自分で採ってきたり希少価値だったりが上乗せされてて、それ程でもないんじゃないかと舐めててゴメンナサイという感じだ。天ぷらも最高だった。
 ヤマドリタケモドキは旨味はそこまで強くないけど太くて大きくて食いでがあって、傘はプルプル、柄はしゃきしゃきだし、癖がなくてどんな料理にもあいそうだし、干しても良い匂いが強くなって保存もできて非常に優秀。採れなくなると分かってれば、多少虫食ってるのも採取してもっと大量に確保して保存食作っておくべきだったとも思わなくはないけど、素人が欲かいてあんまり採りすぎるのも下品だし、菓子折入ってた手提げの紙袋1つ分ぐらいが運ぶのにも重くなくていいんじゃなかろうかとも思う。
 残してきたらその分誰かが楽しめるかもしれないし、いわゆるキノコって植物で言ったら花に当たる「子実体」という部分だから、胞子飛ばして増えてくれたらそれに越したことはない。

 というわけで、もうこれら2種が発生しないのなら、また別の獲物を設定するのがキノコ狩りを続けるなら妥当なところだろう。
 まあ、なにもキノコにこだわる必要はなくて、体力作りで半日とか出歩く間に何かついでに拾えればいいのであって、もちろん椎の実でも良いし、ギンナンでもいい。台風のあとでとある銀杏並木の公園でギンナン拾い放題で、踏まれて果肉が取れたようなのだけ選んで拾っても30分ほどで小さめのビニール袋いっぱい拾えた。
 そのあたりを保険に、ちょっと秋本番のキノコ狩りの獲物をと、しばらく図鑑とネット情報でお勉強しまくっていたのだが、どうにもやっぱりキノコの判別は難しい。
 特に、普通キノコ狩りの獲物になるような、茶色とか灰色とかのいかにも食べられそうな見た目のキノコが難しい。
 例えば、これは食べられるナラタケなんじゃないかなと思う。傘にささくれがあるし縁に筋が見える。写真撮っただけだけど折るとポキッと折れるのも特徴だそうだ。でも猛毒のコレラタケとの差ってささくれなんて木屑でもついていれば間違えそうだし、ポキっと折れるってどんなのか「コレがナラタケ」って現物で学んだ訳じゃないので現時点で分かるわけがない。たくさんの個体を見て目がデキていたら分かるのかもしれないけど微妙すぎて素人には分からん。
 もいっちょ、これもある日大発生してて、食えたらいいのになと写真撮ってきて調べてみたんだけど、たぶん発生地域からもカヤタケっぽくてそれなら食べられるんだけど、根本に白く菌糸がまとわりつく特徴まで一緒で傘の上に白っぽい痘痕があるドクササコと似すぎていて、これまた素人には手が出ない。ドクササコそれなりにおいしいらしく、症状が出るまで時間がかかるので、ちょっと食べてみて試すこともできない上に、発症すると手足の先などに火膨れができて焼き火箸をつっこまれたような痛みが、ひどいと1月以上も続くという拷問のような毒キノコ。治療法は確立されていなくて、痛み止めのモルヒネさえ効かず、直接死ぬような猛毒ではないのに苦痛で眠れず衰弱死や耐えきれず自殺というのが報告されている、というのを知ってしまえばコレも素人が手を出すべきじゃない。と思う。
 という感じで、地味で旨そうなキノコはだいたい似たような食菌と毒キノコの両方何種類もあって、素人じゃどうにもならん。
 キノコに詳しい人からしたら、特徴ちゃんと押さえれば判別可能というモノでも、たとえば魚ならそれなりに詳しい私など「イワナとヤマメが似ていて違いが分からない」とか言われると、あれだけ違うのになにが分からないのか分からないのだけど、今のキノコ初心者の私の知識はまさにそういう低い程度にあるので、詳しい人が書いている、「この種とあの種の見分け方」とかいうのを見て、そもそもその2種以外にも似てるのが多いとしか思えないぐらい分かってなくて2種まで絞り込めず、その判別方法だけでは役に立たんのである。
 ツキヨタケとか中毒例多いらしいけど、割ったら黒染みがあるとかの特徴から判別できるジャンと思ってると、黒染みないのもあるとか、混ざって生えるとか、いろんな事例を知ると、間違うことは十分あり得るという実態が分かってくる。まあツキヨタケぐらいなら腹壊すぐらいですむけど、コレラタケとかドクササコとかアタったらシャレにならない。判別間違ったときの被害の程度は獲物を選定するときに考慮すべき重要要素。

 ということで、普通キノコ狩りの人達が狙う、地味ないかにもな見た目の食べられるキノコは、もうしばらく写真撮って目を鍛えてという作業を続けて、目がデキてきてから、しくじっても腹壊す程度のから狙うことにして、とりあえずは特徴的な「変なキノコ」を狙い撃ちしてみようと、いくつかねらいを定めた。
 シメジの仲間の、派手な色のムラサキシメジは東北で連れていってもらった初めてのキノコ狩りで出会った思い出のキノコ。我が初めての野生キノコであり、その名の通りムラサキ色してて間違えそうな種も食べられるのでコレが自分の「シロ」で生えてくれたら嬉しい。
 同じように色が特徴的な、コムラサキシメジ、サクラシメジ、キシメジも似た種が少なく、判別法も分かりやすいので、このあたりのちょっと個性派のシメジたちをまずは狙ってみたい。
 もいっちょはハツタケ系。アカタケ科の傘の真ん中がへこむようなキノコたちで、このうちハツタケ、アカハツ、アカモミタケ、あたりはヒダを傷つけるとそれぞれ特徴的な変色をするので、判別方法が分かりやすい。松林に出るのが多いらしいので、あんまり注目してなかった松林も今後は見てみよう。
 とりあえずこのあたりを狙いつつ、たくさん発生する種類があったら、その都度自分の力量で手を出して良いかどうかよく考えて判断して狙うかどうか決めていきたい。

 なんとなく、今年の9月は特別で、普段生えないような公園にボコボコ出てたのをたまたま見つけて採ることができたという、ビギナーズラックが起こってたのがコレまでで、味を占めて「キノコ狩り意外と簡単で楽しいジャン」とかヌルいことを考えていると、ここから苦戦続きの修行の日々が始まりそうな気がしてはいる。ありがちだよネ。
 とはいえ、私のような狩猟採集活動が好きな人間は遅かれ早かれ、キノコ狩りも始めることになっただろうと思う。
 いつかやるんだろうなと思ってた、ヘラ釣りもアユ釣りも始めたし、縁はないだろうと思ってたインスプールのリールにも手を出してしまった。
 
 昔、アメリカナマズ釣りをしてて、近くで鯉釣りしている釣り人と話をしてて、その後彼が数本並べてたゴツい竿を片づけ始めて1本だけにしてしまったのを見て「竿の本数が多い方が確率高くないんですか?」と聞いたら。「だいたい今日の食ってくるコースは絞れたので、竿一本でも食う奴は遅かれ早かれ見つけて食ってくる。竿が多いと絡んだりじゃまなだけ。」といっていてなるほどなとコレまた感銘をうけたものである。
 いつかヤル運命にあったことについて、どうせならもっと早く始めていればと思わなくもないけど、そんなこと考えてもせんないことで、むしろ「何かを始めるのに、遅すぎるということはない」とはよくいわれることだけど、まさにそのとおりと感じていて50前の手習いで始めたけど、なかなかに楽しめている。
 やりたいことやら興味があることがあるのなら、やっちまえばいいっスよ。

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